(回答先: Re: 596さんは、「大きな政府」志向なのですか? 投稿者 596 日時 2002 年 4 月 06 日 23:12:40)
596さん、こんにちわ。
「小泉改革」の理論的根根拠になっている“レーガノミックス”は、596さんのように「構造改革をすると当分は成長率が落ちるのは当然です」とか「構造改革をすると当分は成長率が落ちるのは当然です」とは主張していないのです。
前回のレスでも、2度ほど書いたように、
“レーガノミックス”は、「企業減税や高額所得者減税を行えば、投資が促進されて経済活動が活発になるので大きな経済成長を遂げられ、税収も増えて財政も改善される」
というものです。
>アメリカ、イギリス、ニュージーランドは改革する前は累進課税が強くて低迷してい
>た。
>累進課税が強ければ好景気になる、というのは間違いです。
(>レーガンの構造改革が90年代の10年間の好景気につながったことは事実です。)
前回の主要論点であったブッシュ元大統領時代の不況を脱出した大きな要因としてクリントン政権の「累進課税強化」を取り上げたことに何も応えないまま、このような主張をされることに誠実さを疑います。
日本経済は、累進課税を強め、公定歩合を徐々に2%ほどまで上昇させれば、現在の「デフレ不況」からが脱出できます。
好景気というのは、規模の絶対額ではなく変動状況のことですから、「デフレ不況」を脱却した後も好景気が続くとは主張しません。
さらに言えば、好景気を良しとはしない価値観をもっているので、それを追求するような政策を採る必要もないと思っています。
抽象的総和的なGDPの値ではなく、多くの人々の生活ぶりがどうなのかが問題なのです。
人々の生活ぶりは、生産した付加価値の総和(GDP)がどう配分されているかで決まります。
GDPは、90%の人が所得を減らしたために前年よりもつましい生活を強いられたとしても、10%の人がより多くの奢侈や浪費に走ったり株式や不動産の取引を行うことで、成長する可能性があるものです。
(奢侈や浪費の拡大は、ニューヨークやロンドンを見てわかるように、大都市部を中心に高級レストランなど、それなりの新規事業が起き、雇用も発生します)
そのような状態を良しとするか悪いとするかは、人それぞれの価値観ですから、判断は自由だと思っています。
しかし、そのような成長は長続きしません。
奢侈や浪費はともかく、株式や不動産の価格を上げ続けるためには、インフレ政策を採るか、実質GDPを高水準で成長させ続けるか、90%の人の取り分をもっと減らすか、外(外国)から新たな投資家を引き入れるしかありません。
地価や株価がインフレ率と同じ価格上昇率であれば、価値的にはまったく変わりません。価値的に意味がある価格上昇を実現するためには、残り3つの組み合わせ(一つでも全部でも)が必要になります。
「横やりレス」さんが米国を例にもっと長期的な傾向として説明されたことですが、80年代の米国や英国では、90%以上の人が取り分を減らし、10%未満の人が取り分を増やすいう政策が実施され続けました。
しかし、サッチャーが退陣を強いられその後を襲ったメージャーが税制変更しなければならなかったり、ブッシュが大統領選で敗北しクリントンが税制変更しなければならなかったように、取り分の変更をしなければ収拾がつかない状況を迎えます。(ニュージーランドも、前に書いたように現在変更されようとしています)
日本の「バブル形成」は、低金利政策と通貨供給量の拡大だけではなく、企業が収益を拡大しているのに、“円高脅威”を盾にして勤労者の給与引き上げを抑えたことによるものです。(これは90%の人の取り分が減少することを意味します)
日本は、89年4月に消費税導入に伴う累進税緩和策を採った年に「バブル崩壊」が始まったのです。
596さんが言われるように、累進税緩和策が景気拡大に資するのであれば、89年から90年にかけて“バブル”が崩壊した理由は何でしょうか?
(「バブル崩壊」は仕掛けられたものと考えていますが、景気がさらに上向き続くという見通しであれば、そのような仕掛けは失敗します)
日本も同じ危険性をはらんでいますが、レーガノミックスやサッチャリズムによって、米国や英国は、産業が弱体化し、大都市以外の地域が衰退してゆきました。
これは、クリントン政権によっても防止できなかったし、メージャー政権やブレア政権によっても防止できませんでした。
これを端的に言えば、金融中心地や本社機構(技術開発センター)がある大都市は良くなるか変わらないままでいられるが、工場で栄えてきた都市は悪くなるというものです。
米国は、日本を中心とした外国からの投資のおかげで、現在までなんとか持ちこたえることができたのです。
英国は、たかだかロンドンシティの国際金融業務の拡大によるGDP的成長ですから、ナショナルヘルスケア制度の劣化・ブリティッシュレイルの破綻・郵便事業の行き詰まりなど、国民生活はさらに悪化しています。(日本のメディアがそのような現実をまともに報道してないだけです)
10%の人の懐が膨らみ、90%の人の生活が劣化するという状況のなかでも、経済成長は可能ですから、596さんが、それを好ましいと考えるなら、そのように意思表示してください。
596さんがそれを好ましいとするのなら、論議の焦点が変わりますので...。
>これはちょっとおかしいのではないでしょうか。
>2000億ドルの財政赤字は日本との人口比やGDP規模からすると日本は半分とみなす
>ことができる。日本に置き換えれば25兆円ではないでしょうか。
596さんは、インフレ率を考慮されていないようです。
年率7%のインフレで20年経過すれば、物価水準は2.7倍になります。
GDP規模で置き換えると、50兆円*2.7*5/9=75兆円です。
>私の親戚の歯医者さんは「仕事を多くすると税金が高くなるから、適当に仕事をする
>んだ。」、と言ってました。
ご親戚の方は、お金や奢侈にそれほど執着されない方でしょう。
お金のために働きすぎるのは賢明だと思いませんので、よろしいかと思います。
保険医であれば70%の経費率が認められるので、実質税率は、給与所得者(経費率は最低所得者で40%、平均的には30%、1千万円だと20%程度)に比べて格段に低いのです。
それでも脱税者が後を絶たないというのは、お金に執着している医者や歯医者はけっこうな数でいるでしょう。お金に執着する人は、違法行為もする可能性もありますが、税率が上がっても1円でも多い手取りが保証されるのなら、“お金儲け”に励むものです。
19世紀には物品税だけで所得税さえなかった「文明諸国」も多かったのです。所得税に課税が行われるようになっても、利益拡大活動は抑えられるどころか、ますます盛んになったのです。
>アメリカは金利が高いから、日本の資金がアメリカに行くのは当然です。日本は金利
>を高くすると、とたんに不景気になります。
金利が高い方に資金が流れることは当然ですが、あれだけの資金が米国に流れていることは問題です。
なぜなら、日本政府は、今年度だけで100兆円を超える国債を発行しています。米国の株式や債券に流れるというのは、それだけの「余剰資金」が国内にあるということです。もちろん、全額とは言いませんが、課税を強化してそれらの一部を吸い上げるべきです。
米国への投資で利益を上げて増やしたお金を日本に戻すことができればまだ救いがありますが、損失を招いたり、アルゼンチン国債のように紙切れ同然になる可能性が非常に高いと思っています。
銀行や生保は、自分のお金で米国に投資しているわけではなく、預かったり保険料として支払われたお金を使って投資しているのです。(大きな損失を招けば、“自己責任”という論理は突然のように消え失せ、この間の銀行救済と同じような政策をとることになるでしょう)
596さんが、「日本は金利を高くすると、とたんに不景気になります。」と言われる根拠をお示し下さい。
巷間言われていることを吟味しないまま繰り返さないほうがいいと思います。
>>596さんは、10年以上の不況と5年にもわたる「デフレ不況」に置かれている
>>日本でも、5年か10年かの「痛みに耐える時代」が必要だと言われるのでしょうか?
>財政出動による需要の喚起によって好景気にします。そうなれば銀行は立ち直り不良
>債権処理を自分でできるようになる。
一時的な「大きな政府」政策はいいでしょうが、いくらぐらいの財政出動をどういう方法で何年くらい行えば景気が好くなるとお考えですか?
>同時に大胆な改革によって不景気になる前に改革を終えてしまう。そうすれば痛みが少>なくて済む。
大胆な改革の具体的内容を示してください。
>そうなるためには自民党抵抗勢力を野党にしなければならない。現在の小泉政権では
>改革は不可能。
どこの政党が、596さんが言われるような財政出動による需要の喚起を主張していましたっけ?
>一時的に大きな政府になるとしても短期間です。
>最初に改革派だけで政権を作らなければなりません。
>革を次々と実行する。
> 改革派100%の政権なので作った改革法案がすべて通る。
596さんが提示されるであろう改革の内容を吟味した後でコメントします。
>大型の景気浮揚策を実行し小型バブルを起こす。平均株価が3万円以上になるように。
大型の景気浮揚策の内容をお示しください。
平均株価がなぜ3万円以上にならなければならないのかもお示しください。
平均株価3万円と言えば、“バブル崩壊”直前の値です。
ハイパーインフレを起こさずに平均株価3万円以上になるためには、できるだけ高値で売りたいと考えている株式保有者の厖大な売り圧力を上回る買いエネルギーを持続的に維持しなければなりません。
「デフレ不況」を脱却することがまず前提で、GDPの配分が企業や高額所得者により多くなるような政策を採った上に株式購入優遇税制を採り、公的資金も全面的に株式の買いに出動しなければ達成できないでしょう。
達成しても、そのような平均株価を維持しなければ、「バブル崩壊」の二の舞になります。株価が高くなればなるほど、その株価水準を維持するための買いエネルギーは大きくなります。そのためには、さらに、GDPの配分が企業や高額所得者により多くなるような政策を採った上に株式購入優遇税制を採り、公的資金も全面的に株式の買いに出動しなければなりません。
こんなことにどういう意味があるとお考えなのか、是非とも知りたいと思っています。
> これが最後だと思って財政出動による積極的な需要喚起をする。
GDP成長率は規模ではなく、変動傾向です。
どれほどの規模の財政出動なのか明示がないのでわかりませんが、ニュアンスから推測すれば、それを止めた年からマイナス成長に陥るでしょう。
> 景気が良くなれば銀行の不良債権処理は銀行自身でできるようになる。
他の条件を無視すれば、景気が良くなれば、現在の不良債権の多くが通常債権に変わるので、不良債権処理の必要額も減り、少なくなった不良債権の処理も可能になります。
>公務員の3割削減、公務員給与を3割カット。
削減部署をきちんと考えれば3割削減でも、現在のサービス内容を保っていける可能性はあると思います。
しかし、公務員給与を3割カットについては、一律なのか対象限定なのか明示がないので、コメントしようがありません。
>一気に構造改革。情報公開。地方分権。特殊法人と郵政の民営化。
情報公開は景気状況に関係なくできることだと思います。
GDP統計やいくつかの悪い経済データを公表しない態度に改革を掲げる「小泉政権」のまやかしを見ています。
地方分権には反対ではありませんが、内容を具体的に示していただければ幸いです。
個々の特殊法人の意義を見直し、整理を行うことも必要だと思っています。
従来から言っているように、郵政の民営化は必要性を認めません。
>消費税は1%に減額。毎年1%ずつ増加。消費税の安いうちに消費しようという気に
>なる。
これは、前にも説明しましたように、消費税率の変動に伴う規則的な景気変動をもたらし、消費税が高い期間は不況に陥るもので、百害あって一利なしです。
その説明に対する反論をまだいただいておりません。
念のために私の説明を再掲しておきます。
「消費税を5%から1%に減税すれば、7兆円ほどの税収がふっとびます。それを何で補填するのですか?
1年ごとに消費税が増税されることがわかっていれば、耐久的消費財は、1%や2%の消費税の時に売れ、3%以上になればがたっと売れなくなるでしょう。そうなれば、不況ですから、また消費税を1%に戻さなければなりません。
家電メーカーなどの生産計画は、596さんが言われる消費税率変動に合わせたものになるでしょうね。低いときに増産、高いときに減産という計画です。
このサイクルを経験すれば、「不況待望論」さえ世に満ちるようになるでしょう。」
>法人税は10%に減額。日本企業をその分だけ有利にさせる。企業が良くなれば国民
>も潤う。
企業が良くならなければ国民の多くが潤わないのは確かですが、企業が良くなれば国民も潤うというのは一概に言えないことです。
企業が利益を増大させても、それを手元に残し、株式や不動産に対する投資に回せば、利用価値は変わらない土地の値段が上昇することになって勤労者の自宅購入が難しくなったり、バブルの形成と崩壊という経済事象の再現になる可能性もあります。
<法人税の改正>
法人税に累進的要素を加味する。例えば、申告所得/従業員数を基準に、従業員一人当たりの所得金額が増えるにつれ高くなる5段階程度の累進課税とする。(失業対策の一環で、より多く雇用したりより多く給与を支払う企業は、法人税が軽減されることになる。この値によっては、現在の法人税税率よりも低くなる場合を設定する)
但し、法人税税率は、該当法人が支給している報酬・給与を受け取る給与所得者の最高税率を下回らない税率を適用するものとする。(個人事業主などが法人を設立することで税金を低く抑えるのを防止する)
新規の設備投資(固定資産の償却に伴うものではないもの)については、時限的に、単年度での一括償却を認める。設備の更新については、時限的に、短縮した期間で償却できるようにする。
>景気浮揚策が冷める頃には改革を終わっていて、持続的な景気上昇が期待できるよう
>になる。
どのような改革が行われるのか不明の部分が多いので、そうなるかどうかコメントできません。