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(回答先: まとめてレス 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 9 月 27 日 05:40:46)
わが国の国際戦略について、思いつきながらいろいろ”提言”してきた者として匿名希望さんに一言。まあ「そういう冷徹な現実が無視できるのは子供だけである」という子供からの提言です(笑)。
恐らく、匿名希望氏は今のキャリアの中では、上質で性格も真面目な「高級官僚の卵」と推察します。それだけに、官僚機構特有の発想の限界が(本人は自覚していないでしょうが)、あざやかに露呈している、と思われます。
もちろん、最大の限界は「コンサバティビズム」です。昨日のごとく今日もある、世はなべてこともなし、というのが、官僚(為政者もそうでしょうが)にとっての理想です。
戦後の対米追随路線を肯定的にみれば、確かに「最も有効な国際戦略だった」という評価はできるでしょう。アフガン、イラク問題に絡めて「戦前、あれだけ反米気運を煽った日本が、戦後、マルクス主義の影響を受けた人々を除いて、親米一色に豹変し、文化的にも、アメリカンカルチャーに席巻されたのは、やはり、米国の軍事力と2発の原爆の怖さが、日本人の心の底に強く刷り込まれたせいだ」という意見があります。つまり、圧倒的な軍事力は、民族のメンタリティすら変える、という主張です。現在の米政権のハードライナーたちやキッシンジャーの脳裏にはあるでしょう。先制攻撃理論にも影を落としている、と思われます。
しかし、言うまでもないことですが、バーゲニングパワーなしには、交渉はできません。湾岸戦争時のように「100億ドル出す」というのもひとつのオブション、バーゲニングパワーです。100億ドルを出せない国には、こういうオプションは選べませんから。
同様に、実体のない、一種のバーチャルカードであっても「チャイナカード」等を(あるように)見せるのも、バーゲニングパワーです。攻撃、破壊は得意でも、その後の統治・管理のグランドデザインがどうも描けない「ハードライナー」主導の戦略(まあ、正確には軍略でしょうが)は早ければイラク問題で破綻するでしょうから、現時点での米国の世界戦略をそう重視する必要はないでしょうが、もう少しソフト化されたユニラテラリズムそのものは、もう少し長く米国の基調になりそうな気がします。
そこで、匿名希望氏のような主張で、どこまで行けるのか。官僚さんはどうしても「これまでうまくいって赫々たる成果をあげてきた路線をなぜ、変更する必要があるのか」という発想から脱皮できません。この主張にも「一片の真実」はありますが、既成秩序(アンシャン・レジーム)の耐用年数が来た時には、ダメです。経済・財政では、この問題が解決できずに、10年以上、苦しんでいるのですが、国際戦略・外交も「スキームのきしみ、フリクション」ははっきりと生じているわけです。もう米国礼賛では行けません。これは反米主義とは違います。
副島隆彦氏らがいうように、ハードライナーといっても、かってのブキャナンのような孤立主義(アイソレーショニズム)と、キッシンジャーなどが最近、主張している「もう一回、反米的な地域は植民地化してしまえ」という一種のオーバーコミットメント主義が混在しており、イラク問題では、両者の利害が当面、一致して、パウエルや民主党の「外交有線主義」とぶつかっているわけで、ハードライナーに亀裂が生ずる可能性も大きい。
現実の国家間関係とは別に、「どんな国も敵対国、仮想敵国になりうる」との想定で、相手の弱点を研究しておくのが、外交、国家戦略の基本でしょう。前にもいいましたが、中国の1人当たり所得が米国やわが国に迫れば、はるかに遠い米国より、中国本土を日本製品の主要マーケットとし、経済的にも、中国との関係が最重要になっても何の不思議もありません。
「中国は警戒すべき国だ」といった議論は、どこの国にも通用するわけで、「米国は警戒すべき区に他」とも言えるわけです。
別に中国でなくとも、ロシアでもどこでもいいわけですが。こういう提起そのものを「危険」というようでは、「日本は米国の51番目(で良かったのかな)の州だ」ということになるでしょう。リスク管理を重視し過ぎて、マイナーチェンジも恐れるようになっては、おしまいです。キャリアの方々に、フランス革命の時のダントンの言葉を贈ります。「大胆に、さらに大胆に」