投稿者 付箋 日時 2001 年 5 月 01 日 21:34:11:
回答先: Web現代「個人情報保護法」第1回 2001・4・11 投稿者 付箋 日時 2001 年 5 月 01 日 21:30:22:
「個人情報保護法」第2回 2001・4・18
ゴールデンウィーク明けには国会で攻防本格化
取材・文:岩崎大輔 取材:島田健弘
「総裁選を終え、新体制になったゴールデンウィーク明けには個人情報保護法案が国会審議最大の焦点となるでしょう。与党では、公明党が反対(創価学会の持つ学会員名簿が適用項目になる恐れがあるため)し、民主党もプライバシー保護法ワーキングチームを始め、金田誠一氏、河村たかし氏など若手から反対の流れが起こっています。ですが、自民党のこの法案への執着は並々ならぬものを感じます」
民主党のワーキングチーム事務長でもある梁瀬進代議士はこう危惧する。
個人情報保護法案とは、さらなるIT時代に備え、重要な個人情報の漏洩を防止するための法案であったが、法案作成の過程で“意図的”にメディアの取材も個人情報の侵害に当たるとしてしまったとんでもない法案だ。プライバシー保護と聞こえはいいが、実態は国家によるメディア規制を企む弾圧法である。
今回は、自民党の露骨な手口と身勝手なメディア批判を紹介する。
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■ 強まる自民党のマスコミシフト
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『全国民の住民票に10けたのコードをつける住民基本台帳法改正案を、自治省が国会に提出しようとしている。住民にとっては役所の窓口の手続きが簡単になり、行政機関の効率化も進む、というのがうたい文句だ。(中略)情報漏れの不安を一掃するために民間も対象にした包括的個人情報保護法制定も検討するなど、もっと深い議論が必要だ('98年2月26日 朝日新聞朝刊)』
現在、国会で審議されている個人情報保護法案は、この記事をはじめとする各社説が巧妙に利用されたものである。国民総背番号制の法制化が議論となった3年前。4大紙の論調を要約すると、「行政機関における情報ネットワークシステムを構築することにより市民にとって煩雑な役所の手続きが簡素化されるのは歓迎するが、行政機関に個人情報が乱用される恐れがある。そのために個人情報保護法案の制定をするべきだ」――そういう趣旨の社説が相次いだ。
政府はこの論調を逆手に取る形で、'99年7月、高度情報通信社会推進本部が『個人情報保護検討部会(座長・堀部正男中央大教授)』を設置させた。 そして、その5ヵ月前、メディアの暴走によって規制への格好の口実を与えてしまった事件が起こっていた。'99年2月、テレビ朝日『ニュースステーション』のダイオキシン汚染報道がそれに当たる。番組内で所沢産の野菜から高濃度のダイオキシンが検出されたと報道したことにより所沢の農家が大打撃を受けた事件だ。そして、同年2月、脳死と法的に判定された患者から臓器移植が行われ、ドナーのプライバシーが赤裸々に報道されたのだ。
すかさず、'99年3月9日、自民党は元法務大臣の谷川和穂代議士を座長にした『報道と人権等のあり方に関する検討会』の初会合が開かれた。翌10日には、機関誌『自由民主』に「報道被害からの救済」、「報道被害の防止を」と大見出しを打って、マスコミを牽制し始めた。 さらに昨年2月、今度は自民党の『公共交通機関内における雑誌広告のあり方について考える会(代表・村田吉隆代議士)』が初会合を開き、電車内の中吊り広告にまで口を出そうという勢いだ。
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■ 「オレは週刊誌に叩かれて迷惑している」
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「フリーのオープン会議の形式で行われ、自民党の代議士が入れ替わり立ち替わり、週刊誌への恨み辛みを一方的に爆発させていました。ちょうど国会の野次のような感じで、『週刊誌は事実無根の記事しか書かない』、『誰が書いたかわからないから署名記事にしろ』、『名誉毀損の金額が安すぎる』などと吠えてました。オレは週刊誌に叩かれて迷惑している、という話ばかりで、司会役の山口俊一氏、虎島和夫氏などが反対に議員をなだめるような状況でしたね。今後は、この問題が大きな争点になるな、と感じました」
光文社・橋本秀紹編集総務部長は、‘99年4月13日、自民党本部で『報道と人権等のあり方に関する検討会』のメンバーと日本雑誌協会の編集倫理委員会の間で行われた意見交換会を振り返る。
不安は的中し、個人情報保護法案の他に、今国会で提出される予定の青少年社会環境対策基本法、昨年11月、中間取りまとめで設置が提言された人権救済機関、同年12月、東京都青少年条例の規制強化と、ここに来てメディア規制法案が目白押しの格好となった。
「新聞、テレビだけでなく週刊誌、ミニコミ誌、フリーライターなども含めて表現・報道の自由は守られなければいけない」
民放連報道問題研究部委員会幹事・石井修平氏(日本テレビ放送網・報道局長)はメディアの大同団結の必要性を説く。
しかし危機感が募りながら足並みが揃わないメディアの現状を表す一例が、新聞業界紙『新聞の新聞』1月31日付で、読売新聞・渡辺恒雄社長が表明した青少年社会環境対策基本法へのコメントだ。
「新聞は青少年に対する有害情報なんてのはかけらもない。まして新聞協会の加盟者、特に理事社の新聞には全然そんな法律ができてもこっちは痛くも痒くもない。そんな法律に触れるようなことをやってないから。ただ、一部のテレビ制作者とか、あるいは週刊誌は、特に週刊誌はプライバシーの侵害、名誉毀損、青少年に対する有害情報の過剰な供給で金儲けをしようとしてるのですから、そういう法律ができてある程度、縛られても僕はしょうがないと思う」
政治家べったりの派閥記者として出世してきた人物ならではの“見識”である。
言論機関と一口に言っても、記者クラブ系と非記者クラブ系に大別される。官公庁からのお下がり情報で紙面の多くを作成している新聞テレビが記者クラブ系、対して独自取材が多い雑誌メディアは非記者クラブ系といえる。雑誌メディアは官庁からの情報に頼らず独自の取材で官公庁や政治家たちを脅かすスクープをものにしてきた経緯がある。『FRIDAY』の小渕前首相のICU写真、『週刊朝日』のKSD疑惑追及キャンペーン、『噂の真相』の森首相の買春検挙歴など、雑誌メディアがゲリラ的に活動してきたことによって政治家の暗部が白日の下にさらされたのだ。
つまり、週刊誌ほど政治家にとって忌々しい存在はないのだろう。
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■ これは政治家保護法案だ
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個人情報保護法案、青少年社会環境対策基本法、人権救済審議会、東京
都青少年条例などと、これらの法案は美辞麗句に彩られているが、新聞や雑誌、テレビメディアの規制がその裏に隠されていることは何度も述べた通り。政治家によるメディア、なかでも週刊誌憎しが垣間見えるのだ。そんな政治家たちの胸中の一端を紹介しよう。以下は、『個人情報保護システム検討会(座長・亀井久興代議士)』の幹事を務める宮路和明代議士(衆議院議員、当選4回、森派、鹿児島県第3区)との一問一答である。
――第6章の雑則として、この法規定における除外項目があり、「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関で報道の用に供する目的」とあるが、どうして出版社が明記されていないのか?
「出版か……。出版は、報道その他の中に入ることは入ると言ってるでしょ。ただし、事実を事実として伝えるのが報道だと、そう言ってんじゃない」
――自民党内ではもう少し厳しくという声があがっているようだが?
「そうだね。つまりあそこに報道情報の処理についての原則が書いてあるわけだけど、それを担保するような処置はないわけだ。主務大臣なるものも決まってないしさ。マスコミは自分でルールを作るようになってるけど、そういう努力もしなければならなくなるんだ。誰もあなたはもっとルールを作ったらどうなのっていうことを言う人もいない。役所はタッチできない」
――違反者への罰則規定が、「6ヵ月以下の懲役、30万円以下」とありますね。
「一般の個人情報取り扱い事業者については罰則もあることになってるでしょ。主務大臣もちゃんとおるわけだから。そこから指示も行く、それに従わない時は罰則もある。こういうような仕掛けになってるわけだ。その程度は私はそれでいいと思ってる。
ただ、問題はマスコミがその適用除外になってる。ほかに適用除外になってるのは、学問ですよ。学術の世界、報道の世界、それから宗教の世界、それから政治の世界だ。学術の世界は、これは文部科学省ってのがあってね、従来から学術世界ってのは主務大臣ってのも決まってるし、それなりにコントロールが効く。それから我々政治家も、選挙というものを通じて、チェックされる。政治資金に関しては公職選挙法っていう法律があって、縛られてる。だから学術の世界や、政治の世界ってのはそれなりに法の網を被ってる。それから宗教ってのは宗教法人法もあるしね、あれは文部大臣が監督してる。
でも、マスコミはないんだよね、そういうのが。何もないもんな。報道の自由だ、表現の自由だ、で全くフリーハンドですよ。したがってやりたい放題だな。端的に言っちゃうと、それに非常に悩まされてる。侵害されてる人たちはたくさんおるんでね。政治家も含めて!」
――個人の情報を保護するのが本来の目的ですよね。
「たとえばNTTが電話番号なんかを売ったりね、それから人材派遣会社のもってる情報がみだりに流れていったりね。こういうような話はしょっちゅう起こってるわけだよね。それから、市町村が健康保険に関連した情報を流してる漏洩事件もおきてる。高額税金納めてる連中の一覧表みたいのが流れたりね」
――除外項目の中に報道を入れなくてもいいという意見もあったようですが。
「そうですよ。目に余るものがあるからね。フランスなんかは報道機関はもっと規制してる」
宮路代議士の発言にもあるようにどうしてもメディアをコントロールしたいのである。政治家たちには今までやってきた様々な不正、汚職、スキャンダルに対する反省は一切見られない。ただ、自分たちに都合の悪い報道にフタをしたい一念である。この法案は公人も保護の対象となっている。政治家賛美の提灯記事は歓迎するが、権力の不正をチェックする報道は法律違反となってしまうのだ。これは個人情報保護法案ならぬ政治家保護法案なのである。(以下次号)
【今週の個人情報保護法反対キャンペーン日程表】
●「個人情報保護法案拒否! 共同アピールの会」
呼びかけ人/ジャーナリストの佐野眞一氏、吉岡忍氏、吉田司氏、魚住昭氏、宮崎学氏、斎藤貴男氏、高山文彦氏、吉本隆明氏たちが記者会見を行います。
日時/4月18日(水)15:00〜17:00
場所/日本出版クラブ2階・菊の間 新宿袋町6-1 tel.03-3260-5271
●「個人情報保護法とメディア」を問う
主催/メディア総研・民放労連
問題提唱/問題提唱/田島泰彦(上智大学教授)パネリスト/植田豊喜(TBS報道局)、魚住昭(ジャーナリスト)、臺宏士(毎日新聞記者)、佐滝剛弘(日放労委員長)、梁瀬進(参議院議員)
日時/4月21日(土)13:00〜17:00
場所/自動車会館 JR市ヶ谷駅の東京三菱銀行横入る。日本棋院会館前。
参加費/500円
問い合わせ先/メディア総研 tel.03-3226-0621、民放労連 tel.03-3355-0461
●公権力などによるメディア規制を考える
主催/朝日新聞労働組合
講師/猪瀬直樹氏(作家)
日時/4月24日(火)18:30〜
場所/朝日新聞東京本社2階読売ホール
申し込み/往復ハガキに住所、氏名、年齢、電話番号を記入し、〒104-8011 朝日新聞労働組合書記局へ。現在、受付中(定員が埋まり次第締め切ります)。
問い合わせ先/朝日新聞労働組合書記局 tel.03-3542-6479