★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
「政府通貨発行特権」 投稿者 書記長 日時 2002 年 8 月 27 日 20:27:07:

「諸君」 平成14年3月号 掲載

ノドから手が出る秘策あり
−小泉政治は「悪の華」−気がつけば1億「暗夜行路」の地獄行き
ドン底2、3月危機を回避するためにも今こそ
    「政府通貨発行特権」で日本経済を蘇生させろ


大阪学院大学教授 丹羽 春喜

以下、上記掲載文より抜粋


*         *         *   

日銀券と政府貨幣の違いがわかりますか?

 ここで想起すべきは「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和六十二年、法律第四十二号)です。我々が「日銀券」とならんで日常的に使っている五百円以下の硬貨や、記念貨幣などを政府が発行するための法律が、これです。
 日本でいま流通している通貨のうち、紙幣は中央銀行である日銀の日本銀行券、硬貨は政府貨幣に分けられますが、この銀行券と政府貨幣の違いが重要なポイントです。これは専門家もあまり指摘していない点ですが、私は強調しておきたい。


国債を日銀に買わせての日銀券の発行額は日銀の資産勘定に計上され、政府は「造幣益」を得られない

 日銀券は、いわば日本銀行という銀行が振りだした手形ですから、日銀にとっては紙幣の発行額がそのまま負債勘定に計上される、つまり日銀の借金になるわけです。国債を日銀に買わせたとしても、政府が日銀から借金をしただけの事ですから「造幣益」という形で政府の正味の収入になるわけではありません。
 日銀券の発行は、日本銀行法に規定されています。平成十年三月末までの旧日銀法では紙幣発行には金融資産の担保が必要でしたが、同年四月に実施された現行の日銀法では担保は不要となった。ですから理論上は巨額の発行も可能にはなりましたが、その発行額が計上されるのはあくまでも日銀の負債勘定です。発行額が大きくなり過ぎれば、日銀は債務超過になってしまう。民間の金融機関と違って債務超過となっても中央銀行としての働きの続行は可能ですが、マスコミは大騒ぎをし、わが国の金融政策と金融システムの信頼度が大きく損なわれることになるのは不可避でしょう。


政府貨幣発行は日銀の資産勘定に計上され、政府の負債勘定に計上されず、正真正銘の財政収入が得られる

 しかし、政府貨幣は性格が違います。これは発行高の上限も定められていないので何千兆円でも発行できますし(記念貨幣の形式にすれば額面の制限もなくなります)、担保も不要です。しかもこの政府貨幣の発行額は日銀券の場合とは異なって負債としては扱われず、政府の負債勘定に計上されることにもなりません。ですから、その発行で正真正銘の財政収入が得られます。つまり発行された額面金額から原材料費や鋳造費、人件費などのコストを差し引いた額が「造幣益」として、国庫に入るのです。無限に発行でき、担保もいらない。借金ではないので、利息の支払いや元本の返済も不要、いくらでも造幣益が手に入るーーこんな「打ち出の小槌」のような政府貨幣の発行を実施しない手はありません。
 さらに付言すれば、政府貨幣は何も硬貨だけである必要はありません。前掲の現行法の規定では紙幣でも良いのです。
 ただ留意すべきは、日本の社会に整備されている金融システムのインフラの問題です。一昨年に発行された二千円札は千円札や一万円札と同様の日本銀行券ですが、現在めったにお目に掛かりません。キャッシュディスぺンサーや自動販売機などがこれだけ整備されているご時世に、二千円札対応マシンやソフトの整備をすることだけで膨大な費用がかかってしまう。実際に二千円札に対応できる機械は市場にほとんど存在せず、国民も使い勝手が悪いからと敬遠しました。その結果、大部分の二千円札は日銀に還流してしまい、市場にはほとんどありません。ですから、仮に政府紙幣を発行するとしても、文字通りの紙の通貨を発行するのは現実的ではないのです。


具体的には「政府貨幣の発行権」を日銀に販売し、日銀は保証小切手を政府に一枚渡す方式

 この難問も発想の転換しだいで、クリアできます。それは政府貨幣の発行権を、政府が日銀に売却することです。例えば五百兆円分の政府貨幣の発行権を、その額面の一割引、つまり四百五十兆円にして日銀に売る。日銀は四百五十兆円と記載した保証小切手を政府に一枚渡すだけで、五百兆円分の資産を保有できることになります。しかも日銀にとって、この政府貨幣の発行権は超優良金融資産です。まさに濡れ手に粟で得た五十兆円分の利益で、日銀の資産内容も改善できる。中央銀行が健全化すれば、金融政策の信頼度も、当然ながら向上します。
 このプロセスに疑義を唱える方もいらっしゃるかもしれませんが、れっきとした合法政策です。日銀法の第三十八条に規定されている「信用秩序の維持に資するための業務」の適用にあたります。
 つまり二つの現行法を巧みに運用することによって、日本政府は一挙に四百五十兆円もの巨額を追加的な財政収入として計上することができるのです。この四百五十兆円のうち、約三百兆円は政府の債務を大幅に減らすために投入することにしましょう。累積債務は約六百兆円ですから、これでその半分を償還し、残りの百五十兆円を景気対策費として活用するのです。

「通貨発行」は極めてオーソドックスな手法(経済学を知らない人はヘリコプター・マネーとバカにする)

 経済学の歴史をみても、すでにこの方策が極めてオーソドックスな手法であると言うことができます。
 ロシア出身のアメリカ人経済学者P・ラーナー教授や、ノーベル経済学賞を受賞したJ・ブキャナン教授といった一流経済学者が唱えてきたのも、このような政策理論でした。
 注目に値すべきは、このブキャナン教授が公共選択論学派を打ち立てた指導的な学者で、本質的には反ケインズ主義者として名を馳せた、そして霞が関の政策担当者や官庁、エコノミストたちの間でも話題にのぼる人物だということです。


ノーベル経済学賞を受賞したJ・ブキャナン教授(公共選択論学派)の三原則

 ブキャナンの考えは次の三つの原則に基づいています。
 第一が、生産能力に大きな余裕があって、需要が増えれば、物価上昇なしにモノやサービスがどんどん供給されるということ。第二に、財政政策の財源を税金や国債ではなく通貨発行から調達すること。第三が、政府機構を肥大化させないこと。
 先に提言した「国民へのボーナス支給案」はこの「ブキャナン三原則」になんら抵触せずクリアできます。
 このプキャナン学派の影響を受けた経済学者は多く、なかでも慶応義塾大学系の有力なエコノミストたちには非常にそれが色濃く見られます。竹中平蔵経済財政相もその一人です。彼らがこの三原則を知らないはずはありません。

 他方、リチャード・クー氏や植草一秀氏といった小泉内閣の経済政策に批判的なエコノミストにはケインズ主義者が多いのですが、このような諸氏の場合も、その財源についての考え方を、国債発行からなんらかの形での通貨発行「造幣益」の活用へと転換させるだけで、問題解決への近道が待っているはずなのです。
 この政府の貨幣発行特権ーーセイニアーリッジ権限seigniorageといいますーーを工夫して活用しさえすれば、この未曾有の経済不況と財政破綻の危機を乗り越えうる有効かつ具体的な手だてを明確に提示できるはずなのです。


政府紙幣発行は現実的でリスクの少ない政策

 この提言に対して、「禁じ手」を使おうとする異論だといった批判をする人がいるかも知れません。しかし、これほどにも現実的でリスクの少ない政策はないのです。
 日銀券と政府通貨の二重性を指摘する人もいるでしょうが、いま現在ですら紙幣と硬貨の双方が流通していますので問題は生じようがない。しかも、この私の提言では「新一万円札」とでもいうべき新紙幣を発行する必要などは一切ありません。“二千円札の教訓”をしかと学ぶべきです。
 二重性を批判する一方で、景気対策として通貨単位切下げ、いわゆるデノミを実施すべきだという意見が一部に強くあります。
 竹中大臣も昨年十月、「デノミは景気刺激効果をもたらすので、来年度の政策案の一つとして積極的に取り上げるべきだ」と提唱しています。しかしデノミを行なったところで、現「一万円」を「百円」と言い換えるだけにすぎず、実体経済には何ら影響を及ぼしません。むしろ二千円札のケースと同様、金融システムのインフラを再整備する必要が生じます。企業の会計ソフトや帳簿・伝票類なども、やり変えねばなりません。このコストこそが莫大で、むしろ不況を一層激化させることになりかねません。床屋政談風に貨幣単位が小さくなるので「値ごろ感を覚えて消費支出が増える」などというのは俗説にすぎません。今は、現行の通貨単位を活用すべきです。デノミ実施は景気回復後の話でよいのです。

 次へ  前へ



フォローアップ:



 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。