現在地 HOME > 掲示板 > 議論18 > 639.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
15.論理的な政治に必要な科学的基礎
15−1.従来の政治思想
日本の政治思想は全て中国と西欧の思想家を研究し彼らの言論を金科玉条の如く信奉することから始まっている。そもそも政治思想がその議論の根底に据えているのは人間の価値観に他ならない。価値観とは何か。それは或る環境に育った人間がその社会で常識とされる規範に従って形成された物で、従ってその社会特有の主観であって、その社会に属さない第三者が利害関係無しに、物理法則の様に宇宙どこでも通用すると確信できる様な客観性を持った物ではない。現代の政治思想研究家は古代ギリシャの哲学者達の価値観と古代中国の哲学者達の価値観に基づいて議論を形成しており、どの価値観が人類にとって本当に正しい、という事を証明した人は居ない。
15−2.人間の価値観を基礎としない政治思想
ここで用いる基本概念は、社会によって不変の物と可変の物とを明らかにする、即ち、全ての生物に共通に適用される法則の部分と人間の価値観に左右される部分を分離する事にある。先ず、人間の価値観を超越した自然の摂理を設定することから始める。これらの摂理は人間の思惑で変えることの出来ない真理を否定形で述べた物である。否定形を使う理由はそうすることにより全対象を網羅出来るからである。
摂理1:いかなる生物も、生きる欲望を持つ限り、生存競争を免れる事は出来ない。又、相応の代価を払わずに競争を低減させることは出来ない。
摂理2:完全に平等な競争環境は存在しない。競争参加者には先天的な固有の競争能力に優劣が存在し、且つ後天的な運の善し悪しが存在する。
摂理3:いかなる物事にも完璧は存在しない。
摂理4:いかなる成長も無限に拡大する事はあり得ない。
摂理5:寿命の無い生物は存在しない。
次の系は人間の価値観がどの様に摂理と関連しているかを示す。
系1−1:生きる欲望は全ての生物の遺伝子に組み込まれている。生きる欲望が絶える時がその生物の寿命と定義される。生きる欲望が発展して所有欲に展開するのは価値観を持つ生物に限られる。
系1−2:価値観を持つ生物の中で富の概念を発見したのは人間のみである。
系2ー1:権力とは政治的生存競争の勝者に与えられる力と定義され、摂理2により完全に平等な競争環境は存在しない事から、不平等を権力者にとって有利に使おうとする動機が必ず発生する。しかるに、不平等の乱用は国民にとって腐敗と解釈されるのが社会通念である。故に、長期間腐敗しない権力は存在しない。ここで長期間とは人間の一世代以上の期間を意味する。腐敗を悪と判断するのは人間の価値観に依る。
系2−2:腐敗による権力者の生存競争回避が起こるとその代価は国民が払う事になる。故に、政治権力は特定家族又は組織に一世代以上存続させてはならない。
系2−3:先天的及び後天的な競争能力の差を補填させるには必ず相応の代価を必要とするが、その代価は補填の方法により異なる。即ち、補填の効率には最良から最悪まで各種存在し、かつ与えられた条件によって最良の方法が変わる。此処で補填の効率とは、同じ競争能力の差を補填する諸種の方法に要する各々の代価の比較を指す。
系2−4:生存競争に於ける詐欺行為は生産分野での競争能力の差を補う為の行為である。富の生産能力の不足を詐欺行為によって他人の富を奪う。詐欺行為を悪と判断するのは人間の価値観に依る。
系2−5:生存競争に於ける暴力に依る略奪行為も同様に生産分野での競争能力の差を補う為の行為である。富の生産能力の不足を略奪行為によって他人の富を奪う。略奪行為を悪と判断するのは人間の価値観に依る。
系2−6:利権は詐欺行為、略奪行為と同等の生存競争を回避する手段である。富の生産能力の不足を利権によって他人の富を奪う行為であり、それを悪と判断するのは人間の価値観に依る。
系3:完璧を定義するには何らかの評価指標が必要であり、指標は人間の価値観を反映して作られるから無限に多数存在する。
系4:成長の有限性は人間の価値観と無関係である。即ち、有限成長の世界でも人間の価値観を最大化できる可能性は存在する。
系5.:永久に生きる為に払う代価は全て無駄である。
これらの摂理は如何なる生物にも強制される法則であるから、宇宙のどの文明にも通用する。即ち、生物社会に対する物理法則と言えるもので、宇宙のいかなる生物でも生存競争はまぬがれない。その理由は全ての生物は生存の為に何らかの形でエネルギーを外部から取り入れねばならないからである。エネルギーは光、地熱の様な物理的な物から、植物からの糖類、動物からの蛋白質に至るまで色々な形で生物に取り入れられ消化される。生物の生殖密度が小さい間はエネルギー争奪の必要は無いが、如何なる惑星でも有限の大きさである以上、生物の繁殖が進むに連れて生存競争が必ず開始される。
(続く)