http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/575.html
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(回答先: 中央銀行がデフレに打ち勝つ方法 黒田国債金利 仏赤字削減 ECB利下? キプロス金売 FRB雇用 アベノミX TPP 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 18 日 01:58:51)
ユーロ危機:ドイツのジレンマ
2013年04月19日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年4月13日号)
ドイツ国民はユーロ圏のスケープゴートにされることに耐えられなくなってきている。
ドイツのメルケル首相をナチスと重ねる様子が、また各地で見られるようになっている〔AFPBB News〕
ドイツのアンゲラ・メルケル首相の写真に施されたヒトラーの口ひげと鉤十字がまたしても、ユーロ危機を象徴する図像のモチーフとなっている。直近ではキプロスで見られた。
シンクタンク、DIWベルリンのマゼル・フラッチャー社長は、金融混乱の最中には必ずスケープゴートを仕立てる責任転嫁が起きると言う。
同氏いわく、ドイツは1990年代後半のアジア危機時の国際通貨基金(IMF)に取って代わり、メルケル首相がミシェル・カムドシュ氏の役割を果たしているという。当時IMFの専務理事だったカムドシュ氏は1997年に、失意にあるインドネシア大統領が厳しい緊縮策に署名するのを腕組みをしながら見下ろす姿が写真に撮られた。
強いヤギをスケープゴートにすると・・・
しかし、誰かをスケープゴートにすることは、当のヤギが強く、自分が犠牲になっていると感じ始めると、危険なこともある。
ドイツ人はまだ公然とは怒っていない。怒りを露にすることは、第2次世界大戦以来、過去を贖(あがな)い、ヨーロッパ人として良きパートナーになろうと努めてきた国民らしくない行動だ。最近のある世論調査では、ドイツ国民の34%が、南欧の人々の怒りを理解できると答えている。
だが、ムードは変わりつつある。南欧の人々は、ドイツが自分たちに過度な緊縮を強いており、十分な連帯感を示していないと感じているかもしれないが、ドイツ人の見解は異なる。
まず、ドイツ国民は自分たちが既に連帯感を示したと思っている。ベルリンの壁が崩壊してから四半世紀近く経った今も、彼らは東ドイツに連帯税を支払っている。中には税収をブレーメンのようなドイツ国内の弱い州に移転するところもある。多くの人は、連帯が一旦定着すると、自発的なものではなくなり、束縛に変わると結論付ける。
また、4月半ばに欧州中央銀行(ECB)が発表した調査でドイツの平均的な世帯の資産が平均的なスペイン、イタリア、キプロス世帯のそれを下回ることが明らかになったにもかかわらず(もっとも、この調査については、ドイツの方が1世帯当たりの大人の数が少なく、賃貸住宅に住む傾向が高いことも影響している)、ドイツ人はユーロ圏の救済策のリスクの大半を負っている。
第2に、ドイツ国民は、ドイツは10年前に自国に競争力がないことを認識して痛みを伴う改革を進め、今、その成果が表れていると主張する。危機に直面している国々は、それに倣うべきだというわけだ。
そして3つ目に、ドイツ国民はユーロ危機を招いたのは主に規則違反(ドイツ自身もルールを破った)であり、同じ過ちを繰り返してはならないと考えている。ある外交官が言うように「連帯は重要だが、やはりルールに従うべきだ。連帯は場当たり的な施しではない」のだ。
総合的に見ると、そうした態度には倫理的な物語の響きがある。実際、ドイツ語に直訳が存在しない「モラルハザード」という英語は、ベルリンでの会話に欠かせない言葉になった。
もともと保険の経済に由来するモラルハザードは、損害が生じたら他者が支払う立場にある時に人がリスクを取る動機を指す。懸念されるのは、ドイツの救済資金のせいで、危機国が改革を避けることになる事態だ。
そうした見方をするのはドイツ人だけでない。オランダ人、フィンランド人、スロバキア人も概して共感している。ドイツを際立たせているのは、同国が大国で、欧州の中心に位置している点だ。
居心地悪そうにEUの中心にいるドイツ
ケンブリッジ大学教授で新書『Europe: The Struggle for Supremacy』の著者でもあるブレンダン・シムズ氏などの歴史学者にとっては、これは気味が悪いほど馴染みがある。
欧州は長年、「大ドイツ主義」の問題と対峙してきた。ドイツは弱すぎることもあったし、強すぎることもあった。もしくは、米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官が1871年のドイツ統合直後について言及したように、ドイツは「欧州にとっては大きすぎるが、世界にとっては小さすぎた」。
シムズ氏は次のように主張する。「ドイツは現在、主にドイツの力を抑制するために考案されたが、実際はドイツの力を高める役目を果たし、その設計上の欠陥が意図せずしてその他大勢のヨーロッパ人から主権を奪った欧州連合(EU)の中心に居心地悪そうに座っている」
問題は、ドイツが悪びれることなくリーダーシップを発揮して自国の力を利用できるかどうか、だ。ドイツの過去を考えれば、同国の政治文化はそれを試すことさえ妨げるだろう。ドイツの元外相のヨシュカ・フィシャー氏は、「若いリーダー(young leaders)が集まる会議に行くのはいいが、若い総統(junge Führer)の会議はごめんだ」と軽口を叩く。
大半のドイツ人は、外国人が再び自分たちを毛嫌いしたり、怖がったりするようになることを心配している。だが、近隣諸国はそれほど懸念していない。ポーランド外相のラデク・シコルスキ氏は実際、2011年にベルリンで行った演説で「私はドイツの力を恐れるよりも、むしろドイツが何もしないことの方を恐れ始めている」と述べた。
ドイツの一部の学者はシコルスキ氏の意見に同意する。コンスタンツ大学のクリストフ・シェーンベルガー氏は、ドイツのリーダーシップを支配と捉えて非難すべきではないと考えている。リーダーシップはシステムを守る。例えば、ユーロ圏で最後の貸し手の役割を果たすのだ。一方の支配は、威圧的な力の主張だ。
シェーンベルガー氏は、ドイツのリーダーシップに代わる選択肢がないために「ドイツのエリート層と一般国民は、国として内向きになることを控えている」と言う。同氏の考えでは、欧州の完全な政治同盟(スイスや米国といった連邦国家のような同盟)のみが一加盟国が覇権国になる必要性を取り除く。だが、それは「SF」の世界の話だという。
ユーロにとって最大のリスクはドイツの離脱か
これが、9月の総選挙に向けた長い選挙戦に入ろうとしているドイツでの大きな議論だ。新たな世論調査では、ドイツ人の69%がユーロを維持したいと思っていることが分かった。これまでの世論調査よりは高い数字だ。だが、ドイツマルクに戻りたいと思っている人々は今、政党を手に入れた。先日、ベルリンで初会合を開いた新党「ドイツのための選択肢」だ。
「ユーロにとって目下最大のリスクは、ギリシャの離脱ではなく、ドイツの離脱だ」。ベルリンにあるフンボルト大学の経済学部教授、ミヒャエル・ブルダ氏はこう主張し、ドイツが最近、フランスと米国から金準備を国内に移送したことは、ドイツの離脱は不可能ではないということを南欧に告げる巧妙なサインだと指摘する。
もし、シムズ氏が正しければ、「ドイツは指揮を執っても痛い目に遭うし、執らなくても痛い目に遭う」。これに対してユーロは、ドイツがリーダーシップを発揮しない場合に限って痛い目に遭うのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37624
「手探り状態での舵取り」を認める中央銀行
2013年04月19日(Fri) Financial Times
(2013年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中央銀行の大物数人が手探り状態で自国経済を舵取りしていると認めたことで、国際通貨基金(IMF)では、ゼロに近い低金利の長期的な副作用に対する懸念が高まっている。
欧州中央銀行(ECB)の役員会に名を連ねたロレンツォ・ビニスマギ元理事はIMF春季総会の雰囲気をうまく捉え、「我々は先進諸国で起きていることを完全には理解していない」と述べた。
中央銀行を悩ます緩和策の副作用
経済が機能する仕組みや政策で回復に影響を与える方法について不確実性が高いこの環境の中で、近く退任するイングランド銀行のマーヴィン・キング総裁は、「中央銀行が多くのことを約束し過ぎるように見えたり、中央銀行に対して過度な期待を抱かせてしまったりするリスクが存在する」と付け加えた。
金融政策の専門家にとって、危機と戦うための政策手段――ゼロに据え置いた金利、長期金利を押し下げ、民間部門の支出を促すための紙幣増刷、金融市場の不安を鎮めるための取り組み――にひどい副作用がある可能性は頭の痛い問題だ。
中央銀行の首脳は、自分たちが危機以前に勘違いし、インフレが安定していたことから金融の脆弱性を取り除いたと思い込んでしまったと説明した。
米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン副議長は、世界のマクロ経済再考に関するIMFの会議で次のように述べた。「危機までの数年間で、伝統的に大きな役割を担っていた金融の安定が、金融政策の過程における『ジュニアパートナー』になってしまった」
今問題なのは、中央銀行が回復を確実にするための取り組みの中で同じ過ちを犯していないかどうかだ。彼らは、将来牙をむく金融の歪みを醸成しているのではないだろうか?
IMFは「国際金融安定性報告書(GFSR)」の中で、先進諸国で実施されている超緩和的な金融政策の終焉を望んでいないことをはっきり示している。IMFで金融の安定の責任を負うホセ・ビニャルス氏は、中央銀行の取り組みは「絶対に必要」だと述べた。
だが、IMFは各国に、超緩和策によって与えられた一息つく余地を使い、金融システムを修繕すると同時に意図せぬ結果に対処するよう求めた。
IMFが挙げた3つのリスク
IMFは、どれも金融緩和に関連している可能性がある3つの新たなリスクに言及した。まず米国では、企業の借り入れ(社債発行)の引受基準が、通常なら拡大と収縮の信用サイクルの末期に見られる水準まで緩和されているという。
また、金融緩和政策が特に新興国企業による外貨建て借り入れという形で新興国経済に波及しており、その結果、こうした企業が為替リスクに脆弱になるとともに、新興国がホットマネーの国際資本移動に敏感になっているという。
そして第3に、IMFは金融緩和の打ち切りが信用市場と米国経済を不安定にさせかねない市場金利の急騰を招くのではないかと心配している。「一言で言うと、我々は未知の領域にいる」とビニャルス氏は言う。
中央銀行の間では、こうした懸念の妥当性について意見が分かれている。ビニスマギ氏は、中央銀行はこれまで以上に奇抜な金融政策の実験に追い込まれていると述べたが、イエレン氏は、FRBはうまくバランスを取れるようになったと言って聴衆を安心させようとした。
「私の見るところ、急激な信用拡大を示す証拠やレバレッジの著しい増加、あるいは金融の安定を脅かす大きな資産バブルはない。だが、一部の関係者が利回りに手を伸ばしている兆しはあり、FRBはこうした状況を引き続き注意深く監視している」とイエレン氏は述べた。
誰も確信を持てない「不確実な世界」
一方、キング氏が説明した問題は、不確実性があまりに蔓延しているため、自国が思ったよりも悪い状態にあることは分かってきたが、どれくらい悪いのか各国が確信できずにいる状況の中で、拡張的な金融政策が適切であるのかどうか誰も確信できない、ということだ。
「自分たちが、そもそも金融危機につながった問題を再燃させるリスクを本当に冒していない」ことをどう確信できるのか、とイングランド銀行のチャールズ・ビーン副総裁はIMFのパネルに問いかけた。
ビーン氏の問いかけは、経済の能力が大きく損なわれたため、中央銀行と政府が失地回復を図る中で、景気刺激型の政策が過度に長引く可能性が高いという不安を裏打ちしている。中央銀行は、金融政策が既に行き過ぎているという心配はしていなかったが、金融緩和からの出口が困難を極めることを危惧していた。
By Chris Giles
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37629
日銀の異次元緩和、前向きな一歩=IMF専務理事
2013年 04月 19日 00:52
トップニュース
4月の米フィラデルフィア業況指数、予想外の低下
3月の米CB景気先行指数は‐0.1%、7カ月ぶり低下
米Mスタンレー第1四半期は黒字転換、資産運用部門の拡大寄与
北朝鮮、交渉開始には核開発放棄への取り組み示す必要=米
[ワシントン 18日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は18日、日銀が着手した異次元緩和は前向きな一歩と評価したうえで、国内景気の一段の刺激に向け、さらに債務削減と構造改革に関する野心的な措置が必要との考えを示した。
同専務理事は、「日本でこのほど発表された野心的な金融緩和の枠組みは、われわれの視点から見て前向きな一歩だった」と述べた。
ただ「これでは十分ではない」とし、「景気を一段と加速させるために、債務水準を引き下げ構造改革を実施する必要がある。このためにはさらに野心的な措置が必要になる」と指摘。
安倍晋三首相が掲げる大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」に言及し、他の2本の矢に関する措置が待ち望まれると述べた。
関連ニュース
米財務長官、日銀の異次元緩和に支持表明 2013年4月18日
異次元緩和に外債投資通じた海外経済活性化効果=宮尾日銀審議委員 2013年4月18日
インタビュー:円安進行、日本経済に好影響=篠原IMF副専務理事 2013年4月17日
IMF、13年世界成長率予想を+3.3%に・14年4%に引き下げ 2013年4月17日
日銀が下した「真珠湾攻撃」の決断
2013年04月19日(Fri) Financial Times
(2013年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
日本の歴史は、エリート層が劇的な戦略転換の下に結集した場面に満ちている。1868年には、日本の指導者が西側の植民地主義の脅威に直面し、数百年続いた封建主義を捨てた。1945年には、軍事的手段を通じた「偉大さ」の追求を放棄し、経済的な繁栄を達成する仕事に取り掛かった。
そして今、デフレが15年続いた後、指導者たちは再び劇的に針路を変え、インフレを目指して猛スピードで進んでいる。戦略的な意味では、この突然の変化は悪名高い真珠湾攻撃とよく似ている。
読者の皆さんは、趣味の悪い比較だと思われるかもしれない。マネタリーベースの拡大はハイパーインフレによる破滅を招くと主張する人騒がせな人々の警告がどれほど恐ろしいものであろうと、その結果として貴重な命が失われることはない。だが、両者には興味深い類似点がある。
真珠湾攻撃の計算とよく似た「先制攻撃」
1941年になると、日本の戦争計画者たちは米国との衝突はもはや避けられないと考えた。同年7月、米国政府は日本に原油禁輸措置を課した。日本軍によるフランス領インドシナ進攻に対する対抗措置だ。
日本側は、オランダ領東インド(現インドネシア)の原油を手中に収める必要があると判断し、その襲撃は必ず米国を戦争に引き込むことになると考えた。言い換えるなら、米国との衝突が起きる。ならば奇襲攻撃によって大きな戦略的優位性を得ることを期待し、先制攻撃を仕掛けた方がいい――。
インフレに関しても、これと同じような計算が働いている。その論理は、以下のような感じになる。
日本の現在の財政状況は持続不能だ。支出するお金の半分をいつまでも借り続けることはできない。自国の労働人口――ひいては将来見込まれる税収基盤――が永遠に縮小し続ける場合はなおのことだ。現在1億2700万人の日本の人口は、2050年には1億800万人に減少する。
このため何らかの債務危機が訪れる。だが、債務の90%以上が国内で保有されているため、将来の日本政府が全面的にデフォルト(債務不履行)する可能性は低い。それよりずっとあり得そうなのは、政府が紙幣の印刷機を用いることだ。
いずれにせよ最後はインフレになるのであれば、間違いなく先手を打った方がいい。真珠湾の時と同様、日本が抱く期待は、敵の機先を制すれば優位に立つチャンスがある、ということだ。
リフレ反対派は間違っている
批判的な向きからは、リフレーションはうまくいき過ぎるという声も上がる。リフレ政策がもたらす結果は、資本逃避と円の暴落と激しいインフレだと彼らは予想する。
そのような結果も考えられるが、決して不可避ではない。もし日銀がデフレからインフレを誘発できるのであれば、インフレを制御できる可能性は十分ある。
黒田東彦新総裁が打ち出した施策は「大型バズーカ砲」と呼ばれるほど大胆〔AFPBB News〕
一方、批判派の中には、リフレ政策は全く機能しないと言う人もいる。日本は長年せっせと紙幣を印刷してきたが、成功していないというのが彼らの主張だ。この見方も正しくない。
今月総裁を退任した白川方明氏の指揮下で、日銀はバランスシートの拡大に向けて形ばかりの努力しかしなかった。白川氏は日本のデフレは構造的であり、金融政策の手段では解決できないと固く信じていた。
同氏の前任者である福井俊彦氏の下でさえ、2003年から2006年にかけての日銀の量的緩和の追求は見た目とは違っていた。
日銀はこの間、慎重な漸進的アプローチを取った。今月、マネタリーベースを2年で2倍に増やすと誓った黒田東彦氏の大胆な一手とは雲泥の差だ。つまり、日本は何か全く新しい策を試しているのだ。
近隣諸国が懸念する理由
中国やオーストラリアなどの近隣諸国が表明した懸念の1つは、日銀の政策の唯一の「伝達メカニズム」は通貨切り下げしかないというものだ。
こうした懸念には身勝手な面もある。近隣諸国は、大量の資金が日本を去り、通貨を押し下げ、日本の輸出業者の競争力を高めることを心配している。言い換えると、日本は単に経済成長を他国から盗むということだ。
だが、近隣諸国の見解は、全く期待できない人口動態を持つ国の根本的な成長展望に対する疑念にも基づいている。日銀は、貯蓄をリターンの高いリスク資産に回すことを金融機関に強いるために日本国債の購入を大幅に増やしている。しかし、もしそうした資産が存在しなかったら、どうなるのか?
懸念されるのは、横ばいないし減少する需要が供給サイドの改革の欠如と重なって、将来のリターンに大きく不利に働くことだ。
国内での機会の不足によって、円がこれほど急激に下落した説明がつくだろう。円相場は11月以降、対ドルで20%も下げている。これはまた、安倍晋三首相が第3の矢を放ち、日本の潜在成長率の引き上げを狙った構造改革に乗り出さねばならないことも示唆している。
だが、その前に来るのが、世界が日本の通貨切り下げを許容するかどうかという問題だ。この点では、兆候はそれほど悪くない。
世界は日本の政策を渋々受け入れる
国際通貨基金(IMF)は今週、競争的通貨切り下げに関する不満は「行き過ぎ」だと述べた。IMFは日本の金融政策の「劇的な転換」を歓迎し、日本の今年の成長率予想を1.2%から1.6%へ、来年の予想を0.7%から1.4%へ引き上げた。
中国の一部高官でさえ、慎重に日本の政策を支持した(その他の中国高官はあまり認めたがらず、日本は近隣諸国を「ごみ箱」として使っていると訴えた人もいた)。
それでも、最も可能性が高いのは、各国が日本の急進的な新政策を渋々受け入れる展開だろう。世界は結局、たとえ波及効果があったとしても、日本が再び経済を活性化できたらすべての人のためになると判断するかもしれない。
日本の金融政策の先制攻撃が醸す物議は、真珠湾攻撃とは比べ物にならないほど小さい。そして実際、うまくいくかもしれないのだ。
By David Pilling
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37627
コラム:米FRB内部でデフレ警戒の声、「黒田円安相場」に影響も
2013年 04月 18日 14:31 JST
田巻 一彦
[東京 18日 ロイター] 米金融政策をめぐる議論に大きな潮目の変化が起きている。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は17日、インフレ率が継続的に低下した場合、米連邦準備理事会(FRB)による資産購入の拡大が必要との見解を示した。
米国内では消費が予想外に伸び悩んでいるとの見方や、じわじわと物価水準が下がっていることに対する警戒感も出てきている。FRB内部でデフレ警戒の声が広がり出せば、「黒田緩和」で進展してきた円安の流れにも影響が出る可能性がある。
<ブラード議長がインフレ率低下に警鐘、資産購入増に言及>
18日の東京市場ではあまり注目されていないが、ブラード総裁の発言は極めて重要だと考える。講演後の記者団とのやり取りの中で「インフレ率が引き続き鈍化すれば、資産買い入れペースを加速させることに前向きだ」と述べるとともに、「私は、インフレ率が目標から下振れないように積極的に取り組む。2%と決定したらその目標は堅持すべき」と語った。さらに「状況が改善に向かわないなら、政策を見直す必要がある」と表明。買い入れを増大させる場合には、モーゲージ担保証券(MBS)ではなく国債の買い入れが望ましいとし、長期的にはFRBのバランスシートは国債のみで構成されるべきとの見方を示した。
FRBが金融政策の目安としている個人消費支出(PCE)価格指数は、このところジリジリと下がり続け、今年2月は前年比プラス1.3%。米労働省が16日発表した3月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が前月比マイナス0.2%と4カ月ぶりに下落し、前年比もプラス1.5%にとどまった。エネルギー価格の下落が影響したと見られ、食品・エネルギーを除いたコアは前年比プラス1.9%だった。
FRBの量的緩和第3弾(QE3)では、失業率の低下テンポに合わせ、2013年後半から年末にかけて資産購入量を削減するべきという「出口論」を展開する意見が一部のメンバーから主張され、マーケットは出口論の広がりを注視する地合いに傾きつつあった。しかし、ブラード総裁の発言は、インフレ率の低下に着目し、資産購入を増やすべきであると主張しており、「デフレリスク」への警戒感をにじませたと言えるだろう。
<足元の米消費マインドに影>
実際、3月の小売売上高は前月比0.4%減少と横ばいを見込んでいた市場予想を下回り、ロイター/ミシガン大学の調査した4月の米消費者調査・速報値は72.3と、昨年7月以来9カ月ぶりの低水準となった。消費者の長期見通しが悪化し、向こう1年で失業率は上昇し、税引き後所得は減少するとの見方が多数を占めるようになった。
米消費の最前線では、1ドルピザのような低価格を武器にした商品の売れ行きが好調になり、価格低下圧力がかかり出している兆候も見える。物価の緩やかな低下にFRBが警戒感を強めることが、今後あり得るのか、重要な岐路に差し掛かっている可能性がある。ブラード総裁は、過去のQE政策でも他のメンバーに先駆けて、その後にコンセンサスを形成する政策を提言してきた経緯があり、単なる少数意見として無視できない性質を持っている。
<ドル高の裏にFRBの出口論、反対方向なら円高圧力に>
この数カ月間におけるドル高傾向の裏には、FRBの資産購入額がどこかの段階で縮小され、さらに一定期間後には停止されるという「出口政策」の現実性を市場が意識し始めてきたという事情がある。もし、インフレ率の低下に着目した購入量の増加という出口と正反対の議論が始まりそうだと市場が認識すれば、外為市場を中心に大きな価格変動を生む可能性が出てくる。
足元の外為市場では、円安が一服しているものの、「黒田緩和」による日銀資産の膨張とFRBがいずれ出口を模索するとの思惑が重なって、中長期的に105円から110円程度まで円安が進むとの観測が多い。中には120円程度まで円安が加速するとの見方もある。
しかし、FRB内部でのデフレ警戒が明らかになったところで、円安の動きに歯止めがかかるのではないか。円安が進まなくなるだけでなく、いったんは円高方向への動きが表面化する懸念もある。今月29日に発表される3月米個人所得・消費支出は、注目度を上げるべきだ。PCEが低下していれば、ブラード総裁の意見が俄然、力を得ることになるのではないか。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE93H03I20130418
コラム:「勝者総取り世界」で普通の国が生きる術
2013年 04月 18日 11:56 JST
By Chrystia Freeland
グローバル化と技術革新という2つの波が押し寄せるなか、国家はどのような舵取りをすればよいのだろうか。漠然とした問いに聞こえるなら、そうした波に乗り損ねて未来に暗雲が立ち込めたキプロスの国民や、波に乗ろうとせず脅威を振りかざすだけの北朝鮮のことを考えれば、問題が見えやすくなるだろう。
21世紀の地政学的変化について語るとき、世界はかつての米ソ対立の冷戦時代から米中による新たな二極構造に移っており、その2国間関係が世界のムードを決めるという論調が多い。
それは間違いではない。ただ、米国人でも中国人でもない人にとってはどうだろう。その他の「普通の国家」にとって、世界はどう変わり、その変化にわれわれはどう対処すべきなのか。
最も大きな変化は、ビジネスがグローバル化したことだ。企業や資本は国境を軽々とまたぎ、人々もまた国際化している。しかし、世界はボーダレス化しても、平坦な場所になったわけではない。むしろ世界には高低差がたくさんあり、経済力による格差はさらに広がりをみせている。
われわれは「勝者総取りの経済」の中に生きており、個人であれ企業であれアイデアであれ、勝者は世界のごく一部の都市にますます集中している。例えば、ニューヨーク中心街157ウエスト57丁目に建設中の豪華なビルや、ロンドンのナイツブリッジにある高級マンションは、勝者が集う場所の一例だ。
世界の頂点に君臨する勝者でないのであれば、自国の立ち位置を理解することが21世紀の政治にとって大切なこととなる。このことを考える上で、以下に挙げる3点が出発点となる。
まず初めに、押し寄せる波に抗わないことだ。私がスウェーデンのカール・ビルト外相と話した時、彼は「もっとスウェーデンに世界を取り入れたいし、スウェーデンを世界に広めたい」とし、国際化を享受することが大切だと語っていた。また、いわゆる頭脳流出については懸念していないとし、むしろ「若者には海外で勉強し、海外で就労することを勧めている」という。
2点目は、戦略的なニッチ市場を見つけることだ。グーグルのシュミット会長のような技術系のリーダーたちは、ある分野でごく少数のプレーヤーに突出して力が集まるという「べき乗則」を重視している。ITの世界で強大な力を持つグーグル、フェイスブック、アップルはこの法則の好例と言える。勝者総取りという枠組みの中でビジネスを展開する際には、どの分野で勝負するのかを戦略的に考える必要がある。これは国家に関しても同じことが言える。
しかし、トロント大学ロットマン経営大学院のロジャー・マーティン学長は、ある逆説的な危険について警告する。もし自分が参入するニッチ市場が非常に大きな意味を持つようになってしまえば、小規模のプレーヤーが力を持ち続けるのは難しくなるということだ。
カナダとテキサス州を結ぶパイプライン「キーストーンXL」はその一例だ。同学長は、このパイプラインがニッチ市場のものであれば、カナダにとって問題はなかったと説明する。「しかし、もはやこれは単なるパイプラインではなく、エネルギーと持続性という世界で最も重要な問題の1つとなってしまった」とし、カナダは厳しい状況に立たされていると語った。
そして3点目だが、これが最も難しい。スウェーデンのビルト外相が語った「世界の潮流」は、時として誤った方向へと向かう可能性がある。賢明な国家の指導者なら、世界の対話に耳を傾け、その輪に入るための努力が必要である。だが同時に、世界が誤った方向に進む時には、その流れに逆らう自信も持ち合わせていなければならない。
カナダはこれまで、この最後の点について好成績を残している。銀行の規制緩和を行わず、イラク戦争にも参戦しなかったことは、今になって考えれば良い判断だったように見える。
50年前にカナダの首相に就任したレスター・ピアソン氏は、戦後の国際的な枠組みを築き、その中でのカナダの立場を確保することに成功した。今のカナダを引っ張るリーダーたちも、世界における新たな戦略を生み出す必要がある。今や世界はナンバーワンでないものが生き残るには厳しい場所となってしまったのだ。
(16日 ロイター)
*著者クリスティア・フリーランドは、トムソン・ロイター・デジタルの編集者。前職では英フィナンシャル・タイムズの米国編集責任者などを歴任。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE93H01T20130418
【第32回】 2013年4月19日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
成長戦略に必要な「5本の矢」とは
なぜ成長戦略が重要か
黒田日銀総裁の放った1本目の矢、「大胆な金融政策」は上々の評判を得てスタートし、今年度は2本目の矢、「機動的な財政政策」の効果も出てくるだろう。
しかし、既に多くの識者が指摘している通り、日銀だけで「良い物価上昇」を実現することは難しく、一過性の効果しかない財政政策だけで、毎年の巨大な需給ギャップを埋め合わせることは不可能である。前回指摘したように、単なる輸入インフレや資産バブルではなく、良い物価上昇を実現するためには、供給サイドの調整を含めた民間企業の活性化が不可欠であり、遠からず発表される安倍政権の3本目の矢である成長戦略が注目されるところだ。
ところで、成長戦略というと、どうも各論に走りがちである。たとえば、医薬品のネット販売解禁、発送電分離、iPS細胞実用化の支援、インフラ輸出の促進などは、どれを取っても重要なものばかりだが、こうした各論をバラバラと論ずる前に、民間企業主導の成長戦略の大きな柱は何なのかをしっかり考えておく必要がある。
「成長戦略の5本の矢」
成長戦略の柱として、誰もが認めるのは、規制緩和であろう。事業への参入を容易にし、競争を促進する中で民間企業が活性化するためには、規制緩和は不可欠な要素である。しかし、筆者は、さらに4本の柱をこれに加えていくべきだと考えている。安倍政権の「3本の矢」に倣って、ここでは「成長戦略の5本の矢」と呼ぶことにしよう。
筆者は常に企業金融の観点から、成長戦略を考えている立場であるから、前提になるのは、「日本の企業が世界の投資家から信認されることによってこそ、日本企業に成長資金と成長機会が与えられる」という考え方であり、その観点から5本の矢を図示したのが図1である。
拡大画像表示
5本の矢は、図1の中で赤く示したもの、すなわち、「参入規制緩和」「コーポレートガバナンスの強化」「リスクマネーの供給」に加え、これらと関係するものとして「年金・機関投資家の議決権行使基準の明確化」と「銀行の資産査定基準の厳格化」である。
参入規制緩和については、すでに様々な方々が意見を公表されており、「真・金融立国論」のメインテーマでもないので本稿では敢えて触れないことにし、見逃されている感のあるその他4本の矢について俯瞰してみたい。
コーポレートガバナンスの強化
連載第15回、第18回で詳細に論じたように、日本のコーポレートガバナンスの現状は、形式的にも実質的にも極めてお粗末な水準にある。民主党政権時代の会社法改正案においては、社外取締役1名導入の義務化さえ、経団連など企業側の反対によって阻止された。
そして、脈々と続く日本企業独特の終身雇用・年功序列を前提とした雇用慣行により、社長が次の社長と取締役を選び、取締役が部長を選び、部長が課長を選ぶというのが実態である限り、誰も社長には逆らえず、社長でさえ会長に逆らえないという社内論理が優先される。
その結果、株主価値の最大化を目的とするはずの取締役会を機能停止にさせ、上司に逆らわない「カワイイやつ」だけが出世することによって、日本企業の革新性と活力を蝕んできた。オリンパス事件のような不祥事はもちろん、スピード感に劣り世界の流れに乗れなかった電機業界の苦境の下地は、実はこういうところにあるのではないだろうか。
世界の投資家は、冷徹にコーポレートガバナンスの状態を見極めて投資をしている。
図2は、社外取締役の数と外国人持ち株比率の関係を示したものであるが、海外投資家は、社外取締役数の多い企業を選んで投資していることが見て取れる。しかも、世界の投資家の目線は、既に社外取締役の有無ではなく、社外取締役の独立性の有無に移っている。
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図3は、世界の企業の取締役会の独立性の程度を比較したものであるが、日本企業の取締役の独立性が如何に低いかが見て取れる。これでは、日本企業に世界の投資家の信認が与えられるとは到底思えない。
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成長戦略の「アメ」が規制緩和だとすれば、「ムチ」はコーポレートガバナンスの強化であるべきだ。取締役会が、社内論理ではなく、真に企業の成長と価値の向上を目指すものになっていない限り、どんなに規制緩和をしても、日本企業がそれを生かすことはできない。
日本のこの状況を生んだのは、高度成長期以来続いている、銀行が企業のガバナンスを司るアンシャン・レジームである(図4)。銀行は、何よりも貸付債権の保全を求めるため、企業の成長より安定を志向しがちである。これを成長志向の経営に変えるためには、銀行ではなく投資家がガバナンスを担う体制、つまり、会社の成長と価値向上を目指す取締役が選任されるように、会社法をはじめとした法令や規則、あるいはガイドラインが定められなければならない。
銀行の資金仲介機能はもちろん重要であるが、銀行と投資家・株主の間には根本的な利益相反がある。銀行が直接、間接に(たとえば銀行が影響力を持つ企業再生ファンドなどを通して)企業の経営に関与することは、徹底的に排除されるべきであり、本来であれば、銀行の持ち株規制の緩和などは論外というべきであろう。
なお、「年金・機関投資家の議決権行使基準の明確化」というのは、これと裏腹の関係にある。すなわち、投資家が企業ガバナンスを担う以上は、投資家側にも議決権行使を通じた企業の監視が義務付けられなければならないということである。
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リスクマネーの供給
規制緩和が進み、コーポレートガバナンスの強化が達成されたとしても、それだけでは企業の成長は覚束ない。企業がリスクを取るためには、リスクを覚悟したお金、いわゆる「リスクマネー」が企業に提供されなければならない。そして、当然、それは銀行には出来ないものである。
連載第22回で詳述したように、米国では、エリサ法の発展と共に、プライベート・エクイティ・ファンド(PE=企業再生・買収ファンド)やベンチャーキャピタル(VC)に年金の資金が大量に流入し、これが企業の新陳代謝を促してきた。現在、米国を代表するPE、たとえばKKRやカーライルなどは、数兆円という単位の資金を持ち、機動的に投資運営をし、産業の再生や再編に貢献している。
これに対し、日本のPEの規模は極めて貧弱であり、たとえば、良い技術を持ちながらも危機に瀕している日本企業の救済さえも、思うに任せないのが現状である。大企業から中小企業に至るまで、企業の再生や再編が必要な時に、日本は、常に海外のファンドに頼るのであろうか。または、まるで共産主義国であるかのように政府が作ったファンドで、国営化していくのだろうか。
世界の代表的な公的年金は、おおむね10%以上をPEに投資する。たとえば、米国を代表する公的年金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、総額約24兆円の運用資産の14%をPEに投資する方針である。これに対し、約120兆円を運用する日本の公的年金は、厚生労働大臣が認可する中期計画の中でPEやVCへの出資が認められていないために、一銭もPEに投資していない。
民主党時代の厚生労働大臣だった長妻氏は、「国民の大事な資産をリスクのある運用には回せない」と、頑なに成長分野への投資を拒否した。しかし、連載第5回で触れたように、その認識は根本的に誤っている。象徴的な例で言えば、国債で100%で運用するよりも、PEへの投資を交えた方が運用リターンは高く、運用リスクは低くなるのだ。
単純な株式投資をPEに振り向ければ、運用リスクは一層低下する。カルパースでは、PEへの投資理由を、@市場連動型金融商品との低い相関、A過去長期に亘るリターンの安定性、B高い投資リターン実績、C自国・自州産業の成長・再生支援 と表明している。
日本政府が成長戦略を考える際、このCは極めて大事な観点である。公的年金は国家戦略として有効に活用されなければならない。年金のリターンを高め、リスクを低減するという目的はもちろんだが、自国産業の成長・再生支援のために年金が果たす役割は極めて大きい。それが結果的に企業を活性化し、国民経済全体のパイを大きくし、年金受給者のためにもなるのである。
日本には実績を積んだPE・VCが少ないという反論はあろう。しかし、米国がエリサ法を導入した40年近く前には、米国にも実績のあるPE・VCは存在していなかった。鶏か卵かという神学論争はやめて、高い志を持ち、第一級の実力のある運営者が率いる独立系のPE・VCには、一定の存在感を示せる規模の資金を導入すべきである。なお、その際に大事なのは、銀行が影響力を持つPE・VCを徹底的に排除することである。その理由は、すでに前項「コーポレートガバナンスの強化」のところで述べた通りである。
銀行の資産査定基準の厳格化
現在、数十兆円にも及ぶとされる需給ギャップの解消を図らなければ、いい意味でのデフレ脱却はできないが、現在の過剰供給の状態を放置したまま需要だけ作り出そうとすると、公共事業など巨額の政府支出を続けなければならなくなる。産業の新陳代謝を進め、供給サイドの効率化も達成することが必要である。また、そのために、前項で述べたようなリスクマネーの供給が必須なのだ。
しかし、日本の現状は、いわば「官製モラルハザード」の蔓延によって企業の新陳代謝が進まない構造になっている(図5)。政府系金融機関や信用保証協会などでは、合計してすでに兆円単位で国民負担が生じているが、それは、企業を延命させるために、実質的にはいわば銀行への裏口補助金の形で発生したものである。何よりも問題なのは、金融庁による銀行の資産査定基準のうち、中小企業を対象としたものが、不良債権の認定を回避する方向に、大きく舵を切っていることである。これは、民主党政権下で実施された中小企業金融円滑化法の実質的な延長に他ならない。
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実際、図6に示したように、この甘い査定基準のお蔭で不良債権の認定を受けずに済んでいる貸付債権は、少なく見積もっても20〜30兆円程度ある可能性がある。それらを、現在は、いわば銀行が抱え込んでいるのであり、いずれは国民負担になる可能性が高い。そして、こうした形で「生かさず・殺さず」の行政を続けている限り、産業の新陳代謝は起きようがない。
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不良債権の認定を受けることが、倒産の増加に繋がると考えるのは早計であり、実際には、全く逆である。不良債権に分類された貸付債権には、60〜100%の引当金が積まれる。PEやVCが投資する際に、銀行がその分だけ債権放棄をする余地があるため、再生すべき企業の再生が進むのである。PEでも再生できない企業は、いずれにしても行き詰る可能性が高いとすれば、これも早めに引当金の範囲で債務を整理して、転廃業を促進すべきなのだ。
ただし、これを進めれば、銀行の財務は傷むことになる。その場合は、銀行の経営責任は問わずに、銀行に公的資金を導入すればいいのではないだろうか。現在のように、信用保証協会に象徴されるような「裏口」から銀行に補助金を出すのではなく、政策的に必要であるなら、社会インフラとして大切な銀行の資本を充実させることの方が公明正大というものだ。また、銀行は歴史的に、景気循環の波が変われば収益体質が改善する可能性が高く、銀行に投入した公的資金もいずれ返済される可能性も高いことを念頭に置くべきだろう。
金融庁も、もちろんそのことは十分理解しているはずであり、現在の行政指導は過渡的なものであると筆者は考えている。
このように、「成長戦略の5本の矢」は、相互に関連しており、どの一本が欠けても企業の成長を通じた成長戦略の絵は描けないはずである。これらの改革には、既得権益層からの反発も大きかろうが、政治の責任でそれを乗り越えることが必要であるし、今の政府・与党にはその力があると筆者は信じている。
http://diamond.jp/articles/-/34893
「アベノミクス」で日系メーカーはよみがえる
TPPは追い風も、その効果は限定的
2013年4月19日(金) 加藤 まどみ
『徹底予測 次世代自動車2013』
リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反攻体制を整えつつある。このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていく。
7回目の今回はアベノミクスやTPPが日系メーカーに与える影響について。自動車担当アナリストとしてアナリストランキングでトップを走る三菱UFJモルガン・スタンレー証券の吉田達生シニアアナリストの意見を聞こう(技術系ライター、加藤まどみ)。
※当記事は4月10日に開催された「徹底予測 次世代自動車セミナー2013」の講演を基にまとめた。
金融危機などの環境変化を経て、世界および日本の自動車市場の状況は大きく変わった。
2000年には販売台数のトップは米ゼネラル・モーターズ、2位は米フォード・モーターだったが、2012年にはトップがトヨタ自動車、2位が独フォルクスワーゲンへと入れ替わった。トヨタ以外の日本メーカーが生産台数を上げる一方で、韓国や中国メーカーの台頭も著しい。日系メーカーは金融危機や円高、東日本大震災やタイ洪水など大きな変化を経験してきたが、予想以上にシェアを回復している。
円安効果、公共投資、TPPの影響大
だが、その収益構造は、以前と現在とで大きく変化している。北米への出荷がメインであることには変わりがないものの、欧州向けが減りアジア向けが大幅に増した。今後も中国を中心とするアジアへの急激な伸びが続くと考えられる。
これらの世界環境の中、日本では安倍政権による「アベノミクス」と呼ばれる一連の政策が始まった。これらは自動車業界の追い風となりつつある。アベノミクスでは金融政策、財政政策、成長戦略という3つの基本方針を掲げ、これに沿ったさまざまな施策を行う。その中でも自動車業界へ大きな影響を与えるのは円安効果、公共投資、そしてTPPの3つだ。
まず金融緩和による円安効果は輸出損益の改善につながる。例えば、2万ドルで出荷している車の場合、1ドル75円であれば150万円の売り上げだが、円安で95円になると190万円になり、40万円売り上げが増える。同様に、海外の子会社との連結決算による換算利益も同様に改善する。
しかも、これらの収益改善によって、厳しい円高で削らざるを得なかった研究開発や設備投資といった将来の成長につながる資金を投資に回せるようになる。もちろん、円安によって不採算のためにあきらめていた仕向地に輸出できるようになったり、中近東で増えている競争入札ビジネスでの競争力がアップしたり、という効果も見込むことができるだろう。
米国市場には上積みの余地あり
アナリストランキングでトップを走る三菱UFJモルガン・スタンレー証券の吉田達生シニアアナリスト
さらに、公共投資に関して言えば、トラックなどの商用車需要や震災復興に伴う車両の買い換えが喚起される。また、TPPに参加することでよりフェアな事業展開が可能になると思われるが、効果は限定的であり、急な変化は期待できないと予想される。日本への輸入に関しては、もとから関税がゼロのため目立った影響はない。
輸出については最終的に相手国側の関税は撤廃されるものの、段階的にならざるを得ないだろう。コストを削減した高性能の日本車への警戒心が非常に強いためだ。なお、今までは日米などの単独の交渉で緊張が高まりやすかったが、これらがオープンな場で議論されることになるのは日本にとって歓迎すべきことだと言える。
世界市場についても解説すると、現状で特に大きな市場は米国、欧州、そして中国だ。2017年には世界の販売台数は1億台を突破すると予測されるが、特に中国が大きなけん引力となる。
米国は2012年に販売台数が約1400万台だった。そのうち乗用車では日本メーカーのシェアは約42%。日本は低価格帯から高級車までまんべんなく販売している。急速にシェアを伸ばしている韓国車は低価格帯が中心だ。
なお、米国では保有台数の5.5〜6%、すなわち年に1500万台程度が廃車されている。一方で免許数は毎年200万枚増えている。つまり米国市場を見れば、現状の1400万台よりもさらに販売台数を上積みする余地があるということだ。
欧州は日米欧韓のグローバルメーカーが競うが、各国の財政問題、いわゆるソブリンリスク問題が影を落としており、今のところ回復の兆しはあまりみられない。
一方で、中国は各社が相次いで戦略車を投入するホットな市場だ。中国の販売台数は世界一の約1600万台。2002年はバスやトラックなどの商用車と乗用車が半々だったが、近年は乗用車中心の市場へと急激に変化を遂げた。
現状は、地場メーカーが41%、欧州21%、米国12%、日本17%、韓国8.5%と、現地と各国のグローバルメーカーがしのぎを削っている状態だ。グローバルメーカーと現地メーカーの合弁や提携も盛んだ。中国メーカーは幅広いラインナップを展開しているが、日本より低価格帯に属するのでダイレクトに競合することはない。中国での反日運動による影響は底打ちしているものの、まだ不透明感がある。
自動車の大衆化が進む新興国を攻めるうえで重要なのは、市場ニーズに則した商品を迅速に導入することだ。
ロシアは金融危機以前までに回復
個別に見ると、インドは自転車・二輪・四輪が混在する地域である。まだ市場は大きくないものの将来有望な地域で、各地にグローバルメーカーの生産拠点が立地している。現地メーカーが低価格帯に強いため価格競争は厳しいと考えられる。現在はマクロ経済の減速で踊り場に立っている。
ロシアでの販売台数は金融危機以前にまで回復しており、外国ブランドが市場拡大をけん引している。ブラジルは380万台に成長したが、金融引き締めにより減速しており、それを減税で下支えしているといった状況だ。
タイでは政府による初めて自動車を購入する人に向けた支援策で昨年は140万台に拡大した。今年は反動もあり、120万台程度で推移すると予想される。インドネシアは頭金を3割納める規制ができたため、二輪の購入は減った。ただ、四輪では特に大きな影響は見られない。
徹底予測 次世代自動車2013
リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきましたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反攻体制を整えつつあります。このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていきます。
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中国の輸出急増は貿易統計データの欺瞞か
中国税関と香港政府のデータ間に存在する巨額の差
2013年4月19日(金) 北村 豊
「ウォール・ストリート・ジャーナル」(以下「WSJ」)の中国語版ウェブサイトは4月4日付で「中国の輸出急増の背後に隠された秘密」と題する記事を掲載した。当該記事は、中国経済の回復がいまだ不確定な状況下で、中国の輸出データと香港の輸入データの間に362億ドルもの差異があることから、海外の需要が旺盛であると見られている中国商品の輸出に疑問符を打たねばならないと報じている。その要点をまとめると次のようなる。
中国から香港への輸出、3カ月間で362億ドルもの差
(1)中国の“海関総署(税関総署)”(以下「中国税関」)が3月8日に発表した統計データによれば、2012年12月から2013年2月までの3カ月間、中国の輸出は欧米経済の回復が十分でない状況下、前年同期比で19.8%も増大した。中国の国内総生産(GDP)の成長率が去年の第3四半期に7.4%という過去3年間の最低を記録した後に、この輸出データは人々の中国経済復調に対する自信を強めた。
(2)輸出の再度の拡大は中国経済にとって注目点であり、輸出の増大は中国商品に対する海外の需要が依然として強く、中国の工場設備が稼働し、中国社会の就業需要を満足させることが可能となることを意味する。
(3)しかし、一部の輸出商、貿易代理商や経済学者などは、この点について、輸出企業や地方政府が報告するデータは水増しされており、中国の輸出データは恐らく正確ではないと見ている。彼らは特に、中国・香港間の貿易データに存在する差異を指摘している。すなわち、上述した2012年12月から2013年1月までの3カ月間における、中国税関が発表した中国本国から香港向けの輸出額は949億ドルであるのに対して、香港政府が発表した中国本国から香港向けの輸入額は587億ドルで、その差は362億ドルにも及んでおり、両数字の差異は近年では最も大きなものとなっている。
この点について、大型のB2B電子ビジネスサイトを運営する“北京悦商世紀網絡科技有限公司”の最高経営責任者(CEO)で、経済コラムニストの“周彦武”は4月11日付で経済ポータルサイト“和訊網(hexun.com)”に「輸出入データに重大なひずみ」と題する記事を発表して、その詳細について論じた。その概要は以下の通りである。
【1】香港は中国にとって最も主要な輸出先である。2012年の中国の輸出総額は2兆489億ドルで、そのうち香港向け輸出額は3235億ドルで約15.8%を占めた。2013年1〜2月の中国の輸出総額は前年同期比23.6%増の3267億ドルであり、そのうちの香港向け輸出額は前年同期比60.9%増の572億ドルであった。一方、香港政府の統計によれば、2013年1〜2月の香港の中国からの輸入額は355億ドルで、両者の差は217億ドルに上った。
【2】とりわけ、2013年2月はこの差が顕著で、中国税関の統計によれば、2013年2月の中国の香港向け輸出額が251億ドルで、2012年2月の185億ドルの35.5%増であったのに対して、香港政府の統計では2013年2月の中国からの輸入額は137億ドルで前年同月比18%減であった。
【3】この数字のひずみはさほど大きなものではないが、極端なのは中国の輸入データである。2013年1〜2月における、中国の香港からの輸入額は24億ドルであるのに対して、香港の中国向け輸出額は363億ドルとなっている。何と後者は前者の15.4倍という驚くべき数字であり、その差は339億ドルである。中国税関の統計では、輸出額は“離岸価(FOB価格)”、輸入額は“到岸価(CIF価格)”で計算される。<注1>CIF価格には運賃と保険料が含まれているので、本来ならば、中国の輸入額は香港の輸出額より高くなければならないはずである。これに対して、FOB価格には運賃と保険料が含まれないから、中国の輸出額は香港の輸入額よりも低くなければならない。
<注1>FOB価格=本船甲板渡し価格、CIF価格=FOB価格+海上保険料+海上運賃
融通が利かない香港では正規の輸入金額で通関
上記を検証すべく、“中国税関”の通関統計と“香港特別行政区政府統計処(Census and Statistics Department)”の対外貿易統計を調査した結果が表の通りである。
表から分かるように、2012年12月から2013年2月までの3カ月間における、中国の輸出額949億ドルに対応する香港の輸入額は587億ドルで、その差異は362億ドルであり、香港からの輸出額580億ドルに対応する中国の輸入額は45ドルで、その差異は535億ドルとなっている。
中国から香港への輸出では、中国の税関に対して商品の輸出金額を過大に申告し、中国と比べて融通が利かない香港では正規の輸入金額で通関したことが考えられる。また、香港から中国への輸入では、香港の税関に対して正規の輸出金額を申告して通関した商品を、中国の税関には商品金額を過少に申告して輸入通関を行ったことが想定できる。しかし、問題はその金額の差異が大き過ぎることである。ほんのわずかな差異であるならば、何かの手違いだとか、集計上の誤差脱漏である可能性も考えられるが、AとBの合計で897億ドルにもなると話は別である。
この点について、前述した周彦武は同じ記事の中で次のように論じている。
企業にとって何でもありの中国税関
【1】中国の輸出額が香港の輸入額より大きい理由として考えられるのは以下の4項である。
(1)企業が“出口退税(輸出戻し税)”を騙し取るため
(2)企業が中国国内で徴収される“増値税(付加価値税)”や消費税<注2>を回避するため
(3)“洗黒銭(マネーロンダリング)”のため
(4)中国政府が製造業による輸出の繁栄という虚構を演出するため
<注2>増値税は国内で販売される商品に普遍的に課せられる税金。消費税は特定の商品を対象として増値税に上乗せして課せられる税金。
【2】中国では商品を国内販売すると増値税や消費税を徴収されるが、外国貿易企業は商品を輸出すると、輸出戻し税の還付を受けることができる。また、企業が“加工貿易”<注3>の方式を通じて輸入すれば、関税の減免や増値税の優遇が享受できる。ある電子企業を例に挙げると、デジタルカメラを輸出すると、13〜17%の輸出戻し税の還付を受けられる。これは製品の価格コストを13〜17%下げたのと同じである。また、保税区で加工を行う場合、“加工貿易手冊(手帳)”さえ持っていれば、輸入関税と増値税を別途支払う必要はない。
<注3>加工貿易とは、企業が保税扱いで輸入された全部あるいは一部の原材料、補助材料、部品、包装資材を中国国内で加工・組み立てを行った後に、製品・半製品として輸出すること。
【3】企業は輸出して輸入する方式を採るのが通例で、貨物を香港へ輸出してから、改めて同じ貨物を香港から輸入する。企業は輸出することにより輸出戻し税の還付を受け、輸入することにより消費税と増値税を少なくすることができるので、両面で利益を得ることになる。多くの場合、貨物を香港へ輸送しなくても、保税区の倉庫に数日置きさえすればよい。甚だしい場合は、貨物が全く存在しなくとも、“報関単(関税申告書)”に貨物が記載されていれば、濡れ手に粟で輸出戻し税の還付を受けることさえある。
【4】税金を騙し取る以外では、マネーロンダリングは輸出企業が最も得意とすることである。本来10ドルの商品を100ドルに値付けして香港のマネーロンダリング市場へ輸出することで、輸出企業には90ドルの利益が入る。輸出企業はそのうちの80ドルを本来の“黒銭(不正な手段で得たカネ)”の所有者に各種の方法で返却する。一方、輸出企業は香港へ輸出した商品を1ドルで再度中国へ輸入し、20ドルで中国国内に販売して19ドルの利益を得る。
周彦武の説明は非常に納得できる内容である。要するに何でもありということになる。何でもありとは言うものの、その結果が上述したように3カ月間で897億ドルの差異につながるということは、中国国内の企業が大挙して「みんなで渡れば怖くない」式で、輸出戻し税の騙し取り、増値税と消費税の回避、マネーロンダリングを行っていることになる。かつて中国に駐在経験のある筆者から見ると、これだけの金額の差異が発生している背景には、必ずや中国税関の職員の関与があるはずである。関連書類の帳尻さえ合っていればよいわけで、それらの勘所を熟知した税関職員を懐柔すれば、何事も不可能はないということになる。
ところで、周彦武は理由として4項を提起したが、さしもの周彦武も第4項の「中国政府による演出」については説明をはばかったようで、記事では何も詳細を述べていない。3カ月間で897億ドルという差異が出ている事を考えると、この中国政府演出説が最も説得力あるものに思われる。しかし、差異の根拠となっているのが中国税関の統計データであり、それ以外には比較対照するデータがないので、これ以上は何を言っても憶測の域を出ない。筆者は従来から中国の統計データの信憑性には疑問を持っているので、中国政府演出説が正しいように思うのだが、果たして正解は何なのか。
要領を得ない税関当局の説明
ところで、4月10日に税関総署が開催した「2013年第1四半期外国貿易輸出入状況記者会見」の席上、“第一財経頻道(チャンネル)”の記者から文頭に述べた4月4日付WSJ中国語版の記事について質問を受けた税関総署のスポークスマンである「中国統計局長」の“鄭躍声”は、中国税関データと香港政府データとの間に比較的大きな差異があることを認めた上で3つの方面から回答したが、その要点は以下の通り。
【1】中国税関で手続きされた関税申告書のデータは自動的に処理システムに送られて統計が作られる。従い、統計上の1ドルは関税申告書上の1ドルと相対するものである。関税申告書は輸出貨物あるいは輸入貨物を反映しており、貨物は必ず出境、入境により税関の境界線を越えなければならない。中国の税関統計に間違いはない。
【2】国連の貿易統計および税関統計の規定により、国境を越える流動的な貨物はその全額で統計を取らねばならない。しかし、実際の貿易では、一部の輸出商が貨物の仕向け地が未定のまま、暫定的に香港向けとして申告するケースがあり、これは香港向け輸出として扱われて統計が取られる。一方、香港では中継輸送や通過する貨物は、香港の統計上では中国からの輸入には含まれない。これらが中国税関データと香港政府データの差異を形成する。
【3】今年の第1四半期に香港向けの輸出が増大したことの理由はいくつか考えられる。香港が自由港であることから、近年多くの多国籍企業が世界の物流センターを香港に設置している。このため、中国国内で組み立て生産した商品は先ず香港へ輸出し、その後に中国国内を含む全世界の市場に配送される。昨年以来の国際金融危機の影響下で、一部の多国籍企業はコスト節約のために、物流センターの倉庫を保管料が高い香港から隣接する広東省の“深圳”に移した。この結果、物資調達のために貨物が香港と深圳を頻繁に移動するようになり、それが第1四半期に香港向け輸出が急増した要因と考えられる。
鄭躍声局長の説明ははっきり言って要領を得ない釈明であり、自分でもそれをよく認識していたのだろう、さらなる調査を行う旨を表明して質問に対する回答を終えた。
中国は2013年3月に8.8億ドルの貿易赤字を出した。前回の赤字は2012年2月の315億ドルであった。2012年3月に54億ドルの黒字に転じ、その後は2013年2月まで通算12カ月間黒字を保ったが、3月には赤字に転落したのである。
ところで、上述した2012年12月から2013年2月までの3カ月間の貿易収支は、12月が316億ドル、1月が291.5億ドル、2月が152.5億ドルの黒字で、合計すると760億ドルの黒字となる。一方、上述の表にあるAの差異362億ドルとBの差異535億ドルの合計は897億ドルとなり760億ドルを上回る。もしこの差異がなければ、2012年12月から2013年2月までの貿易収支も赤字となったはずだが、そこまで考えるのは勘繰り過ぎと言うものだろうか。
北村 豊(きたむら ゆたか)
中国鑑測家。1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130417/246847/?ST=print
【第328回】 2013年4月19日
中国経済を「通過」せよ!
2015年、中国バブルは崩壊する
――大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸に聞く
熊谷氏が書いた『パッシング・チャイナ』(講談社)は、刺激的なタイトルで、話題になっている。失われた20年で、一時期「ジャパン・パッシング」などと言われたが、なぜこの時期に中国の将来を大胆に予想した著書を出したのか、そのエッセンスは何かを聞く。
中国の実態を身に沁みて感じた経験
――この刺激的なタイトルには、どういった思いが込められているのですか?
くまがい・みつまる
東京大学大学院修士課程修了。1989年、日本興業銀行に入行。同行調査部エコノミスト、みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。財務省「関税・外国為替等審議会」の委員をはじめとする様々な公職を歴任。過去に各種アナリストランキングで、エコノミスト、為替アナリストとして合計7回1位を獲得している。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)レギュラーコメンテーター。著書に『日経プレミアシリーズ:消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社)、『パッシング・チャイナ』(講談社)など。
「パッシング・チャイナ」という構想は、私が長年温めてきたものです。
「バッシング」ではなくて「パッシング」――。すなわち、中国を「非難」するのではなく、もう中国を「通過」「素通り」してもいいのではないか、という主張です。
われわれ日本人は「中国幻想」に振り回されるのではなく、もう少し気楽にいく必要がある、というメッセージが、この「パッシング・チャイナ」というタイトルには込められています。
日本のすぐ近くには、「南アジア」という巨大な潜在市場があります。タイ、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナムなどの国々です。
彼らは、戦後の焼け野原から不死鳥のように立ち上がり、アジアから初めて先進国の仲間入りを果たした日本人に対して、ある種の憧れを持っています。極めて「親日的」な国が多いのです。
日本企業にとっては、中国に固執せず、「チャイナ・プラス・ワン」――つまりは、中国以外にもうひとつ海外拠点を作ることこそが喫緊の課題なのです。
――この本を書かれたきっかけは何かあるのですか?
数年前、中国に出張した際、北京から羽田に帰る飛行機が、定刻の出発時間を前に、離陸してしまったことがあります。
「百聞は一見にしかず」とはよく言ったものです。このときほど、中国の実態を身に沁みて感じたことはありません。
日本の労働生産性が低いなどと言いますが、中国はその比ではありません。この空港ではほとんどの人間が全然働いていない様子なのです。
空港の職員から荷物を取り戻す際にも、大きな発見がありました。
最初は、「荷物を返してくれ」と強く主張しましたが、何時間待っても全く進展は見られませんでした、そこで中国人は「面子」を重んじるという話を思い出し、ペコペコと頭を下げると、すぐに荷物は返ってきました。
この経験から、私は「日本人は中国の経済成長を絶対視しているが、中国の実態はそれとはまったく異なる」と確信したのです。
中国経済は間違いなく「バブル」
――中国経済は「バブル」だと見ていますか?
中国経済は間違いなく「バブル」です。2015年あたりからは、いつ崩壊してもおかしくありません。
中国にはリスク要因が山積しています。
第一に、1979年から採用された「一人っ子政策」による少子高齢化の進展が懸念されます。
第二に、中国の「政治リスク」も深刻です。中国では政治指導者が交代する5年毎に混乱が起きる傾向があり、将来的には中国共産党による事実上の一党独裁制が崩れる懸念が強まるでしょう。
第三に、「不動産バブル」の崩壊も心配です。中国の経済成長モデルは、不動産価格の上昇による「錬金術」を中核に据えています。驚くべきことに、地方政府の収入の6割程度が、不動産関連収入に依存しているのです。
第四に、中国では設備の過剰感が強まっています。
中国では、GDPに占める設備投資の割合が個人消費を上回っているのです。他の先進諸国で個人消費がGDPに占める割合を見ると、米国で7割超、日本でも6割程度です。しかし中国ではこの比率が35%に過ぎません。
第五の問題点は、賃金インフレの進行です。中国にとってインフレは「天敵」です。「インフレ」が進行すると、低所得階層の不満が爆発し、政治的・社会的混乱を伴いながら、経済が「ハードランディング」に至るケースが多いからです。
日本企業が商売で勝つポイント
――しかし、中国経済を「素通り」して、日本経済は本当に大丈夫なのですか。日本企業がその強みを発揮するための戦略的なポイントは、なんでしょうか。
日中関係の悪化は、最悪のケースでも、2013年度の日本のGDPを0.2%押し下げる程度の影響しかありません。まさに、日本経済にとっては「蚊が刺した」程度の影響なのです。
日本企業は「技術で勝って、商売で負ける」と言われます。マーケティング力が弱いというのが日本企業の致命的な欠陥です。
野球のピッチャーに例えれば「技術力」の高さは速い球を投げる能力です。日本企業は時速150キロ台の剛速球を投げる能力を持っています。しかし、韓国企業という、球速は時速130〜140キロ台だが、絶妙のコントロール(「マーケティング力」)を有するピッチャーに苦戦しているのです。
今後の日本企業の戦略としては、剛速球に一層の磨きをかける(最先端の「技術力」を磨く)ことと、コントロールを良くする(「マーケティング力」を高める)ことの双方に、バランス良く行う取り組む必要があるでしょう。
日本が採るべきは「中庸の道」
――今後の日中関係では、何が重要だと考えていますか?
今後、日本が必要以上に中国を挑発することは控えるべきですが、「反日デモ」にビクビクして中国の顔色を伺うような外交だけはやめた方がいいと思います。
「反日デモ」の本質はあくまで中国の国内問題であって、「反日」という要素は単なる口実・きっかけに過ぎません。
中国では汚職・腐敗の蔓延や、所得格差の拡大・固定化などを背景に、国民の間で、現状に対する不満や将来への不安が、制御不能なレベルに近づいています。例えば、2012年に中国政府は治安維持に、軍事費を上回る7018億元(約9兆円)の予算を充てているのです。
日本がどれだけ気を使っても、残念ながら「反日デモ」はいずれまた起きるでしょう。中国政府が、腐敗・汚職をやめ、所得格差を是正し、政治の民主化を行うことは、当面期待しづらいからです。
今後の日中関係に関しては、原理原則を貫くことと、リアリズムのバランスを取った「プラグマティック(実利的)」な対応を講じることが最大のカギです。日本人が大切にしてきた「中庸の道」にこそ、日中間の懸案を真に解決する知恵が隠れているのです。
われわれは、等身大の中国を見失い、日本を過小評価してこなかったでしょうか。
今後、中国は「バブル」が崩壊し、政治的・経済的に大きな苦境を陥るでしょう。これに対して、社会の安定性が強い日本は、「アベノミクス」の効果もあり繁栄を続けると見られます。
日本の未来は間違いなく明るいのです。
「おごる平家は久しからず」――「中国幻想」はもはや臨界点に達しています。今、われわれ日本人は、「パッシング・チャイナ」という新たな決断を迫られているのです。
http://diamond.jp/articles/-/34898
フィラデルフィア連銀製造業景況指数:4月は1.3−予想下回る
4月18日(ブルームバーグ):米フィラデルフィア連銀が18日発表した4月の同地区製造業景況指数は1.3と、前月の2から低下した。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト調査の予想中央値は3だった。同指数はゼロが拡大と縮小の境目を示す。
原題:Philadelphia Fed Manufacturing Index Fell to 1.3 in Aprilfrom 2(抜粋)
更新日時: 2013/04/18 23:07 JST
3月の米CB景気先行指数は‐0.1%、7カ月ぶり低下
2013年 04月 19日 01:05
[ワシントン 18日 ロイター] 米大手民間調査機関のコンファレンス・ボード(CB)が発表した3月の景気先行指数は94.7と前月比0.1%低下した。低下は7カ月ぶり。市場予想は0.1%上昇だった。
内訳では消費者期待や工場での新規受注などがさえなかった。
米Mスタンレー第1四半期は黒字転換、資産運用部門の拡大寄与 12:44am
[18日 ロイター] 米モルガン・スタンレー(Mスタンレー)が18日発表した第1・四半期決算は、利益が9億5800万ドルと、1億1900万ドルの赤字だった前年同期から黒字転換した。資産運用部門の拡大が寄与した。 記事の全文
北朝鮮、交渉開始には核開発放棄への取り組み示す必要=米 12:30am
[米大統領専用機 18日 ロイター] 米ホワイトハウスは18日、北朝鮮と「正真正銘の信頼ある」交渉を行う用意が依然あるものの、北朝鮮はまず核開発の放棄に真剣に取り組む姿勢を示す必要がある、との見解を示した。 記事の全文
米新規失業保険申請件数は小幅増、雇用市場の回復懸念和らぐ 12:12am
[ワシントン 18日 ロイター] 米労働省が18日発表した4月13日までの週の新規失業保険週間申請件数は、季節調整済みで4000件増の35万2000件だった。小幅増にとどまり、雇用市場の回復が大きく後退したとの懸念が和らいだ。 記事の全文
4月の米フィラデルフィア地区連銀業況指数、前月から低下 12:05am
米国株式市場・序盤=小安い、企業決算など消化 2013年 04月 18日 23:59 JST
伊議会、第1回投票で大統領選出できず 2013年 04月 18日 23:21 JST
焦点:日銀、展望リポート見通し15年度への延長を検討へ 2013年 04月 18日 22:33 JST
東南アジア株式=おおむね上昇、ジャカルタは最高値 2013年 04月 18日 22:18 JST
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