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(回答先: 小泉改革の真の目的はいったい何なのか? 〜2002年の経済展望 〔プライオール投資顧問〕 投稿者 PBS 日時 2002 年 5 月 15 日 22:37:51)
財務省の意図についてはことさら斎藤氏のようには考えていないが、小泉政権が財務省に制御されていることや経済の現状認識については同意できる点も多い。
全体として良質な文章と考えているので、斎藤氏の内容に即していくつかの考察をしてみたい。
■ 国債価格下落問題
財務省のみならず金融関連の人たちが、日本国債の行く末とりわけ国債価格の下落=国債の利回り上昇に神経を尖らせている。
斎藤氏も、「要するに、国債が暴落すると、倒産の続出や失業者の急増ばかりでなく、国家財政も破綻して株価と円の暴落も避けられないのである。ゼロ金利で辛うじて支えられている地価も暴落するなど、文字通り日本は恐慌に突入することになる。だからこそ、財務省の現下の最重要事項は、国債の暴落阻止なのだ」と書いている。
これが本当にそうなのかを中心に置きながら、国債問題を考えてみたい。
国債価格下落問題については、そのトリガーとして大きく二つを考えることができる。
一つは、国債に対する信用不安から売却量が拡大したことで価格が下がるというもので、もう一つが、金利が上昇したことで既発債の価格が下落するというものである。(新規発行分の利回り=金利が上昇すれば、既発債の価格はそれにつれ下落する)
金利の上昇は、日銀がゼロ金利政策と超金融緩和政策を続ければ避けることができるが、“国債不安”は政策で完全に防ぐことはできない。
ゼロ金利政策と超金融緩和政策は、第一義的には“国債不安”を招来させないための政策である。
“国債不安”が生じる状況を想定すると、
● 「景気の回復」が“国債不安”を生じさせるというパラドックス
現在、銀行は、財務状況を改善するために国債の買い入れに走っている。
銀行の資産は、この1年間で32兆円も減少したが、その大半が国債の引き受け(買い入れ)によるものと推測できる。国債は資産評価として0カウントとなるので、BIS規制に自己資本/総資産の分母を減らし自己資本比率の改善に貢献する。
このような実態は、銀行が、国債以外に信用できる投資先や確実に利益を上げられる貸し出し先を見出せていないことを意味する。
今年1年間で新規+借り換えの国債発行高はほぼ100兆円であり、その額はみるみる増大し、2005年度には150兆円になると予測されている。
景気が回復すると、国債以外にも有望な投資先や貸し出し先が生まれてくる。
これは、預金が大半を占めている銀行の資金が国債以外にも振り向けられることを意味する。
国債以外の投資でほぼ確実に名目で5%の利回りが得られるような状況が生まれれば、現在1.5%程度の国債利回りでは引き受け手が不足し、利回りが3.5%から4%まで上昇しなければならなくなる。
日銀が超金融緩和政策を採り続け、日銀当座預金残高が27兆円も積み上がるという異常事態になっているのも、ペイオフ対策というだけではなく、銀行が国債に振り向ける資金が枯渇しないための先取り的政策でもある。(銀行が日銀当座預金に預けても無利子だから、27兆円も預金しているというのは、銀行によほど運用先がないということである)
財務省が短期国債のウエイトを上げたり金利スワップの導入で金利0.2〜0.3%の短期国債を1.3%ほどの利回りにしようとしているのも、銀行保護政策であると同時に国債対策である。(このような財務省の策動が国会やメディアで俎上に上らないのが不思議である。参考書き込み:『Re: 【財務省の本性】短期国債に1.31%もの金利を負担しようとする財務省官僚の“怪奇”』( http://www.asyura.com/2002/hasan8/msg/256.html ))
景気が回復すると国債への資金シフトが揺らぐため、国債利回りの上昇が避けられなくなり、“国債不安”が現実化することになる。
しかし、これは、合理的な金融政策と税制政策を採ることで、国債の“暴落”というかたちにはつながらない。
国債利回りの上昇と同時に公定歩合を引き上げることで日本経済総体が「インフレ基調」になる。
(「高金利=物価抑制・低金利=物価上昇」という間違った経済理論の広まりは経済政策を誤らせる。参考書き込み:『金利と物価の関係 《日銀政策会議に見られる根源的な誤り》』 http://www.asyura.com/2002/hasan9/msg/789.html )
インフレだけが一人歩きし可処分所得がそのままであれば、需要が縮小し、国民生活が困窮する。その結果、「デフレ不況」に逆戻りすることになる。
これは、「低中所得者減税=高額所得者増税」を実施することで乗り越えることができる。金利上昇による名目利子所得の増大も、需要の増大に貢献する。
インフレになれば、1年ほど遅れるとはいえ名目個人所得が上昇するので税収が増大し、“国債不安”はわずかとはいえ緩和される。
国債の金利負担も、インフレにより、名目金利は上昇しても実質金利が上昇するとは限らない。
現在は1.5%+1%(デフレ率)で実質2.5%だが、4%−2%(想定デフレ率)であれば実質2%になる。ゼロ金利下のデフレよりも、インフレ状況のほうが政策的調節余白が生まれることは間違いない。
さらに、インフレによって、ここ5年ほどのあいだに発行された低金利の国債は、政府にとって財政改善に大きく寄与するものとなる。(既発債を保有している経済主体は割を食うが、政府は約定通りの金利を支払えばいい)
但し、国債価格下落は銀行の財務状況を悪化させるので、従来通りの銀行保護政策を実施するとすれば、17兆円ほどの財政的負担が必要となる。
「景気の回復」が“国債不安”を生じさせるというパラドックスは、それを“逆手”に取って、先行的にインフレ誘導策をとって景気を回復させるという政策の可能性を示唆するものである。
緩やかな金利上昇と「低中所得者減税」が、「デフレ不況」を脱却するための一つの方策なのである。
金融政策と税制変更は、財政支出による景気対策と違って、基本的に財政コストがかからないものである。
(財政支出による景気対策は、次年度はさらに額を増大させなければ経済成長が持続しないという“宿痾”でる)
[この他の“国債不安”発生要因についてはレス3以降で]
※ 参考書き込み
『【大間違いの経済理論】 “超低金利政策”はデフレを悪化させる 《金利引き上げがインフレを誘発し「デフレ不況」から脱却するための一つ方法》』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/302.html
『Re: 2chの「★阿修羅♪ 国家破産について語ろう」』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/336.html
『米国金利の反転と原油価格(ロスチャイルド投資顧問レポート2002/03/13)』
http://www.asyura.com/2002/hasan8/msg/145.html
『原油価格の高騰は「デフレ不況」に悩む日本経済の“神風”になるか』
http://www.asyura.com/2002/hasan8/msg/955.html