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インフレ、消費税増税でも生活保護費は引き下げ!? 厚労省が根拠にする「物価下落」のマボロシ
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/517.html
投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 12 日 01:02:33: .WIEmPirTezGQ
 

(回答先: Re: 65歳雇用義務化についてのまとめ 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 09 日 02:29:34)

http://diamond.jp/articles/print/34567
【政策ウォッチ編・第21回】 2013年4月12日 みわよしこ [フリーランス・ライター]

インフレ、消費税増税でも生活保護費は引き下げ!?

厚労省が根拠にする「物価下落」のマボロシ

――政策ウォッチ編・第21回

2013年1月に明らかにされた厚生労働省の生活保護費引き下げ方針は、2013年8月、いよいよ実施されようとしている。前回紹介した厚生労働省・課長会議でも、引き下げは既に決定された方針として、全国の自治体担当課長に伝えられた。

生活保護費引き下げの根拠とされているものの1つは、デフレの影響による物価下落である。予定されている生活保護費引き下げ幅は、物価下落幅に対して妥当だろうか? 一見、自然に見える「物価スライド」という考え方の導入に、問題はないだろうか?

「電気製品なんか買えない」
生活保護当事者の生活実態

 近年の電気製品の価格下落は著しい。特に情報機器では、性能向上やイノベーションと価格下落が同時に起こりつづけているため、「安くなった」という実感が大きい。性能の高い機器を安価に入手できるようになる反面、世の中に求められる最低限のレベルも上昇しつづけるため、買い替えを迫るプレッシャーは強くなる。物欲がそれほど強くない筆者ではあるが、ノートパソコンは概ね2年ごとに買い換えている。

 家電製品の買い替え頻度は、ずっと少ない。この10年間に購入したものは、指を折って数えることができる。洗濯機1台(中古)、冷蔵庫1台(中古)。それから、電子レンジ1台を中古で購入した。電子レンジが故障した後、オーブンレンジ1台をやはり中古で購入したが、すぐに故障した。その次のオーブンレンジは、新品を購入することにした。合計で4品目、購入回数は5回だ。中古品を購入する場合は、新品より寿命が短いこと、トラブル時に誰が補償するわけでもないことが悩みのタネだ。いつも「新品とどちらがトクだろう?」と考えこんでしまう。

 暖房には、主に石油ファンヒーターを利用している。療養のため実家に戻ることにした生活保護当事者が譲ってくれたものだ。冷房には2台のエアコンを利用している。夏場、ノートパソコンのキーボードに汗が落ちるようでは仕事にならない。エアコンはそれぞれ、購入から15年目と11年目になる。収入が不安定な単身フリーランサーの中でも、電気製品を多く購入している方には入らないだろう。

 では、生活保護当事者はどうだろうか? Aさん(東京都・40代男性・単身・傷病者)は次のように語る。

「電気製品? 買えませんよ。不燃ゴミの日に、冷蔵庫や電子レンジを拾ってきたりしてます。本当はいけないんですけど。電源つないだとたんに爆発したりしたらイヤだから、無事に動くかどうか慎重に確認して、使ってます。洗濯機、欲しいんですけど、買えないままなんです。しかたなく、洗濯はコインランドリーでやっています」

 1年ほど洗濯をせず、コインランドリーでの出費を抑えれば、中古の洗濯機なら購入できる。でも、それは不可能であろう。そして、冬場のAさんの悩みの種は、暖房だ。

「今、住んでるアパートは、石油・ガスとも、ストーブが使用禁止なんです。暖房には、電気を使うしかありません。2012年から2013年にかけての冬の寒さは、こたえました。暖房を使わずに寝ていると、夜中、寒さで跳ね起きてしまう日もありました。しかたなく、暖房に電気を使うと、電気代が高くついてしまいます」(Aさん)

 Bさん(東京都・80代男性・単身)は、もとホームレスだったが、高齢によってホームレス生活を続けることが困難になり、生活保護を受給し始めた。生活保護での生活は、18年目になる。

「電気製品? 買ったのはガスヒーター1台だけです。中古で、8000円くらいでした。あとは、譲ってもらったり。新品の電気製品を買うほどの余裕は作れません。電気製品を使えば、電気代がかかります。電気代・ガス代には、高くなった実感があります」(Bさん)

 情報機器といえば、携帯電話くらい。この数年で、その携帯電話が「ガラケー」より割安になったスマートフォンに変わっているかもしれないけれども。一般的な生活保護当事者にとっての電気製品の価格下落による恩恵は、あってもその程度であるようだ。

生活保護世帯の電気製品への支出割合が
一般世帯の1.5倍ってホント!?

 2013年1月27日、厚生労働省が発表した資料「生活扶助基準等の見直しについて」によれば、生活保護世帯において、2008年(平成20年)から2012年(平成23年)にかけ、4.78%の消費者物価下落があるという。このため、生活保護費は引き下げられるべきであるとしている。この「4.78%」の根拠は、厚生労働省が独自に計算した「生活扶助相当消費者物価指数(生活扶助相当CPI)」である。

 確かに、2008年との比較では、2012年の消費者物価指数(CPI)には下落が見られる。2011年を100とした時、2008年は102.1、2012年は99.7となっている。

 この消費者物価指数は、モノやサービス588品目の小売価格から計算されている。もちろん、すべての品目の価格が同様に変動するわけではなく、上昇するものも下落するものもある。また、すべての品目が、毎年・どの世帯でも同様に購入されるわけではない。たとえば2008年から2012年にかけ、ノートパソコンには-73.0%、冷蔵庫では-45.9%の価格下落が見られるのに対し、たばこは38.4%、ジャガイモは31.3%の価格上昇となっている。もちろん、世帯によって、それらの物品の必要性や購入頻度は異なる。消費の実情に合わせて、多く購入される品目は大きな比率で、少なく購入される品目は少ない比率で足し合わせる(ウエイト付けする)ことで、妥当性のある消費者物価指数が求められる。

 もちろん厚生労働省も、消費実態に対する一定の考慮は行なっている。たとえば生活保護世帯では、家賃に対しては住居扶助・医療に対しては医療扶助があり、自動車の保有・維持は原則として禁止されている。このため、前述の厚生労働省資料では、家賃・医療費・自動車価格・ガソリン価格等が除外されている。


2013年4月9日、厚生労働省において行われた勉強会。山田壮志郎氏(中央)のレクチャーを中心に、メディア関係者等が「生活扶助相当CPI」の詳細について学んだ。左側はNPO「もやい」の稲葉剛氏、右側は弁護士の宇都宮健児氏
 山田壮志郎氏(日本福祉大学准教授・社会福祉学)と白井康彦氏(中日新聞記者)は共同して、2013年2月26日に参議院において行われた政府答弁をもとに、厚生労働省の生活扶助相当CPIの妥当性を検証した。この政府答弁においては、各品目の価格変動が挙げられた。また、生活扶助相当CPIの計算において除外された26品目と各々のウエイト、生活扶助相当CPIの計算において用いられたウエイトが一般世帯のCPIを求める場合と同じであったことが明らかにされていた。

 山田氏と白井氏は、特に電気製品に注目した。特に電気製品で、価格の下落幅が大きいからである。

 結論は驚くべきものであった。山田氏らの検証によれば、厚生労働省の生活扶助相当CPIの計算において、生活保護世帯の家計支出に占める電気製品の割合は4.19%だったのである。ちなみに、一般世帯では2.68%である。

 もともと支出できる金額の総額が「最低生活費」という形で抑制されている生活保護世帯の場合、生活必需品である冷蔵庫・洗濯機・携帯電話などを購入した場合、支出に占める比率が高くなる可能性はある。それにしても、「一般世帯の1.5倍以上」という結果を納得するのは容易ではない。

生活保護受給者になると
電気製品は、ほぼ購入できない

 山田氏らは、175名の生活保護当事者を対象に、電気製品の購入状況に関するアンケートを行った。アンケートは短期間に行われたため、「関西・中京地域が多い」「単身世帯が多い」「平均年齢が65.3歳、若年層は少ない」など、若干の偏りがある。また、主に貧困問題の当事者・支援者団体を通じてのアンケートだったため、ときおりセンセーショナルに報道される、

「生活保護なのに、なぜか高価な大画面液晶テレビを持っていて、働けるのに働かずにTVを見てばかり」

 というタイプの当事者は含まれていないと考えられる。一般に、ギャンブル等への依存・不正受給などの問題を抱えた生活保護当事者が、問題を解決しないまま、そのような団体で居場所を持ちつづけることは困難である。そもそも、そのような人々は、生活保護当事者全体の中では「珍しい」といってよいほどのマイノリティだ。


「生活扶助相当CPI」の問題点について語る、山田壮志郎(やまだ・そうしろう)氏。ホームレス問題を中心に、社会福祉論を研究している
 では、アンケート結果はどのようであっただろうか? 生活保護当事者たちは、生活保護受給を開始した後、「ほとんど」と言ってよいほど、電気製品を購入していないのである。

 生活保護当事者175名のうち10%以上が「購入したことがある」と回答した品目は、テレビ(32.0%)、電気冷蔵庫(19.4%)、電気掃除機(17.1%)、冷暖房用器具(16.6%)、電気炊飯器(15.4%)、全自動洗濯機(13.7%)、電子レンジ(13.1%)、電気ポット(10.9%)であった。このうち、少なくとも冷蔵庫・掃除機・冷暖房器具・炊飯器・洗濯機・電子レンジは、「生活必需品」といってよいであろう。しかし、これらの品目においてさえ、生活保護受給開始後に購入していない人々が80〜90%を占めるのである。

 山田氏らはさらに、「各自が何品目を購入したか」に注目した。最も多かったのは、「0品目」の33.1%であった。0品目・1品目・2品目を購入した人々が、全体の74.2%を占めた。ちなみに、生活保護当事者175名の保護開始からの期間は、平均で5.9年であった。約6年で、2品目の電気製品を購入するのがやっと。このことを考慮して山田氏らが計算を行うと、支出に占める電気製品の割合は、0.82%となった。厚生労働省の「生活扶助相当CPI」での「4.19%」に対し、約5分の1である。生活保護当事者たちが主に中古品を購入しているとすれば、さらに少なくなる可能性がある。

インフレと消費税増税が予定されているのに
生活保護基準は引き下げ?

 問題は電気製品だけではない。必要欠くべからざる電気製品を必要最小限といえども使用すれば、電気料金がかかる。もちろん、人間は電気製品だけで生きているわけではない。水も食料品も必要だ。社会生活を営むためには、身だしなみも重要だ。ゼイタクはできないとしても、小ざっぱりした外見は必要だ。

 ところが消費税率は、2014年に8%、2015年に10%へと上昇することが決定されている。また、「アベノミクス」の「インフレ・ターゲット2%」が実現すれば、物価は少なくとも2%上昇することになる。それに加えて、円安の影響もある。原油価格も高騰しつつある。さらに昨今、北朝鮮をめぐる国際情勢が緊迫しつつある。北朝鮮情勢は、少なくとも、物価を下落させる方向には影響しないだろう。

 もし、生活保護基準の引き下げが見送られたとしても、消費税増税とインフレによる物価上昇だけで、生活保護当事者の生活には、概ね11%の生活保護費削減と同等の打撃が加えられる。政府によって物価上昇が予定されているところに、同じ政府が、物価下落を理由として、生活保護基準を引き下げる。激しい矛盾を感じるのは、筆者だけではないだろう。

 生活保護当事者だけが打撃を受けるわけではない。生活保護基準が引き下げられれば、「中流の下」以下の層では、収入の上昇が見込みにくくなるだろう。最低賃金は、生活保護基準とリンクしているからだ。もちろん、物価上昇はどの層にも何らかの影響を及ぼす。

 結局は、ほとんどの層でも消費が冷え込むことになり、内需が縮小する。高所得層も含めて、誰に対しても肯定的な影響は考えられない。しかも、根拠はまったく不明。これが、現在予定されている生活保護基準引き下げだ。

「物価スライド」の導入は
そもそも妥当なのか

 ここで問題となりうるのは、

「物価が下落すれば、年金はスライドして減額される、なのに生活保護費は」

 という年金との比較である。しかし、そもそもの問題は、老齢基礎年金などの基礎年金が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障できていないことである。しばしば聞かれる、

「基礎年金が生活保護費より低いから、生活保護費は引き上げられるべきだ」

 という声には、

「生活保護費はそのままにしておいて、基礎年金を引き上げるべき」

 と答えるしかない。そもそも、年金制度と生活保護制度は、別の制度である。生活保護基準に関して、「物価スライド」という方式が持ち込まれたことは、過去に一度もない。

 生活保護基準は、5年に1回、生活保護基準部会での検討にもとづいて改定される。実際の支給金額である最低生活費は、毎年、厚生労働大臣が社会経済情勢などを考慮して定めている。物価変動の影響は、この時に反映される場合がある。根拠となっているのは、厚生労働大臣の裁量権である。

 2012年は、5年に1回の基準改定の年であり、厚生労働省においては基準部会での検討が行われた。基準改定は、基準部会での検討を反映して行われるはずである。基準引き下げにおいては、基準部会での統計的検討が、一応は「根拠」とされた。

 しかし、2013年1月に公開された基準部会報告書には、「今後、生活保護基準を定める際には、物価スライド方式とすることが望ましい」とは一言も書かれていない。それどころか、2012年から開催された今回の基準部会では、方式の見直しに関する議論は全く行われていないのである。

 生活保護基準を定める際、過去に採用された方式には、

・マーケット・バスケット方式(1948年〜1960年)
・エンゲル方式(1961年〜1964年)
・格差縮小方式(1965年〜1983年)
・水準均衡方式(1984年〜現在)

 の4つがある。それぞれ、異なる考え方に基づいており、導入に際しては慎重な議論が行われた。なおかつ、新しい方式の採用に際しては、以前の方式との連続性が慎重に考慮された。どの方式にも一長一短や限界があり、

「生活最低限を定めるためには、この方式で万全」

 という段階には達していない。未だ、「生活最低限」をどう捉えるべきかに関する研究が続けられている状況だ(本連載 政策ウォッチ編・第8回参照)。

 山田氏は、今回の物価スライドによる生活保護基準引き下げに関して、

「厚生労働大臣の裁量権を逸脱しているのではないかと考えています」

 という。

 なお、2013年4月9日、主にメディア関係者を対象とした勉強会で、山田氏らは一連の検討の結果を発表した。この時に使用された資料は、


https://skydrive.live.com/?cid=3275c9db8e03fd84&id=3275C9DB8E03FD84%21245
生活扶助相当CPIの問題点―生活保護世帯の消費実態を反映しない物価指数―
山田壮志郎
日本福祉大学
反貧困ネットワークあいち
2013年4月9日
デフレを理由とする生活保護基準大幅引き下げのカラクリを学ぶ勉強会的記者会見


生活扶助基準引き下げに関する厚生労働省の考え方
平成25年8月から平成27年度までの3年間で生活扶助費を
670億円削減する(うち平成25年度は150億円)
90億円
580億円
(内訳)
→ 社会保障審議会生活保護基準部会による検証結果を踏まえた削減
→ 前回の基準見直し時(平成20年)からの物価下落を反映させた削減
【平成20年と平成23年の消費者物価指数(CPI)の比較】
◆総合物価指数では102.1→99.7=▲2.35%
◆生活扶助相当CPIでは104.5→99.5=▲4.78%
生活扶助相当CPI→生活扶助からは支出されない品目を除外してCPIを
算出したもの(例:自動車費用を除外、診療代を除外)
生活扶助も4.78%引き下げ→ 580億円の削減
物価下落と生活扶助の関係は基準部会で議論されていない
「生活扶助相当CPI」も厚生労働省の独自作業で妥当性の検証なし


消費者物価指数(CPI)の決まり方
◆CPI=当該年度のモノやサービスの小売価格(588品目)について、
基準年を100として指数化※現在の基準年は平成22年
例)平成23年平均の総合CPIは99.7=基準年(平成22年)に比べて0.3ポイント下落
◆ただし、品目によって下落幅は異なる 

特に大きい電機製品の物価下落
物価下落率トップ10        物価上昇率トップ10
デスクトップパソコン〈養〉-74.7%  たばこ〈諸〉38.4%
ノートパソコン〈養〉-73.0%     ジャガイモ〈食〉31.3%
ビデオレコーダー〈養〉-68.7%    タマネギ〈食〉30.5%
カメラ〈養〉-68.0%          即席スープ〈食〉24.3%
テレビ〈養〉-66.4%          うなぎ蒲焼き〈食〉13.4%
ビデオカメラ〈養〉-55.4%     ホウレンソウ〈食〉13.3%
洗濯乾燥機〈家〉-55.3%     ピアノ〈養〉12.9%
電気冷蔵庫〈家〉-45.9%     学習参考教材〈育〉12.7%
電子レンジ〈家〉-41.1%     白菜〈食〉12.2%
全自動洗濯機〈家〉-38.7%     傷害保険料〈諸〉11.8%

【生活扶助相当CPIに含まれる品目の平成20年→平成23年の物価変動率】

 http://mainichi.jp/select/news/20130410k0000m040023000c.html
生活保護費:「切り下げは不当」NPOなどが政府方針批判
毎日新聞 2013年04月09日 19時16分

 生活保護費を切り下げる政府の方針について、弁護士やNPO関係者らでつくる生活保護問題対策全国会議が9日、東京都内で記者会見し、「受給者の消費実態を反映していないのは不当」として、切り下げを前提とした13年度予算案の撤回を訴えた。

 厚生労働省は消費者物価指数の日常生活費相当分が過去3年で約5%下がったことなどを根拠に、生活費分の保護費を3年で670億円切り下げる方針。

 だが、日本福祉大の山田壮志郎准教授らの調査によると、受給者の大半は洗濯機や掃除機、冷蔵庫などの「生活必需品」を購入していなかった。山田氏は「実態を見ない切り下げは問題だ」と主張した。厚労省は「恣意(しい)性を排除し、制度の連続性を重視した結果だ」としている。【遠藤拓】

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生活保護費不正受給の男に懲役2年実刑判決(鹿児島県)
日テレNEWS24-2013/04/10
妻に収入があることを隠し、不正に生活保護費を受け取っていたとして詐欺の罪に問われていた男に対し、鹿児島地方裁判所は、懲役2年の実刑判決を言い渡した。判決を受けたのは、鹿児島市坂之上の無職、四本幸嗣被告(46)判決による ...


 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-09/2013040901_05_1.html
2013年4月9日(火)
主張

物価上昇と生活保護削減

暮らしを壊す“あべこべ政治”



 物価引き上げ目標を掲げる安倍晋三内閣のもとで、所得の増えない国民の暮らしが置き去りにされる危険が現実のものになっています。とくに収入の手段を失った生活保護受給者をはじめとする低所得者への影響は計り知れません。

 そんななか安倍内閣は過去最大の生活保護費削減を実行しようとしています。物価が上がれば、たとえ同じものを買ってもお金が余計にかかるのに、肝心の保護費が削られては、暮らしはいよいよ立ち行きません。こんな逆行した政治は許されません。

崩れる「削減」の理由

 安倍内閣の生活保護費削減の中心は、毎日の暮らしに欠かせない食費や光熱費など生活扶助費の削減です。審議中の今年度予算案に8月から3年かけて670億円も削る方針を盛り込みました。

 削減対象は生活保護世帯の9割以上にのぼり、その多くは子どものいる世帯です。月2万円もカットされる子育て世帯もあります。いまでも経済的理由によって勉学中断や進学断念に追い込まれる子どもが少なくありません。扶助費の大削減は、貧困が子どもたちの未来を奪う、本来あってはならない事態に拍車をかける暴挙です。

 扶助費の削減には、なんの道理もありません。厚労省は、削減する総額670億円のうち580億円分は、消費者物価指数の動向を機械的に当てはめ、“物価が下がった分が反映されていないからその分を削る”と説明しています。

 これは生活保護世帯の実態を無視したものです。価格が大きく下がったのはもっぱらパソコンやテレビなど経済的に余裕がある世帯が購入できる品目です。生活保護世帯にもっとも深く関係している食料品や衣料品などの下落幅は非常に小さく、光熱水費などは、むしろ上昇しています。現実からかけ離れた数字を根拠に削減を強行することはあまりに乱暴です。

 「アベノミクス」と称する経済対策によって生活保護世帯をはじめとする低所得世帯はすでに苦境に立たされつつあります。円安による輸入品価格押し上げは、この冬の灯油代高騰を引き起こし、各地で悲鳴があがりました。今後次々と実施される小麦や食用油など生活必需品の値上げラッシュ、電気代の引き上げが生活苦にますます追い打ちをかけるのは必至です。

 いまもギリギリの生活を強いられているのに、物価上昇によってさらに節約が迫られることになれば、食事や冷暖房を我慢するなどして、健康を害する生活保護世帯が続出しかねません。08年度の予算編成のとき厚労省は「原油価格の高騰」を配慮して生活扶助費削減を行いませんでした。現在は、当時よりも物価の上げ幅が大きくなろうとしています。それにもかかわらず「削減ありき」で強行するのは理不尽です。深刻な犠牲を生まないためにも生活扶助費削減の中止を決断すべきです。

改悪許さぬたたかいを

 生活扶助費削減は受給者だけの問題ではありません。扶助費基準が最低賃金や就学援助、住民税非課税など暮らしにかかわる制度の「目安」だからです。政府も保護費削減が各制度に波及することを認めています。急激な物価高騰もいわれるなか暮らしを支える制度を改悪することは、まさに“あべこべ”です。生活保護改悪を許さないたたかいが急がれます。

社会保障
政治
 

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コメント
 
01. 2013年4月13日 01:43:37 : xEBOc6ttRg
平成 24 年度海外行政実態調査報告書

社会保険未納・未加入に関する研究:スウェーデン及びドイツを事例として

A Study on Nonpayment of Social Insurance Contributions: The Cases of Sweden and Germany

特別研究官 宮里 尚三(日本大学経済学部准教授)

平成 25 年 3 月

調 査 課はじめに

わが国の社会保障制度では社会保険で運営されている割合が約 9 割と非常に高い比率と
なっているが、国民年金や国民健康保険の未納・滞納が深刻な問題となっている。直近の
国民年金と国民健康保険の納付率は、国民年金保険で 57.2%、国民健康保険で 88.01%と
なっている。これら社会保険料の未納について経済学的な視点の他にも行政組織の形態の
違いなどの影響等も考察の必要があると思われる。

まず、経済学的な観点からは社会保険の未納・未加入に対して逆選択というのが一つ重
要な視点になるが、経済学的な分析については宮里(2013)で分析を行っている。一方、
社会保険の未納や滞納、あるいは未加入について徴収方法の違いも影響を与えていること
が考えられる。国外に目を向けると同じ社会保険方式をとっている国々でも保険料の未
納・滞納率や未加入率の差がある。実際に今回、実地調査を行ったスウェーデンとドイツ
においては、スウェーデンの場合、公的年金についての未納や未加入があまりないのに対
し、ドイツにおいては公的年金や公的医療保険への非加入が比較的高い。なお、スウェー
デンやドイツにおける未納や未加入(ドイツにおいては非加入)の問題は後述するように
自営業者がその対象となる。同じ社会保険という枠組みをとっていても国による未納や未
加入率の差が大きく出てくる背景には、社会保険に加入することによるメリットの大きさ
の他に、やはり保険料の徴収方法といったことの違いも影響していると考えられる。本稿
では調査課の岡本喜代志研究企画官と共に 2012 年 11 月に訪問したスウェーデンとドイツ
の実地調査をもとに、両国における社会保険の未納、未加入(非加入)について両国の社
会保障制度、社会保険の徴収方法、さらに労働市場の変化等の社会経済状況と関連させな
がら考察を深めることにする。

本稿ではまず日本とは異なり社会保険の未納・未加入がそれほど深刻ではないスウェー
デンについて主に社会保障制度への加入のメリットや社会保険の徴収方法などについて検
討を行う。次に、社会保険の非加入が深刻になりつつあるドイツについて、主に労働市場
の変化や社会保険の徴収方法について検討を行う。それらの検討を行った後に、簡単にス
ウェーデン、ドイツ、日本における社会保険の未納・未加入(非加入)について比較検討
を行い、日本への示唆を考える。

最後に、本報告書における見解は筆者個人に属するものであり、会計検査院の公式見解
ではないことを付記しておきたい。本調査の実施にあたっては、国内外の様々な関係機関
の方々の協力を得た。この場を借りて関係者各位に御礼申し上げる次第である。また、今
回の調査に際して様々な支援と協力を賜った会計検査院とその職員の方々に対しても御礼
申し上げたい。

目 次
1-1 スウェーデンの社会保障の現状..................................................................................................- 1 -
1-2 両親手当 ..........................................................................................................................................- 3 -
1-3 児童手当 ..........................................................................................................................................- 5 -
1-4 スウェーデン年金制度 ..................................................................................................................- 7 -
1-4-1 みなし確定拠出年金制度(NDC:Notional Defined Contribution)の概要.................- 7 -
1-4-2 自動均衡機能...........................................................................................................................- 8 -
1-4-3 最低保障年金...........................................................................................................................- 9 -
1-4-4 日本の公的年金との比較.....................................................................................................- 11 -
1-5 スウェーデンにおける社会保障に関する負担........................................................................- 12 -
1-6 スウェーデンの社会保険給付・徴収に関する行政組織........................................................- 13 -
1-7 スウェーデンにおける租税回避や脱税....................................................................................- 19 -
1-7-1 租税回避や脱税について.....................................................................................................- 19 -
1-7-2 租税ギャップの評価.............................................................................................................- 20 -
1-8 スウェーデン会計検査院による社会保障の検査....................................................................- 21 -
1-9 スウェーデンの社会保険と未納・未加入について................................................................- 24 -
2-1 ドイツの社会保障の現状 ............................................................................................................- 26 -
2-2 ドイツ年金制度 ............................................................................................................................- 26 -
2-3 自営業者の適用範囲 ....................................................................................................................- 28 -
2-4 ドイツ労働市場の変化 ................................................................................................................- 29 -
2-5 年金制度への財源移転 ................................................................................................................- 33 -
2-6 ドイツの医療保険の特徴 ............................................................................................................- 34 -
2-7 法定医療保険 ................................................................................................................................- 36 -
2-8 法定医療保険の支出構造や改革................................................................................................- 38 -
2-9 ドイツの社会保険と未納や非加入について............................................................................- 40 -
3 まとめ................................................................................................................................................- 42 -
【参考文献】..........................................................................................................................................- 44 -
【付録 調査日程】..............................................................................................................................- 45 -- 1 -

1-1 スウェーデンの社会保障の現状

スウェーデンの社会保障制度の特徴は、より広範で高水準の保障を提供していることが
挙げられる。年金、児童手当、傷病手当などは国の事業として現金給付で実施されている。
一方、保健・医療サービスは、日本の県に相当する広域自治体のランスティングが主な供給
主体となっている。福祉サービスに関しては、日本の市町村に相当する基礎的自治体のコ
ミューンが主な供給主体であり、高齢者福祉サービスや障害者福祉サービスなどが実施さ
れている。なお、2011 年におけるスウェーデンの社会保障給付費は 9936 億 8700 万クロー
ナで対 GDP 比でみると 32.9%となっている。
また、スウェーデンの社会保障制度は主に家族・児童に関する経済的保障、傷病・障害
に関する経済的保障、さらに年金などによる高齢者に関する経済的保障に分けることがで
きる。スウェーデンの社会保障制度において、高齢者に関する経済的保障の代表である公
的年金に関してはスウェーデン年金庁が管理しており、家族・児童に関する経済的保障や
傷病・障害に関する経済的保障に関しては社会保険庁が管理する体制となっている。ここ
で、スウェーデン社会保険庁“Social Insurance in Figures 2012”によると 2011 年における
老齢年金を除いたスウェーデンの社会保障に関する給付費は約 2090 億クローナとなって
おり、GDP 比で 6%となっている。内訳については表 1 に示されているとおりである。2090
億クローナのうち、約半分程度が障害・傷病に関する給付であり、1/3 程度が家族・児童
に関する給付である。残りが業務管理費やその他の給付となっている。家族・児童に関す
る経済的保障の中で金額が大きいのは両親保険や児童手当である。なお、両親保険とは、
育児休業時における収入補てん制度であり、両親合計で 480 日まで育児休暇を取ることが
でき、最初の 390 日に関しては賃金の 80%が保障され、残りの 90 日に関しては定額の補
償がされる。この潤沢な子育て支援はスウェーデンの社会保障制度の特徴ともいえよう。
ここで、日本における子育て支援を考えると、民主党政権で所得制限なしの子ども手当が
創設されたが、2012 年 3 月 31 日で廃止され、これまでの子育て支援のメインだった所得
制限のある児童手当に戻ることになった。スウェーデンの場合、両親保険は原則的には所
得制限はなく、また先でみたように給付も手厚い。したがって、若い世代においても、社
会保険に加入するメリットが大きいように思われる。一方で日本の児童手当には所得制限
があったり、また社会保障全体を通じた若年層への支援が手薄だったりすることなどもあ
り、若者にとってメリットのある社会保障制度とは言いにくい。
次に傷病・障害に関する経済的保障の中で金額が大きいのは傷病年金・活動年金である。
傷病年金・活動年金は日本の障害年金に相当するものである。なお、活動年金は 19 歳から
29 歳を対象とした有期給付であり、傷病年金は 30 歳から 64 歳を対象とした無期または有
期の給付である。傷病・障害に関する経済的保障については、傷病手当や家族介護手当も
比較的金額が大きい。なお、傷病手当は病気等による所得の低下に対する手当であり、家
族介護手当は介護を行うことによる所得の低下に対する手当である。前述の通り老齢年金
を除いた社会保障給付のうち傷病・障害に関する経済的保障は約半分を占めており、ス
ウェーデンにおいては、傷病や障害に伴う所得の低下に対する補償が手厚いことが分かる。- 2 -
表 1 スウェーデンの社会保障に関する給付(老齢年金を除く)
制度別給付
100 万クローナ 2009 2010 2011
家族・児童に関する経済的保障
両親保険 25,224 26,488 27,448
一時的両親手当 4,641 4,852 5,392
妊娠手当 522 525 503
児童手当 23,364 23,731 24,140
住宅手当 3,372 3,493 3,342
児童扶養手当 2,789 2,766 2,849
養子縁組手当 29 28 22
その他 3,645 3,550 3,415
小計 63,586 65,433 67,112
傷病・障害に関する経済的保障
傷病手当 20,628 18,449 21,195
リハビリ手当 2,140 1,990 2,575
介助者手当 90 115 144
歯科手当 5,503 4,897 4,957
傷病年金・活動年金 67,804 60,597 53,627
年金受給者特別住宅手当 4,467 4,698 4,604
障害手当 1,242 1,226 1,244
労災保険 5,156 4,587 4,240
自動車補助 222 259 261
家族介護手当 21,753 23,188 24,286
その他 1,615 1,585 1,407
小計 130,620 121,592 118,538
その他の給付
活動補助 10,293 16,157 15,364
徴兵手当 3 0 0
徴兵家族手当 29 31 19
その他 19 21 273
小計 10,344 16,209 15,656
業務管理費 7,447 7,406 7,577
総計 211,998 210,640 208,882
出所:スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”
その他、上述の老齢年金を除いた社会保障に関する給付に占める業務管理費は 3.5%程
度で推移している。また、社会保障給付の対 GDP 比は 2011 年で 6%と述べたが、80 年代
は 8%から 10%で推移していた。90 年代になると、社会保障給付の対 GDP 比は社会保障
改革の影響をうけ次第に低下し 90 年代後半には 6%近くに低下する。その後はやや上昇し
2000 年代初頭は 7%から 8%程度で推移する。しかしながら、それ以降は再度、対 GDP 比
は低下し、2011 年は 6%と過去 30 年で最も低い水準となっている。
次に高齢者に関する経済的保障の代表である公的年金の給付に関しては、表 2 のように
なっている。2008 年における公的年金給付は約 2000 億クローナとなっており、前述の表 1
に示した家族・児童に関する経済的保障や傷病・障害に関する経済的保障、それにその他- 3 -
の給付を足し合わせた額と同程度となっている。スウェーデンでは 1999 年に公的年金改革
が行われ、これまでの伝統的な確定給付をみなし確定拠出年金へと変更した。みなし確定
拠出年金は賦課方式ではあるが、保険料を原則的に固定し、また経済や人口構造、平均寿
命等の変化に合わせて給付を自動的に調整する仕組みが組み込まれている。さらに、個人
の支払った保険料は仮想的にではあるが個人の口座に年金保険料が積み立てられていくよ
うな形で記録されていく。それゆえ、新年金制度は原則的には負担と給付が一致する所得
比例年金となっている。新年金制度による給付は制度導入から日が浅いこともあり、公的
年金給付全体に占める割合は 1 割程度とまだ小さい。一方、1999 年の制度導入時にすでに
退職していた人はそのまま旧制度から支給され、またこれまで旧制度に保険料を払ってい
た人は、払った部分に関しては旧制度から支給されることになっている。そのため、現時
点では旧制度からの支給のほうが約 9 割と大部分を占めている。
表 2 スウェーデンの公的年金に関する給付
公的年金給付
100 万クローナ 2007 2008
旧年金制度(ATP) 170,491 177,350
新年金制度(Inkomstpension) 15,129 21,832
小計 185,620 199,182
EU 共同体への支出 33 24
総計 185,653 199,206
出所:スウェーデン年金庁資料
一方、スウェーデンの医療は、社会保険ではなく税方式で運営されている。また、提供
主体であるが、基本的にはランスティングと呼ばれる日本の県に相当する広域自治体が医
療施設を設置、運営している。医療にかかる費用は住民税等のランスティングの税収及び
患者一部負担によって賄われる仕組みとなっている。
1-2 両親手当
両親保険により支給される両親手当は、出産後や養子縁組後に子供一人当たりで最大
480 日間、親に給付される。そのうち、390 日間の支給は所得比例的に給付される。ただし、
所得の低い親の場合、基礎的な両親手当として、一日当たり定額の 180 クローナが給付さ
れる。残りの 90 日間に関しては、所得が高くても低くても、一日当たり定額の 180 クロー
ナが給付される。子供に対する連帯保護義務を持つ、それぞれの親は、両親手当をそれぞ
れ半分ずつ付与されている。つまり、夫と妻とで半分ずつ付与されていることになる。な
お、60 日間を除いて、それぞれの親は、自らの両親手当の権利を、もう一人の親(一般的
には配偶者)に自由に権利を移すことができる。その他、給付を一日の 1/8 分、1/4 分、1/2
分、3/4 分、あるいは、まる一日分と分割することも可能である。また、両親手当は一般
的に子供が 8 歳、あるいは小学校の 1 年を終わるまで支給が可能である。給付は所得を条
件とした傷病手当の 80%を下回り、また定額給付の 10 倍を超えるものとはならないとい- 4 -
う条件がある。両親手当は、日本にはない制度であり、スウェーデンの子育て支援の充実
が分かるものであるが、給付水準もさることながら、給付を一日の 1/8 分や 1/4 分などに
分割することもでき、使い勝手の良い制度になっている。この点も、スウェーデンにおい
ては若年層でも社会保障制度に加入するメリットをより強く感じることに寄与しているの
かもしれない。
ここで、スウェーデン社会保険庁(2012)の統計によると、2011 年の両親手当の受給日
総数は 5000 万日以上になっているが、1990 年代はスウェーデンの少子化進行の影響で、
受給日総数は低下していた。その後、2000 年代からの出生率の回復に伴い、受給日総数は
2000 年代に入り上昇に転じている。一方で、その間の両親手当の日数や給付の水準につい
てはほとんど変化はなかった。なお、2011 年時点では、両親手当の受給者の 76%が女性と
なっている。男性に関しては 1996 年は両親手当の受給者の 11%だったが、2011 年は 24%
と、この期間は着実に上昇している。
表 3 には両親手当を受けている子供の数や、子供全体に対する両親手当を受けている子
供の比率が子供の年齢別で示されている。両親手当を受給している子供の数は、女児で約
31 万人、男児で約 33 万人となっている。また、8 歳以下の子供全体に対して両親手当を受
けている子供の割合は女児、男児ともに 65%となっている。また、その比率でみると、最
も比率が高いのが 1 歳児で女児、男児とも 96%が両親手当を受けている。次に高いのが 0
歳児で 89%となっている。その比率は基本的には子供の年齢が上がるにつれて低下し、8
歳児になると、女児で 52%、男児で 51%となっている。とはいえ、8 歳児でも約半分以上
は両親手当を受給していることから、出産後すぐに 480 日の両親手当を全て使い切ってい
るわけではないようである。
表 3 両親手当を受けている子供の数、比率(2011 年)
子供の数
両親手当を受けている
子供の比率(%)
子供の年齢 女児 男児 女児 男児
0 48,749 50,971 89 89
1 54,783 57,865 96 96
2 40,820 43,613 74 74
3 29,984 32,074 55 55
4 27,909 29,993 52 52
5 27,732 29,056 52 51
6 28,234 29,625 54 54
7 29,313 30,728 57 56
8 26,390 27,522 52 51
合計 313,914 331,447 65 65
出所:スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”- 5 -
表 4 両親手当の受給者数、日数、給付額(2011 年)
受給者の数 平均日数 1 日当たり平均額
(クローナ)
親の年齢 女性 男性 女性 男性 女性 男性
?19 1,640 60 173 71 184 206
20?24 23,585 3,926 157 46 286 448
25?29 68,815 27,304 131 44 409 557
30?34 119,293 73,606 104 43 504 629
35?39 119,076 102,598 77 37 519 651
40?44 56,397 70,772 57 32 486 627
45?49 13,151 29,836 39 31 426 593
50?54 1,200 8,178 38 32 395 568
55? 73 3,149 44 39 284 500
合計 403,230 319,429 95 37 459 620
出所:スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”
2011 年の両親手当給付総額は 274 億クローナとなっているが、そのうちの 70%が女性の
親に 30%が男性の親に給付されている。表 4 には両親手当の受給者数、平均日数、平均給
付額が親の年齢別で示されている。受給者数が最も多いのは女性で 30 歳から 34 歳、男性
で 35 歳から 39 歳となっている。また、平均的な給付額は男女の賃金格差を反映したもの
となるため、男性のほうが女性よりも高いものとなっている。さらに、両親手当の平均受
給日数に関しては、19 歳以下の親で最も高く、親の年齢が上昇するにつれて、平均受給日
数は低下している。
1-3 児童手当
スウェーデンの児童手当は、一般的な児童手当のほかに延長された児童手当、大家族補
助も含めて児童手当と呼ばれている。その児童手当は、スウェーデンに住む児童が 16 歳に
なるまで親に給付される。なお、子供が義務教育あるいはそれに相当する教育の期間中、
親は児童手当を受け取ることができる。また、スウェーデンの児童手当に所得制限はなく、
全児童の親に給付を受ける資格がある。新しく児童を持つ親は児童手当を、夫が受給する
か妻が受給するかを選択することができる。デフォルトとしては、妻が受給するというこ
とに設定されている。また、妻と夫が一緒に住んでいない時は、児童手当をそれぞれ半分
ずつ受給することもできる。一般的な児童手当、延長された児童手当、子供 2 名以上で就
学手当などを受けている親は大家族補助も受けることが可能である。なお、児童手当は税
控除の対象である。2011 年における児童手当は子供一人当たり月額 1,050 クローナである。
つまり、表 5 にある通り、一人なら 1,050 クローナ、二人なら 2,100 クローナ、三人なら
3,150 クローナという具合に子供が一人増えるとそれぞれ 1,050 クローナ増えることになる。
また、大家族補助は二人なら 150 クローナ、三人なら 604 クローナ、四人なら 1,614 クロー
ナ、五人なら 2,864 クローナ、それ以上の場合は追加的に 1,250 クローナ、給付される。
さて、日本における児童や子育て支援の代表的なものは児童手当と述べた。同じ児童手- 6 -
当でもスウェーデンと日本においては所得制限の観点で大きく異なる。スウェーデンの場
合、原則的に所得制限がないのに対し日本の児童手当については所得制限が組み込まれて
いる。両親手当でも述べたが、スウェーデンの場合、若い世代への社会保障制度への加入
のメリットが若年層全体に及ぶのに対し、日本においては若年層への支援のメニュー自体
が乏しく、日本における若年層の社会保障制度への加入のインセンティブはスウェーデン
より低いように思われる。
なお、スウェーデンにおける 16 歳以下の児童の数は 2011 年で女児が約 87 万 5000 人、
男児が約 92 万 4000 人、計 179 万 9000 人となっている。その中で、10 歳から 14 歳の児童
の数が相対的に少なくなっているが、これは 90 年代の低出生率によるものである。表 6
には児童手当の受給者数が示されている。受給者数は計 104 万 5007 人となっているが、そ
の内の 93%は女性、つまり母親が受給している。また、児童手当受給者のうち、女性の 53%、
男性の 33%は大家族補助も受給している。なお、2011 年における、児童手当給付総額は
241 億クローナとなっている。
表 5 児童手当の給付額
月額 年額
(クローナ) (クローナ)
児童手当 大家族補助 合計
第 1 子 1,050 ? 1,050 12,600
第 2 子 2,100 150 2,250 27,000
第 3 子 3,150 604 3,754 45,048
第 4 子 4,200 1,614 5,814 69,768
第 5 子 5,250 2,864 8,114 97,368
それ以上
一人につき 1,050 1,250 2,300 27,600
出所:スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”
表 6 児童手当の受給者数
受給者の数
大家族補助の受給者
の割合(%)
年齢 女性 男性 女性 男性
?19 3,476 2,557 3 0
20?24 29,355 1,471 22 5
25?29 91,760 3,622 43 24
30?34 173,413 9,466 61 35
35?39 234,497 16,110 73 42
40?44 227,334 16,967 58 40
45?49 150,582 12,599 35 32
50?54 51,205 5,676 18 25
55?59 9,983 2,460 8 21
60− 1,124 1,350 5 18
合計 972,729 72,278 53 33
出所:スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”- 7 -
1-4 スウェーデン年金制度
1-4-1 みなし確定拠出年金制度(NDC:Notional Defined Contribution)の概要
スウェーデンの新年金制度は大きく分けて二つの部分より構成されている。一方は賦課
方式で運営されている概念上の確定拠出年金制度(NDC:Notional Defined Contribution)と
呼ばれる部分と、もう一方は積立方式で運営されているプレミアム年金(Premium Pension)
と呼ばれる部分で構成されている。NDC 制度への保険料は 16%、プレミアム年金への保
険料は 2.5%、トータルで 18.5%となっている。NDC 制度は賦課方式であるため保険料は
基本的には退職世代の給付に使われる。一方、プレミアム年金は個人勘定に資産が蓄積し
ていく。プレミアム年金制度の利回りは市場の利回りということになるが、NDC 制度では
賃金成長率が利回りに用いられる。
さて、スウェーデンの新年金制度の大きな特徴は、賦課方式でありながら確定拠出型の
制度と言われている NDC 制度の部分である。NDC における年金給付は経済変動と平均余
命に併せて調整される仕組みになっている。新規裁定時の年金給付額は次のように決めら
れる。
新規裁定時の年金給付額 = みなし年金資産 ÷ 年金除数
個人は、NDC に 16%の保険料を支払うが、その保険料があたかも個人の資産のように
蓄積されたとするのである。また蓄積されたとみなされる資産は名目賃金上昇率をみなし
運用利回りとして年金資産額を計算することになる1。計算されたみなし年金資産を年金除
数(Annuitization Divisor)と呼ばれる値で割ることで新規裁定時の年金給付額が決まる。
年金除数には平均余命などが考慮されている2。次に既裁定者の年金額であるが、旧制度で
は毎年の物価上昇率を基準としてスライドが行われていたのに対し、新制度では実質賃金
スライドに物価スライドを加えたもの(実質的には名目賃金上昇率)に変更された。既裁
定者の年金スライドを大まかに示すと次のようになる。
スライド率 = 実質賃金上昇率 − 1.6% + 物価上昇率3
ここで、実質賃金上昇率から 1.6%が引かれている理由は、年金の支給当初から制度に
おける予定実質賃金上昇率(1.6%)が前倒しで織り込まれている為とされている。スライ
ド率は、実際の実質賃金上昇率が 1.6%を超えた場合には、1.6%を超える分に物価上昇率
を上乗せしてスライドさせる。一方、実際の実質賃金上昇率が 1.6%なら物価上昇率だけ
のスライドとなり、1.6%を下回る場合は、下回った分を物価上昇率から引いた値でスライ
1 厳密には、みなし運用収益には名目所得上昇率に受給開始前に死亡した被保険者が納付した保険料を同年齢の被保
険者に分配したものも含まれる。さらに、管理費などが差し引かれる。
2 年金除数は、一定の実質賃金上昇率(1.6%)がすでに織り込まれているため、平均余命よりも小さな値が設定され
ている。
3 物価上昇率には消費者物価上昇率が用いられている。- 8 -
ドさせる。極端な例を挙げれば、物価上昇率が 0%で実質賃金上昇率が 1.6%を下回った場
合、スライド率はマイナスの値となる。以上のことから、スウェーデンの新年金制度は平
均余命や経済変動を反映した給付となっていることが分かる。
また、新年金制度への移行は 16 年かけて実施することになっている。新年金制度導入
後の 16 年間に老齢年金を新規に受け始める人は旧年金制度と新年金制度をそれぞれ部分
的に受給することになる。また毎年旧年金制度の 1/16 を新年金制度に置き換えて新規受給
者が受給する給付額を算出することになっている。
1-4-2 自動均衡機能
スウェーデンの新年金制度のもう一つの大きな特徴は、年金財政の健全性を保つために、
自動均衡機能(Automatic Balance Mechanism)を導入したことである。それは簡単に言う
と、出生率低下による被保険者数の減、積立金の利回りの実質的減等により年金財政が悪
化した場合に給付額が調整される仕組みである4。自動均衡機能は公的年金の資産より債務
が上回った場合に発動され、給付の調整が行われる。年金資産には保険料資産(Contribution
Assets)5とバッファー・ファンド(Buffer Fund)と呼ばれる年金積立金の二つより構成さ
れる。
年金資産 = 保険料資産 + 年金積立金
一方、年金債務は既裁定者への年金債務(PLr)とまだ年金を受け取っていない人への年
金債務(PLw)とから構成される。
年金債務 = PLr + PLw
ここで、PLw は基本的には新年金制度加入者のみなし年金資産であるが、旧制度から引
き継がれた年金債務も含まれている。
NDC 制度の財政方式は賦課方式である。そのため、スウェーデンの新年金制度も依然と
して次のような要因は年金財政の健全化に対して潜在的なリスクとなる。1)被保険者数の
変化、2)所得や死亡率の変化、3)バッファー・ファンドの収益の変化、4)平均余命の変
化。自動均衡機能はそれらのリスク・ファクターをできるかぎりコントロールするために
導入された仕組みである。自動均衡機能を理解するためにはバランス・レシオ(Balance
4 年金制度を賦課方式で運営する限りにおいて、少子高齢化は年金財政の健全性にマイナスであるが、それに加え少
子化が予想以上に進んだ場合、数年毎の年金再計算の見直しでは対応が遅れてしまう危険がある。自動均衡機能はバ
ランス・レシオ(BalanceRatio)と呼ばれる値が 1 より下回った場合は、国会の議決を経ずに給付が調整される仕組み
であり、政治的なプレッシャーから独立である点も参考に値する仕組みである。
5 年金保険料資産は年金保険料に “Turnover Duration” と呼ばれる期間をかけた値である。それは簡単に言えば年金を
支払ってから年金を払い戻すまでの予想される期間といえる。Turnover Duration は、単に年金制度に入り年金制度か
ら出るという期間というわけではなく、所得や被保険者数、死亡率などを反映した値である。スウェーデン年金庁の
発行している「Orange Report: Annual Report of the Swedish Pension System」では Turnover Duration 等の詳しい解説が行
われている。- 9 -
Ratio)と呼ばれる指標が重要になる。その指標は次のように定義されている。
バランス・レシオ(Balance Ratio) = 年金資産 ÷ 年金債務
バランス・レシオが 1 を超える場合、年金債務は年金資産より小さいことを意味する。
一方、バランス・レシオが 1 を下回った場合、年金債務は年金資産を上回ることになり制
度が財政的バランスを失っている状態になっていると新年金制度のもとでは解釈されるの
である。バランス・レシオが 1 を下回った時に自動均衡機能が働くことになる。バランス・
レシオが 1 を下回った場合、みなし年金資産などの伸び率が低下することにより、年金債
務の調整が行われることになる。
1-4-3 最低保障年金
スウェーデンの新年金制度は所得比例年金部分と最低保障年金部分に分けられている
のも大きな特徴である。所得比例年金部分は拠出した額と完全にリンクする形で給付が行
われるのに対し、最低保障年金は所得比例年金部分だけでは年金額が少ない人のための年
金だと言える。また、その財源は保険料ではなく税で賄われているのも大きな特徴である。
また、最低保障年金部分は所得比例年金部分が増加すれば、最低保障年金額が低下する仕
組みとなっている。仮に所得比例部分がゼロの場合、単身世帯なら 2.13 Price BaseAmounts
が得られ、夫婦世帯なら一人当たり 1.9 Price Base amounts が得られることになっている。
Price Base Amounts(基準値)は最低保障年金を計算するときに用いられる指数で 2011 年
時点では 1 Price BaseAmount は 4 万 2800 クローナとなっている。その値を用いると、単
身世帯の最低保障年金額は 2011 年では月額で 7,597 クローナ、夫婦世帯の最低保障年金額
は一人当たり月額 6,777 クローナとなる。
なお単身世帯の所得比例年金と最低保障年金の関係を図 1 に示している。スウェーデン
の最低保障年金制度は所得に応じて 2 段階の削減率が設けられている。所得が低いところ
では、所得が増加すると最低保障年金もその所得分減額される、つまり減額率が 100%と
なる仕組みが取られている。一方、ある領域より所得があると、所得の増加に応じた最低
保障年金の削減率は 48%に下がる仕組みが取られている。この減額率の低下は、最低保障
年金を受給する低所得者への労働意欲を促進するために設けられていると考えられる。さ
らに、所得が上昇し、ある一定以上の所得になると最低保障年金は支給されなくなる。- 10 -
図 1 最低保障年金(単身世帯のケース)
出所:スウェーデン年金庁(2011)“Orange Report:Annual Report of the Swedish Pension System”
ここで、最低保障年金の詳しい減額率を示すと次のとおりになる。
単身世帯のケース
Price BaseAmounts 基準
0 〜 1.26 Price BaseAmounts : 100%減額、1.26 〜 3.07 Price BaseAmounts : 48%減額
クローナ基準(2011 年)
0 〜 4,494 クローナ:100%減額、4,494 〜 1 万 959 クローナ:48%減額
夫婦世帯のケース
Price BaseAmounts 基準
0 〜 1.14 Price BaseAmounts : 100%減額、1.14 〜 2.72 Price BaseAmounts : 48%減額
クローナ基準(2011 年)
0 〜 4,066 クローナ:100%減額、4,066 〜 9,713 クローナ:48%減額
上記の数値からも分かる通り単身世帯の場合、月額 1 万 959 クローナ以上の所得になる
と最低保障年金の支給対象にはならない。また夫婦世帯の場合は月額 9,713 クローナ以上
の所得になると最低保障年金は支給されないことになる。その他、最低保障年金制度は 65
歳以上のスウェーデン居住者に対して給付が可能となり、満額の最低保障年金を受給する
ためには、40 年間スウェーデンに居住していることが原則となっている。期間は 25 歳よ
りカウントされることになっている。また、居住期間に比例して満額の最低保障年金額は
減額されることになっている。
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
Price Base Amount
総年金額
最低保障年

所得比例年
金- 11 -
1-4-4 日本の公的年金との比較
2004 年 6 月 5 日に公的年金改革法が成立したが、改革後の日本の公的年金制度は保険料
固定方式と呼ばれている。また、その年金制度はマクロ経済スライドと呼ばれる給付調整
の仕組みが導入されることになった。まず、この 2 点について述べる。改革後の日本の年
金制度では保険料が厚生年金保険で 18.30%、国民年金保険で月額 1 万 6900 円に固定され
ることが決まった。保険料が固定されるのはスウェーデンと同じであるが、日本の場合、
保険料がすぐに固定されるのではなく、2017 年まで保険料を徐々に引き上げ 2017 年以降
に固定することになっている。ここで、世代間格差を生み出す要因の一つは、少子高齢化
により若い世代や将来世代ほど保険料が大きく上昇することである。日本の改革後の制度
では保険料が固定されることになっており、保険料上昇に伴う世代間格差を若干改善する
方向に動くと考えられるが、すでに保険料が固定されているスウェーデンとは異なり、日
本の場合は依然として保険料が上昇している。その点では、スウェーデンに比べて、やは
り世代間格差の改善は小さいと言える。
次にマクロ経済スライドについて述べる。公的年金制度は過去の賃金や保険料を反映す
る形で計算される。これは賃金再評価とも呼ばれ、指標としてはこれまで賃金成長率が用
いられてきた。改革後ではその賃金再評価率が次のように変更になった。
賃金再評価率 = 賃金成長率 − 人口要因変化率
以前の制度では賃金再評価率は賃金成長率だったのに対し、改革後では人口要因の変化
率を差し引く形で再評価が行われることになっている。ここで人口要因変化率は次のよう
に加入者数と平均余命が考慮されている。
人口要因変化率 = 加入者数の減少率 + 平均余命の伸び率
ここで、マクロ経済スライドは人口要因の変化によって年金給付が調整されるのはス
ウェーデンの自動均衡機能と似ており、少子高齢化時における公的年金制度の財政健全化
に寄与する。しかしながら、現在のマクロ経済スライド制度はデフレ時には発動されない
ことになっているため、実際にはマクロ経済スライドによる給付の調整は行われないまま
となっている。
ここで、日本の改革後の公的年金制度とスウェーデンの公的年金制度で本質的に異なる
点は、拠出と給付の一対一対応が明確にされているかどうかという点であろう。スウェー
デンの場合、みなし確定拠出年金制度(NDC)を導入することにより個人の拠出があたか
も個人の勘定に資産として増えていくような仕組みを公的年金に取り入れた。そのためス
ウェーデンの公的年金制度では拠出と給付が基本的には一対一対応の関係にあるのに対し
6、日本の改革後の年金制度ではそのような仕組みは取り入れられていない。そのため日本
6 ただし、労働力の減少や平均余命の伸びによって年金受給額が調整されるので完全に拠出と給付が一対一対応関係
とは言えない点もある。- 12 -
の改革後の年金制度では拠出と給付の対応関係が明確とは言えない。また、スウェーデン
の場合、拠出と給付の関係が一対一であるため、拠出した分が戻ってこないという世代会
計的な世代間格差を解消する制度と考えられるが、日本の場合には拠出と給付の関係があ
いまいなままであり、世代間格差からくる若年層の年金不信はぬぐえないままとなってい
る。
1-5 スウェーデンにおける社会保障に関する負担
スウェーデンにおける社会保障に関する負担については、表 7、表 8 に示されている。
2010 年においては、事業主の負担は計 31.42%となっている。細かな内訳は、老齢年金が
10.21%、遺族年金が 1.17%、傷病保険が 5.02%、両親保険が 2.60%、労災保険が 0.30%、
労働市場保険が 2.91%、さらに使途が特定されていない一般賃金税が 9.21%となっている。
いずれも、所得比例での保険料等の負担となる。なお、老齢年金は事業主が 10.21%を負
担するが、老齢年金のトータルの保険料は 18.50%であるので、8.29%は労働者が保険料の
負担をすることになる。一方、自営業者は社会保障に関する保険料等を自ら負担する必要
があるが、その保険料等も所得比例の負担であり、トータルで 29.71%と事業主の負担と
同程度の水準となっている。
ここで、日本の社会保険料を考えてみると、日本においても公的年金、医療保険、介護
保険、労災保険、雇用保険の保険料を合計すると約 23%となる。日本の場合、自営業者は
社会保険料額が賃金に比例するわけではないので、正確な比較は難しいが、仮に日本の自
営業においても社会保険料はおおむね賃金の約 23%とすると、スウェーデンの自営業者と
の負担率は大きく変わるわけではない。それにも関わらず、日本においては若年層の保険
料の未納が高い原因の一つは、やはり日本における社会保障を通じた若年層への支援が手
薄なことの表れと考えられる。
表 7 社会保障に関する事業主の保険料等負担
老齢年金 Old Age Pension 10.21%
遺族年金 Survivor’s Pension 1.17%
傷病保険 Health Insurance 5.02%
両親保険 Parental Insurance 2.60%
労災保険 Occupational Injuries 0.30%
労働市場保険 Labour Market 2.91%
一般賃金税 General Wage Fee 9.21%
計 31.42%
出所 スウェーデン年金庁資料- 13 -
表 8 社会保障に関する自営業者の保険料等負担
老齢年金 Old Age Pension 10.21%
遺族年金 Survivor’s Pension 1.17%
傷病保険 Health Insurance 5.11%
両親保険 Parental Insurance 2.60%
労災保険 Occupational Injuries 0.30%
労働市場保険 Labour Market 0.37%
一般賃金税 General Wage Fee 9.21%
計 29.71%
出所 スウェーデン年金庁資料
1-6 スウェーデンの社会保険給付・徴収に関する行政組織
スウェーデンの社会保障制度は主に社会保険、医療サービス、社会福祉サービス、失業
保険・労働市場政策と四つに分けることができる。スウェーデンの社会保険制度は老齢年
金のように保険原理を強く反映した制度がある一方で、社会保険制度に含まれる多くの制
度は所得再分配機能が強く、保険原理はあまり反映していないものも多い。そういった特
徴があるスウェーデンの社会保険制度であるが、運営主体は中央政府及びそれら諸制度を
所管する行政省庁となっている。一方、医療サービスに関しては、広域自治体であるラン
スティングがその運営主体となっている。なお、医療サービスに関しては社会保険方式で
はなく、税方式となっている。また、社会福祉サービスについても社会保険方式ではなく
税方式となっているが、運営主体は主にコミューンと呼ばれる基礎自治体が担っている7。
最後に失業保険・労働市場政策は失業保険基金と呼ばれる運営主体が担っている。
スウェーデンの社会保障制度を総括する社会省の傘下にある社会保険庁は公的年金を
除いた社会保険制度の給付に関する業務を担当している。一方、公的年金に関しては同じ
く社会省の傘下にある年金庁が給付の業務を担当している。医療サービスの所管は社会省
の下部組織である社会庁となっている。実際の医療サービスはランスティングにより提供
されるが、税方式による現物給付が原則となっている。ただし、歯科医療に関しては税方
式ではなく社会保険方式を採用しており、社会保険庁の所管となっている。社会福祉サー
ビスの所管は社会庁となっているが、実際の社会福祉サービスの提供はコミューンによっ
て行われている。医療サービスや社会福祉サービスは提供主体がランスティングやコ
ミューンとなっており、またその提供には、それぞれの自治体の裁量が認められている部
分も少なからずあり、そのために、医療や社会福祉に関しての地域間の格差があることは
事実のようである。最後に失業保険制度は、社会省の所管ではなく、労働省及び労働市場
庁の所管となっている。
一方、スウェーデンの社会保障制度の徴収に関しては、国税庁が税と一体的に徴収する
仕組みとなっている。社会保険料や年金保険料、医療や社会福祉に対する税を国税庁が一
体的に徴収し、その徴収した社会保険や公的年金、医療や社会福祉の担当省庁やランスティ
7 なお、コミューンとランスティングは、所管する地域の広さや人口規模によって行政事務を分担しているだけであ
り、両者は対等な関係の地方自治体である。- 14 -
ングやコミューンに配分する仕組みとなっている。なお、国税庁は出生届や住民登録など
も管轄しており、国民や居住者(移住者なども含む)に関する情報についても把握してい
る。その他、社会保険料などの滞納には、強制徴収庁(Swedish Enforcement Authority)が
財産の差し押さえ等、強い権限で取り立てを行うことになっている。なお、社会保険料の
滞納は、2、3 回程度続けると自動的に国税庁から強制徴収庁に連絡がいくようになってい
る。
図 2 社会保障の支出と徴収
図 3 は国税庁と社会保険庁や年金庁の情報のやり取りについてまとめたものである。ス
ウェーデンの場合、前述の通り社会保険料は国税庁が税と一体的に徴収する仕組みを取っ
ている。その際、実際の社会保険給付を行う、社会保険庁や年金庁と国税庁との間で密な
年金
年金以外

社会保険
医療
歯科保険
社会福祉
年金庁 社会保険庁
社会庁
ランスティング コミューン
社会保障制度の対象者








給付
保険料・税の
支払い
財源の
移転
社 会 省- 15 -
連携が必要になる。スウェーデンでは、もともと民間の銀行等の口座に関するシステムを
利用する形で、社会保障に関する徴収等の電子化が進んだ経緯があるが、人々から(ある
いは雇用主から)の社会保障に関する支払いは、まずは国税庁の徴収システムに記録され
る。それら、社会保障に関する支払いがあれば、国税庁のシステムから国家債務局(Sweden
National Debt Office)の口座(The State Central ChequeAccount)に、日々、送金される。国
税庁と国家債務局との間で、社会保障の支払いについて、月次、年次のレポートのやり取
りが行われる。また、それと同時に国税庁と社会保険庁や年金庁の間でも、社会保障の支
払いについて、月次、年次のレポートのやり取りが行われる。次に社会保険庁や年金庁は
社会保障給付にかかる費用を国家債務局の口座から受け取る。受け取った原資をもとに、
社会保険庁や年金庁は人々に対する社会保障の給付を行う。一連の社会保障に関する徴収
と給付の情報は、国民番号制の下構築された電子データで効率的に行われている。なお、
医療や社会福祉に関する給付はランスティングやコミューンが担っているが、基本的な情
報のやり取りは、ここで挙げた情報のやり取りと同じと考えてよい。
なお、スウェーデンにおいても被雇用者は社会保障に関する支払いは源泉徴収されるた
め、一般的には未納や未払いは起こらないが、自営業者に関しては日本と同じように、自
営業者自らが社会保障に関する保険料や税を支払わなければいけない。そのため、未払い
は起こりうる。仮に保険料や税の未払いが起こると強制徴収庁が取り立てを行う。強制徴
収庁により、社会保障に関する未払いの徴収が出来たケースは、徴収した金額を国の口座
に返金して強制徴収庁の業務は完了する(図 4 を参照)。ただし、未払いになる原因として
は金銭的な余裕がないために未払いになっているケースが多くを占めており、その場合は
強制徴収庁といえども徴収できるケースはそれほど多くはないようである。そして、この
ような場合徴収は断念することになるが、強制徴収庁が社会保険庁や社会庁に情報を提供
することにより、社会福祉のスキームで未払いの人の経済的状況を救済するとのことであ
る。- 16 -
図 3 国税庁と社会保険庁、年金庁の情報のやり取り
@ 社会保障や税などの支払いがあれば、日々、国の口座(The State Central Cheque
Account)へ送金する。
A 社会保障の支払いについての月次、年次のレポートをやり取りする。
B 社会保障の支払いについての月次、年次のレポートを送る。
C 社会保険庁や年金庁は国の口座(The State Central Cheque Account)から社会保険や
年金にかかる費用を請求し受け取る。
D 社会保険庁や年金庁は、社会保険や年金の給付を国民に行う。
出所:スウェーデン年金庁資料
銀行口座、郵便口座
のシステム
国 税 庁
(The Tax Agency)
国家債務局
(Sweden National Debt Office)
国の口座
(The State Central
Cheque Account)
社会保険庁
(The Social Insurance
Agency)
年金庁
(The Pension Agency)
国民からの
支払い
口座情報
支払いの通知
A
@
B
C
D- 17 -
図 4 社会保障や租税の支払いと強制徴収庁の関係
出所:スウェーデン年金庁資料
雇用者、
被雇用者
自営業者
社会保障への拠出、基礎的租税、所得税、付
加価値税などを評価するシステム
租税口座
(Tax Account)
強 制 徴 収 庁
毎月の社会保障への拠
出や租税額を決定
支払い
償還
口座の明細
支払い通知
支払い 返金 負債取り立て
の移管
社会保障や税の情報- 18 -
図 5 強制徴収庁の業務
出所:スウェーデン強制徴収庁資料
なお、強制徴収庁は 1965 年に設立され、1997 年の組織再編を経て 2006 年に現在の財務
省・国税庁の傘下の独立機関となっている。強制徴収庁の業務は、強制徴収執行が主な業
務であるが、その他にも簡易手続き業務、顧客サービス業務、債務救済業務、破産管理業
務、予防措置業務があり、大きく分けると計六つの業務を担っている(図 5 参照)。なお、
強制執行庁の職員数は約 2,200 人であるが、強制徴収執行業務に約 6 割の 1,400 人、簡易
手続き業務に 120 人、顧客サービス業務に 120 人、債務救済業務に 90 人、破産管理業務に
60 人、予防措置業務に 30 人が配属されているとのことである。強制徴収執行業務につい
ては、債権の取り立て、住居などからの強制退去、財産や給与の差し押さえ、非金銭的な
指令の実施、不動産等の売り払いの五つから構成されている。なお、債権の取り立ては、
税や社会保険料、駐車違反等の公的債権の他にも、裁判所の判決や略式手続に基づく民間
強制徴収庁
予防措置
(Preventive Action)
顧客サービス
(Customer Service)
簡易手続き
(Summary Procedure)
強制徴収執行
(Enforcement)
債務救済
(Debt Relief)
破産管理
(Bankruptcy Supervision)- 19 -
の債権も強制徴収の対象としており、年間公的債権が 170 万件、民間債権が 60 万件、同庁
に取り立てのために持ち込まれるとのことである。
1-7 スウェーデンにおける租税回避や脱税
1-7-1 租税回避や脱税について
法律上、支払われるべき税額と実際に徴収される税額とは一般的に乖離が起こる。支払
われるべき税額より実際に徴収される税額が下回ることは、多くの国で知られていること
であるが、それらのギャップは脱税(Tax Evasion)の規模と考えられ、またより経済学的
な用語を用いれば地下経済(Underground Economy)の規模と考えられる。スウェーデン国
税庁では、この脱税や地下経済の大きさについても推計している。
スウェーデン国税庁では、それら脱税や地下経済に関して闇労働(Black Work)と定義
して、2005 年から 2006 年にかけて詳細な分析を行っている。まず、闇労働を以下のよう
に定義している。
労働に対する支払いが行われる。
それはスウェーデン国内で課税されるべきものである。
しかし、スウェーデン国税庁に申告されていない。
また、闇労働は以下に分類される。
雇用された対価に支払われた申告されていない所得
自営での申告されていない事業所得
まず、スウェーデンの国民経済計算年報(the Swedish NationalAccount)を用いた計算で
は、報告された支出と報告された所得の差を闇労働からの所得として推計している。2002
年の値では、1150 億クローナから 1200 億クローナが闇労働からの所得、あるいは闇のセ
クター(Black Sector)と推計している。この値は、報告されている総所得の 10%に相当す
るものとなっていた。この国民経済計算年報からの計算が基本となるが、国税庁は、その
他の手法でも闇労働や闇のセクターの規模の推計を行っている。
近年、税務調査でも闇労働や地下経済について推計している。税務調査による手法では、
闇労働や地下経済の規模は 710 億クローナとなっており、そのうちの 85%は総賃金が 100
万クローナ以下の小規模な会社によるものとなっている。なお、710 億クローナの半分は、
雇用された対価に支払われた申告されていない所得で、残りの半分は自営での申告されて
いない事業所得となっている。この調査からスウェーデン国税庁は以下の情報を得たとし
ている。
1. 自営業や会社のオーナーは同じ産業やセクターの従業員に比べ、きちんと申告している
所得はかなり低い。- 20 -
2. 家の大きさや保有している車などの生活水準の指標から、経営者は正式に申告された所
得よりもかなり高い生活水準となっている。
3. 食料品の消費に基づくと、経営者の世帯は賃金所得世帯と比べて、過小な申告という結
果になっている。
スウェーデン国税庁は、税務調査による方法以外にも、直接インタビューし闇労働や闇
労働により生産される財・サービスの購入などについての調査も行っている。財・サービ
スについては、課税されていない財を購入しているかを調査している。ただし、この直接
的なインタビューを通じた調査には限界があるため、調査で闇労働の一部が明らかになる
だけと言える。しかしながら、先ほどの税務調査とは異なった情報も得られている。直接
的なインタビューで明らかになった闇労働の規模は 150 億クローナと推計され、その内、
100 億クローナが家計によって行われたもので、50 億クローナが会社や企業によって行わ
れたものとなっている。また、闇労働を行っている人の数は約 80 万人と推計され(なお、
スウェーデンの人口は約 950 万人)、これは約 6 万 6000 人のフルタイムの労働に相当する
ものと考えられる。なお、闇労働を行ったかどうかは、職業によって大きく異なる。学生
や兵役中の国民は比較的闇労働を行う比率が高くなっているが、最も闇労働を行う比率が
高いのは商業従事者となっている。闇労働を行っている商業従事者の数は約 26 万 6000 人
と推計されている。また、若い人や所得の低い人が闇労働を行う傾向にある。なお、闇労
働の規模を時系列的にみると、1997 年にスウェーデン会計検査院が行った調査では闇労働
を行う人数は全体の 11%程度であったのが、今回のスウェーデン国税庁が行った調査では
13%となっており、増加していることが分かる。また、闇労働は若い人だけではなく、ホ
ワイトカラーの人に広がっていると分析されている。
1-7-2 租税ギャップの評価
スウェーデン国税庁は理論上得られる税収と実際に得られる税収とのギャップを租税
ギャップ(Tax Gap)とし、1998 年に初めてその租税ギャップを推計している。続く 2002
年には主に国境を越える手続きの際の申告漏れを推計し、その値は200億から350億クロー
ナとの結果になっている。さらに、2007 年には租税ギャップをより詳細に分析しているが
8、その分析結果は図 6 にまとめられている。それによると、租税ギャップは 1330 億クロー
ナと推計され、GDP の約 5%、また総税収の約 10%に相当するとしている。また、1330
億クローナの租税ギャップのうち、660 億クローナは闇労働によるものであり、460 億ク
ローナは国際間の手続き際の申告漏れによるものと推計されている。また、事業所得が年
間 100 万クローナ以下の小規模な会社が租税ギャップの 38%を占めることになっている。
また、税の種類別では、付加価値税に伴う租税ギャップは 350 億クローナとなっている。
8 スウェーデン国税庁(2008)を参照。- 21 -
図 6 総租税ギャップ(Total Tax Gap)
出所:スウェーデン国税庁(2011) “Taxes in Sweden 2011”
1-8 スウェーデン会計検査院による社会保障の検査
スウェーデン会計検査院(SNAO)の職員数は約 320 名で、官房業務等を除く検査業務
では約 6 割が財務検査、4 割が業績検査に従事している。業績検査については、年に平均
30 件の検査報告を作成しており、そのうち 1〜2 割が社会保障関係のテーマに関するもの
となっている。前述のように、社会保障のうち医療は広域自治体であるランスティングが
地方税を財源として提供し、年金等は社会保険として運営されているが、国は医療も含め
主に社会保障の政策立案や制度設計を行っている。スウェーデンの社会保障制度のコン
ピュータ化はかなり昔から進んでおり、そのシステムは 1970 年代には民間部門を含め欧州
で最大規模であったが、社会保障の検査では情報システムや制度に関係する検査に重点が
置かれているとのことであった。また、給付の検査でも、個々の「不正」な受給を直接検
査するのではなく、不正を事前に予防、発見するシステムや統制がどのように制度上構築
されているのか、また、統制についてはインセンティブに配慮した制度設計になっている
かに焦点を当てているとの説明があった。
公的年金全般についてはその持続可能性に注目して検査している。その大半が株式など
国際間 闇労働 その他
460億クローナ 660億クローナ 210億クローナ
商売をしない個人220億クローナ 10 9 3
小規模な商売 520億クローナ 7 43 2
中小企業 260億クローナ 14 5 7
大企業 250億クローナ 15 2 8
公的部門 20億クローナ <1 1 <1
未分類 6億クローナ - 6 -
総租税ギャップ(Total Tax Gap)
1330 億クローナ- 22 -
のリスク資産で運用されていることが特徴であるプレミア年金部分については、運用を監
視する監査組織は別途設けられているため、検査院は運用については今のところ検査せず、
現在は年金庁等による加入者へのリスク等の情報提供が適切であるかどうかを重点的に検
査しているとのことであった。医療についてはランスティングが提供していることから政
策制度面の検査が中心となるが、医療の現場について全く検査できないわけではなく、ラ
ンスティングの情報提供により救急医療体制について検査を行ったことがあるとの説明が
あった。また、医療のうち歯科治療は社会保険方式で運営されており、これについては近
い将来検査を予定しているとのことであった。
年金関連では、年金受給者への住居手当が対象者に適切に支給されているかどうかにつ
いて、DEA 分析9を利用した検査を予定しているとのことであったが、「適切ではない」に
は、支給すべきでない人に支給されている場合だけではなく、本来支給すべき人に支給さ
れていない場合(支給漏れ)も含まれるとの説明であった。
社会保障に関する検査については、社会保険料の徴収をテーマとした事例が最近はない
ため、給付事務処理の効率化のための国の関係機関と基礎自治体コミューンとの間の情報
交換に関する事例を取り上げるが、国民番号制度を活用し、社会保障制度を効率的に管理、
運用していると思われるスウェーデンにおいても個人の情報の取り扱いには制約があり、
国とコミューンとの間の情報交換には更なる改善の余地があることが指摘されている。ま
た、国とコミューンとの情報交換に反対の議論が存在することを認めつつも、情報交換が
生み出す効率性の改善を考慮した上で議論すべきであるとして、具体的な効率の節減額の
見積りを提示している。
検査事例:「社会保障制度関係機関の情報交換について−関係機関は、新しい立法と IT 技
術により可能となった可能性を十分に活用しているか」(英語要約版から)
社会保障給付のシステムにおいては、関係機関相互の情報交換は効率的な給付に不可欠
であり、それなしでは個人が複数の制度から同時に給付を受けたりする誤りが生じたり、
給付サービスの提供に支障が生じたり、制度の管理運営費用が不必要に高くなったりする。
本検査においては、社会保障給付を所管している関係機関相互の情報交換の状況につい
て検査し、情報交換が費用対効果の向上、サービスの改善及び誤払いの削減にもたらす可
能性を活用しているかどうかを確認した。
検査は、活動手当(Activity Payment)、傷病手当及びコミューンからの手当を対象とし、
関係政府機関の職員と給付の処理を担当するオペレータが参加したワークセミナーの議論
を基に、プロセス分析手法を用いて結論を導いた。ただし、本検査においては、個人情報
に関する法令の系統だった分析や、情報交換に反対の立場からの議論の分析は行っていな
い。このような議論は、情報交換により可能となる業務効率の改善と比較して考慮される
べきである。
9 包絡分析法(DEA:Data Envelopment Analysis)は,効率性を分析する方法の一つであり、民間企業だけでなく,効
率性を評価することが難しい公共機関や非営利公企業などを評価するために利用されている。- 23 -
関係政府機関は情報交換を促進するため努力してきたが、検査ではいくつかの期待され
た成果は達成されていないことが明らかとなった。また、これまで実施されてきた既存の
情報交換においても改善の余地があることが判明した。政府機関は新しい立法と IT 技術に
よりもたらされた可能性を十分に活用していない。したがって、情報をより効率的に処理
し、不適切支給を減らし、国民へのサービス水準を向上させる余地がある。政府機関が情
報交換を電子的に行わないことにより、国民が給付を受けるまでに長い時間を要したり、
同じ情報を複数の機関に提出しなければならかったりなどの不便が生じる。また、電子的
な情報交換が不十分な場合、職員は時間のかかる手作業の統制手続きを避けることが多い
ため、不適正な支給のリスクが増加する。
検査は、政府とコミューンの間の電子情報交換の導入は年間 1 億 5000 万クローネ(約
21 億円)相当の節減を可能にすると結論付けている。
異なった社会保障給付システム間の情報交換を可能にする法的規制は包括的であり、
個々の情報交換の背景にある規則は、公共情報アクセス法、守秘法、個人情報法などの複
数の法令の規定に基づくものである。そのため、各機関がそれぞれどの情報の交換が可能
かを判断するのは容易ではない。また、情報交換の方法に関して法的規制が存在するかど
うかの解釈も困難である。SNAO は、スウェーデンの行政モデルは全体的な観点から判断
することが必ずしも得意ではなく、政府省庁の傘下にある関係諸機関やコミューンの独立
性などを考えると、政府が自らこれらの機関の調整に入り、適切な財務的インセンティブ
を与えるべきであると考える。
このように期待された電子的情報交換が実現できていないのは、情報をどのように伝達
するかについて、関連する法令の解釈に困難が生じているからであるが、関係機関は法令
解釈の困難さとそれに要する資源についての問題点を政府に伝えていない。さらに別の問
題点は、コミューン間の調整不足である。SNAO は、政府及び失業手当基金との間の電子
情報交換の問題に関するコミューンの調整が望ましいと考える。SNAO は、検査の対象と
した三つの給付分野では解決の手がかりがあるが、それらは各機関で低い優先順位しか与
えられていない。SNAO は、関係機関は情報交換の実現に向けて共同で責任を負うべきで
あると考える。関係機関は情報交換に関する意見交換のためのフォーラムを設置すべきで
ある。そして、このフォーラムには、コミューンと失業手当基金が参加すれば、さらに良
い。
これらの検査結果に基づきスウェーデン会計検査院は政府に対し以下の勧告を行った。
・国民経済にとって有益な情報交換は確実に実施されるようにすること
・技術的解決は安全な最新の技術に基づいて調整されること
・それぞれの情報交換の責任は一つの主管庁に委任されること
・電子的な情報交換を促進する規則を定めるための立法を検討すること
・関係政府機関とコミューンの調整を率先して強化すること- 24 -
1-9 スウェーデンの社会保険と未納・未加入について
スウェーデンの社会保障制度は主に社会保険、医療サービス、社会福祉サービス、失業
保険・労働市場政策に分けることができるが、その中で社会保険制度は老齢年金のように
保険原理を強く反映した制度がある一方で、社会保険制度に含まれる多くの制度は所得再
分配機能が強く、保険原理はあまり反映していない。また、日本では医療保険は社会保険
であるが、スウェーデンでは税方式となっており保険原理では運営されていない。そのた
め、スウェーデンにおいて社会保険方式で運営されている制度として典型的なのは老齢年
金制度と言えよう。それでは、その年金制度において自営業者のように自ら保険料を納め
る必要があるグループで未納・未加入が深刻かというと、スウェーデンの場合、それらの
グループの未納・未加入は現在のところあまりみられず、社会保険の未納・未加入は問題
視されていないようである。スウェーデンの場合、前述のように国税庁が税と社会保険料
を一体的に徴収している。その場合、例えば、税だけ支払って、社会保険料は支払わない
という行動を納税者は取りにくい。さらに。スウェーデンでは強制徴収庁という、税や社
会保険料の未払者に対して、給与や財産の差し押さえ等といった強い権限を持つ行政機関
が存在することも、未納・未加入が低い要因の一つである。しかしながら、未払いになる
原因としては金銭的な余裕がなく未払いになっているケースが多いようであり、その場合、
強制徴収庁は社会保険庁や社会庁に情報を提供し、社会福祉のスキームで、未払者の経済
的状況を救済することに努めている。この徴収の機関と社会福祉を管轄する機関のスムー
ズな連携は未納・未加入の国民を社会福祉のスキームで救うことにより結果的に未納・未
加入を低める要因となっていると考えられる。さらに、スウェーデンの場合、社会保険料
を支払う側も、比較的、消極的に社会保険料を支払っているという訳ではない。公的年金
の場合、個人勘定が全ての人に与えられ、支払った分は個人勘定に年金資産としてあたか
も積み立てられているかのように年金資産が増えていき、支払った分が給付されるという
ように、給付と負担の関係が明確である。この個人勘定への積立額は、各個人に年金庁か
らオレンジの封筒とともに下記の様式で通知される年金仮想勘定に積み立てられた額であ
り、各個人にとってはこれまでいくら払って、現時点でいくらもらえるのかが明確である。
そのため、未納・未加入は年金資産の目減りという意識が人々には浸透しやすく、結果的
に未納・未加入を抑える働きがあると思われる。ただし、あくまで賦課方式に基づく仮想
的な勘定であるため、想像以上の少子高齢化や経済停滞が続くと、実際に給付される額が
個々人の思う以下になってしまうことがありうる点は留意する必要がある。その他、ス
ウェーデンでは公的年金だけではなく、両親保険や失業等のための労働市場保険、さらの
児童手当等、現役で働く世代への支援が充実している。そのため、若い世代であっても社
会保険や社会保障制度全体からの見返りを実感しやすい。このことが、スウェーデンにお
いて社会保険料の支払いが比較的積極的に行われている要因の一つとも考えられる。- 25 -
表 9 年金仮想勘定の通知例 単位:クローナ
2011 年の変動
一般所得年金 プレミア年金
2010 年 12 月末価値 850,308 95,226
2011 年積立額(クレジット) 53,376 8,340
死亡者からの配分 469 69
管理費用 -323 -520
価値の変動 46,642 -9,546
2011 年 12 月末価値 950,472 93,569
合計額 1,044,041
61 歳から受給した場合の年金額(月額) 10,100
65 歳から受給した場合の年金額(月額) 13,000
68 歳から受給した場合の年金額(月額) 15,900
70 歳から受給した場合の年金額(月額) 18,100- 26 -
2-1 ドイツの社会保障の現状
ドイツは言うまでもなく世界で最初に社会保険制度を制度化した国である。ドイツの社
会保障制度は社会保険により運営されているものがやはり多く、年金保険、医療保険、労
働災害保険、失業保険、そして介護保険がそれに該当する。ここで、ドイツにおける社会
保険の成立をみると、1883 年に医療保険制度、1884 年に労働災害保険制度、1889 年に年
金保険制度、1891 年に失業保険制度が創設され、さらに近年では 1994 年に介護保険制度
が創設されている。ドイツの社会保障制度には、社会保険以外にも公的扶助制度や児童手
当などの社会福祉制度が整備されているが、今回は主な調査の対象だったドイツの年金制
度と医療保険制度についてまとめることにする。ドイツの年金制度の特徴としては後によ
り詳しく述べるが、職業によって分立している制度と言える。被雇用者であっても職業に
よっては制度の異なる年金制度に加入し、また自営業者でも職業等によって異なる制度に
加入することになる。ただし、自営業者に関しては日本においては、どのような自営業者
であっても全て強制適用であるが、ドイツは多くの自営業者は任意適用となっている。こ
の点は、日本とは大きく異なる点である。また、ドイツの医療保険制度も特徴的な点を持っ
ている。日本の場合、医療保険制度の保険者は地方公共団体であったり、勤めている会社
にある健康保険組合であったり、協会けんぽ(全国健康保険協会)であったりする。一方、
ドイツでは疾病金庫と呼ばれる独立の公法人である。その疾病金庫は現在 146 あり、保険
料の徴収や医療費の給付を行うが、人々はどの疾病金庫に加入するかは自由となっている。
このような保険者を自由に選べる制度は日本とは大きく異なっている。また、公的年金制
度と同じく、ドイツでは必ずしも全員に公的医療保険が強制適用ではなく、自営業の多く
は任意適用となっている。それら、公的年金や医療保険について、以下で詳しくみること
にする。
2-2 ドイツ年金制度
ドイツの年金制度は主に三つの階層(First Pillar、Second Pillar、Third Pillar)に分けるこ
とができ、また年金制度は職業によってもいくつか区切られている。まず、1 階部分(First
Pillar)についてみることにする。被雇用者年金制度には通常の会社勤め労働者が属する。
また炭鉱労働者は一般の被雇用者年金制度とは異なるが、炭鉱労働者も被雇用者年金制度
でカバーされるものである。一方、公務員はそれらとは別の制度でカバーされる。一方、
自営業者はいくつかの異なる制度でカバーされる。さらに、農家は別の特別な制度でカバー
され、また医師や弁護士などの専門職も別の特別な制度でカバーされる。それらをまとめ
ると 1 階部分の職業による分類は以下のようになる。
被雇用者:一般労働者、炭鉱労働者
公務員:特別なスキーム
自営業者:いくつかの異なるスキーム
農家:特別なスキーム
専門職(医師や弁護士など):特別なスキーム- 27 -
上記の職業ごとによるカバレッジについて図 7-1 と図 7-2 にまとめている。図 7-1 にお
いてグレーの網掛けがされている部分がドイツにおける公的年金制度となる。また、財政
方式の視点から分類したものは図 7-2 で示されている。財政方式で主に分類すると、1 階
部分(First Pillar)は賦課方式、2 階部分(Second Pillar)、3 階部分(Third Pillar)は積み立
て方式となっている。なお、2 階部分は企業年金(Occupational Pensions)であり、3 階部
分は個人年金(Private Pension Insurance)である。しかしながら、専門職の年金に関しては、
1 階部分であっても積み立て方式となっている。逆に、公務員の年金は 2 階部分も含めて
賦課方式となっている。
なお、近年は基礎的な所得保障として 0 階部分に、ミーンズテスト付き10の所得保障制
度を設けている。この制度は公的年金制度ではないが、老後の基礎的な所得保障制度とし
て重要な位置を占めるようになっている。また、この 0 階部分のミーンズテスト付き所得
保障は賦課方式で運営されている。
図 7-1 ドイツの年金制度の概要:カバレッジの視点
出所:ドイツ年金保険局資料
注:グレーの網掛けの部分が公的年金制度
図 7-2 ドイツの年金制度の概要:財政方式の視点
出所:ドイツ年金保険局資料
注:グレーの網掛けの部分は賦課方式で、そうでないものは積み立て方式。
10 ミーンズテストとは生活保護制度のように給付を申請した際に、申請者が給付要件を満たすかどうか判断するため
に行政側が行う資力調査のことである。調査は申請者の収入、資産、またはその両方を対象に行われ、通常は収入・
資産が一定水準を下回ることが受給の要件となる。また、日本の生活保護制度では申請者個人だけではなく、属する
世帯について要件を満たすかどうかも調査される。
3階部分
(ThirdPillar)
2階部分
(SecondPillar)
職人保険
芸術家、作
家、ジャー
ナリスト等
の保険
自営業で脆
弱なグルー
プの保険
任意保険 炭鉱従事者 被雇用者
0階部分
(ZeroPillar)
個人年金
ミーンズテスト付きの所得保障
1階部分
(First Pillar)
農業者年金
法定年金保険
専門職(医
師、弁護士
など)
公務員
企業年金
3階部分
(ThirdPillar)
2階部分
(SecondPillar)
職人保険
芸術家、作
家、ジャー
ナリスト等
の保険
自営業で脆
弱なグルー
プの保険
任意保険 炭鉱従事者 被雇用者
0階部分
(ZeroPillar)
1階部分
(First Pillar)
農業者年金
法定年金保険
ミーンズテスト付きの所得保障
個人年金
企業年金
専門職(医
師、弁護士
など)
公務員- 28 -
2-3 自営業者の適用範囲
先ほどの図 7-1 などでもみたとおり、ドイツの場合、自営業者という括りでも、いくつ
かの異なる年金制度が用意されている。自営業者を年金制度でグループ分けすると、表 10
のように主に六つのグループに分けることができる。まず、最初は医師や弁護士などの専
門職のグループである。このグループは年金制度が強制適用となり、提供されている年金
制度としては、自由業の専門職年金ということになる。なお、このグループがドイツの自
営業者に占める割合は直近のデータで 8.0%となっている。次のグループは農家のグルー
プで、農家の場合も年金制度が強制適用となる。また、年金制度としては農業者年金が用
意されている。なお、自営業に占める農家の割合は 7.2%となっている。一方、職人のグ
ループ、芸術家、作家、ジャーナリスト等のグループ、そして経済的に脆弱な職業のグルー
プの三つのグループが法定年金保険としてカバーされている。それらのグループは年金制
度において強制適用であるが、職人グループだけは強制適用の期間が決められており、18
年間の強制適用となっている。なお、この三つのグループがドイツの自営業に占める割合
は 6.3%となっている。最後に、上記のグループにあてはまらない、その他の自営業者は
基本的に年金制度は強制適用ではない。そのため、その他の自営業者は任意で公的年金制
度に加入することになる。いずれのグループにも属さない、その他の自営業者はドイツの
自営業者の大部分を占めており、割合は 78.0%となっている。
表 10 自営業者の適用範囲
自営業者 適用 スキーム 分布
専門職 強制適用 自由業の専門職年金 8.0%
農家 強制適用 農業者年金 7.2%
職人 18 年間の強制適用
芸術家、作家、ジャーナリスト等 強制適用 法定年金 6.3%
脆弱な職業 強制適用
その他の自営業 強制適用なし なし 78.0%
出所:ドイツ年金保険局資料
その他の自営業者は公的年金制度は任意加入であるため、日本の場合と異なり、年金未
納は定義上起こらない。しかしながら、ドイツのその他の自営業者の多くは公的年金制度
に対し、非加入なっていることが指摘されている。そのため、仮にドイツの自営業者の年
金非加入と日本の国民年金の未納・未加入を単純に比較すると、ドイツの自営業者の非加
入率が日本の国民年金の未納・未加入率より大幅に数字が低いことにはならないようであ
る。つまり、ドイツの自営業者の非加入率を日本の国民年金未納・未加入率と同じように- 29 -
見なすとすれば、ドイツにおいては年金制度から抜け落ちているグループが多くいるこに
見なすとすれば、ドイツでは年金制度から抜け落ちているグループが多くいることになる。
2-4 ドイツ労働市場の変化
表 11-1 と表 11-2 には 1993 年から 2008 年にけるドイツの労働市場の変化についてまと
めている。まず、ドイツにおける 1993 年における労働者総数は 3,754 万人であったのに対
し、2008 年には 4026 万人と約 7.3%増加している。この期間における増加の内訳としては、
自営業者が 362 万人から 446 万人と 23.2%の増加であるのに対し、被雇用者は 3392 万人
から 3580 万人と 5.5%の増加にとどまっている。したがって、ここ 15 年のドイツの労働
者の増加としては自営業者の増加が特徴的な点と言えよう。また、被雇用者の変化の内訳
をみると、フルタイム労働者は 2545 万人から 2244 万人へと減少している一方でパートタ
イム労働者は 314 万人から 500 万人へと大幅に増加している11。ただし、ドイツの場合、
パートタイム労働者だからといって、日本のように公的年金や医療の事業主負担がなくな
るわけではない。したがって、ドイツにおけるフルタイム労働者の減少とパートタイム労
働者の増加という労働市場の変化が公的年金、医療の事業主負担の増加の一因とは考えに
くい。一方、表 11-2 には先の 1993 年から 2008 年にかけての自営業者と被雇用者の変化に
ついて割合で示されている。1993 年における自営業者と被雇用者の労働者全体に占める割
合は、それぞれ 9.66%と 90.34%であったのに対し、2008 年においてはそれぞれ 11.09%と
88.91%となり、自営業者のウエイトが高まっているのが分かる。また、被雇用者の内訳を
みると、フルタイム労働者の割合が 67.80%から 55.74%と低下する一方で、パートタイム
労働者の割合は 8.37%から 12.43%とパートタイム労働者のウエイトが高まっていること
が分かる12。
表 11-1 ドイツ労働市場の変化(総数)
雇用タイプ 1993 2008
1,000 人
自営業者 3,625 4,465
被雇用者 33,916 35,798
社会保険強制加入の被雇用者 28,596 27,458
フルタイム労働者 25,454 22,443
パートタイム労働者 3,142 5,003
不定期な労働者 3,034 8,425
合計 37,541 40,263
出所:ドイツ年金保険局資料
11 ここで、表 11-1 における不定期な労働者について 1993 年の値は 303 万 4000人となっている。この値はドイツ年金
局の資料の値であるが、しかしながら、被雇用者の内訳数を考えると、値は低いように思われる。したがって、1993
年における不定期な労働者数は表 11-1 の値より実際には高いと考えられる。この点は、留意する必要がある。
12 なお、表 11-1 同様に表 11-2 の不定期な労働者の 1993年の値は、実際には表の値より高いと考えられる。- 30 -
表 11-2 ドイツ労働市場の変化(割合)
雇用タイプ 1993 2008

自営業者 9.66 11.09
被雇用者 90.34 88.91
社会保険強制加入の被雇用者 76.17 68.20
フルタイム労働者 67.80 55.74
パートタイム労働者 8.37 12.43
不定期な労働者 8.08 20.92
合計 100.00 100.0
出所:ドイツ年金保険局資料
次に表 12 には自営業者としての期間などについて、専門職やその他の自営業、また年
金保険が強制加入ではない自営業者に分けて、まとめられている。まず、医師や弁護士な
どの自由業の専門職についてみてみると、自営業者になった回数としては平均で 3.2 回と
なっている。その他の自営業者は平均で 2.3 回となっている。一方、年金保険が強制加入
ではない自営業者の場合は、平均で 1.8 回となっている。この数字を単純に比較すると専
門職のほうが自営業者になった回数が多いということになる。これは、専門職の自営業者
のほうが比較的、被雇用と自営業の行き来がスムーズという側面を反映しているものと考
えられる。一方、年金保険が強制加入でない自営業者は、一度そのタイプの自営業者にな
ると、被雇用者といった他の職種に転職するのが難しいということを表しているように思
われる。次に平均的な自営業の期間であるが、専門職の自営業の場合は 11.3 年、その他の
自営業は 10.5 年、年金保険が強制加入でない自営業の場合は 7.2 年となっている。この場
合も専門職の自営業が最も長い期間となっているが、これは、専門職の自営業者はその仕
事を長期にわたり継続的に行えることの表れと言える。一方、年金保険が強制加入ではな
い自営業者が短い期間となっているのは、彼らがそれほど継続的に仕事を行えていないと
いうことを表していると考えられる。また、表 12 には累計の自営業の期間についても示さ
れている。専門職の自営業者の累計期間は 27.2 年、その他の自営業者のそれは 17.8 年、
年金保険が強制加入ではない自営業者のそれは 11.2 年となっている。それらの数字から、
累計の自営業の期間が最も短いのは、年金保険が強制加入ではない自営業者となっている。
その理由については、年金保険が強制加入ではない自営業者に比較的年齢の若い人が多い
ということから来ていると考えられる。
次に表 13 には自営業者を経験したかどうかの有無を生まれ年(コーホート)ごとの推
移をみたものが示されている。コーホートは 1942 年から 46 年生まれ(第 1 コーホート)、
1947 年から 1951 年生まれ(第 2 コーホート)、1952 年から 1956 年生まれ(第 3 コーホー
ト)、1957 年から 1961 年生まれ(第 4 コーホート)の四つのコーホートで自営業者の経験
の有無の推移をみている。まず、自営業を経験したことがない人の割合は、第 1 コーホー
トで 89.1%、第 2 コーホートで 87.2%、第 3 コーホートで 85.0%、第 4 コーホートで 83.5%
となっており、コーホートが若くなるに従って、自営業者を経験してない人の割合は低く- 31 -
なっていることが分かる。それらから必然的にコーホートが若くなるに従って自営業を経
験した人の割合は高まるが、専門職の自営業や、その他の自営業のカテゴリーではそれほ
ど経験の有無の割合が高まっている訳ではない。自営業者の経験の割合が高まっているの
は、年金保険が強制加入ではない自営業者であるが、第 1 コーホートでは 6.7%であった
のに対し、第 4 コーホートでは 11.6%と 1.73 倍も上昇している。したがって、若いコーホー
トほど、年金保険に関して強制適用から外れていることが分かる。
表 12 自営業としての期間
自営業者になった回数 平均的な自営業の期間 累計の自営業の期間
回 年
専門職 3.2 11.3 27.2
その他 2.3 10.5 17.8
年金保険強制加入
以外の自営業者
1.8 7.2 11.2
出所:ドイツ年金保険局資料
表 13 自営業者の経験の推移 (単位:%)
生まれ年
第 1 コーホート
1942-1946
第 2 コーホート
1947-1951
第 3 コーホート
1952-1956
第 4 コーホート
1957-1961
合計
自営業者を経験してな
い人
89.1 87.2 85 83.5 85.9
自営業者を経験した人
専門職 1.1 0.8 0.9 1.4 1
その他 3.2 3.6 4.2 3.6 3.7
社会保険強制加入以
外の自営業者
6.7 8.4 10 11.6 9.4
合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
出所:ドイツ年金保険局資料
また、ドイツ公的年金保険連合会の雇用タイプ別の純所得の資料によると、ドイツにお
ける被雇用者の純所得の分布のピークはおおよそ 1,100 ユーロから 1,300 ユーロにある。
一方、自営業者の純所得の分布のピークは二つあり、低い方のピークが 900 ユーロから
1,100 ユーロであるのに対し、高いほうのピークが 4,500 ユーロ以上の階層にある。したがっ
て、自営業者においては、一般的な被雇用者より少し純所得の低い層と、かなり純所得の
高い層に分かれていることが分かる。表 10 でみたように、ドイツにおいては自営業者の- 32 -
78%は公的年金に関し強制適用でない自営業者である。それら強制適用でないグループ自
営業者のうち、所得の高い自営業者は、民間の個人年金や貯蓄などで、老後の生活に備え
ることが比較的容易であることが想像される。しかし、所得の低い自営業者の中で公的年
金が強制適用でない自営業者はかなり多いことが資料から予想される。また、強制適用で
ない自営業者の中で任意に公的年金に加入している人はかなり少ないということである。
そのため、所得が低く公的年金が強制適用ではない自営業者は、老後の備えを十分に行え
ていないことが予想される。実際、低所得の自営業者で公的年金が強制適用でない自営業
者の老後の備えについては、ドイツにおいて問題になっている。老後の備えが不十分な自
営業者は、最終的には公的扶助の財源を圧迫することにつながる。その問題に対処するた
めに、近年、強制適用でない自営業者を含めた全ての自営業者が強制的な加入となるよう
な制度への変更がドイツで議論されるようになっている。
なお、表 14 にはドイツ労働社会省の資料による、雇用タイプ別の就労人口の推移がよ
り細かく示されている。先ほどの表 11-1 や表 11-2 のドイツ年金保険局の資料とは調査や
雇用タイプの定義等の違いもあり、同じ年で比べると自営業者や被雇用者の数値が若干異
なるが、自営業者数や非雇用者数の大きなトレンドは同じである。ドイツにおける就労人
口は 1991 年に 3437.7 万人であったが、2000 年代前半までには一旦、就労人口は徐々に低
下し 3200 万人台となる。しかし 2000 年代後半から就労人口が回復し 2011 年には 3576.2
万人まで増加している。雇用タイプ別に推移をみてみると、自営業者数は 1990 年代から直
近の 2011 年まで一貫して上昇してきているのが分かる。その中でも従業員なしの自営業者
の増加は 1991 年に 128.4 万人であったものが 2011 年には 225.5 万人と約 76%の増加となっ
ている。一方、被雇用者に関しては 1991 年には 3108.3 万人であったのが 2011 年には 3159.2
万人と、それほど変わらないが、2000 年代前半まで低下傾向にあった被雇用者数が 2000
年代後半からは増加へと転じている。なお、被雇用者の中で 1991 年から 2011 年の約 20
年で最も増加率が高いのがパートタイムでその間、96.7%の増加となっている。2005 年以
降の普通労働者と期限付き契約労働者の増加率を比べてみると、普通労働者の増加率は
7.2%であるのに対し期限付き契約労働者の増加率は 17.4%となっており、2000 年代後半
だけを比べてもやはり期限付き契約労働者の伸び率が高い。ここで、普通労働者は日本で
のフルタイム労働者あるいは正規労働者、期限付き労働者は日本での非正規労働者に分類
することも可能であるが、ドイツの場合、期限付き労働者であっても公的年金や公的医療
保険の事業主負担があるため、一概に日本との比較はできない。日本においては社会保険
の事業主負担の増加と非正規雇用者の増加との関連が指摘されることもあるが、ドイツに
おいては期限付き契約労働者であっても事業主負担はあるため事業主負担の増加と非正規
雇用の増加にはそれほどの関連はなく、その他の要因が非正規雇用の増加をもたらしてい
ると考えられる。- 33 -
表 14 ドイツの就労人口の推移 (単位:1000 人)
出所:ドイツ労働社会省資料
2-5 年金制度への財源移転
表 15 はドイツ労働社会省から年金制度への財源移転について示している。ドイツの公
的年金制度は基本的には保険料での運営が原則であるが、日本と同じく租税による補助も
財源になっている。年金制度への補助金総額としては 620 億〜650 億ユーロであり、法定
年金制度の総支出が 2370 億〜2500 億ユーロであるので、法定年金の総支出に占める補助
金の割合は 25〜26%となっている。また、法定年金制度には別の制度からの財源の移転も
ある。両親保険や障害保険からの財源移転がそれにあたる。その両親保険や障害保険から
の財源移転は 120 億〜130 億ユーロである。先の連邦政府からの補助金と他の制度からの
保険料の財源移転を合計すると 740 億〜780 億ユーロとなる。それらの補助金と他制度か
らの保険料の財源移転が法定年金制度の総支出に占める割合は 31%前後となっている。日
本においては公的年金制度の基礎年金の 1/2 に租税が投入されている。基礎部分は全体の
約半分程度の財源を占めることを考えると、公的年金に占める租税の割合は、ドイツが極
端に保険料だけに財源を頼っているという訳ではないことを示している。
契約社員 パートタイム ミニ・ジョブ 派遣社員
1991 34,377 2,859 1,575 1,284 31,083 26,832 4,251 1,782 2,555 652 -
1992 34,026 2,917 1,633 1,284 30,671 26,272 4,399 1,813 2,688 669 -
1993 33,482 3,003 1,683 1,320 30,084 25,822 4,262 1,620 2,767 648 -
1994 33,391 3,113 1,758 1,355 29,873 25,450 4,422 1,716 2,856 645 -
1995 33,364 3,159 1,737 1,422 29,803 25,093 4,710 1,842 3,026 749 -
1996 33,034 3,205 1,684 1,521 29,523 24,663 4,861 1,770 3,190 1,099 -
1997 32,713 3,314 1,697 1,617 29,116 24,018 5,098 1,822 3,392 1,310 -
1998 32,678 3,372 1,726 1,646 29,001 23,709 5,292 1,887 3,535 1,506 -
1999 33,071 3,379 1,730 1,649 29,451 23,638 5,814 2,165 3,834 1,743 -
2000 33,311 3,418 1,721 1,697 29,643 23,766 5,878 2,130 3,944 1,749 -
2001 33,498 3,411 1,729 1,682 29,726 23,740 5,986 2,085 4,127 1,815 -
2002 33,227 3,429 1,714 1,715 29,463 23,535 5,929 1,931 4,221 1,852 -
2003 32,772 3,506 1,696 1,810 28,963 22,828 6,135 1,969 4,421 1,949 -
2004 32,373 3,612 1,689 1,923 28,438 22,351 6,086 1,953 4,391 1,979 -
2005 32,962 3,802 1,687 2,115 28,831 22,084 6,747 2,394 4,679 2,425 -
2006 33,720 3,838 1,705 2,133 29,582 22,119 7,463 2,619 4,865 2,667 562
2007 34,321 3,843 1,727 2,116 30,175 22,493 7,682 2,659 4,946 2,772 614
2008 34,734 3,820 1,717 2,103 30,650 22,929 7,721 2,731 4,903 2,578 612
2009 34,629 3,877 1,740 2,137 30,582 22,990 7,592 2,640 4,901 2,574 560
2010 34,973 3,917 1,748 2,169 30,904 23,069 7,835 2,761 4,929 2,517 742
2011 35,762 4,018 1,763 2,255 31,592 23,674 7,918 2,805 5,025 2,673 775

被雇用者
計 普通労働者
期限付き契約

内訳
自営業
内訳
従業員あり 従業員なし

就労人口- 34 -
表 15 ドイツ労働社会省から年金制度への財源移転
単位:10 億ユーロ
出所:ドイツ労働社会省資料
2-6 ドイツの医療保険の特徴
ドイツの医療保険制度の特徴は普遍的で包括的な医療給付と言われている。また複数の
保険者を自由に選択することにより保険者は競争的であることも特徴に挙げることができ
る。ドイツにおける医療保険は公的に供給される法定医療保険と、私的に供給される民間
医療保険がある。それぞれの保険の原理原則は以下のようにまとめることができる。
法定医療保険(Statutory Health Insurance; SHI)
法的な要請によって提供される。
原理・原則
連帯原理(Solidarity Principle)
現物給付(Benefit as Kind)
必要に応じた給付(Benefit as Necessary)
法定医療保険の基金は非営利な公的機関
2007 2008 2009 2010 2011 2012
補助金総額 62.4 62.6 63.5 65.0 64.6 65.9
内訳
連邦補助 38.1 38.2 38.7 39.9 39.6 40.0
追加的連邦補助 17.9 18.2 18.7 19.1 19.2 20.1
その他補助 6.4 6.2 6.1 6.0 5.8 5.8
法定年金制度の総支出 237.1 240.4 245.8 249.2 251.1 256.2
26.3% 26.0% 25.8% 26.1% 25.7% 25.7%
法定年金制度へのその他の支払い
a) 保険料 12.6 12.5 12.5 12.6 13.2 12.7
内訳
両親保険 11.5 11.5 11.5 11.6 11.6 11.6
障害保険 1.1 1.0 1.0 1.0 1.6 1.1
法定年金制度の総支出 237.1 240.4 245.8 249.2 251.1 256.2
31.6% 31.2% 30.9% 31.1% 31.0% 30.7%
b) 還付金 3.2 3.1 3.2 3.1 3.2 3.0
合計 78.2 78.2 79.2 80.6 81.0 81.6
法定年金制度の総支出に占める補助の割合
法定年金制度の総支出に占める補助と他の保険からの
収入の割合- 35 -
民間医療保険
私的な契約によって提供される。
原則・原則
等価原理(Equivalence Principle)
費用償還原理(Cost Reimbursement Principle)
契約に応じた給付(Benefit as Contract)
民間の医療保険会社によって提供
ドイツの場合、日本とは異なり全ての人が必ずしも公的医療保険に加入する必要がある
わけではない。自営業者や所得が高い被雇用者などは公的な法定医療保険に加入せずに民
間の医療保険に加入することが可能である。それらの関係を図 8 にまとめている。まず、
法定医療保険に強制加入となるのは、月額 4,237 ユーロ以下の収入の被雇用者や年金受給
者である。それらの人々は、国の提供する法定医療保険が強制適用となる。さらに、法定
医療保険が強制適用となるのは学生と扶養家族である。なお、直近における法定医療保険
の加入者は約 6500 万人となっている。一方、月額 4,237 ユーロ以上の収入がある被雇用者
や年金受給者は法定医療保険に加入するか、あるいは民間の医療保険に加入するかの選択
ができる。さらに、自営業者と公務員も法定医療保険か民間の医療保険かの選択ができる
ようになっている。月額 4,237 ユーロ以上の収入のある被雇用者、年金受給者、さらに自
営業者や公務員の中で、法定医療保険を選択しているのは直近のデータでは約 500 万人と
なっている。一方。それらのグループの中で民間医療保険を選択し加入している人は約
1000 万人とされている。
図 8 法定医療保険、民間医療保険の加入者
出所:ドイツ保健省資料
月額 4,237 ユーロ以下の収入の被雇用者
や年金受給者。学生、扶養家族。
月額 4,237 ユーロ以上の収入の被雇用者や年
金受給者。自営業者、公務員。
法定医療保険に強制加入
法定医療保険
に任意加入 民間医療保険に任意加入
強制 選択 選択
約 6500 万人 約 500 万人 約 1000 万人- 36 -
2-7 法定医療保険
ここでは、法定医療保険について、詳しくみることにする。ドイツにおける法定医療保
険は現在、146 の法定医療保険基金(Statutory Health Insurance Funds: SHI-Funds)がある。
人々はその 146 の法定医療保険基金を自由に選択することができる。SHI-Funds は競争的
であるが、2009 年からは全ての SHI-Funds が原則的に同じ保険料となっている。一方、も
し一つの SHI-Fund にかかる費用が収入を上回る場合は追加的な保険料を課すことができ
る。また、2009 年からファンド加入者ごとの疾病リスクに関するリスク調整が行われるよ
うになっている。
法定医療保険への保険料は 15.5%となっている。そのうち 7.3%を事業主が 8.2%を労働
者が支払うことになっている。なお、月収が 3,825 ユーロを超えると、それ以上には保険
料はかからないことになっている。ここで、2012 年の財源をみると、1720 億ユーロが保険
料、140 億ユーロが税補助であり、財源の多くは保険料収入で賄われていると言える。な
お、個々の法定医療保険基金は追加的な保険料を徴収することが可能である。ただし、追
加的に徴収される保険料は、被保険者の保険料のみでファイナンスされ、また所得比例で
は徴収されない。また、追加的な保険料が個々人の収入の 2%以上になる場合は、その個
人は社会的補償の権利を有することになる。
図 9 には法定医療保険に関する財源の流れをまとめている。まず、加入者の保険料収入
と事業主負担、それに連邦政府からの税補助が一旦、中央医療基金(Central Health Fund)
に集められる。集められた財源は、単に各法定医療保険基金が徴収した保険料などをその
まま法定医療保険基金に分配するのではなく、それぞれの法定医療保険基金の間の加入者
の疾病リスクに関して調整を行った後に、それぞれ分配される。各法定医療基金は加入者
に対し医療費の還付を行うが、仮に中央医療基金から配分された財源が加入者の医療費支
出を上回った場合は、その余剰部分は加入者に払い戻されるとのことである。また、逆に
加入者の医療費が中央医療基金からの財源を上回る場合は、法定医療保険基金は追加的な
医療費を加入者から徴収することになる。- 37 -
図 9 法定医療保険の財源の流れ
出所:ドイツ保健省資料
表 16 には法定医療保険の 2012 年と 2013 年の財源についての予測が示されている。公
的医療基金(National Health Fund)の 2013 年の総収入は 1938 億ユーロの予定であり、そ
のうちの 1772 億ユーロが保険料収入によるものであり、税補助は 119 億ユーロである。公
的医療基金は中央医療基金(Central Health Fund)とも呼ばれるが、その中央医療基金から
各疾病金庫(あるいは法定医療保険基金)の疾病リスクによる財源調整を行ったあと、財
源が移転される。財源の移転額は 2013 年で 1902 億ユーロの予定であり、それが各疾病金
法定医療保険加入者
法定医療保険基金
中央医療基金
中央政府 法定医療保険加入者の保険料 雇用主の負担
税補助 所得比例的負担 所得比例的負担
疾病リスクに関する調整
中央医療基金か
らの財源が医療
費 を 上 回 る 場
合、保険料は償
還される。
リスクに関する調
整を行った医療費
を賄えない法定医
療基金は追加的な
保険料を課すこと
ができる。- 38 -
庫から保険加入者への医療給付や管理費用の支出にあてられる。なお、2012 年から 2013
年にかけての医療給付と管理費用の支出の伸び率は 4.7%と予想されている。2011 年から
2012 年にかけての伸び率も 3.5%であり、ドイツにおける医療に関する費用の伸びは低い
ものではないことが分かる。
表 16 法定医療保険の直近の財源予測
2012 2013
10 億ユーロ
保険料 172.2 177.2
税補助 13.8 11.9
公的医療基金の総収入 188.7 193.8
公的医療基金から疾病金庫への移転 185.4 190.2
医療給付と管理費用の支出 181.6 190.2
前年変化率(%) 3.5 4.7
疾病金庫の余剰/不足 3.9 -
疾病金庫の積立金 13.5 13.5
公的医療基金の余剰/積立 3.2 1.6
公的医療基金の積立金 12.7 14.3
出所:ドイツ保健省資料
2-8 法定医療保険の支出構造や改革
2011 年の法定医療保険の支出構造について示したのが図 10 である。まず、支出の中で
最も多くを占めるのが入院治療費で全体の 35.53%を占めている。次に大きいのが薬剤費
で 17.18%、その次に大きいのが外来治療費で 16.37%となっている。それらを合計すると
69.08%と全体の約 7 割を占めることになる。その 3 項目以外で割合がやや大きいのは疾病
保険給付の 5.05%と歯科治療の 5.02%である。前者の疾病保険給付は、治療行為等に関す
る医療費ではなく、病気の為に働くことができない期間に支払われる所得保障である。そ
れ以外の項目は全体の約 2 割程度となっている(なお、それ以外の項目の中には予防的健
康診断、リハビリ(1.39%)、早期診断(1.15%)、社会活動、予防(1.03%)、妊娠(0.62%)
などが含まれている)。ドイツの法定医療保険の支出構造の特徴としては、疾病保険給付も
含まれていることが一つ挙げられるが、それ以外にも入院、外来、薬剤費以外にも予防や
リハビリ、早期診断等、いわゆる予防医療の分野にも積極的に支出を進めている点を挙げ
ることができるであろう。
なお、法定医療保険制度の増加する医療費をコントロールし持続可能な制度を確立する
ための財源に関する法案が 2011 年に成立した。法定医療保険の保険料は事業主と被雇用者
で 15.5%にまで引き上げられているが、この水準で固定する。仮に将来の予想を上回る医
療費の増加については、定額の追加的医療費でファイナンスする。法定医療基金の自律性
の強化の為に、財による広範な社会的補助のスキームを導入する。2011 年に成立した法案- 39 -
はこれらを取り決めたものである。また、2012 年には医療供給体制を改善する法案が成立
した(GKV-Versorgungsstrukturgesetz)。この法案の骨子は地方に病院や診療所を開設するイ
ンセンティブを与える。例えば、より多くの医師の大学教育、報酬についての改革や仕事
と家庭の両立といった医療従事者の処遇改善、そして医療システムのより競争的な環境整
備といったことが挙げられる。その他にも医療と密接な関係のある介護保険制度について
も 2013 年に改革の法案成立が予定されている。その法案の骨子は、認知症の人がより適切
なサービスを受けられ、介護保険制度からより高い給付を受けることができるようにする、
保険料を所得の 2.05%に引き上げる、民間の介護保険に一人当たり年間 60 ユーロの補助
を与える、介護対象者のグループホームに補助を与える、といった内容が予定されている。
また、医療に関しては次のような改革が今後予定されている。まず、癌に関する早期診断
や全国的な癌に関する登録制度の導入。なお、癌に関する登録制度の導入は、癌患者の疾
病に関する情報を共有することにより治療の効率を上げることを目指しているものと考え
られる。また、患者の為の治療等の透明性の強化に関する法的整備、疾病予防についての
強化などを目指す法案などが予定されている。
図 10 法定医療保険の支出構造(2011 年)
出所:ドイツ保健省資料- 40 -
2-9 ドイツの社会保険と未納や非加入について
ドイツの社会保障制度は社会保険により運営されているものが多く、年金保険、医療保
険、労働災害保険、失業保険、介護保険が社会保険で運営されている。ドイツは社会保険
を創設した国ということもあり、社会保険の運営は保険料を原則とはしているが、年金制
度にみられるように、かならずしも保険料だけではなく税も投入されている。ドイツの年
金制度は前述のように職業によって分立した制度である。被雇用者であっても職業によっ
ては制度の異なる年金制度に加入し、また自営業者でも職業等によって異なる制度に加入
することになる。例えば、自営業者であっても医師や弁護士などの専門職のグループの年
金制度や職人のグループの年金制度、芸術家、作家、ジャーナリスト等のグループの年金
制度、経済的に脆弱な職業のグループの年金制度、さらに農業従事者の年金制度もある。
それらの自営業者への年金制度は強制適用という形で日本と同じく強制加入となる。一方、
それらのグループに属さない自営業者は日本と異なり任意適用という形で年金制度は任意
加入となっている。その任意加入のグループは自営業者の中で 78.0%と大きな部分を占め
るが、それらの自営業者の中で任意加入し年金保険料を払っているのは、かなり少ない割
合とのことである。もちろん、それらのグループの中には個人年金に加入している方もい
ると思われるが、多くの人は実際のところ民間年金や公的年金のいずれにも加入していな
いようである。そのため、ドイツの自営業者の非加入率を日本の国民年金未納・未加入率
を同じようにみなすとすれば、ドイツにおいては年金制度から抜け落ちているグループが
多くいることになる。
一方、ドイツの医療保険も社会保険方式ではあるが疾病金庫と呼ばれる保険者が特徴的
である。疾病金庫は現在のところ全ドイツで 146 あるが、被雇用者であっても自営業者で
あっても、どの疾病金庫を自由に選んでよいことになっている。このように保険者を自由
に選べるのが大きな特徴であるが、自営業者の非加入は年金制度と同じように起こってい
る。ドイツの場合、年金制度でみたように、自営業者でも医療保険制度でも任意加入のグ
ループがあり、これは自営業者の多くを占めている。任意加入グループにおける医療保険
への非加入も実のところ少なからずいるようである。
ドイツにおいては、日本のようにパートタイム労働者や非正規雇用者であっても事業主
負担があり、年金や医療制度としては被雇用者制度での枠内である。したがって、非正規
雇用の増加が年金や医療の非加入をもたらしているわけではない。一方、ドイツの就労人
口の変化をみると、従業員なしの自営業者が近年、顕著に増加してきている。これらの多
くは年金や医療に対し任意加入のグループに該当するとみられている。ドイツにおいても、
実は公的年金や医療への非加入の問題が、社会的な問題になっているということであるが、
その背景には従業員なしの自営業者の増加が一つの要因となっていると考えられる。従業
員なしの自営業者は一般的に所得水準が低い。ドイツにおいては、これまで自営業者とい
うのは、比較的経済的に強いグループとみられていたため年金や医療の任意加入というの
が自然な考えであったように思える。しかし、近年のドイツにおける経済的に脆弱な立場
の自営業者の増加は、自営業者は経済的に強いという伝統的な考えが、ドイツの社会情勢
に合わなくなっているように思われる。そのため、ドイツにおいても、自営業者の非加入- 41 -
の問題は今後の重要な政策的課題だと考えられる。今回は時間の制約からボンに所在する
ドイツ連邦会計検査院(BRH)を訪問することはできなかったが、連邦保健省の担当者か
ら BRH が自営業者等の非加入の問題を重視し、調査しているとの説明があった。
ここで、ドイツにおける社会保険の徴収はスウェーデンとは異なり国税庁が社会保険と
税を一体的に徴収しているわけではなく、どちらかというと日本と同じように税は国税庁
が徴収し医療や年金などの社会保険に関しては疾病金庫が徴収し、税と社会保険の徴収を
別の組織が行っている13。ドイツにおいても国税庁と疾病金庫の間での徴収業務に関する
情報のやりとりは一定程度行われているとのことである。したがって、ドイツにおいても
税と社会保険の徴収の効率化は進められてはいるが、やはりスウェーデンのように国税庁
が社会保険も徴収する場合に比べると、徴収業務の効率性はやや落ちるのかもしれない。
また、支払う側にとっても税の未納に対するペナルティーと社会保険の未納に対する実質
的なペナルティーの大きさを比較すると、社会保険料より税の支払いを優先するかもしれ
ない。
13 なお、疾病金庫が全ての社会保険料を代理徴収しているのは疾病金庫が一番早くに設立されたという歴史的な経緯
によるところがある。一方、ドイツでは税金についても連邦レベルの国税庁がないことから州の税務当局が連邦税、
州税ともに代理徴収している。- 42 -
3 まとめ
最後にスウェーデンとドイツの社会保険と未納・未加入(あるいは非加入)についての
まとめから日本への示唆を考えてみたい。まず、スウェーデンでは年金制度に代表される
社会保険制度での未納・未加入は現在のところ深刻ではないということを述べた。スウェー
デンにおける未納・未加入がそれほど起こっていない要因には主に二つの要因があると思
われる。一つは、スウェーデンの両親保険に代表される子育て支援が手厚く、さらにス
ウェーデンの公的年金制度は給付と負担の関係が明確であるため、未納・未加入に陥りや
すい若年層にとっても社会保険料を支払うインセンティブが高いことが挙げられる。もう
一つは、スウェーデンの国税庁における税と社会保険料の一体徴収や、強制徴収庁という
保険料徴収に対し権限の強い行政機関の存在といった、社会保険料における徴収側の役割
や権限の強さが低い未納・未加入につながっていると考えられる。しかも、徴収側は国民
番号制などを通じて、国民の所得や資産など、かなりの精度で情報管理を行っている。徹
底された所得、資産などの情報管理は、だれがどれだけの保険料を払う必要があるかごま
かしが効かなくなり、未納や未加入を低いものにすると言えよう。さらに、スウェーデン
の場合は、国民が政府を信頼しており、徴収業務や所得・資産などの情報管理に比較的協
力的である。このような国民の政府に対する信頼があるため、徹底した情報管理が可能と
なると考えられ、結果的に社会保険の低い未納・未加入を実現できていると言えよう。
一方、ドイツでは自営業者の公的年金保険制度や公的医療保険制度への非加入が高い割
合で存在し、それら非加入の自営業者をどう年金や医療保険制度に加入させるかが問題に
なっているようである。年金制度や医療保険制度への非加入の背景には、経済的に脆弱な
自営業者の増加が一つの大きな要因と考えられる。もちろん、ドイツも日本と同じく低い
出生率が回復せず、少子高齢化が深刻である。そのため、賦課方式に基づく社会保障制度
が生み出す世代間格差が若年の自営業者の年金、医療の非加入を生み出す一つの要因だと
考えられる。しかしながら、今回の調査で判明したのは、年金や医療の非加入者の多くは
経済的に脆弱な自営業者ということであった。ドイツは伝統的に自営業者は経済的に強い
立場にあるという考えがあったが、近年の社会経済状況の変化は伝統的な考えとは異なる
経済的に脆弱な自営業者の急速な増加をもたらすことになった。そういった、社会の変化
にドイツの年金、医療制度が対応できていないという側面がある。さらに、ドイツにおけ
る社会保険はスウェーデンのように国税庁が税と一体的に徴収しているわけではない。税
については州税務署が、社会保険に関しては疾病金庫が徴収する形になっている。税務署
と疾病金庫の間で一定程度の情報のやりとりがあるとは言え、国民番号制などを利用した、
情報のより効率的な共有とはなっていないようであり、またドイツにおいては所得や資産
の情報管理がスウェーデンのように徹底されているわけではない。国民番号制の積極的な
利用や、政府の情報管理などに対するドイツ国民の抵抗感は強く、結果的に社会保険料の
徴収に対して協力的でない状況がしばしば起こると考えられるだろう。
それでは、日本の状況はどうかというと、ドイツの状況と似ている。日本においても税
と社会保険料の徴収は国税庁と日本年金機構や地方自治体というように組織が分かれてい
る。仮に徴収業務の組織が分かれていたとしても、国民番号制などを通じた資産、所得の- 43 -
把握が精度の高いものであれば、社会保険の未納や未加入は現在よりは下がると考えられ
る。しかしながら、日本の場合も国民番号制の積極的な利用や政府による情報管理につい
ては国民の間での抵抗が依然として強い。結果的にわが国においても社会保険料の徴収に
対し非協力的な状況がしばしば起こっている。もちろん、わが国における少子高齢化の急
速な進展による若年層の負担増や経済的に脆弱な非正規雇用者の増加が社会保険の未納・
未加入に大きな影響を与えている。しかしながら税と社会保険料の一体徴収や、徴収業務
をより効率的にすると考えられる国民番号制が未だ導入されていないことなども少なから
ず社会保険の未納・未加入に影響を与えていると思われる。そのため、日本における社会
保険の未納・未加入の改善のためには、非正規雇用者の厚生年金への適用範囲拡大のほか
にも、国民番号制を導入し社会保険の徴収業務の効率化を図ることは検討に値するもので
あると考えられる。- 44 -
【参考文献】
スウェーデン社会保険庁(2012)“Social Insurance in Figures 2012”
スウェーデン国税庁(2008)“Tax Map Gap for Sweden−How was it created and how can it be
used ? Report 2008: 1B”, Swedish National TaxAgency
スウェーデン国税庁(2011)“Taxes in Sweden 2011−An English Summary of Tax Statistical
Yearbook of Sweden”, Swedish TaxAgency
スウェーデン年金庁(2011)“Orange Report:Annual Report of the Swedish Pension System”
宮里尚三(2013)「社会保険の未納・未加入に関する厚生分析:アドバースセレクションの
視点からの研究」『会計検査研究』第 47 号、2013 年 3 月
スウェーデン年金庁資料
スウェーデン強制徴収庁資料
ドイツ年金保険局資料
ドイツ保健省資料
ドイツ労働社会省資料- 45 -
【付録 調査日程】
平成 24 年
11 月 12 日(月)午前
スウェーデン会計検査院 (Riksrevisionen)
社会保険料の徴収に関する検査等について
Mr. Peter Rostedt, Director of International Relations
Mr. PeterAf Wetterstedt, International Relations Officer
Mr. Jimmy Hollen,Audit Director
11 月 12 日(月)午後
スウェーデン社会保険庁 (Forsakringskassa)
スウェーデンにおける社会保険制度について
Ms. Bodhi Pieris, International Relations Officer
11 月 13 日(火)午前
スウェーデン年金庁 (Pensionsmyndigheten)
スウェーデンにおける年金制度について
Mr.Arne Paulsson, Insurance Specialist
Ms. Lena Larsson, International Coordinator
11 月 13 日(火)午後
スウェーデン国税庁 (Skatteverket)
スウェーデンにおける国税庁による社会保険料の一括徴収システムについて
Mr. Kay Kojer, Tax Expert, Director of Development
11 月 14 日(水)午前
スウェーデン強制徴収庁 (Kronofogdemyndigheten)
強制徴収庁が行う税と社会保険料の強制徴収業務について
Mr. Lars Klint, International Coordinator
Mr. Philip Berg, Legal Officer
Mr. Olof Dahnell, LegalAdvisor
11 月 15 日(木)午前
ドイツ年金保険局(年金保険連合会) (Deutsche Rentenversicherung Bund)
ドイツにおける年金保険料の徴収等について
Mr. Markus Sailer, Department of Research, Development and Statistics- 46 -
11 月 16 日(金)午前
ドイツ連邦労働社会省 (Bundesministerium furArbeit und Soziales)
ドイツにおける社会保険制度について(年金)
Mr. Michael Rohrbach, Basic Issues, Financing and Pension Adjustment
11 月 16 日(金)午後
ドイツ連邦保健省 (Bundesministerium fur Gesundheit)
ドイツにおける社会保険制度について(医療・介護)
Mr. Thomas Renner, Head of Division (General Aspects of Financing in Health Policy)

http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/2013_sw.pdf


02. 2013年4月20日 11:54:07 : niiL5nr8dQ
【悲報】 ハーゲンダッツ最後の店舗が閉店 日本から完全消滅
1 名前: ラグドール(新疆ウイグル自治区):2013/04/19(金) 15:39:17.93 ID:8W6F4SePP
衝撃的な事実が判明した。アイスクリームブランド大手の『ハーゲンダッツ』の店舗(コーンやカップで提供する店)が、2013年4月25日をもって閉店することが判明した。つまり、日本から『ハーゲンダッツ』の店舗が完全に消滅することになる。

・『ハーゲンダッツ』の店舗が消える
日本には『サーティワンアイスクリーム』や『コールドストーンクリーマリー』、『Ben & Jerry’s』、 『ブルーシール』など、店舗でコーンやカップのアイスクリームを提供するアイスクリーム ブランドがいくつかある。その仲間から
『ハーゲンダッツ』が消えてしまうのだ。

・最後の店舗は新浦安にある1軒
コンビニの『ハーゲンダッツ』では食べられないトッピングやホイップクリーム、そして
リジナルメニューなども食べられなくなってしまう。2013年4月18日現在、日本に残っている
『ハーゲンダッツ』の店舗は千葉県・新浦安にある1軒のみだが、2013年4月25日をもって閉店する。
http://rocketnews24.com/2013/04/18/318960/

・100円で追加できるホイップクリームの繊細な味
特にオススメなのが、店舗でしか食べられないキャラメルウォールナッツ、ベリーチーズタルト、
クッキー&セサミクリーム。『ハーゲンダッツ』クオリティーが奏でる濃厚かつディープな
味わいが堪能できる。あまりにも美味しすぎて、サンデーとカップを注文し、計6個も
食べてしまった……。100円で追加できるホイップクリームの繊細な味にも注目したい。

・海外には多数の店舗がある
『ハーゲンダッツ』は、公式サイトで店舗が消滅してしまうことを大々的に告知していない。
なので「ええっ!? なくなっちゃうの!? 知らなかった!」という人もいるかもしれない。
日本からはなくなってしまうが、海外には多数の店舗がある。海外旅行ついでに『ハーゲンダッツ』
を食べに行くのも楽しいかもしれない。もしくは、日本でリニューアルオープンして
くれると嬉しいのだが……。
http://rocketnews24.com/2013/04/18/318960/


3 : イリオモテヤマネコ(長屋):2013/04/19(金) 15:40:26.99 ID:89ZrYKBm0
まじか

14 : マーゲイ(東京都):2013/04/19(金) 15:44:19.80 ID:MH4U+kvG0
まじっすか

46 : ラグドール(岩手県):2013/04/19(金) 16:01:32.13 ID:R3l3BfYlP
嘘だろ・・・

7 : ピューマ(東京都):2013/04/19(金) 15:43:18.18 ID:GX8NHLr40
渋谷になかったけ

8 : 黒(埼玉県):2013/04/19(金) 15:43:24.41 ID:CPmRfRFC0
マジか…
新浦安の店よく行ったわ二回ぐらい

11 : ベンガル(静岡県):2013/04/19(金) 15:44:01.81 ID:JWzoteZY0
ららぽーとにあったのもなくなってるの?!

12 : シンガプーラ(東京都):2013/04/19(金) 15:44:06.83 ID:krF53m+D0
外苑前にもあったよね
いまチェーンの雑貨屋になってるけど

15 : ペルシャ(やわらか銀行):2013/04/19(金) 15:44:48.60 ID:EgLVURil0
コンビニので充分だわ

17 : ラグドール(東京都):2013/04/19(金) 15:45:47.02 ID:k3XAHVaTP
自分ではハーゲンダッツ食べようと思わないけど
人の家に行くときに持っていくハーゲンダッツの便利さは異常。

誰でもそれなりに喜んでくれる
嫌いだという人はいない

31 : ソマリ(福島県):2013/04/19(金) 15:54:41.38 ID:er7DomCC0
>>17
ちょっとだけ値段設定が高いってところが使い勝手いいよね

20 : カラカル(関西・東海):2013/04/19(金) 15:49:34.10 ID:vBHaeHoK0
31あればいいし禿脱いらねーよ

21 : 黒(愛知県):2013/04/19(金) 15:49:36.84 ID:Km6qkJlw0
高いもんなー
普通のアイスの3倍の値段でしょ

22 : スナネコ(公衆):2013/04/19(金) 15:49:45.62 ID:HLW+gZaB0
最後に残ってたのが千葉新浦安の1軒のみってことは、
もうすでにずっとまえから、
ほとんどの日本人は事実上店舗アイスを食べられない状態だったんじゃねの?
むしろどうってことないよ・・・

23 : ラグドール(茸):2013/04/19(金) 15:51:14.32 ID:Ixw5NkxSP
歌舞伎町にもあったけど、潰れてチケットショップになったしな

好立地関係無く潰れてるようでは、やはり無理だろ

25 : キジ白(新潟県):2013/04/19(金) 15:52:27.62 ID:1CMAjWAe0
味は悪くなかったけど、値段に箔を付け過ぎて
失敗した例になっちまったな。

26 : ノルウェージャンフォレストキャット (東日本):2013/04/19(金) 15:52:45.30 ID:6FFytzZ80
へー
円高のときでも価格上げてるから結構強気だなと思ったら
もしかして厳しい状況なの?

27 : 斑(家):2013/04/19(金) 15:53:09.81 ID:Rmtw0aarP
店舗なんか有ったのか

30 : ぬこ(山形県):2013/04/19(金) 15:53:50.46 ID:gZRjdJCM0
店舗があったことすら知らなかった

32 : ラグドール(庭):2013/04/19(金) 15:54:44.60 ID:4LVHAWFwP
おいどんの故郷の熊本店も無くなってたのか

33 : ボルネオウンピョウ(庭):2013/04/19(金) 15:54:59.28 ID:x1Rtm7W8T
いくらなんでもアイスのわりに高過ぎるねん
しかも日本では強気な価格設定って話だし

34 : シャム(東京都):2013/04/19(金) 15:55:30.06 ID:iGhMw+/e0
銀座のレストランみたいなのももうないの?

35 : サバトラ(大阪府):2013/04/19(金) 15:56:33.63 ID:bCLn3jAD0
梅田になかったっけ?

36 : アンデスネコ(大阪府):2013/04/19(金) 15:56:36.36 ID:opXuB0hc0
昔、道頓堀のメチャクチャ一等地に
店内にメリーゴーランドがあってそれに乗りながら食べられる
ハーゲンダッツがあった

45 : アメリカンカール(埼玉県):2013/04/19(金) 16:01:09.95 ID:roZUwUZu0
あれテレビで行列の店ってやってたぞ
まあ5年くらい前だけど

47 : コラット(チベット自治区):2013/04/19(金) 16:01:53.04 ID:RIs6+MzS0
ハーゲンダッツは美味いけど高すぎる。
あんな高値で売れると思ってる方がおかしい。

50 : ジャガーネコ(宮城県):2013/04/19(金) 16:02:52.84 ID:v9MBpqDm0
えええええ
夏に店舗で買ったお中元貰ってたのに
どうすんだよ。クッキーにアイス挟んだの
まじ美味いよな。

52 : マレーヤマネコ(東京都):2013/04/19(金) 16:03:42.35 ID:8ldSbyLm0
ホブソンズが無事ならそれでいい

53 : シャルトリュー(東京都):2013/04/19(金) 16:04:38.46 ID:JIM3N18I0
ハーゲンダッツより明治のグランのほうが最近好きなんだけど
チェーン店のハーゲンダッツは好きでよく食ってたなあ

57 : ラグドール(福岡県):2013/04/19(金) 16:07:49.92 ID:AM4t/d75P
へぇーハーゲンダッツの店なんてあったのか
いきたかったなぁ

58 : コドコド(山形県):2013/04/19(金) 16:08:47.70 ID:TtyFhq1s0
( ´)Д(`)コンビニのしか食ってない

59 : ツシマヤマネコ(愛媛県):2013/04/19(金) 16:10:14.80 ID:plFFJF7P0
数年前まで松山にすらあったというのにどういうこっちゃい

60 : サバトラ(神奈川県):2013/04/19(金) 16:11:41.55 ID:SCNB0fyI0
新宿駅構内のとこ撤退してたのか
そういやこの前見かけなかったな

69 : ラグドール(アメリカ合衆国):2013/04/19(金) 16:15:45.97 ID:W1zn7UnFP
>>60
あそこ客入り良さそうだったのにな
一度も寄ったことないけど

61 : 猫又(富山県):2013/04/19(金) 16:12:14.70 ID:sZbahN8E0
しかし高い
がりがりくんのがうまいのに

62 : パンパスネコ(神奈川県):2013/04/19(金) 16:12:22.39 ID:6XO7eeDP0
カップはアメリカじゃ半額で食べれるらしいね。なんで日本はあんなに割高なんだか
なんばCityもズーラシアもいつの間にか閉店しててちょっとびっくりした

70 : ウンピョウ(広島県):2013/04/19(金) 16:16:40.11 ID:fGINporu0
そういや、近くにあったのが無くなってた
日本中からなくなるのか
なんで?

71 : ライオン(東日本):2013/04/19(金) 16:17:57.16 ID:EJMcX6dg0
10年ぐらい前だけど ハーゲンダッツってそこらじゅうにあったような
いつのまにか1店舗だけになっていたとか・・・

73 : ジャガランディ(東日本):2013/04/19(金) 16:18:39.09 ID:R2udMpdA0
サ ー テ ィ ー ワ ン 大 勝 利  

74 : ラグドール(福岡県):2013/04/19(金) 16:19:23.91 ID:OaTeHi4Y0
価格設定とちょっとの企業努力で店舗として充分に生き残れるブランド力あったのに。
経営陣は無能か?
まぁコンビニで買えるからいいけどさ。

77 : エジプシャン・マウ(京都府):2013/04/19(金) 16:20:31.45 ID:s5dQxRUT0
マジかよ・・・好きだったのに

86 : 斑(関東・甲信越):2013/04/19(金) 16:25:42.86 ID:sqCuXnNxP
津田沼にも南船橋にもあったがなくなってたのか
美味くて好きだった

93 : 三毛(芋):2013/04/19(金) 16:33:18.77 ID:+fgVHFbY0
河原町の店なくなったんか?
31のほうが好きだから行ったことないけど

97 : サビイロネコ(dion軍):2013/04/19(金) 16:37:00.02 ID:eWTRgZhU0
小売りさえありゃいいよー

98 : ハイイロネコ(栃木県):2013/04/19(金) 16:37:03.21 ID:xz+GCCTp0
4〜5年前には宇都宮にもあったのにな。
親戚や友達の家に持って行くのにちょうど良かったのに。
サーティンワンじゃ安っぽいし。

103 : ロシアンブルー(長野県):2013/04/19(金) 16:39:56.93 ID:Q6U4LndR0
中央道下りの談合坂SAにあった頃はよく寄っていたが
改装と同時に無くなったんだよな・・・残念。

106 : イリオモテヤマネコ(東京都):2013/04/19(金) 16:40:22.29 ID:HVE0DZO60
新宿小田急エースにあったじゃん
あれ?

110 : 茶トラ(長屋):2013/04/19(金) 16:42:36.63 ID:EES5TeeN0
新浦安のハーゲン無くなるのか
むかーし行ったことあったなあ…懐かしい

118 : シャム(やわらか銀行):2013/04/19(金) 16:48:19.65 ID:AdXHdAjd0
コンビニで十分よ、抹茶味はハーゲンダッツが美味いわ

122 : マーゲイ(千葉県):2013/04/19(金) 16:50:24.76 ID:OTr42pMx0
え、新浦安のって最後の一軒だったの!??

123 : 斑(兵庫県):2013/04/19(金) 16:51:31.06 ID:V4nTqOVVP
うちの近くにあった店舗は2,3年前に消えたけど
いつのまにか1店舗にまで減ってたんだな

141 : ボルネオウンピョウ(大阪府):2013/04/19(金) 17:13:48.85 ID:o3qGiCjf0
梅田の3番街のとこも立地はよかったのになくなってるから
なんでだろうとは思ってたけど・・・

144 : 猫又(石川県):2013/04/19(金) 17:18:47.95 ID:IR3/Y3jg0
高校の時好きでよく行ってたのにいつの間にかなくなってた
ホムセンの横にあった
31より禿のが美味くて好きだった

148 : コーニッシュレック(和歌山県):2013/04/19(金) 17:23:26.27 ID:WW1rirnN0
日本人は外で食べるアイスはベタなソフトクリームが好きだから
ハーゲンダッツはコンビニで買って家で食えるしな

でも、完全になくなるとそれはそれで寂しいけど

151 : シンガプーラ(埼玉県):2013/04/19(金) 17:26:30.45 ID:ZCii4Sgk0
アイス屋さんは都会の若者が多いデートスポットくらいじゃないと生き残れないでしょ

154 : バリニーズ(庭):2013/04/19(金) 17:29:54.43 ID:1Mcdpr9B0
ラムレーズン好きだったのに

161 : アビシニアン(dion軍):2013/04/19(金) 17:35:26.18 ID:0F3IbHfT0
まああの値段じゃなあ・・・

173 : ラ・パーマ(茨城県):2013/04/19(金) 17:46:18.09 ID:hNoX0Y4W0
まあコンビニとかスーパーで買えればそれでいい


元スレ:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news/1366353557/


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