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全球凍結
2045年8月23日正午。外は凍てついている。太陽の光は全く射さない。既に、太陽を見なくなって10年以上だ。太陽も月も星々ももう見ることはない。多分、数百年は続くだろう。子供のころは青空に浮かんだ白い雲をよく見上げたものだった。夏の暑い日、入道雲を眺めながら、これが夏だと思ったものだった。懐かしい2010年代。
変化は突然だった。朝鮮半島の付け根にある白頭山が急に噴火したのだ。あれが確か2022年。既に日本の富士山が噴火していた。2024年には米国西海岸でM9地震が発生した。その3年後、2027年にガイザースが大噴火した。これが曲がり角だった。噴火による火山灰、それもミクロンレベルやそれ以下の微粒子が大気中に漂い、日光を遮った。その後も、インドネシアやイタリアの火山の噴火が続き、気温が急激に低下し始めた。結局、全球凍結に至るまでにたったの6年だった。
米軍は最善を尽くした。既にできていた地熱発電所を最大出力で動かし、熱を、エネルギーを作り出した。火力の使用は2035年に禁止された。酸素が無くなってしまうからだ。日光がない。太陽が出ない。外は暗闇の世界。植物は光合成をしない。植物性のプランクトンは死に絶えた。
太陽光発電、太陽熱発電はガイザースの噴火でほとんど意味のないものになった。水力発電も河川も海も凍り付いているのだから、何の電力も作り出さなかった。
風力は使えると誰でもが考えた。しかし、見込み違いだった。暴風があまりに強いのだ。まるで極地のブリザードのような嵐が吹き荒れると頑丈に作られた風車の柱が倒された。一度倒されると二度と作り直すことはできない。気温が低すぎるからだ。
原発が動いていたのは、多分2040年ぐらいまでだろう。川のそばに造られていた原発はすぐに運転停止をした。冷却水を満足に回すことが出来なくなったからだ。海沿いの原発は、専用港が役に立った。そこに温排水を貯めて、それを再度冷却水として使うことが出来たからだ。しかし、結局交通が止まり、核燃料そのものが尽きてしまった。
MOX燃料は全て米軍が引き受けた。冷却水を用意しないとすぐにメルトダウンして地球全体が救いようがないほど放射能汚染されてしまうからだ。ガイザース噴火の直後から、ここ東部で使用済みMOX燃料の保管施設が造られた。完成したのは2030年。その時には既に地球中のMOX燃料が集められていた。未使用、使用済みを問わず全量だ。ウラン燃料については、原発立地国それぞれの政府に処分が任された。多くは、乾式キャスクに入れられ、それなりの施設に放置されたままだろう。気温が低いため、容器の痛みが遅い。寒冷期が開けたら、一番にやることはこれらのウラン燃料の点検だ。しかし、それがいつになるか、誰も分からない。
今、我々は半地下式の都市に住んでいる。エネルギーは全量地熱だ。地下5000メートルからくみ上げる蒸気でタービンを回し、電気を作る。一部の熱水は暖房に使うが、地下数百m程度まで伸ばしたヒートポンプで今ではほとんどの空調は賄えている。
食料はひどかった。全球凍結をした前後、ほとんど毎日が冷凍食品だったのだ。凍った野菜と凍った肉がビニールの袋に入れられて毎日配給された。やがてそれが缶詰とクラッカーになった。新鮮な野菜が食べれるようになったのはやっとこの数年だ。地下の野菜工場がかなり一般的になってきたからだ。
日陰のない世界。明るさはあるが、暖かさのない照明。確かに寒くはないが暑くもない。心地よいと言えば心地よいが、やはり、懐かしい、あの焼けつくような太陽の光が。
2015年11月20日18時45分 武田信弘
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