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(回答先: 「匿名希望」氏へのレス:現状なお、「第2の敗戦」ではなく「勝者の蹉跌」 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 29 日 00:20:01)
いつもながらの鋭い現状分析に感心致しました。
貴殿のプランの核心は、余力のある企業に賃上げを行わせるという点にあると思います。これが実現可能なら確かにかなり効果のある政策になり得ます。ところが、現実には各企業がこぞって賃下げに走り、公務員給与や退職金も引き下げようという話が進んでいるわけです。
経済団体は政府ではなく、各個別企業の寄り合い所帯ですから、国民経済を第一義的に考える義務も関心もありません。優良企業の多くはグローバルな競争を展開しており、国民経済に資する為に自社のコスト競争力を犠牲にするような選択はしないでしょう。経済団体を率いる彼らがそのような選択をしない以上、経済団体の意思としてそのような提言が行われないのは自明のことです。
かつてヘンリー・フォードが、自社製品である自動車の普及を図るため、(顧客となりうる)従業員の賃金を大幅に上げ、成功したという伝説があります。今ほど世界のグローバル化が進んでおらず、有力な競合相手も存在しなかった古き良き時代のおとぎばなしだと言えるでしょう。
しかし、こうした政策が有効ではないとして、貴殿を批判しているのでは全くありません。誰がどう考えようとも無理なものは無理だからです。
>余剰通貨をどう考え、余剰通貨をどうやって資本化していくのかが、先進国に共通して投げかけられているテーマです。
この問題意識は広く共有されるべきものと考えます。答えを探すのが難しい問題です(貴殿のご指摘になったマーシャル・プランのようなうまく機能する資金の還流システムは歴史上稀有の成功例です)。この課題に対して日本の出した答えが、バブルの生成であり、90年代の膨大な公共投資でした。そして、残されたのは無残な資産市場の崩壊と国家財政の壊滅的打撃でした。ここから得た教訓は大なるものがあります。
今後、様々な制度や組織の改革を進めて行くうちに、必ず日本の進むべき方向を厳しく問われる局面にさしかかると予想されます。一言で言うと、市場主義礼賛の米国型か高負担高福祉の欧州型かという選択がそれです。今は米国型を志向する改革に向かっているように見えますが、いずれ本当の「痛み」が出始めると、欧州型志向に変わるのではないか、と個人的には予想しています。欧州型に近い「日本型」の志向で良いと個人的には感じています。
中国が供給拠点としてのプレゼンスを増大させる中、日本の産業空洞化問題が指摘され始めています。現状では賛否両論分かれていますが、この問題は放置すると日本経済にとって大変大きな災厄となり得ます(10―30年のタームで)。地理的条件からしても、先進国で最も甚大な被害を被るのは日本です。不釣合いに低い水準で米ドルにペッグする現行の中国の通貨政策に対しては、そろそろ関係諸国との連携を強化した対応を練る時期に来ています。
実のある討論ができ、大変有意義でした。有難うございました。