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(回答先: トロツキズムとネオコンについてのナイーブな疑問 投稿者 宇佐大神宮 日時 2003 年 4 月 08 日 21:13:00)
宇佐大神宮さん、こんばんわ。
1.「『労働者階級による世界革命』後の世界は、最善でも、現在の多くの国民が形式的主権者でありながら実質的には被支配者となるというものです。」 について。
確かにソ連・東欧圏がどのような社会であったかを見れば、多くの国民が「実質的に被支配者」の社会であったことは明らかです。しかし、トロツキーはスターリンとの権力闘争の中でスターリンが権力を握ればそのような社会になることを繰り返し警告していたと思います。したがって、ソ連・東欧の社会についてはスターリンの責任ではあっても直接的にはトロツキーの責任ではないと思います。トロツキーは少なくとも彼の主観においてはソ連・東欧圏のような社会をつくることに反対した人物であったと思います。この点いかがお考えですか?
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理念を現実化することがいかに困難なものであるかを物語る格好の実例が、プロレタリア独裁=労働者を基礎とした徹底した民主主義を掲げた共産主義革命後の諸国家だと思っています。
好意的に解釈すれば、トロツキーは、思想家(ロマンチスト)であっても行政官僚(リアリスト)ではないと評価化しています。
トロツキーは、実際に統治指導者の地位には就きませんでしたが、第一次世界大戦のドイツとの講和条約に曖昧な態度を取りました。世界革命を進めるためにドイツとの戦いを継続したいと主張する一方で、平和とパンを掲げて達成したロシア革命の“公約”からそれが困難だと考えました。(英国が強大化するドイツ帝国を叩く目的で始めた第一次世界大戦で「世界革命」を追求できると真顔で考えていたのなら錯誤した思考であり、素直に考えれば、英米仏に与して戦争を継続したいと考えていたと思われます)
トロツキーに近い革命家は、文化大革命=永続革命を発動した毛沢東です。
「文化大革命」は、生徒や学生そして革命的労働者を動員して知的革命エリート(走資派・実権派)を追い落とそうとした政治運動ですが、政治運動主義に辟易した国民に支えられた知的エリートによって崩壊させられました。
多くの人は、日々の生活を政治活動で支配されるよりも、必要なだけ働きあとは家族と楽しく生活したいと思っていると推測しています。
それが現実であれば、トロツキーや毛沢東のような革命ロマンチズムは、空回りするだけで、逆に人々の間に厳しい軋轢を生むことになります。
また、国有化された産業の近代化を是とするマルクス主義的政治運動は、そのことによって知的エリートの官僚的支配を必然化させます。
そのような国有産業の管理は、強固な国家官僚の存在なしでは継続できないからです。
個々の職場にある労働者評議会やその全国組織が、そのような管理をできると考えるのは夢想です。
さらに、強大な軍事力が「共産主義国家」を敵対視してきたという歴史的現実もあります。
それらから防衛するという課題でも、専制的な軍事機構が必要になります。
ボルシェヴィキが秘密結社的専制組織論を基礎としていたように、軍事的活動を成功させるためには、民主主義ではなく専制主義が求められます。
空虚でロマンチックな言葉は耳触りがいいかもしれませんが、それが現実性を持つかどうかはきちんと吟味されなければならないと思っています。
(ブッシュ政権が「イラク侵略戦争」で名分として掲げている、“自由”や民主主義も同じです)
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2.「利権屋でありながら、世界的に普遍化すべき理念・価値観・制度・政策をきちんと持っているのがネオコンです。」について。
ネオコンの持つ「理念・価値観・制度・政策」とはどのようなものですか?トロツキズムと共通の内容があるとお考えですか?ネオコンが「産業国有化を持ち出し、それを社会主義政策だと位置づけ」ているということは始めて聞きました。具体的にはネオコンはどのような政策を打ち出しているのでしょうか?また反共意識の強い米国において「社会主義」という用語が反発無く受け入れられているのでしょうか?
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ネオコンは、自由主義経済・個人の自由・国家の社会への不介入を価値観的基礎とし、その実現形態をアメリカ合衆国の制度や政策だと考えています。
そして、そのような価値観や制度・政策を世界化したいと考えています。
ネオコンが「産業国有化を持ち出し、それを社会主義政策だと位置づける」のは、彼らがかつて民主党リベラル派であることからそれほど違和感があるとは思っていませんが、現段階で社会主義政策を打ち出しているわけではありません。
ネオコンに限らず世界支配層は、産業資本主義が終焉を迎えたという認識を持っています。(これは、産業の発展を通じて貨幣的富を拡大することができない時代に入ったという意味です)
このような経済状況のなかで貨幣的富を拡大する方策は、産業を国家に売り払い、従来の国家運営や産業経営にお金を貸して利息を得ることにならざるを得ません。
倒産することができない国家に膨大な借金(国債)を負わせ、それから得られる利息収入で貨幣的富を拡大することをめざします。(それ以外には、クレジットカード(電子決済を含む)や住宅ローンなど個人から金融利得を吸い上げることを強化します)
戦前の「大恐慌」でニューディール政策が認められたように、別に、アメリカ国民は、社会主義が嫌いなわけではありません。
「反共」意識そのものがプロパガンダで醸成されたものですから、新しいプロパガンダを展開すれば、社会主義的政策も素直に受け入れられるようになるはずです。
また、社会主義政策と言っても、個人事業や政治的民主主義は認められるはずなので、「共産主義国家」だと思う人はいないはずです。
(ネオコンもしくはネオコン継承者が、産業国有化政策を社会主義政策と命名するかどうかはわかりません)
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3.「理論以前に、レーニンやトロツキーの金主(パトロン)が誰であったかを確認すれば、彼らの“素性”や“狙い”は推定できます。」について。
私は、レーニンやトロツキーは“真面目な”革命家だと思ってきました。したがって彼らに対する批判は、彼らの思想や理論に対して“真面目に“行うべきものと考えてきました。具体的に彼らのパトロンが誰でありそれを証拠立てる文献にどういうものがあるのか教えて頂けませんか。
あっしらさんは、マルクスについてもレーニン・トロツキーと同様のパトロンに雇われた存在とお考えですか?もし「マルクスは別だ」とお考えの場合、マルクスから何か学ぶものがあるとお考えですか?
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“真面目な”革命家であることと、国際金融家がパトロンであることは別に相反することではありません。
(国際金融家が利益を極大化できる世界をつくることが、世界の人々の幸せにつながると考えていた可能性もあります。日本共産党の党員の多くも、自分の犠牲をものともせず、弱者を救済したいと考えているはずです)
具体的な金融家の名称は今提示できませんが、トロツキーがニューヨークに在住しニューヨークの金融家から資金をもらってロシアに渡ったことは確かです。
レーニンの、封印列車によるロシアへの帰国は有名な話です。封印列車には国際金融家が用意した金塊が積み込まれ、通過国の官憲の査察も受けずに無事ロシアに入りました。
レーニンもトロツキーも、目的のためには手段を選ばない人たちですから、国際金融家から資金を受け取ることを隠し立てしていません。
(貧乏人であったレーニンやトロツキーが、自前で革命資金を用意できるはずはありません)
スターリンだって、国際金融家とは良好な関係を維持しています。そうでなければ、通貨不足のソ連を近代化することはできません。
スターリン後のソ連も同じです。
ソ連の脅威を真に憂えていたのなら、国際金融家にソ連向け融資をやめさせるのがいちばん手っ取りばやかったのです。
マルクスも国際金融家のパトロンがいたと思っています。(そうでなければ、19世紀前半のロンドンで安全に亡命生活を送ることはできなかったはずです)
また、「資本論」で理論的に説明した剰余価値=産業資本家の搾取は、まったくのデタラメで、労働者の憎悪を産業資資本家に向けさせるとんでもない詐欺的プロパガンダです。
そうであっても、マルクスが、「近代知性」の最高峰に位置していると思っています。
「資本論」も、現実認識の方法や説明体系の作り方などで高く評価しています。
(それほど優れたものであったからこそ、今なおマルクスの理論に縛られている人が多くいるのだと思っています)
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4.「ネオコンは、否応なく喪失することになる米国の覇権性を最後に活用するかたちで『中東侵略戦争』を遂行しています。」について。
現在のジャーナリズムの常識的な理解は、ネオコンは米国一国による帝国的世界支配をつくろうとしている、というものだと思います。そのためジャーナリズムでは「アメリカ帝国」という言葉を使うことが増えています。あっしらさんは「アメリカ帝国」なるものは極めて時代限定的なここ数年の現象に止まるとお考えですか?
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「アメリカ帝国」は、戦後から現在に至る歴史段階にこそふさわしいものです。
強固な経済力を基礎としない国家が、世界覇権を維持することはできません。
年間5千億ドル(約60兆円)の経常収支赤字を計上し、連邦債務が6兆ドル(約720兆円)を超えしかも、その過半が対外債務という国家が、世界規模での軍事的展開力を維持することはできません。
戦後すぐの米国は、世界の貨幣的富の70%以上産業力の過半を誇っていました。
このような経済力が戦後世界における米国の覇権を支えたのです。
ブッシュ政権の財政政策を見て、返済するつもりがない債務を積み上げようとしていると認識しない人は、経済論理がわかっていないと思っています。
米国が対外債務のデフォルトを宣言したときに、米国の覇権は消滅します。
(それがいつになるかは、ファイナンスの変化によるのでいつだとは予測できませんが、それほど先の話ではないと思っています。日本が経常収支赤字国に転落したり、オイルマネーが還流しなくなれば、あっというまに覇権を失うことになります)
ネオコン=ブッシュ政権(ブレア政権)=世界支配層は、日本などのおかげでなんとか維持できている米国の覇権性を最大限利用して、新しい世界を生み出そうとしていると見ています。
ジャーナリズムが「アメリカ帝国」なるものを喧伝しているのは、過去に引きずられて現実を見ていることや経済論理を知らないことに拠ると思っています。
冷徹な経済論理が貫徹している「近代世界」で、経済論理に抗うかたちで覇権を維持し続けることはできません。
(米国はゴールドを8000トン程度保有していますから、対外債務をデフォルトすることでドル為替本位制が崩壊しても、金本位制的新国際通貨システムをつくりあげていけば、日本よりも優位な経済条件を手に入れることができます。日本のゴールド保有量は120トン程度です。覇権を喪失したと言っても、米国が最強国であることは変わらず、新国際通貨システムをつくるときも大きな発言力を維持します。)