596さんの「貧富」のアップから始まったやり取りのレスですが、できる多くの人の議論参加を望んでいますので、単独のかたちで書き込みをしました。
このレスに対応する元の書き込みは、596さんの「Re:レス1:レーガノミックスと92年以降の“米国の繁栄”」( http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/368.html )です。
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■ クリントン政権は“レーガノミックスの否定”で経済を回復させた
>レーガン時代の大減税と経済規制の撤廃はクリントンの時代になって効果が出てきま
>した。
>レーガンのせいでアメリカが悪くなったのではなく、レーガノミックスの効果が10
>年ほど遅れてやってきたのです。
クリントン政権時代の“米国経済の繁栄”とりわけ95年以降の「根拠なき熱狂」を支えてきたのは、日本を中心とする外国投資家の米国証券市場への投資拡大です。
しかし、それがすべてではなく、クリントン政権が、レーガノミックスを否定する税制改革=高額所得者増税を行ったのが端緒です。
クリントン政権は93年の「経済再建教書」演説で増税を打ちだし、高額所得者への所得税増税は14万ドル以上の所得者(課税所得10万ドル以上)にたいして限界税率を31%から36%と5%増税、さらに、25万ドル以上の所得者にたいしては10%の増税を行いました。
クリントン政権は、日本を中心とした外国投資家の投資拡大に支えられながら、高額所得者への増税で財政歳入を増やすとともに歳出の伸びを抑制し、財政均衡から財政黒字を実現したのです。
《米国の財政状況推移》[それぞれの値は対前年比・財政赤字の()内は億ドル]
歳入 歳出 国防費 財政赤字 政権
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1980年 11.6 17.2 15.2 81.3( 738)
81 15.8 14.8 17.5 7.0( 790)レーガン第1期
82 3.0 9.9 17.7 62.0(1,280)(レーガノミックス)
83 -2.8 8.3 13.2 62.3(2,078)
84 11.0 5.3 8.3 -10.8(1,854)
85 10.1 11.1 11.1 14.5(2,123)レーガン第2期(税制改正)
86 4.8 4.7 8.1 4.2(2,212)前年から「プラザ合意」政策
87 11.2 1.3 3.1 -32.3(1,498)
88 6.4 6.0 3.0 3.6(1,552)
89 9.0 7.4 4.5 -1.7(1,525)ブッシュ
90 4.1 9.8 -1.4 45.0(2,212)
91 2.2 5.7 -8.7 21.8(2,694)
92 3.4 4.3 9.2 7.8(2,904)
93 5.8 2.0 -3.3 -22.5(2,551)クリントン(税制改正)
94 5.8 3.7 -3.3 -20.3(2,033)
95 7.4 3.7 -3.3 -19.3(1,640)
96 7.5 3.0 -2.3 -34.5(1,075)
97 8.7 2.6 1.8 -79.5( 220)クリントン第2期
98 9.0 3.2 -0.7 −( +692)
99 6.1 3.0 2.3 −(+1,244)
2000 10.8 5.0 5.1 −(+2,367)
■ レーガノミックスはわずか3年で破綻した
>レーガンが大減税をやったにもかかわらず、それほど歳入が減らなかったのは大減税
>で好景気になったから。
82年には、5%というインフレ状況で歳入がマイナス(GDPもマイナス2%)になっているのに、歳入がそれほど減らなかったと主張ではできません。
レーガノミックスは、元々、高額所得者や企業に対する減税を行えば投資が活発化することで、景気が回復し減税以上の歳入増加がはかれるというフレコミのものです。
81年(実質82年)から84年まで政策として実施されたレーガノミックスの“破綻”が、85年の「プラザ合意」(ドルの主要通貨に対する50%(半額)の切り下げと諸外国への低金利の押しつけ)と“増税”につながったのです。
レーガノミックスは、実質的に言えば、82年から84年までの3年間しか実行できなかった政策です。
レーガン政権及びブッシュ政権時代は、工場の海外移転とリストラによる産業の衰退に見舞われ、米国経済の“停滞期”として評価されています。米国の産業衰退を少なからず抑えたのは、貿易摩擦で“脅迫”されて米国に進出した日本の自動車メーカーです。
規制緩和政策はその後も続いていますが、航空業界については、一時的な新規参入を実現したが結局は寡占化と運賃上昇を招き、エネルギー関係については、現在なお続くカルフォルニア電力危機や「エンロン破綻」を招いたのです。
>レーガンの小さな政府化は国民が税の増大に我慢ならず反乱を起こしたから。
この意味はよくわかりませんが...
■ ソ連崩壊は「自国破壊者」による内部崩壊
>おかげでソ連がそれにつられて国防費を増大させソ連を崩壊に導いた。その点は国防
>費をアメリカが増やした効果がありました。
ソ連崩壊をレーガン政権の政策に帰するのは誤りです。
ソ連は、ゴルバチョフ政権の手で内部崩壊(解体)したのです。
ソ連崩壊の外的な要因をあげるとしたら、レーガン政権の政策ではなく、10年にわたる「アフガニスタン侵攻」と「チェルノブイリ原発事故」のほうがふさわしいでしょう。
ソ連は、ソ連圏を維持することには必死になっていましたが、米国の向こうをはって世界制覇をめざしたわけではありません。
ハンガリーやチェコスロバキアに対する軍事介入と「キューバ危機」・「ベトナム戦争」などに対するソ連の対応ぶりを比較してみればわかることです。
ソ連は、戦後生まれた“公認のソ連圏”から逸脱して、アフガニスタンに侵攻したことでドツボにはまったのです。
ですから、レーガン政権の軍拡路線はイヤなものであっても、それに対抗して軍事予算を増大させたわけではなく、軍事的には、アフガニスタンの泥沼の戦いでもがき続け苦しんだのです。
プーチン政権が戦略核兵器の削減交渉でブッシュ政権にずるずると妥協しているように、ソ連→ロシアの政権は、ソ連圏や自国が撃ち破られることになるのではないかという恐怖心を抱きながらも、基本的には「軍縮志向」なのです。
現在の北朝鮮と同じで、ソ連も、“戦時共産主義体制”が重荷であることはわかっていても、自国やソ連圏(防波堤)が撃ち破られるような軍事的対抗状況にはできなかったのです。
(アフガニスタンやかつてのベトナム・キューバを見ればわかるように、戦争好きの米国と言え、なんらかの難癖を付けなければ侵攻はできないし、侵攻しても勝利はできません。ソ連・中国・北朝鮮などは、あのような対米対抗的な軍備拡張に励まずとも、米国や同盟国が侵攻に躊躇するような兵器はちゃんと保有し、あとは米国民が侵攻を認めるような難癖を付けられないような政策を採り続けていれば、自国(ソ連圏)を防衛することができたのです)
一方の米国は、成熟した高度資本主義国家として、「軍拡」と「兵器輸出」が経済成長に大きく寄与してきました。
戦後の米国歴代政権は、自国の国防費増大と他国への武器輸出のために、「反ソ」・「反中国」・「反北朝鮮」・「反キューバ」という反共政策を唱え続けなければならなかったのです。
ソ連の「アフガニスタン侵攻」も、米国の巧妙な仕掛けということが言えるので、ソ連崩壊に米国が大きな役割を果たしたことは認めますが...それならカーター政権の成果ですね。
ゴルバチョフとエリツェンを中心とした「自国破壊」勢力が、ソ連を崩壊させたのです。
ソ連崩壊の直接的な引き金となった91年の“副大統領派のクーデタ”も、ゴルバチョフが知った上での茶番です。
ゴルバチョフやエリツェンがまともな統治者であれば、ソ連を解体させるとしても、あのようなドラスティックな崩壊ではなく、経済システムをとりあえず維持しながら、政治的な改革を行い、その後で、経済システムの改革を徐々に行うという手順で解体を行ったでしょう。
“無秩序の崩壊”のなかで、旧ソ連共産党幹部が生産設備や資源などを私物化し、経済全体を疲弊させてしまったのです。
百歩譲って、レーガン政権の政策がソ連を崩壊させたとしても、そのために軍拡に走り、政府債務を急増大させて自国経済の将来に危機的な種をまいたのですから、それは、“共倒れ”の道を選択した愚かなものです。
■ 米国政権は日本経済をしゃぶり尽くす
>アメリカの景気を良くするためには日本の景気を悪くする必要がありました。そのた
>め日本にバブルを引き起こし、バブル後の景気低迷を長引かせたのもアメリカではな
>いか、と思います。
おっしゃられている通りだと思います。
日本に実質0%金利という超低金利政策を押しつけて「デフレ不況」を続けさせ、日本の金融資産を米国に向けさせるとともに、「不良債権処理」で日本の資産を超破格値で買い叩きさらに買い叩こうとしています。
日銀や日本の投資家(銀行や生保など)が米国債に投資した資金のほとんどが返ってこないことにもなるでしょう。
■ 景気がいいときに悪くなったときの備えが必要
>バブル期には歳出を増やしたりせず、国の借金返済をすればよかった。小さな政府に
>すればよかった。
>バブル期には放っておいても企業が伸びるから放っておく。政府はひたすら財政の健
>全化に勤める。
>バブル期には減税しないほうが良い。
おっしゃられる通りだと思います。
景気には変動がありますから、良いときに悪くなったときに備えておく必要があります。
経済状況が景気が悪くなったときに「小さな政府」政策を行えば、経済状況がより悪くなり、そのしわ寄せは一般勤労者に向けられることになります。
「小さな政府」政策は、経済状況が良いときに行うべきものです。
バブル期に高額所得者・企業・株式取引・不動産取引を“増税”していれば、「バブル」自体を抑制でき、あのような破滅的な「バブル崩壊」を防げた可能性が大きいのです。
■ 株価の基調は税制で変えられない
>株に増税すれば株式相場が低迷します。産業が低迷します。
“将来の株価に対する思惑で動く”株式市場は、一定限度範囲であれば取引や売却益への増減税に影響されず、傾向的に変動するものです。
上昇基調のときに少々増税しても上昇率が少々抑えられる程度であり、下降基調のときに少々減税しても下降率が少々抑えられる程度です。
91年以降の株価低迷は、株式取引に関する増税はまったくなく、取引税が減税されるなかで続いているものです。
売却益に対する課税を減税しても、今後株価が下がると考える余剰資金保有投資家が多ければ、株価は下落していくのです。
株式市場が低迷していれば、時価増資が行いにくく、産業資本が負担の少ない資金を手に入れられないというのは現実です。しかし、現在の日本経済は、それ以前の問題として、供給力を増大させるような投資ができる状況にないのです。
株式市場での取引のほとんどを占める既発株式の株価については、銀行の財務状況や借り入れの担保(どっちにしても現状では銀行はたいした担保価値を認めない)に影響を与えるというものです。
実体経済が上向かない(「デフレ」を脱却しない)限り、株式に関わる税制をどういじっても(損失は補填するとか、株式を売り買いすればお金をあげるといったマイナス税は別として)、株式相場は低迷(下落)します。
■ 中低所得者減税でバブルは発生しない
>中低所得者への減税は余計にバブルを増大させるのではありませんか。
中低所得者は、基本的に生活に追われ、将来の不安のなかで生きています。
減税をしてもらったからといって株式や不動産に投資できるような人は、いても微々たるものです。
中低所得者が一生かかってローンを返済する条件で購入する不動産は、せいぜい自宅用のものです。
『株式市場の「バブル形成」に回された余剰資金部分を税金として徴収して中低所得者の税金を減税』するのですから、バブルは増大するどころか起きません。