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昔のテレビ・ドラマは面白かった _ 賀来千香子・佐野史郎 ずっとあなたが好きだった (TBS 1992年)
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/165.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 1 月 16 日 12:00:48: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 


昔のテレビ・ドラマは面白かった _ ずっとあなたが好きだった (TBS 1992年)


1992年 TBS テレビドラマ 『ずっとあなたが好きだった』

動画
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放送期間
1992年7月3日 - 9月25日(13回)

制作局 TBS
脚本 - 君塚良一
音楽 - 小林武史
主題歌 - サザンオールスターズ「涙のキッス」(タイシタレーベル)


キャスト


主人公

西田(大岩) 美和
演 - 賀来千香子
宮城県仙台市出身。高校生の頃にマネージャーをしていたラグビー部の大岩と交際していたが、高校3年の七夕の夜初めて二人だけで松島旅行に出かけ朝帰りした後、それを知った大岩を追っかけしていた同級生が自殺。その際に遺書に逆恨みが書かれており濡れ衣を着せられ、大岩との仲を壊された過去を持つ。この事件は近所で知らない人がいないほど有名になってしまう。東京の短大を卒業後、新高輪プリンスホテルの結婚式場に就職。29歳で父の強引な勧めで、桂田冬彦と見合い結婚をするが、同時期に大岩と再会。冬彦との結婚生活にギャップを感じたこともあり、心が揺れる。のちに冬彦の子を妊娠していたことを承知で離婚。大岩と再婚した。

主人公の関係者

大岩 洋介
演 - 布施博
美和の高校の同級生で元恋人。高校時代はラグビー一筋でその推薦で大学に進み卒業後、サントス建設[5]実業団のラグビーチームで活躍していたが、バブル経済崩壊で会社が傾いたためチーム解散の憂き目に遭う。大岩は美和との事件の後、美和に電話や手紙を出していたが美和の父が間に入って取り合わずに焼き捨てるなどしていたため、その事実を美和が知るのは結婚後のことだった。美和との復縁の為、交際していた律子に別れを告げるが、律子の自殺未遂などで窮地に立たされる。しかし紆余曲折を経て、ついに美和と結ばれる。典型的なスポーツマンで大雑把で少々、無頓着な面が見られる。


中井 律子
演 - 宮崎ますみ
大岩の所属するチームのマネージャー。基本的には明るく、さっぱりした性格だが、結婚の約束をしていた大岩との破局を受け入れることが出来ず、妊娠したと嘘をついた挙げ句、自殺未遂騒動を起こしてしまう。チーム解散の後、海外赴任を引き受け、大岩の元を去って行った。


桂田 冬彦
演 - 佐野史郎
東京大学出身[6]でエリート銀行員。美和を深く愛しているが、マザコン的な性格を始め、様々な性癖が元で結婚生活がうまく行かず、大岩と再会した美和から離婚を切り出され、嫉妬から嫌がらせを展開したこともある(現在のストーカーの概念に通じる言動が、随所に見られる)。物語中盤、仕事で会社に損害を与えるミスをしてしまい、銀行を退職。その後、消費者金融会社(現在のヤミ金融系と思われる)に就職した。母親とのトラブルの直後、離婚を承諾。亡くなった冬彦の父が西田のお菓子が好物で冬彦は子供の頃に店を訪れたことがありその時から美和に恋心を抱いていた。のちに見合いで再婚することになる。


桂田家

桂田 悦子
演 - 野際陽子
冬彦の母。夫は銀行員だったが冬彦が小さい時に死別している。女手ひとつで息子を育てたこともあり、非常にプライドが高く、厳格な性格。しかし息子に対しては非常に甘く溺愛しており、息子のため西田家への切り札を振りかざすこともある。物語終盤、美和との離婚を決めた冬彦との言い争いの末、冬彦に刺されてしまう。


西田家

西田 春子
演 - 高田敏江
美和の母。心優しく美和の理解者ではあるが、夫・常雄には逆らえない。

西田 常雄
演 - 橋爪功
美和の父。仙台で和菓子屋を経営。美和を気に掛けてはいるが、店の経営資金融資が、桂田家の口添えであることから、美和の離婚・大岩との復縁を認めることが出来ない。娘の高校時代の事件を裏切りだと感じており、その以降信用していなかったが、物語終盤、大岩と和解した。

中井家

中井 健治
演 - 小沢仁志
律子の兄。妹を自殺未遂に追い込んだ大岩を憎悪する。


北野家

北野 知子
演 - 中村久美
美和の友人。結婚生活に悩む美和の良きアドバイザーだが、自身の流産でショックを受けたこともある。

北野 啓一
演 - 明石家さんま(友情出演・第5話ゲスト)知子の夫。


美和たちの後輩

浅井 なつみ
演 - 坂井真紀
美和たちが通っていた高校の生徒。幸治の子供を妊娠してしまい、悩むが後に産むことを決断。

佐藤 和也
演 - 長澤ユキオ

高田 幸治
演 - 川原永詩(現・田辺誠一)
浅井なつみの彼氏。美和たちが通っていた高校のラグビー部所属。恋人・浅井なつみの妊娠に動揺し、洋介に相談。小説版では、両親に勘当された設定。

各話 放送日 サブタイトル 演出 視聴率

VOL.1 1992年7月3日 危険なお見合結婚 生野慈朗 13.0%
VOL.2 1992年7月10日 セックスしない夫 13.9%
VOL.3 1992年7月17日 氷の微笑 加藤浩丈 15.3%
VOL.4 1992年7月24日 妻の過去は許さない! 14.1%
VOL.5 1992年7月31日 涙の誕生日 桑波田影信 17.4%
VOL.6 1992年8月7日 離婚裁判 生野慈朗 18.1%
VOL.7 1992年8月14日 ビデオテープの告白 15.7%
VOL.8 1992年8月21日 性生活の不一致 桑波田影信 20.5%
VOL.9 1992年8月28日 悪夢の妊娠 23.8%
VOL.10 1992年9月4日 人形の家 生野慈朗 20.6%
VOL.11 1992年9月11日 姑の罠 桑波田影信 22.3%
VOL.12 1992年9月18日 冬彦の狂気 生野慈朗 29.6%
最終回 1992年9月25日 NO SIDE! 34.1%

平均視聴率 19.9%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ)


ストーリーそのものは「昔の恋人と結ばれなかったヒロインが、マザコン男と結婚したが、夫や姑の身勝手な振る舞いに耐え切れなくなり、昔の恋人とヨリを戻す」というもの。

当時のトレンディドラマ全盛時代においては、特にヒットする要素はないように思われたが、佐野や野際の強烈な演技が話題となり、じわじわと視聴率を上げた。

劇中で示された特異で極端なマザコン男性像は「冬彦さん現象」と言われる一大ブームを作り、初回は13.0%しかなかった視聴率は、最終回では34.1%をマーク。1992年の民放連続テレビドラマの中で最高視聴率となった。

「マザコン」「冬彦さん」は、この年の流行語に選ばれた。

このドラマ放送から数年後、当時のプロデューサー貴島が編成部長時代に、日本テレビの土屋敏男編成部長(当時)と対談した際「最初はロミオとジュリエットみたいな話にするはずだった」点と、「もともと冬彦はマザコンではなかったが、冬彦が指に血を出した際、母親役の野際が口で止血するアドリブを見て、急遽マザコンキャラに変えた」と述懐している。

また後年、君塚が自著で

「自分は愛についてのドラマを書いたつもりである」

「佐野が評判になったため、当初作っていたプロットから大幅に変更し脚本を書き直して冬彦の出番を増やした」

と述べている。


一方、佐野は冬彦を演じるにあたって犯罪を題材に取った作品が多い劇作家・山崎哲の戯曲や論文を参考にしたと自著で回想しており、冬彦を語る上で欠かせない唇を歪めて「んん〜」と唸り声を発する演技も佐野が当時生後間もなかった長女・八雲のぐずる声を自宅で聞いて考案したものである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9A%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%8C%E5%A5%BD%E3%81%8D%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F
 

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コメント
1. 中川隆[-12961] koaQ7Jey 2019年1月16日 13:52:28 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-22225] 報告

1993年 TBS テレビドラマ 誰にも言えない

前年の1992年に大ヒットしたドラマ『ずっとあなたが好きだった』の事実上の続編。


動画
https://www.youtube.com/results?search_query=%E8%AA%B0%E3%81%AB%E3%82%82%E8%A8%80%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84++%E8%A9%B1+


放送期間 1993年7月9日 - 9月24日(12回)
制作局 TBS
脚本 君塚良一
オープニング 松任谷由実 「真夏の夜の夢」


話数 放映日 サブタイトル 演出 視聴率

第1話 1993年7月9日 私を凌辱した男 生野慈朗 24.9%
第2話 1993年7月16日 隣に棲む悪魔 19.9%
第3話 1993年7月23日 罠に堕ちていく夫 横井直行 17.0%
第4話 1993年7月30日 不幸を呼ぶ蛇 23.1%
第5話 1993年8月6日 恥ずかしい写真 生野慈朗 19.1%
第6話 1993年8月13日 八月の濡れた抱擁 20.7%
第7話 1993年8月20日 深夜のお仕置き 横井直行 21.8%
第8話 1993年8月27日 お義母さんが好き 福澤克雄 24.7%
第9話 1993年9月3日 夫をレイプした男 生野慈朗 26.1%
第10話 1993年9月10日 地獄に堕ちる蛇 横井直行 26.6%
第11話 1993年9月17日 加奈子の逆襲 生野慈朗 27.6%
最終話 1993年9月24日 REINCARNATION 33.7%

平均視聴率 23.8%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ)
関西地区での最高視聴率39.2%(最終回)。


キャスト

北沢(松永) 加奈子
演 - 賀来千香子
短大入学と同時に上京。卒業後は新宿のデパートに就職。そこで来店客として知り合った麻利夫と交際。未婚で妊娠するが、別れを告げられたことから中絶。医師から不妊の宣告を受ける(高校在学中にも中絶経験がある)。のちに不動産仲介業の事務員に転職。部屋探しにやって来た伸吾と揉めたことがきっかけで親密になり結婚。伸吾には内緒で不妊治療に通っていたが、隣に越して来た麻利夫から付きまとい行為・それに伴う周囲の誤解を受け悩む。麻利夫に監禁された際に反撃し、麻利夫を刺す。警察沙汰になるが、正当防衛が認められる。事件解決後に転居。伸吾との間に双子の女児を出産する。前作(ずっとあなたが好きだった)と加奈子の関係性は西田美和(演 - 賀来千賀子)と大岩洋介(演 - 布施博)との「実子」。加奈子には「兄」がおり、その兄が美和と桂田冬彦(演 - 佐野史郎)との子供。全てが「輪廻」で因果であること、兄はすでに死亡していることが最終話内で加奈子自身から語られている。


高木(山田) 麻利夫
演 - 佐野史郎
加奈子の元恋人で弁護士。交際していた加奈子から妊娠を告げられるも、その頃、担当した裁判で知り合った美雪を騙し結婚。山田書房の社長の座と同時に、加奈子との復縁を狙い、住所を突き止めると隣の部屋へ引っ越し、エキセントリックな言動で周囲を恐怖に陥れる。言葉巧みに周囲を丸め込んでゆく策略家だが、のちに加奈子への気持ちがエスカレート。拉致監禁・放火などを引き起こしたことが元で、山田家を破綻寸前に追い込んでしまう。この時に、少年期の家庭環境・亡くなった父との確執・自分を捨て、駆け落ちをした母への思いが明らかになる。最終回では、美雪の気持ちを知って離婚を思い留まる。のちに生まれた子供と共に逗子の海岸付近へ移住。山田書房の社内にて、著作権を始めとする法律関連の部署に配属されていることが自身のセリフで語られる。ノベライズ版では、1957年3月28日生まれ。母の名は芳江と設定されている。前作(ずっとあなたが好きだった)の桂田冬彦(演 - 佐野史郎)が美和と離婚した後、再婚相手の女性との間に設けた「実子」であることから、加奈子の兄と麻利夫は「異母兄弟」の関係に当たる。最終話内で加奈子自身から語られ、真実を知ることになる。


山田 美雪
演 - 山咲千里
一見、誠実そうな麻利夫の態度に心惹かれ結婚を決意。山田家の跡取りとして育てられたが、結婚後もスチュワーデスの仕事を続けており、出版社の業務に携わっていた様子は見られない。母親に対して依存心が強いことと同時に、加奈子に対して嫉妬心と憎悪に近い感情を抱き、後に麻利夫と加奈子の過去を知ると、「嘘をついた」ことで麻利夫に強烈なおしおきを据えるなど、ワガママで甘えん坊な印象があるが、基本的には明るい性格で、麻利夫に対して健気な想いを抱いており、のちに離婚を強要した母に反発。やり直しと母からの自立を決意する。男児を出産後は穏やかな性格となり、再会した加奈子に笑顔を見せた。絵心がある。


山田 愛子
演 - 野際陽子
山田書房の社長で美雪の母。実業家としてのプライドは高いが、美雪に対して甘い面と占いを信じ込んでしまう面から、周囲が見えなくなりヒステリックになってしまうことも多く、誤解から加奈子を敵視。身辺調査をした上で罵倒したり、伸吾との離婚を強要する等、さまざまな嫌がらせを展開する。後に麻利夫を社長に昇格させるが、彼の起こしたトラブルに巻き込まれ失脚。反逆者に企業を乗っ取られてしまう(以前、麻利夫に弁護を依頼した社内クーデターの残党とみられる)。美雪からの自立宣言を受けた後、山田書房に残留しメセナ部門を担当。穏やかな性格に変貌したと麻利夫のセリフで語られている。


松永 伸吾
演 - 羽場裕
一加奈子の夫。さっぱりした気性・体育会系的な面と同時に、不可抗力による前科やゲイを疑われたり、大学への進学を断念させられたという過去などもあり、思慮の浅さ・学歴などへのコンプレックスが見受けられる。麻利夫の罠にはまり、山田書房へ転職し、社長室関連の業務を担当したこともあるが、加奈子から秘密を打ち明けられた直後、麻利夫に対して毅然と立ち向かい、のちに知人の紹介でスポーツ用品の営業へと転職。同時に転居を決意する。新居購入に関しては、2回とも実家から援助を受けていた様子。趣味は釣りなど。


___


前年の1992年に大ヒットしたドラマ『ずっとあなたが好きだった』の事実上の続編。前作の脚本家・君塚良一とプロデューサー・貴島誠一郎が再びコンビを組んで送り出したサスペンス調の恋愛ドラマ。

妻がいながらも、かつての恋人に異常な執着心を発揮する麻利夫のエキセントリックな言動がさらに強調され、事実上の主役となっている。最終的には、物語は自分自身の理不尽な愛に葛藤する麻利夫の苦悩にまで迫っていくことになる。

高木麻利夫の言動は、現在のストーカーの概念に、ほぼあてはまる[1]。そして劇中で語られる彼の育った環境も、そういったトラブルを引き起こす性格が形成されやすい状況である。

後年、君塚は著書で「次回予告を視聴者が見て引きつけられそうなシーンをいくつか作り、それを組み合わせて本編のストーリーを作っていった」と語っている。

『ずっとあなたが好きだった』の正式な続編と解釈することには、登場人物の苗字、時代背景など随所に矛盾が存在するが、前作を意識したシーンが多数登場し、最終的に設定上の意外なつながりが明かされることが物語の鍵となっている。なお、1993年の12月29日と12月30日の16:00〜17:54に放送された『誰にも言えない 総集編』には賀来千香子が『ずっとあなたが好きだった』の登場人物、美和として登場するシーンが新撮影部分として追加された。

放映終了後に発行されたノベライズ版では、加奈子・麻利夫らは1950年代後半生まれと設定され、加奈子が秘密を知った経歴もテレビドラマとは異なっている。

この作品が放映された1993年はドラマの当たり年で、民放テレビドラマで最高視聴率30%以上が5本も出たが、このドラマは前作同様好調な視聴率を叩き出し、初回24.9%と好発進した勢いが衰えることなく、最高視聴率は33.7%(関東地区、年間第2位)であった(関西では最高視聴率39.3%で年間最高視聴率)。

主題歌は松任谷由実が「真夏の夜の夢」を提供し、この曲も『ずっとあなたが好きだった』の主題歌「涙のキッス」同様大ヒットし、ミリオンセラーを記録した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%B0%E3%81%AB%E3%82%82%E8%A8%80%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84

2. 中川隆[-12960] koaQ7Jey 2019年1月16日 13:56:10 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-22225] 報告

佐野史郎が語る「冬彦さんは平成のゴジラだった」
佐野史郎ロングインタビュー(前編)「文春オンライン」編集部 2018/06/09
http://bunshun.jp/articles/-/7663


心理サスペンス『限界団地』(東海テレビ・フジテレビ系)で連続ドラマ初主演を務める佐野史郎さん。その役どころ寺内誠司は“異常な老人”で、「冬彦さん」を思い出す人もいるかもしれない。あの、妻に不倫されるマザコン男の怪演から26年。あらためて佐野さんに「冬彦さんとは何だったのか」を伺いました。


視聴率をどうしても意識してしまいますでしょう?

――連続ドラマの主演は初めてなんですね。

佐野 ありがたいことに映画は主演デビューでしたし(林海象監督『夢みるように眠りたい』86年)、舞台や映画、単発のドラマなどではフロントに立って仕事をすることは今までにずいぶんやってきたんですが、地上波の連続ドラマっていうのがね、またこれまでと違った責任を感じるんですよ。


『限界団地』第2話より ◆オトナの土ドラ『限界団地』(東海テレビ・フジテレビ系)毎週土曜日23:40〜放送。第2話は6月9日24:05〜、第3話は6月23日放送予定

『限界団地』第2話より ◆オトナの土ドラ『限界団地』(東海テレビ・フジテレビ系)毎週土曜日23:40〜放送。第2話は6月9日24:05〜、第3話は6月23日放送予定

――テレビの地上波だからこその責任ですか?

佐野 視聴率をどうしても意識してしまいますでしょう? それは脇役の冬彦をやっていた時でさえそうでしたから、主演となると重いですよ(笑)。『ずっとあなたが好きだった』が放送された時代って、今からもう26年も前になりますけど、あの頃はフジテレビの月9、トレンディードラマが全盛で、W浅野で視聴率30%超えみたいな世界でしたよね。TBSは数字的に苦労していたから、視聴率というのは一つの目標であり、モチベーションでもありました。ただ僕は主演の賀来千香子さんと布施博さんに次ぐポジションでしたから、フロントマンとしての責任はそこまで実感していなかったかもしれない。でも今回は主演ということで感じざるを得ません。


親分肌ではないんです

――視聴率も担う、座長のようなプレッシャーというか……。

佐野 うーん、ところが僕には意識的にみんなをまとめようという「座長気質」、親分肌みたいなところが見当たらない(笑)。ただ、似たような感覚かなと思っているのは、人気ドラマのゲスト主役の心境。あれはもう死に物狂いでやるんです。なぜかというと、その回の視聴率はゲスト主演次第だから。


――近いところでは長澤まさみさん主演の月9『コンフィデンスマンJP』に映画マニアの食品会社社長の役でゲスト主演されていましたね。

佐野 あのマニアぶりは、僕の実人生の嗜好とも重なり楽しい仕事でしたけど(笑)、それにしてもゲスト主演というのは言い訳無用の恐ろしさが付きまとうんです。そう考えると連続ドラマの主演って、怖いですよ。


あの頃と、時代の空気感が似ている

――団地が舞台のドラマですが、主役のお話がきた時はどんな感想を持ちましたか?

佐野 尋常じゃない老人の役ですから、その意味では当然、26年前のマザコン男、桂田冬彦のことも頭に浮かびましたし、比べられるだろうことも覚悟の上、僕自身も意識しています。冬彦への挑戦ですかね? 人生でこういう強烈な役柄を、もう一度連続ドラマでやることになるとは思わなかったですけどね。


――巡り合わせだな、という印象ですか。

佐野 そうですね、時代の空気感もあの頃と似ているな、なんてことも思ったりしました。

――『ずっとあなたが好きだった』で冬彦さんを演じたのは1992年、平成4年のことです。

佐野 あの年は、いわゆるバブル崩壊直後で、経済も恋愛も生きる糧にならないのであれば、一体何を心の糧にして喜びを得たらいいんだろう……とか、それでも家族や共同体は必要なんだろうかとか、そういう時代のムードがあったと思うんです。冬彦の役は、そういう時代背景を探りながら演じていったつもりです。あれから26年、この2018年だってハラスメントの問題しかり、いろんな価値観が変わりつつあるし、国内外の情勢、経済、様々な不安定要因もあって決して明るい材料ばかりではないですよね。四半世紀の時間を経て、冬彦的なるものがまた復活するということは、大げさかもしれませんけど「歴史は繰り返す」という感じさえしています。


冬彦ってゴジラと一緒じゃないですか

――92年の流行語にはきんさん・ぎんさんの「うれしいような、かなしいような」もありましたが、「冬彦さん」も流行語に選ばれましたよね。

佐野 「冬彦さん現象」と呼ばれるような社会現象になったわけですけど、「冬彦=マザコン男」というキャラクターだけが一人歩きしてしまったことには、ちょっと思うところはあったんです。

――どういうことですか?

佐野 別にキャラクターを演じるために冬彦をやっていたわけじゃないんだ、という気持ちですかね。もちろん、物事がヒットするためにはわかりやすいキャラクターが必要かもしれません。ただ本当に大切なことは、なぜそのキャラクターとなって現れるかという、その背景だと思うんです。キャラクターでいえば、僕はあの時、冬彦という男は怪獣だと思って演じていたんです。


――冬彦さんは怪獣?

佐野 僕がゴジラファンだから言うわけじゃないんですけど、冬彦って、自分は何も悪いことしていないのに、母親の過剰な期待とか、自分ではどうにもできない環境によってああいう人格形成になって、周囲から化け物のように扱われてしまった人なんですよ。それって、ゴジラと一緒じゃないですか。そして、結婚相手が初恋の人に走って傷つけられ、溜まりに溜まったものを哀しみとともに一気に吐き出す。ただただ、正直に生きている人だと思う。でも、いつの時代も、正直すぎること、イノセントであることは世の中から怖れられ、排除され、葬られる運命にあるような気がします。社会にとってはその時代の価値観を崩してしまうかもしれない恐ろしい存在だから。


――冬彦=ゴジラ説! なるほど納得です。

佐野 もっと言いますとね、ゴジラの特撮監督・円谷英二はアメリカの怪獣映画『原子怪獣現わる』や『キングコング』に対抗するものを作ろうと考えたわけです。それは巨大タコのような怪獣という案もあったのですが、ゴジラを始め、その後の怪獣たちは日本の古代からの信仰の龍蛇信仰や山岳信仰を踏襲して……ってどんどんマニアックな話になっちゃうな(笑)。

そこに木馬があったから

――冬彦さんはその「出現してしまった」人なんですよね。

佐野 そうそう。実は『ずっとあなたが好きだった』の脚本を書かれた君塚良一さんも、プロデューサーの貴島誠一郎さんも、僕と同じく特撮ファンで、特にゴジラとウルトラマンが大好き。君塚さんはウルトラマンシリーズの脚本を手がけた金城哲夫さんや上原正三さん、『快獣ブースカ』『仮面ライダー』の脚本も手がけた市川森一さんの手法も勉強されているから、何となく冬彦への共通理解はあったかもしれないです。


――ドラマの視聴率は初回13%から最終回34.1%に急上昇するわけですが、それに刺激されるようにして佐野さんの演技もエスカレートしていくところはありませんでしたか?

佐野 途中から冬彦が世間の注目を一気に集め始めたこともあって、役が勝手に動き始めちゃった感じはありました。だから、変なことをやろう、強い演技をしようとは思いませんでした。むしろ抑えようとしたくらいで。とにかく、人格にはリアリティを失わなせいようにしようと、無茶苦茶なことやってもその発露だけはしっかりと伝えなければと思っていました。冬彦が木馬に乗りながら「他の男に僕の子どもを抱かせるなんて……あああ〜〜っ! 許さないぞ〜!」って言う、あのよくテレビドラマの歴史などで使われるシーンも、そこに木馬があったから乗ったまでで(笑)。


平成という時代の予言の物語

――まさに佐野さんの俳優人生にとって「冬彦さん」は重要な役柄だったと思いますが、今あらためて「冬彦さん現象」とは何だったと思いますか?

佐野 平成の始まり、でしたよね? 平成という時代の予言の物語とでもいうか……。それはゴジラが備え持つような不安の象徴であったのかもしれません。


――冬彦さんは東大出のエリート銀行員で、ディーリングを担当していましたが、それも関連しているでしょうか。

佐野 彼は取引で大失敗して、勤め先の銀行に大損害を与えてクビになりますよね。そういう意味で冬彦はまさに、バブル崩壊、平成4年という不安定な時代、3年の助走を経て動き始めた平成時代の始まりの象徴のような気がします。

――最近では90年代にはまだ生まれていない子から「冬彦さんだ!」って言われることがあるそうですね。

佐野 小学生とかにね(笑)。動画配信なんかで観ているんだと思いますけど、まさか四半世紀後に小学生があのドラマを観るなんて、当時誰も思ってなかったから、びっくりしますよ。僕だって、平成最後にもう一度“冬彦的なるもの”を演じることになるとは思わなかった。

“怪優”佐野史郎が「フジテレビをぶっ壊す」と思ってた時代
佐野史郎ロングインタビュー(後編)「文春オンライン」編集部 2018/06/09
http://bunshun.jp/articles/-/7664


『限界団地』(東海テレビ・フジテレビ系)で連続ドラマ初主演を務める佐野史郎さん。冬彦さんから井伊直弼まで、数々の役柄を演じてきたからこその演技の秘密を伺いました。役者歴40年以上の名優が語るバイプレーヤー論とは?


テレビで見た団地への憧れ

――主演される『限界団地』はその名の通り団地が舞台です。佐野さんには「団地の思い出」はありますか?

佐野 僕は昭和36年まで練馬にいて、7歳から島根県の松江で過ごしましたから団地には縁がなかったんですよね。松江は県庁所在地とはいえ、その頃はほんとに田舎の風景で、クラスの半分は農家の子。その子たちは農繁期の刈り入れ時になると午前中で帰っていました。家の手伝いだから。ただ、テレビなんかで文化住宅や団地の映像は目にしていたから、なんとなくの憧れはありました。


佐野史郎さん ©山元茂樹/文藝春秋

佐野史郎さん ©山元茂樹/文藝春秋

――松江から上京されるのは74年、昭和49年のことですね。

佐野 高校卒業して、表現の道に進みたくて東京に出てきたんですが、一人暮らしする時に団地への憧れって、まだやっぱりありましたね。友だちが荻窪団地に住んでいて、倍率が高いだの、入居手続きが面倒だの話を聞いていると羨ましいというか。僕は阿佐ヶ谷の木造モルタルのアパートに住んでました。この前、そこを通りかかったんですけど、でっかいマンションが建っちゃっててショックだったな。お隣のラーメン屋さんもなくなってた。

なぜこのドラマが平成最後の年に放送されるのか

――思い出のラーメン屋さんだったんですか。

佐野 劇団員時代でお金もなかったから、醤油を借りに行ったりしたんですよ(笑)。100円持ってって「メンマください」ってお願いしたら、どっさり差し入れしてくれたりね。メンマつまみながら仲間と酒を飲んだのもいい思い出です。


――歴史の長い団地には今や「昭和遺産」的な側面を持つ部分もありますが、佐野さんはこの『限界団地』のお話がきたときにどんなことを感じましたか?

佐野 正直言うと、主役をどう演じようかと考える前に、なぜ団地を舞台にしたドラマがこの平成最後の年に企画として成立したのかなって、まず、その理由を知りたいと思いました。時代の気配というか。

唐十郎さんから受けた影響

――時代の気配。

佐野 お話をいただいたときに「なぜ今この企画なのか?」と、今に照らし合わせて考えてしまうのは、劇団時代の恩師、唐十郎さんの影響が大きいのかもしれません。僕は20代の頃に唐さんが座長の「状況劇場」で舞台に立っていたんです。唐さんの戯曲ってたとえば『由比正雪』にしても、江戸の始まりとは何だったのかということを、戦後史やその当時の60年代のことを重ね合わせながら描いているんですよね。そこから学んだのは、コメディーにしろ、ホラーにしろ、ハートウォーミングなドラマにしろ、それこそ冬彦が出てくるようなドラマにしろ、演じるうえで大切なことは、「なぜ今この作品が生まれ出ようとしているのか、それを読み解くこと」なんです。


――佐野さんの俳優論の根っこにあるものという気がします。

佐野 個人史を大きな歴史の流れに照らしながら、作品を探るということかもしれないですね。この『限界団地』も、憧れの団地が次第に齢を重ね、昭和で解決できなかった問題群がそのまま平成に引き継がれ、その平成もまた終わりを迎えようとしている、そんな時代背景を象徴していると思います。家族観、共同体のあり方を含め、結論の出ていない問題が「団地」という場所に集約されているというか。


――特に住宅というのは、時代の家族観を反映しますよね。

佐野 冬彦の翌年に、再び賀来千香子さんとご一緒した『誰にも言えない』で住まいに設定されていたのは南大沢の高層マンションの最上階でした。なんというか、それこそ現実がドラマのオープンセットのような空間で、虚実が転倒するような空気が漂っていた気がしますね。

井伊直弼の最期を演じながら思ったこと

――佐野さんは歴史上の人物も数多く演じていらっしゃいます。過去を生きた実在の人物に取り組むときには、どんな心構えで臨まれるのでしょう?

佐野 その人物に対して失礼のないように演じようとしています。犯罪者を演じる場合は、被害者に対して失礼のないように気をつける。そこだけは、大事にしています。


――今年の大河ドラマ『西郷どん』では井伊直弼を演じられました。

佐野 直弼公については「安政の大獄」が圧政であったと批判されがちですよね。たしかに過ぎていたところはあったかもしれません。ただ、非情の選択をしなければ、世の中が収まらなかった上の覚悟であったのだと思います。そうした想いが葬られ封じ込められた直弼公の「この国を頼む」という想いを、桜田門外で倒幕派に首を斬られる最後の表情に込め、演じました。

――なんとも言えない表情での最期でした。

佐野 歴史というのは、どうしても勝者の視点で語られることが多いですよね。直弼公の圧政が批判されるのも、それは勝者の側からの歴史観だからでしょう。彦根に足を運んで学んだのは、彼が文武両道の非凡な人物であり、禅を極め、能楽師であり、茶人としても一期一会を旨とした広い世界観を持つ政治家だったということ。そうした人物像を、これまでの価値観の中に一石投じてみたかったんです。


『226』で青年将校を演じた時の怖さ

――歴史に封じ込められた「敗者」で言えば、応仁の乱を描いた大河ドラマ『花の乱』では、8代将軍・足利義政の弟で、後継となりながらも次期将軍の座に就けなかった足利義視を演じられましたし、映画『226』では急進派の青年将校・栗原安秀中尉を演じています。

佐野 栗原中尉は奇しくも僕と同じ松江の出身なんです。キャスティングした方はそんなことを知らずに依頼してくださったんですが、あの時はさすがに怖いというか、背筋が伸びるような思いがしましたね。あの時も、2・26事件が起きた昭和11年とは何だったのか、青年将校たちはなぜ急進的にならざるを得なかったのか、クーデターが鎮圧された無念とはどんなものだったのか、ずいぶん考えました。

“主役と脇役”はあるのか

――佐野さんの、勝者の歴史観とは違った視点を大切にする姿勢にも繋がるのかもしれませんが、これまで主役ではなく数々の名脇役を演じてこられての「バイプレーヤー論」とは何でしょうか。

佐野 そうですね……、歴史と一緒で、どんな縮尺で物事を見るかで主役も脇役も同じと言えば同じなんですよ。何が歴史の転換点だったのか、誰が時代の主役だったのかなんて、歴史の縮尺の度合いで変わってきますからね。そりゃ、若い頃は「芝居に主役も脇役もないんだ」なんて言われても「いや、あるじゃん」って思ってましたよ(笑)。でも主演であろうがエキストラであろうが、ワンカットワンカットで言えばそこに存在するという意味では同等ですよね? ただ、それが全体として、編集されて1つの見方を提示する作品になったときに、主役と脇役が生まれてくる。


「フジテレビ、もうぶち壊してやろうぜ」

――『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さんは、主役の賀来千香子さん、布施博さんに次ぐ役どころでクレジットされていましたよね。でも、「冬彦さん現象」によって主役を喰っちゃったという思いはありませんでしたか?

佐野 いやあ、あの時はどう思ってたかな……。今だから思うのかもしれないけど、僕も30代で若かったし、もともとパンクをガンガン聴いて、ロックバンドやってるような人間ですから、乱暴なところは内側に秘めてますよ、実は(笑)。ただそれは、主役のお二人に対してってことではなくて、テレビドラマの約束事をぶっ壊してやるとか、それこそプロデューサーの貴島(誠一郎)さんと言っていたんだけど、恋愛やってるフジテレビをぶっ壊すぞ的な闘争心。「もう、ぶち壊してやろうぜ」みたいなのはあったかな(笑)。そうして、今はフジテレビで「限界団地」をやるという(笑)。


――先ほど、「冬彦さん=ゴジラ説」が唱えられましたけど、封じ込められた人物としての冬彦さんは、ある種の主役だった気もします。

佐野 振り返ればね。だから偉いとかそういうことではなくて、誰が物語を先導していくかにおいては、どの役であっても“主役”になれるということかもしれません。

憧れのバイプレーヤーは

――佐野さんは「状況劇場」を辞めた直後の頃に、ひと月ずっと小津安二郎の映画を観て過ごしたことがあるそうですね。

佐野 ひと月どころじゃないですよ。20代の終わりに、小津だけじゃなくて、成瀬巳喜男、清水宏……観られる限りね。


――佐野さんの憧れるバイプレーヤーってどなたでしょうか。

佐野 そうだなあ……、バイプレイヤーというか、尊敬する昭和の俳優さんたちだと、天本英世さん、岸田森さん、佐藤慶さん、小松方正さん、戸浦六宏さん、植木等さん……笠智衆さん、吉田輝雄さん。一番尊敬しているのは佐分利信さん。佐分利信さんはやっぱり好きですね。

――ちゃぶ台の前に座ると出てくるあの父性みたいなものですか?

佐野 『お茶漬の味』ね。佐分利信のお父さん役って何もしないでしょう(笑)。山村聰さんも好きなんですけど、ああいうどっしりした感じの構え方に、僕もちょっとは影響を受けています。まあ、僕はあんな風にできなくて、チョコチョコやってますけど、こういうふうに佐分利信、山村聰に影響を受けた俳優が60を過ぎてどんな俳優になっていくのか、僕自身、これからがたまらなく楽しみです。

さの・しろう/1955年生まれ。
山梨で生まれ、東京は練馬を経て島根県の松江市で育ち上京、75年に劇団シェイクスピア・シアターの創設に参加。80年から4年半、唐十郎主宰の「状況劇場」に所属した。86年に映画『夢みるように眠りたい』(林海象監督)主演で映画デビュー。『ぼくらの七日間戦争』などの出演を経て、92年TBS系ドラマ『ずっとあなたが好きだった』の桂田冬彦役で大ブレイクする。2018年『限界団地』で連続ドラマ初主演。俳優活動のほか、故郷松江にゆかりのあるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)作品の朗読を現在も続けている。


3. 中川隆[-12959] koaQ7Jey 2019年1月16日 13:57:27 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-22225] 報告

「母殺し」が象徴するもの
http://www.j-phyco.com/category1/entry70.html


混沌としていて、人の心はもちろんのこと、自分の本心さえも見えにくい現代社会。自分自身との「対話」を重視したユングの心理学は、現代を生きる私たちに何らかのヒントを与えてくれるハズです。


「ユング心理学の世界へようこそ」トップ > ユング心理学の基礎 > 「母殺し」が象徴するもの


グレート・マザーとの対決


ユング心理学の中に、
「母親殺し」というドぎつい表現が出てきます。

「えっ、ユングって少年犯罪の心理にも詳しいの?」
…と誤解してしまう方もいらっしゃるかもしれませんよね(笑)。

ユングの言う「母親殺し」は、あくまでも“たとえ”。
実際に母親を殺すわけではありません。

母親殺しが象徴しているのは、人間の「心理的な成長」、
つまり、母親殺し=母離れということになりますね。

人間が心理的に成長していくプロセスにおいて、
一人前になるためにどうしても克服しなければならないテーマを、

ユングは「母殺し」言い方で表現したのです。

このテーマは、実は、世界各国の神話や民話にも登場するエピソード。
後述しますが、日本に伝わる伝承にも、

この“母親殺し”に相当するエピソードが登場します。

それにしてもなぜ、克服すべきテーマを母親になぞらえるのか?
それは、ユングが唱えた「元型論」の

「グレードマザー=太母」が持つ意味に起因しています。
このグレートマザーは、

「無条件で愛を与え、守ってくれる」「受け入れてくれる」…といった
一般的に言われる“母親”のイメージの他に、

「束縛する」「飲み込んでしまう」
といったネガティブなイメージも内包しています。

確かに、母親って、口うるさいところがありますし、ともすれば
過干渉で子どもの可能性をつぶしてしまう存在でもありますからね(汗)

そのため、このグレートマザー=母親と対決をして、
それに勝つ、殺してしまうことが求められるというわけ。

それで初めて「一人前になれる」ということです。

日本人は“母親殺し”が難しい?


前述した通り、日本に伝わる伝承にも、
ユングが言うところの「母親殺し」のエピソードは登場しています。

最もポピュラーなのは、
素戔鳴尊(スサノオノミコト)の八岐大蛇退治。

素戔鳴尊は、八岐大蛇を退治して、
奇稲田姫(くしなだひめ)を救いました。

そして、大蛇の尾から草薙剣(三種の神器)を奪ったのです。

…と、ここまでは、
「素戔鳴尊が男として一人前になるためのエピソードなのね」

「これが、ユングの言う“母親殺し”なんだな」
と、納得しながら読めるのですが、問題はここからです。

彼は、せっかく手に入れた草薙の剣を、
姉である天照大神に献上してしまいます。

“支配者”になるために
「なくてはならないアイテム」であるにも関わらず、です!

しかも、献上した相手、天照大神は、
自分の“母親代理”とも言える存在。

つまり、母離れが完全にはできていなかったということですね(苦笑)

この伝承のエピソードも踏まえ、
ユング心理学の権威である河合隼雄先生は、

「日本の男はみんな永遠の少年だ」
とおっしゃっています。

つまり、いつまでも“母親殺し”ができない
=母離れができない=精神的に一人前になれない!

みなさんの周りにも、いわゆる“マザコン”が多いのでは(笑)?

「父親殺し」との比較


さて、母親殺しは
「成長に不可欠なプロセス」「母離れ」を意味するわけですが、

では、“父親殺し”はどのような意味があるのでしょうか。

これは、ユングよりも
ノイマン(ジョン・フォン・ノイマン。ユング派の心理学者)の

考え方を紹介したほうが分かりやすいでしょう。

ノイマンによれば、
「母殺し」と「父殺し」とでは意味が異なるのだとか。

「母殺し」は太母からの自我の自立を、一方の「父殺し」は、
古い文化を否定して新しい文化を創造する心の働きを

意味しているのだと言います。

確かに、父親や“父性”は古い慣習や伝統、
文化を象徴するものでもありますから、こういった古いものを

打ち破って新しいものを作るという意味で捉えられるのは
あながち不思議な話ではありません。

ちなみに、ユングによれば、「母親殺し」や「父親殺し」は
愛の挫折や愛の倒錯から生まれるのではないとのこと。

つまり、個人的な感情云々から生ずるエピソードではなく、
「より元型的な心のメカニズム」、

誰もが通る道として捉えられています。

ですから、

「うちの子が私に対して攻撃的なのは、育て方が悪かったからだ」

と自分を責める必要はありません。
子どもは自分自身の“内的な成長”ゆえに、必然的な傾向として

母親から自立していこうとするものなのです。
親としては、むしろ喜ぶべきことなのではないでしょうか!







▲△▽▼

西洋のおとぎ話では、王子様が「閉じこめられたお姫様を救出する」お話がよく出てきますが、そのようなテーマが古くから多くの人の心を揺さぶり、言い伝えられてきたことも、深層心理学的に解釈すると、納得できそうですね。
それは、私たちの生の「本来の課題」を表しているわけですから・・・。
http://twinbells.blogo.jp/archives/1704385.html


大学時代、児童文学の講義でグリム童話を通して人間の成長過程についてユング心理学的に学んだのですが。

その時に教授が使ったテキストが、河合隼雄先生の


昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 (講談社+α文庫)
https://www.amazon.co.jp/%E6%98%94%E8%A9%B1%E3%81%AE%E6%B7%B1%E5%B1%A4-%E3%83%A6%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%81%A8%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%A0%E7%AB%A5%E8%A9%B1-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE-%CE%B1%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%B2%B3%E5%90%88/dp/4062560313?SubscriptionId=AKIAJLD6FH2TADXIQKDQ&tag=amebablog-a2307499-22&linkCode=xm2&camp=2025&creative=165953&creativeASIN=4062560313

でした。

その中で、「金の鳥」のような冒険譚で主人公が魔物に捕らわれている王女を救出し、後に結婚する、というパターンがありますが、このパターンのストーリーに登場する王女は、アニマと呼ばれる男性の深層心理の内にある理想の女性像の象徴であるとユング心理学では言われているそうです。

その一方で、「白雪姫」や「いばら姫(ペロー童話でいうところの眠れる森の美女)」に登場する、ヒロインの王女を救出する王子が、女性の深層心理の理想の男性像をアニムスと呼ぶそうです。

今年、HeleneさんのメールリーディングやThambaさんの対面リーディングセッションを受けたことで、私のツインソウルである、初恋の相手にとってのアニマが私自身であり、彼が私にとってのアニムスでもあるようでいて、私自身に自分の本質がプリンセスであることを気づかせる役割を担ったトリックスターでもある、ということがはっきりしました。

一口にツインソウルと言いますが、関係性というか、お互いの相手に対する役割だとか立ち位置は、それぞれ違うと思います。

ただ、対等のパートナーである場合が多いとは思うのですが、こういうパターンもある、という一例ではあると思います。

男性性、女性性の象徴としてのツインソウルのあり方としては、わかりやすいパターンだとは思います。

女性にとってはある意味、理想的な関係と言えるのかもしれませんね。


ただ、対等ではないので、相手と自分の気持ちに多少の温度差があるのはどうなんだろう?と思います(°д°;)
https://ameblo.jp/gotokuhime/entry-12336322098.html

ソフィア (sophia)
http://twinbells.blogo.jp/archives/1704385.html


「万学の祖」といわれた偉大な哲学者アリストテレス。
この名を聞いたことのない人はまずいないでしょう。

このアリストテレスが第一哲学と称する『形而上学』という著述があります。
そこでは、いわゆる「存在」に関するさまざまな問題が扱われているわけですが、
「形而上学(metaphysics)」という言葉は、アリストテレスの数々の著作を編集する際、「自然学関係の諸巻(physica)」の後に置かれた諸巻という意味で作られたとされる“metaphysica” がもとになっているようです。

meta は超越を意味しますので、“metaphysica” とは自然を超越したもの、「超自然学」を意味します。
自然の背後にあるもの、いわゆる“あちら”の世界についての学問。
(自然と訳される physis は、そもそも「生まれ出たもののすべて」を意味します)

深層心理学的に、ちょっと大胆に言ってしまうと、
“無意識”にあるものの探究、と言い換えることもできるのではないでしょうか。

この『形而上学』について、アリストテレスはまた、「ソフィアをあつかう学」とも称していますが、ソフィア sophia とは、ギリシア語で「知恵」を意味することを鑑みますと、ソフィアをあつかう学(第一哲学)とは、われわれの 「存在根本についての知恵に関する学」 であり、「万物を動かす原理である不動の動者、神(と呼ばれる存在)を探究する学問」であるといえます。


西洋世界において意味深い「ソフィア」の存在について、ユングはあくまでも心理学の観点から、男性の無意識に存在する、“高次のアニマ”*であると述べています。

* アニマとは男性の無意識の中に存在しているとされる、普遍的な女らしさの元型。ソフィアは第四段階の叡智のアニマ。



(ゲーテの『ファウスト』における)「永遠にして女性的なるもの」
(ソフィア)は錬金術の≪智慧≫を具現化したものとして登場する。


ソフィアは、(中略)「楽園の」あるいは「神的な」人間、すなわち
「自己」である。


転移の心理学転移の心理学
著者:C.G. ユング
販売元:みすず書房
(2000-10)


また、前回記事で書いたグノーシス主義では、『旧約聖書』で「最初の人間」とされているアダムとイブに、2人が“無知の闇”に閉じこめられていることを知らせるため、智慧の女神ソフィアがヘビを遣わしたとされています。

『旧約聖書』において、知識の木の実を食べるようそそのかした悪魔の使いとされるヘビを、グノーシス主義では礼拝の対象としていたのです。

(正統派キリスト教、異端派グノーシス主義における、“ヘビ”のこのアンビバレンスな捉え方も、今日は触れませんが、非常に意味のあることです。
ちなみにユングは、自分の心の深層に導いてくれる存在として、緑のヘビを描いています。)


私たち人間は、自我が芽生えてこそ、他者の存在のみならず、自分の“存在”をも認知できるようになります。
“無知の闇”(無意識)を抜け出してこそ、「人」となるわけです。
(赤ん坊が幼児に成長する過程を見ていると、それがよく分かります。)

闇を完全に光で満たすことはもちろん不可能ですが、そこに何があるのか、少しずつ明かりを灯していくことこそ、「ソフィアをあつかう学」につながるのだと、私には思われます。


「人間の肉体に閉じこめられて解放をまっている『霊魂』『本来的自己』『光の粒子』」
である、グノーシス主義における女神ソフィアを、ユングが解釈したように、私たちのこころの深くにある「自己」と考えると(この場合はあくまでも男性心理からの視点で、ユングは、アニマとセルフを同一視している部分があることが研究者によって指摘されている)、やはり、わたしたち人間一人ひとりが、自身の“無意識の声”を聞いていくこと、“認識(グノーシス)”すること。
そして、“無知の知(闇)”の自覚を出発点に、“ソフィア(叡智)の救済”へ努めることは、たとえそれが終わりのない道であっても、とても意味のあることなのです。

それは、以前のブログで書いた「ホントの自己実現」の生き方と同義です。


西洋のおとぎ話では、王子様が「閉じこめられたお姫様を救出する」お話がよく出てきますが、そのようなテーマが古くから多くの人の心を揺さぶり、言い伝えられてきたことも、深層心理学的に解釈すると、納得できそうですね。
それは、私たちの生の「本来の課題」を表しているわけですから・・・。


【参考文献】   
竹内 昭 『哲学案内』 梓出版社 (2004-04)
筒井 賢治 『グノーシス (講談社選書メチエ)』 講談社 (2004-10-09)
山中康裕監修 『ユング心理学 (雑学3分間ビジュアル図解シリーズ)』 PHP研究所 (2007-02)
        
http://twinbells.blogo.jp/archives/1704385.html

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