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ユーロ危機:ドイツのジレンマ 中銀手探り FRBデフレ 勝者総取 アベノミクス 中国通過
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/575.html
投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 19 日 01:25:20: .WIEmPirTezGQ
 

(回答先: 中央銀行がデフレに打ち勝つ方法 黒田国債金利 仏赤字削減 ECB利下? キプロス金売 FRB雇用 アベノミX TPP 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 18 日 01:58:51)


ユーロ危機:ドイツのジレンマ
2013年04月19日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年4月13日号)

ドイツ国民はユーロ圏のスケープゴートにされることに耐えられなくなってきている。


ドイツのメルケル首相をナチスと重ねる様子が、また各地で見られるようになっている〔AFPBB News〕

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相の写真に施されたヒトラーの口ひげと鉤十字がまたしても、ユーロ危機を象徴する図像のモチーフとなっている。直近ではキプロスで見られた。

 シンクタンク、DIWベルリンのマゼル・フラッチャー社長は、金融混乱の最中には必ずスケープゴートを仕立てる責任転嫁が起きると言う。

 同氏いわく、ドイツは1990年代後半のアジア危機時の国際通貨基金(IMF)に取って代わり、メルケル首相がミシェル・カムドシュ氏の役割を果たしているという。当時IMFの専務理事だったカムドシュ氏は1997年に、失意にあるインドネシア大統領が厳しい緊縮策に署名するのを腕組みをしながら見下ろす姿が写真に撮られた。

強いヤギをスケープゴートにすると・・・

 しかし、誰かをスケープゴートにすることは、当のヤギが強く、自分が犠牲になっていると感じ始めると、危険なこともある。

 ドイツ人はまだ公然とは怒っていない。怒りを露にすることは、第2次世界大戦以来、過去を贖(あがな)い、ヨーロッパ人として良きパートナーになろうと努めてきた国民らしくない行動だ。最近のある世論調査では、ドイツ国民の34%が、南欧の人々の怒りを理解できると答えている。

 だが、ムードは変わりつつある。南欧の人々は、ドイツが自分たちに過度な緊縮を強いており、十分な連帯感を示していないと感じているかもしれないが、ドイツ人の見解は異なる。

 まず、ドイツ国民は自分たちが既に連帯感を示したと思っている。ベルリンの壁が崩壊してから四半世紀近く経った今も、彼らは東ドイツに連帯税を支払っている。中には税収をブレーメンのようなドイツ国内の弱い州に移転するところもある。多くの人は、連帯が一旦定着すると、自発的なものではなくなり、束縛に変わると結論付ける。

 また、4月半ばに欧州中央銀行(ECB)が発表した調査でドイツの平均的な世帯の資産が平均的なスペイン、イタリア、キプロス世帯のそれを下回ることが明らかになったにもかかわらず(もっとも、この調査については、ドイツの方が1世帯当たりの大人の数が少なく、賃貸住宅に住む傾向が高いことも影響している)、ドイツ人はユーロ圏の救済策のリスクの大半を負っている。

 第2に、ドイツ国民は、ドイツは10年前に自国に競争力がないことを認識して痛みを伴う改革を進め、今、その成果が表れていると主張する。危機に直面している国々は、それに倣うべきだというわけだ。

 そして3つ目に、ドイツ国民はユーロ危機を招いたのは主に規則違反(ドイツ自身もルールを破った)であり、同じ過ちを繰り返してはならないと考えている。ある外交官が言うように「連帯は重要だが、やはりルールに従うべきだ。連帯は場当たり的な施しではない」のだ。

 総合的に見ると、そうした態度には倫理的な物語の響きがある。実際、ドイツ語に直訳が存在しない「モラルハザード」という英語は、ベルリンでの会話に欠かせない言葉になった。

 もともと保険の経済に由来するモラルハザードは、損害が生じたら他者が支払う立場にある時に人がリスクを取る動機を指す。懸念されるのは、ドイツの救済資金のせいで、危機国が改革を避けることになる事態だ。

 そうした見方をするのはドイツ人だけでない。オランダ人、フィンランド人、スロバキア人も概して共感している。ドイツを際立たせているのは、同国が大国で、欧州の中心に位置している点だ。

居心地悪そうにEUの中心にいるドイツ

 ケンブリッジ大学教授で新書『Europe: The Struggle for Supremacy』の著者でもあるブレンダン・シムズ氏などの歴史学者にとっては、これは気味が悪いほど馴染みがある。

 欧州は長年、「大ドイツ主義」の問題と対峙してきた。ドイツは弱すぎることもあったし、強すぎることもあった。もしくは、米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官が1871年のドイツ統合直後について言及したように、ドイツは「欧州にとっては大きすぎるが、世界にとっては小さすぎた」。

 シムズ氏は次のように主張する。「ドイツは現在、主にドイツの力を抑制するために考案されたが、実際はドイツの力を高める役目を果たし、その設計上の欠陥が意図せずしてその他大勢のヨーロッパ人から主権を奪った欧州連合(EU)の中心に居心地悪そうに座っている」

 問題は、ドイツが悪びれることなくリーダーシップを発揮して自国の力を利用できるかどうか、だ。ドイツの過去を考えれば、同国の政治文化はそれを試すことさえ妨げるだろう。ドイツの元外相のヨシュカ・フィシャー氏は、「若いリーダー(young leaders)が集まる会議に行くのはいいが、若い総統(junge Führer)の会議はごめんだ」と軽口を叩く。

 大半のドイツ人は、外国人が再び自分たちを毛嫌いしたり、怖がったりするようになることを心配している。だが、近隣諸国はそれほど懸念していない。ポーランド外相のラデク・シコルスキ氏は実際、2011年にベルリンで行った演説で「私はドイツの力を恐れるよりも、むしろドイツが何もしないことの方を恐れ始めている」と述べた。

 ドイツの一部の学者はシコルスキ氏の意見に同意する。コンスタンツ大学のクリストフ・シェーンベルガー氏は、ドイツのリーダーシップを支配と捉えて非難すべきではないと考えている。リーダーシップはシステムを守る。例えば、ユーロ圏で最後の貸し手の役割を果たすのだ。一方の支配は、威圧的な力の主張だ。

 シェーンベルガー氏は、ドイツのリーダーシップに代わる選択肢がないために「ドイツのエリート層と一般国民は、国として内向きになることを控えている」と言う。同氏の考えでは、欧州の完全な政治同盟(スイスや米国といった連邦国家のような同盟)のみが一加盟国が覇権国になる必要性を取り除く。だが、それは「SF」の世界の話だという。

ユーロにとって最大のリスクはドイツの離脱か

 これが、9月の総選挙に向けた長い選挙戦に入ろうとしているドイツでの大きな議論だ。新たな世論調査では、ドイツ人の69%がユーロを維持したいと思っていることが分かった。これまでの世論調査よりは高い数字だ。だが、ドイツマルクに戻りたいと思っている人々は今、政党を手に入れた。先日、ベルリンで初会合を開いた新党「ドイツのための選択肢」だ。

 「ユーロにとって目下最大のリスクは、ギリシャの離脱ではなく、ドイツの離脱だ」。ベルリンにあるフンボルト大学の経済学部教授、ミヒャエル・ブルダ氏はこう主張し、ドイツが最近、フランスと米国から金準備を国内に移送したことは、ドイツの離脱は不可能ではないということを南欧に告げる巧妙なサインだと指摘する。

 もし、シムズ氏が正しければ、「ドイツは指揮を執っても痛い目に遭うし、執らなくても痛い目に遭う」。これに対してユーロは、ドイツがリーダーシップを発揮しない場合に限って痛い目に遭うのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37624

 

「手探り状態での舵取り」を認める中央銀行
2013年04月19日(Fri) Financial Times
(2013年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 中央銀行の大物数人が手探り状態で自国経済を舵取りしていると認めたことで、国際通貨基金(IMF)では、ゼロに近い低金利の長期的な副作用に対する懸念が高まっている。

 欧州中央銀行(ECB)の役員会に名を連ねたロレンツォ・ビニスマギ元理事はIMF春季総会の雰囲気をうまく捉え、「我々は先進諸国で起きていることを完全には理解していない」と述べた。

中央銀行を悩ます緩和策の副作用

 経済が機能する仕組みや政策で回復に影響を与える方法について不確実性が高いこの環境の中で、近く退任するイングランド銀行のマーヴィン・キング総裁は、「中央銀行が多くのことを約束し過ぎるように見えたり、中央銀行に対して過度な期待を抱かせてしまったりするリスクが存在する」と付け加えた。

 金融政策の専門家にとって、危機と戦うための政策手段――ゼロに据え置いた金利、長期金利を押し下げ、民間部門の支出を促すための紙幣増刷、金融市場の不安を鎮めるための取り組み――にひどい副作用がある可能性は頭の痛い問題だ。

 中央銀行の首脳は、自分たちが危機以前に勘違いし、インフレが安定していたことから金融の脆弱性を取り除いたと思い込んでしまったと説明した。

 米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン副議長は、世界のマクロ経済再考に関するIMFの会議で次のように述べた。「危機までの数年間で、伝統的に大きな役割を担っていた金融の安定が、金融政策の過程における『ジュニアパートナー』になってしまった」

 今問題なのは、中央銀行が回復を確実にするための取り組みの中で同じ過ちを犯していないかどうかだ。彼らは、将来牙をむく金融の歪みを醸成しているのではないだろうか?

 IMFは「国際金融安定性報告書(GFSR)」の中で、先進諸国で実施されている超緩和的な金融政策の終焉を望んでいないことをはっきり示している。IMFで金融の安定の責任を負うホセ・ビニャルス氏は、中央銀行の取り組みは「絶対に必要」だと述べた。

 だが、IMFは各国に、超緩和策によって与えられた一息つく余地を使い、金融システムを修繕すると同時に意図せぬ結果に対処するよう求めた。

IMFが挙げた3つのリスク

 IMFは、どれも金融緩和に関連している可能性がある3つの新たなリスクに言及した。まず米国では、企業の借り入れ(社債発行)の引受基準が、通常なら拡大と収縮の信用サイクルの末期に見られる水準まで緩和されているという。

 また、金融緩和政策が特に新興国企業による外貨建て借り入れという形で新興国経済に波及しており、その結果、こうした企業が為替リスクに脆弱になるとともに、新興国がホットマネーの国際資本移動に敏感になっているという。

 そして第3に、IMFは金融緩和の打ち切りが信用市場と米国経済を不安定にさせかねない市場金利の急騰を招くのではないかと心配している。「一言で言うと、我々は未知の領域にいる」とビニャルス氏は言う。

 中央銀行の間では、こうした懸念の妥当性について意見が分かれている。ビニスマギ氏は、中央銀行はこれまで以上に奇抜な金融政策の実験に追い込まれていると述べたが、イエレン氏は、FRBはうまくバランスを取れるようになったと言って聴衆を安心させようとした。

 「私の見るところ、急激な信用拡大を示す証拠やレバレッジの著しい増加、あるいは金融の安定を脅かす大きな資産バブルはない。だが、一部の関係者が利回りに手を伸ばしている兆しはあり、FRBはこうした状況を引き続き注意深く監視している」とイエレン氏は述べた。

誰も確信を持てない「不確実な世界」

 一方、キング氏が説明した問題は、不確実性があまりに蔓延しているため、自国が思ったよりも悪い状態にあることは分かってきたが、どれくらい悪いのか各国が確信できずにいる状況の中で、拡張的な金融政策が適切であるのかどうか誰も確信できない、ということだ。

 「自分たちが、そもそも金融危機につながった問題を再燃させるリスクを本当に冒していない」ことをどう確信できるのか、とイングランド銀行のチャールズ・ビーン副総裁はIMFのパネルに問いかけた。

 ビーン氏の問いかけは、経済の能力が大きく損なわれたため、中央銀行と政府が失地回復を図る中で、景気刺激型の政策が過度に長引く可能性が高いという不安を裏打ちしている。中央銀行は、金融政策が既に行き過ぎているという心配はしていなかったが、金融緩和からの出口が困難を極めることを危惧していた。

By Chris Giles

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37629


 

日銀の異次元緩和、前向きな一歩=IMF専務理事
2013年 04月 19日 00:52

トップニュース
4月の米フィラデルフィア業況指数、予想外の低下
3月の米CB景気先行指数は‐0.1%、7カ月ぶり低下
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北朝鮮、交渉開始には核開発放棄への取り組み示す必要=米

[ワシントン 18日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は18日、日銀が着手した異次元緩和は前向きな一歩と評価したうえで、国内景気の一段の刺激に向け、さらに債務削減と構造改革に関する野心的な措置が必要との考えを示した。

同専務理事は、「日本でこのほど発表された野心的な金融緩和の枠組みは、われわれの視点から見て前向きな一歩だった」と述べた。

ただ「これでは十分ではない」とし、「景気を一段と加速させるために、債務水準を引き下げ構造改革を実施する必要がある。このためにはさらに野心的な措置が必要になる」と指摘。

安倍晋三首相が掲げる大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」に言及し、他の2本の矢に関する措置が待ち望まれると述べた。

 

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日銀が下した「真珠湾攻撃」の決断
2013年04月19日(Fri) Financial Times
(2013年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 日本の歴史は、エリート層が劇的な戦略転換の下に結集した場面に満ちている。1868年には、日本の指導者が西側の植民地主義の脅威に直面し、数百年続いた封建主義を捨てた。1945年には、軍事的手段を通じた「偉大さ」の追求を放棄し、経済的な繁栄を達成する仕事に取り掛かった。

 そして今、デフレが15年続いた後、指導者たちは再び劇的に針路を変え、インフレを目指して猛スピードで進んでいる。戦略的な意味では、この突然の変化は悪名高い真珠湾攻撃とよく似ている。

 読者の皆さんは、趣味の悪い比較だと思われるかもしれない。マネタリーベースの拡大はハイパーインフレによる破滅を招くと主張する人騒がせな人々の警告がどれほど恐ろしいものであろうと、その結果として貴重な命が失われることはない。だが、両者には興味深い類似点がある。

真珠湾攻撃の計算とよく似た「先制攻撃」

 1941年になると、日本の戦争計画者たちは米国との衝突はもはや避けられないと考えた。同年7月、米国政府は日本に原油禁輸措置を課した。日本軍によるフランス領インドシナ進攻に対する対抗措置だ。

 日本側は、オランダ領東インド(現インドネシア)の原油を手中に収める必要があると判断し、その襲撃は必ず米国を戦争に引き込むことになると考えた。言い換えるなら、米国との衝突が起きる。ならば奇襲攻撃によって大きな戦略的優位性を得ることを期待し、先制攻撃を仕掛けた方がいい――。

 インフレに関しても、これと同じような計算が働いている。その論理は、以下のような感じになる。

 日本の現在の財政状況は持続不能だ。支出するお金の半分をいつまでも借り続けることはできない。自国の労働人口――ひいては将来見込まれる税収基盤――が永遠に縮小し続ける場合はなおのことだ。現在1億2700万人の日本の人口は、2050年には1億800万人に減少する。

 このため何らかの債務危機が訪れる。だが、債務の90%以上が国内で保有されているため、将来の日本政府が全面的にデフォルト(債務不履行)する可能性は低い。それよりずっとあり得そうなのは、政府が紙幣の印刷機を用いることだ。

 いずれにせよ最後はインフレになるのであれば、間違いなく先手を打った方がいい。真珠湾の時と同様、日本が抱く期待は、敵の機先を制すれば優位に立つチャンスがある、ということだ。

リフレ反対派は間違っている

 批判的な向きからは、リフレーションはうまくいき過ぎるという声も上がる。リフレ政策がもたらす結果は、資本逃避と円の暴落と激しいインフレだと彼らは予想する。

 そのような結果も考えられるが、決して不可避ではない。もし日銀がデフレからインフレを誘発できるのであれば、インフレを制御できる可能性は十分ある。


黒田東彦新総裁が打ち出した施策は「大型バズーカ砲」と呼ばれるほど大胆〔AFPBB News〕

 一方、批判派の中には、リフレ政策は全く機能しないと言う人もいる。日本は長年せっせと紙幣を印刷してきたが、成功していないというのが彼らの主張だ。この見方も正しくない。

 今月総裁を退任した白川方明氏の指揮下で、日銀はバランスシートの拡大に向けて形ばかりの努力しかしなかった。白川氏は日本のデフレは構造的であり、金融政策の手段では解決できないと固く信じていた。

 同氏の前任者である福井俊彦氏の下でさえ、2003年から2006年にかけての日銀の量的緩和の追求は見た目とは違っていた。

 日銀はこの間、慎重な漸進的アプローチを取った。今月、マネタリーベースを2年で2倍に増やすと誓った黒田東彦氏の大胆な一手とは雲泥の差だ。つまり、日本は何か全く新しい策を試しているのだ。

近隣諸国が懸念する理由

 中国やオーストラリアなどの近隣諸国が表明した懸念の1つは、日銀の政策の唯一の「伝達メカニズム」は通貨切り下げしかないというものだ。

 こうした懸念には身勝手な面もある。近隣諸国は、大量の資金が日本を去り、通貨を押し下げ、日本の輸出業者の競争力を高めることを心配している。言い換えると、日本は単に経済成長を他国から盗むということだ。

 だが、近隣諸国の見解は、全く期待できない人口動態を持つ国の根本的な成長展望に対する疑念にも基づいている。日銀は、貯蓄をリターンの高いリスク資産に回すことを金融機関に強いるために日本国債の購入を大幅に増やしている。しかし、もしそうした資産が存在しなかったら、どうなるのか? 

 懸念されるのは、横ばいないし減少する需要が供給サイドの改革の欠如と重なって、将来のリターンに大きく不利に働くことだ。

 国内での機会の不足によって、円がこれほど急激に下落した説明がつくだろう。円相場は11月以降、対ドルで20%も下げている。これはまた、安倍晋三首相が第3の矢を放ち、日本の潜在成長率の引き上げを狙った構造改革に乗り出さねばならないことも示唆している。

 だが、その前に来るのが、世界が日本の通貨切り下げを許容するかどうかという問題だ。この点では、兆候はそれほど悪くない。

世界は日本の政策を渋々受け入れる

 国際通貨基金(IMF)は今週、競争的通貨切り下げに関する不満は「行き過ぎ」だと述べた。IMFは日本の金融政策の「劇的な転換」を歓迎し、日本の今年の成長率予想を1.2%から1.6%へ、来年の予想を0.7%から1.4%へ引き上げた。

 中国の一部高官でさえ、慎重に日本の政策を支持した(その他の中国高官はあまり認めたがらず、日本は近隣諸国を「ごみ箱」として使っていると訴えた人もいた)。

 それでも、最も可能性が高いのは、各国が日本の急進的な新政策を渋々受け入れる展開だろう。世界は結局、たとえ波及効果があったとしても、日本が再び経済を活性化できたらすべての人のためになると判断するかもしれない。

 日本の金融政策の先制攻撃が醸す物議は、真珠湾攻撃とは比べ物にならないほど小さい。そして実際、うまくいくかもしれないのだ。

By David Pilling

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37627

 

コラム:米FRB内部でデフレ警戒の声、「黒田円安相場」に影響も
2013年 04月 18日 14:31 JST
田巻 一彦

[東京 18日 ロイター] 米金融政策をめぐる議論に大きな潮目の変化が起きている。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は17日、インフレ率が継続的に低下した場合、米連邦準備理事会(FRB)による資産購入の拡大が必要との見解を示した。

米国内では消費が予想外に伸び悩んでいるとの見方や、じわじわと物価水準が下がっていることに対する警戒感も出てきている。FRB内部でデフレ警戒の声が広がり出せば、「黒田緩和」で進展してきた円安の流れにも影響が出る可能性がある。

<ブラード議長がインフレ率低下に警鐘、資産購入増に言及>

18日の東京市場ではあまり注目されていないが、ブラード総裁の発言は極めて重要だと考える。講演後の記者団とのやり取りの中で「インフレ率が引き続き鈍化すれば、資産買い入れペースを加速させることに前向きだ」と述べるとともに、「私は、インフレ率が目標から下振れないように積極的に取り組む。2%と決定したらその目標は堅持すべき」と語った。さらに「状況が改善に向かわないなら、政策を見直す必要がある」と表明。買い入れを増大させる場合には、モーゲージ担保証券(MBS)ではなく国債の買い入れが望ましいとし、長期的にはFRBのバランスシートは国債のみで構成されるべきとの見方を示した。

FRBが金融政策の目安としている個人消費支出(PCE)価格指数は、このところジリジリと下がり続け、今年2月は前年比プラス1.3%。米労働省が16日発表した3月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が前月比マイナス0.2%と4カ月ぶりに下落し、前年比もプラス1.5%にとどまった。エネルギー価格の下落が影響したと見られ、食品・エネルギーを除いたコアは前年比プラス1.9%だった。

FRBの量的緩和第3弾(QE3)では、失業率の低下テンポに合わせ、2013年後半から年末にかけて資産購入量を削減するべきという「出口論」を展開する意見が一部のメンバーから主張され、マーケットは出口論の広がりを注視する地合いに傾きつつあった。しかし、ブラード総裁の発言は、インフレ率の低下に着目し、資産購入を増やすべきであると主張しており、「デフレリスク」への警戒感をにじませたと言えるだろう。

<足元の米消費マインドに影>

実際、3月の小売売上高は前月比0.4%減少と横ばいを見込んでいた市場予想を下回り、ロイター/ミシガン大学の調査した4月の米消費者調査・速報値は72.3と、昨年7月以来9カ月ぶりの低水準となった。消費者の長期見通しが悪化し、向こう1年で失業率は上昇し、税引き後所得は減少するとの見方が多数を占めるようになった。

米消費の最前線では、1ドルピザのような低価格を武器にした商品の売れ行きが好調になり、価格低下圧力がかかり出している兆候も見える。物価の緩やかな低下にFRBが警戒感を強めることが、今後あり得るのか、重要な岐路に差し掛かっている可能性がある。ブラード総裁は、過去のQE政策でも他のメンバーに先駆けて、その後にコンセンサスを形成する政策を提言してきた経緯があり、単なる少数意見として無視できない性質を持っている。

<ドル高の裏にFRBの出口論、反対方向なら円高圧力に>

この数カ月間におけるドル高傾向の裏には、FRBの資産購入額がどこかの段階で縮小され、さらに一定期間後には停止されるという「出口政策」の現実性を市場が意識し始めてきたという事情がある。もし、インフレ率の低下に着目した購入量の増加という出口と正反対の議論が始まりそうだと市場が認識すれば、外為市場を中心に大きな価格変動を生む可能性が出てくる。

足元の外為市場では、円安が一服しているものの、「黒田緩和」による日銀資産の膨張とFRBがいずれ出口を模索するとの思惑が重なって、中長期的に105円から110円程度まで円安が進むとの観測が多い。中には120円程度まで円安が加速するとの見方もある。

しかし、FRB内部でのデフレ警戒が明らかになったところで、円安の動きに歯止めがかかるのではないか。円安が進まなくなるだけでなく、いったんは円高方向への動きが表面化する懸念もある。今月29日に発表される3月米個人所得・消費支出は、注目度を上げるべきだ。PCEが低下していれば、ブラード総裁の意見が俄然、力を得ることになるのではないか。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE93H03I20130418

 

 


コラム:「勝者総取り世界」で普通の国が生きる術
2013年 04月 18日 11:56 JST
By Chrystia Freeland

グローバル化と技術革新という2つの波が押し寄せるなか、国家はどのような舵取りをすればよいのだろうか。漠然とした問いに聞こえるなら、そうした波に乗り損ねて未来に暗雲が立ち込めたキプロスの国民や、波に乗ろうとせず脅威を振りかざすだけの北朝鮮のことを考えれば、問題が見えやすくなるだろう。

21世紀の地政学的変化について語るとき、世界はかつての米ソ対立の冷戦時代から米中による新たな二極構造に移っており、その2国間関係が世界のムードを決めるという論調が多い。

それは間違いではない。ただ、米国人でも中国人でもない人にとってはどうだろう。その他の「普通の国家」にとって、世界はどう変わり、その変化にわれわれはどう対処すべきなのか。

最も大きな変化は、ビジネスがグローバル化したことだ。企業や資本は国境を軽々とまたぎ、人々もまた国際化している。しかし、世界はボーダレス化しても、平坦な場所になったわけではない。むしろ世界には高低差がたくさんあり、経済力による格差はさらに広がりをみせている。

われわれは「勝者総取りの経済」の中に生きており、個人であれ企業であれアイデアであれ、勝者は世界のごく一部の都市にますます集中している。例えば、ニューヨーク中心街157ウエスト57丁目に建設中の豪華なビルや、ロンドンのナイツブリッジにある高級マンションは、勝者が集う場所の一例だ。

世界の頂点に君臨する勝者でないのであれば、自国の立ち位置を理解することが21世紀の政治にとって大切なこととなる。このことを考える上で、以下に挙げる3点が出発点となる。

まず初めに、押し寄せる波に抗わないことだ。私がスウェーデンのカール・ビルト外相と話した時、彼は「もっとスウェーデンに世界を取り入れたいし、スウェーデンを世界に広めたい」とし、国際化を享受することが大切だと語っていた。また、いわゆる頭脳流出については懸念していないとし、むしろ「若者には海外で勉強し、海外で就労することを勧めている」という。

2点目は、戦略的なニッチ市場を見つけることだ。グーグルのシュミット会長のような技術系のリーダーたちは、ある分野でごく少数のプレーヤーに突出して力が集まるという「べき乗則」を重視している。ITの世界で強大な力を持つグーグル、フェイスブック、アップルはこの法則の好例と言える。勝者総取りという枠組みの中でビジネスを展開する際には、どの分野で勝負するのかを戦略的に考える必要がある。これは国家に関しても同じことが言える。

しかし、トロント大学ロットマン経営大学院のロジャー・マーティン学長は、ある逆説的な危険について警告する。もし自分が参入するニッチ市場が非常に大きな意味を持つようになってしまえば、小規模のプレーヤーが力を持ち続けるのは難しくなるということだ。

カナダとテキサス州を結ぶパイプライン「キーストーンXL」はその一例だ。同学長は、このパイプラインがニッチ市場のものであれば、カナダにとって問題はなかったと説明する。「しかし、もはやこれは単なるパイプラインではなく、エネルギーと持続性という世界で最も重要な問題の1つとなってしまった」とし、カナダは厳しい状況に立たされていると語った。

そして3点目だが、これが最も難しい。スウェーデンのビルト外相が語った「世界の潮流」は、時として誤った方向へと向かう可能性がある。賢明な国家の指導者なら、世界の対話に耳を傾け、その輪に入るための努力が必要である。だが同時に、世界が誤った方向に進む時には、その流れに逆らう自信も持ち合わせていなければならない。

カナダはこれまで、この最後の点について好成績を残している。銀行の規制緩和を行わず、イラク戦争にも参戦しなかったことは、今になって考えれば良い判断だったように見える。

50年前にカナダの首相に就任したレスター・ピアソン氏は、戦後の国際的な枠組みを築き、その中でのカナダの立場を確保することに成功した。今のカナダを引っ張るリーダーたちも、世界における新たな戦略を生み出す必要がある。今や世界はナンバーワンでないものが生き残るには厳しい場所となってしまったのだ。

(16日 ロイター)

*著者クリスティア・フリーランドは、トムソン・ロイター・デジタルの編集者。前職では英フィナンシャル・タイムズの米国編集責任者などを歴任。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE93H01T20130418


 

 

【第32回】 2013年4月19日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
成長戦略に必要な「5本の矢」とは
なぜ成長戦略が重要か

 黒田日銀総裁の放った1本目の矢、「大胆な金融政策」は上々の評判を得てスタートし、今年度は2本目の矢、「機動的な財政政策」の効果も出てくるだろう。

 しかし、既に多くの識者が指摘している通り、日銀だけで「良い物価上昇」を実現することは難しく、一過性の効果しかない財政政策だけで、毎年の巨大な需給ギャップを埋め合わせることは不可能である。前回指摘したように、単なる輸入インフレや資産バブルではなく、良い物価上昇を実現するためには、供給サイドの調整を含めた民間企業の活性化が不可欠であり、遠からず発表される安倍政権の3本目の矢である成長戦略が注目されるところだ。

 ところで、成長戦略というと、どうも各論に走りがちである。たとえば、医薬品のネット販売解禁、発送電分離、iPS細胞実用化の支援、インフラ輸出の促進などは、どれを取っても重要なものばかりだが、こうした各論をバラバラと論ずる前に、民間企業主導の成長戦略の大きな柱は何なのかをしっかり考えておく必要がある。

「成長戦略の5本の矢」

 成長戦略の柱として、誰もが認めるのは、規制緩和であろう。事業への参入を容易にし、競争を促進する中で民間企業が活性化するためには、規制緩和は不可欠な要素である。しかし、筆者は、さらに4本の柱をこれに加えていくべきだと考えている。安倍政権の「3本の矢」に倣って、ここでは「成長戦略の5本の矢」と呼ぶことにしよう。

 筆者は常に企業金融の観点から、成長戦略を考えている立場であるから、前提になるのは、「日本の企業が世界の投資家から信認されることによってこそ、日本企業に成長資金と成長機会が与えられる」という考え方であり、その観点から5本の矢を図示したのが図1である。


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 5本の矢は、図1の中で赤く示したもの、すなわち、「参入規制緩和」「コーポレートガバナンスの強化」「リスクマネーの供給」に加え、これらと関係するものとして「年金・機関投資家の議決権行使基準の明確化」と「銀行の資産査定基準の厳格化」である。

 参入規制緩和については、すでに様々な方々が意見を公表されており、「真・金融立国論」のメインテーマでもないので本稿では敢えて触れないことにし、見逃されている感のあるその他4本の矢について俯瞰してみたい。

コーポレートガバナンスの強化

 連載第15回、第18回で詳細に論じたように、日本のコーポレートガバナンスの現状は、形式的にも実質的にも極めてお粗末な水準にある。民主党政権時代の会社法改正案においては、社外取締役1名導入の義務化さえ、経団連など企業側の反対によって阻止された。

 そして、脈々と続く日本企業独特の終身雇用・年功序列を前提とした雇用慣行により、社長が次の社長と取締役を選び、取締役が部長を選び、部長が課長を選ぶというのが実態である限り、誰も社長には逆らえず、社長でさえ会長に逆らえないという社内論理が優先される。

 その結果、株主価値の最大化を目的とするはずの取締役会を機能停止にさせ、上司に逆らわない「カワイイやつ」だけが出世することによって、日本企業の革新性と活力を蝕んできた。オリンパス事件のような不祥事はもちろん、スピード感に劣り世界の流れに乗れなかった電機業界の苦境の下地は、実はこういうところにあるのではないだろうか。

 世界の投資家は、冷徹にコーポレートガバナンスの状態を見極めて投資をしている。

 図2は、社外取締役の数と外国人持ち株比率の関係を示したものであるが、海外投資家は、社外取締役数の多い企業を選んで投資していることが見て取れる。しかも、世界の投資家の目線は、既に社外取締役の有無ではなく、社外取締役の独立性の有無に移っている。


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 図3は、世界の企業の取締役会の独立性の程度を比較したものであるが、日本企業の取締役の独立性が如何に低いかが見て取れる。これでは、日本企業に世界の投資家の信認が与えられるとは到底思えない。


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 成長戦略の「アメ」が規制緩和だとすれば、「ムチ」はコーポレートガバナンスの強化であるべきだ。取締役会が、社内論理ではなく、真に企業の成長と価値の向上を目指すものになっていない限り、どんなに規制緩和をしても、日本企業がそれを生かすことはできない。

 日本のこの状況を生んだのは、高度成長期以来続いている、銀行が企業のガバナンスを司るアンシャン・レジームである(図4)。銀行は、何よりも貸付債権の保全を求めるため、企業の成長より安定を志向しがちである。これを成長志向の経営に変えるためには、銀行ではなく投資家がガバナンスを担う体制、つまり、会社の成長と価値向上を目指す取締役が選任されるように、会社法をはじめとした法令や規則、あるいはガイドラインが定められなければならない。

 銀行の資金仲介機能はもちろん重要であるが、銀行と投資家・株主の間には根本的な利益相反がある。銀行が直接、間接に(たとえば銀行が影響力を持つ企業再生ファンドなどを通して)企業の経営に関与することは、徹底的に排除されるべきであり、本来であれば、銀行の持ち株規制の緩和などは論外というべきであろう。

 なお、「年金・機関投資家の議決権行使基準の明確化」というのは、これと裏腹の関係にある。すなわち、投資家が企業ガバナンスを担う以上は、投資家側にも議決権行使を通じた企業の監視が義務付けられなければならないということである。


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リスクマネーの供給

 規制緩和が進み、コーポレートガバナンスの強化が達成されたとしても、それだけでは企業の成長は覚束ない。企業がリスクを取るためには、リスクを覚悟したお金、いわゆる「リスクマネー」が企業に提供されなければならない。そして、当然、それは銀行には出来ないものである。

 連載第22回で詳述したように、米国では、エリサ法の発展と共に、プライベート・エクイティ・ファンド(PE=企業再生・買収ファンド)やベンチャーキャピタル(VC)に年金の資金が大量に流入し、これが企業の新陳代謝を促してきた。現在、米国を代表するPE、たとえばKKRやカーライルなどは、数兆円という単位の資金を持ち、機動的に投資運営をし、産業の再生や再編に貢献している。

 これに対し、日本のPEの規模は極めて貧弱であり、たとえば、良い技術を持ちながらも危機に瀕している日本企業の救済さえも、思うに任せないのが現状である。大企業から中小企業に至るまで、企業の再生や再編が必要な時に、日本は、常に海外のファンドに頼るのであろうか。または、まるで共産主義国であるかのように政府が作ったファンドで、国営化していくのだろうか。

 世界の代表的な公的年金は、おおむね10%以上をPEに投資する。たとえば、米国を代表する公的年金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、総額約24兆円の運用資産の14%をPEに投資する方針である。これに対し、約120兆円を運用する日本の公的年金は、厚生労働大臣が認可する中期計画の中でPEやVCへの出資が認められていないために、一銭もPEに投資していない。

 民主党時代の厚生労働大臣だった長妻氏は、「国民の大事な資産をリスクのある運用には回せない」と、頑なに成長分野への投資を拒否した。しかし、連載第5回で触れたように、その認識は根本的に誤っている。象徴的な例で言えば、国債で100%で運用するよりも、PEへの投資を交えた方が運用リターンは高く、運用リスクは低くなるのだ。

 単純な株式投資をPEに振り向ければ、運用リスクは一層低下する。カルパースでは、PEへの投資理由を、@市場連動型金融商品との低い相関、A過去長期に亘るリターンの安定性、B高い投資リターン実績、C自国・自州産業の成長・再生支援 と表明している。

 日本政府が成長戦略を考える際、このCは極めて大事な観点である。公的年金は国家戦略として有効に活用されなければならない。年金のリターンを高め、リスクを低減するという目的はもちろんだが、自国産業の成長・再生支援のために年金が果たす役割は極めて大きい。それが結果的に企業を活性化し、国民経済全体のパイを大きくし、年金受給者のためにもなるのである。

 日本には実績を積んだPE・VCが少ないという反論はあろう。しかし、米国がエリサ法を導入した40年近く前には、米国にも実績のあるPE・VCは存在していなかった。鶏か卵かという神学論争はやめて、高い志を持ち、第一級の実力のある運営者が率いる独立系のPE・VCには、一定の存在感を示せる規模の資金を導入すべきである。なお、その際に大事なのは、銀行が影響力を持つPE・VCを徹底的に排除することである。その理由は、すでに前項「コーポレートガバナンスの強化」のところで述べた通りである。

銀行の資産査定基準の厳格化

 現在、数十兆円にも及ぶとされる需給ギャップの解消を図らなければ、いい意味でのデフレ脱却はできないが、現在の過剰供給の状態を放置したまま需要だけ作り出そうとすると、公共事業など巨額の政府支出を続けなければならなくなる。産業の新陳代謝を進め、供給サイドの効率化も達成することが必要である。また、そのために、前項で述べたようなリスクマネーの供給が必須なのだ。

 しかし、日本の現状は、いわば「官製モラルハザード」の蔓延によって企業の新陳代謝が進まない構造になっている(図5)。政府系金融機関や信用保証協会などでは、合計してすでに兆円単位で国民負担が生じているが、それは、企業を延命させるために、実質的にはいわば銀行への裏口補助金の形で発生したものである。何よりも問題なのは、金融庁による銀行の資産査定基準のうち、中小企業を対象としたものが、不良債権の認定を回避する方向に、大きく舵を切っていることである。これは、民主党政権下で実施された中小企業金融円滑化法の実質的な延長に他ならない。


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 実際、図6に示したように、この甘い査定基準のお蔭で不良債権の認定を受けずに済んでいる貸付債権は、少なく見積もっても20〜30兆円程度ある可能性がある。それらを、現在は、いわば銀行が抱え込んでいるのであり、いずれは国民負担になる可能性が高い。そして、こうした形で「生かさず・殺さず」の行政を続けている限り、産業の新陳代謝は起きようがない。


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 不良債権の認定を受けることが、倒産の増加に繋がると考えるのは早計であり、実際には、全く逆である。不良債権に分類された貸付債権には、60〜100%の引当金が積まれる。PEやVCが投資する際に、銀行がその分だけ債権放棄をする余地があるため、再生すべき企業の再生が進むのである。PEでも再生できない企業は、いずれにしても行き詰る可能性が高いとすれば、これも早めに引当金の範囲で債務を整理して、転廃業を促進すべきなのだ。

 ただし、これを進めれば、銀行の財務は傷むことになる。その場合は、銀行の経営責任は問わずに、銀行に公的資金を導入すればいいのではないだろうか。現在のように、信用保証協会に象徴されるような「裏口」から銀行に補助金を出すのではなく、政策的に必要であるなら、社会インフラとして大切な銀行の資本を充実させることの方が公明正大というものだ。また、銀行は歴史的に、景気循環の波が変われば収益体質が改善する可能性が高く、銀行に投入した公的資金もいずれ返済される可能性も高いことを念頭に置くべきだろう。 

 金融庁も、もちろんそのことは十分理解しているはずであり、現在の行政指導は過渡的なものであると筆者は考えている。

 このように、「成長戦略の5本の矢」は、相互に関連しており、どの一本が欠けても企業の成長を通じた成長戦略の絵は描けないはずである。これらの改革には、既得権益層からの反発も大きかろうが、政治の責任でそれを乗り越えることが必要であるし、今の政府・与党にはその力があると筆者は信じている。

http://diamond.jp/articles/-/34893

 

「アベノミクス」で日系メーカーはよみがえる

TPPは追い風も、その効果は限定的

2013年4月19日(金)  加藤 まどみ


『徹底予測 次世代自動車2013』
 リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反攻体制を整えつつある。このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていく。
 7回目の今回はアベノミクスやTPPが日系メーカーに与える影響について。自動車担当アナリストとしてアナリストランキングでトップを走る三菱UFJモルガン・スタンレー証券の吉田達生シニアアナリストの意見を聞こう(技術系ライター、加藤まどみ)。
※当記事は4月10日に開催された「徹底予測 次世代自動車セミナー2013」の講演を基にまとめた。
 金融危機などの環境変化を経て、世界および日本の自動車市場の状況は大きく変わった。

 2000年には販売台数のトップは米ゼネラル・モーターズ、2位は米フォード・モーターだったが、2012年にはトップがトヨタ自動車、2位が独フォルクスワーゲンへと入れ替わった。トヨタ以外の日本メーカーが生産台数を上げる一方で、韓国や中国メーカーの台頭も著しい。日系メーカーは金融危機や円高、東日本大震災やタイ洪水など大きな変化を経験してきたが、予想以上にシェアを回復している。

円安効果、公共投資、TPPの影響大

 だが、その収益構造は、以前と現在とで大きく変化している。北米への出荷がメインであることには変わりがないものの、欧州向けが減りアジア向けが大幅に増した。今後も中国を中心とするアジアへの急激な伸びが続くと考えられる。

 これらの世界環境の中、日本では安倍政権による「アベノミクス」と呼ばれる一連の政策が始まった。これらは自動車業界の追い風となりつつある。アベノミクスでは金融政策、財政政策、成長戦略という3つの基本方針を掲げ、これに沿ったさまざまな施策を行う。その中でも自動車業界へ大きな影響を与えるのは円安効果、公共投資、そしてTPPの3つだ。

 まず金融緩和による円安効果は輸出損益の改善につながる。例えば、2万ドルで出荷している車の場合、1ドル75円であれば150万円の売り上げだが、円安で95円になると190万円になり、40万円売り上げが増える。同様に、海外の子会社との連結決算による換算利益も同様に改善する。

 しかも、これらの収益改善によって、厳しい円高で削らざるを得なかった研究開発や設備投資といった将来の成長につながる資金を投資に回せるようになる。もちろん、円安によって不採算のためにあきらめていた仕向地に輸出できるようになったり、中近東で増えている競争入札ビジネスでの競争力がアップしたり、という効果も見込むことができるだろう。

米国市場には上積みの余地あり


アナリストランキングでトップを走る三菱UFJモルガン・スタンレー証券の吉田達生シニアアナリスト
 さらに、公共投資に関して言えば、トラックなどの商用車需要や震災復興に伴う車両の買い換えが喚起される。また、TPPに参加することでよりフェアな事業展開が可能になると思われるが、効果は限定的であり、急な変化は期待できないと予想される。日本への輸入に関しては、もとから関税がゼロのため目立った影響はない。

 輸出については最終的に相手国側の関税は撤廃されるものの、段階的にならざるを得ないだろう。コストを削減した高性能の日本車への警戒心が非常に強いためだ。なお、今までは日米などの単独の交渉で緊張が高まりやすかったが、これらがオープンな場で議論されることになるのは日本にとって歓迎すべきことだと言える。

 世界市場についても解説すると、現状で特に大きな市場は米国、欧州、そして中国だ。2017年には世界の販売台数は1億台を突破すると予測されるが、特に中国が大きなけん引力となる。

 米国は2012年に販売台数が約1400万台だった。そのうち乗用車では日本メーカーのシェアは約42%。日本は低価格帯から高級車までまんべんなく販売している。急速にシェアを伸ばしている韓国車は低価格帯が中心だ。

 なお、米国では保有台数の5.5〜6%、すなわち年に1500万台程度が廃車されている。一方で免許数は毎年200万枚増えている。つまり米国市場を見れば、現状の1400万台よりもさらに販売台数を上積みする余地があるということだ。

 欧州は日米欧韓のグローバルメーカーが競うが、各国の財政問題、いわゆるソブリンリスク問題が影を落としており、今のところ回復の兆しはあまりみられない。

 一方で、中国は各社が相次いで戦略車を投入するホットな市場だ。中国の販売台数は世界一の約1600万台。2002年はバスやトラックなどの商用車と乗用車が半々だったが、近年は乗用車中心の市場へと急激に変化を遂げた。

 現状は、地場メーカーが41%、欧州21%、米国12%、日本17%、韓国8.5%と、現地と各国のグローバルメーカーがしのぎを削っている状態だ。グローバルメーカーと現地メーカーの合弁や提携も盛んだ。中国メーカーは幅広いラインナップを展開しているが、日本より低価格帯に属するのでダイレクトに競合することはない。中国での反日運動による影響は底打ちしているものの、まだ不透明感がある。

 自動車の大衆化が進む新興国を攻めるうえで重要なのは、市場ニーズに則した商品を迅速に導入することだ。

ロシアは金融危機以前までに回復

 個別に見ると、インドは自転車・二輪・四輪が混在する地域である。まだ市場は大きくないものの将来有望な地域で、各地にグローバルメーカーの生産拠点が立地している。現地メーカーが低価格帯に強いため価格競争は厳しいと考えられる。現在はマクロ経済の減速で踊り場に立っている。

 ロシアでの販売台数は金融危機以前にまで回復しており、外国ブランドが市場拡大をけん引している。ブラジルは380万台に成長したが、金融引き締めにより減速しており、それを減税で下支えしているといった状況だ。

 タイでは政府による初めて自動車を購入する人に向けた支援策で昨年は140万台に拡大した。今年は反動もあり、120万台程度で推移すると予想される。インドネシアは頭金を3割納める規制ができたため、二輪の購入は減った。ただ、四輪では特に大きな影響は見られない。


徹底予測 次世代自動車2013

 リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきましたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反攻体制を整えつつあります。このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130417/246841/?ST=print


 

 

中国の輸出急増は貿易統計データの欺瞞か

中国税関と香港政府のデータ間に存在する巨額の差

2013年4月19日(金)  北村 豊

 「ウォール・ストリート・ジャーナル」(以下「WSJ」)の中国語版ウェブサイトは4月4日付で「中国の輸出急増の背後に隠された秘密」と題する記事を掲載した。当該記事は、中国経済の回復がいまだ不確定な状況下で、中国の輸出データと香港の輸入データの間に362億ドルもの差異があることから、海外の需要が旺盛であると見られている中国商品の輸出に疑問符を打たねばならないと報じている。その要点をまとめると次のようなる。

中国から香港への輸出、3カ月間で362億ドルもの差

(1)中国の“海関総署(税関総署)”(以下「中国税関」)が3月8日に発表した統計データによれば、2012年12月から2013年2月までの3カ月間、中国の輸出は欧米経済の回復が十分でない状況下、前年同期比で19.8%も増大した。中国の国内総生産(GDP)の成長率が去年の第3四半期に7.4%という過去3年間の最低を記録した後に、この輸出データは人々の中国経済復調に対する自信を強めた。

(2)輸出の再度の拡大は中国経済にとって注目点であり、輸出の増大は中国商品に対する海外の需要が依然として強く、中国の工場設備が稼働し、中国社会の就業需要を満足させることが可能となることを意味する。

(3)しかし、一部の輸出商、貿易代理商や経済学者などは、この点について、輸出企業や地方政府が報告するデータは水増しされており、中国の輸出データは恐らく正確ではないと見ている。彼らは特に、中国・香港間の貿易データに存在する差異を指摘している。すなわち、上述した2012年12月から2013年1月までの3カ月間における、中国税関が発表した中国本国から香港向けの輸出額は949億ドルであるのに対して、香港政府が発表した中国本国から香港向けの輸入額は587億ドルで、その差は362億ドルにも及んでおり、両数字の差異は近年では最も大きなものとなっている。

 この点について、大型のB2B電子ビジネスサイトを運営する“北京悦商世紀網絡科技有限公司”の最高経営責任者(CEO)で、経済コラムニストの“周彦武”は4月11日付で経済ポータルサイト“和訊網(hexun.com)”に「輸出入データに重大なひずみ」と題する記事を発表して、その詳細について論じた。その概要は以下の通りである。

【1】香港は中国にとって最も主要な輸出先である。2012年の中国の輸出総額は2兆489億ドルで、そのうち香港向け輸出額は3235億ドルで約15.8%を占めた。2013年1〜2月の中国の輸出総額は前年同期比23.6%増の3267億ドルであり、そのうちの香港向け輸出額は前年同期比60.9%増の572億ドルであった。一方、香港政府の統計によれば、2013年1〜2月の香港の中国からの輸入額は355億ドルで、両者の差は217億ドルに上った。

【2】とりわけ、2013年2月はこの差が顕著で、中国税関の統計によれば、2013年2月の中国の香港向け輸出額が251億ドルで、2012年2月の185億ドルの35.5%増であったのに対して、香港政府の統計では2013年2月の中国からの輸入額は137億ドルで前年同月比18%減であった。

【3】この数字のひずみはさほど大きなものではないが、極端なのは中国の輸入データである。2013年1〜2月における、中国の香港からの輸入額は24億ドルであるのに対して、香港の中国向け輸出額は363億ドルとなっている。何と後者は前者の15.4倍という驚くべき数字であり、その差は339億ドルである。中国税関の統計では、輸出額は“離岸価(FOB価格)”、輸入額は“到岸価(CIF価格)”で計算される。<注1>CIF価格には運賃と保険料が含まれているので、本来ならば、中国の輸入額は香港の輸出額より高くなければならないはずである。これに対して、FOB価格には運賃と保険料が含まれないから、中国の輸出額は香港の輸入額よりも低くなければならない。

<注1>FOB価格=本船甲板渡し価格、CIF価格=FOB価格+海上保険料+海上運賃

融通が利かない香港では正規の輸入金額で通関

 上記を検証すべく、“中国税関”の通関統計と“香港特別行政区政府統計処(Census and Statistics Department)”の対外貿易統計を調査した結果が表の通りである。


 表から分かるように、2012年12月から2013年2月までの3カ月間における、中国の輸出額949億ドルに対応する香港の輸入額は587億ドルで、その差異は362億ドルであり、香港からの輸出額580億ドルに対応する中国の輸入額は45ドルで、その差異は535億ドルとなっている。

 中国から香港への輸出では、中国の税関に対して商品の輸出金額を過大に申告し、中国と比べて融通が利かない香港では正規の輸入金額で通関したことが考えられる。また、香港から中国への輸入では、香港の税関に対して正規の輸出金額を申告して通関した商品を、中国の税関には商品金額を過少に申告して輸入通関を行ったことが想定できる。しかし、問題はその金額の差異が大き過ぎることである。ほんのわずかな差異であるならば、何かの手違いだとか、集計上の誤差脱漏である可能性も考えられるが、AとBの合計で897億ドルにもなると話は別である。

 この点について、前述した周彦武は同じ記事の中で次のように論じている。

企業にとって何でもありの中国税関

【1】中国の輸出額が香港の輸入額より大きい理由として考えられるのは以下の4項である。

(1)企業が“出口退税(輸出戻し税)”を騙し取るため
(2)企業が中国国内で徴収される“増値税(付加価値税)”や消費税<注2>を回避するため
(3)“洗黒銭(マネーロンダリング)”のため
(4)中国政府が製造業による輸出の繁栄という虚構を演出するため

<注2>増値税は国内で販売される商品に普遍的に課せられる税金。消費税は特定の商品を対象として増値税に上乗せして課せられる税金。

【2】中国では商品を国内販売すると増値税や消費税を徴収されるが、外国貿易企業は商品を輸出すると、輸出戻し税の還付を受けることができる。また、企業が“加工貿易”<注3>の方式を通じて輸入すれば、関税の減免や増値税の優遇が享受できる。ある電子企業を例に挙げると、デジタルカメラを輸出すると、13〜17%の輸出戻し税の還付を受けられる。これは製品の価格コストを13〜17%下げたのと同じである。また、保税区で加工を行う場合、“加工貿易手冊(手帳)”さえ持っていれば、輸入関税と増値税を別途支払う必要はない。

<注3>加工貿易とは、企業が保税扱いで輸入された全部あるいは一部の原材料、補助材料、部品、包装資材を中国国内で加工・組み立てを行った後に、製品・半製品として輸出すること。

【3】企業は輸出して輸入する方式を採るのが通例で、貨物を香港へ輸出してから、改めて同じ貨物を香港から輸入する。企業は輸出することにより輸出戻し税の還付を受け、輸入することにより消費税と増値税を少なくすることができるので、両面で利益を得ることになる。多くの場合、貨物を香港へ輸送しなくても、保税区の倉庫に数日置きさえすればよい。甚だしい場合は、貨物が全く存在しなくとも、“報関単(関税申告書)”に貨物が記載されていれば、濡れ手に粟で輸出戻し税の還付を受けることさえある。

【4】税金を騙し取る以外では、マネーロンダリングは輸出企業が最も得意とすることである。本来10ドルの商品を100ドルに値付けして香港のマネーロンダリング市場へ輸出することで、輸出企業には90ドルの利益が入る。輸出企業はそのうちの80ドルを本来の“黒銭(不正な手段で得たカネ)”の所有者に各種の方法で返却する。一方、輸出企業は香港へ輸出した商品を1ドルで再度中国へ輸入し、20ドルで中国国内に販売して19ドルの利益を得る。

 周彦武の説明は非常に納得できる内容である。要するに何でもありということになる。何でもありとは言うものの、その結果が上述したように3カ月間で897億ドルの差異につながるということは、中国国内の企業が大挙して「みんなで渡れば怖くない」式で、輸出戻し税の騙し取り、増値税と消費税の回避、マネーロンダリングを行っていることになる。かつて中国に駐在経験のある筆者から見ると、これだけの金額の差異が発生している背景には、必ずや中国税関の職員の関与があるはずである。関連書類の帳尻さえ合っていればよいわけで、それらの勘所を熟知した税関職員を懐柔すれば、何事も不可能はないということになる。

 ところで、周彦武は理由として4項を提起したが、さしもの周彦武も第4項の「中国政府による演出」については説明をはばかったようで、記事では何も詳細を述べていない。3カ月間で897億ドルという差異が出ている事を考えると、この中国政府演出説が最も説得力あるものに思われる。しかし、差異の根拠となっているのが中国税関の統計データであり、それ以外には比較対照するデータがないので、これ以上は何を言っても憶測の域を出ない。筆者は従来から中国の統計データの信憑性には疑問を持っているので、中国政府演出説が正しいように思うのだが、果たして正解は何なのか。

要領を得ない税関当局の説明

 ところで、4月10日に税関総署が開催した「2013年第1四半期外国貿易輸出入状況記者会見」の席上、“第一財経頻道(チャンネル)”の記者から文頭に述べた4月4日付WSJ中国語版の記事について質問を受けた税関総署のスポークスマンである「中国統計局長」の“鄭躍声”は、中国税関データと香港政府データとの間に比較的大きな差異があることを認めた上で3つの方面から回答したが、その要点は以下の通り。

【1】中国税関で手続きされた関税申告書のデータは自動的に処理システムに送られて統計が作られる。従い、統計上の1ドルは関税申告書上の1ドルと相対するものである。関税申告書は輸出貨物あるいは輸入貨物を反映しており、貨物は必ず出境、入境により税関の境界線を越えなければならない。中国の税関統計に間違いはない。

【2】国連の貿易統計および税関統計の規定により、国境を越える流動的な貨物はその全額で統計を取らねばならない。しかし、実際の貿易では、一部の輸出商が貨物の仕向け地が未定のまま、暫定的に香港向けとして申告するケースがあり、これは香港向け輸出として扱われて統計が取られる。一方、香港では中継輸送や通過する貨物は、香港の統計上では中国からの輸入には含まれない。これらが中国税関データと香港政府データの差異を形成する。

【3】今年の第1四半期に香港向けの輸出が増大したことの理由はいくつか考えられる。香港が自由港であることから、近年多くの多国籍企業が世界の物流センターを香港に設置している。このため、中国国内で組み立て生産した商品は先ず香港へ輸出し、その後に中国国内を含む全世界の市場に配送される。昨年以来の国際金融危機の影響下で、一部の多国籍企業はコスト節約のために、物流センターの倉庫を保管料が高い香港から隣接する広東省の“深圳”に移した。この結果、物資調達のために貨物が香港と深圳を頻繁に移動するようになり、それが第1四半期に香港向け輸出が急増した要因と考えられる。

 鄭躍声局長の説明ははっきり言って要領を得ない釈明であり、自分でもそれをよく認識していたのだろう、さらなる調査を行う旨を表明して質問に対する回答を終えた。

 中国は2013年3月に8.8億ドルの貿易赤字を出した。前回の赤字は2012年2月の315億ドルであった。2012年3月に54億ドルの黒字に転じ、その後は2013年2月まで通算12カ月間黒字を保ったが、3月には赤字に転落したのである。

 ところで、上述した2012年12月から2013年2月までの3カ月間の貿易収支は、12月が316億ドル、1月が291.5億ドル、2月が152.5億ドルの黒字で、合計すると760億ドルの黒字となる。一方、上述の表にあるAの差異362億ドルとBの差異535億ドルの合計は897億ドルとなり760億ドルを上回る。もしこの差異がなければ、2012年12月から2013年2月までの貿易収支も赤字となったはずだが、そこまで考えるのは勘繰り過ぎと言うものだろうか。


北村 豊(きたむら ゆたか)

中国鑑測家。1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員


世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130417/246847/?ST=print


 

 

 

【第328回】 2013年4月19日 
中国経済を「通過」せよ!
2015年、中国バブルは崩壊する
――大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸に聞く
熊谷氏が書いた『パッシング・チャイナ』(講談社)は、刺激的なタイトルで、話題になっている。失われた20年で、一時期「ジャパン・パッシング」などと言われたが、なぜこの時期に中国の将来を大胆に予想した著書を出したのか、そのエッセンスは何かを聞く。

中国の実態を身に沁みて感じた経験

――この刺激的なタイトルには、どういった思いが込められているのですか?


くまがい・みつまる
東京大学大学院修士課程修了。1989年、日本興業銀行に入行。同行調査部エコノミスト、みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。財務省「関税・外国為替等審議会」の委員をはじめとする様々な公職を歴任。過去に各種アナリストランキングで、エコノミスト、為替アナリストとして合計7回1位を獲得している。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)レギュラーコメンテーター。著書に『日経プレミアシリーズ:消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社)、『パッシング・チャイナ』(講談社)など。
「パッシング・チャイナ」という構想は、私が長年温めてきたものです。

「バッシング」ではなくて「パッシング」――。すなわち、中国を「非難」するのではなく、もう中国を「通過」「素通り」してもいいのではないか、という主張です。

 われわれ日本人は「中国幻想」に振り回されるのではなく、もう少し気楽にいく必要がある、というメッセージが、この「パッシング・チャイナ」というタイトルには込められています。

 日本のすぐ近くには、「南アジア」という巨大な潜在市場があります。タイ、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムなどの国々です。

 彼らは、戦後の焼け野原から不死鳥のように立ち上がり、アジアから初めて先進国の仲間入りを果たした日本人に対して、ある種の憧れを持っています。極めて「親日的」な国が多いのです。

 日本企業にとっては、中国に固執せず、「チャイナ・プラス・ワン」――つまりは、中国以外にもうひとつ海外拠点を作ることこそが喫緊の課題なのです。

――この本を書かれたきっかけは何かあるのですか?

 数年前、中国に出張した際、北京から羽田に帰る飛行機が、定刻の出発時間を前に、離陸してしまったことがあります。

「百聞は一見にしかず」とはよく言ったものです。このときほど、中国の実態を身に沁みて感じたことはありません。

 日本の労働生産性が低いなどと言いますが、中国はその比ではありません。この空港ではほとんどの人間が全然働いていない様子なのです。

 空港の職員から荷物を取り戻す際にも、大きな発見がありました。

 最初は、「荷物を返してくれ」と強く主張しましたが、何時間待っても全く進展は見られませんでした、そこで中国人は「面子」を重んじるという話を思い出し、ペコペコと頭を下げると、すぐに荷物は返ってきました。

 この経験から、私は「日本人は中国の経済成長を絶対視しているが、中国の実態はそれとはまったく異なる」と確信したのです。

中国経済は間違いなく「バブル」

――中国経済は「バブル」だと見ていますか?

 中国経済は間違いなく「バブル」です。2015年あたりからは、いつ崩壊してもおかしくありません。

 中国にはリスク要因が山積しています。

 第一に、1979年から採用された「一人っ子政策」による少子高齢化の進展が懸念されます。

 第二に、中国の「政治リスク」も深刻です。中国では政治指導者が交代する5年毎に混乱が起きる傾向があり、将来的には中国共産党による事実上の一党独裁制が崩れる懸念が強まるでしょう。

 第三に、「不動産バブル」の崩壊も心配です。中国の経済成長モデルは、不動産価格の上昇による「錬金術」を中核に据えています。驚くべきことに、地方政府の収入の6割程度が、不動産関連収入に依存しているのです。

 第四に、中国では設備の過剰感が強まっています。

 中国では、GDPに占める設備投資の割合が個人消費を上回っているのです。他の先進諸国で個人消費がGDPに占める割合を見ると、米国で7割超、日本でも6割程度です。しかし中国ではこの比率が35%に過ぎません。

 第五の問題点は、賃金インフレの進行です。中国にとってインフレは「天敵」です。「インフレ」が進行すると、低所得階層の不満が爆発し、政治的・社会的混乱を伴いながら、経済が「ハードランディング」に至るケースが多いからです。

日本企業が商売で勝つポイント

――しかし、中国経済を「素通り」して、日本経済は本当に大丈夫なのですか。日本企業がその強みを発揮するための戦略的なポイントは、なんでしょうか。

 日中関係の悪化は、最悪のケースでも、2013年度の日本のGDPを0.2%押し下げる程度の影響しかありません。まさに、日本経済にとっては「蚊が刺した」程度の影響なのです。

 日本企業は「技術で勝って、商売で負ける」と言われます。マーケティング力が弱いというのが日本企業の致命的な欠陥です。

 野球のピッチャーに例えれば「技術力」の高さは速い球を投げる能力です。日本企業は時速150キロ台の剛速球を投げる能力を持っています。しかし、韓国企業という、球速は時速130〜140キロ台だが、絶妙のコントロール(「マーケティング力」)を有するピッチャーに苦戦しているのです。

 今後の日本企業の戦略としては、剛速球に一層の磨きをかける(最先端の「技術力」を磨く)ことと、コントロールを良くする(「マーケティング力」を高める)ことの双方に、バランス良く行う取り組む必要があるでしょう。

日本が採るべきは「中庸の道」

――今後の日中関係では、何が重要だと考えていますか?

 今後、日本が必要以上に中国を挑発することは控えるべきですが、「反日デモ」にビクビクして中国の顔色を伺うような外交だけはやめた方がいいと思います。

「反日デモ」の本質はあくまで中国の国内問題であって、「反日」という要素は単なる口実・きっかけに過ぎません。

 中国では汚職・腐敗の蔓延や、所得格差の拡大・固定化などを背景に、国民の間で、現状に対する不満や将来への不安が、制御不能なレベルに近づいています。例えば、2012年に中国政府は治安維持に、軍事費を上回る7018億元(約9兆円)の予算を充てているのです。

 日本がどれだけ気を使っても、残念ながら「反日デモ」はいずれまた起きるでしょう。中国政府が、腐敗・汚職をやめ、所得格差を是正し、政治の民主化を行うことは、当面期待しづらいからです。

 今後の日中関係に関しては、原理原則を貫くことと、リアリズムのバランスを取った「プラグマティック(実利的)」な対応を講じることが最大のカギです。日本人が大切にしてきた「中庸の道」にこそ、日中間の懸案を真に解決する知恵が隠れているのです。

 われわれは、等身大の中国を見失い、日本を過小評価してこなかったでしょうか。

 今後、中国は「バブル」が崩壊し、政治的・経済的に大きな苦境を陥るでしょう。これに対して、社会の安定性が強い日本は、「アベノミクス」の効果もあり繁栄を続けると見られます。

 日本の未来は間違いなく明るいのです。

「おごる平家は久しからず」――「中国幻想」はもはや臨界点に達しています。今、われわれ日本人は、「パッシング・チャイナ」という新たな決断を迫られているのです。
http://diamond.jp/articles/-/34898


 


フィラデルフィア連銀製造業景況指数:4月は1.3−予想下回る 
  4月18日(ブルームバーグ):米フィラデルフィア連銀が18日発表した4月の同地区製造業景況指数は1.3と、前月の2から低下した。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト調査の予想中央値は3だった。同指数はゼロが拡大と縮小の境目を示す。
原題:Philadelphia Fed Manufacturing Index Fell to 1.3 in Aprilfrom 2(抜粋) 
更新日時: 2013/04/18 23:07 JST


3月の米CB景気先行指数は‐0.1%、7カ月ぶり低下
2013年 04月 19日 01:05

[ワシントン 18日 ロイター] 米大手民間調査機関のコンファレンス・ボード(CB)が発表した3月の景気先行指数は94.7と前月比0.1%低下した。低下は7カ月ぶり。市場予想は0.1%上昇だった。

内訳では消費者期待や工場での新規受注などがさえなかった。


米Mスタンレー第1四半期は黒字転換、資産運用部門の拡大寄与 12:44am
[18日 ロイター] 米モルガン・スタンレー(Mスタンレー)が18日発表した第1・四半期決算は、利益が9億5800万ドルと、1億1900万ドルの赤字だった前年同期から黒字転換した。資産運用部門の拡大が寄与した。 記事の全文

北朝鮮、交渉開始には核開発放棄への取り組み示す必要=米 12:30am
[米大統領専用機 18日 ロイター] 米ホワイトハウスは18日、北朝鮮と「正真正銘の信頼ある」交渉を行う用意が依然あるものの、北朝鮮はまず核開発の放棄に真剣に取り組む姿勢を示す必要がある、との見解を示した。 記事の全文


米新規失業保険申請件数は小幅増、雇用市場の回復懸念和らぐ 12:12am
[ワシントン 18日 ロイター] 米労働省が18日発表した4月13日までの週の新規失業保険週間申請件数は、季節調整済みで4000件増の35万2000件だった。小幅増にとどまり、雇用市場の回復が大きく後退したとの懸念が和らいだ。 記事の全文

4月の米フィラデルフィア地区連銀業況指数、前月から低下 12:05am
米国株式市場・序盤=小安い、企業決算など消化 2013年 04月 18日 23:59 JST
伊議会、第1回投票で大統領選出できず 2013年 04月 18日 23:21 JST
焦点:日銀、展望リポート見通し15年度への延長を検討へ 2013年 04月 18日 22:33 JST
東南アジア株式=おおむね上昇、ジャカルタは最高値 2013年 04月 18日 22:18 JST
 

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コメント
 
01. 2013年4月20日 00:38:09 : niiL5nr8dQ
http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2013/04/19/018848.php

小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

従業員が嫌いな取引先を切ることのできる会社の発展法

2013/04/19 (金) 12:52


 私、数か月前に、ホウレンソウは必要がないという会社創業者の話を紹介させて頂きました。

 ホウレンソウとは、報告、連絡、相談のこと。

 組織が巧く機能するには、例えば社員が上司に適宜、仕事の報告、連絡、相談をすることが肝要であると、サラリーマンは頭に叩き込まれていることが多いのですが、ある会社の創業者は、そんなことばかりでは社員が自分の頭で考えることをしなくなり、指示待ちタイプの社員ばかりになって会社は発展しない、と言っていました。

 まあ、言われてみたら一理あるのです。

 ただ、一言別の角度から言わせてもらえば、部下にホウレンソウを求める上司が多い割に、部下に大切なホウレンソウをしない上司がなんと多いことか!

 本題に戻りますが‥いずれにしても、企業は人なりなのです。

 そして、問題は、その企業を構成する社員一人ひとりの能力を如何に発揮させるかであるのです。ホウレンソウが必要ないと敢て誤解を招くような言い方をした経営者も、社員のモチベーションを高めるためにそのようなことを言っているのです。

 ところで、今朝‥とは言っても午前4時台の話なのですが、NHKのラジオ深夜便をボーっと聞いていると、ある町工場の経営者の方が話をしていました。

 初めから聞いていた訳ではないのですが、この方、面白いことを言うのです。

 なんと、この会社の従業員は、自分たちの会社に注文を出してくれる取引先であっても、どうしても嫌な相手であれば、切ってしまうことができるというのです。

 お客様は神様です、なんて言葉がありましたが‥嫌いな顧客からの注文だったら、応じなくてもいいというのです。

 思わず「じぇじぇじぇ」と言いたくなってしまいます。

 嫌いな顧客とは取引をしないで済むというのであれば、どんなに楽なことか! しかし、そうして嫌いな顧客を切ってしまえば、注文が激減して会社が倒産してしまう恐れがあると思うのですが‥

 それに、そもそも仕事なんて面白くないことの固まりみたいなものなのです。

 もちろん、どんな職業を選ぶかは本人が決めることが多いでしょう。多くは、自分の性に合っていると思って職業を選ぶ。

 で、そうして仮に憧れの大会社に就職することができても‥実際に入社すると、そこには嫌な先輩や、厳しい上司がいたりして‥そしてまた、取引先にも意地悪な人がいたりして‥

 そんなことにいちいち反応していてはとてもサラリーマンなんてやっていられない。だから、アフターファイブに上司や得意先の悪口を言いながら酒を呑む、と。

 余り愚痴ばっかりこぼして酒を飲んでいると二日酔いになってしまうので注意が必要なのですが、まあ、そうやって酒でも飲んで憂さを晴らすことができるのもサラリーマンの特権。

 それに、なんて自分はついていないと思っていても、周りを見回したら、何と自分よりもついていない人がいるのを知ると、急に安心したりして‥

 また、最初は嫌に思える上司や仕事の関係者であっても、半年、1年と経つうちに、徐々に好きになる人もいないではないので、早合点は禁物です。

 いずれにしても、どうしても好きになれない取引先の関係者がいたとして、そのような取引先との関係を切ってもいいと社長が言ったとしたら、何と有難いことか!

 だって、そうでしょう? もう、嫌な思いをする必要がないからです。

 少しくらい嫌な相手だと思っても、自社の売上増進のためなら大抵のことは我慢するのが普通の社員。だから、そもそも、あの会社との取引は止めましょうなんて、社員が言う筈がない。だから、そんな会社に忠実な社員が、あの会社との取引は考え直した方がいいと言うのは、よっぽどのことなのです。

 しかし、仮に社員がそのような提案をして、それを聞くような社長がどれほどいるのか?

 むしろ、バカもん!と一喝されるのがオチでしょう。

 しかし、この会社の社長は、現場の判断がそうなら、それでいいと言う。

 恐らくその社長が、神様みたいに思えてくるのではないでしょうか?

 この社長のためなら、もっと頑張ろう、と。取引先を失っても、自分の意見を聞いてくれたのだから、と。

 そんな社長がどこにいるか、知りたいですか?

 
((有)中里スプリング製作所のサイトから)

 社長は、(有)中里スプリング製作所の2代目の中里良一さん、61歳。この会社は、群馬県甘楽町(かんらまち)にあり、社員21名で、新幹線の車両から洗濯バサミまで約7000種類のバネを作っているのだ、とか。

 中里社長は、企業の9割以上は損得勘定で商売をしているが、中小企業はそれだけではやっていけないと言います。損得勘定ではなくて、好き嫌いの要素が大切である、と。

 早い話、大学を出て、大企業に入りたがる人が多いが、彼らの多くは損得勘定で判断している、と。収入などの損得で判断して大企業に入るだろうが、中小企業は、大企業のような条件を提示することはできない、と。

 しかし、それでも、もし自分(社長)や会社のことを好きになってくれれば、収入面で見劣りしてもずっと働き続けてくれる、と。その反対に、いい条件につられて入社したような人は、さらにいい条件を提示する会社が現れれば簡単に裏切る、と。

 ここにこの社長が好き嫌いの要素を重んずる理由があったのです。

 経済的な条件だけで自分たちは一つになっているのではない。お互いが好きだから、この会社が成立している、と言いたいのでしょう。

 なるほどな、と思いました。

 そうやってお互いを尊敬しあう仲だから会社が発展するのも不思議ではない、と。

 ただ、そうなれば、会社の規模を拡大するのは難しいのではないでしょうか?

 だって、自分と馬の合う人間など、そう簡単に見つかる訳でもないし‥

 そこのところはちゃんと心得ていて、そもそも会社を無理に大きくする気持ちはないのだと。従業員は最大28人に決めているのだ、と。

 何故28人か?

 自分のことを好きになってもらっても、自分が多くの欠点を有していることは分かっている、と。数えてみたら自分には28の欠点があることが分かったので、それを社員に公表するとともに、28の欠点を補う意味で社員の数は最大28人にまでと決めたというのです。

 まあ、その話については私としては納得はできないのですが、無理に会社を大きくしようとしても意味がないということは分かるのです。

 あとは、仕事の細分化を余り求めずに、全工程を見ることのできる「職人」の育成に励むことが重要だとも仰っていました。

 仕事は、分業を進めることにより生産性が何百倍、何千倍にもなることをアダムスミスが指摘したのは余りにも有名です。

 そして、実際にも、その教えに従って仕事がなされることが多いのです。

 でも、この社長によれば、そうした分業は、良いことばかりを生むわけではないことになるのです。

 何故ならば、余りにも分業が進んでしまうと、個々の従業員は、自分の専門以外の仕事ができなくなり‥そうなると、今度は自分の保身のために、自分の専門の知識を同僚に教えたがらなくなってしまうというのです。で、そうなれば、会社内が閉鎖的になり専門知識の共有ができなくなってしまう、と。だから、なるだけどのような仕事も対応できる職人さんを育て、そして、各自の取得した技能を皆で分かち合うことが肝要である、と言うのです。

 いずれにしても、NHKの深夜便などに登場する人は、皆、人前で話をするのが好きなようにお見受けしました。お話も大変に興味深いですし‥

 この社長、講演をするために全国を駆け回っているらしいのですが‥そうやって全国を回るのは、何も好きな話をするためだけではなく、社員が嫌いな会社との取引を切った分を埋めるために営業活動を同時に行っているのだ、と。

 いずれにしても、気の合った人々で構成される組織で長く働くことができたら、それに越した幸せはないかもしれません。


02. 2013年4月20日 03:33:13 : niiL5nr8dQ
お金の相談室
2013年04月19日
第303回 史上最低金利更新のその後、金利は上がる?それとも上がらない?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

日銀による異次元超金融緩和政策を受けて4月4日に長期金利が史上最低を更新しましたが、今後の金利動向の見通しを教えてください。また、このような超低金利の中、今後も債券投資を継続していていいのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

ご質問の通り、4月4日、黒田新総裁の就任後初の金融政策決定会合で日銀は「異次元」の超金融緩和政策を決定、それを受けた長期金利(=10年国債金利)は一時0.315%まで急低下しました。この水準が2003年6月に付けた0.43%を下回ったため、長期金利の史上最低記録更新となったわけです。

さて、この異次元超緩和政策の債券市場と長期金利への影響ですが、まずは、日銀の今回の決定事項を整理してみましょう。日銀は、2年間で物価上昇率2%達成を目標に、今回の政策決定会合で、@マネタリーベース・コントロールの採用とその大幅な増加、A長期国債買入れの拡大と年限長期化、BETF、J-REITの買入れの拡大等を決めましたが、この中で債券市場に直接に大きな影響を及ぼすのがAです。そして、Aの内容は日銀が今後利付国債を年間約89兆円購入するということなのですが、この89兆円という数字は半端な数ではありません。平成13年度の政府の国債発行予定額は約127兆円ですが、実にその70%にもなります。さらに、発行額の多い2年から10年の国債だけでみると、何と80%にも達しています。つまり、今後、しばらくの間、日銀は、国債の新規発行額の70〜80%を「買い占め」てしまうということです。

また、すでに発行されている国債は満期が来ると償還され、市場から消えてしまうわけですが、この消えてなくなってしまう償還分の金額が平成13年度は約91兆円あります。したがって、上述の新規発行額、約127兆円と償還分約91兆円の差が純増分の36兆円だったわけですが、異次元緩和によって日銀の国債保有額が、償還分を除いても年間約60兆円増加するため、結果的に、市中で取引される国債残高は、逆に24兆円の減少に変わります。この大幅増から大幅減への変化も金利低下の方向への大きな圧力になりそうです。

過去を振り返ると1998年の資金運用部ショック、2003年のVaRショック等金利急低下の後、急上昇に転じた局面もありましたが、過去、このような局面で金利の乱高下を主導したのは金融機関の巨額の売買でした。しかしながら、今局面では、金融機関はあまり大きく動いてはいません。つまり、今回の金利低下のリード役は日銀だということです。したがって、日銀の積極的な国債購入が継続する限り長期金利には低下圧力がかかり続けると考えられます。

では、このような環境の中で投資家はどうすべきかという点ですが、金利が、いつ、どの低下するのか、あるいは、上昇に転じるのかを正確に予測することは簡単ではありません。しかし、一つ歴史が示唆するアドバイスは、このような超低金利下での高格付け長期国債への投資は、いずれ厳しい結果を招くということです。金利が上がれば評価損が発生、上がらなくてもリターンは限りなくゼロに近い、つまり、上方ポテンシャルはほぼゼロなのに、下方リスクは非常に大きいということを十二分に意識する必要があるということです。実際、金融機関の中には、すでに債券の売却に動き始めているところもあります。このような局面では、ちょっと思い切って、株式や、利回りが相対的に高い社債、ハイイールド債券、新興国債券等への投資を検討してみてはいかがでしょうか。

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

前の記事:第302回 短期的、中長期的に見ておいた方がよい指標とは? −2013年04月12日


為替マーケットの攻略法
2013年04月19日
金バブルが崩壊?!スマートマネーの行き先は?

今週は中国のGDPの大幅下振れやボストンの爆弾テロなどで市場全体が大荒れとなっていますが、中でも大変なことになっているのが金相場です。金相場は昨年の秋からすでに下落局面に入っていましたが、先週金曜日に下値めどと見られていた1,500ドルを割り込むと、今週月曜日には一時1,300ドル台前半と2011年1月以来の安値まで急落。一日で140ドルの下げ幅は33年ぶりだそうです。

金の急落の原因は、世界第2位の金購入国である中国の景気鈍化や、財政悪化に苦しむ欧州の中銀による金準備の売却観測、マージンコールや証拠金率引き上げを嫌気した投げ売り、大手米系証券の見通し引下げなどが挙げられますが、より重要なのは金相場に中長期的かつ質的な変化が起こっている可能性があることです。

2007年のパリバショックをきっかけとした信用不安が発生するまでは、金相場はわずか600-700ドル台でした。それが2008年のリーマンショック、金融危機に突入していく過程で、金相場はみるみる値を上げ、2011年9月には1,900ドル台の史上最高値をつけたのです。一般に、金の価値は不変であり、金価格の上昇はドルの価値減少を表しているとされています。米国が大規模な金融量的緩和(QE)を推し進める中で、ドルの価値が希薄化し、ドル建ての金の価格が相対的に上昇したわけです。

しかし今や米国の金融危機は収束し、経済は緩やかながらも回復に向かっています。量的緩和により大量のドル札を刷りまくってきたFRBも、最近はQEの縮小や停止の可能性を口にし始めました。これに伴い、ドルの先安観が後退し、ドルの価値の裏返しである金の相場が下がり始めた可能性があるのです。また世界的に景気が回復すれば、債券から株に資金が移動し、金利が上がり始めます。最近の金相場の下落基調は、金利を生まない金を保有するコストが高くなることを先取りする動きである可能性もあります。ヘッジファンド勢は金の売却を急いでおり、ETF(金を裏付けとする上場投資信託)は2月に過去最大の資金流出を記録しました。スマートマネー(抜け目のない資金)はすでに市場から逃げ出しているのです。

さて、金相場が下落し、ドルの価値が回復するとすれば、最も影響を受ける通貨は何でしょうか。それは産金国通貨であり、商品相場との相関が高い豪ドルということになるでしょう。豪ドル/ドルは昨年7月以来1.01-1.06ドルのレンジ内で推移していますが、金相場はすでに2011年1月以来の安値をつけ、弱気局面入りした可能性が高まっています。今後豪ドルも金相場の後を追ってサポートの1.01ドル台を試す展開となってもおかしくありません。豪ドル円も、日銀の異次元緩和以来の円安相場に一服感が出ていることもあり、そろそろ下値警戒を強めておいた方がいいかもしれません。

コラム執筆:雨夜 恒一郎 為替アナリスト

スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。

前の記事:今夜の米国雇用統計の読み筋は? −2013年04月05日

広木 隆2013年4月19日 アベノミクスのアキレス腱 - リスク・シナリオ -

超悲観シナリオは蓋然性が低い

アベノミクスのアキレス腱だの、リスク・シナリオだのと書くと、「制御不能な悪いインフレが起きる」とか「国債が暴落して(金利が急騰して)財政破綻の危機に陥る」といったような、極端な悲観シナリオを想起される読者もおられよう。もちろん、「絶対」ということは絶対にないから、そうしたシナリオの示現確率がゼロでない以上、絶対そうならないとは言い切れない。然るに、筆者はこれまでも述べてきた通り、そうした悲観シナリオの発生確率は低いと考えている。

ここではそう考える根拠をいちいち議論することはせず、次の3点を指摘するにとどめたい。そして、その3点の正当性を納得していただければじゅうぶんだと考える。1つ目は、仮にそうした悲観的な方向に向かうとしても、最悪の事態に陥るまでには相当な時間を要するという点である。すぐにハイパーインフレになったり、ましてや財政が破綻するわけではない。そもそも2%のインフレ目標はおろかデフレ脱却すら疑問視されている状況である。本当にインフレが問題になるなら、いくらでも対応や軌道修正が可能である。

2つ目は、なぜ時間がかかるのかという1つ目の理由でもあるのだが、経済的事象を含めものごとには、すべて二面性があるからだ。例えば、円安になれば自動車産業など外需の製造業は潤うが、エネルギー、食糧、原材料の輸入にはマイナスだ。インフレには悪いインフレと良いインフレがあるが、デフレに良いデフレはない、と一般に言われる。しかし、モノが安く買えるというのは良い面でもある。確かに、弱者にとってインフレは税金のようなものだから、物価が安定しているに越したことはない。

金利については明白である。借金する身には金利上昇は困る。逆に貸す方、資産を運用する方にとってはプラスである。何度も繰り返し述べているが、「日本が抱える1000兆円の借金」というのは、人々の不安を煽るための言葉であって、正しくは政府部門の債務の額である。企業と家計のバランスシートには政府債務残高を上回る資産があり、よって日本という国全体は純債権国である。「純債権国にとって金利上昇は国益である」という言葉を以前にも紹介した通り、金利がこれから上昇するなら、それによって恩恵を受ける主体が大勢いる。金利上昇による利払い負担の増加で財政は苦しくなるだろうが、それをファイナンスしている企業・家計は潤うのである。

これだけカネ余りの運用難の時代である。長期国債の金利が3%になれば、喜んで買う投資家は大勢いるだろう。何しろ、短期金利はゼロだから、タダ同然の調達コストで為替リスクなしのキャリートレードで労せずして稼げるわけだから。黒田・日銀による「異次元緩和」で国債市場が混乱し、日銀が長期国債を買うと言っているのに、逆に長期国債が売られ長期金利が上昇したのは、端的に言って、日銀が長期金利を「つぶし」にかかるならば、そこにはもう利回りとしての魅力がないからである。利回りが上がってくれば、また投資ニーズは復活するだろう。少なくとも、利回りがあるなら買いたいという主体が大勢いる以上、一本調子で金利が急騰を続けるというシナリオは考えにくいのである。

悲観論者は国債を買いたいという向きがそのうちいなくなるという。それは国債価格の暴落を恐れるからだという。しかし、そうした議論は自己循環論法、あるいは自己撞着的である。下がるから売る、売るから下がる、堂々巡りの議論をしているだけだ。価格(債券では利回り)自体が投資ニーズを生むという事実を見逃している。

そして3つ目のポイントは、「制御不能な悪いインフレ」とか「国債暴落、財政破産」といったような、極端な悲観シナリオが示現するケースは、日本経済が辿るパス(道筋)のなかで、すべて最悪のルートを辿り続ける、文字通り極端な場合であるということだ。例えば円安になっても日本企業の業績が伸びず税収も増えないケース。金利が上昇して住宅ローンを変動金利で借りていた人たちの自己破産が急増するケース。債券を大量保有していた金融機関が破綻して金融危機が起こるケース。様々な経済要因の吉凶両面あるうち、すべて凶の目が出るということを想定しているのと同義である。無論、可能性がないわけではない。しかし、ものごとの悪い面ばかりが重なるというのは、確率論としては相当低い。悪いところだけ見ている「悪いとこ取り」である。

例えば、変動金利で住宅ローンを借りている人の債務残高総額と家計が持つ不動産の資産価値合計とどちらか大きいか。インフレになるということは債務の実質価値は減り、資産の価値は上がるということだ。金利が上がるというのは、負債を持っているひとには苦痛だが、利子所得者には朗報である。ものごとには功罪両面があり、悪いことばかりが起こるというのは確率的に極めて低い。それが極端な悲観シナリオが起きないだろうという理由である。

で、あるならば、極端な楽観シナリオもまた確度としては高くない。例えば、デフレを2年で脱却し、成長戦略で日本経済は復活を遂げ、株も青天井に上がり続け我々の給料も大幅に増えるといったバラ色のシナリオだ。こうした100点満点のゴールもまた難しい、というのがフェアな議論というものだろう。

アベノミクスのアキレス腱

アベノミクスのアキレス腱は何か?それは、アベノミクス3番目の矢とされる成長戦略が不発に終わることである。但し、それ自体は別に大きな問題ではない。本当の問題は、成長戦略が不発に終わることで「アベノミクスは失敗である」というようなメディアの論調が高まること - それが真のリスクだと考えている。

成長戦略は不発に終わるべくして終わるだろう。それ自体は、実はみんな薄々感づいていながら口にしないだけだから、大きな驚きではない。問題は、その自明とも思われることをことさらのように論(あげつら)って、「アベノミクス失敗」の烙印を押したがるメディアの論調であり、その論調の高まりを利用した(確信犯的な)ヘッジファンドによる「日本売り」である。欧州債務危機が深刻化したのと同じ構図で同じ原理が働くだろう。それが最も怖いシナリオである。

「二の矢、三の矢を継ぐ」という言葉からの連想だろうか、まるで三段式ロケットのようにアベノミクスの3本の矢が順繰りに放たれるかの印象を持つ方が多いが、この3本の矢はまったく独立のものである。

アベノミクス3本の矢のうち、1本目の大胆な金融緩和については、日銀の新執行部による「異次元緩和」の決定がなされた。矢は既に放たれたと言えるだろう。評価については、リフレ派、反リフレ派の「神学論争」とも言える議論が続いているが、とりあえず市場は株高・円安で応えた。

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2本目の積極的な財政政策については、先に成立した昨年度の補正予算に続いて、一昨日、今年度予算が衆院を通過、事実上の成立である。昨年度の補正と合わせた「15カ月予算」になり、総額は100兆円を超える。しかし、その効果に即効性はない。なぜなら予算は成立しただけでは、カネがばら撒かれることにはならないからだ。予算を使いたいひとが、厚さ数センチに及ぶ膨大な申請書を役所に提出し、それが認可されてはじめて予算執行の運びとなる。100兆円の予算を使い切る(しかも有効に使い切る)にはいったいどれだけの労力と時間がかかるだろうか。

1本目の大胆な金融緩和についても、経済学的な論拠はなく、「壮大な実験」「政治的なギャンブル」との声が上がる。2本目の積極的な財政政策でも景気は刺激されていない。それでも世の中のセンチメントが改善しているのは、まさに「期待先行」だというわけだ。

一般的な世論はこうだろう - 金融緩和だけで脱デフレは不可能。重要なのは成長戦略だ。経済成長なくして財政再建も果たせず、財政健全化がなければいずれ国債売りで日本は破綻の道を進む。期待先行で株高や消費の好調さが維持されているうちに、3本目の矢の発射台に点火し、成長戦略を離陸させないと、アベノミクスは瓦解する - 

「成長戦略」とは何か

成長戦略が大事。一見、まともな議論のように聞こえる。猫も杓子も成長戦略と言うが、では、成長戦略とは具体的に何を指すのだろうか。ここはあれこれ詮索するのではなく、安倍総理ご本人の弁を聞いてみよう。安倍総理は今年1月に官邸で開催された、第1回目の規制改革会議に出席された。その席で安倍総理はあいさつし、次のように述べた。

<規制改革は安倍内閣の一丁目一番地であります。「成長戦略」の一丁目一番地でもあります。
 前政権における規制改革は、どちらかと言えば、規制改革のための規制改革になっていたわけでありますが、安倍政権においては、目的ははっきりしているわけでありまして、経済活性化のための規制改革であります。そして規制改革により経済の成長、そして雇用を作っていくということが目的であります。その目的を明確化させていただきたい、このように思います。
 産業競争力会議では、いくつかの重点分野で国民のニーズを踏まえた戦略目標を設定をしていくことになっております。例えば、健康で長生きしたいという国民のニーズに応える社会を実現し、これを国際的に展開していくことで我が国経済の発展を目指していきます。
 規制改革会議ではそうした戦略目標を達成するため、規制改革の実現に重点的に取り組んでいただきたいと思います。
 そうした重点分野において、我が国で民間の方々が活動することにおいて、最も魅力的な環境を提供する国となるように目指していきたいと、このように考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 目指すのは、世界一でございます。
  委員の皆様方におかれましては、あるべき姿に立ち返った、骨太の議論を行っていただきたいと、このように思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。> 目指すのは世界一、とはどういう意味かよく分からないが、少なくとも以下のことは分かった。

1. 規制改革は安倍内閣の一丁目一番地であり「成長戦略」の一丁目一番地である。すなわち、大雑把に言えば「成長戦略」、イコール、「規制改革」である。

2. 「成長戦略」を推し進める会議体は二つある。ひとつが産業競争力会議で、もうひとつが規制改革会議だ。

3. この二つの会議体の棲み分けとしては、産業競争力会議はその構成メンバーを見ても想像がつく通り、ざっくり言って「大上段」の議論を行うところであり、実務的な議論を担うのは規制改革会議である。

この二つの会議体の上部組織は何かというと、日本経済再生本部である。日本経済再生本部は、「我が国経済の再生に向けて、経済財政諮問会議との連携の下、円高・デフレから脱却し強い経済を取り戻すため、政府一体となって、必要な経済対策を講じるとともに成長戦略を実現することを目的として、これらの企画及び立案並びに総合調整を担う司令塔」との位置づけだ(首相官邸HPより)。

「成長戦略」を推し進めるのは誰か

アベノミクスの「成長戦略」推進の原動力となるのが、経済財政諮問会議と日本経済再生本部であり、これらを統括するのが、経済再生担当大臣である甘利明大臣である。甘利大臣は、言わずと知れた自民党の「経産族」の象徴で、彼の向こうにいるのは霞ヶ関の官僚である。

もっと言えば、首相の側近、いわゆる主席秘書官である政務担当の首相秘書官は、経済産業省の今井尚哉氏である。将来の事務次官候補のひとりと目される、82年入省組のエースだ(2006年の第1次安倍内閣でも事務担当秘書官を務めた)。他に5人いる事務担当秘書官は、外務省、財務省、防衛省、警察庁、経済産業省の各省庁から1名ずつ内閣官房に出向する形で就任する。財務省出身者が事務秘書官の中で筆頭格とされ、他の事務秘書官よりも年次が上の者が就くのが通例だが、経産担当の柳瀬唯夫氏は84年入省、財務担当秘書官の中江元哉氏と同期、すなわち同格である。

ちなみに、今井氏の前職は資源エネルギー庁次長、柳瀬氏は原子力政策課長時代に「原子力立国計画」をまとめた人物。ふたりとも筋金入りの原発推進派だ。

こうした布陣をみても安倍政権における経済政策は、甘利大臣=経産官僚が司る構図である。

産業競争力会議にせよ規制改革会議にせよ、会議のメンバーは民間企業のトップと学者、研究者などで構成されているが、その実務は官僚の手に委ねられている。なぜか?規制改革というものを実務の面から分かりやすい言葉で言い換えるならば、それは「役所のルールを変える」ということにほかならないからである。役所のルールを変えるというのは、実務的に役人の手によらなければならないからである。

整理しよう。

・アベノミクス3本目の矢、「成長戦略」とは規制改革である。
・規制改革を推進する議論の場を掌握するのは、甘利大臣=経産官僚ラインである。
・規制改革とは利権の配分を変えること、既得権益を見直すことにほかならない。
・官僚の本分とは自分たちの「省益」を優先すること、すなわち既得権益を守ることである。
・その官僚たちに既得権益を見直しましょうと言っても、遅々として進まないのは明白である。

ではどうなるか?抜本的な、いわゆる「骨太な」規制改革などは進まず、膨大な個別案件の積み上げのなかで、あるものは進展し、あるものは進まず、場合によっては規制がかえって強化されるものも出てくるだろう。なぜなら、あらかじめ絵に描いた「落とし所」に落とすのが官僚の仕事だからである。

例えば原発問題。「原発ゼロはあり得ない」とする安倍政権で、経産省の原発政策スペシャリストが政権の枢要な役所についている以上、再稼働に向けた「落とし所」を探ることになる。全国で54基あった原発は4基がダメになって、現在50基。「原発ゼロはあり得ない」じゃあ、いくつなら許されるのか。「落とし所」は、「犠牲」になってもらう原発をいくつ選ぶのか、というものだろう。10基かそこらを廃棄する。その代わりに、40基を再稼働させる。「10廃棄、40再稼働じゃ朝○新聞がうるさいから20廃棄30再稼働にしておくか」 - おそらくそんな線を探っているのだろうと推察する。

延々と続く規制改革議論

規制改革議論は今に始まった話ではない。例えば蓮舫氏が仕切る「事業仕分け」で有名になった民主党政権時代の行政刷新会議も規制改革会議の脈流のひとつである。もとをただせば90年代半ば、オリックス会長の宮内義彦氏を委員長とした「規制緩和委員会」が源流である。その後、「規制改革委員会」に改称され、以来、脈々と続けられてきた。

現在の規制改革会議の主要テーマは4分野で、それぞれのワーキング・グループで議論されている。その4つの分野とは、

健康・医療
エネルギー・環境
雇用
創業等

である。そして、それぞれの分野に10〜20程度の項目が具体的検討事項として乗っかっている構造になっている。例えば、エネルギー・環境のなかに電力の小売全面自由化だとかエコカーの普及などが挙げられ、雇用のなかで、実は待機児童の問題も俎上に上げられたりする。保育施設の充実が女性の就業支援に通じるからだ。なかでも安倍首相の関心が高いのが解雇規制だという。

しかし、この主要4分野、初期の規制改革議論のときからまるで変わってないのである。その時々において、重点の起き方は多少変わるが、代々同じメニューなのだ。例えば、小泉内閣の「骨太の方針」では、医療、環境、人材などが取り上げられた。その後、観光立国だとか、ITだとか細かな追加はあるものの、中心課題は変わっていない。

嘘だと思う方は内閣府のホームページで資料を閲覧されたい。内閣府ホーム > 審議会・懇談会等 > 規制改革と辿ると、関連リンクという項目があって、そこには民主党時代の行政刷新会議から旧規制改革会議、さらにその前身の規制改革・民間開放推進会議と歴代の規制緩和検討の記録が残されている。そこにあるファイルを見れば、日付が違うだけで中身はまったく一緒ということが分かるだろう。

規制緩和を実際にハンドルするのは役人で、役人に利権の配分を変えようといっても、牛歩戦術で抵抗されるのがオチだという記録なのである。

このことだけをとっても、規制緩和というものが一気呵成に進まないものだという事実が分かるだろう。

選挙制度の問題

昨日、安倍首相は日本テレビの情報番組「スッキリ!!」に出演し、今年度からの5年間で待機児童ゼロを目指す考えを表明した。子供が1歳半になるまで認められている育児休業を3歳まで延長することも方針として決めた。本日付の日経新聞は、「働く女性に手厚い支援」と報じている。

もちろん大事なことである。しかし、その優先度、取り組みの本気度はいかばかりだろうか。カネがすべて、とは言わないが、現実問題として、いったいいくらの予算を張り付けるつもりなのだろう。

平成25年度厚生労働省予算案を見てみよう。主要施策の真っ先に「子育て支援の充実」と掲げられている。「待機児童解消のため、保育所などの受入児童数の拡大を図るとともに、地域のすべての子育て家庭を支える機能を強化し、子どもを産み育てやすい環境を整備する」とのことだ。そして、その予算は保育所だけでなく放課後児童対策まで含めて、総額4,927億円である。

1番目の項目、「子育て支援の充実」が4,927億円だ。
次に2番目の大項目として「医療・介護」が挙げられている。この予算は、医療が10兆5,500億円強、介護が2兆5,000億円弱である。
次の3番目の大項目が「年金」で、その予算は、10兆4,000億円強である。

簡単に言うと、高齢者対策予算が23兆5,000億円。子育て支援は5000億円弱。高齢者予算の2%である。平成25年度厚生労働省予算案(一般会計)の社会保障関係費の総額は約29兆円。そのうち8割以上が高齢者対策で、1番目に挙げられた項目「子育て支援の充実」には全体の1.7%しか充てられないのである。

この差は何かと言えば、もちろん「票」の差である。高齢者が選挙の票を握っている以上、政治家はそこに手厚くカネを配分する。日経新聞は、「働く女性に手厚い支援」と書くが、その手厚さはカネの面で言えば高齢者向け対策のわずか2%の「手厚さ」である。

規制改革で利権の配分を変えよう、既得権益を打破しよう、と言ったところで、政治家は票を握っているところを優先する。安倍首相がTPPをスタンドプレーのごとく通してしまったのは、もはや農家(農協)の票のインパクトが大きくないからである。

しかし、高齢者は間違いなく大票田である。総務省が16日発表した2012年10月時点の推計人口によると、数値を公表し始めた1950年以降、65歳以上の高齢者(老年人口)が初めて3千万人を超えた。ただでさえ若い世代の「分」が悪いのに、参政意欲の面でも若者は自分で自分の首を絞めている。最近、日本の選挙における投票率の低さが話題になるが、国際的に見て日本だけが異常に低いというわけではない。但し、問題なのは20代30代の若年層の投票率が悲惨なまでに低いのである。

これはもう選挙制度を変えるしかないだろう。世代別、性別に投票を行って、その世代の利権を、女性の立場を代弁してくれる政治家をそれぞれ選ぶのだ。選挙制度改革というと「0増5減」といった1票の格差問題という地域差の話ばかりが注目されているが、世代や性別の格差のほうがより問題ではないか。そして、それは(本来は)法を変えずとも、われわれ有権者の意識を変えれば改善できるはずなのだが。

希望と不安

希望がないわけではない。インターネットを使った選挙運動を解禁する公職選挙法改正案が今日、成立する。夏の参院選からウェブサイトのほか、ツイッターやフェイスブックなどソーシャル・メディア(SNS)を使った運動が解禁される。これによって若年層の政治意識が高まることを期待したい。票の流れを変えないと政治は変わらず、規制緩和など進むわけがない。

90年代からずっと構造改革、規制改革と叫び続け、それがまったく進んでいないのはなぜか?選挙があまりにも多かったからである。これだけ首相がころころ変わる国なのだ。そのたびに内閣が変わり、大臣が変わる。つまり役所のトップが変わるのだ。役所のルールを変えようという動きもその度に仕切り直しである。一方、政治家側も本腰を入れにくい。繰り返すが規制改革とは既得権益を変えること、利権の配分を変えることである。選挙に直面する政治家がそんなリスクを冒すわけがない。政治家のプレッシャーがなければ、基本的に役所サイドに規制緩和のニーズ(インセンティブ)はない以上、規制緩和が行われるわけがない。

今回は大きなチャンスだ。夏の参院選が終わればその後3年半は選挙がない(だろう)。これだけ長い間、選挙がないのは久しぶりである。このチャンスに、高い支持率を味方につけた首相・大臣が相当の気合をもって臨めば、成果がそこそこは期待できるかもしれない。

まず次のヤマは6月。経済財政諮問会議と日本経済再生本部が取りまとめ、政府としての成長戦略を明確に掲げるのだ。そして、その一部が自民党のマニュフェストとなって参院選になだれ込むことになろう。

おそらく自民党は参院選を大勝するだろう。不安は、その勝利に安住して自民党が昔の自民党のままでい続けるということだ。すなわち既得権益を守りたいというバイアスが強まることだ。そうなったらアベノミクス3本目の矢、成長戦略は完全に不発に終わる。

成長戦略=規制緩和なら、もともと「抜本的」な変革、大成功など期待していない。細かな個別案件の積み上げで、なかにはいくつかアピールできるものもある、その程度でよいのだ。だから、それを殊更、失敗と見立てる向きに弱みを与えないことが肝心である。

安倍首相は日本テレビの「スッキリ!!」に出演するのを自らオファーしたという。そしてその理由について、「なんとなく明るくて、その日にいいことがありそうな感じがするんです」と答えたという(僕は観ていない)。

そういう、ぼかしかたでいい。テレビに出て、20万人分の待機児童に対しての保育所を整えていくとか5年間で待機児童ゼロを目指していくとか女性の雇用促進が成長戦略の中心的な柱とか、世間受けすることをどんどんアピールする。それでいい。そうすれば、メディアにつけこむ隙を与えない。アベノミクスのアキレス腱を攻撃されずに、うまく世間を味方につけるのだ。それがアベノミクス成功の要諦である。なぜならアベノミクスの本質は「景気は気から」の一言に尽きるのだから。揶揄ではない。それは本当に偉大で重要なことである。

村上尚己2013年4月19日

欧州の政治リスクと動かないECB

来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています


フランクフルトに続いて、現在、ロンドンにおいて欧州経済や金融市場をテーマに、ミーティングを続けている。フランクフルトではユーロ圏のリーダーであるドイツ側からの考えや意見が議論の中心になったが、ロンドンにおける面談者は金融市場の変化に敏感な方が多く、マーケットの見方についてより幅広い範囲に話題が及んだ。

9月に予定されているドイツの総選挙が、再び市場を混乱させる要因になるかという点については、4月17日にお伝えしたが、フランクフルトで聞かれた声と同様に、これは大きなリスクにならないとの見方が多かった。唯一のリスクシナリオは、「反ユーロ体制」を明確に訴える政党が第三極となり、これと次期メルケル政権が連立を余儀なくされるシナリオだが、現段階でその可能性はかなり低いようである。

中には、ドイツの選挙がポジティブサプライズをもたらす可能性を指摘する面談者もいた。次期政権が、メルケル率いるCDUではなく、中道左派SPDが小政党と連立を組んで政権を奪取し、より労働者の立場を重視する新政権が誕生する展開である。この場合、メルケル首相が距離を置いている「ユーロ共通債」の早期導入が現実味を帯びる可能性がでてくる。ドイツが、南欧諸国に対する財政移転を進める政策であり、ユーロ経済の停滞を和らげる可能性がでてくるためだ。

一方、ドイツの選挙は無難に通過するとしても、イタリアの政局が未だに展開が読めないことから、夏場にかけてイタリアの政局が、市場にショックを及ぼすリスクを指摘する声が複数聞かれた。この見方には、同国の政治を詳しく調査しているイタリア人エコノミストも含まれるのだが、彼に言わせると「イタリア人の私でも全くわからないんだけど」とのこと。

だから、どの程度の生起確率を想定すべきか判断しかねる。2012年のギリシャ離脱シナリオほどの大きなショックにはならないにしても、仮に、米国を中心に世界経済回復の足踏みが鮮明になり市場心理が不安に傾くことになれば、イタリアの政局動乱をきっかけに欧州への懸念が浮上する可能性もあることを念頭においた方がよさそうである。

また、筆者は、ユーロ経済が直面する停滞を打開するために、米英日と同様にECB(欧州中央銀行)による大規模な金融緩和政策、あるいはドイツなどの拡張財政政策が必要と認識している。それらが実現しなければ、未だに南欧諸国の金利は高く金融環境が引き締め的であるため、南欧諸国の大幅な景気の落ち込みが続く。であれば、各国の政治がいつまでも安定せずに、ユーロシステムへの懸念が再び台頭しかねないからである(グラフ参照)。

ただ、ロンドンにおけるミーティングでは、ECBが米日型の金融政策に踏み切ることを予想する声はほとんどなかった。もはや、ECBの金融政策は、政治的にユーロシステムを維持するという政治的な意向でしか動かず、マクロ経済安定化のツールとしての役割は期待できない、という見方が主流になっている。

この点について議論を進めると、「ドイツを中心としたコア国(インフレの恐れがある)への配慮も重視しなければいけない。ECBはディレンマに陥っており対応は難しい」あるいは「最適通貨圏ではないユーロ経済圏は、そもそも根本的な欠陥を抱えている。ECBの対応は必然」、など、その考えの背景は面談者によって微妙に異なることが判明した。いずれにしても、危機が再燃する前に、ECBが自ら行動を変化させるシナリオは、どうやら期待できなさそうである。


03. 2013年5月13日 21:28:14 : niiL5nr8dQ
アングル:4月マネーストックの伸び拡大、物価2%射程との試算も
2013年 05月 13日 19:05 JST
[東京 13日 ロイター] 日銀が発表した4月のマネーストックは、金融機関の貸出が伸び続けていることを背景に、震災直後以来の大幅な増加幅を示した。お金の総額が増えれば物価も上昇するとの「貨幣数量説」に基づくと、4月のペースでマネーストックが増え続ければ2%の物価目標達成が視野との試算も出てきた。

ただ、日銀が異次元緩和を打ち出してまだ1カ月強しか経過しておらず、緩和効果は未知数だ。

日銀が4日公表したマネーストックM3は前年同月比2.6%増の1152.6兆円、ゆうちょ銀行などを除いたM2は同3.3%増の844.5兆円と伸び、それぞれ前月比で約10兆円程度増えた。単月でマネーストックが10兆円も増加したのは、震災直後に日銀が巨額の資金供給を行った2011年4月以来。銀行と信用金庫の貸出(平均残高)が今年4月まで18カ月連続で前年比で伸びており、マネーストック増加をけん引した。

4月4日に発表された「異次元緩和」は、マネタリーベース(世の中に出回る現金と銀行などが日銀に預ける当座預金の合計額)を年間60兆─70兆円増やし、14年末に残高を270兆円と倍増させる政策。

従来の日銀はマネタリーベースを増やしても貸し出しやマネーストックは必ずしも増えず、物価を押し上げる効果は限定的としてきた。しかし異次元緩和では金融調節の目標をマネタリーベースの量に置き、マネタリーベースを拡大することで、最終的に物価上昇を狙うことになる。日銀は、今回の政策が貨幣数量説に基づくとは表明していないが、お金の量と、お金が実際に取引などに使われる回数(流通速度)を掛けた金額が、物価水準と生産量を掛けた額(名目国内総生産、GDP)に等しいという貨幣数量説を前提とすると、お金の量と物価の関係を試算することはできる。

SMBC日興証券金融経済調査部の牧野潤一チーフエコノミストは、貨幣数量説を前提に2014年末までに物価目標2%を達成するのに必要なマネーストックを試算した。この場合、14年末までに約1000兆円のM2が必要で、現状より約150兆円増額する必要があるという。4月のマネーストックのように「毎月10兆円ずつ増えるならば14年末まで200兆円増額となり、2%が実現可能となる計算だ」としている。

ただ日銀によるとマネーストックは月々の変動が大きく毎月10兆円ずつ増え続けるとは考えにくい。昨年も4月は前月比で8.5兆円増えたものの5月は一転2兆円減少、6月は2.8兆円増加した。

そもそも異次元緩和公表から1カ月強しか経過していない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の西村崇債券ストラテジストは、「マネーストックに政策効果を見るのは時期尚早」と指摘する。銀行貸出が伸びてはいるものの、原発事故後に社債発行が減った電力会社向けや企業の合併・買収(M&A)資金の貸し出しが中心。今後もマネーストックが増え続けるには、「設備投資向け資金需要が増え、持続的に景気が回復する必要がある」とみる。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 石田仁志)



為替安定の実感なければ国内投資は出てこない=自工会会長
2013年 05月 13日 17:27 JST
[東京 13日 ロイター] 日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車(7203.T)社長)は13日の定例会見で、現在の為替水準について、デフレ脱却を目的とした日銀の金融緩和政策や、米国経済の明るさが見えてきたことなどが影響したものであり「市場原理に沿った動きだ」との認識を示した。

自動車業界各社は円高是正で業績が上向いてきたが「為替が安定したとの実感がないと、国内への投資もでてこない」と語った。

自動車業界に適正な為替の水準については「その時々の指標やファンダメンタルズで決定される」と述べ、明言を避けた。

1年前の為替レートは1ドル=78─80円近辺で、自動車メーカーにとっては円高が最大の経営リスクとなっていたが、日銀の金融緩和で円安の流れが加速しており、現在は1ドル=101円台で推移している。円高修正については、12日に決算発表した日産自動車(7201.T)のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)も「ついに普通の水準になってきた」と指摘。その上で「アベノミクスは称賛に値する。日本経済は世界の中心に戻ってきた」と述べた。

(ロイターニュース 杉山健太郎)

為替は1ドル100円辺りが限度か=経団連会長 2013年4月22日
インタビュー:市場、経済回復へのメッセージで安定に期待=財務官 2013年4月12日
株高に伴う資産効果で消費上向く、円安も歓迎=経団連会長 2013年4月8日
日本の軽自動車税制、優遇ではない=自工会会長 2013年3月21日


コラム:ドル105円・日経1万8000円も視野に
2013年 05月 13日 14:50 JST
田巻 一彦

[東京 13日 ロイター] ドル/円(JPY=>が13日の市場で一時、102円台に上昇した。前週末の7カ国財務相・中銀総裁会議(G7)で円安批判がなく、米経済の順調な回復で米長期金利が上昇し、日米金利差が拡大しており、マクロ的に円安を押しとどめる目立った要因が姿を消した。

このため円安/株高がこれまでの予想よりも速いテンポで進展する可能性があり、1ドル=105円や日経平均.N2251万8000円も視野に入ってきた。長期金利も新たな均衡点を模索することになるだろう。

<意識されたG7の円安容認>

13日の午前の東京市場で、ドル/円は一時、102.15円まで上昇。日経平均も1万4800円台まで水準を切り上げている。円安に弾みが付いてきた要因として、1)G7で明確な円安批判がなく、これまでの円安視点が容認された、2)米景気回復の鮮明化と米長期金利の上昇──が注目されている。

デフレ脱却を目指した「黒田緩和」の実施について、G7内で明確に批判した国がなかったことで、市場では今後も円安地合いの相場環境は容認されるとの見方が急速に広がっている。

市場では、急速な円安は米欧輸出産業の競争力低下に結びつき、G7で何らかのけん制的な発言が出る可能性について、かなり神経質に見守るムードがあった。しかし、議長国・英国のオズボーン財務相は「G7は財政・金融政策は為替操作ではなく、国内問題を目的とすることを確認した。 われわれは為替レートを目標としない。今年のG7声明は成功だった。順守されている」と表明。

日本批判を表明する可能性があったショイブレ独財務相も「G7会議で為替相場の動向に関し、日本と集中した討議を行った。既に明確化しているコンセンサスがあることを日本側に伝えた」と述べるにとどまった。

<拡大する日米金利差も円安材料>

また、4月米雇用統計の発表後、米景気回復の基調が鮮明になっていることを示す経済データ発表が続き、1.6%台で推移する時間帯が長かった米長期金利は、10日に1.8999%で取引を終えた。10年国債利回りの日米金利差は拡大する方向に動いており、ドル高方向の材料として意識されている。

このように足元の内外情勢をみると、円安の進展を止めるマクロ的な要因が影を潜め、一方向に進みそうな環境が整いつつある。外為市場では、103円半ばと105円前半がチャート上のポイントして意識されているようだ。103円台のチャートポイントをブレークすると、かなり短期間に105円を目指す展開になりやすいと予想する。

<円安進めば株高継続という"暗黙の合意">

株式市場でも、株価収益率(PER)が上がってきている一部銘柄については、かなり割高になってきたとの指摘があるようだが、日米欧の超金融緩和やその他諸国の利下げによって、世界に供給されている流動性は、かつてない規模に膨れ上がっており、「流動性相場」の声に適正株価を指摘する声はかき消されがちだ。

特に東京市場では、円安を起点にした金融相場という構図が多くの市場関係者に意識されており、円安が進めば株高が自動的に進展するとの"暗黙の合意"が形成されていると指摘したい。この結果、100円の壁をぶち破った円安基調が新しいフェーズに入ったことで、日本株上昇の展開も新段階に突入したと言えるのではないか。市場の一部には、日経平均.N225が1万8000円まで上昇しても不思議ではないという観測が出てきている。

<死角は2つ、海外経済のブラックスワンと急激な長期金利上昇>

では、円安/株高の進展に死角はないのか──。私は、2つのリスクがあると考える。1つは欧州もしくは中国における予想外のイベント発生によるリスクオフ心理の台頭だ。マイナス成長が継続するユーロ圏と生産関連の調整が長引きつつある中国では、今は予想できないブラックスワンが潜んでいる可能性がある。

もう1つは、日本の長期金利上昇が急テンポで進むシナリオだ。13日の円債市場では、日銀による国債買い入れオペの結果発表後に国債先物が売られ、10年最長期国債利回りも、一時0.800%まで上昇した。円安と株高が長期金利の上昇をもたらすのは自然だが、その上がり方が急過ぎると、株高の流れに水を差すリスクも出てくる。

いずれにしても、「黒田緩和」を含めた世界的な金融緩和を背景にした流動性の供給は、過去の経験では推し量れないような市場のうねりを生じさせる大きなインパクトを秘めている。




【クレジット市場】黒田緩和、金利抑制には苦戦−102円台・株高も


  5月13日(ブルームバーグ):黒田東彦総裁率いる日本銀行が「次元の違う」金融緩和策を導入してから1カ月余り。円相場は約4年7カ月ぶりに1ドル=102円台まで下落し、株価は急騰している半面、肝心の国債利回りが低下に転じる兆しは見えない。

長期金利の指標となる新発10年物国債利回り は10日、約5年ぶりの大幅な上昇(価格は下落)を記録。13日は一時0.75%と2月18日以来の高水準を付けた。海外勢の国内債券保有額は3月に3年ぶりの大幅減を記録した後、4月下旬も売り越し。金利上昇と円安を受け、ドル換算した日本国債の投資収益は年初来、世界債券指数で最低のマイナス12.2%に落ち込んでいる。
日銀はデフレ脱却と2%の物価目標の達成に向け、償還までの期間が長めの国債を中心に毎月の発行額の7割近くを市場から買い入れる「量的・質的金融緩和」を推進中だ。しかし、緩和効果で円安・株高と予想インフレ率の上昇が進む中、国債の投資妙味が相対的に低下するとの懸念から売りが膨らみ、利回りはむしろ上昇。国内勢も外国債券 の買い越しに転じた。
メリルリンチ日本証券の藤田昇悟チーフ債券ストラテジストは、日本国債は相場の乱高下を考慮すると、足元で「リスク資産化している」と言う。2%の物価目標を2年で達成できると言い切る「黒田総裁は本気だ」と分析。金利が上がると「市場が日銀を甘くみていると思い、必ず対応策を講じてくる」と読む。

リーマン直後以来の円安
円・ドル相場は13日に1ドル102円15銭とリーマンショック直後に当たる2008年10月以来の安値を付けた。衆院解散・総選挙が確定的となった昨年11月半ば以降の下落率は3割弱。国内株価 は約7割上昇した。景況感の変化に敏感なサービス業などを対象にした4月の景気ウオッチャー 調査では、先行き判断DIが過去最高を記録。安倍晋三内閣が掲げる大胆な金融政策と機動的な財政政策、民間投資を促す成長戦略の「3本の矢」は順調な滑り出しを見せている。
金融緩和がもたらす円安は今のところ、国際的な批判を集めてはいない。国際通貨基金(IMF)の篠原尚之副専務理事は10日の講演で、日銀の異次元緩和に支持を表明。金融緩和が通貨安を促すのは「ある意味で当然」であり、「現在の為替相場の水準は整合的だ」との見解を示した。思い切った緩和策には長引くデフレ下で定着した市場予想を崩す狙いがあるため、「若干の混乱は仕方がない」とも語った。
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は11日閉幕。財政・金融政策で為替相場を目標とせず、通貨安競争を避ける方針を再確認した。日本に関する集中的な議論が行われたものの、麻生太郎財務相は会議後、円安に対する批判ではなかったと説明。黒田総裁は今回のG7で異次緩和への理解が「さらに深まった」と述べるとともに、国内長期金利の上昇は「当面はないだろう」との見通しを示した。

長期金利、5年ぶり大幅上昇
通貨安や景気回復は、基本的に物価の押し上げに働き、金利上昇要因となる。10年債利回りは10日に10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。原材料価格の高騰が世界経済の懸念だった08年5月以来の上げ幅を記録した。20年債と30年債利回りはとともに3月以来の高水準を付けた。
国債先物相場では下落幅が1円に達し、東京証券取引所が一時的な売買停止措置(サーキットブレーカー)を発動。ブルームバーグ/EFFAS指数によると、残存1年超の日本国債のボラティリティー (120日ベース)は先週、11年2月以来初めて2.55%に上昇した。
JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、円・ドル相場の100円突破は「象徴的なイベント」であり、為替・株式市場では「期待感がやや過剰に働いている」と指摘。ただ、円安・株高の大きさを考えると「債券相場はよく持ちこたえている」とも述べ、巨額の長期国債買い入れをたんたんと続けていく日銀の影響力により「金利は最終的には下がっていく方向だ」と読む。

ポートフォリオ・リバランス
日銀は今回の異次元緩和で、長期国債の購入総額を月4兆円弱から7.5兆円程度に拡大。利回り曲線全体の低下を促すため、残存期間が最も長い40年債も対象に加え、買い入れの平均残存期間を3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延ばした。買い入れの内訳では、残存10年超が月8000億−1兆2000億円と従来の10倍前後に急増。5年超10年以下と1年超5年以下もそれぞれ3兆−3兆5000億円と、かつての1年超10年以下の6−7倍に増えた。
黒田総裁は先月12日の講演で、2%の物価目標達成に向けた金融緩和効果の波及経路の一つとして、巨額の国債購入で投資家や金融機関の運用資産を株式や外債、貸し出しなどにシフトさせる「ポートフォリオ・リバランス効果」に言及。為替差損の回避措置(ヘッジ)を講じた外債投資を基本とする生命保険会社は先月、海外の中長期債を4379億円買い越した。国内勢全体で見ても、先月21日−今月4日の直近2週間は5143億円の買い越しとなった。

実質金利の低下
三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは、アベノミクスと異次元緩和が機能している明るい兆しだと指摘。国内勢の対外投資増は国内債より高い利回りの外債を求めるポートフォリオ・リバランス効果を意味し、さらなる円安要因にもなると語った。一方、三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、内需喚起が不十分なままでは、円安を経由した輸入物価の上昇によってしか物価の押し上げが実現できない恐れがあると指摘する。
日銀は先月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、実質国内総生産(GDP)の成長率見通しを今年度2.9%、来年度1.4%と、1月時点から上方修正した。全国消費者物価(生鮮食品を除く) の前年比上昇率は13年度が0.7%、14年度は消費税率引き上げの影響を除いて1.4%に引き上げた。初めて公表した15年度は1.9%。黒田総裁は同日の記者会見で「15年度の早いうちか前半」に2%程度に達するとの見解を示した。
展望リポートは、日本経済が2度にわたる消費増税の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環を保ち、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想。量的・質的金融緩和により、長めの金利抑制や資産価格の上昇に加え「期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる」との見解を示した。

名目金利抑制が鍵
中長期的な視点で動く投資資金に影響を及ぼす実質金利が徐々に低下すれば、他の主要国と比べた国内債の魅力を弱め、海外投資に伴う円安要因となり得る。全国動向に先行するとされる東京都の消費者物価 上昇率(生鮮食品を除く)は4月に前年同月比マイナス0.3%。1年ぶりの小幅な下落率となった。同インフレ率を10年債利回りから差し引いた実質金利は2日、86.5bpと09年3月以来の水準に縮小した。

国際投信投資顧問の加藤章夫円債運用グループリーダーは「金融政策のコミットメントや巨額買い入れは実効性がある。2%の物価目標を2年で達成できるかはともかく、日銀が望む方向へは動かせる」と指摘。「名目金利が横ばいにとどまり、予想インフレ率が上がれば、予想実質金利が下がる」ため、「アベノミクスや異次元緩和の成否は名目長期金利の抑制できるかにかかっている」と述べた。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;シンガポール Masaki Kondo mkondo3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/13 11:46 JST


中国の固定資産投資、伸び鈍化−4月の工業生産も予想以下

  5月13日(ブルームバーグ):中国の固定資産投資は4月に予想外に伸びが鈍化した。工業生産は増加したものの予想に届かなかった。4−6月(第2四半期)の景気をめぐる懸念が一段と強まった。
中国国家統計局が13日発表した1−4月の都市部固定資産投資は前年同期比20.6%増。予想中央値は21.0%増だった。1−3月は前年同期比20.9%増。
4月の工業生産は前年同月比9.3%増と、市場予想(9.4%増)を下回る伸びにとどまった。4月の小売売上高は前年同月比12.8%増となり、予想と一致した。3月は12.6%増だった。
中国人民銀行(中央銀行)は先週、安定的な景気拡大 のための基礎はまだ固まっていないとの見解を示すとともに、成長を後押しする刺激策はインフレを引き起こす可能性があると警告した。
スタンダードチャータードの李偉エコノミスト(上海在勤)は「中国の景気回復は依然として弱い。中央政府は地方政府債務への警戒を続け、不動産市場のコントロールを維持し、公共支出を抑制するだろう。こうした措置の全てが中国の成長回復の制約となる」と述べた。
原題:China’s Investment Slows as Production Trails Estimates:Economy(抜粋)
更新日時: 2013/05/13 17:01 JST

日銀国債買い入れ、応札倍率「3−5年」と「5−10年」が低下(1)
  5月13日(ブルームバーグ):日本銀行がこの日実施した長期国債買い入れの結果では、応札倍率が残存期間「3年超5年以下」と「5年超10年以下」で低下した。国債市場で中長期ゾーンの潜在的な売り需要が弱まっていることが示されたが、落札金利が実勢をやや上回る水準となり、午後の債券市場で売りが膨らむ一因となった。
日銀は午前10時10分の金融調節で残存期間「1年超3年以下」、「3年超5年以下」、「5年超10年以下」のオペを通知した。買い入れ額はそれぞれ1000億円、5000億円、6000億円。買い入れ日はいずれも5月15日となる。
日銀は4月30日のオペから、残存期間「1年超5年以下」については市場の需要に対応して「1年超3年以下」と「3年超5年以下」に細分化して実施している。「1年超3年以下」の買い入れ額は、前回9日の2000億円から1000億円減額。一方、「3年超5年以下」は同4000億円から増額された。
対象銘柄は「1年超3年以下」では2年債は317回−328回、5年債は83回−96回(除く90回)、10年債は260回−279回、 20年債は27回と31回債。「3年超5年以下」では5年債は97回−110回、10年債は280回−292回、20年債は33回−39回。「5年超10年以下」では10年債は293回−328回(除く308回−311回)、20年債は40回−61回となった。
日銀が発表したオペ結果によると、「1年超3年以下」には6531億円の応札があり1002億円を落札。応札倍率は6.52倍と前回の4.38倍から上昇した。案分比率は55.6%。「3年超5年以下」は1兆6665億円の応札があり5002億円を落札。応札倍率は3.33倍と前回の4.95倍から低下。案分比率は26.5%。「5年超10年以下」は1兆4815億円の応札があり6003億円を落札。応札倍率は2.47倍と前回の2.93倍から低下した。案分比率は8.1%だった。
みずほ証券の三浦哲也チーフ債券ストラテジストは、オペの結果について、「若干弱い印象だ」と指摘した。先物中心限月は午後に下げ幅を拡大し、東京証券取引所は先物売買を一時停止するサーキットブレーカーを前週末に続いて発動した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 赤間 信行 akam@bloomberg.net;東京 船曳三郎 sfunabiki@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/13 14:50 JST

米国債発行規模が3年ぶり減少か、財政赤字縮小で−予想
  5月13日(ブルームバーグ):ウォール街の大手債券ディーラーらは、米財務省が向こう数カ月内に国債入札規模を縮小するとの見方に傾きつつある。歳入 急増に伴うもので、規模縮小なら3年ぶりとなる。
議会予算局(CBO)は2013会計年度(12年10月−13年9月)の財政赤字が8450億ドル(約86兆円)と、08年以来の低水準になると試算。プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)21社のうち8社は、財務省が期間5年以内の国債入札額を7月にも削減する可能性があると予想。米経済が大恐慌以来最悪の金融危機から回復し始めた翌年の10年以降、財務省は国債入札規模を減らしていない。
米国債市場では入札額1ドル当たり過去最高となる3ドルの応札がある状況で、供給を減らせば債券価格がさらに上昇する可能性がある。プライマリーディーラーの見通しは、景気拡大や税収増、歳出削減を受けて変化してきている。
米プルデンシャル・ファイナンシャル傘下のクオンティタティブ・マネジメント・アソシエーツのポートフォリオマネジャー兼マネジングディレクター、エドワード・ケオン氏は9日の電話インタビューで、「急速な財政赤字縮小は、赤字がそれほど速いペースで縮小していない場合ほど多くの国債を必要としないことを示すものだ」と指摘。「それでもなお質の高い債券の需要は世界的に非常に堅調だ」と述べた。

プライマリーディーラーの今年の国債発行予想は以下の通り。

Company Auctions Cut in 2013 Maturities

Bank of America No
Bank of Montreal No
Bank of Nova Scotia Yes 2s,3s,5s
Barclays Yes 2s,3s
BNP Paribas Yes 2s,3s,5s
Cantor Fitzgerald No
Citigroup Global Markets Yes 2s,3s,5s
Credit Suisse No
Daiwa Capital Markets No forecast
Deutsche Bank No
Goldman Sachs No forecast
HSBC Securities No
Jefferies Yes 2s,3s,5s
JPMorgan Chase No
Mizuho Securities Yes 2s,3s,5s
Morgan Stanley Yes All coupons
Nomura Securities No
RBC Capital Markets Yes 2s,3s
RBS Securities No
Societe Generale No
UBS No
原題:Bond Sales to Fall First Time Since 2010 as U.S. DeficitNarrows(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Daniel Kruger dkruger1@bloomberg.net;ニューヨーク Liz Capo McCormick emccormick7@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Dave Liedtka dliedtka@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/13 11:00 JST


イタリア国債めぐる回復局面は長く続かず=ソロス氏
2013年 05月 13日 09:41 JST
[ローマ 12日 ロイター] 著名投資家ジョージ・ソロス氏は、過去数カ月にわたってイタリア国債利回りを押し下げていた市場の回復局面は長く続かないとみられ、ユーロ圏が直面している基本的な問題も残っているとの認識を示した。12日付の伊スタンパ紙が伝えた。

欧州中央銀行(ECB)が流動性供給を約束していることや、日銀による積極的な金融緩和政策などもあり、2月の選挙後の政局不安が解決して以来、イタリア国債利回りに対するプレッシャーは急速に和らいでいる。

イタリア10年債利回りは4%を下回っており、対独連邦債スプレッドは約252ベーシスポイント(bp)と、2011年終盤の危機時に比べ半分以下にとどまっている。

スタンパ紙によると、ソロス氏は「(回復局面は)長くは続かないだろう。われわれはバランスがとれた状況からは程遠いところにいる」と述べた。

イタリア北部のウディネで開かれたイベントで、同氏はイタリアについて、もはや自らの運命を自ら決めることはできないと指摘。同国の運命は欧州連合(EU)の行動次第だとの認識を示した。

また、小規模企業に対する信用供給拡大に向け一段の行動が必要だとし、同氏が主張してきたユーロ共同債の発行や財政政策の一元化を改めて要求。「緊縮策が功を奏していないとの証拠が明らかになってきており、早かれ遅かれこの(緊縮の)傾向は転換されるだろう。(転換は)早ければ早いほど良い」と述べた。

独連邦債が6週ぶり安値、円安受けた日米国債売りに追随 2013年5月11日
独連邦債が過去最高値、ECB利下げや追加緩和観測で 2013年5月3日
イタリア国債利回りが低下、レッタ新政権発足で 2013年4月30日
独連邦債が上昇、予想下回る米GDP統計で逃避買い 2013年4月27日




04. 2013年5月14日 01:31:50 : e9xeV93vFQ
予定利率引き下げはもう避けられない!?

外債シフトでも八方塞りの生保運用

2013年5月14日(火)  武田 安恵

 「枠は今年度、どれくらい増えるのですか」「今後国債の金利がどの程度動いたら外債にシフトするのですか」。4月下旬に国内の主要生命保険会社が年次運用計画を発表した際に相次いだ質問だ。4月4日に日銀が発表した大胆な金融緩和でこれから生保はどう動くのか。金融市場では「ザ・セイホ」の再来がささやかれていただけに、ここ数年にはないほどの注目が集まった。

 ポイントは運用資金の約半分を占める国債の比率を圧縮し、外債投資へシフトするか否か。日銀は超長期の国債を含めて新規発行国債の7割を買い取ると発表した。さらなる金利低下で、国債で運用益を得るのは一層難しくなる。

 総額約300兆円といわれる生保マネーが外債投資へ動けば、一部といえども市場へのインパクトは大きい。為替市場で円安がさらに加速する可能性もある。主要生保9社の外債買い増し額は計1兆円規模となる見込みだ。

 しかし筆者は各社の説明会に足を運ぶ中で、質問に答える運用責任者の表情がどこか自信なさげなのが気になった。第一生命保険の説明会では、会見終了後に「もっと具体的に方針を説明してほしい」としつこく詰め寄る記者に対し「勘弁してください。私たちもこれから市場がどうなるのか分からないのです」と、本音を漏らす場面にも遭遇した。

 運用担当者の表情の裏にあるものは何か。筆者を含め、質問する記者のほとんどは外債の方が国債よりも利回りが高いことを前提として質問をしている。しかし本当はそれほどでもないのではないか。外債だ、外債だという割には、外債でどの程度利回りがかさ上げされるのか詳細に伝えられていない。筆者は、ライフネット生命社長で『生命保険入門』の著者でもある出口治明氏に疑問をぶつけてみた。出口氏は開口一番「外債投資のニュースは、生保が抱えている構造的な問題を議論せずに考えてはならない」と話す。「あなた、一から問題を整理してごらんなさいよ」。背中を押された筆者は、現在の生保運用で何が問題になっているのか考えてみることにした。

達成できない利回り

 そもそも、生保は毎年何%の利回りを見込んで運用しているのか。そして実際に達成できた利回りは何%なのか。これらの問題を考えるためには、生命保険の仕組みを理解しなければならないだろう。

 生保の運用資金は、簡単に言えば予定利率の異なるさまざまな生命保険商品から構成される積立金をまとめたものである。契約した保険金を支払うためには、あらかじめ決められた利率で運用しなければならない。これが「予定利率」だ。生保の運用は、個々の保険商品で契約者に保障している予定利率を加重平均した「平均予定利率」を目指した運用を行う。

 ニッセイ基礎研究所によると、2011年度の大手・中堅9社の平均予定利率は2.64%。最近の保険商品は利率が良くてもせいぜい1.5%程度だが、一昔前は養老保険など利率4〜6%の「お宝保険」がゴロゴロあったため、全体の平均値は高くなっている。

 この平均予定利率に対して、実際の運用で得られた利回りは2.44%だった。その差0.2%。つまり平均予定利率を達成していないのである。

毎年3000億円程度の利差損

 生保の負債コストともいえる平均予定利率が、運用利回りを下回る状態、つまり利差損が発生している状態を生保業界では「逆ざや」と呼んでいる。

 逆ざや問題は、生保が運用の中核に据える国債の利回りが低下していくバブル崩壊後の1992年頃から問題となりつつあった。だが当時は保有する株式などのリスク資産の値上がり益などでいずれ補填できるだろうと楽観的に見る向きもあった。

 しかし日本は「失われた20年」に突入する。なかなか好転しない運用環境に、逆ざやは恒常的な問題となった。逆ざやはピーク時の2008年には業界全体で約1兆5000億円程度に達し、近年は3000億円前後で推移している。


出所:ニッセイ基礎研究所
 ただでさえ逆ざや問題に頭を抱える生保業界が「異次元緩和」に巻き込まれれば、逆ざやは一層拡大する。今後さらに運用が苦しくなるのは想像に難くない。

 低すぎる長期金利は株式や不動産など、よりリスクの高い資産へ運用資金を振り向ける要因となる。黒田東彦・日銀総裁が金融緩和効果の1つに挙げる「ポートフォリオリバランス」だ。しかしここにも待ったをかける動きが起こりつつある。国際的な流れに乗った金融規制だ。

 マーケットの環境が不安定になっているため、各保険会社は自己資本を厚くすることがより一層求められている。保険会社の健全性を示す指標の1つであるソルベンシーマージン比率も、強化される方向で動いている。

 また、欧州の新たな保険の健全性規制「ソルベンシーII」では資産のみならず負債(保険金支払いの責任準備金)も時価評価しなければならないルールの厳格化が始まろうとしている。保険金の支払い能力の健全性を十分に確保することが求められるため、運用に充てたリスク資産の回収期間と、実際に支払う保険金のバランスが適正かどうかが厳しく精査される。

 これらの規制強化で各生保は、将来の運用益の予測が難しい株式など、リスク資産への投資を抑制せざるを得なくなる。

外債の金利も高くない

 円債もダメ、株式もダメ、だから生保の資金は外債へと向かう。内外金利差(日本円と外国通貨の金利差)を取って運用益を確保しようという目論見なのだろうが、欧米諸国の国債利回りは決して高いとは言えないのが実情だ。下表は主要国の10年債利回りを示したものである。

主要国の国債利回り
日本 0.57%
米国 1.75%
カナダ 1.79%
英国 1.73%
ドイツ 1.25%
フランス 1.69%
オーストラリア 3.13%
ニュージーランド 3.23%
利回りは5月7日時点
 欧米諸国は1.7%前後、オセアニア諸国でも3%程度。為替リスク取ってまで投資妙味のある水準かどうか、正直なところ疑問が残る。1〜2%程度の金利差では為替が少し円高に触れれば運用益はすぐに吹っ飛んでしまうからだ。加えて、生保自身の運用資金が巨大なだけに、一旦資金を流入させると利回りを低下させてしまうリスクもつきまとう。

 諸外国の金利水準がさらに低下していく可能性も否めない。米国では一部経済指標に改善の兆しが見られるが、欧州の債務問題の再燃、中国経済の減速と、世界景気は依然不透明な状況だ。出口戦略を探りながらも世界的な金融緩和の流れは当面続くと考えられる。

 このような環境下で長期運用資金の多くを外債に振り向けられるのか。それはなかなか難しいだろう。

最後の手段「予定利率引き下げ」

 高い負債コストを抱えながらも運用手段が見つからない状態が続けば、生保の収益は圧迫され、経営体力の落ちた会社から苦境に陥る。実際に、これまでに逆ざや問題がもとで8社の生命保険会社が破綻している。

 解決策はあるのだろうか。最後の手段は、個人保険の予定利率を引き下げることだ。すでに契約された保険商品の予定利率の引き下げは、2003年の保険業法の改正により、法律でも認められるようになった。しかし、生保の保険料積立金の8割を占める個人保険の予定利率を下げることは、保険会社にとって相当勇気のいることだ。ただでさえ少子高齢化で1997年から保有契約高の減少が続いているのに、利率を下げるとなればさらなる「保険離れ」が加速しかねない。

 だが、残りの2割を占める団体年金についてはすでに既契約であっても予定利率が最低0.75%まで引き下げられる動きが始まっている。個人保険もいずれはそうならざるを得ないのではないだろうか。

 逆ざや問題は待ったなしの状況だ。負債コストの平均予定利率は毎年0.1%しか低下せず、当面は2%程度の水準が続く。一方の市場金利は1%を下回ったままである。この乖離がだらだらと続けば、いずれ体力を失った会社から瀬戸際に追い込まれていくだろう。

長期金利高いことを前提に設計

 よく「生保は運用を国債に依存してばかりいるのはよろしくない」という議論を聞く。生保の国債保有率は1990年代から増え始めており、足元は約4割となっている。これが1980年代は2%だったというから驚きだ。当時は積立金のほとんどを企業への貸付金に充てていた。それが高度経済成長の終焉とともに企業の資金需要は減退していく。生保の制度設計上、将来の運用予測が難しい株式などの変動性の高いリスク資産には投資しづらい。よって長期で安定した運用先として国債、公社債が選ばれたわけだ。ところが1990年代の極端な金利低下で、運用環境のパラダイムシフトが起こった。その衝撃はいまなおじわじわと生保を苦しめている。

 生命保険制度というのはそこそこ景気が良く、長期金利も高いことを前提に設計されている。この前提が崩れている以上、外債投資は一時しのぎに過ぎない。アベノミクスの登場は生保業界にとって大きな転機になるのかもしれない。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130509/247788/?ST=print

減っていく「そこそこの」スキルの仕事

欧米で進む仕事の二極化

2013年5月13日(月)  池永 肇恵

 情報通信技術(IT)が仕事の内容を変えている。「そこそこの」中程度のスキルでできる定型的な仕事は、コンピューターに置き換えられている。急速な技術進歩の結果、コンピューターはますます複雑で高度な内容の仕事がこなせるようになり、人間しかできない仕事は減っていく。一方、ITを利用することで、これまで考えられなかったような仕事もできるようになっている。

 本稿では3回に分けて、技術と雇用の関係に焦点を当てながら、これからの仕事のあり方を考察する。第1回では技術進歩と働き方について、近年海外で話題になっている書籍およびITと雇用に関する海外の実証研究を紹介する。そこでは、ITの進歩により中程度のスキルの仕事が失われるとの見方とともに、技術が働き方やビジネスモデルを大きく変えている実態と将来展望が示されている。

 第2回では日本でも同様の状況が生じていることを示す。第3回ではそれらを踏まえて、これからの仕事のあり方を考察し望ましい政策を検討する。

技術進歩と働き方の模索

 2012年から2013年にかけて、「働き方の潮流」に関する話題の書籍が次々と発表された。コンピューター技術の急速な進歩に直面して、産業や雇用がどのように変わっていくのか、変化をプラスの方向に持っていくのにはどのような対応をすべきかが論じられている。


『ワーク・シフト』
 2025年の働き方を予測したリンダ・グラットン(ロンドン・ビジネススクール教授)著『ワーク・シフト』は、5つの変化(テクノロジーの進化、グローバル化の進展、人口構成の変化と長寿化、社会の変化<意識や価値観の変化>、エネルギー・環境問題の深刻化)が将来の働き方を変えるとしている。

 単純な繰り返し作業はコンピューターに取って代わられはじめたが、イノベーションや問題解決が必要とされる複雑な仕事は人間が担い続けているとし、テクノロジーの発達する世界で職を得るためには、高いレベルの専門技能が必要としている。未来に必要な資本は(1)知的資本(知識と知的思考力)、(2)人間関係資本(人的ネットワーク)、(3)情緒的資本であり、これらを強化する3つのシフトが求められるとしている。

 3つのシフトとは、(1)ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ、(2)孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ、(3)大量消費から「情熱を傾けられる経験」へというシフトである。ここでは、テクノロジーを利用することで自らの働き方を主体的に構築していくべきとの主張がなされている。


『機械との競争』
 ITが人間の雇用を奪うことに強い危機感を抱いているのが、エリック・ブリニョルフソン(MITスローン・スクール経済学教授)/アンドリュー・マカフィーMITスローン・スクール、デジタル・ビジネス・センター主任リサーチサイエンティスト)著『機械との競争』である。

 彼らによれば、ITの影響による雇用喪失が最も大きかったのは、コンピューターによる自動化によって仕事を奪われた中間層の労働者であること、技術進歩があまりに速すぎるため、新しい雇用が生まれる前に雇用の喪失ばかり進んでしまうとのことである。

 人間にしかできないこととして、複雑なコミュニケーション、高度なパターン認識、創造性を要求される高スキルの就業者と、細かさや柔軟さを要求される肉体労働が残るとしながら、急速な技術進歩のなかで、その領域は狭まりつつあるとしている。このようにかなり悲観的な見方が示されているが、手をこまねいているのではなく、対応策として、技術と人間の新たな組み合わせを可能とする組織革新、人的資本を強化すべきとして、教育をはじめとする具体的な19の提言を述べている。

ハイテク・クラスターの雇用創出効果は大


『The New Geography of Jobs』
 エンリコ・モレッティ(カリフォルニア大学バークレー校教授)著『The New Geography of Jobs』では、米国の労働市場の長期的傾向を見るなかで、製造業では生産性の上昇とともに雇用が減っていること、グローバル化と技術進歩がそれに拍車をかけていること、高スキル・高賃金職業と低スキル・低賃金職業が増えて、中程度のスキルのブルーカラー、ホワイトカラーの職業が減少したことを指摘している。

 他方、米国内のハイテク(イノベーション)部門のクラスターでは、人間による創意工夫によりこれまでにないものを開発・企画・設計するなど、最も付加価値の高い部分を実施し、世界市場を相手に収益をあげていると述べている。ハイテク・クラスターの雇用創出効果、賃金上昇効果は大きく、その恩恵が近辺の低スキル就業者にも大きく及ぶとしている。

 そして、イノベーションを生み出すためには、海外からの優秀な移民の促進と米国人に対する教育による人的資本の強化が必要だが、米国人に良い仕事をもたらすためには、米国人の教育をより重視すべきと提言している。


『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
 このように、技術が雇用を喪失してきた点が広く認識されているなかで、クリス・アンダーソン(ワイアードUS版編集長)著『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』では、従来型の製造業はもはや雇用を生み出さないとしつつも、デジタル技術の進歩により、誰でも製造業者(メイカーズ)になることができるとの明るい展望を描いている。

 3Dプリンター、レーザーカッターのようなデジタル工作機械、高性能多機能ロボット、製品に共感する人たちのネットコミュニティーの存在によって、ものづくり自体が容易に、安価に、また柔軟にできるようになっているとのことである。試作が容易になることから起業へのハードルが下がり、ニッチ商品を製造する新しい企業が多数生まれ、多数生まれた企業のなかから、イノベーションを波及させ関連企業の成長も促し雇用を創出するような企業が生まれるとの見方が示されている。

 実際、オバマ政権がデジタル工作機械を完備した工作室を学校に開くプログラムを進めたり、フォードがものづくり共有施設を設置して従業員に利用させて、様々なアイデアを生むことに成功しているとのことである。

 以上の書籍に共通に見られる主張は、コンピューターによって中間層の担ってきた中程度のスキルの仕事が喪失していること、これからの働き方に必要なのは、技術を駆使した「創造性・イノベーション」であること、そのためには「教育、能力向上」が必要だということである。

賃金格差やスキルの変化との関係でもITに注目

 コンピューターが労働に置き換わるという点については、上記の書籍に先立つ1990年代末頃から、経済学の研究者の間でも実証研究がなされている。

 もともとは、米国における賃金格差の研究にさかのぼる。米国では、1980年代に賃金格差が急拡大し、数多くの研究がなされてきた。そこでは、制度的要因(最低賃金の低下や労働組合組織率の低下など)、グローバル化、高スキル労働者への需要を増加させる技術進歩の存在などさまざまな要因が指摘されてきた。

 技術進歩については、ITの導入によってITと適合的な高スキル職種の賃金が上昇したことで、低スキル職種との賃金格差が拡大したというのである。しかしながら、1990年代に入ると、高スキル・高賃金層と低スキル・低賃金層(主としてサービス業従事者)の雇用が増加し、雇用者に占める中間層の比率が減少するという「二極化」現象が見られるようになってきた。

 デービッド・オーター・MIT教授、フランク・レビー・MIT教授、リチャード・マーネン・ハーバード大学教授が、この現象に着目し、理論的枠組みを与え実証分析を行った(注1)。

 彼らは「高スキル」「低スキル」の二分法ではなく、業務の内容を定型的(Routine)か非定型的(Non-routine)か、知的業務か身体的業務かなどの観点から5タイプに分類した。5タイプとは、非定型分析業務(Non-routine Analytic tasks)、非定型相互業務(Non-routine Interactive tasks)、定型認識業務(Routine Cognitive tasks)、定型手仕事業務(Routine Manual tasks)、非定型手仕事業務 (Non-routine Manual tasks)である。

注1:Autor, David, Frank Levy and Richard J. Murnane (2003) "The Skill Content of Recent Technological Change: An Empirical Exploration" Quarterly Journal of Economics, 118(4), 1279-1333.
 非定型分析業務とは、研究、分析など高度な専門知識を持ち、抽象的思考の下に課題を解決する業務であり、比較的独立して行うことができる。非定型相互業務とは、交渉、管理、コンサルティングなど、高度な内容の対人コミュニケーションを通じて価値を創造・提供する業務とされ、他人とのやりとりが主要部分となっている。

 定型認識業務とは、事務、計算など、あらかじめ定められた基準の正確な達成が求められるデスクワークである。定型手仕事業務の場合は、身体的作業(手作業あるいは機械を操縦しての規則的・反復的な生産作業)により、あらかじめ定められた基準の達成を行う。非定型手仕事業務とは、家事サービス、修理などそれほど高度な専門知識を要しないが、定型的ではなく状況に応じて個別に柔軟な対応が求められる身体的作業とされている。

 彼らの主要な結論のひとつは、コンピューター技術が定型業務を代替してその労働需要を減少させる一方、高度なスキルを必要とする非定型業務(分析業務および相互業務)を補完してその労働需要を増加させたということである。

欧州でも指摘される雇用の「二極化」

 高スキルと低スキルの両方の雇用が増加し中程度のスキルの雇用が減少するという「二極化」は、英国をはじめ欧州でも指摘されている (注2)。

 ドイツのアレクサンドラ・シュピッツ-エーナー・フンボルト大学教授は、オーター教授らの研究の枠組みを応用する形で、西ドイツにおいて職場のコンピューター利用が定型的な手仕事や認識業務の労働者に代替し、知識集約的な分析・相互業務を補完したという米国と類似の傾向のあることを実証している 。

 上記の書籍や研究で示されたように、中程度のスキルの就業者による定型的な業務が減少していること、またその有力な原因として、ITによる代替が考えられるという状況は日本も例外ではない。次回は日本の状況について見る。

(第2回に続きます)

注2:Goos, Maarten and Alan Manning (2007), “Lousy and Lovely Jobs: The Rising Polarization of Work in Britain,” Review of Economics and Statistics, 89(1): 118-33.
Maarten Goos, Alan Manning, Anna Salomons(2009)“Job Polarization in Europe” The American Economic Review, Vol. 99, No. 2, Papers and Proceedings of the One Hundred Twenty-First Meeting of the American Economic Association), 58-63

ITが奪う仕事、創る仕事

機械が人間の雇用を奪っている――。19世紀の英国で起きたラッダイト運動以来、労働者と機械との“競争”は続いている。そして現在、各国で実際に雇用が機械に奪われる状況が現実のものとなってきた。このコラムは3回のシリーズでこの問題を取り上げる。1回目では海外の実証研究を紹介し、2回目で日本の現状について分析する。さらに3回目では、機械との競争の中で、これからの仕事の姿について考える。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130501/247461/?ST=print

 

 
【第277回】 2013年5月14日 真壁昭夫 [信州大学教授]
バブル期以来の大量資金が駆け巡る活況相場の行方
株式投資家は今だからこそ“不測の事態”に敏感になれ
 足もとで世界の主要株式市場は、いずれも堅調な展開を示している。米国のニューヨークダウ指数は、5月7日に史上初めて1万5000ドル台の壁を突破した。同日、ドイツのDAX指数は史上最高値を更新した。アジア諸国の株式市場も上昇基調が続いている。

 そうした世界的な株価動向の中で、際立っているのがわが国の株式市場だ。日経平均株価(5月7日現在)は、昨年の11月13日の直近の底値から6割を超える上昇幅を示している。

 海外投資家も、顕著な上昇過程を辿る日本株の持ち高を引き上げざるを得ない状況だ。足もとで日本の株式市場は、主要市場の中でも最も注目度の高い市場といっても過言ではないだろう。

 そうした状況について、市場関係者の間では、「1980年代中盤の“資産バブル”のときのような、まさに25年ぶりの相場」との認識が広がっている。当面、株価の支援材料である世界的な金融緩和策に大きな変化はないと見られ、為替市場での円安傾向が継続している間は、堅調な展開が続くと予想される。

 そうした株価動向に関して、証券業界の一部からは嬉しい悲鳴も上がっている。最近までの下げ相場しか経験のない証券マンの中には、顧客に銘柄相談を受けても、何をどう営業してよいかわらないと、身内に悩みを打ち明ける者まであるようだ。

中央銀行がこぞって潤沢な資金を供給
世界的な株価上昇は「金融相場」の様相

 こうした世界的な株価上昇を支えているのは、何といっても、世界的に潤沢な資金供給がなされていることだ。世界の主要な中央銀行は、いずれも景気刺激などの目的で積極的な金融緩和策をとり、潤沢な資金供給を行っている。

 あり余る資金の一部が、世界的な景気回復の期待によって投資資金となり、株式市場に流れ込んで株価を押し上げている。一般的に、金余りが株価を押し上げる状況を“金融相場”と呼ぶのだが、現在は間違いなく“金融相場”の様相を呈している。

 日銀やFRB、ECBなどの主要中央銀行は、現在の金融緩和策を継続して潤沢な資金供給を行う方針を明確にしており、当面、資金面からの株価押し上げ効果は期待できるだろう。

 一方、世界の経済状況に関しては、期待が先行している感は否めない。ユーロ圏諸国の信用不安問題は、とりあえず小康状態を保っているものの、大元の原因が解決したわけではない。

 南欧諸国を中心に、これからも財政支出の削減策が実施されると見られ、ユーロ圏諸国の景気回復は後ずれする可能性が高い。

 景気に減速感が出ている中国では、不動産価格の上昇を抑え込む政策目標もあり、景気を下支えする大型の景気対策を打つ可能性は低い。また、鳥インフルエンザなどの影響もあり、中国経済の回復のペースはかなり緩やかになるだろう。米国についても、財政支出削減の影響などを考えると、短期的に景気回復が盛り上がるとは考えにくい。

 わが国経済に関しても、株価上昇による資産効果は一部で顕在化しているものの、賃金水準の本格的な回復には時間を要するはずだ。わが国の家計部門の株価保有率を考えると、資産効果による消費の盛り上がりにも限界がある。

 わが国の経済が本格的に回復するのは、もう少し先になると見た方がよい。足もとの株価上昇のペースは、実体経済の回復よりも進んでおり、期待がかなり先行していると考えるべきだ。

実体経済は「期待」に追い付けるか
資金流入が止まると相場は反落する

 足もとの株価が先行した期待によって形成されている場合、実体経済が期待に追い付けないと株価は反落することになる。どれだけ潤沢な資金があっても、投資家の多くが「株価が上がる」という、ある程度しっかりした確信を持たなければ、投資家が株式を購入することはないからだ。株価が下がると思えば、損をしてまで株式を買う投資家はいない。

 投資家が株式投資を検討する場合、最も大切な材料は企業業績の見込みだ。株式投資を想定する企業の収益状況が改善する、つまり儲けが増えて、企業価値が拡大したり、配当額が引き上げられるからこそ、当該株式への投資を行うのである。そうでなければ、大事な投資資金を振り向けることはない。

 投資家の多くが、企業業績全体が改善すると考えると、株式市場に流入する投資資金が増加して相場全体を押し上げることになる。逆に、経済が下落局面を迎えると考えれば、保有する株式を早めに処分して損失の発生を食い止めることを考える。その場合には、投資資金は流出することになる。

 現在の世界の株式市場、特にわが国の株式市場を見ると、「景気はよくなるだろう」という期待が先行して、あり余る資金の一部を、株式市場に誘導している状況だ。ところが、投資家の多くがその期待の実現可能性は低いと判断すると、投資資金の流入が止まり、株価は調整局面を迎える。

 足もとの株式市場は、アベノミクスに対する期待をほぼ織り込んで、次のステージでは、期待の実現可能性を少しずつ意識するはずだ。景気回復期待が後ずれするようなことになると、投資家の投資スタンスは徐々に変化するだろう。

 その場合、昨年11月からの上昇ペースが速かったこともあり、意外に大きな調整になることも考えられる。

株式保有比率の引き上げに動くファンド
これからも投資資金は株式に流入する

 おそらく多くの投資家は、足もとの上昇が潤沢な資金に支えられた“金融相場”であると認識していることだろう。景気回復に関するリスクを意識しながら、やや慎重な投資スタンスをとっていると見られる。

 ただ、世界の株価、特に日本株がこれだけの速度で上昇すると、国内外の機関投資家は株式の保有割合を引き上げざるを得ない。

 一般的に、機関投資家のファンドマネジャーは、その業績評価について世界の株価インデックスを使う。株価インデックスは、主要国の市場規模=時価総額に応じて、資金配分を考慮した株式組み入れ比率によって算定されている。

 そのため、株価が上昇している場合には、株式の保有比率を引き上げておかないと、インデックスを基に算定される投資収益率を上回ることが難しくなる。そうした事情を勘案すると、これからも投資資金は株式市場に流れ込むことになるはずだ。

 それを支える世界的な金融緩和策も、まだ当分続くと見られる。潤沢な資金が供給され、景気回復がある程度見込める間、投資環境はかなり良好な状況と言える。世界的な株価上昇傾向は、これからも続くと予想される。

ユーロ圏の信用不安に中国経済の減速
これからは「リスク要因」に敏感になれ

 一方、世界経済は無視できないリスク要因を抱えていることを、忘れてはならない。まず気になるのは、ユーロ圏の信用不安問題だ。南欧諸国などの経済状況はむしろ悪化しており、何かのきっかけで再び問題が表面化することも考えられる。それが現実になると、インパクトは決して小さくはない。

 中国経済の動向も気になる。足もとの中国経済が減速傾向していることに加えて、地方政府関連などの債務残高が拡大している。それが不良債権化するようだと、中国経済が大きな調整局面を迎える可能性が高まる。その場合には、世界経済全体の足を引っ張ることも考えられる。

 また、わが国経済に関しても、短期的な景気回復の遅れや、中長期的な財政再建の棚上げなどの重要な課題が残っている。そうした課題が意識されると、株式などの金融市場が大きく不安定化することも考えられる。

 わが国をはじめ、世界的に株価がこれだけ上昇していることを考えると、これからは重要なリスク要因を意識することが必要だ。リスク要因を意識していることによって、不測の事態が起きたとき、投資家として早期の反応が可能になる。
http://diamond.jp/articles/print/35846

 


【第275回】 2013年5月14日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
「最も保守的」とみられ始めた
ドラギECB総裁の深い悩み
「われわれはヘリコプターで飛び回りながら、マネーをばらまくことはしていない。米国のような資本市場がここにはない」

 ECBのドラギ総裁は、0.25%の利下げを決めた5月2日の理事会後の記者会見でそう述べた。「米国では信用仲介の80%が資本市場を通じて行われている。欧州では金融仲介の80%が銀行システムを通じて行われている」からである。資本市場の価格形成に介入しても、欧州では効果は得にくいとECBは今は考えている。

 ECBが利下げを決めた理由は、需要の弱さが南欧だけでなく北欧にも波及してきた点にある(1〜3月の自動車販売台数前年比は、ドイツが▲13%、オランダは▲30%、フィンランドは▲40%)。

 ECBは現時点では伝統的な銀行の貸し出しを通じたチャネルで経済に働きかけようとしている。しかし、日銀が「異次元緩和策」を4月に決めたことで、為替市場などでは主要国の中央銀行の中でECBが最も保守的だとの見方が増えた。前述の記者会見でも0.25%という小幅利下げでは「too little,too late」であり、FRBのようにもっとリスクを取りながらバランスシートを拡張させる政策を行うべきではないか? といった趣旨の質問が相次いでいた。

 FRBのような政策は制度的にもECBには難しいとドラギは語った。とはいえ、利下げカードの残り枚数は少ない。新たな非伝統的領域に追い込まれる可能性が今後は徐々に高まりそうだ。

 なおドラギは、銀行の準備預金にマイナス金利を課すことについて、「もし必要があればいつでも動けるように準備している」と柔軟性を強調した。実際は、翌日以降の他のECB幹部の発言に見られたように、理事会でのマイナス金利政策の議論はあまり進んでいないようだ。しかし、ドラギは為替市場でユーロ安の効果が出ることを狙って、あえて先走ってそう言った可能性が考えられる。

 ところで、ユーロ圏のインフレ率は3月の1.7%から4月は1.2%へと低下した。米国のインフレ率も3月は1%へと落ちた。欧米ともエネルギーや食料を除いたコア・インフレ率も低下している。FRBのハト派幹部はインフレのさらなる低下を警戒し、追加緩和を示唆し始めた。日銀は2015年度内にインフレ率は2%に達するとの見通しを先日発表したが、欧米の最近の様子を見るとその実現は容易ではないといえる。

 (東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
http://diamond.jp/articles/print/35841

 

投資銀行:ウォール街の復活
2013年05月13日(Mon) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年5月11日号)

米国の投資銀行が再び世界の金融を支配している。それは米国にとって、必ずしも良いことではない。


金融危機から5年近くを経て、ウォール街が復活を遂げている〔AFPBB News〕

 2008年の緊迫した数週間、投資銀行の幹部たちがニューヨーク連邦準備銀行のいかめしい扉の奥に集まっている間に、ウォール街は彼らの周囲で崩壊していくかに思えた。

 リーマン・ブラザーズが破産を申請し、メリルリンチは倒れかけてバンク・オブ・アメリカに買収された。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)とシティグループは公的資金で救済せざるを得なくなり、その腐食は広がっていくように見えた。

 当時の財務長官ハンク・ポールソン氏は、回顧録の中で以下のように語っている。「次に控えていた可能性は、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスを失うことだった――この2つが倒れれば、金融システムは消滅していたかもしれない」

 大西洋を挟んだ欧州の政治家たちは、そうした状況を、タイミングよく米国資本主義に下った天罰だと考えていた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、銀行やヘッジファンドの規制が不十分だったと米国の政治家たちを非難した。欧州の銀行の目には、その危機は、長らく国際金融を支配してきた米国銀行を打ち負かすチャンスと映った。

 バークレイズはリーマン・ブラザーズの骸にすばやく飛びかかり、当時投資銀行部門の最高責任者だったボブ・ダイヤモンド氏が「信じられないチャンス」と評した北米事業の買収により、米国市場に参入した。ドイツ銀行も、米国のライバルから市場シェアを奪い、勢力を拡大した。世界の資本市場で米国企業が長らく行使してきた支配力は、突然の終わりを迎えたかに見えた。

再び形勢逆転

 それから5年近くが経った今、倒れかけているのは欧州の銀行で、ウォール街は復調している。危機以前は急成長していたスイス2大銀行、UBSとクレディ・スイスは、いまだに資産の売却を続けている。ほんの一瞬だけ世界の10大投資銀行に名を連ねたロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)は、英国政府の保護下にとどまっている。

 世界の投資銀行市場における欧州の銀行のシェアは、危機以降、2割も落ち込み、利益の多くは危機を生き延びたウォール街の巨大銀行に流れた。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、シティグループだけで、業界の売り上げの3分の1を占めている。

 欧州の2行、バークレイズとドイツ銀行は、危機後、その利益の一部をどうにか手に入れた。だがどちらも国内外で厳しい規制に直面し、世界展開の野心がくじかれそうになっているようだ。HSBCは一部の投資銀行市場でシェアを伸ばしているが、それでもウォール街の巨人たちには大きく後れを取っている。

米国が正しかった点

 ウォール街が再びその存在感を示しつつある業界は、かつて支配していた5年前とは大きく違うものになっている。金融業界の全世界の売り上げは、ほぼ3分の1にあたる約1000億ドルも減少した。業界の雇用は激減し、ロンドンだけで10万人分の職がなくなった。給料も下がっている。

 米国のドッド・フランク法をはじめとする資本要件その他の規則の強化は、業界の収益性を損なっている可能性が高い。ドッド・フランク法は不条理なほど複雑だ(いまだに必要な規制の整備が完了していない)。危機前の銀行が手にしていたような莫大な利益や、従業員に支払われていた多額の報酬は、少なくともすぐに元に戻ることはなさそうだ。

 米国の銀行が欧州より好調な理由の1つは、すばやく痛みを受け入れ、対処したことにある。米国では、規制当局が迅速に行動した。銀行に不良債権を損失処理させ、資本増強を急がせた。その意志や能力がないと判明した銀行や、ゴールドマン・サックスのように、その必要はないと主張した銀行でさえも、強制的に資本を増強させた。

 その結果、米国の大手銀行は収益性を取り戻し、政府からの借り入れを返済し、米国経済において融資を維持する支えになった。こうして銀行は経済回復に貢献し、それが回りまわって不良債権を減らす結果になっている。

 それに対して、欧州の銀行は、依然としてバランスシートの縮小を続け、資本が不十分なまま足を引きずっている。米国の銀行は、シティグループだけでも1430億ドルの貸し倒れを処理した。ユーロ圏では、引当金を300億ドル以上準備していた銀行はない。

 これ以上の自己資本は必要ないと主張していたドイツ銀行は、ようやく現実を直視し、およそ30億ユーロ(40億ドル)の増強にとりかかっているところだ。

欧州が正しかった点

 欧州では、規制当局も、2つの面から銀行の衰退に拍車をかけてきた。第1に、銀行が支給できるボーナスの額を(基本給に対して相対的に)規定していること。第2に、銀行に資本を増強させ、例えば小口預金事業を企業向け金融事業から切り離すなどの方法で、銀行を破綻処理しやすくしていることだ。

 第1のアプローチは馬鹿げている。欧州の銀行の固定費用を押し上げ、経済停滞期に支出を削減する柔軟性を低下させることになる。そうなれば、米国市場や急成長するアジアの市場で、才能に応じて自由に相場の報酬を支払える国外のライバルとの競争に苦しむことになるだろう。

 第2のアプローチは賢明だ。スイスと英国は、「大きすぎて潰せない」銀行を支えるために納税者が暗黙のうちに補助金を支払っているあり方を終わらせるという点で前進している。国の経済規模を大きく上回るほど肥大した銀行を政府が救済せざるを得なくなった時に何が起きるのかは、アイルランド経済の破綻が十分すぎるほど警告している。

 欧州の銀行の中には、欧州にも大手投資銀行が必要だとする声がある。だが、米国のサブプライムローンをパッケージ化して販売することに長けた国営銀行が存在した場合に、欧州の企業や納税者にメリットがあるかどうかは明白ではない。

心配すべきは米国の納税者と投資家

 実際、米国の納税者と投資家こそ、少数のウォール街企業の支配力を心配すべきだ。将来の救済について、最も大きなリスクを負っているのは米国の納税者と投資家なのだ。

 投資銀行間の競争が活発化すれば、彼らも恩恵を受けるだろう。米国の新規株式公開(IPO)費用は他国よりもずっと高い(他国の4%に対して7%)。その主な原因は、米国市場が少数の大手投資銀行に支配されていることにある。

 新たな国際規則では、大手銀行は破綻した場合に経済に与えるリスクが大きいため、小規模な銀行よりも自己資本に大きな余力(バッファー)を持つべきだとされている。ウォール街の新たな巨人たちは、自分たちには既に、こうした国際規則によりペナルティが課されていると主張する。

 しかし、これらの銀行の規模の経済や、「大きすぎて潰せない」ことによる暗黙の補助金の大きさに比べれば、資本バッファーを準備するコストなど小さなものだ。大手銀行の自己資本の上乗せを拡大する方が、複雑に入り組んだドッド・フランク法よりも、よほど金融システムの安定に役立つだろう。

 2008年の試練の夏から5年が経った今、米国の大手銀行が復活している。それは良いことだ。だが、ウォール街をもっと安全にするために、できることはまだ残されている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37763

 


日米のタンゴ、リード役はどちらか?
1ドル=100円を突破した円安・ドル高
2013年05月14日(Tue) Financial Times
(2013年5月11/12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


円相場は4年ぶりに1ドル=100円台に下落した後、さらに下げ足を速めている〔AFPBB News〕

 タンゴは1人では踊れない。市場では円安が進み、2009年以来4年ぶりに1ドル=100円台を記録した。為替市場は切りのいい数字に沸くのが常で、大台を突破した円はその後さらに安くなった。

 日本に注目が集まっている。この国は安倍晋三首相の下で、円安の進行が期待できる積極的かつ拡張的な経済政策――アベノミクス――を導入している。

 市場が沸くのももっともだ。もし日本が20年以上に及ぶ眠りから目覚めれば、世界経済が活性化されるかもしれないのだから。

 しかし、そうした注目は的外れなのではないかと思われる。注目すべきは日本ではなく、為替レートの等式の反対側、ドルの方だろう。そして、検討する必要があるのは、米国が長期低迷して日本のコピーになるか否かではなく、日本の新しい経済政策が米国の経済政策のコピーになるか否かだろう。

「通貨戦争」の勝者だった米国

 世界金融危機後の数年間は、米国が勝利を収めた時代だと言える。米国経済は(絶対値では多くの人をがっかりさせたが)ほかの国々を上回る成長を遂げている。これは、米国が通貨「戦争」の最大の勝者になったためだ。様々な通貨との交換レートを貿易規模で加重平均して計算する実効為替レートで見ると、ドルは2001年につけた高値から32%も下落している。

 ドル安には、米国製品の価格が下がって輸出が伸びるという期待がかかる。実際にそういう展開になっている。

 調査会社のネッド・デービス・リサーチによれば、米国の国内総生産(GDP)に占める製造業セクターの割合は3年連続で拡大している。第2次世界大戦後では初めてのことだそうだ。また製造業セクターは2013年第1四半期に年率で5%の成長を遂げており、この記録が4年連続に伸びる可能性が示唆されている。

 ドル安は、雇用にも狙い通りの効果をもたらしているようだ。米国では長期の構造的失業が増加しており、将来的に社会問題を引き起こす恐れがある。しかし、足元の新規失業保険申請件数は2008年前半以来の水準に減少している。世界金融危機前の「大いなる安定」の時代に見られた値より若干多い程度なのだ。

 これらは通貨戦争に勝利した成果にほかならない。問題は、景気が良くなると通貨が強くなり、ひいては通貨戦争の次の戦いで負けてしまう傾向があるということだ。ドルが上昇していることから、既にこのパターンは始まっているように思われる。

「円安」ではなく「ドル高」か

 ほかの市場は、足元のドル円相場の変動が日本よりも米国の方に大きく関係したものであることを示唆している。例えば、ドルとは正反対の動きを見せることが多い金(ゴールド)は下落しており、ドルは多くの通貨に対して高くなっている。また米国債の利回りは、昔に比べればまだ極端に低いとは言え、急上昇を見せている。

 これらはすべて、米国経済は成長できるという楽観論の表れだ。経済指標は引き続きまだら模様だが、この1週間に発表された値を受けて、今年の夏に景気が減速する事態は回避できるとの期待が強まっている。

 またドルの上昇は、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和(QE、利回りを引き下げるために国債を買い入れること)というクスリの効き目が弱まってきていることも示唆している。初めのうち、すなわち2009年の前半や2010年の後半にはこのクスリがよく効き、米ドルがあっという間に下落した。

 ところが昨年12月に始まった「QEインフィニティ(特定の期限を切らず、労働市場が回復するまで債券を買い続ける量的緩和)」はインパクトがほとんどなく、最近の市場ではFRBがQEをいつ、どのように終わらせるかがよく話題になっている。

 一方、デンマーク、ユーロ圏、オーストラリア、インド、韓国、ポーランドという6つの国や地域(その経済規模の合計は世界経済のほぼ4分の1に相当する)では、中央銀行が5月第2週に相次いで利下げに踏み切っている。日銀の積極的な金融緩和策への必要な対応だったのかもしれない。この利下げにより、これらの国・地域の通貨は対ドルで下落している。

米国を真似る日本

 日本は、過去5年間の通貨「戦争」の最大の敗者だった。世界金融危機が始まる時に日本円がかなり過小評価されていたためだった(当時の円安は、日本経済を低迷から脱出させることにはならなかった)。この国は今、自国通貨を安くしながら国内の金融システムにマネーをじゃんじゃん供給するという米国の真似をしているように見える。

 足元の円安は、日本の個人投資家が過去2週間*1で外債を5140億円買い越したという先の報道に触発されたものだったとの見方があるが、その可能性はあるのだろうか? 

*1=4月21日〜5月4日

 確かにこれらのデータは、日本の投資家が口には出さないものの円安が進む方に賭けていることを示唆している。しかし、これはトレンドだと言えるのか? 

 日本の投資家はその前の6週間で日本国債を3兆3000億円売り越していたし、日本の株式市場は非常に魅力的に見えるだろう。そういったことを考慮すれば、日本の投資家が米ドル=100円という節目を突破させたとは考えにくい。

タンゴはまだ続く

 長期的には、米国側にはドル高によって競争力が再度削がれてしまうという問題がある。だが、そうなるまでにはそれなりの時間がかかるだろう。短期的には、タンゴを踊る日米はどちらも魅力的な投資先に見える。

 モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の指数によれば、日米の株価は今年に入って15.5%上昇している。これに対し、日米以外の世界の株価上昇率(ドルベース)は8.4%にとどまっている。

 米国経済が再び減速するまで、あるいはアベノミクスによる日本経済活性化が期待されたほどではないことを示す証拠が出てくるまで、このトレンドの継続を阻止する材料はほとんどない。日米はタンゴを踊り続けることができるのだ。

By John Authers
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37773



世界史の中で評価するアベノミクス
元気にするのは日本ではなく新興国
2013年05月14日(Tue) 川島 博之
 アベノミクスの評判がよい。為替レートは大幅に円安になり、1ドル100円にあと一歩というところまできた。日経平均株価も1万4000円付近に戻った。いずれも民主党政権の末期には考えられなった水準である。

 街角景気も改善し、デパートではプチ贅沢商品の売り上げが好調という。総じて国民はこの結果に満足しており、発足から5カ月が経過したにもかかわらず、安倍政権の支持率は7割前後を保っている。7月に行われる参議院選挙でも自民党の圧勝が予想されている。

 このアベノミクスが日本経済に及ぼす影響については、既に多くのことが議論され論点は出尽くしていると思うので、ここではそれとは違った視点からアベノミクスについて考えてみたい。

株価は上昇しても景気は元には戻らない

 極めてマクロな視点から見ると、アベノミクスは日本ではなく新興国を元気にしている。

 いきなりこんなことを書いても面食らうだろうが、そもそも金利を引き下げて市場に大量の資金を供給する手法は、現在、そんなに奇異な政策ではない。米国もEU諸国も行っている。アベノミクスは、大きな目で見れば、白川方正総裁の時代には抑制的に行っていた政策を、より大胆に行っているに過ぎない。

 ただ、大胆に金融緩和を行っても、景気が元に戻ることはないと思う。米国はリーマン・ショック以後に大胆な金融緩和を行ったが、それによって景気が元に戻ることはなかった。あれから5年が経過した現在でも、失業率の改善や個人所得は元に戻っていない。その効果は、株価の上昇に留まるようだ。

 その最大の原因は、先進国にものが溢れているためだろう。先進国に住む人々は、これと言って買いたいものがなくなってしまった。確かに宝飾品はいくらあっても邪魔にならないが、テレビや冷蔵庫は1台あれば十分である。庶民といえども、どうしても欲しいものはなくなってしまった。だから、金利を下げても消費に火がつかないのだ。

 そのために消費者に代わって国家が公共事業という名の下に消費を行ってきた。ただ、ヨーロッパや米国に比べて先進国になってからの日が浅くインフラ整備が十分でなかった日本でさえ、インフラ整備はあらかた終わってしまった。

 安倍内閣は国土強靭化のために公共事業を行うとしているが、これはインフラを造るのではなくその修繕を意味している。このことからも、新たにインフラを造る余地がなくなっていることが分かろう。

先進国の余剰資金は新興国へ向かう

 先進国では作るべきものがなくなってしまった。だから、いくら金融を緩和して資金を市場に投入しても、それが生産に結び付くことはない。しかし、それは思わぬ影響を世界に及ぼしている。

 現在、金融の世界はグローバル化しており、なにも金融が緩和された国でお金を使う必要はなくなっている。先進国で金融が緩和されたなら、先進国でお金を借りてその資金を新興国に投資すればよい。

 新興国では、1950年代や1960年代の日本のように、インフラも消費財も足りない。だから、資本を投下すれば、それは極めて効率良く生産に結び付く。


1人当たりGDPの推移 (2000年を1とした時の値)
(データ:世界銀行)
 図を見ていただきたい。この図は1人当たりGDPの推移を示しているが、南アジアやサハラ以南のアフリカの経済が21世紀に入って急速に経済成長していることが分かろう。その原因は、長い期間にわたり教育の普及などに地道な努力を続けてきた結果と考えることもできるが、それだけではこの急激な変化を説明できない。インド、バングラデシュなど、これまで経済が停滞してきた国々を見ていると、最近の急激な経済成長は魔法が引き起こしたものにしか見えないのだ。

 魔法は先進国で過剰となった資金であろう。現在、世界の金融、特にエマージングマーケットへの資金の流入にはヘッジファンドなどが複雑に絡み、その流れを完全に明らかにすることは難しい。しかし、図を見れば、21世紀に入ってエマージングマーケットが急成長をし始めたことは紛れもない事実だ。世界史的視点に立てば、米国、EU、日本において中央銀行が大量に資金を市場に供給していることは、先進国ではなくインドやアフリカの国々を元気にしている。

 今後、先進国は“超”が付く金融緩和政策の出口を探らなければならない。しかし、その出口は容易に見つからないと思う。振り返って見れば、日本はバブル崩壊以降ずっと金融緩和政策を続けていたのだが、ついに出口を見つけることができなかった。そしてその挙句にアベノミクスという“超”金融緩和政策に突入してしまった。

 全ての先進国が今のような政策を続けていると、もう30年もすれば、多くの新興国が現在の中国のような状態になってしまう。その結果、インドやアフリカでも資金需要がなくなってしまえば、いくら金融緩和をしても資金の行き先がなくなる。それは資本主義の終焉を意味するのかも知れない。

 だいぶ強引な解釈のようだが、図を見ていると先進国の金融緩和が新興国の経済発展を促しているようにしか見えないのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37737


 
債務返済で欧州をリードする米国
2013年05月13日(Mon) Financial Times
(2013年5月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今から6年前、欧州の政策立案者たちが米国の債務について議論する時に、他人の不幸を喜ぶ気持ちがにじみ出ることがあった。というのも、目が眩むような信用バブルの最中、米国の家計がローンにおぼれていたからだ。子供にさえ――そして犬にさえ――、手違いでクレジットカード発行の案内が送られたくらいだ。

 対照的に、ヨーロッパ人はそれほどローン依存症のようには見えなかった。それゆえ米国のサププライム問題が明るみに出た時、非難の声が上がったわけだ。

 しかし今、目覚ましい変化が起きている。国際通貨基金(IMF)が先月下旬、「世界経済見通し」を発行した際、報告書の小さなグラフ(5ページ)は、米国では、家計の所得に対する債務の比率が2007年の130%から2012年末に105%まで低下したことを示していた。

欧米の家計債務比率が逆転

 同じ時期に、ユーロ圏の家計債務の比率は100%から110%近くまで上昇している。歴史的に見て、ヨーロッパ人の債務比率は常に米国人より低かったが、この2本の線は今交差している。この状況は、例えば、ユーロ圏の比率がわずか80%――そして米国の比率が90%――だった2000年のパターンとは全く対照的だ。

 我々はこれをどう解釈すべきなのだろうか。楽観主義者は、明らかなデレバレッジング(負債圧縮)が時として目を見張る規模で起こり得ることを示す証拠を歓迎するかもしれない。ニューヨーク連銀の最近のリポート*1は、米国の家計債務が2008年以降、12兆5000億ドルから1兆ドル近く減少したことを示している。

 債務の減少は一様ではない。例えば、学生ローンは膨らみ続けてきた。だが、クレジットカード債務の総額は現在、10年ぶりの低水準にあり、流通しているクレジットカードが5年前より1億2000万枚少なくなっている。

 このデレバレッジングが続くかどうかは不透明だ。実際、そもそもどうしてデレバレッジングが起きたのかを巡っては議論がある。

 家計が用心深くなり、進んで貯蓄するようになっているため、デレバレッジングは大きな文化的変化を反映していると考える(あるいは期待する)観測筋もいれば、銀行が与信枠を減らしたり、人々を家から追い出したりしたため、債務の減少が仕方なく起きていると考える人もいる。

*1=Financial Crisis at the Kitchen Table: Trends in Household Debt and Credit, by Meta Brown, Andrew Haughwout, Donghoon Lee, and Wilbert van der Klaauw, NYFRB April 2013

 ニューヨーク連銀は「消費者債務の減少は一時的に、2008年後半の失業率の急上昇と相関性があった」と述べた。このことは、家計が「失業に備えて資金繰りを確実にするために予防的な貯蓄をしたり、利用可能な借入額を増やしたりすること」を選択したことを示唆している。

 そうだとすれば、そのことは、失業率が高止まりしている間は、消費者が債務を敬遠し続けることを意味しているかもしれない。そして実際、先日の統計数値は、クレジットカードの利用が昨年末に増加した後、ここ数週間減速していることを示していた。

 一方で、消費者が債務をかなり返済したのだとすれば、借り入れを行う可能性は高まっているかもしれない――銀行が貸し出しを開始すれば、の話だが。

 「このところ信用の利用状況が改善していることを考えると、問題はやはり、消費者が再び支出を増やし始める前に、自発的な債務削減がどこまで進むのか、ということだ」とニューヨーク連銀は言う。いずれにせよ、家計のバランスシートは5年前より健全性を増している。バブル崩壊後の癒しがある程度起きているのだ。

 だが、そのIMFのグラフには、もう少し悲観的な側面もある。この治癒過程が欧州では起きていないのだ。

欧州の金融機関と企業は日本のように「ゾンビ」と化すのか

 シティグループのチーフエコノミスト、ウィリアム・ブイター氏は先日、ユーロ圏の銀行と政府はまだ本当の意味で債務を削減していないと指摘し、抜本的な債務再編と銀行の資本増強を求めた。だが、IMFのデータは、この点がユーロ圏の家計にも当てはまることを示している。

 確かに、IMFのグラフは、成長と所得のより広範な落ち込みによって部分的に歪められている。そして、ユーロ圏の平均は、大きな地域間格差を覆い隠している。ドイツの消費者の債務はそれほど多くないが、スペインやギリシャ、アイルランドといった国々の家計ははるかに多くの債務を抱えている。

 だが、重要な点は、米国で広範囲に起きているデフォルト(債務不履行)や債務減免は、欧州では同じような規模では起きていないということだ。ブイター氏が指摘するように、これは部分的には銀行の自己資本不足を反映している。

 銀行は、損失を吸収する能力を持っていないため、いつまでも融資を繰り延べし続けている。15年前の日本で起きたように、その結果はゾンビ銀行とゾンビの借り手だ。

 だからと言って、米国人自身が他人の不幸を喜ぶ気持ちになってはならない。何しろ、こうした米国のデレバレッジングのプロセスは大抵、嘆かわしいほどの混乱を来たし、抵当権実行を巡るスキャンダルがあちこちで起きた。

 また、特に米国政府はまだ債務水準を減らしていない。いずれにしても、「わずか」11兆6000億ドルの消費者債務でさえまだ多すぎると主張するエコノミストがいるかもしれない。

政策的措置は結果を出せる

 だが、IMFのグラフから1つ重要な教訓が得られるとすれば、それは、政策的措置が結果を出せるということだ。つまり、少なくとも銀行の資本を増強することによって、混乱を来たすとしても、金融システムがバブルの行き過ぎの一部を徐々に浄化できるということだ。

 欧州の政治家はこのことに留意すべきだ。そして、行動すれば、長期的に希望が持てる理由を見いだせるはずだ。

By Gillian Tett
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37767


EU脱退か残留か、英国が決断すべき時は今だ
2013年05月13日(Mon) Financial Times
(2013年5月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


デビッド・キャメロン首相は、EU加盟に関する投票の実施を約束している〔AFPBB News〕

 欧州における英国の地位(場合によってはイングランドのみの地位)を巡る問題が、今、大きな関心を集めている。

 これは危機に駆られたユーロ圏の進化、英国議会の次の任期中に欧州連合(EU)加盟に関する住民投票の実施を決めたデビッド・キャメロン首相の決断、英国独立党の躍進、そしてナイジェル・ローソン氏のような昔の保守党重鎮からの圧力に続く動きだ。

 長年にわたり半ば孤立し、ユーロに参加しないことを決めてからは特に欧州諸国と距離を置いてきた英国が間もなく離脱する可能性がある。

勢い増すEU脱退論

 確実なことは何もない。2015年以降はキャメロン氏が首相でない可能性も十分あることから、住民投票が実施される確率は100%ではない。だが、野党・労働党にも、同じ住民投票を提案するよう求める強い圧力がかかっている。

 ローソン氏が先日、ザ・タイムズ紙への寄稿で述べたように、キャメロン首相の再交渉が何か大きな成果を生む可能性は低い。これを踏まえたうえで、ユーロ圏の統合強化と英国がほぼ確実に当面単一通貨への参加を拒むことを考慮すると、英国人がEU脱退に票を投じる可能性は高い。

 筆者は昨年11月、以下のように主張した。「ユーロ圏のドラマでは、英国は傍観者だ。英国にとって賢明な政策は、結末がはっきりしてくるまで選択肢を残しておくことだ」。ただし、「問題は、国内の政治情勢が、英国が分別を持つことを許すかどうか、だ」――。

 今、国内の政治はそれを許さないように見える。であれば、欧州における英国の将来の立場を巡る何年もの不確実性が国を破滅させるのを許すよりは、今、決断を下した方がいいように思える。

 だが、その立場とは、何であるべきなのか? ローソン氏は、EUの外であるべきだと主張する。彼いわく、英国はその他欧州諸国の野心を共有していない。さらに、EU加盟の正味の経済的インパクトはマイナスだと付け加える。80億ポンドに上る英国の年間拠出金(純額ベース)と、特に金融に対する規制の負担は、単一通貨から得られる利益を上回るというのだ。

 英国はそれより、世界的な開放性を受け入れた方がいいとローソン氏は言う。


英国は本当にEUを脱退した方がいいのか?〔AFPBB News〕

 政治に関しては、ローソン氏は正しい。英国はEU加盟をアイデンティティーや運命の問題ではなく、むしろ利益の問題と見なしてきた。

 一部には、EUを脱退すれば、英国は世界的な影響力を失うと主張する向きもある。これは説得力のある論点ではない。

 米国はカナダよりはるかに大きな影響力を持つが、だからと言って、より大きな影響力を得るために、カナダ人が米国人になりたがるわけではない。

 また、英国人は合理的に、単に自分がヨーロッパ人だと思わないという理由から、大きな集団全体の一部であることの影響力を犠牲にする道を選ぶかもしれない。さらに、今のユーロ圏における民主主義への無関心は気がかりだ。ユーロ圏は民主的な連邦というより、強国の意思を押し付ける機械の印象の方がずっと強い。

 経済については、妥当な代替策はEUおよび欧州経済領域(EEA)の外にいることだと主張するローソン氏の言い分は正しい。後者のEEAのみに加盟することは、ほぼ考えられる限り最悪の世界だ。単一通貨の規則の決定に何の発言権も持たずに、その規則を受け入れることを意味するからだ。

EU脱退に伴う大きなリスク

 だが、世界貿易機関(WTO)が十分な保護策を与えてくれるというローソン氏の仮説は説得力を欠く。WTOは自由貿易を与える機関ではないし、EUの単一市場と比べるとサービスを十分にカバーしていない。何より、WTOの存続は確実だと考えることはできない。

 英国はまだ製品・サービス輸出の46%がEU向けなため、脱退は間違いなく、英国の貿易の大部分をリスクにさらすことになる。

 多くの人は、高くつく移民と見なすものばかりに目を向けている。だが、EUに加盟しているおかげで、英国人はEU域内を自由に旅行し、EU諸国に暮らし、仕事をすることができる。これは非常に大きな資産だ。

 英国がその他欧州諸国と同じ条件で欧州市場へのアクセスを提供することができず、将来の欧州の規制に対する影響力をすべて手放したということが分かったら、外国人投資家は果たしてそれでも英国に関心を持つだろうか? 筆者には、そうは思えない。

 現在、ロンドンは欧州のニューヨークだ。しかし、欧州の政策立案者の野望と大手金融機関の自己利益は、ロンドンがそうあり続けることを許すだろうか? ロンドンはオフショアセンターになれるかもしれない。

 だが、英国がEU脱退を決めた場合、ロンドンは欧州の金融の首都であり続けられるか? ローソン氏は可能だと言っている。筆者は疑わしいと思う。

大胆ではないが、分別のある選択

 確かに、英国は国内総生産(GDP)の0.5%相当のお金を節約できるだろう。だが、それは大した金額ではない。負担の大きいEUの規制について言えば、そうした規制はドイツが世界的な輸出国として成功することを妨げなかった。

 英国は世界銀行のビジネス環境調査で7位につけている。これは到底、EU加盟が法外な規制コストを強いることを示唆する順位ではない。国の繁栄を左右する主たる決定要因は、その国の政策と資源だ。だが、EUを脱退することが差し引きでかなり大きな経済的利益をもたらすという考えは信じ難い。

 脱退を是とする根拠は、まだ全く立証されていない。そうである限り、離脱という選択肢は実行に移されるべきではない。住民投票を避けられたら、その方が望ましかった。だが、もはや住民投票は不可避だ。決断を下す時が来た。議論を始めるといい。

 だが、賢明な結果は、半ばくっついた状態を維持することだ。これは大胆な選択ではないが、分別のある選択だ。

By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37764



貧困というサイレント・ツナミ
現実味を増すEU崩壊〜北欧・福祉社会の光と影(10)
2013年05月13日(Mon) みゆき ポアチャ

スウェーデンのメーデーの様子
 5月1日、市内の広場で開催されたメーデーの集会に、子供たちと出かけた。

 「労働者の祭典」と言うだけあって広場は多くの人でにぎわい、アメや風船を子供に配る人、マイクでがなり立てる人、ビラを配って歩く人、袋や箱を持って寄付を募る人、さらには大道芸人も登場し、やはりお祭り的な雰囲気だ。

 小都市なので、かなりの確率で知り合いに出くわすし、初夏の日差しの中で立ち話をしたり、その家族とも顔なじみになれたりするのも楽しい。

 しかし、参加する人数は年々少なくなっている。型通りに集会に参加しデモの隊列に加わるのは、一般的な労働者というよりは、どちらかというと一定の高い政治意識を持つ知識層とか中産階級だ。工場やスーパーで働くような、いわゆる「労働者」と呼ばれる人たちは、メーデーという休日にはゆっくりと体を休めてのんびりと過ごしている。

 集会後のデモも楽しい。子供たちもうきうきと隊列の最後尾につき、普段は車が飛び交う市内の大通りを全面的に遮断し、シュプレヒコールを叫びながら堂々と練り歩く。各人が掲げるプラカードは「ガザ封鎖を止めよ」「福祉と教育にもっとカネを」「シリアへの軍事介入を許すな」など様々だ。

 デモの最中に9歳の長女とはぐれ、探し回って見つけたとたんにワンワン大泣きされるというハプニングもあった。

「新たな戦争の始まり」

 広場には全身と顔にも金色のペイントを施し、ロボットに扮した大道芸人も立っている。彼の前に小銭を置くと、カクカクと動いてお辞儀をしたり手を振ってくれたりする。4歳の次女が面白がり、私に何度も1クローナをせがんで彼の前に置き、ロボットが動くと手をたたいて喜んだ。


全身金色の大道芸人はポルトガルから来た
 午後も遅くなり、彼が商売道具をしまおうとしているところで、ちょっと話しかけてみた。彼は昨年、ポルトガルからスウェーデンに来たという。

―― 何でわざわざスウェーデンに来たんですか?

  「ここにはまだ仕事があるかと思って」

―― ポルトガルは、やっぱり大変ですか?

 「大変なんてもんじゃない。こんなひどい状況になるとは、1年前には想像もつかなかった。家賃が払えない、食べ物も買えない家族が何万といる。教会や慈善団体に食べ物を分けてもらったりしているんだけど、恥ずかしいから近所には分からないように、皆こっそりやっている」

 彼は9カ月前に失業するまで、電気系統の技術者だった。近々結婚するつもりでいた女性は教師だったが、彼女もほぼ同時に職を失した。ほどなく2人は住居も失って、結局ホームレスになった。それまでの生活は、裕福とまでは言えなくとも高水準であったと言う。

 ポルトガルで新たな職が得られる希望は全くなく、スウェーデンにはまだ仕事があるという話を聞いて、ここまで来たという。「貧困との戦いという、新たな戦争の始まりだ」

 ルーマニアやブルガリアなど、東欧から流入し物乞いをする人たちの話は以前に書いた(「激増する移民、路上にあふれる物乞い」参照)。だが、最近はこうして南欧からやって来る出稼ぎ者も増え始めている。

 筆者が勤める高校の職員も、アルバニアから来たと言っていた。日本の学校で言えば、用務員さんだ。明るく気さくで、教職員のみならず生徒にもよく声をかけている。「カネが足りない」とよく言っている。「大型の運転免許を取る」と言っていたので、そのうち転職するのかもしれない。

日増しに増え続ける物乞い

 東欧からの流入者も、見てはっきり分かるほど日増しに増え続けている。2月にこの問題について書いた時、筆者が住む中都市で見かけたのはほんの2〜3人だったが、この数カ月間に20人ほどに増えた。

 町の中心を走る大通りのスーパーの前や広場、ハンバーガーショップや酒屋や現金自動支払機の前など、人通りの多い主要な場所にはほぼ必ず誰かが座っている状態だ。

 数日前からは、筆者宅から歩いて1〜2分ほどのスーパーの前にも1人座っている。このスーパーが面する通りも、市バスが走り往来の多い道路ではあるが、市中心からは少々離れている。こんなところにまで・・・と幾分ギョッとしながら、少し話してみた。


ルーマニアから来たという男性は子供たちの写真を見せてくれた
―― ルーマニアからですか?

 うんうんとうなずきながら、写真を見せてくれた。子供が2人、男の子と女の子が写っている。前に置かれたダンボール紙には、スウェーデン語でこう書かれている。

 「私の国では仕事がありません。それでここにいます。子供がいます。国で、私が少しのおカネを持って帰ってくるのを待っています。そのおカネで学校に行けるし、毎日食べ物が食べられると子供たちに約束しました」

 スウェーデン語はひと言も話せなかったので、誰かが手伝って書いたものだろう。英語もほとんど無理だ。

 少し話して分かったことは、彼の名はドイといい、稼ぐのは1日に約100クローナ(約1500円)ほどだということだ。夜は公園で寝ているという。

拡大する貧困

http://epp.eurostat.ec.europa.eu/statistics_explained/index.php/Unemployment_statistics
 欧州の貧困は、静かな津波のごとくじわじわと確実に拡大し人口をのみ込んでいる。

 5月1日に発表されたユーロスタット(欧州連合=EU=統計局)の指標によると、ユーロ圏内の失業率は前年同期比1.1%増の12.1%となり、過去最高を記録した。

 ギリシャの失業率は27.2%、スペインでは26.7%、ポルトガルは17.5%と、大恐慌時とほぼ同じ水準だ。

 ドイツの公式の失業率はわずか5.4%だが、これはハルツ法によって作られ、増加しているワーキングプアを除外している。雇用されている4200万人のうち、社会保険が適用されている人は2900万人。残りは非正規の職を得ている人たちで、このうち400万人が時給7ユーロ(約900円)以下で働いている。

 25歳未満の若者の失業率は、ギリシャで59.1%、スペインで57%、イタリアでは38.4%に達した。EU全体での失業者を合わせると2600万人。スペイン国内で600万、フランスで500万だ。ギリシャでは先月27日の議会で、さらに1万5000人の公務員を削減すると決定している。

 今後この人口がどうやって食っていけるのか、まともに食えるようになるのかどうか、明るい見通しは何もない。2008年に危機が始まって以来、イタリアの工業生産高は4分の1減少し、ギリシャ経済は20%以上縮小している。

 国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)の言うなりに支出を削減し緊縮財政策を押し付けるだけで、状況を何一つ改善できないEUは無力すぎる。状況を改善するどころか、金融危機、債務危機、通貨危機を悪化させただけだ。

http://epp.eurostat.ec.europa.eu/statistics_explained/index.php/Unemployment_statistics, http://www.tradingeconomics.com/japan/unemployment-rate, http://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf
信頼失うEU

4月25日にEUの調査機関であるユーロバロメータが発表した「EUに対する信頼度調査」では、加盟各国の国民がEUという機構に大きく失望していることが浮き彫りになった。

 スペインでは、2007年の時点で「制度としてのEUを信頼していない」と回答した国民は23%だったが、2012年には72%と3倍以上に跳ね上がっている。どの国でも同様に、EUに対する不信認は記録的な高さとなっている。


 「EUに対し何を期待しますか」という調査では、EUへ期待する事項として雇用、医療、教育政策がトップ3であるが、そのどれ一つも満足な結果を出していないということだ。

 昨年11月に行われた調査の結果が、なぜ今になってマスコミに出たのかは分からないが、彼らにしてみれば喜んで公表したい結果ではないことは明らかだ。

 表に示されたEUの上位6カ国の人口を合わせると、全体の3分の2以上を占める。 

 各加盟国内でくり返し実施される世論調査や加盟の是非を問う国民投票でも、EUやユーロを脱退すべしと考える国民数は毎回うなぎ上りだ。英国では5月2日の地方議会選挙で、EUからの脱退を主張する独立党が大躍進を遂げた。

 主要な国際組織、通貨・金融機関関係者らも、自分たちの政策の失敗を認め始めている。

当局者らが認め始めた「失敗」

 IMFのデビッド・リプトン筆頭副専務理事は先月25日、「欧州が“停滞シナリオ”のリスクに直面した」と述べ、「投資が減少し、失業率は上昇し続けており、金融市場が断片化されたままである。欧州は長期にわたるスタグネーション(停滞)に陥る可能性があり、もしそうなれば家計、企業、銀行やその他の基幹となる機関への波及は深刻だ」と話している*1。

 また、同じくIMFのチーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は、「金融危機から学んだ5つの教訓」として「2008年の金融危機の際、金融システムの構造を理解しておらず世界経済の相互関連性を考慮しなかったことにより、2009年に世界貿易の崩壊をもたらした」「伝統的な金融政策と財政のツールは金融システムの個々の具体的な問題に対処するのに十分ではない」と述べたうえで、「いわゆるマクロプルデンシャル・ツール(金融システム全体のリスクの分析・評価に基づいた政策対応)が実際に金融システムを正常に機能させるように規制するかどうかは分からない」と認めている*2。

*1=http://www.imf.org/external/np/speeches/2013/042513.htm

*2=http://blogs.wsj.com/economics/2013/04/01/olivier-blanchards-five-lessons-for-economists-from-the-financial-crisis/

 ブランシャール氏だけではない。昨年9月、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和策を拡大する決定をした時、連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーであるリチャード・フィッシャー氏は 「実際に経済が正常のコースに戻るかは誰にも分からない」「我々は今、未踏の海の深みへどんどんはまり込んでいる。我々が今いるところからの帰還をナビゲートすることに成功した中央銀行はない」としている*3。

 先月ワシントンで行われたIMF会合で、ノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフ氏は、現今の危機を猫に例えて「木に登ったはいいが降りることができず、今まさに木から落ちるところだ」と述べ、それに同じくノーベル賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ氏は、「猫がなぜまだ木の上にいるのかを説明する有効な経済理論は存在しない」「私たちが得たことは最悪の金融危機と1930年代の大恐慌以来の、さらに拡大された最も深い景気後退だ」とし、現体制が進行中の危機を解決し得ないことを示唆している*4。

深化する南北の亀裂

 さらに現在顕在化しているのは、欧州内の南北問題だ。特に緊縮財政政策の可否を巡って、EUや各銀行、政府閣僚をはじめとする多くの関係者らが、ドイツを中心とする「緊縮財政策推進派」と、ギリシャなど南欧国「反対派」間の意見の違いを憂慮し始めた。

 先月22日に行われた、ブリュッセルでのEUの緊縮政策の影響に関する議論では、欧州委員会のマヌエル・バローゾ委員長が基調講演でこう話している。「私は日増しに深化する南北の亀裂を深く憂慮している」「中核国と周縁国との間の分裂が浮上し、欧州の北と南の間に新たな境界線が引かれている。偏見が再び浮上し、私たち市民を再度分断している」*5

 この「欧州の中核と周縁部」の亀裂は、今日ますます顕著になっている。この問題については、また稿を改めたいが、ユーロとEU、ひいては欧州の政治経済機構が破綻するのは、本当に時間の問題かもしれない。

*3=http://sovereign-investor.com/2013/01/15/the-fed-eats-the-marshmallow-every-time/

*4=http://www.eurostep.org/wcm/eurostep-weekly/2259-big-thinkers-still-stumped-on-global-economic-crisis.html, http://www.bbc.co.uk/news/business-22223249

*5=http://europa.eu/rapid/press-release_SPEECH-13-346_en.htm
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37744


05. 2013年5月14日 09:45:38 : niiL5nr8dQ
2013年 5月 14日 08:47 JST
日本国債利回り、2日連続急上昇

By ELEANOR WARNOCK

 【東京】国債の大量買い入れを通して金利を下げ、投資を促進しようとする日本銀行の狙いとは裏腹に日本の国債価格は13日、2営業日連続で幅広い年限にわたって下落した。

 長期金利の指標となる10年物国債の利回りは13日、一時、前週末比0.105%ポイント上昇(価格は下落)して0.8%を付けた。これは日銀が新たな緩和策を導入する2カ月前の2月以来の高水準。終値ベースでは利回りは0.095%ポイント上昇して0.790%となった。

 市場参加者によれば、米経済回復が一段と鮮明になり、米国の株価と国債利回りが上昇、安全資産の日本国債を売ってリスク資産に資金を移す動きが加速し、円安が進行していると言う。

 ただ、日銀が債券市場で「池の中のクジラ」と言われるような巨大な存在になっていることも1つの大きな要因だとも指摘されている。日銀は、新発債の7割以上に相当する7兆円の国債を毎月買い入れている。

 その結果、市場への国債の供給量が減る。弱気に転じた投資家が様子見姿勢をとることによってさらに状況は悪化する。このため、ちょっとした売買の影響が増幅される。

 ストラテジストらによれば、この日は日銀が3回に分けて1―10年満期の国債を1.2兆円買い入れたにもかかわらず、日銀の狙いとは反対に利回りが上昇した。

 ベアリング投信投資顧問のシニア投資マネージャー、溜 学(たまる・まなぶ)氏は、流動性の悪化に伴ってリスクフリーの投資にリスクが生じており、その結果、日銀の買い入れにもかかわらず、投資家はリスク・プレミアムを要求し始めているとみている。

 政府もこの点については注目しており、小渕優子財務副大臣は記者会見で長期金利の上昇についてはしっかり状況を注視していくと述べた。

 国債に連動する貸出金利を下げて個人や企業の借入を促進しようとしている日銀にとって利回り上昇は頭痛の種だ。一部の大手銀行は先週、既に個人や企業向け融資の主要貸出金利の引き上げを余儀なくされている。

 東京海上アセットマネジメント投信株式会社の佐藤宏樹債券運用部長は、実質的にリスク・プレミアムはもうなく、日銀が利回りをこれ以上引き下げる余地はないとし、今年後半に米経済の回復に伴って米FRB(連邦準備制度理事会)が債券買い入れの終了を考慮し始めれば米国債の利回りとともに日本国債利回りも上昇するとみている。

 その他の日銀ウォッチャーも、市場の変動を食い止めるために日銀ができることは少ないとみている。日銀の黒田東彦総裁は4月、最新の債券買い入れプログラムを発表後に現時点で必要な政策は全て講じたと述べた。

 バークレイズ証券のストラテジスト丹治倫敦氏は、日銀が債券買い入れを増やせば流通市場の利回りは当初低下する傾向があるが、流動性が減るにつれて市場は外部要因に反応しやすくなると指摘。日銀が買い入れオペを繰り返せば最終的には利回りは低下するだろうが、米国債利回りが上昇すれば状況はそれほど単純ではなく、米国の10年物国債利回りが2%を超えた場合に、適正水準とみなされる日本国債利回りはどの程度かが問題になると述べた。10年物米国債は13日のニューヨーク市場で価格が下落、利回りは1.924%に上昇し取引を終えた。


ドル・円は101円台後半、米景気に楽観−RSIは円反転の可能性示唆

  5月14日(ブルームバーグ):日本時間朝の外国為替市場ではドル・円相場が1ドル=101円台後半で推移している。4月の米国小売売上高が予想外に増加したことから景気に楽観的な見方が広がっている。
午前8時6分現在のドル・円は101円82銭で推移。前日のニューヨーク市場では、4月の小売売上高 の発表前後に102円05銭を付ける場面があったが、東京時間に付けた102円15銭を超えることはなかった。
みずほコーポレート銀行の岩田浩二バイスプレジデント(ニューヨーク在勤)は、「米小売売上高は強い結果だったが、利食いに使われた感じで、あまり動かなかった」と指摘。「やはり先日の雇用統計の発表をきっかけに、米景気に対して強気な見方に変わってきている。米国債利回りも上昇基調にあって、ドルを支えている感じ」と述べた。
米商務省が発表した4月の小売売上高 は前月比0.1%増加(季節調整済み)と、ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値0.3%減少に反した結果となった。米国債市場では10年債利回りが3営業日連続の上昇でほぼ7週間ぶりの高水準に達した。
円反転の可能性
相対力指数(RSI、14日間)によると、円が近く反転する可能性がある。対ドルで下落ペースが行き過ぎている可能性を示唆する30を断続的に下回っているためだ。先進10カ国の通貨で構成されるブルームバーグ相関加重通貨指数によると、円は過去3カ月間で6.6%前後の下落。ドルは3.5%前後の上昇、ユーロは0.2%前後上げた。
FXコンセプツのジョン・テーラー最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、円は「ショートが好ましい」が、今後1−2カ月は夏のスローダウンのためショートは控えるべきだと述べた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/14 08:19 JST


キプロス、緊急融資初回分受け取り−ギリシャは融資承認確保

  5月13日(ブルームバーグ):キプロスは13日、緊急融資の初回分を受け取った。ギリシャは75億ユーロ(約9900億円)の救済融資の承認を確保した。
ユーロ圏の恒久的救済基金、欧州安定化メカニズム(ESM)の発表によれば、キプロスは100億ユーロの支援パッケージのうち20億ユーロを受け取った。6月には最大10億ユーロをさらに受け取る。  
この日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)では、銀行をめぐる政策とギリシャ発の金融危機の経済への影響を和らげる措置が議論された。ユーログループはまた、新たに2回のギリシャ向け融資の実行にゴーサインを出した。1回目は42億ユーロで数日中に欧州金融安定ファシリティー(EFSF)から承認を得られる見込み。2回目は6月の33億ユーロで、ギリシャが一定の目標を達成することが条件となる。
ユーログループはギリシャによる「歳入管理の組織と有効性の強化」のための「重要な措置」と「中核銀行の十分な資本増強や銀行システムの再建に向けた」ステップを歓迎すると表明。ただ、「新たな組織構造を確立して脱税と戦っていくには強い決意が必要になる」と指摘し、「事前の行動リストを全て十分に実行するにはさらなる作業が必要だ」と付け加えた。
原題:Cyprus Gets Aid Tranche as Greece Cash Backed by Ministers(1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ブリュッセル Corina Ruhe cruhe@bloomberg.net;ブリュッセル Karl Stagno Navarra ksnavarra@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/14 07:08 JST


ユーロ圏景気後退、通貨導入来で最長か−GDPの減少予想

  5月13日(ブルームバーグ):今週発表されるユーロ圏の域内総生産(GDP)は引き続きマイナスが予想されており、ユーロ圏のリセッション(景気後退)はユーロ導入以来で最長 となる見通しだ。ソブリン債危機がユーロ圏経済に大きな打撃を与えていることが示される。
ブルームバーグ・ニュースがエコノミスト39人を対象にまとめた調査によると、2013年第1四半期(1−3月)GDPは前期比0.1%減が予想されている。予想通りのマイナスとなればGDPは6四半期連続の減少となる。これは2008−09年の金融危機時に続いた15カ月間のリセッションを超える長さで、1999年のユーロ導入以来で最長だ。
コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イエルク・クレーマー氏は、「今は非常に重要な段階にいる。不透明感が再び強まる兆候が見られる」と述べ、「必要な緊縮策と経済成長支援策との間でユーロ圏が適切なバランスを早急に見つけ出すことが不可欠だ」と続けた。
この日ブリュッセルで開かれたユーロ圏財務相会合ではキプロスやスペインの救済プログラムなど域内経済について協議された。ユーロ圏GDPは15日に発表される。
原題:Euro Recession Seen Longest in Single Currency Era:Economy(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:フランクフルト Stefan Riecher sriecher@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/14 03:06 JST

米小売売上高:大幅減の後伸び悩む−衣料増加、ガソリン減少
  5月13日(ブルームバーグ):4月の米小売売上高は前月の大幅減少のあと、小幅な増加にとどまった。
米商務省が発表した4月の小売売上高 (速報値)は、季節調整済みで前月比0.1%増加した。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は前月比0.3%減少だった。前月は0.5%減(速報値0.4%減)に下方修正された。
大和証券キャピタル・マーケッツアメリカのチーフエコノミスト、マイケル・モラン氏(ニューヨーク在勤)は「今四半期は減速する見通しだが、劇的に落ち込むことはない。給与税の影響で支出がやや減少するだろうが、穏やかなものにとどまると見込まれる」と続けた。
売上高は主要13項目のうち9項目で増加。衣料品店は1.2%増と、約1年ぶりの大幅な伸び。百貨店を含む総合小売店は1%増えた。また自動車ディーラーも増加した。
一方、ガソリンスタンドの売上高は前月比4.7%の大幅減少を記録した。3月も3.2%落ち込んでおり、これで2カ月連続マイナス。小売売上高はインフレ調整されないため、ガソリン価格の低下も反映している。全米自動車協会(AAA)によると、4月のガソリン店頭価格は平均でガロン当たり3.55ドルと、3月の3.69ドルを下回った。
このほか食料品店の売上高は0.8%減少。健康用品店は3カ月連続マイナス。
国内総生産(GDP)の算出に使用される自動車、ガソリン、建築資材を除くコア売上高は0.5%増。前月は0.1%増だった。
原題:Retail Sales in U.S. Unexpectedly Rise on Broad-BasedGains (2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/14 00:07 JST


2013年 5月 13日 08:18 JST
円安、日本の眠り覚ますか―韓国などは懸念
By THOMAS CATAN

 【ワシントン】円の急落が世界経済に波紋を呼んでいる。世界第3位の経済大国である日本が長年の眠りから目を覚ますことへの希望が強まる一方で、円安によって打撃を受けかねないと懸念する国もある。

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Bloomberg
 円はまた、昨年9月以降、対ドルで約30%も下落したことから、一部の国々が貿易上の利益を得るため、報復的に自国通貨を切り下げ、通貨戦争に突入するのではないかとの懸念も惹起している。

 円が下落するにつれて、他の通貨は上昇圧力を受けており、輸出が割高になって世界市場で魅力が薄らぐことになるためだ。

 この問題は、11日まで行われた英エイルズベリーでの先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で討議された。参加国は金融政策を通じて自国通貨を恣意的に弱くさせないことを再確認した。

 日本の麻生太郎副総理兼財務・金融相は、G7のどの国も日銀の金融緩和ないしそれに伴う円安に不満を言わなかったと述べ、ドルが対円で1ドル=100円台に乗せたことは論議されなかったと語った。また日銀の黒田東彦総裁は、G7は日本の緩和が15年間続いたデフレからの脱却を目指しており、為替レート操作を狙ったものではないことを今や明確に理解していると思うと述べた。

 円相場下落で最も打撃を受けるのは恐らく韓国だ。韓国は乗用車やエレクトロニクス製品など同じ製品の売却で日本と真っ向から競争しているからだ。

 先週の朴槿恵大統領のワシントン訪問の際、随行した幾人かの韓国の経済当局者と話をしたピーターソン国際経済研究所(ワシントン)の上級フェロー、フレッド・バーグステン氏は「彼らは円安を非常に懸念している」と述べた。

 ドイツ銀行の調査リポートは、韓国の自動車業界は円の下落に「極めてぜい弱」だと指摘している。ただ同リポートは、韓国のエレクトロニクス業界はそれほど大きな影響を受けないはずだと述べている。

 韓国の玄旿錫企画財政相は、韓国輸出にとっての問題として円安を指摘しており、韓国銀行(中央銀行)は先週利下げしたのは円安も一因だったと述べている。韓国の自動車株は最近、競争力低下懸念を受けて急落している。

 他の諸国は円の動きによってそれほど影響を受けない。ドイツは日本と同様の分野の製品を販売している。しかし高級車以外で、これらの製品は市場の同一分野を標的にしていない。ドイツ農業機械メーカーのレムケン社のフランツ−ゲオルグ・フォン・ブッセ社長は、同社の農業機械は日本の競争相手の製品と比べてもっと大型で技術水準も高いと述べた。

 円安は他の影響があるかもしれない。米議会は日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を審議しているが、米自動車業界は日本の交渉参加に強く反対している。円安になれば、議会にとって日本の交渉参加承認が政治的に一層困難になる可能性があり、オバマ政権が貿易政策の中心に位置づけているTPPの合意の遅れにつながりかねない。

 ビッグスリーを代表する米自動車業界のロビー団体、米自動車政策協議会(AAPC)は9日、「ドルが1ドル=100円の大台に到達した現在、米議会はもう十分だと言うべき時だ」と述べ、「円安は、米国の輸出と雇用が減少する結果となり、日本をTPPに含めるべきでないもう一つの理由になる」と語った。



2013年 5月 12日 13:24 JST
【オピニオン】新卒者のみなさん、私は君たちを採用しないだろう
By KIRK MCDONALD


Getty Images
大学を卒業するみなさんへ

 大学卒業という大きな節目を迎えるみなさんにとって、来月はわくわくする月になるだろう。今は華やかで厳かな卒業式や祝いの言葉、そして卒業パーティーを楽しんでほしい。しかし、すべてが終わって、君たちが社会に出る準備ができたとき、君たちはおそらく、私のような人間に会いたいと思うだろう。私はみなさんにとって、憧れの上司かもしれない。私はデジタル分野で成長著しい、素晴らしい企業を経営している。仕事は面白いし、やり甲斐がある。 しかし、残念なニュースをお知らせしなければならない。それは私がおそらく君たちを採用しないだろう、ということだ。

 我が社に空いているポストがないから、というわけではない。それどころか、私は才能のある新しい社員を常に探している。適切な技能を身につけた人が私のオフィスにやってきたら、魅力的なオファーを手にオフィスから出てくることになるだろう。問題は、適切な技能を持った人材を見つけることが非常に難しいということだ。こんなことを言って申し訳ないのだが、大学を卒業する君たちはおそらくそのような技能を持っていない。

 君たちのせいにばかりはできない。米国では大学レベルのコンピューター・サイエンスの授業を行う高校より高校のフットボールチームの数のほうが8倍も多い。米国で育ち、学校に通った君はそういうシステムの中で教育を受けたのだ。大学でも事情はほとんど変わらない。最近発表されたある報告書によると、10年後、コンピューター・サイエンスの学士号を取得して米国の大学を卒業する学生数は4万人と予想されているが、米国内でコンピューター・サイエンスの学士号が必要なコンピューター関連の求人は12万人に上るとされている。数学を専攻していなくたって、これくらいの計算はできる。その仕事に就く資格のある人の数の3倍の職があるということだ。

 この危機的状況に取り組むときがやって来た。州政府は追加的な予算を投じて、小学校から高校までの教育機関で最新のハードウエアとソフトウエアの利用促進を図ったり、科学、技術、工学、数学といった分野の教師の訓練・採用を進めたりすべきである。企業も、厳しい業界で働ける学生を育成 できるように学校の講座に資金援助を行って側面支援をする必要がある。私の会社も含めて情報技術への依存度が高い企業は特にそうするべきだ。しかし、もう1つ、重要なことを忘れてはいけない。それは自分が最もコントロールできると思っているもの、つまり君たち自身である。

 君たちにもいろいろと事情があるだろうし、稼げる仕事を見つけなければならないという非常に大きなプレッシャーを感じていることもわかる。しかし、今から いうことを理解してほしい。君たちの将来を左右しかねない問題だからだ。それは、米国経済の中で生き残りたければ、コンピューター・コードを学んでおいたほうがいい、ということだ。

 米航空宇宙局(NASA)のコンピューターにいたずらで侵入するような天才プログラマーになる必要があると言っているではない。そのレベルのプログラミングは非常に特殊かつ稀な技術で、私自身を含めほとんどの人はそのような技術を持たない。私たちにニューヨーク・ニックスでプレーする運動能力がないのと同じだ。

 一般の人にあるのは情報システムの仕組みを知る能力だ。そういう知識があれば、他の人とシステムについて議論するときに私たちは役立つ存在になれる。例えばこんな例を考えてよう。顧客との会議中に、誰かが君にあるデジタルプロジェクトについて、どれくらいの時間がかかるか質問したとしよう。

 エンジニアやプログラマーがやっていることの基本を理解していなければ、会社の内部がどのように動いているかを理解できる程度にプログラミングの原理や舞台裏を熟知していなければ、質問に当てずっぽうで答えていることになる。そしてその答えはおそらく間違いだ。マーケティングや営業などプログラミングとは関係なさそうに見える職種を希望していても、私の会社が少なくとも基本的にどう動いているかを理解することができなければ、私は君たちを雇うつもりはない。そして、そう考えているのは私だけではない。

 メディアやテクノロジー、またはそれに関連する分野で働きたければ、今年の夏の間に基本的なコンピューター言語を習得することを目指せ。助けてくれ るサービスはたくさんある。無料のサービスもあるし、手ごろな価格で利用できるものもある。

 全体像が描ける程度にコンピューター言語の文法とロジックを独学で身につけてほしい。APIに詳しくなれ。パイソンも少しかじっておけ。それだけ知って いれば、ほとんどの雇い主は十分だと思うだろう。少なくとも2つのプログラミング言語に詳しいと言えるようになったら、履歴書の送付を開始しよう。

 君たちがこれまで成し遂げたことにもう一度お祝いを申し上げる。そして、実社会で必要な知識を身につけられるよう幸運を祈る。

 (マクドナルド氏はマンハッタンにある広告関連のテクノロジー企業パブマティックの社長。前職はタイムのデジタル部門の社長)


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