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(回答先: 中国経常収支悪化の謎 >>あっしらさんへ 投稿者 楽観派 日時 2002 年 10 月 14 日 18:54:52)
楽観派さん、お久しぶりです。
実は、楽観派さんが顔を見せなくなって1ヶ月以上が経過したので、「楽観派さん、お元気ですか〜?」という書き込みを「論議・雑談」ボードに書き込もうかなと考えていたところです。(2週間くらいは海外にでも行かれているのかなと思っていました)
重要で面白い記事をご紹介いただきありがとうございます。
>これによりますと中国の経常収支の黒字は2001年の199億ドルから2003年
>は88億ドルに減少すると予測しています。
まず、中国と日本の経常収支を比較すると、中国:貿易収支黒字>経常収支黒字、日本:貿易収支黒字<経常収支黒字という大きな構造的差異があることが重要だと思っています。
中国は、貿易黒字の過半を外資に依存し、資本収支は黒字です。
中国(政府・企業)は貿易で稼いだ黒字で国際債務を履行したり株式配当を支払ったり、中国を製造拠点としている外資は貿易などで稼いだ利益を本国(本社)の送金して配当などに使っています。
経常収支が減少する見通しは、大元である貿易収支の黒字減少・国際債務の利払い増加・国際投資への配当増加・外資の利益流出のいずれかもしくは複数が増大することに基づくと思われます。
世界経済の低迷が予測されていますから、貿易収支の黒字は減少しないとしてもそれほどの増加が見込めないとは言えます。
中国がこの間の経済成長のために対外借り入れを増加させていたり、中国企業の資金調達が外国投資に依存している割合が高ければ、利払いや配当というかたちで流出する外貨が増加することになります。貿易収支の黒字増加率よりも、そのような流出の増加率が高ければ、経常収支の黒字幅は減少します。
もう一つ、外資の本国への利益送金も、貿易(輸出)の伸びが鈍化すれば、増えることが予測できます。輸出の伸びが高ければ、中国での生産力を増強するために利益が再投資すされるので流出額は押さえられます。
しかし、輸出の伸びがなくなれば生産力の増強に利益が使われなくなるので、余剰通貨は本国に送金されることになります。(共産主義国家中国に余剰通貨をそのまま置いておこうという外資はまずいないでしょう)
>ところで、経常収支黒字減少の理由として考えられるのは輸出の減少/輸入の増加だ
>と思いますが、エコノミストは中国の経済成長率は2002年も8%と予測しており
>ます。同時に、その経済成長を支えているのは政府支出であり、それはこれから数年
>間増えつづけるだろうとも言っています。つまり中国経済の減速はないと考えている
>ようです。
外資ではなく中国系企業も、民営や民営化された旧国有企業が経済活動の主力を担っていますから、証券市場を通じて外国投資に資金を依存している割合が高ければ、利益のある割合が配当というかたちで国外に流出し、経常収支の黒字を減少させます。
中国の経済成長率が、エコノミストのように今後も8%の成長が続く、とりわけ名目ベースで続くとは考えられません。
国際収支で問題になるのは、以前も指摘しましたが、“中国元安”政策が及ぼす害悪です。
元安ということは、輸出競争力の支えでもありますが、中国の労働活動力の成果(財)が安く外国に販売されることであり、外国の労働活動力の成果を高く購入しなければならないことを意味します。
配当はともかく、日本のように原材料以外は自立した産業基盤を確立しているわけではない中国は、高度産業生産財の輸出を拡大しようとすれば、日本などからの輸入を増加しなければなりません。このような場合に“元安”が大きな影響を与えることになります。
日本などからの輸入は相対的に高く、自国からの輸出は相対的に安くと言うことになるので、貿易収支の黒字が減少します。
“元安”は国際債務(借り入れ)の返済負担も過大なものにします。“元安”は、債務は大きく、返済原資である財の輸出は小さいという通貨価値を意味します。
デフレ状況の“元安”は、輸入や対外債務をより過大な負担にします。
輸出依存・外資依存の中国経済は、今後減速に向かうと予測しています。
>なお日本に関しては2003年の経済成長率は+1%としており、これは10月7日
>に更新されていますから現在の株安も勘案された数値かと思います。とすればエコノ
>ミストは世界経済の破滅的状況は考えていないようです。ではなぜ中国の経常収支が
>悪化するのか?
日本の2003年経済成長率+1.0%予測は、2001年がマイナス2.5%、2002年がマイナス1%という見通しのなかで、そこまで落ちたのだから、少しは上昇に向かうだろうという経験則的な予測と思われます。
経済成長率が+1.0%でも、デフレが1%を超えて継続するのであれば、名目成長率はマイナスです。
>もし中国の経常収支黒字が急激に減りつづければ、多くの論者がすでに指摘している
>中国のアルゼンチン化がおきるのでしょうか?同時に、現在韓国の最大の貿易相手国
>は中国だったと思いますが、エコノミストの予測があたっているとして(昨年、確か
>に中国の黒字は5%減少している)、それは東アジアあるいは世界にどのような影響
>を及ぼすのでしょうか?
アルゼンチン化というより、国内治安の悪化や分裂の危機のほうが現実性があると思われます。
経常収支の黒字減少が進めば、中国の現在の経済政策で恩恵を受ける沿海部地域と“おあずけ”を食わされている内陸部や支配地域(チベット・ウイグルなど)との摩擦が強まります。(経常収支の黒字は、中国国内における信認性のある通貨量増加の基礎です)
東アジア及び世界は、「世界的不況」のなかで、いかにして自国は経済成長を維持するのか、成長できないとしても破綻をいかにして防ぐかという方向に傾斜していくと予測しています。
当然の考えである自国第一主義がより強く打ち出され、それを実現するための手段としてブロック化が進められると考えています。
中国のFTA促進も、そのような事態を見据えたものだと思われます。