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イタリア人記者・諜報員殺傷に対するスペイン・マスコミの反応ぶりと、膨らむ疑問
スペインはイラクで、2003年3月に新聞記者(取材中に流れ弾?に当たる)とカメラマン(米軍戦車の発砲)が、11月に諜報機関員が7名(イスラム過激派?に襲撃される)、2004年1月にはグアルディア・シビル隊員1名(イスラム過激派?に襲撃される)と、犠牲者を出しているためか、今回のイタリア人ジャーナリストと諜報部員に対する米軍の襲撃は非常に関心を集めています。
TV各局は、程度の差はありますが、どこも、米軍の「トラックが猛スピードで走っていた」という説明を否定するジュリアーナ・セグレーナ記者と、「米国は彼女を生きてイタリアの帰したくなかったのだ」という夫でジャーナリストのピエル・スコラーリの声を報道していました。
ここで各新聞(電網版)の記事と論説を集め、その見出しと簡単な内容をご紹介し、この事件に対する私の素朴な疑問を述べてみたいと思います。
●まず、エル・ムンドですが、
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/03/05/internacional/1110029269.html
『イタリアのジャーナリストと諜報部員は、襲撃は正当化できない、と非難』
(原文:La periodista italiana y un agente secreto declaran que el tiroteo 'no estuvo justificado':3月5日付)
この記事にはジュリアーナ・スグレーナ氏の事実上の夫で同僚のピエール・スコラーリ(Pier Scolari)氏の「明らかに待ち伏せ攻撃だった」「米軍は生きて彼女を出したくなかった。彼女が情報を持っていたからだ。(原文:los militares no querían que saliera viva del país árabe por las informaciones de que disponía)」という発言が取り上げられています。
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/03/06/internacional/1110064614.html
『イタリア当局者は米軍に射殺された諜報員を英雄として受け取る』
(原文:Las autoridades italianas reciben como un héroe al agente tiroteado por tropas estadounidenses:3月6日)
これでは、殺害された秘密情報員ニコラ・カリパリ氏(50)に対し、チアンピ共和国大統領が死者に対する金のメダルで最大限の敬意を表したことを伝えています。またローマの裁判所はこの惨殺事件について捜査を開始する、と書かれています。
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/03/05/internacional/1110017474.html
『野党は、イラクでのブッシュに対するベルルスコーニの支援を非難』
(原文:La oposición critica el apoyo de Berlusconi a Bush en Irak:3月5日)
これはもう見出しの通りで、イタリア野党のイラクからの撤退を主張する声を強調しています。
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/03/06/internacional/1110102231.html
『伊記者は、誘拐犯から米国の「介入」の可能性を警告された、と告発』
(原文:La periodista italiana denuncia que fue alertada por sus captores de una posible 'intervención' de EEUU:3月6日)
これは下にあるのんちゃんさんの投稿にもあった通りで、「『米国人たちは君の帰還を望んでいない』『米国人たちは介入してくるかもしてない』これが解放される直前に彼ら(誘拐犯)の言葉であった。」というスグレーナ氏の手記を紹介しています。
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http://www.asyura2.com/0502/war68/msg/114.html
投稿者 のんちゃん 日時 2005 年 3 月 06 日 23:27:19:
【君の帰国を望まない米国人がいるから注意しないといけない…】米軍の主張と食い違い 伊女性記者が手記
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次は3月5日のエル・ムンドの論説記事(ただしこれは有料記事)ですが、見出しとサブタイトルをご紹介します。
http://www.elmundo.es/diario/mundo/1765704.html
『我々はそんなに早く走っていなかった。我々に銃弾の雨を浴びせてきた。』
「ジュリアーナ・スグレーナは傷を受けてローマに到着した後、米国の公式見解を否定。
野党はイラクからのイタリア軍撤退を要求。」
(原文:«No íbamos demasiado deprisa, nos alcanzó una lluvia de fuego» Giuliana Sgrena desmiente la versión oficial de EEUU tras llegar herida a Roma / La oposición pide la retirada de las tropas italianas de Irak)
ただ。論説とは言っても、単にほとんどスグレーナ氏とスコラーリ氏の言葉を引用し、イタリア野党の声を説明しただけのものですが。
●次はカタルーニャの地方紙エル・ペリオディコですが、エル・ムンドとは少し異なる、より米国に厳しい態度を打ち出しています。
http://www.elperiodico.com/default.asp?idpublicacio_PK=5&idioma=CAS&idnoticia_PK=192069&idseccio_PK=7&h=050306
『イタリア中が、人質に対する米軍の襲撃の説明を要求』
(原文:Toda Italia exige explicaciones a EEUU por el tiroteo contra la rehén)
この記事の中で、「すべてのイタリア人が等しく、この痛ましい悲劇的な出来事が米国によって解明されることを望んでいる」というチアンピ大統領の言葉を引用しています。
http://www.elperiodico.com/default.asp?idpublicacio_PK=5&idioma=CAS&idnoticia_PK=192068&idseccio_PK=7&h=050306
『ブッシュは同盟者ベルルスコーニの危機を沈静化しようと努める』
(原文:Bush intenta atajar la crisis con su aliado Berlusconi)
ここでは「親友(ベルルスコーニ)にこの事件に対する我々の悲しみを電話で伝えた。1名の人名が失われたことは残念だ。大統領(ブッシュ)はその経過を調査することと状況を明らかにするためにイタリア当局と幅広く協力していることをベルルスコーニに伝えた。」というマクラーレン報道官の言葉を紹介し、イタリア政府の危機をなんとか最小限に抑えようとしている、と書いています。
3月6日付のエル・ペリオディコに載った論説は手厳しく米軍と米国のマスコミを非難しています。
http://www.elperiodico.com/default.asp?idpublicacio_PK=5&idioma=CAS&idnoticia_PK=192067&idseccio_PK=7&h=050306
タイトルは『友軍の銃火(原文:'Fuego amigo')』で、短い論説ですが、最後の部分をそのまま訳してみます。
「米国の主要なTV局は、ベルルスコーニがブッシュとしゃべってから1時間たっても、まだこの事件を報道していなかった。いったい何人のジャーナリストが、かの有名な『友軍の銃火』の手にかかって命を落としているのだろうか? ゾッとするようなメタファーである。(原文:Las principales cadenas norteamericanas de televisión, una hora después de que Berlusconi ya hubiese hablado con Bush, seguían sin hablar del hecho. ¿Cuántos periodistas han muerto a manos del ya famoso fuego amigo? Macabra metáfora.)」
●保守系のABC紙さえも、またその論説でかなり厳しい調子で米国を非難しています。
http://www.abc.es/abc/pg050306/prensa/noticias/Opinion/Colaboraciones/200503/06/NAC-OPI-006.asp
『動くものは何でも撃て!(原文:«¡DISPAREN A TODO LO QUE SE MUEVA!»)』
これもその最後の部分を訳してみます。
「これは同盟軍とイラクの情報・治安担当者のミスなのか、また救出作戦が知られていたのか否か、あるいは、この国を平和にするためにジュネーブ協定のあらゆる条文に背く次の米軍の合言葉によるものなのか。『動くものは何でも撃て!』」
(原文:O bien es un fracaso de los servicios de información y seguridad aliados e iraquíes, tanto si la operación de rescate se hizo con su conocimiento o sin él, o bien la consigna de las fuerzas armadas para la pacificación del país, contra todas las normas de las Convenciones de Ginebra es: ¡Disparen a todo lo que se mueva!)
●ところで、エル・ペリオディコでも非難の対象になっていましたが、米国のマスコミです。代表としてNYタイムズ(3月6日付)を取り上げてみますと、
http://www.nytimes.com/2005/03/06/international/europe/06rome.html?th
『イタリアのレポーター、疑問の渦巻くイタリアに到着』
(Italian Reporter Arrives in Rome Amid Questions)
が見出しで、このUrlから入って記事をご覧になれば分かりますが、米軍発表の垂れ流し、といったところです。
英国の新聞(タイムズ、インディペンデント)も、NYタイムズほどではないにしても、イタリアやスペインに比べるとやはり米国批判はトーンダウンしているようです。(長くなりますので、各自お読みください。)
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,7374-1511946,00.html
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=617249
ただCNNはジュリアーナ・スグレーナの手記の全文(英訳文)を掲載しています。これはフォローに付けておきます。
http://www.cnn.com/2005/WORLD/europe/03/06/il.manifesto/index.html
●どうもすっきりしません。状況から考えても単なる連絡不行き届きのためのミスとは決して思えない。しかし、もし米国が本当にスグレーナ氏を殺害するつもりだったら、日本人外交官や記者たちと同様に、完璧に殺して罪を「イスラム・テロリスト」に擦り付けるでしょう。明らかに米軍が、米国と自国政府を批判するスグレーナ氏と3名の諜報員に対して猛烈な発砲を仕掛けたわけですが、「殺してもよいが、殺しそこなってもそれ以上はやるな」という命令でも出ていたのでしょうか。彼女の手記にある「誘拐犯」の最後の言葉も妙に引っかかります。この「誘拐犯」たちは米軍の計画を知っていたのでしょうか。彼らと米軍はつながっているのでしょうか。
スグレーナ氏が死のうと生きていようと、こんなことをしたらイタリア中が蜂の巣をつついたようになる、スペインやフランスも大騒ぎすることくらい、分かっているはずなのですが。田中宇氏的に言ってみると、「米国は意識的に欧州から嫌われようとしている」とでもなるのでしょうか。また欧州の方もそれに呼応しているようです。実際にスペインのマスコミは、比較的親米的なものでさえ、ただでさえ反米意識の強いスペイン国民の心をますます米国非難の方向に向かわせているようにも感じます。
欧州を意図的にイラクから手を引かせよう、としているのでしょうか。まあ確かにその方が中近東を米国とイスラエルだけで、欧州に気兼ねなしに料理できるのかもしれませんが。何とも面妖な事件です。
●ついでに、先日来、「3・11犯人がニューヨーク中央駅の襲撃を計画していた」という情報について、米国とスペインが食い違いを見せていますが、あれもかなり意図的な「すれ違い」を作っているようにも受け取れる奇妙な話でした。
【参照】
http://www.asyura2.com/0502/war67/msg/972.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2005 年 3 月 03 日 05:56:52
3・11実行犯、ニューヨークの駅襲撃も計画(エル・ムンド):尻尾を出したか、FBIとCIA?
http://iblnews.com/txt/noticia.php?id=125201
『米国のテロ取締り専門官がスペインの担当者を批判』(IBLNEWS2005年3月3日):これは、「マドリッド3・11犯人がニューヨーク中央駅の襲撃を計画していたという情報を、スペイン当局者が米国に伝えたのが昨年の11月になってからであり、余りにも遅かった、と、米国側が非難している」という内容です。
上の私の投稿に書かれてある「スペイン側が1月末に米側に連絡した」というスペイン側の主張とは食い違っており、単にスペイン判事局の勘違いなのか判事局には内緒で中央情報部辺りが独自に連絡したのか、は不明です。ただし、エル・ムンドはこのとき以来、この件に関しては全く沈黙しています。