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(回答先: Re: 『構造改革』という言葉は米英中枢が創設した言葉。聞こえの良さに安易に騙されるな。 投稿者 せいか 日時 2002 年 9 月 03 日 02:12:19)
幾つかの論点が提示されていますが、それぞれに簡潔にコメントします。
まず、経済において対外関係はそれほど重視する必要ないのではないか、アメリカがダメならアジアに市場を作ればどうか、という点。 これらは決定的に誤っています。GDPが500兆円として、輸入が40兆円、輸出が50兆円としましょう。GDPに貢献するのは純輸出の10兆円だけだから、大した額ではないと。 これは日本の復興と成長がどのような経路でもたらされたかという戦後経済史や一国の経済の成り立ちを支える産業連関の議論を完全に無視した暴論です。試しに国際競争に凌ぎを削る分野の努力を放棄し、内需関連やサービス産業だけに注力してみると良い。日本の繁栄は即刻失われます。アメリカがダメならアジアというのも、現実にアジアに日本の輸出を支えるほどの市場もなく、その確立には(うまく行っても)長期間を要することが確実な中、「非現実的」の謗りを免れません。
英米流の新保守主義的な方向に問題がないとは言いません。発生する諸問題は日本流の解決を図る事が必要でしょう。だからと言って新保守主義そのものを全否定するのは誤っています。世界一賃金の高い我が国が、徹底的に効率を追求し、徹底的に新たなテクノロジーを追求する以外に、どうやって一億3千万人の民の食い扶持を確保できるというのでしょう。このことが分からず、過去の日本の行き方の延長でやり過ごせると考えるのは、どのような立場からであれ現実の実体経済を直に感じ取るチャンスのない方の発言ではないか、と感じます。
以前の発言の繰り返しになりますが、小渕政権の膨大な公共投資を最後に日本のケインズ政策は終わったのです。当時を思い出してください。官民とも「これで経済が上向かなかったら万事休す」という覚悟で実行に移しました。財政赤字もここまで来てしまった以上、今後少々景気が良くなって一時的に税収が上向こうとも、どうにもならないような水準まで来てしまっています(財政収支が均衡する前に長期金利の上昇と国債暴落が現実になります)。今までの政策の繰り返しではなく、破局を覚悟した改革路線しかもう日本には残されていないのです。そのことを明示するデータを主要な政治家には見せていますし、必要に応じての国民への開示も行っています。残された1割の確率に賭ける以外にないのに、なぜか日本の指導者層は思考停止状態に陥って、敢えて危機から目を逸らそうとしています。表面的な豊かさに幻惑されて実体は敗戦直後に近い状態だという実感がわかないのでしょう。このような指導者しか持てず、悲しい事です。
さらに付け加えるとすると、経済に関わる諸制度のグローバルベースでの標準化、共通化(米国化と言い切っても良いですが)は、グローバル・プレーヤー(国家、企業)に課せられたルールなのです。自分達だけ全く別の論理で生きて行くと言っても通用しないのです。多少の遅滞や混乱はあってもこの方向の深化は必然的な流れです。こういう現実を無視した政策論議もあまり意味あるものではありません。この流れから、例えば、法人税を世界基準からかけ離れた水準に設定する事は不可能なのです(輸入税率なども同様です)。従って、大きく税制を変えるとすれば、所得税か消費税しかないことになります。
これらを考え併せると、世界の動きに合わせたルールの元で国際競争を勝ち抜く視座は捨てられない事、安定した税収構造と理想的な再配分機能を確保するために、中期的(3 - 5年ターム)には消費税のさらなるアップと所得税の累進性強化は必須であること、市場原理社会の矛盾を吸収するための非市場論理分野の再編成・確立が急務であることは自明と言えます。過去の政策の全否定に繋がる政府紙幣の投入を伴ってでもやり抜かなければならない日本に課せられた重い課題です。