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「匿名希望」氏の『あっしら氏と私の相違点について』( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1195.html )に対するレスです。
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貴殿が、「あっしら氏と私の間で、日本経済と世界経済の現状と将来に関する見立てについては大きな差異はないように見える。にもかかわらず、あっしら氏はマイルドなデフレ解消策の実施を勧め、私はデフレ深刻化覚悟の改革路線の必要性を説く」とまとめてくれたので、それを共通了解内容として話を進めます。
“政府紙幣”を持ち出すと経済を超えた政治の領域になり、経済論理も根底的に変わったものになるので、とりあえず考慮の外とします。
また、これまでのやり取りの繰り返しになる恐れもあるので、やり取りの経過を参照できるリストを最後に添付することで、省略とみなさんの便宜に資したいと思います。
>あっしら氏の規定によると日本経済の現状は、「勝者の蹉跌」であって「敗戦」では
>ないという。転んだものは立ち上がれば良いというわけだ。言い方は悪いが、弥縫策
>がまだまだ通用する(はずだ)とのお考えと見られる。ケインズが死に、マネタリズ
>ムが扼殺された後でもまだ政策実施による日本経済の救済が可能とするお立場だ。
政策はまさに政治的に決定されるものなので、政治の難関という問題はあるとしても、経済論理的には「デフレ不況」を解消できる政策はあるという立場です。
そして、政治的難関をこじ開けるためには、経済価値観の転換が必要だと思っています。
(何よりも、金融主義的な経済価値観や経済状況をわきまえない「規制緩和」や「民営化論」といった改革論を払拭しなければならないと考えています)
経済論理として立ち直ることができるという根拠は、銀行さえもう要らないと考えるほどの“余剰通貨”があることや10兆円を超える経常収支の黒字があることです。最大の根拠は、後者の厖大な経常収支黒字です。
“余剰通貨”は供給(投資)や需要(消費)を通じて資本化するとしても、それがすべて資本化された段階でアッパーリミットに達します。この意味では、積み上げられる債務額で規定される財政支出の拡大と同じ期間限定的な経済効果です。
(このような期間限定的なものでいいとも思っていますが...)
総体としての企業収益を確保しながら、名目GDP・実質GDPがともに持続的な成長を遂げるためには、経常収支の黒字が不可欠です。
経常収支が厖大な黒字であることが、他の先進国諸国に比して日本経済が強固な経済力を保持していると言える経済条件です。
10兆円がまるまる国内に留まれば、通貨量が10兆円増加することになります。
これがなんらかの政策により銀行の増資として使われれば、国家歳出に匹敵する83兆円ほどの「信用創造」余地が生まれます。
これまで通り5兆円ほどが対外投資に回るとしても、「信用創造」ベースでは40兆円を超える増加になります。
このような条件にある日本経済が98年以降名目GDPマイナスを続けているというのは、“余剰通貨”がとてつもないペースで増加していることを意味します。
ともに厖大な“余剰通貨”と経常収支黒字がありながら、「デフレ不況」を解消できないとしたら、国会議員及び内閣を中心とした統治者の錯誤や無能だとしか言えません。
それらが資本化されない隘路は一つ一つ早急に潰すべきです。
一つの主要な出口である銀行に問題があるのなら、所有形態的な国有化レベルであっても、それを断行しなければなりません。
供給>需要という実態であれば、手に入れた通貨をより消費に回す層の可処分所得が多くなる政策を実施しなければなりませんし、多数が先行き不安を払拭する政策を採らなければなりません。
供給力過剰と過剰債務が結びついているのなら、それを金融的に支えながら、優良企業が率先して供給(給与)を増加させて、供給力が供給となるようしなければなりません。そして、金融政策を含めたかたちでインフレに転化させる必要があります。これは、公的債務についても言えることです。
(縮小均衡で問題を解決しようとすれば、将来に展望を持ちながら歴史的生活水準を維持できる国民がますます減っていくことになり、優良企業までもが不良企業に転化していき、国家財政も破綻状況になります。そして、ハイパーインフレのみが“解決手段”となってしまいます)
他の先進国とりわけ米国の経済が日本と同じ轍を踏んでいる状況では、今後、経常収支が黒字を維持するのが精一杯という現実を迎えることになります。
「デフレ不況」を“政治的軋轢”が少ないかたちで解消するチャンスは、それほど残されていないのです。
だからこそこうやって投稿を続けていますし、早期の政策転換を求めるとともに期待もしています。
>一方の私は、もう日本経済はそんな段階をとうの昔に突破してしまったという立場
>だ。迫り来る財政破綻、逼迫する企業環境、窒息しそうな地方経済、何もかもがもは
>や限界に近い(ただ国民の暮らしぶりという観点からは破綻がそこまで表面化してい
>ない)。だが、あるべき姿に向けた社会改革を行い始めると全国民が腹を決めたその
>時から、事態が打開され始める可能性がある。様々なシミュレーションを行っている
>が、そうなる可能性がないわけではないのだ。また、たとえそうならずデフレ・スパ
>イラルが進行するような事態になれば、非常事態モードに突入せざるを得ないことは
>前にも述べたとおりである。立ち直るにしても破局を迎えるにしても、時代の針をも
>う少し早く進めるべきだ、ということだ。
国家統治の一翼を担う方が、財政破綻ごときで負け犬になってはいけません。
貴殿もお認めのように、日本の産業的経済活動力は世界最強です。そのような日本経済をベースにしながら国民多数の経済条件を維持できない統治者は、どこの国であっても統治できないということになりますから、ご退出を願うしかありません。
「デフレ深刻化覚悟の改革路線」を採れば、財政破綻・企業環境の悪化・地方経済の窒息はますます深化し、表面化していない(とは思っていませんが)国民の暮らしぶりの悪化も際だつようになります。
これは、ああだこうだ言うより、「大恐慌」に立ち向かったフーバー政権とルーズヴェルト政権大統領の政策を検討すればわかることです。
「デフレを解消する改革路線」のみが、“あるべき姿に向けた社会改革”も可能にします。(痛みが軽い政策こそが、「デフレ不況」を正しく解消する政策なのです。そして、その政策が内包する意味を覚ることで、“あるべき姿に向けた社会改革”にも真剣に取り組むようになります)
「デフレ深刻化覚悟の改革路線」を実施すれば、“あるべき姿に向けた社会改革”の看板だけが廃墟の上に残ることになり、“あるべき姿に向けた社会改革”の看板には唾が無数に吐きかけられることになるでしょう。
「たとえそうならずデフレ・スパイラルが進行するような事態になれば、非常事態モードに突入せざるを得ないことは前にも述べたとおりである。立ち直るにしても破局を迎えるにしても、時代の針をもう少し早く進めるべきだ」ということについては、共通的了解内容である日本経済及び世界経済の現状認識と将来予測に立てば、98年を転機として、非常事態モードに突入し、その度合いがさらに深まっているという認識が必要です。
非常事態モードは待つべきものではなく、既に陥っているモードです。
政治状況から、“破局を迎える”ことなくして政策の変換ができないのであれば、有無を言わさず一気に破局を導き出すということも必要なのかも知れませんが、「第1の敗戦」の二の舞ですね。
自己認識も経済論理や国際情勢の認識もできない愚かな統治者があいも変わらず日本を支配していることになります。
>他方、現実の政治はといえば、明確に改革路線を進められるでもなく、デフレ打開を
>打ち出すでもなく、グズグズと日和見的な政策に終始している。外科手術を先に延ば
>せば延ばすほど痛みは増すのだが、「みんなの民主主義」だから仕方ない。愚昧な政
>治家には10歳の子に分かるように説明する経済理論も馬耳東風だ。また、最初から
>「政治家の信念として」説明に耳を貸さない頑迷固陋な政治家も多い。
愚かな統治者があいも変わらず日本を支配しているということですね。
ですから、「時代の針をもう少し早く進める」ことはできないと判断した方がいいでしょう。
そして、「経済理論も馬耳東風」の政治家でも少しは理解できるよう「微温的な政策群」のなかからよりましなものを選択して状況を変えるしかないと思われます。
>日本の現状を「敗戦」とまで見るかどうかは議論の分かれるところかも知れない。誰
>に(何に)対して負けたのかという議論もあろう。しかしその議論はひとまず置いて
>も、(経済の観点から見た)先の敗戦を出発点とする一つの時代が終わったという認識
>は決定的に重要なのではないか。
「戦後世界経済構造」が終焉を迎えたという認識は極めて重要です。
今時の「デフレ不況」は、長期波動説に立ったとしても、いつかは解消されるといった類のものではありません。
「大恐慌」が起きた歴史段階では、世界の経済構造を根底から変えるという解決余地がありました。
しかし、現在の世界には、そのような構造変更を行う余地は極めて限られたものしかありません。
今後顕在化すると予測している「世界同時デフレ不況」は、「大恐慌」よりも深刻な経済条件のなかで進む経済事象であるという認識が必要なのです。
これは、究極的には大戦争によって解消された「大恐慌」よりもずっと難しい政策的舵取りが求められることを意味します。
>新しい時代を迎えるにあたっての脱皮は社会に激痛を与えるかも知れない。しかし、
>それを我々は我々の手で断行してゆかなければならない。前述した敗戦のアナロジー
>ではないが、今度は他国に強制的に外科手術を強行されるようでは情けない。この想
>定を絵空事と笑わない方が良い。世界市場あっての日本であり、これだけグローバル
>化が進み密接化した諸国間関係にあっては、「有事」には日本の主権を制限する包囲
>網はすぐに整うと見るのが現実的である。
以前も書きましたが、同じような危機感を持っているので、このような書き込みを継続しています。
しかし、一部ではなく多数に激痛を与える政策は、「他国に強制的に外科手術を強行される」ことにつながるものです。(一部に痛みを与える政策は、本人は激痛だと思うかもしれませんが、損をしたというレベルのものです)
現在でも、アメリカ合衆国の51番目の州になった方がいいとか、外資に買い取られたり、米国人を経営者に迎えたほうがいいという考え方が少なからずあります。
これまでの政策過程でも多数に痛みを与えていますが、「デフレ深刻化覚悟の改革路線」を採れば、忍耐力(諦観)が強い日本人の多くはその激痛に2年間は耐えるかも知れませんが、3年目以降は、より激痛を受けることになるとも知らずに、上述の考えに一気になびいてしまうと予測します。
(そのような宣伝活動も行われるでしょう)
米国が経済が破綻しかけている日本を51番目の州にすることはないでしょうが、仮にそうなったとしても平均的生活水準は切り下げられます。
国民経済が破綻しかけている日本に対して行うことは、収益が見込める企業を安く買収することであったり、手入れ(切り捨て)をすれば高く売れる企業の買収であったり、破格値で買える企業を手入れして想定投資収益に見合う利益が上げられるようにしたりといったものです。
米国をベースにする彼らにとって、日本は母国でもないし日本経済も国民経済ではないのですから、そこからどれだけ利益を上げるかを考える対象でしかありません。
『「有事」には日本の主権を制限する包囲網はすぐに整う』現実を避けるためには、「デフレ不況」を解消するしかないのです。
「デフレ深刻化覚悟の改革路線」は、外国の介入と進出から生まれる悲惨な現実への道を自らが用意するものでしかないのです。
デフレ・スパイラルは、放置しているだけでどんどん進んでいきますが、デフレを解消しようとしたら、その悪化の度合いに応じて、より強硬な政策を採らなければなりません。
強硬な政策は、国内を分断し、激しい政治的混乱を招くものです。それが、外国の介入を招く契機にもなりかねません。
日本国民が持つべき覚悟は、改革に伴う激痛ではなく、自分自身そしてその経済的基盤である国民経済を維持するための国内政策を実施するためであれば、外国の介入や干渉を断固はねつける意志だと思っています。
※ IMF管理下の予測政策が投稿されていて、ローマ字表記ですがたぶん貴殿のレスだと思われるものが投稿されていますが、端的に言えば、あのような政策内容は、「国債利払い停止」を除けば、国際金融家が貸し出しの回収を維持するために当該国に押し付ける政策でしかありません。
自立した世界最強の産業国家であり世界最大の債権国である日本の統治者であれば、鼻で笑ってゴミ箱に投げ捨てるべきものです。
(イヤミで言えば、国債利払い停止を除き、米国にこそ適用しなければならない政策と言えるものです)
>既に公表済みのデータをじっくり冷静に検討すれば、誰でも同じ結論に至るはずだ。
行き詰まった経済状況をさらに悪化させる政策がほとんどだという結論に至らなければならないと思います。
需要を減少させることで供給を減少する政策ばかりで、首吊りを始めた人の足を引っ張る政策のオンパーレドだと言えます。
>日本経済について楽観的な長期見通しができる者がいればぜひ公表して戴きたいもの
>だ。即座に論破してさしあげる。
現在の構造という条件であれば、「日本経済について楽観的な長期見通し」を持つことはできません。
しかし、現在の構造であっても、政治的壁をクリアすれば、痛みが少ない方法で現状よりはましな経済状況にすることはできます。
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【「匿名希望」氏とのやり取り経過】
あっしら:『Re: 中尾主計官殿、いくらでもご説明しますよ』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/198.html )
匿名希望氏:『ご説拝聴しておきます。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/199.html )
あっしら:『Re: 「デフレ不況」を克服しないで「財政危機」を克服することはできません』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/211.html )
匿名希望氏:『Re: 「デフレ不況」を克服しないで「財政危機」を克服することはできません』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/236.html )
あっしら:『Re: “魔法”はないが“名医”や“合理的手法”はあります 』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/249.html )
匿名希望氏:『大変よく分析されており、感銘を受けました』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/251.html )
匿名希望氏:『簡潔な反論』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/279.html )
あっしら:『“微温的政策”は「デフレ不況」克服の出発点だと考えています』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/307.html )
匿名希望氏:『私はこう考えます。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/324.html )
あっしら:『「匿名希望」氏へのレス:現状なお、「第2の敗戦」ではなく「勝者の蹉跌」』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/356.html )
匿名希望氏:『これからの日本の行方はイバラの道。それでも進むしかありません。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/358.html )
あっしら:『Re: 「勝者の蹉跌」を「第2の敗戦」にしないために』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/370.html )
匿名希望氏:『デフレについて』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/386.html )
匿名希望氏:『榊原論文』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/480.html )
あっしら:『「匿名希望」氏へのレス:今、日本と世界が問われていること 《“政府紙幣”構想についても》』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/492.html )
匿名希望氏:『佳境に入ります』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/513.html )
あっしら:『“経済政策”論議に首を突っ込むようになったわけ』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/535.html )
匿名希望氏:『ご回答ありがとうございました。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/569.html )
あっしら:『“政府紙幣”構想を弄ぶ 《本家「榊原論文」は未読》』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/558.html )
あっしら:『中央公論』7月号掲載の榊原論文を評す [現状認識編] 〈「匿名希望」氏のレス期待〉』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/838.html )
匿名希望氏:『業務時間だが、ざーーーっと書いてしまった』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/926.html )
あっしら:『「匿名希望」氏へのレス:お金の使い方を知らない日本人への対処策』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/939.html )
匿名希望氏:『貴殿の経済の捉え方に概ね同意します。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/960.html )
あっしら:『「匿名希望」氏へのレス:ケインズ的延命策の陥穽 《ケインズ主義は「近代経済システム」の“死期”を早めた》』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1118.html )
匿名希望氏:『このレス及び関連の添付論文を拝見し、唸ってしまいました。』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1154.html )
あっしら:『“政府紙幣”は産業主義と金融主義の全面対決を引き起こす』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1168.html )