(回答先: 漁村の主婦が起こした米騒動 投稿者 あぼーん3世 日時 2002 年 3 月 06 日 15:38:42)
ドイツは、国力をすり減らした末、第一次世界大戦に敗北し、すべての植民地を失います。 1919年2月、ワイマール憲法が制定されてドイツ共和国が成立します。
一方、ヴェルサイユ条約で、ドイツの賠償責任 が定められます。具体的には、1320億金マルクという途方もない金額を、フランスなどの戦勝国に支払うことが決まったのです。ドイツ共和国政府は、穏健な社会主義政党が主体でしたが、軍部や産業界など多くの勢力と妥協した政権でした。
賠償金の支払いのため、増税をして、歳出をカットすることなどできるはずがありません。あらゆる勢力と妥協するためには、財政支出が必要です。
政府は、財政支出をまかなうため、国債を乱発して、中央銀行であるライヒス銀行に購入させます。
こうして、紙幣がドイツに溢れ出します。
1922年の一年間に、通貨は、17.2倍に増加します。そして、卸売物価は75.9倍に上がります。
通貨の増え方より、インフレの進行のほうが倍率が高いのは何故でしょうか?
インフレが起こると、現金を手にした人は一刻も早く物に替えようと必死に努力します。金利がいくら高くても、貯金などする馬鹿はいません。
通貨は、恐ろしい速さで人から人へとたらい回しにされます。
ババ抜きのババのように・・・
通貨の流動性が著しく上昇するのです。
したがって、ハイパーインフレがおこると、通貨の増加スピード以上のスピードで物価の高騰は進むのです。
誰もが、自国通貨を信用しないのです。
すべての人が、物への投機家になるのです。
後に分かることですが、1922年のインフレは、1923年に比べたら天国でした。
ドイツは、賠償金を払えなくなります。フランスは、ドイツから賠償金が取れないと、イギリス、アメリカへの借金の返済が出来ません。
フランスとベルギーは、報復措置として、ドイツのルール地方を占領します。基幹産業の石炭、鉄鋼を失い、ドイツ経済は、壊滅的な大打撃を受けます。
◆◆世界史上最悪といわれる、◆◆
◆◆1923年のドイツのハイパーインフレが、炸裂します。◆◆
現金は43億倍に増加して、卸売り物価は何と344億倍に高騰します。
一番ひどかったのは、1923年10月で、わずか31日間に物価は296倍になります。
高額紙幣の発行は間に合わず、旧紙幣の数字の末尾に0をつけて流通させたそうです。しかたなく、重い札束を持ってレストランに行きます。札束を盗む物好きはいませんから、むき出しで、札束を運んでもで大丈夫です。このときは、ビールを2杯注文したら、1杯目と2杯目とでは、値段が違っていたそうです。
富の再分配が行われます。
真面目に節約して蓄えた、貯金や国債や生命保険は、紙くずになります。長年働いて築いた年金はいざ受け取っても、何も買えません。国を信用して行動した人は、すべてを失ってしまうのです。
そして、早い時期に果敢に借金をして、土地や株や外貨を購入したものは、労せずして財産を得ます。すべての借金は、インフレで目減りして限りなくゼロに近づき、いとも簡単に返せるのです。
1923年10月15日、通貨改革宣言が打ち出され、天文学的数字のデノミが実施されます。
1レンテンマルク=1兆旧マルク
ライヒス銀行の業務は、レンテン銀行に引き継がれます。レンテン銀行の発行できる通貨の量は、32億レンテンマルクに制限され、国債の引き受け額も12億レンテンマルクの上限が決められます。
中央銀行の断固たる決意を受けて、ハイパーインフレも収束に向かいます。
しかし、ドイツ国民は、インフレがもたらした社会的不公正に我慢できなくなります。
1929年、アメリカで株価の大暴落が起こり、世界は、恐慌に突入します。
やがて、民主主義は嫌われて、法と秩序を主張するナチスドイツが頭角をあらわします・・・・