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(回答先: 書記長流「安全保障論」による対外拡張は「世界制覇」まで終わらない 投稿者 あっしら 日時 2002 年 10 月 23 日 19:41:54)
あの頃、朝鮮や満蒙で権力の空白や混乱があった場合、
必ずロシア・ソ連が入ってくることは必至だったのであっ
て、日本が管理・統治しなかったらソ連になっていただけ
のことです。そういう状況下では当時としては朝鮮・満蒙
をほったらかしにしなかったのは当然でしょう。
あの地域は日本の管理・統治下にあったほうがロシア・
ソ連の下にあるよりも日本にとって良いとする当時の日本
政府の判断を簡単に否定することは今だって出来ないはず
です。今でも昔でも地元の人たちだってどちらが良かった
を簡単に判断できるでしょうか?
世界征服しなければ安全保障のための領土拡張は終わら
ないというのは論理的にはいつのどこの国にも当てはまる
ことであまり意味のない話だと思います。あの当時のロシ
ア・ソ連は危険な侵略国だった。それは確かな事実なので
す。そして満州は中国ではありませんし、日本は満州を領
土としたわけでもありません。
満州建国時には世界は帝国主義のまっただ中にあり、英
米含めて侵略や植民地経営を盛んにやっていたのです。満
州国は女真族の長たる溥儀の了解と協力のもとに建国され
、満州族は国家運営に自らの意思で参加していたのです。
だから欧米流の侵略・略奪植民地と満州国とを一緒くた
にするべきではないと思います。
あっしらさんの歴史認識は大局的にも細部においても私
にはかなり主観的なものに思えるのですが、ここではいち
いちそれを批判するのは止めておきます。
ただ、ハルノートをめぐる問題は事実関係からも国家論
からも重要であり、それは現在の日本外交にも関わりのあ
る問題なのでとりあげておかねばなりません。
ハルノートの内容が国際的外交慣例・常識からいってど
う考えても事実上の最後通告であることは間違いないと思
われますし、一般的な通説でもあります。
なぜそうみなされるかというと、それは近代主権国家が
「実行不可能」な要求だからです。中国からの兵の撤退だ
って、それなりの理由といきさつのある二国間の戦争に対
してある第三国が一方に向かって「引け」と言って簡単に
引けるわけがありません。その要求も実行も独立主権国家
であることの否定であり、またそれ自体とほうもない国際
的侮辱だからです。
私は何度もこう言っています。「一つの主権国家は権益
も財産も領土も国民もそう簡単に他国に侵害されても放置
したり引き渡したりするわけにはいかないのです。それは
国家としての存在意義・最低限の役割の放棄なのです。近
代独立国家の国民も当然そうした権利侵害に対する戦いを
期待し要求するものなのです。」
意味がわかってもらえればよいのですが。
国家としての根本的な役割を放棄することは政府もでき
ませんし、強引に行えばそれは国家の自己否定ですから国
家が崩壊します。当時だったら、その崩壊はクーデターや
暴動という形をとることになります。それは論理的必然で
あり統治権の問題ではありません。とくにソ連やアメリカ
のような人造国家ではないヨーロッパ諸国のような伝統の
ある社会なら非常事態における緊急的な政府の更迭として
そうなる場合が多いと思います。
つまり、飲めば近代国家が壊れざるをえない非常識なハ
ルノート要求の不可能性の問題を当時の日本国家の統治権
のありかたの問題にすりかえるのは不当なことなのです。
>彼我の総合的な力を比較考量してどうするかを決するこ
>とができるのが合理的な近代国家だと考えています。
会社ではない国家をソロバン勘定で運営できません。北
方領土にこだわる理由も、国外で不当に拉致されたり人質
にとられた日本人を大金をかけて国家が救わねばならない
理由もそこにあります。軍隊があるのに比較考量の計算で
ハルノートの類の要求を飲むことは近代国家にはできませ
ん。少なくとも歴史的・国際的常識ではそうです。東京裁
判のパール判事の「モナコやルクセンブルクでも当時の日
本のような状況に置かれたら宣戦布告する」と言ったのは
そういう意味です。
日本がアメリカに勝つ可能性がまったくなかったか、私
には今でもはっきりしません。その後の歴史を知らない当
時の人にはもっと見当が難しかったでしょう。実際太平洋
戦争前にも日本は日露戦争のような彼我の国力に格差があ
る場合にも勝利したことがありました。あっしらさんは「
日本の国力及び産業力は、西欧諸国及び米国にはるかに劣
り、ロシアと五分五分程度であった。」などと言っていま
すが、それは解釈の問題というよりも単なる間違いなはず
です。私の習った歴史とか読んできた本とあまりにも違い
ます。
また、アメリカ軍がどの程度強いのかも実際にあたって
みなければなかなかわからないでしょう。特に戦艦や空母
・航空機を用いた戦いでのアメリカの強さはほとんど資料
がなかったはずです。私は太平洋での艦隊航空戦はアメリ
カ以外の国では日本に勝てなかったと思います。当時のア
メリカがその方面でも途方もなく強かったということは戦
争中からわかったことです。当時の日本人がそれを前もっ
て知る理性的な手段はなかったのです。