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米国経済は、日本のバブル崩壊の轍を踏まないよう政策運営をしている。しかし、中国がデフレを輸出しているかぎり、先進諸国のデフレはは根本的解決をみないと思う。 Ddog
以下クイックより
<東短リサーチ>橘田リポート 米国景気は個人消費が減速し、設備投資…
NAA 3524 : 2002/10/28月曜日18:25
内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間リポート10月28日号
l 米国景気は個人消費が減速し、設備投資の回復感が弱いため停滞が続く。FRBは11 月以降、利下げも視野に●
11月6日に開かれる次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の重要な判断材料にな ると言われる「地区連銀経済報告」(ベージュ・ブック)が発表された。それによると 「9月初めから10月15日までの米国景気は停滞したままで推移した」との判断が示され た。今回のベージュ・ブックは、全体としては前回に示した緩やかな回復という基本的 な判断は変えていないものの、「停滞」とか「減速」という報告が目立っているのが特 徴である。地区別にみると、前回に比べ改善したと報告されたのが三地区しかなく、大 半の地区で停滞が目立つという内容になっている。分野別でみると、米国景気回復のけ ん引役である個人消費については「全米を通じて弱まった」と指摘している。消費の中 心であった自動車販売の、異常とも思われる高い水準からの大きい落ち込みが見られ始 めた。株安などを受けて、ゼロ金利ローンなどによる販売促進効果にやや陰りが見られ てきたことが原因のようである。景気の回復時期が焦点となっている企業活動では、多 くの地域で足踏みや減速が見られており、設備投資の立ち上がりの明確な兆候は確認さ れていない。特に、シカゴでは全業種で生産活動が弱まったという報告が目を引いた。
バブル化が指摘される住宅市場は依然として堅調なものの、一部地域では減速も見受け られるようになってきた。特にNYなどでは頭打ちの兆候が顕著になってきている。市 場では今回のベージュ・ブックについては、想定した範囲内のものであると見ているが 、報告は経済成長が力強さを欠くことを裏付けたものであるとの見方が強くなっている 。これは、個人消費や設備投資に関する経済指標が一進一退の動きを続け、明確な景気 回復の兆候などが確認できないことによるものである。こうした弱含みのベージュ・ブ ックの発表を受けて、米市場関係者の間ではFRBが早ければ11月6日のFOMCにも0 .25%幅の利下げを決定する公算が大きいとの見方が強まってきている。FRBの内部で も、今後も米国株式相場の不安定な動きが続くことや、予想されるイラク攻撃で米経済 の先行きに対して暗い見通しが増える懸念に加えて、ベージュ・ブックの判断材料が個 人消費や設備投資の鈍化を示すものとなってきたことで、利下げに傾く理事が多くなっ てきているようだ。
10月23日に発表されたベージュ・ブックが、個人消費が減速して景気停滞は免れない という内容になったことに続いて、25日に発表された企業の設備投資先行指数として注 目される耐久消費財受注額も、前年比5.9%と昨年11月以降10ヵ月ぶりの大きな減少と なった。市場の事前予想は1.6%減であったが、発表された実勢数値はそれを大きく上 回るマイナスであったことから、米国景気の先行き懸念は一段と強まりそうである。特 にこの指数の中で懸念されるのが「非国防の資本財受注額」が6.6%減少したことであ る。非国防の資本財受注は企業の設備投資の先行指数として注目され、また設備投資に 6ヵ月程度先行するとも言われるものである。すでに2ヵ月連続で減少しているだけに 、今後も減少傾向が続けば、ブッシュ政権の景気回復シナリオに狂いが生じかねないで あろう。
さて、米国でも日本と同様、このところ不良債権の拡大が大きな問題となって
いる。
銀行やノンバンクで大口融資の焦げ付きが増えてきている。米国金融当局の2002
年大口
融資調査によると、不良債権となる恐れのある融資を含めた広義の不良債権は、
前年比
22.0%増えた。米国の銀行は株式保有が認められていないので、株価が低下して
も日本
の銀行のように株の含み損が発生する恐れはない。従って、株価下落の中で不良
債権の
増加ピッチは鈍っているものの、処理負担が依然として経営の重しになっている
姿は日
本と変りはない。米国では広義の不良債権が5年連続で拡大する一方、企業への
融資残
高は10年ぶりに縮小した。景気が減速してきたことから、金融機関が新たな不良
債権を
発生させないために融資姿勢を厳しくしたことで、貸し渋りなどの現象が発生し
ている
。
米国の金融機関の融資に占める不良債権比率は12.6%と前年より3.2%上昇している。 かつて米国の景気回復を遅らせた91年の16.0%、92年の15.4%の不良債権比率に近づき つつある。いずれにせよ、バブル崩壊はそれが大型であれ小型であれ、修復するまでに は多くの時間を要すると言えそうである。
ところで、米国のクリスマス商戦の前哨戦と言える10月のハロウィーン商戦であるが 、連続狙撃事件などの影響で消費者が外出を避ける傾向にあり低調のようだ。UBSウ ォーバーグと東京三菱銀行の調査では、米チェーンストアの週間売上高指数は今月に入 っても4月以降の低水準が続いているようだ。8〜9月の新学期商戦が期待外れだった だけに挽回したいところだが、思うようにいかないようである。また、全米小売業協会 によると、クリスマス商戦を含む11月と12月の小売り売上高は前年比3〜4%増と5年 ぶりの低い伸びにとどまりそうだ。米国ではクリスマス商戦は年間売上高の約20〜30% を稼ぐ最繁忙期にあたると言われている。しかし、今回は失業率が高くなったり、消費 者の購買意欲が低下したり、港湾封鎖の影響があったりと色々な逆風が強かったことも あって、個人消費は伸び悩みの気配が強まっている。米国景気を下支えしてきた個人消 費が力強さを失ってくれば、景気回復の足取りは一段と重くなりそうである。以上のよ うな動きを総合的に判断すると、米国の景気に明るさが戻るのは、来年夏以降となりそ うである。
l 米国経済は政府が外交問題に忙殺されている間にも着実にデフレに侵されている。11 月以降、経済金融面で手を打たないと世界経済は真性デフレへと突き進む●
米国ではこのところ、イラク攻撃に突入した場合の地政学リスクのみが取り沙汰され ていて、経済面で物価が持続的に下落するというデフレに対する懸念が広がっているこ とについてはあまり問題視されていない。しかし、米国経済を長期的に蝕むであろうデ フレが、着実に広がっていることだけは間違いない。米国の消費者物価指数は前年比で プラスを保っているものの、昨年から上昇が鈍っている。上昇率は9月時点で1. 5%に とどまるなど、3%台に達していた2000年の半分以下にまで低下している。10月7日号 の橘田レポートに、FRB関係者が「今後米国はデフレへと進むであろう」と懸念する 発言内容を掲載した。その内容を再度見直すと次のようなものであった。「物価に下落 の兆しがあり、企業の売上高が伸び悩んできた」。そして、ダラス連邦準備銀行総裁や リッチモンド連銀の総裁などは「歓迎すべきディスインフレーション状態が、望ましく ないデフレにどの時点で替わるのか分からない。現在はまだデフレだとは思わないが、 それに近い状態になっていることは確かである。デフレと戦うために成長を加速する政 策が必要である」、「現時点ではディスインフレが行き過ぎているとは思わないが、今 後デフレリスクを警戒する必要がある」と、米国経済がデフレに陥るリスクがあること を強調している。双方とも当時としてはFRBの内部では異例と思われる発言であった が、現在では「当たり前」の発言となったと言えよう。約2ヵ月足らずの間に米国のデ フレ懸念は進展したと言える。
米国の消費者物価指数は、現状前年比でプラスを保っているものの、昨年から上昇が 鈍っており、2000年に3%台に達していた物価上昇率は今年9月には前年比1.5%にと どまり、さらに低下傾向を強める気配となっている。こうした物価の下落がどうして起 こっているのかということであるが、企業と家計の間で次のような動きが生まれている からである。現状、米国景気はITブームと株バブルの崩壊によって、企業と家計の債 務は増大する一方で、負債の返済に充てる収入は減少し、資産は下落している状況に置 かれている。こうした中でデフレが一般消費者にはっきりと認識されると、消費者は物 価下落を見越して行動するのでデフレ傾向に拍車がかかる。消費者はもっと安くなって から物を買おうとする傾向を強めるので、企業の在庫と生産能力が過剰となり、余剰品 を売りさばくために企業は一段の値下げをする。値下がり期待が的中した消費者はさら に買い控えを強める。一方、企業はさらに値下げを繰り返していくという悪循環が増殖 して、さらなる生産能力の過剰や価格引き下げを招くことになる。米国では、こうした デフレ的な動きはすでに耐久消費財を始めとする財の価格だけにとどまらず、サービス 業でもはっきりと発生して物価が下落している。
最近はこうした国内要因だけでなく、 外国からの安い輸入品の増加などを背景にモノの値段の下落傾向がはっきりしてきてい る。現状ではまだサービスの値段は若干ではあるが上がっているので、日本のような真 性デフレとは異なるものの、デフレ傾向は企業業績回復への大きな阻害要因として影を 落とし始めている。モノの値段が下がるのは、景気回復が緩やかで需要に力強さを欠き 、さらに安い輸入品が増えていることが背景にある。米国の消費者もモノの安さを実感 として味わってみて、そのおいしさが分かり始めてきた。パソコンは技術の革新もある が、中国からの低価格品が流入してここ1年間で20%値下がりし、中国産の低価格テレ ビは米国での需要を大きく膨らませている。テレビの価格は1年間で15%近く低下した 。ただ米国では、モノとは違い輸入品の競合がないサービス価格が物価の全面的な下落 を食い止めている状況で、米国経済はデフレには陥っていない、ディスインフレの状態 にあるとの見方が多い。しかしモノの値段の低下が長引くと、サービス価格の下落を引 き起こすことが充分考えられる。モノの値下がりで収益が減少した製造業がコスト削減 のため賃金を抑制すると、サービス業の賃金に波及してサービス価格の下落にも繋がり やすい。
ファーストコールの調査によれば、ハイテク企業の7〜9月期の売上高は、前年同期 比1.0%減少して6・四半期連続でマイナスとなったようである。物価下落の影響を受け ている業種では売上高が伸びにくくなっており、ダラス連銀のマクティア総裁が「ディ スインフレがどの時点でデフレに替わるか分からない」との警戒感を唱えたのも、こう した情勢を踏まえたものであると言えよう。米国景気は、現状急速に後退しているとは いうものの、緩やかな回復が続いており、物価下落と景気後退の連鎖(デフレスパイラ ル)が懸念される日本とは大違いである。しかしそうは言っても、株価の下落による資 産デフレや不良債権が増加した銀行の融資姿勢を厳しくした貸し渋りなど、日本に似た デフレ要因も多くなってきている。以前、当レポートでバブルの崩壊はそれが日本のよ うな土地・不動産を中心とするものであれ、米国のように株式を中心とするものであれ 、結果的には同じであると申し上げたことがある。日本はすでにデフレスパイラルの渦 中にあるが、米国とて政策を間違えれば、いつ真性デフレに陥ってもおかしくない状況 にある。
90年頃まで共産主義国であった中国やロシアが東西冷戦終結後、市場性経済を導入し 、安い労働力を梃子に世界の生産工場として日本に替わって製品を大量に輸出するよう になったため、世界経済は供給過多の状態が続いている。現状、世界経済はモノの需要 が供給に追いつかない状況にある。こうした状況が続くと世界的なデフレは当分解決せ ず、経済のグローバル化が進んでいる中ではデフレは世界中に広がっていく。こうした 中で米国も低価格の中国製品の輸入を拡大し、米国の消費者も低価格の味を満喫してい る。米国は、中国から知らず知らずのうちにデフレを輸入している。現在、米国はイラ ク攻撃の懸念と北朝鮮の核保有問題など外交問題に忙殺されていて、国内の経済問題は やや手抜き的な状態が続いている。中国からの安い輸入品の増加などを背景に、モノの 値段は下落傾向がはっきりしてきた。世界の生産工場に台頭した中国の存在感が増して きている。附加価値の高いIT製品までもが大量に中国で生産されるため、米国のハイ テク企業の収益は悪化の一途をたどり、回復の気配は出てこない。外交問題も重要なこ とではあるが、経済面で物価が持続的に下落するというデフレに対する懸念が広がって いる状況に米国が早急に手を打たないと、世界経済は完全にデフレに突入してしまう危 険は高いであろう。前回のFOMCでは二人の委員が現状据え置きの金融政策に反対し て利下げを主張したと言われるが、恐らく11月6日のFOMCでは全員が利下げに賛成 することになろう。
l 政府・日銀・民間も一体となってサプライズな不良債権処理策とデフレ対応策をとる 時が訪れた。この機会を逃がすと永遠に不良債権処理は不可能だ●
「構造改革なくして景気の回復はない」というスローガンのもと、小泉内閣は昨年3 月、華々しくスタートした。国民の改革に対する熱狂的な支持のもとに今回の構造改革 は始まった。構造改革は第一段階から第四段階まで分けられるであろう。第一段階は構 造改革の始まりであり、第四段階は改革の終りである。現状の日本は第三段階の改革に さしかかっている。平成13年6月25日号の当レポートでは「不良債権の本格的処理でデ フレが一段と進行する。そのデフレから脱却する流れを検証してみよう」と題して、第 三段階の改革の流れを次のように解説している。「第三段階は経済実態のデフレ化が進 み、加えて不良債権処理の実施でデフレスパイラルが進む。そうした中で、問題のある 銀行や企業の破たんと倒産で整理が進行して、実体面のいくつかの過剰がようやく解消 に向かう。銀行と企業の多くの倒産で失業者が増大し、日本経済の環境が想像以上に悪 化する。そうなると、さすがに小泉首相の改革を支えてデフレには良い面もあると言っ ていた国民の中にも、小泉支持から反対に回る者が増えてくる。この時が小泉内閣の支 持率が一番低下する時であり、小泉内閣に反対していた政治家を勇気づけ、倒閣運動が 強まる時期である。要するに、小泉内閣にとって試練の時期は第三段階であろう。
もし
、この時期に支持率が落ちたからといって改革の手抜きをすれば、倒閣派にとって代ら れる事態になろう」と政治面の動きを指摘し、また財政金融面については「財政はデフ レ対応策の発動から大幅に悪化し、政府債務残高は大きく累増することになろう。経済 は危機的な状況になるので、海外への資本流出が起こり、それが一段と加速して為替相 場では急速に円安(1ドル=150円程度)になり、長期国債を中心に金利が上昇して国債 の消化が困難になる可能性が高まる。この結果、日銀は国債の消化に乗り出さざるを得 なくなるであろう。これによってデフレは最終の段階に入る」と、不良債権処理の第三 段階の状況を説明した。この段階が構造改革の痛みを感ずる一番の時期である。現状の 日本経済は「痛み」の起こる真っ只中にあると言える。
小泉内閣の抵抗勢力は「小泉首相は改革と口では叫んでいるが、一向に改革が進んで いないではないか」と批判する。そこで首相が「不良債権処理を加速しましょう」と言 うと、「痛みが強いのでもっと柔軟な政策をとれ」と迫ってくる。政治家の議論は改革 の断行ではなく、過去の失われた10年間にとられた手法と全く同じ、改革の先延ばしで ある。金融界では竹中経済財政・金融担当相がまとめた不良債権処理の加速案に猛反対 し、全面対決する構えで部分修正にも着地点が見えない状態である。要するに、自己資 本の見直し点で対立しているのだ。銀行の自己資本の質を強化する方向は正しい。しか し、税効果会計による繰り延べ税金資産の自己資本算入の上限を中核自己資本の10%に 制限したり、向こう1年分の課税所得額にしたりするのは影響が大きすぎると考えられ るので、算入上限を中核自己資本の20%程度にするとか、実施時期を原案より先に延ば すなどの緩和措置が必要である。もし自己資本の算入方法を厳格化するのであれば、政 府は同様にサプライズなデフレ対策を実施することが絶対に必要である。
デフレスパイ ラル化が進む中で、不良債権処理は最重要課題である。バブル崩壊から10年以上経って も、不良債権は減るどころか増える状況が続いている。不良債権処理を加速し、痛みを 受け入れなければならない時期は来た。政府も民間も痛みを受け入れなければならない 時が訪れた。10月30日には、政府は不良債権処理を加速するために第一次デフレ対応策 を発表するようであるが、今までのような小出しの対策ではなく、サプライズなデフレ 対応策を発表すべきである。政府から強力なデフレ対応策が打ち出されたならば、民間 もその痛みを受け入れる覚悟をしなければならない。反対のための反対ではなく、不良 債権をいかに早く解消するかを考える時が来ている。日銀は、30日に政府が強力なデフ レ対応策を打ち出すならば協力は惜しまない考えのようである。当レポートの先週号で 指摘したように、長期国債買入れ額を月間5,000億円程度増額する考えもあるようであり 、さらに現在10〜15兆円としている当座預金残高目標を15〜20兆円に引き上げる策を固 めているとの情報もある。金融市場にとってはサプライズな政策である。そして、現在 は長期国債保有額については野放しに膨らまないようお札の発行残高を上限とする決ま りがあるが、これを撤廃することもあり得るとの考えも示している。日銀は思い切った 対応策をとらないことには不良債権処理は不可能であるとの思いが強いようである。
(終)
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次
記 )
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