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(回答先: Re: Re:海外金融資産と日本国債 投稿者 楽観派 日時 2002 年 5 月 28 日 21:38:03)
楽観派さん、こんばんわ。
前回は触れませんでしたが、個人や企業が所有している金融資産と政府などの公的債務が、“差し引き”の対象にならないことについて、『Re:加藤 寛氏は共産主義者かたんなるダメ学者か』( http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/377.html )を参照してください。
>まず3兆ドルの海外資産(これはフォーブスから引用したものです)の内訳に関し
>て。トヨタなどは多額のアメリカ投資を行っています。3兆ドルという数字はそうし
>た実需がほとんどと考えます。確かに前のメールではフォーブスの意見をそのまま紹
>介しましたが、誰にも明細はわからないのでは?
国債問題で取り上げる対象としては、銀行・生保・資金運用部などひとのお金を預かり、それを原資に国債を引き受けている経済主体の海外金融資産に限定する必要があると思います。
(トヨタをはじめとした事業会社の海外直接投資は、税収には影響しますが、日本国家がそれをトヨタから没収でもしない限り、国債の安全性=金融資産保全問題には直接関わらないものです)
前回のレスでは金融資産3兆ドルを前提に書きましたが、その金額規模や投資内容の詳細はわからないものです。公的統計に拠れば対外金融資産は1兆ドルくらいあり、銀行や生保がそのある程度の部分を持っているということは間違いありません。
その部分は、金融会社が預かっている資金(債務)が海外向け債権になっていることを意味するので、国内金融資産とダブルカウントされていることになります。
>日本の銀行が日本で投資機会を見つけられずアメリカに多額の投資をしたというのは
>事実だと思います。しかし3兆ドル(現在のナスダックの価値に等しい)をアメリカ
>に投資していれば極端なドル高/円安がおきたはずです。
国債や債券は長期保有している比率が高く、株式も、売り買いしながら保有を続けていると思われます。
海外金融資産が1兆ドルとしても、短期間で生じたものではなく、10年とか20年かけて蓄積されたものでしょう。
90年代の対外証券投資は1年間にほぼ10兆円(770億ドル)です。
ドル高/円安問題については、その期間の対外投資を規制する要素と考えたほうがいいと思います。(資本逃避的動きであればレートに大きな影響を与えますが)
(私にとっては奇妙な行動なのですが、ドル安/円高になれば対米投資が減少し、ドル高/円安になれば対米投資が増大するという規制が働いています。逆に動くほうが理に適った投資行動なのですが、そのときの傾向に振られるようです。ドル安/円高傾向にあると、このままドル安が続いて損をすると考えて投資を控えるようです。だから、よりドル安/円高になりやすいとも言えます)
>例えば1月に三井住友はゴールドマン・サクスの株を売り数千億の”利益”を得まし
>たがこれなどは住友の海外戦略の失敗の結果であり資本逃避ではなかったと思います。
三井住銀行友の財務状況改善に使われたと思っていますが...
いい売り時だったと見ています。
>逆に日本経済が弱り、極端な円安になれば保有する海外資産は円換算で増えるわけで
>すから、海外資産(海外金融資産ではない)は十分緩衝材となると考えますがいかが
>でしょうか?
極端な円安になるのは、日本の経常収支赤字が常態になるか、ハイパーインフレになったときだと考えています。
前者が理由であればインフレ基調になり、後者であれば悲劇的な国民生活になります。
海外金融資産ではない工場などの海外資産は、そこで利益を上げていればその会社の受け取り利益となり税収に貢献することもあると思いますが、国債問題の緩衝材になるとは思いません。(政府が没収するなら別ですが...)
前者が理由の円安であれば、金融会社が保有している海外金融資産のほうがそれなりのヘッジにはなると思います。
>ちなみに速見日銀総裁の任期は今年で切れます。おそらく次の人は”調整インフレ”
>的な考えを持ったひとでしょう。
“調整インフレ”的な考えを持つ人が日銀総裁の後任として選ばれるかどうかわかりませんが、“調整インフレ”策が実行される可能性はとても低いと考えています。
今現在行っているの政策もインフレ誘導策ですが、日銀と商業銀行のあいだに日銀券と国債が貯まるだけで、商業銀行から外に出てインフレを誘うことにはなっていません。
この現実を知っている日銀の政策委員は、インフレターゲットを示す“冒険”に踏み切らないと考えます。(宣言して実現しなければ、権威失墜になります)
税制変更などによる低中所得者(世帯ベースで70%)の可処分所得の増大と金利引き上げを実行し、緩やかなインフレに誘導すべきだと考えています。
金利引き上げで名目金利を高くしても、インフレであれば、実質金利をマイナスにすることもできます。
デフレでは、名目金利が0%であっても実質金利がマイナスになることはありません。
インフレであれば、1年遅れとはいえ給与も上がり、税収も増大していきます。
(人々の経済活動は、実質ではなく、目に見える名目で動かされるものです)
財政当局や国民が、名目金利(1.5%)にごまかされてそれが低金利だと思いこんでいると、足下をすくわれることになると思います。
国債残高420兆円をそのまま維持したとしても、デフレが続けば、債務の実質価値が増大し、不況で税収も増えないため、負担が増大することになります。(1%のデフレで5年経てば、441兆円の借金をしていることになる)
経済学者・日銀政策委員・財務省官僚が、低金利=物価上昇、高金利=物価抑制という“誤った”経済理論を抱えたままでは、現在の「デフレ不況」を解消することはできません。
※ 参考書き込み
『【大間違いの経済理論】 “超低金利政策”はデフレを悪化させる 《金利引き上げがインフレを誘発し「デフレ不況」から脱却するための一つ方法》』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/302.html
>その場合日銀法を”改正”して適度なインフレを進めれば国債の消化にも問題ないと
>考えます。アメリカは現在もインフレにありますが誰もそれを”軽い”デフォルトと
>は言っていません。再度の反論をお待ちします。
緩やかなインフレと緩やかな経済成長をベースできれば、銀行や生保への対策コストがかかるとしても、制御不能のハイパーインフレを生じることはないと考えています。
アメリカは現在インフレではなくデフレに陥っており、国債レベルでも6%を超える実質金利となっています。
国債の実質金利が0%以上であればデフォルトとは言えませんが、0%を下回れれば実質的に“軽い”デフォルトであるという指摘はできます。
>ちなみに国債を全額返済する必要はないわけで、市場が納得するまで下げれば十分な
>のでは?
緩やかなインフレと経済成長で利払いと償還(借換債引き受け)がスムーズにできる環境になれば、ハイパーインフレという道は避けられると考えています。
国債残高を減らすことは、60年かけての償還が基本ですから(それまでは借換債でつないでいく)、ハイパーインフレでも起きない限り無理な話です。
(97年の18兆円を除く95年以降の発行高は20兆円を超え、98年以降は30兆円を超えています。95年に発行した21兆円が10.5兆円になるまでに30年もかかります。93年以降に新規発行した国債だけで258.6兆円あり、それが半分の129.3兆円になるのが2030年頃です。今後、新規国債発行を20兆円に抑えても、国債残高は減るどころか増えていき、2030年には600兆円を超える国債発行残高になります)
414兆円という国債残高や700兆円と言われている公的債務残高をできるだけ増やさない財政政策と採りながら、緩やかなインフレを続け、債務残高が税収に見合うレベルになるのを待つしかないでしょう。
国債問題は日本経済問題と一体のものですから、「デフレ不況」を解消することが、国債問題を解消することになります。