05. 2013年5月02日 10:33:12
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出産後の再就職を助ける政策に女性が反対する理由は何?
韓国の「ママ加算点」に賛否が錯綜 2013年5月2日(木) 趙 章恩 安倍晋三首相が日本の経済3団体幹部に、女性を登用するよう要請したというニュースが韓国でも話題になった。企業も首相の要請に応えようとしているらしく、うらやましくなる。 韓国の勤労基準法によると、女性は出産前後90日間の出産休暇を申請できる。しかし、現実には、出産を機に会社を辞めるしかない女性が多い。だいぶ良くなったとはいうが、まだまだ、出産休暇や育児休暇を正々堂々と要求できる雰囲気ではないからだ。子育てが一段落し職場復帰を望んでも、新卒ですら就職難の今、オンマ(ママ)が再就職するのは難しい。そこで登場したのが「オンマ加算点」制度である。 「オンマ加算点」とは、出産・育児のために会社を辞めた女性が再就職する際に、筆記試験や面接といった入社試験の結果に、合計点の2%を上乗せし、優遇する制度である。これは国会環境労働委員会が審議している「男女雇用平等と仕事・家庭両立支援法」の中核をなすもの。審議を通過すれば、6月あたりから立法に向けての準備が始まる。 韓国の賃金男女格差は先進国で最大 韓国は女性の経済活動参加率、女性管理職の割合がOECD加盟国の平均を大きく下回っている。一方、男女の賃金格差は同平均より大きい。2012年12月にOECDが発表した「Closing the Gender Gap: Act Now」の「雇用における両性平等」の項目を見ると、韓国における女性の経済活動参加率は55%(男性77%)で、OECDの平均62%を下回っている。経済活動参加率の男女差が20%ポイント以上開いている国はOECD加盟国の中で韓国だけだった。 男女の賃金格差(フルタイム雇用者)は39%で、OECD加盟国の中で最大だった(OECD平均は15%、日本は29%)。男性の賃金が月10万円だとすると、女性は同じ時間働いても6.1万円しかもらえないということを意味している。OECDは、「高齢化が進む中、韓国の未来は女性の経済活動参加率を上げ、女性の潜在力を生かすことにかかっている。男性はより家事・育児に参加するべき。企業はその文化を家庭親和的なものに変える必要がある」とアドバイスした。 2012年度の教育基本統計によると、韓国の大学進学率は72.5%。これはOECD加盟国の中で1位であり、大学進学率においては男女差があまりない。試験の点数だけで合否が決まる国家公務員・教師の場合、女性の方が断然、合格者が多い。しかし管理職として昇進するのは男性だ。 韓国は保育園不足で子供を預けられるところがない。両親の手助けがないと育児が成り立たないのが現状である。頼れる家族がいない場合、女性が職場を辞めて子育てをせざるを得ない。男性が子育てをする場合もあるが稀である。 育児のために勤務時間をフレキシブルにしたり、社内に託児所を設けたりする企業は、化粧品メーカーやアパレル、研究所など、女性社員が多い一部の企業に限られている。2012年に「家庭親和的企業」として大統領賞を受賞した石油化学会社のSKイノベーションは、女性役員が多いことで有名である。男女差なく平等に昇進できるようにしたことで、100倍だった入社競争率が1000倍に跳ね上がったという。女性志願者が殺到したからである。 朴槿恵大統領は働く女性への支援を公約 韓国は2013年、朴槿恵氏が初の女性大統領が就任した。これを契機に、政界でも産業界でも女性が活躍できる場が増えるだろうと言われている。朴大統領は、「女性人材10万人養成」「公共機関女性管理職目標制度」を公約した。政府機関・公共機関の女性役員の割合を2015年に15%、2017年には30%にするというものだ。288ある政府機関・公共機関の女性管理職の割合は2011年時点で8.8%だった。上場企業の女性管理職の割合は5.3%である。女性役員となると、この割合はさらに下がる。上場企業では1.5%しかなかった。省庁の副大臣、その傘下の振興院/研究所の院長・副院長となると、統計を取るのが難しいほど全滅状態である。 朴大統領は公約として、「出産と育児により『経歴断絶』状態の女性が再就職できるように支援する」「仕事と家庭を両立できるように支援する」「雇用環境を改善して両性平等を実現する」という項目も掲げた。具体策として、育児のための在宅勤務を可能にする、勤務時間短縮制度を活性化する、育児が一段落した20〜40代女性が正社員として再就職できるよう研修プログラムを充実させる、求職活動を支援する、両性平等を実現した企業に支援金を支払う、などを検討中だ。「オンマ加算点」は、これらを代表するキーワードに浮上している。 出産した女性だけを保護するのは不平等 かつて韓国には軍服務加算点制という制度があった。徴兵で軍に行き2年以上服務して除隊した男性が就職する際、入社テストの総得点に2%を加算する制度だった。だが、男女差別であるとして1999年廃止になった。男女差別をなくすために、オンマ加算点があるなら、軍服務加算点制を復活させるべきだという主張もある。「出産も徴兵も社会に貢献するのは同じ。両方に点を加算すればいい」という意見である。 複数のマスコミ報道によると、国民の61.3%がオンマ加算点制度に賛成しているという。しかし、オンマ加算点制度について女性団体連合は反対を声明した。「女性が出産・育児と仕事を両立できるよう、会社を辞めなくてもいいようにするのが先」という理由だ。女性労働者会が運営する「平等の電話」に寄せられる相談の多くは、「妊娠したことを理由に会社をクビになりそうだ。どう対処すればいいのか」という内容だという。職場でのセクハラ、賃金未払いよりも、出産・育児と仕事の両立に関する相談の方が多いのだ。 また、女性団体連合は、こうも主唱した。「すべての女性が出産するわけではない。出産後の再就職に限定した場合、独身女性や学校を卒業してすぐ結婚・出産した女性は対象にならない。このため新たな差別を生み出す可能性がある」。 女性団体連合には以下のような反対意見が寄せられたという。 「オンマ加算点制度は、育児は女性だけの義務であると断定するようで気に入らない。男性も育児休暇をとって夫婦一緒に子育てできるようにする制度を導入するのが先ではないだろうか」 「出産・育児休暇を申請しようとすると『プロとしての意識が足りない』『これだから女性は雇えない』と男性が陰口を叩く。これこそが男女差別ではないだろうか。女性が会社を辞めなくてもいいように、働く環境を変えるのが先である」 「オンマ加算点が制度化されれば、女性は出産が近くなれば会社を辞めるのが当然と思われる。それでは困る」 「親の介護など、出産・育児以外の理由で会社を辞めるしかなかった。この場合、再就職したい女性は助けてもらえないのか」 ほかにもたくさん! 加算点制度 これらの批判とは別に、加算点制度が多すぎる、として反対する意見もある。 韓国には、以下の人たち向けに、入社試験の総得点に5%を上乗せする加算点制度がある。 国家功労者(公務中に怪我・死亡した公務員・警察・軍人・国家社会発展功労者など。国家報勲処が定める) 独立運動家(日本による植民地支配に抵抗した人) 枯葉剤被害者(ベトナム戦争で、米軍が使用した猛毒物質により健康被害を受けた人) 特殊任務遂行者(北朝鮮に送る目的で訓練されたスパイ) 民主化運動功労者 上記功労者の家族 生活保護者 さらにオンマ加算点制度と軍服務加算点制度が加われば、加算点だらけになる。就職難が続く中で、2〜5%の加算点はとても大きい。 オンマ加算点制度に賛成する人たちは、「オンマ加算点」が流行語のように広がることで両性平等が国民的関心事になる、出産後もパートではなく正社員として働けるようになれば韓国の低い出生率を押し上げる効果がある、という期待を持っている。 女性役員の拡大、出産・育児と仕事を両立できよう国が制度的にバックアップしようという動きが日韓で同時に起きている。同じ悩みを抱える両国が、効果が上がった制度や事例を共有して一緒に研究すれば、もっと良い対策が生まれるのではないだろうか。そういう日韓交流に期待したい。 日本と韓国の交差点
韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか? http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130430/247401/?ST=print 長期視点の投資家が考える「適正株価」とは 企業価値を向上させる環境/CSRコミュニケーション[1]統合報告 2013年5月2日(木) 外薗 祐理子 自社が環境やCSRに真剣に取り組んでいることを、単なる「社会貢献」ではなく、本業の価値を増大させることにつなげたい――。そう考える企業人のためのコミュニケーション講座の第1回。「統合報告」という新しい企業リポーティングのあり方に向けて世界の企業、政府、市場、投資家が動いている。この流れに乗って、自社の企業価値を高めよう。 「統合報告」と呼ばれる新しい企業情報開示のあり方に、世界中のIR(投資家向け広報)担当者やCSR(企業の社会的責任)担当者が注目している。 日本企業では現在50社程度が統合報告書を開示しており、2011年度の20社から大幅に増えた。2013年には100社以上の日本企業が発行するだろうと予想されている。 世界で見れば2012年3月までの1年間で、少なくとも350社が統合報告書を発行した。そのうち欧州では199社に及んだ。 統合報告とは、文字通り、企業の財務情報と非財務情報を統合的に報告するものだ。それをどのような基準にするかは、3年ほどかけて国際的に議論されている。 チャールズ英皇太子が設立 統合報告の枠組みを議論する組織が「国際統合報告評議会(IIRC)」である。GRI(グローバル報告イニシアチブ)とA4S(持続可能な会計プロジェクト)によって2010年8月に設立された。GRIはCSR報告書作成のためのガイドラインを作成する国際組織である。A4Sはチャールズ英皇太子が2004年、環境問題や社会問題を企業の意思決定や情報開示に組み込むことを目的に設立したシンクタンクだ。 IIRCはこれまでも何度か統合報告の枠組みに関する案を発表してきたが、4月16日、公開草案を公表した。2013年末までに統合報告の初の基準を出す予定だ。 IIRCは統合報告が企業の情報開示において主流となることを目指している。 統合報告をめぐっては「抽象的で分かりづらい」という企業の実務担当者の声も多く聞かれる。「本質に入り込みすぎて、神学論争の様相を呈しているのではないか」と思う箇所もたくさんある。 だが、それは世界が「企業とは何か」について改めて見直し、議論していることの証拠でもある。この動きはリーマンショックを経て加速している。 統合報告にまつわる誤解を解きほぐしながら、世界が今、思い描いている最新の「企業像」を見ていこう。 1.統合報告をめぐる誤解その1 「アニュアルリポートとCSRリポートを合体したもの」 一般に、統合報告書は、財務情報について記したアニュアルリポートと、非財務情報について記した環境報告書やCSRリポートを合体したものと理解されていることが多い。しかし「それではただの“合本”であり、“統合”報告書とは言えない」と新日本監査法人・統合報告推進室の小澤ひろこシニアマネージャーは指摘する。 武田薬品工業は2006年から統合報告書を作成しているが、それとは別に、同社のCSR活動に関してより詳細なデータを加えたCSRデータブックを作成している。統合報告書の作成は、企業の情報開示コストを削減することが目的ではない(ただし結果的に開示コストが削減できる可能性はある)。 ここで記事中に「統合報告書」と「統合報告」という言葉が登場することに読者はお気づきだろう。 IIRCによれば、統合報告書(an integrated report)と統合報告(integrated reporting)とは別のものだ。彼らは「統合報告」のほうを<IR>と記している。 公認会計士で、IIRC技術作業部会メンバーでもある森洋一氏によれば、統合報告とは「組織による、長期的な価値創造についてのコミュニケーション」である。年次の統合報告書はその最たるツールという位置づけだ。 IIRCは統合報告書の体裁について定型的な規定や個別指標についての測定・開示基準は設けていない。企業はIIRCが示す基準や原則を自ら解釈して統合報告書を作成し、対外的なコミュニケーションを実施する。IIRCが推進するのはあくまでも「統合報告」であり、報告書の書式やコミュニケーションのやり方は各社の自由だ。 企業は、金融資本や製造資本、知的資本、人的資本など様々な資本を投入し、事業活動を通じて、価値を創造している。統合報告の狙いとは、その価値創造プロセスの全体像を端的に示すことだ。 統合報告には、以下の3つの基礎となる概念がある。 まずは「資本」。IIRCは資本を6つに分類している。それらを企業がどのように利用するか、価値創造プロセスの中で、投入した資本がどのように相互に影響を及ぼしあっているかが統合報告には書かれていなければならない。 価値創造プロセスのループ上の連なり 次に「ビジネスモデル」。これは資本を投入して、価値を創造するための媒介手段である。 3つ目が「時間の経過」。価値創造プロセスを短期的・中長期的に示すこと。資本を事業モデルに投入して、付加価値をつくる。付加価値を上乗せした資本を再び新たな事業活動に投入する。企業活動は、こうした価値創造プロセスのループ上の連なりである。 日本公認会計士協会常務理事で、IIRCワーキンググループメンバーの市村清氏は「統合報告書とは企業の戦略リポートだ」と言う。そして、「自社の社長になったつもりで考えてほしい」とアドバイスする。 IIRCによれば、統合報告のベースには「統合思考」が必要だ。統合思考とは、財務情報と非財務情報や、自社の事業の持続可能性と社会の持続可能性などを、統合的に理解することだ。あずさ監査法人の沢田昌之・統合報告推進室長は「統合報告の作成によって統合思考が身につくメリットもある」と言う。 統合報告書を作成するためには、社内の様々な情報を1つのベクトルにまとめなくてはならない。全社の価値創造ストーリーの中に各部署のストーリーを位置づけるためには、単に「データを提出してください」では済まず、各部署の担当者と話し合う必要がある。前出の森氏も「統合報告を自社に構造変化を起こす手段とすることもできる」と主張する。 2.統合報告をめぐる誤解その2 「様々なステークホルダーのために作成する」 「統合報告とは、企業を取り巻く様々な利害関係者(ステークホルダー)に向けたものである」という誤解も多い。正確に言えば、全くの見当外れというわけではない。 IIRCの公開草案には「統合報告書は主に金融資本の提供者向けに、彼らが金融資本の配分を査定するのを助けるために、用意されるべきである(1.6)」と明記されている。中でも、長期視点の投資家に最も役に立つという。 ただし「従業員や顧客、調達先、ビジネスパートナー、地域社会、国会議員、規制機関、政策立案者など、その企業の持続的な価値創造能力に関心を持つすべてのステークホルダーにとっても便益がある(1.7)」と、公開草案は続ける。 なぜなら、長期視点の投資家とほかのステークホルダーはどちらも企業の短期・中長期的な価値創造に注目している点で共通だからだ。 従って、統合報告書はまずは長期視点の投資家に向けたもの、というのが正解だ。 リコーは2012年11月、統合報告書を発行した。その背景には「投資家の意識変化がある」とリコー広報室の梅澤信彦シニアスペシャリストは言う。投資家が投資判断をする際に、財務情報だけではなく、非財務情報である環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の、いわゆる「ESG要因」が重要になってきているという。 統合報告書を作成する企業が増加している背景には、英国のハーミーズや米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)といった欧米の年金運用基金が、企業に対してESG情報の開示を要求していることがある。ハーミーズは英国最大の機関投資家だ。長期の株式運用をベースに、企業経営者との対話を重視し、長年に渡って「責任ある投資行動」を提唱している。カルパースは、2013年1月末の総資産が時価総額で2549億ドル(23兆3800億円)という米国最大の公的年金であり、「物言う株主」の代表格だ。 2006年、コフィ・アナン国連事務局長(当時)が「国連責任投資原則(PRI)」を提唱した。機関投資家の投資分析や意思決定のプロセスにはESG要因を組み込むといったことが盛り込まれたガイドラインだ。日本でも保険会社や年金などの運用会社が署名している。 各国の政府や証券取引所も相次いでESGに関する規制を整備している。 南アフリカ共和国のヨハネスブルク証券取引所は、上場企業に対して2010年3月1日以降に開始する期から統合報告書の発行を求めている。 ESG情報に目を配る 欧州各国も非財務情報の開示規則を具現化している。英国では2013年春からロンドン証券取引所上場企業に対して、年次財務報告書の中で温室効果ガス(GHG)排出量の報告を義務付けた。 米国では、2010年に米証券取引委員会(SEC)が気候変動に関する情報開示のガイダンスを公表した。2012年8月、SECは金融規制改革法(ドッド・フランク法)の紛争鉱物条項に基づく実施規則を採択した。2013年1月から、米国の上場企業は自らが使っている製品の紛争鉱物を調査し、開示する義務を負っている。 どのようにすれば市場が過度のショートターミズム(短期志向)に陥らないかについては1990年代から議論されてきたが、リーマンショックを経て、近年動きが加速している。 その解の1つが「ESG情報」である。国や市場が企業にESG情報の開示を求めるのは、環境対策や社会政策のためだけではない。ESG情報に目を配ることが、企業に対する中長期的な視点を促し、経済や市場の安定的で持続的な形成につながるからだ。 3.統合報告にまつわる誤解その3 統合報告やESGは株価とは関係ない 日本ではアニュアルリポートを統合報告書に代える動きが加速している。有価証券取引書は書式が法律で細かく規定されており、企業の個性が出しづらい。日本企業は主に海外の投資家向けに、有報とは別に自主的にアニュアルリポートを制作してきた。統合報告書は主に海外を意識したものになりそうだ。 有報を管轄する金融庁は統合報告をすぐに制度化する考えは示していないが、経済産業省は2012年7月、「企業報告ラボ」を立ち上げた。企業と投資家が、企業価値の向上に向けた対話や開示のあり方を議論する。日本市場に関心を持つ海外投資家などともネットワークを構築し、日本からの情報発信を目指す。ここでは統合報告も議題の1つだ。 最近は株価が上昇しているが、2012年11月末の東京証券取引所第1部に上場する企業の株価純資産倍率(PBR)は0.8(ちなみに、2013年3月末は1.0)。純資産額よりも株式の時価総額の方が低い状況だった。経産省には統合報告を進めることで海外投資家の資金を呼び込み、日本企業に“適正株価”がつくようにとの考えがある。 専門家たちはこう口を揃える。「統合報告にしっかりと取り組むことが他社との差別化要因になる」(公認会計士の森氏)。「投資家に企業を適正に理解してもらうツールとして用いることができる」(あずさ監査法人の沢田氏)。 ESGレーティングと株価の相関 統合報告やESGは株価には結びつかないと考える人も多いかもしれない。ここに興味深いデータがある。 日本生命保険グループで年金や投資信託の運用などを手がけるニッセイアセットマネジメントは2008年から「ESGレーティング」という取り組みを始めた。株を保有する国内企業400社のESG要因について、CSRに関する企業年鑑から各企業のESG要因を偏差値にした定量データや、企業から聞いた生の情報を基に、担当アナリストが年に1度評点をつける。「レーティング1」が最も高く、「レーティング4」が最も低い。 「保有する国内株式のうち常に8割はESGレーティング1と2の銘柄になっている」と井口譲二・株式運用部担当部長は話す。ESG要因を本業に結び付けて取り組む企業は、持続可能な成長力を持ち、成長性が高いといえそうだ。 環境問題や社会問題の解決やコーポレートガバナンス(企業統治)に積極的に取り組んでいる日本企業は多い。それらを上手に打ち出し、投資家とコミュニケーションを図ることが適正株価を導き、企業価値の増大につながる。 日経エコロジーでは5月15日に「企業価値を増大させるための環境コミュニケーション」と題したセミナーを開催します。統合報告書編では、本文で登場したリコーやニッセイアセットマネジメントのご担当者にもご講演いただきます。詳細は下記URLをご参照ください。皆様のご参加をお待ちしております。 エコロジーフロント 企業の環境対応や持続的な成長のための方策、エネルギーの利用や活用についての専門誌「日経エコロジー」の編集部が最新情報を発信する。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130430/247402/?ST=print 新興国市場で最初に参入すべきセグメントは? 2013年05月02日 スコット D. アンソニー イノサイト マネージング・ディレクター 新興国市場への参入に際し、考えるべきことは山ほどあるだろう。どのセグメントを狙うべきか。地元企業をどう相手にするか。模倣にどう対抗するか。3人の識者による知見を紹介する。 ?先日、プロクター・アンド・ギャンブルCTO(最高技術責任者)のブルース・ブラウン、ヴィヴァルディ・パートナーズの取締役兼CEO エーリッヒ・ヨアヒムスターラーと一緒にパネル討論を行い、活発に討議する機会があった。このセッションはハーバード・ビジネス・レビュー主催、シンガポール経済開発庁後援によるイノベーションについての集中セミナーの一環であり、テーマは「新興国市場で最初に参入すべきセグメントを考える――ターゲット顧客は中間層か、低所得層か」である。
?多くの企業は中間層への参入から始めるべきだ、という意見を私が述べて議論の口火を切った。世界銀行の予測によれば、新興国市場での中間層の消費者は現在(2010年)の4億2000万人から、2030年までに12億人に急増する。アジアだけを見ても、同期間に中間層の消費支出は5兆ドルから30兆ドルへと急上昇する。 ?一方で私は、この巨大な中間層にリーチすることは簡単ではないことも指摘した。まず、魅力的な製品やサービスを提供することだけでなく、複雑なビジネスモデルに精通することが求められる。販売方法、流通、アフターサービスなどさまざまな面で、新たな方法を試してみなければ成功は難しいかもしれない。組織のあり方も再考する必要がある。巨大なグローバル企業は新興国市場の拠点を、単なる販売代理店としてではなく、地元の開発拠点として機能するようにしていかなければならない。こうした転換は、言うは易く行うは難きである。組織階層、人材管理、ジョブ・ローテーション制度、報酬制度などを含む多くの要素を見直すことが求められる。 ?ヨアヒムスターラーは、次のような見解を示してくれた。人口や消費の急増は魅力的である一方で、中間層は一枚岩ではない。企業は中間層を、より細分化された市場ごとに理解する必要があり、それらの市場で成功することは想像以上に難しいと認識するべきであるという。そしてタタの低価格車〈ナノ〉がインドで真の「大衆車」として根付くのは難しいかもしれない、ということを解説してくれた(これについては私の過去記事も参照されたい)。彼の意見では、自動車へのあこがれを抱くインドの人々にとって、「最低価格」が最大の特徴である車は真っ先に購入したいものではないという。 ?ブラウンは、次のような話をしてくれた。P&Gは、世界中で50億人の消費者をターゲットにして市場を拡大すると発表している。同社の規模を支えこの戦略を実現するためには、あらゆる市場、あらゆる層を考慮しなければならない。同社は商品を通じて「顧客の歓び」を提供する戦略をつらぬくことで、ブランドを築き上げる。ブラウンによれば新興国の消費者は、成熟市場の消費者よりも要求が高くなることがあるという。そこでP&Gは、「単独進出」するべきか、あるいは必要なケイパビリティーを得るために現地で提携や買収をするべきか、慎重に検討しているという。また、インドをはじめ新興国市場で同社の成長の原動力となっている、低価格の剃刀〈ジレット?ガード〉の成功事例を紹介してくれた。 ?会場から寄せられたいくつかの興味深い質問に対して、以下に私の考えを改めて載せておこう。 質問:顧客の消費習慣が短期間で変化することを考えると、競合に対する競争優位を獲得するためには、綿密な市場調査を時に妥協すべきなのか。 「市場調査についての妥協」が何を指すかによる。実際の市場で発売してみて、短いサイクルで改善を繰り返すことが、最良の市場調査である場合もある。綿密に計画した市場調査を段階を追って実施し、それに基づいて新製品発売を慎重に最適化する――こうした手法は多くの市場で、過去のものとなった。市場の変化の速さは驚くべきものだ。しかし、何もわからないまま闇雲に発売せよ、ということではない。定性的な調査をより重視する、あるいは市場での類似事例を投入戦略の参考にする、といった方法もあるだろう。 質問:製品やサービスの品質基準は、文化によって変わるものなのか。あるいは、誰もが目安とするべき絶対的な基準があるのか。
?品質とは相対的な概念である、というのが私の前提だ。たしかに、ある商品区分においては、認識に明らかな違いがあるだろう。たとえば、欧米の多くの市場では女性の美の基準として、日焼けした肌が美しいとされる。そこで消費者は日焼け用品や関連商品を購入する。一方、複数のアジアの市場では、女性の透き通るような白い肌が美しいとされる。そこでドラッグストアの店頭には美白用品が溢れている。市場と顧客については現場で現実を知ることが何より大切だ。これはパネル討論で終始取り上げられたテーマであり、市場による品質基準の違いを理解するためには欠かせないことである。 質問:新興国市場に参入する際、自社の製品が模倣されてしまうような現地の慣行や風潮に対して、どのように防衛策を講じるべきか。 ?こうした質問が出たときには、私はこう答えている。人々を釘づけにするような新しい製品やサービスを次々と提供し続けることにより、模倣者たちの一歩先を行くのだ。この方程式のもうひとつの側面は、統合されたビジネスモデルを模倣へのヘッジ手段として利用することである。イケアがその好例である。イケアの家具を模倣することはそれほど難しくはない。だが、イケアが提供している顧客体験をプロセスの最初から最後まですべて模倣することは、恐ろしく困難である。これはまた、ビジネスモデルのイノベーションがいかに重要かを示すものでもある。 質問:消費者のニーズや文化的嗜好をより深く理解している地元の競合企業には、どう対抗すればよいか。たとえば漢方薬などがこれにあたる。 ?ローカル市場の微妙なニュアンスを理解する能力は、たしかに重要な資産である。このスキルを獲得するために、現地で積極的に提携先や買収候補を探す企業もある。たとえば2008年に、ジョンソン・エンド・ジョンソンのコンシューマー部門は、中国で個人向けスキンケア商品などの強力なブランドを多く所有する北京大宝化粧品有限公司を買収した。食品会社や飲料メーカーの場合も、それぞれ地元の市場で愛好されている商品を自社ブランドで代替するよりも、現地のブランドを買収するほうがずっと理にかなっていると判断する場合が多い。買収や提携は、新興国市場に割って入ろうとする企業にとって、とても重要な手段である。 質問:中間層あるいは富裕層を対象に投資するのとは違って、低所得層(BOP:ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)向けに投資する企業は、利益を犠牲にしなければならないのか。 ?いわゆるボトム・オブ・ザ・ピラミッドの魅力が長らく言われている。しかし市場の現実を鑑みると、少なくとも一部の企業にとっては、利益を上げるのは非常に難しい。これは、過去に成功例がないとか、今後成功の見込みがないということではない。「もし中国人(あるいはインド人、インドネシア人、ブラジル人、ナイジェリア人)の消費者から、1人1ドルずつ獲得できる方法を見つけさえすれば……」と言っているだけではどうにもならないということだ。その1ドルを獲得するのは途方もなく困難なのだ。もちろん、低所得市場で事業を営む社会的な意義もたくさん存在する。したがって、この市場を無視するというのも得策ではない。現実をしっかり注視して進出しなければならない。 質問:たとえばブラジルのような新興国市場で、汎用品を法人向けに販売する場合、新規参入企業は最低価格を提示する戦略をとるべきか、それとも付加価値のある製品を提供する戦略をとるべきだろうか。 ?これについては、両方とも行うべき価値提案だと思う。もしも優れた生産方式、グローバルな規模の経済、独自のサプライチェーン管理能力などを基に、コスト競争力が維持できるのであれば、可能な限り低価格戦略を追求するべきである。同時に、ターゲットとする顧客企業を本当に理解し、相手のビジネスモデルに自社製品がどれだけ適合するのかを理解する必要がある。在庫管理、リスク分散、需要創造など、地元企業が直面しているさまざまな課題について支援を提供するチャンスがきっとあるだろう。かつて伝説の野球選手ヨギ・ベラが言ったように、「分かれ道に来たら、とにかく進め」ということだ。 ?以上のような魅力的なセッションに参加できたことについて、パネル討論に加わってくれたパネリスト、主催者のハーバード・ビジネス・レビュー、後援者のシンガポール経済開発庁に感謝したい。近いうちに、また議論できることを楽しみにしている。 HBR.ORG原文:The Right Entry Point for Emerging Markets March 12, 2012 http://www.dhbr.net/articles/-/1655?page=2
雇用を創出するための国際標準化 日本の若者が世界で活躍するために 2013年5月2日(木) 市川 芳明 先日国際電気標準会議(IEC)の温室効果ガス関連規格の根回しでTC111(電気・電子機器、システム の環境規格)委員会の議長として欧州の数カ国を回ってきた。 ドイツの国内委員会との対談で印象的だったのは、ドイツを代表するある超大手企業の国際エキスパートだった人が、「経費節減の一環としての会社の方針で今年から、当社からは誰も環境分野の国際標準化に参加することはできなくなった。海外よりも社内で環境対策に専念するように言われた」とのサプライズを宣言されたことだ。 さらに同じくドイツの別の企業は、「一部の環境規格活動には参加できるが、Business Relevance(商売との関連性)が高い環境規格にのみ参加を許される」とのことであった。具体的には法規制に対応する規格のみという意味である。世界中の経済の回復が思わしくない現状においては、ますますBusiness Relevanceはキーワードになってくるだろうと、議長としても今後の方向性を決定する上で肝に銘じなければならないと感じた。 世界のスマートシティを調査したISOの報告書 これまで、IECや国際標準化機構(ISO)において自らが関わってきた環境配慮製品、温室効果ガス貢献量、あるいはスマートシティーの標準化に関して国際標準化の裏舞台での駆け引きの一端をご紹介してきた。 昨年から開始したスマートコミュニティーインフラの標準化委員会(ISO TC 268/SC1、Smart Community Infrastructures)は順調に進んでいる。最初の技術報告書ISO TR 37150の原稿がほぼ出来上がり、夏休み前には各国投票にかけるつもりである。この技術報告書は各国のスマートシティーに関する現存するプロジェクトやコンセプトを150種類くらい調査し、その結果をまとめるとともに、ISOとしての考察を加え、今後の方向性を示すレポートである。したがって、いわゆる規格らしいものは次に出る文書からとなる。 筆者がまず厳格な規格ではなく、技術報告書から始めたのは、各国の代表とのチームワークを築くことが狙いだった。厳格な規格は「Harmonization」という言葉に代表されるように、世界で1つの合意に達しなければならない。しかし、ISO TC 268/SC1のように始まったばかりの規格委員会においては、各国が異なった主張を繰り返すばかりで譲歩することが難しいのが常だ。 まずは1つの合意に向かって互いに譲りあう雰囲気を作ること、つまり異なる国から派遣された人々が互いに仲間として打ち解けるように導くことが議長の最初の仕事である。筆者の経験では、そのために、技術報告書(Technical Report)という、様々な考えなり方法論を併記できる文書を皆で力を合わせて作ることから始めるのが大変効果的である。 世界各国の違いと類似点を皆で確認し合うことによって、相互の理解が深まる。また人間としての信頼感が醸成できる。合意に達する前に、まず相互理解から始めるのはリスクコミュニケーションにおいても定石である。今回の1年間の作業を通して、チームとしてのまとまりが出てきたことを実感した。 和気あいあいとした雰囲気で進むISO TC268/SC1/WG1会合(2013年2月) この規格化活動で私が気にしているもう1つの重要なポイントは、いまスマートシティーに世界中が注目していることである。
筆者は今年2月に北海道の下川町で開催された環境未来都市国際フォーラムに招待を受け国際標準化のお話をした。その直前にはジュネーブの国際電気通信連合の標準化部門(ITU-T)でスマートシティー関連の標準化検討会を立ち上げることが決まり、私が講演を依頼された。そして、IECにおいても、上層委員会(SMB)でスマートシティーの議題が取り上げられた。さらに、全欧州レベルの規格団体CEN/CENELECではスマートシティー規格のコーディネーショングループが昨年から立ち上がっており、その担当者と3月に話してきたばかりである。 各国の政府や国際標準化団体は競って「スマートシティー」を取り上げつつある。ほとんどの場合、狙いは都市そのものではなくて、やはり「インフラ」だ。先に述べたBusiness Relevanceである。幸いにしてISO TC268/SC1が初めてこの分野の規格委員会をスタートしたこともあり、常に声をかけていただいている。しかし、これはあくまで競争である。我々がぼやっとしていると他の団体に次々と規格を作られかねない。 そこで、「少なくとも2年に1度、できれば毎年、何らかの文書を発行する」ことを議長方針とした。IS(International Standard)という最も格調の高い文書は発行まで3年から4年はかかる。それはそれとして当然狙うとしても、中間成果としてTR (Technical Report)やTS(Technical Specification)という短納期の文書を発行し、つねに我々が世界をリードする状態を作っておきたいのである。 日本が仕掛ける国際標準 さて、話は変わるが、スマートシティーとは別に、現在少なくとも5つの新しい国際標準化分野で、筆者は日本チームの仕掛け人あるいはアドバイザーをしている。その具体的な中身を現段階で明かすわけにはいかないが、後日談はいずれご紹介したいと思う。成功するか失敗するかにかかわらず、得られる経験は読者の皆様にもきっとよい参考になると思うのである。 筆者がこのような活動をすることが可能なのは、所属する会社のビジネスポートフォリオが極めて広く、これらの活動分野でビジネスを拡大する方針を明確に持っており、国際標準化がそのために役立つからにほかならない。現に、よく他社の方から、「うちの会社だったら貴方のような方に給料を出すことは不可能だろう」といわれることがしばしばである。 一方で、実は自社の利益のためだけに努力しているわけでもないということも本音である。自社のビジネス支援が本務でありながらも、CSR(社会的責任)活動の一環として環境保全活動を担う部門にいることがその一因だが、社会全体、とりわけ日本の社会の将来に貢献したいと思っている。前回のグローバル人材の議論にも通じるものである。 ご存じのように今、日本では若者の就職がきわめて困難になってきている。1つの要因は前回述べたように、企業が日本人よりも外国人を雇う傾向が顕在化しているからである。よほど優秀な人は別として、過去の良き時代に較べれば、今は日本の若者が日本の企業に雇われることは難しい。 しかも日本の経済規模は既に中国に抜かれ、世界第3位に落ちてしまった。人口も減少傾向であり、国内市場のコンスタントな拡大は期待できない状況である。つまり仕事そのものが少なくなってきている。 このような状況でこれからの若者はどうやって生きていったらよいのかを、我々中高年は常に考えざるを得ない。私の答えは、日本にこだわらないことである。日本の企業が外国人を雇うならば、外国の企業は日本人を雇ってくれて不思議はない。もちろん国内の外資系企業という手もある。しかし、日本企業の海外進出が活発化していることにも着目したい。 「国内大手企業が事業を海外展開しているが、結局ローカル人材を登用して日本人の働く場はないのではないか?」という反論もよく耳にする。これはその通りである。そうではなくて、日本の若者が活躍できる新しい事業を外国に増やすのである。これは「世界ガラパゴス化」と言ってもよいだろう。日本だけが特殊な社会で、ほかでは成立しないビジネスがたくさんあると言われる。しかし本当にそうだろうか? 一度日本に来て住み慣れてしまうと、母国に戻りたくないという外国人がたくさんいる。私自身も毎年20回を超える海外での滞在を通して、日本独自の社会制度や文化に根差した、きめ細かく高度なサービスの素晴らしさを実感している。これは新しいチャンスととらえるべきではないのか? 世界中が快適な社会に標準化されつつある そして私のできることは何かというと、「国際標準」とそれに伴う「行政へのロビー活動」なのである。国際標準は前回述べたように、個別の製品仕様や技術の規格ではなくて、優れた製品や技術を活かすための社会制度や社会的課題そのものを扱うようになってきている。つまり世界中が快適な社会に標準化されようとしている。 典型的な一例は、ISO TC 260(人材管理)である。これはアメリカが提案して主導している国際標準化活動だが、アメリカ社会における優れた人材を海外で雇用促進する狙いが見て取れる(筆者の個人的見解にすぎないが)。 世界に比較して、ユニークな日本社会の良さはたくさんあり、それを支える仕事がある。この仕事を直接海外に持っていくのは、今は難しい。外国の社会が日本と違いすぎ、市場が受け入れてくれないからである。しかし、国際標準によって世界に日本の優れた社会制度や価値観を普及することができれば、それを担う産業を海外に興し、指導的な役割で日本人が活躍できるだろう。 現在でも、たとえ国際標準が無くても、日本独自の優れたサービスを海外に展開する成功事例は少しずつ出てきている。国際標準の力をつかえば、更なる加速が期待できる。 もちろんこれは日本に限ったことではない。どの国も優れた独自のサービスを国際標準にすれば世界に恩恵を与えることができる。しかし、とりわけ日本における「いわゆる標準化」の取り組みにはこのような視点が欠けていると思える。 個別の製品仕様や技術の規格に比較すると、社会制度やサービス規格の提案に対する理解が得られにくいのが実情だ。この欠けている重要な分野を、私は微力ながら粘り強く国内関係者を説得し、推進していきたいと考えている。 市川芳明 世界環境標準化戦争
世界的に優れるといわれる日本の環境・エネルギー技術。地球環境問題の緩和と経済成長の両面でカギを握る。だが、最終製品の性能や品質だけが世界市場での優位を決するわけではない。その重要な要素として世界標準をとれるかどうかの比重が増している。それは科学とビジネスと行政に通じた交渉を経てはじめて成し遂げられる。環境技術も例外ではない。国際規格づくりや海外の規制対応の前線で活躍する筆者に、世界標準を巡る駆け引きとバトルの実態をリポートしてもらう。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130423/247116/?ST=print 仕事と若者:失業世代 2013年05月02日(Thu) The Economist (英エコノミスト誌 2013年4月27日号) 仕事を持たない世界の若者の数は米国の人口に匹敵するほど多い。 スペインでは25歳未満の若年失業率が57%に達している(写真はマドリードの公共職業安定所前に並ぶ人々)〔AFPBB News〕
「若者は怠けるべきではない。彼らにとって非常にまずいことだ」。マーガレット・サッチャーは1984年にこう述べた。彼女は正しかった。社会における若者の扱いで、彼らを中途半端な状態で放っておくこと以上に悪いことはそうない。 社会に出ると同時に失業手当を受け始める人は、人格形成期にスキルを会得し、自信をつける機会を逸してしまうことから、賃金が低く、その後の人生で失業期間が多い可能性が高い。 しかし今、かつてないほど多くの若者が働いていない。経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、先進国では、2600万人に上る15〜24歳の若者が職にも就かず、教育も訓練も受けていない。 失業中の若者の数は2007年以降、30%増加した。国際労働機関(ILO)は、世界全体で7500万人の若者が仕事を探していると報告している。 世界銀行による調査は、新興国の2億6200万人の若者が経済活動に従事していないと指摘している。統計の取り方次第では、若年失業者の数は米国の人口(3億1100万人)にほぼ匹敵するのだ。 そうした状況には、2つの要因が大きく作用している。まず、西側諸国の長期的な景気低迷が労働需要を縮小させており、年配の労働者を解雇するよりも若者の採用を見合わせる方が容易なことが挙げられる。2つ目は、新興国の中でも人口の伸びが急なのは、インドやエジプトなど、労働市場が機能不全に陥っている国だということだ。 その結果が、南欧から北アフリカを経て、中東、南アジアへと続く「失業の孤」、豊かな世界の景気後退が貧しい世界の若者の反乱と交錯する場所である。中東では既に、若年失業者の怒りが街頭で噴き出している。スペイン、イタリア、ポルトガルでは、先進国で一般的に減少している凶悪犯罪が増加している。これらは若年失業率が驚くほど高い国々だ。 経済成長は雇用を生むか? この問題を解決する最も明白な方法は、再び成長に火を付けることだ。だが、債務に悩まされている世界では、それは口で言うほど簡単ではないし、いずれにせよ、部分的な解決策でしかない。 問題が最も深刻な国々(スペインやエジプトなど)は、経済が成長していた時でさえ高い若年失業率に苦しんでいた。企業は景気後退期を通して、適切なスキルを持った若者が見つからないとこぼし続けた。 こうした状況は、別の2つの解決策の重要性を浮き彫りにする。労働市場改革と教育の改善である。この2つはお馴染みの処方箋だが、どちらも新しい活力とさらなる工夫を凝らして取り組む必要がある。 若年失業は多くの場合、労働市場が硬直化している国で最も高くなる。カルテル化した産業、雇用にかかる高い課税、解雇に対する厳しい規制、高い最低賃金――。これらは皆、若者を街頭に追いやる要因だ。 南アフリカ共和国はサハラ砂漠以南で特に失業率が高いが、同国の労働組合が強力で、雇用と解雇の規則が厳しいことがその一因だ。若年失業の孤に入っている国の多くでは、最低賃金が高く、労働に重税が課せられている。インドには労働と賃金に関わる法律が200近くもある。 このため、若年失業の問題に取り組むうえでは労働市場の規制緩和が重要になる。だが、それだけでは不十分だ。英国は労働市場が柔軟だが、若年失業率が高い。 もっと実績を上げている国々では、政府が苦労している人たちの職探しに積極的な役割を果たしている。先進国で2番目に若年失業率が低いドイツでは、企業が長期失業者を採用した場合、最初の2年間は賃金の一部を政府が負担する。北欧諸国は、若者が就職したり職業訓練を受けられるようにするための「個人別計画」を提供している。 だが、こうした政策は、新興国は言うまでもなく、何百万人もの失業者を抱える南欧で再現するにはコストがかかり過ぎる。より手頃な方法は、経済の中で労働力を必要としている分野を改革することだ。例えば、小企業が免許を取得したり、建設会社がプロジェクトの認可を受けたり、店舗が夜間に営業したりするのを容易にするといい。 過剰な大卒者 OECD加盟国全体では、最初の機会に学校を辞めた人は大卒者に比べて、失業している確率が2倍高い。だが、各国政府は大卒者の数を増やすという確立された政策をただ続ければいいと結論付けるのは賢明ではない。 英国と米国では、高い学費をかけてリベラルアーツの学位を取得した多くの人が、まともな仕事にありつけない。北アフリカでは、大卒者は大卒者以外の2倍の確率で失業している。 重要なのは、人々が教育を受ける年数だけでなく、その中身だ。このことは、科学と技術の学習を拡充するとともに、例えば、職業教育と技術教育の質を高めたり、企業と学校の関係を強化したりして、教育の世界と仕事の世界の隔たりを埋めることを意味する。 長い伝統のあるドイツの職業教育と徒弟制度はまさにこれをやっている。その他の国も追随している。韓国は「マイスター」学校を開校したし、シンガポールは技術大学を後押ししている。英国は徒弟制度の枠を広げ、技術教育の改善に努めている。 隔たりを埋めるには、企業が姿勢を改めることも必要だ。IBMからロールス・ロイス、マクドナルド、プレミアインに至るまで多様な企業が研修プログラムを刷新しているが、従業員を引き抜かれる不安から企業は若者への投資に消極的になっている。 この問題を回避する方法はある。例えば、何社かの企業が大学と協力して訓練講座を企画してもいいだろう。また、技術も訓練にかかるコストを引き下げている。コンピューターゲーム用に設計されたプログラムによって若者は仮想体験ができるようになったし、オンラインコースを使えば、徒弟が実地訓練と学問的な指導を一体化させることも可能だ。 革命を起こすチャンス 若年失業の問題はここ数年、悪化の一途をたどってきた。だが、ここに来てようやく、希望を抱く理由が出てきた。各国政府は教育と労働市場のミスマッチの問題に取り組もうとしている。企業は若者への投資に責任を持ち始めた。技術は教育と訓練の民主化に寄与している。 世界はこの問題の規模にふさわしい教育・訓練革命を起こす大きなチャンスを手にしている。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37708 次の「衝撃と畏怖」を求められるドラギECB総裁 2013年05月02日(Thu) Financial Times (2013年5月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧州中央銀行(ECB)は2日の政策理事会でどんな策を打ち出すのか?〔AFPBB News〕
欧州中央銀行(ECB)が2日の政策理事会で金利を引き下げないとは考えにくい。4月初めに開かれた前回の理事会では、利下げを決める寸前まで議論が進んでいた。 また、それ以降もユーロ圏の失業率は急上昇しており、インフレ率は1.2%という3年ぶりの低水準に落ち込み、ECBの目標値である2%を大きく下回っている。 だが、ECBは金利を下げれば大きな成果が上がるなどという幻想は抱いていない。ドイツにとっては金融政策が既に緩和されすぎていることを、ECBは承知している(カネ回りが良くなったドイツの銀行家たちが無謀な行動に走らないよう祈るばかりだ)。 だが、大半の南欧諸国にしてみれば、政策金利の引き下げが実体経済に及ぶ経路、すなわち「伝達メカニズム」が壊れてしまっているのが実情だ。 主要政策金利の引き下げでは不十分 例えば、イタリアの小企業が現在支払っている借り入れ金利の水準は、ドイツの小企業が5年前まで、つまり2008年後半のリーマン・ショックを受けて世界中の中央銀行が利下げを行う前に支払っていた金利水準と同じだ。これはユーロ圏南部の周縁国の銀行が脆弱であることを端的に示す事実にほかならない。 こうしたことから、仮にECBが主要政策金利を0.25%引き下げて0.5%にしても、苦労している南欧の企業や消費者に対して、ECBはちゃんと配慮しているのだというシグナルを送るだけに終わる。 思いもよらない大胆な政策手段――例えば小規模な企業をECBが直接支援する計画など――を打ち出さない限り、ECBの利下げはマリオ・ドラギ総裁らしからぬ控えめな対応に見えるだろう。 2011年11月の総裁就任以来、ドラギ氏は中央銀行の「衝撃と畏怖」をためらうことなく利用してきた。就任直後には、銀行に対する3年物資金の無制限供給を行い、昨年夏には、ユーロ圏を守るために「必要なことは何でもやる」と大見得を切った。 就任以来、大胆な施策を講じてきたマリオ・ドラギ総裁〔AFPBB News〕
壊滅的な事態は回避されたものの、当のECBは苛立ちを覚えている。 経済を再び成長させ、失業を減らし、かつ欧州通貨同盟の長期的な安定性を確保するためには、ユーロ圏の機関や制度、銀行、経済に大がかりな手直しが必要だ。 ところが、ECBを含む世界各国の中央銀行が講じた施策などのために、最近の金融市場はユーロ圏の政治家に対してかなり寛大になっている。 例えばイタリアでは、明確な勝者が決まらなかった今年2月の議会選挙以降、様々な問題が噴出したにもかかわらず、国債の利回りがここにきて急低下している(価格は上昇)。先週になって新内閣の全容がようやく明らかになったことを受け、イタリア国債10年物の利回りは2010年後半以来の4%割れとなった。2年物の利回りも1.1%という記録的な低水準になっている。 楽観姿勢に転じた投資家 投資家の動きの変化には目を見張るものがある。ユーロ圏の危機が最も厳しい状況にあった時、ドイツの国債利回りと、スペインやイタリアの国債利回りは、一方が低下すれば他方が上昇するという負の相関関係(逆相関)を見せていた。ストレスが加わると、資金は一斉にドイツ国債に避難した。 ところが、HSBCの計算によれば、スペイン国債の2年物、5年物、10年物の利回りは現在、同じ年限のドイツ国債の利回りと正の相関関係にある。 また最近では、イタリアとドイツの国債利回りの相関関係(直近の60日間における相関関係)が負から正に転じている。 投資家は売る理由を探す代わりに、買う理由を探している。重要な理由の1つは、ECBが「リデノミネーション」のリスク、つまり、ユーロ圏の解体で投資金がユーロより弱い国内通貨に転換される危険を取り除いたことだ。 投資家は財政改革についても以前より楽観的に考えるようになっている。政府が緊縮策の緩和に動いたにもかかわらず、国債利回りは低下してきた。緊縮緩和の結果として力強い経済成長が生じ、長期的な債務持続可能性が改善するのであれば、その動きは理にかなう。だが、それには各国政府をひとまず信じる必要がある。 日銀の国債購入プログラムの影響も こうした状況の上にのしかかるのが、日銀が最近開始した国債購入プログラムの効果だ。日本人投資家が外国資産に資金を移すとの期待から、ユーロ圏諸国の国債利回りは一段と低下した。特に大きな恩恵を受けたのがフランスだ。フランスは市場の流動性が高く、ドイツ国債より利回りが高いからだ。 ドラギ総裁は恐らく、ユーロ圏の修復が進んでいる兆候として政府の借り入れコストの低下を挙げるだろうが、過去3年間の経験から言えるのは、ユーロ圏の改革を推進するためには市場の圧力が必要だということだ。 その圧力が今、弱まっている。ユーロ圏の強力な財政・銀行同盟に向けた計画が作られたのは、昨年、スペインとイタリアの国債利回りが7%前後だった時のことだ。以来、進展は大幅に遅くなってしまった。 市場が急に目覚める可能性もある。考えられるきっかけは、日本人投資家が国内にしっかりとどまっているという認識や、例えばスペインに対する信用格付け機関の行動により投資家が再考を強いられる事態だろう。だが、ユーロ圏が長期にわたり債券市場が落ち着いた状態に陥ってしまっている可能性もある。 だとすれば、ユーロ圏経済を蹴飛ばして成長軌道に戻すために新たな「衝撃と畏怖」対策を考え出せという圧力が誰にかかるかは一目瞭然だ。 ドラギ総裁よ、尻込みしてはならない。 By Ralph Atkins http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37706 【第66回】 2013年5月2日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 最新「展望レポート」を読む 日銀は本当に変わったか? ?本コラムでは、日銀の金融政策について、白川日銀から黒田日銀への「白から黒へのオセロゲーム」が行われたことを書いた(第64回、第65回)。 ?そこでキモはデフレ予想からインフレ予想への転換と書いている。これを4月26日に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で確認してみよう。この展望レポートは黒田日銀がはじめて出したもので、旧白川日銀が昨年10月30日に公表したものと比較してみると、その違いが明らかにわかる。 前回レポートとの際立った違い ?まず、分量が少なくなった。旧体制の2012年10月のものと比べると、基本的見解で19ページから8ページ、背景説明を含む全文で126ページから77ページになっている。といっても、内容が薄くなったわけではない。どちらかといえば、旧体制ではどうでもいい資料が多くあったモノを省いて、重要なモノを加えている。 ?例えば、海外のマネタリーベース対GDP比が、白川日銀では掲載されていたが、これは省かれている。この数字は、GDP比の水準で見れば日本が高いというので、日本が金融緩和している証左と日銀関係者が主張してきたものだが、水準の高低は現金社会かどうかを意味するだけで、その変化を見なければいけない。その意味で展望レポートの資料は、ミスリーディングであった。 【基本的見解】という文章でも、新体制と旧体制では変化がある。旧体制では、「国際金融資本市場と海外経済の動向」、「わが国の金融環境」との項目で、ダラダラと現状の記述が続いていたが、新体制ではばっさりと削っている。そして、「わが国の経済・物価の中心的な見通し」と核心部分からスタートしている。このため、前置きなしで日銀の意図がはっきり表れている。 ?特に際立った違いは、中長期的な予想物価上昇率である。新体制では「足もと上昇を示唆する指標がみられる。先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる」とされている。 ?これに対して、旧体制では「市場参加者やエコノミストの見方は振れを均してみれば概ね1%程度で安定的に推移しているほか、家計の見方にも大きな変化はみられず、見通し期間においても安定的に推移すると想定できる」である。新体制が予想に働きかけるのに対し、旧体制ではそうしたことをしていない。 市場の判断を採用 ?インフレ予想を見るときに、@マーケット情報から計測するアプローチ、A家計や企業などに対してサーベイを実施するアプローチの2種類あるが、白川日銀は@は使わずに、Aを使ってきた。 ?@は、物価連動国債を使ったBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率、市場が推測する予想インフレ率を表す)だが、それはあらゆる裁定機会を活用して収益をあげようとする、多様な市場参加者の見方を集約した指標である。いわば身銭を切った取引の結果だ。一方、Aは単なる意見であるので、日銀の意向を見越して答える傾向もある。どちらがより信頼に足り得るか明らかであろうが、白川日銀が使ったのはAだった。これは他国の中央銀行との大きな違いだ。 ?それでも、日銀ポチの市場関係者は、物価連動国債の市場の薄さを強調して、それからのBEIは当てにならないという。それなら、それでも儲ければいいのになぜ実行しないのか不思議だ。さらに、アベノミクス以降、BEIが急上昇しているのは、これまで旧白川日銀が主張してきた市場流動性の下落によるBEIの下落という話と矛盾する。 ?こうした点を踏まえて、黒田日銀では、全体の分量を減らす中で、あらたに「予想物価上昇率」という項目をたてて、物価連動国債のBEIなどで拡充している。白川日銀では、「物価の見方」という項目でアンケート調査などを載せていた。 ?白川日銀は、BEIを毛嫌いしていた。というのは、白川総裁の就任時に、デフレ脱却は無理だと反応して、BEIがマイナスになるなど、白川日銀の金融政策に対してよく反応していたからだ。市場取引のため、日銀の意向とは無関係に反応するので、ある意味で「正直な指標」であるが、それが気にくわなかったのだろう。それで、エコノミストなどの日銀の意向を斟酌してくれるアンケート調査に依存したと思う。まったくせこい話だ。 ?黒田日銀が予想に働きかける政策転換をしたので、「経済や物価の見通し」がまったく違う。2014年度について政策委員の見通しの対前年度伸び率の中央値で見ると、白川日銀では実質GDP0.6%、消費者物価指数(除く消費税増税の影響)0.8%であったのに対して、黒田日銀ではそれぞれ1.4%、1.4%と上方に改定している。 ?こうした数字を見ると、白川日銀は何もやらないことをモットーとしていたと言わざるを得ない。黒田日銀は、普通のことをやるだけなのに、これだけ違っているのだ。 民間エコノミストにも余波 ?黒田日銀は異次元の金融緩和というが、世界から見れば標準的なものだ。それをいまだに異次元というのは単なる理解不足でしかない。それに、劇薬という人もいるが、バーナンキは3回も「劇薬」を飲んで米国経済を復活させたのを知らないのだろうか。 ?そして、最後の「金融政策運営」で、新体制は「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。……日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」とデフレ脱却の決意を語っている。ちなみに、この「15年間」とは、三代続いた日銀出身者による日銀総裁時代である。 ?こうした「白から黒に変わった」日銀によって、変化を余儀なくされているのが、いわゆる日銀出身のエコノミストである。彼らの仕事は、いち早く日銀の情報を入手し、それを雇ってもらっている金融機関に提供することだ。ところが、今回の日銀オセロで、旧白川日銀に依存していた彼らの情報価値は著しく低下してしまった。 ?中には、日銀オセロと同じように変身した者もいるが、逃げ場を失い相変わらず「日銀理論」を振り回す者も少なくない。レジームチェンジは民間エコノミスト業界にも広がっている。異次元の金融緩和とか言う人はいずれ淘汰されるだろう。 http://diamond.jp/articles/print/35303 米ISM製造業景況指数:4月は50.7に低下、市場予想は上回る
5月1日(ブルームバーグ):米供給管理協会(ISM)が発表した4月の製造業総合景況指数は50.7と、前月の51.3から低下した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は50.5だった。同指数で50は活動の拡大と縮小の境目を示す。 原題:ISM Index of U.S. Manufacturing Decreased to 50.7 in April(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net 更新日時: 2013/05/01 23:05 JST 米ADP民間雇用者数:4月は11万9000人増−予想下回る 5月1日(ブルームバーグ):給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが発表した給与名簿に基づく集計調査によると、4月の米民間部門の雇用者数は前月比で11万9000人増加した。ブルームバーグがまとめたエコノミストの予想中央値は15万人の増加だった。 原題:ADP Says Companies in U.S. Hired 119,000 More Workers inApril(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Alexander Kowalski akowalski13@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net 更新日時: 2013/05/01 21:19 JST FRB資産買い入れの縮小局面、MBSよりもまずは国債を見直しか 2013年 05月 1日 18:08 JST トップニュース 4月米ADP民間雇用者数は11.9万人増、予想下回る ギリシャやスペインでメーデーのデモ、緊縮策に反対 ソニー全役員の賞与を返上へ、エレクトロニクス事業の赤字で 米グーグル、英国での法人税逃れ問題で幹部が再び証言へ [ニューヨーク/サンフランシスコ 1日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)当局者らは、資産買い入れにより住宅市場が押し上げられていることに満足しており、債券買い入れプログラムを縮小する際には、モーゲージ担保証券(MBS)ではなく、まずは国債の買い入れを見直す可能性がありそうだ。 FRBが債券買い入れプログラムを縮小させる可能性や時期について憶測が飛び交う一方、FRBがどの資産に注力するかをめぐる議論が政策当局者間で活発化している。 4月30日─5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、現行政策を据え置くとみられている。エコノミストの間では、FRBが月額850億ドルの国債・MBS買い入れ措置(国債450億ドル、MBS400億ドル)を維持するとの見方が大勢だ。 だが、もしも複数のハト派メンバーが行動をとったならば、FRBが買い入れプログラムの縮小を開始する際、まずは国債買い入れを縮小させる可能性がある。同様に、FRBがバランスシートを縮小させるために資産の売却を決めれば、MBSの保有期間が長くなるかもしれない。 複数のタカ派メンバーは、住宅市場の改善がMBS買い入れの縮小につながるとする一方、ハト派メンバーらは大不況期以降、政策の主導権を握っている。 ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、低い住宅ローン金利や住宅価格の反転が量的緩和政策の成功を反映していると考えているうちの1人だ。 三菱東京UFJ銀行のニューヨーク駐在チーフ金融エコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「私は常に、ローゼングレン総裁の見方はFRB議長の見方を映したものとして捉えている。そして議長はまだタカ派に多くの譲歩はしていない」と指摘。「MBSはおそらく住宅市場の強化につながっており、縮小されるのは最後になるだろう」と述べた。 <住宅ローン金利は過去最低近辺に> リッチモンド地区連銀のラッカー総裁といった複数のタカ派当局者も議論の的だ。 彼らは、FRBは特定の経済分野を支援することを目指すべきではないなどと考えており、現在の政策に反対している。信用拡大は市場の役割だという見方だ。エージェンシー保証MBS市場でFRBの存在感が極めて高くなることにも懸念を示している。 国債よりもMBSを買い入れることは、住宅ローン金利を通じて米国民に直接の影響を与えることは間違いない。 フレディマックによると、期間30年の平均住宅ローン金利は先週、過去最低水準近くの3.4%をつけた。FRBが昨年9月に量的緩和第3弾(QE3)の導入を決めた当時は3.55%だった。 効果は出ている。3月の米住宅着工件数は2008年半ば以降で初めて100万戸の大台を突破した。 住宅市場の崩壊は建設業界の雇用を奪うほか、家計の純資産を損なうことで消費に影響を与えるため、住宅市場の活性化は理にかなっている。 <MBS市場にはリスクも> FRBは、毎月発行される国債の約4分の1を買い入れている。 一方で、昨年9月の買い入れ再開以来、FRBは新規に発行されたMBSの約半分を買い入れている。景気が改善し、借り入れコストが上昇してリファイナンスの動きが後退すれば、この割合は上昇し、市場を危険にさらすことにつながる可能性もある。 ニューヨーク連銀で市場の動きを監視しているポッター氏は、こうしたリスクを減らすため、FRBは最も豊富にある証券の買い入れに注力し、たとえリファイナンスの動きが後退しても市場の機能不全を起こさないようにすべきだと指摘する。 ポッター氏は3月、フォーキャスターズ・クラブ・オブ・ニューヨークで、今のところ、FRBの買い入れプログラムで流動性を損なったり、市場を抑制したりしている「証拠はほとんどないようにみえる」と述べた。 ただ、ニューヨーク連銀がウォール街の銀行を対象に最近行った調査によると、大半は、FRBが2014年3月までに、一定の国債買い入れを継続する一方、MBSの買い入れをやめると予想している。 どちらの証券買い入れがより有効なのかをめぐる疑問は、FRBがバランスシートの縮小を決める可能性がある数年内に浮上するだろう。 国債と異なり、MBSは毎月の期限前償還があり、FRBがバランスシートを縮小させると決めれば都合が良くなるだろう。このため、当局者は今のところはMBSを一段と買い入れ、数年は売り急がないと考えている可能性がある。 3月のFOMC議事録では、複数の当局者はMBSの保有が好ましい、または非常にゆっくりと売却することが好ましいと考えていることが分かった。FRBが住宅市場に肩入れする期間は、多くの人が考えているよりも長期化する可能性を意味している。 ( Jonathan Spicer記者、Ann Saphir記者 執筆協力 Albert Duros;翻訳 川上健一;編集 吉瀬邦彦) 関連ニュース 仏10年債利回り過去最低更新、ECB利下げ観測で 2013年5月1日 独連邦債が上昇、予想下回る米GDP統計で逃避買い 2013年4月27日 インフレ低下続けば米FRBの資産購入加速を支持=地区連銀総裁 2013年4月18日 米FRB、雇用の責務をこれ以上重視すべきでない=地区連銀総裁 2013年4月17日 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE94003Y20130501?sp=true |