投稿者 付箋 日時 2001 年 5 月 01 日 21:37:19:
回答先: 「個人情報保護法」第2回 2001・4・18 投稿者 付箋 日時 2001 年 5 月 01 日 21:34:11:
Web現代「個人情報保護法」第3回 2001・4・25
動かない新聞に識者たちから批判の声続々!
取材・文:岩崎大輔 取材:島田健弘
個人情報保護法案に反対する運動がようやく広がり出した。
4月18日、吉岡忍氏、佐野眞一氏、宮崎学氏をはじめとする17人のジャーナリストや作家・評論家で構成された『個人情報保護法案拒否!共同アピールの会』が緊急記者会見を開催し、廃案を要求した。
「言論にいささかでも関わりのあるフリージャーナリストや編集者には死を宣告されたに等しい法律です」
熱気に包まれた会場では、参加メンバーのノンフィクション作家・佐野眞一氏がそう挨拶を切り出した。
「新聞社やテレビ局の記者クラブに加盟している報道関係者の皆さんにお願いをしたい。政府に、公に認められた報道機関というのは恥じゃないかと思います。少しは抵抗していただきたい。記者クラブに出入りしている、言ってみれば、一面を担当する人たちが、この法案について反対と書かなければいけない。そしてそれを書けないジャーナリストはジャーナリストなんだろうか、いま僕はこの席から問いかけたい」
フリーライターの小板橋二郎氏はクラブ詰め記者に奮起を促した。
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■ 昭和20年代の水防法、気象業務法を参考にしたアナログ法
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その3日後の21日。『「個人情報保護法とメディア」を問う』と冠したシンポジウムが開かれた。上智大学・田島泰彦教授が司会役を務め、民主党・梁瀬進代議士、ジャーナリスト・魚住昭氏などがパネリストとなり活発な意見交換が行われた。
「さらなる高度情報化社会に備えて個人情報保護法は必要だが、本来その仕組みは国家の個人情報の濫用をさせないためにある。しかし、いまの法案には国家の規制はなく、メディアの取材報道の活動自体を規制する仕組みとなっている」
司会役の田島教授は矛盾点を突く。
「オウムと阪神大震災が重なった'95年頃からヤバイなぁという感じは持ちました。一昨年に盗聴法、国旗国歌法案などが立て続けに国会を通過し、去年に至っては教育改革審議会で青少年の奉仕活動義務化というものを打ち出してきた。国家が個人の自由を踏みにじって当然なんだということを言い出して、またそれを報じなければいけないメディアはほとんど何もしなかった。もう手遅れだと感じてます」
元共同通信記者でもあるジャーナリストの魚住昭氏は怒りを通り越して、呆れてみせた。そして24日。作家の猪瀬直樹氏が講師となり『公権力などによるメディア規制を考える』と題したシンポジウムが開催された。
適用除外項目の「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関 報道の用に供する目的」について、出版社やフリーライターが外れたことを、日本ペンクラブ・言論表現委員長でもある猪瀬氏は、内閣官房の審議官とのやりとりからこう語った。
「そもそもこの法律を作るに当たって参考にした法案はなんだ、と尋ねたんですね。すると、お役人は、『昭和24年の水防法と昭和27年の気象業務法の例示から、適用除外を参考にした』と答えた。テレビはNHKしかない時代ですよ。出版社系の週刊誌は昭和30年代から。昭和20年代の法案を参考にした、悪しき前例主義ですよ。そのお役人の頭の固さと言いいますか言論表現のイメージが限定されすぎている」
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■ 産業界の後押しを格好の口実に
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さらに、『個人情報保護法案拒否!共同アピールの会』では、21日、22日の両日で衆参両議員732名の全国会議員へファックスまたは、メールで公開質問状を送信した。この質問状には、個人が、公権力の所有する個人情報にアクセスする権利が確立されていないこと、言論・表現の自由、報道・出版の自由をないがしろにしてること、現代の多様なメディア・言論・表現の状況を理解していないことなどメディア側の見解を示して回答することを求めている。果たして何人の国会議員が問題の危険な本質に気づき、回答してくるのだろうか。
「上手くいけば、秋の臨時国会まで流れるかもしれません」
同法案に関して民主党や公明党など各政党とヒアリングを重ねている日本雑誌協会の渡辺桂志氏は、流れの変化を語る。
「今国会は目立った対立法案もないことですし、民主党は最重要法案として、この法案を位置づけています。今国会は6月29日までで、参議院選挙が7月29日という想定で動いてます。ゴールデンウィーク明けに新内閣の所信表明とそれに対する質疑があり、その後予算委員会ですから、その頃には少なくとも6月上旬になってるでしょう。そして、予算委員会が終わってから新内閣のもとで委員会審議です。ここで初めて、衆議院の内閣委員会で個人情報保護法案についての審議が始まります。法案の性質上1〜2回の審議で終わるはずもない。会期延長をしても採決まではたどり着けそうにもないわけです」
衆参の内閣委員会委員長が横路孝弘、江本孟紀議員と、ともに民主党員であることが救いとなっているという。
しかし楽観視してはならない。盗聴法のときのように民主党の油断があるかもしれないし、また何より今国会で自民党が強引な押し込みをするための格好の口実が他にもあるからだ。
「森さんがIT革命と声高に叫んだことで、次の新内閣でもeビジネスを産業・経済のいちばんの決め手にするという姿勢を打ち出すことは明白です。飛躍的な情報技術革新が進む現在、新しい個人情報の保護は時代の要請でもあります。EUの個人保護指令25条に該当するようなものを作れ、と産業界からの要請もあります。日本が作らないとなれば世界のeビジネスから対象除外とされる恐れがある。日程はキツイでしょうが、産業・経済界の後押しを口実に自民党が強引な押し込みをしてくる危険性があります」
民主党の簗瀬進代議士はこう警鐘を鳴らす。
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■ 憲法21条は聖域ではない
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この法案は、メディアとりわけ週刊誌への弾圧法であることは何度も述べた通りだ。その一端がうかがえる事例を以下に記す。
「検討会の委員の間にマスコミへの疑心のようなものがありました。席上で『マスコミへ配慮し過ぎる。聖域ではない』、『憲法21条(言論・表現の自由)を何か不可侵のように思っているのではないのか』という意見は度々出されてました」
この法案を起草した個人情報保護法法制化専門委員会(座長・園
部逸夫/元最高裁判事)の委員長代理・小早川光郎(東京大学教授)は当時を振り返る。
2000年6月、『個人情報保護基本法制に関する大綱案』の中間報告発表で、「報道」も規制の枠内に置く考えを示した検討会のメンバーだ。
「政治家が関心を持っている、と藤井昭夫室長(個人情報保護法案担当室長)から聞かされたことがあります。プライバシー侵害に加え、個人への報道にどういう効果が増すのか、公人も私人も同様に守られる法案となるのか、ということへの関心があったようです」(前出・小早川氏)
しかし、ことの本質を鑑みれば、政治家や官僚が、その権力を悪用して不正や汚職、スキャンダルを引き起こすのがそもそもの問題なのである。彼らが襟を正し、国民のための職務だけに邁進すればいいことなのだ。