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「戦前」をめぐる論議 投稿者 書記長 日時 2002 年 10 月 22 日 18:59:46:

↑奉天(15年12月撮影)
 あっしらさんの『書記長の言説は「寝言」であり、書記長は
「こわれている」か』 日時 2002 年 10 月 18 日 17:46:54
:に対して、要望もあるようだし少し気がむいたので一応反応し
てみたいと思います。

>日本が名誉ある自存した独立国家として存続するためには、
>朝鮮半島を足掛かりにした大陸での権益確保が不可欠である
>という認識のもとでの「富国強兵策」が一貫として採られて
>いた。

 明治初期以来の国際環境、特に東アジア情勢から言えば、植
民地経営による権益の確保という側面よりも安全保障上の必要
性の方がはるかに大きかったはず。当時のロシア・ソ連は日本
だけでなく世界中から恐れられていたし、実際に危険な侵略者
だった。今でも北欧やトルコで「トーゴー」が感謝されてるの
はあの当時の東欧やトルコ、北欧諸国はロシアの脅威に悩まさ
れていたからだ。ヒトラーの談話か何かでも日露戦争で日本が
勝利すると子供のヒトラーの周りで子供たちが泣き出すシーン
がある。それがどこのヨーロッパの国の話か忘れたが多くの国
がロシアにおびえていたことがよくわかる。スターリン・ソ連
の侵略性・攻撃性については説明を要さないだろう。

>「大東亜共栄圏の思想」は、対米英蘭戦という国家総力持久
>戦を遂行するための価値観基礎及び軍事占領した地域の支配
>安定に資する理念と考えるほうが歴史的には妥当である。

 目に見えない実際の動機まで問題にするのだったら何とでも
言える。何を旗印として目に見える日本国民と世界に向けて掲
げたかは政治的にはとても重要なのだ。
 私は英米流の民主・自由主義というのは英米人の間で上下を
問わずかなり大まじめに信じられていると思っているが、それ
は何よりも英米支配層(独占資本家・王侯貴族)の市民支配・
世界征服・他国侵略の道具だと思っている。
 似たようなことはソ連のノーメンクラツーラと共産主義の間
にも成り立つだろう。とにかく大東亜宣言に見られるような「
大東亜共栄圏」や「人種差別反対」、「アジアの開放」といっ
た先進的な理念・スローガンを掲げて戦争をしたことには間違
いない。そして、実際にあの軍事行動がアジアの開放に結びつ
いたことは戦後の多くのアジアの指導者たちも認めている。ま
た、多大な被害をだしたインパール作戦は、自分たちのアジア
開放の理念を実行に移すために有志のインド人たちと一緒に行
ったという面が確かにある。それは実際戦後のインド開放に大
いに役立ったと言われている。

>大陸の地べたを取ることに「近代経済システム」の利益はな
>く、商品販売市場及び原材料調達市場の確保にこそ利益があ
>るということを軽視した。

 前から述べているように、第二次世界大戦前は世界大恐慌以
来、世界は「ブロック経済」体制に入っていた。ブロック経済
とは自国と植民地間の貿易以外の貿易には高率の関税障壁を設
けることを言う。あの当時世界中はすでに欧米諸国による一応
の世界分割は完了していて、植民地獲得競争のスタートがおく
れた日独伊はこれといった植民地をもたなかったため経済的に
追い詰められていったのである。他のブロックへ輸出すること
が難しいことに加え、ブロック内部の売買が優先されるために
そのブロックからの輸入も相手国側の関税や品不足から高くつ
いたのかもしれない。少なくとも植民地保有国の経済的・政治
的思惑によって容易に貿易制限や禁輸措置が行えたことは間違
いない。つまり、当時は「自由貿易」もそれを行う「アジア諸
国」も存在せず、原料調達市場の確保など自分の意志や通常の
努力ではできなかったのである。実際に大戦直前の日本は欧米
からの禁輸措置によって自動的に7ヶ月後には近代国家として
は燃料切れで崩壊するところまで追い詰められていた。当時の
東南アジア諸国はヨーロッパ諸国の領土だったのであって、日
本は東南アジア諸国を侵略したわけではなく、ヨーロッパと戦
いその領土を占領したのである。

>国家としては、国防政策(軍事)と国策(外交)の分離、陸
>軍と海軍の不統一、国際情勢の合理的な認識、産業力育成よ
>り目先の軍備を優先、現地軍司令部への統御欠如、責任ある
>判断の欠如、政・官・財の利益優先などをあげつらうことが
>できる。

 「国防政策(軍事)と国策(外交)の分離」など出来ない時
代だったし、少なくとも主観的にはある程度「産業力育成より
目先の軍備を優先」せざるを得なかったのだろう。戦争直前に
は日満ブロック経済により本格的な産業育成と国民経済の規模
の拡大をしなくてはならないことは当時の経済指導にあたって
いた軍人にも役人にもわかっていたのだが、開戦に間に合わな
かったのである。
 私のあそこで言いたかったことの中心は、「特殊状況下、も
しくはある一時期の日本社会・文明の問題点をあげつらって、
その時の社会体制や、さらに根本的に歴史的全体としての日本
社会・文明そのもの、さらにすすんでその政治主権・独自の文
明の独立までも批判・否定しようとするのは思考や態度として
はずさんであり本末転倒なものです。国家社会の独自な独立し
た主権・文明のありかたというのはそれ自体社会にとって最優
先で(時には命とか金とかを犠牲にして)追求されて当然です
。また独立した国家社会はあらゆる面において独自の独立した
変化発展をしうるのです。」ということだった。
 だから、あっしらさんが具体的な当時の日本の問題点や失敗
例をあげているのは、別に私の論への批判というわけではない

 私がそれを読んで思うのは、後になっていろいろ批判するの
は楽だが、実際にことにあたってその都度決断を迫られた人々
は厳しい条件と危険な状況の中で自分が国家の利益や理念に照
らしてベストと思えることを選択していかなければならなかっ
たのだろうなということである。あの当時は日本は今よりずっ
とまともな国だったので、ただ経済的利益と身体の安全だけを
基準に行動していたわけではなかったのである。

>(10万英霊のことを考えたらここで引くわけにはいかない
>と言って、300万の英霊を生み出す結果になる戦争継続を
>正当化する精神構造は、合理性を失った倒錯としか言い様が
>ない)

 それが、満州などと太平洋戦争の関係のことを指すのだとし
たら、この理屈を採用する国家は国家の名に値しないと思われ
る。というより、本来はこういう発想で国政を行うことは出来
ないのである。国内の秩序と国際間での主権の確保、内外にお
ける国民の生命自由財産を守るためには、国家は金や命の犠牲
をかえりみずに内外の侵害者と戦わねばならないのであって、
それは最初から国家というものの存在理由の重要な要素なので
ある。外国の勢力によって奪われた領土が小さいいから、奪わ
れた財産が少ないから、殺された人・さらわれた人の数が少な
いから放置するというのだろうか。または、国内の犯罪者が不
法占拠した土地が小さいから、強奪された財産が大金ではない
から、殺された人・さらわれた人の数が少ないから放置すると
いうのだろうか。そんなことをしたら、外国の諸勢力はすき放
題をし、国内の秩序は乱れ、国民もそんな政府を支持しないの
である。
 このことは当時の世界で常識として認められていた国家権益
や国際関係のありかた、国家としての尊厳にもあてはまるはず
である。あまりにも非常識で法外な要求・権利侵害・侮辱は飲
めないし放置できないのである。今でもそうなのである。

>戦前は英国に見習い、戦後は米国に見習って、確固たる主体
>的な価値観や論理もない無能な統治者が、日本をずたずたに
>してきた。
>戦前の日本を戦後の日本にぶつけるのではなく、ともに“近
>代”の荒波のなかで右往左往しながら、国民及び諸外国国民
>に犠牲を強いてきたという論理的な反省が必要だと思われる。

 ここでもあっしらさんは直接に私のあの論述に批判をぶつけ
ているわけではない。ただ私個人は、戦前一番日本が見習った
のはドイツであるように思えるし、「確固たる主体的な価値観
や論理」を江戸時代以来の神道原理主義的な潮流として持って
いたと思うし、「“近代”の荒波のなかで右往左往」していた
のではなくて「試行錯誤しつつ近代に立ち向かっていた」とも
言えると思うし、「無能な統治者が、日本をずたずたにしてき
た」とはずいぶん傲慢な思考であり言葉だなと思うだけである。
 ある物事の価値判断は人によって色々でありうるのである。

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