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Re: 金融的利益条件をひたすら考えているのが80年以降の米国当局者です 投稿者 あっしら 日時 2002 年 6 月 30 日 14:27:27:

(回答先: Re: 「ドル安」が「債務切り捨て」になる意味 投稿者 とうしろ 日時 2002 年 6 月 30 日 01:22:49)

米国の強みは、自国通貨ドルが国際基軸通貨であるということです。(米国経済を分析するときも、この“特殊性”が頭を悩ませます)

原油・鉱物原材料や農産物がドル建てで国際的に取引され、国際決済もほとんどがドルで行われていることから、「ドル安」がそのまますぐには米国経済のインフレに直結しません。
また、米国が最大の輸出市場であることから、工業製品も、「ドル安」がそのままドル建て価格の上昇には直結しません。

原油産出国などは、ドルに対して自国通貨が高くなった国から製品を輸入するときに、「ドル安」の痛みを感じることになります。
日本など対米製品輸出を拠り所にしているところは、利益を減少させて「ドル安」に対応することになります。しかし、「ドル安」は、原油などの輸入商品価格を押し下げますから、しばらくするとドル建て輸出による利益は回復します。そして、次なる「ドル安」に備えて生産性の上昇をさらに追求していきます。


米国経済は、非基軸通貨国であれば自国通貨安で起きるインフレからある程度逃れることができます。
これは、米国の産業活動にとっては有利なことですが、米国政府及び経済界は、それを活かすより、より手っ取り早い金融的取引での利益拡大を選択してきました。


>また、米当局が通貨切り下げによってインフレを志向したのだ、とは言えない面が多
>いと思います。インフレは避けるべきもの、と認識されていると考えるのが普通です
>から。

米国当局は、「ドル安」によって過去の対外債務の実質的な切り捨てを行いながら、非基軸通貨国であれば当然のように起きるインフレを最小にとどめていると言えます。
逆に言えば、国内債務は、2から4%のインフレ率で名目利率が緩和されるだけですが、対外債務は20から30%の緩和ができるということになります。
米国当局がどこまで意識しているかは別として、公的債務の50%以上が対外債務である米国を一時的ではあれ救済しています。

インフレによる債務実質切り捨て効果と「ドル安」による過去の対外債務実質切り捨て効果とは別です。


>例えばプラザ合意によるドル切り下げを考えてみると、あれは交易条件の改善のため
>に通貨の交換比率の変更を意図したのだと見るべきで、「米国政府が自国の債務軽減
>を図った」と見るには少し無理があるのではないか、と感じた次第です。

米国経済は、80年代前半に製造拠点の大流出が起きました。そのほとんどが、米国以外への輸出も積極的に手がけている企業です。
膨大な軍事予算に支えられている企業は、基本的に内向きですし、輸出も“政治的”に決まるものです。(ボーイングなど民間航空機の輸出に大きく依存している企業は別ですが)
農産物の輸出も、実に“政治的”なかたちで決まります。

このような産業基盤であれば、「ドル安」は交易条件の改善にもあまり貢献しません。
それどころか、半導体など工業品原材料の価格が上昇することなどで、条件が悪化する企業まで出てきます。

一方、「ドル高」期の80年代前半にメキシコなどに製造拠点を移した企業は、「ドル安」により、資産評価を上昇させるとともに自国(米国)向け輸出でドルベースの利益を拡大できる条件を得ます。
また、「ドル高」期に対外証券投資を行っていた経済主体も、ドルベースの利益を大きくするチャンスを得ます。

これらの裏返しが、米国経済主体(政府)の対外債務の実質切り捨て効果なのです。

このようなことは、私よりも、米国当局者自身のほうががずっとよくわかっているはずです。
米国は、80年頃から、政府から企業そして個人までが金融的利益の獲得に走るようになっています。
これは、財の交易条件よりも、金融的利益条件を選択することに合理性を感じるようになったということを意味します。


>米国債が全て外国の財貨との交換を前提に発行されるならともかく、実態はそうでは
>なく、米ドルベースの財・サービスに化けているのではないでしょうか。

債務相当分で外国の財貨を買うかどうかは、「対外債務の実質的切り捨て効果」と直接関係ありません。
国際基軸通貨であるドルは、どこでも何でも買えるという通貨です。

日本円などのハードカレンシーは、時々の交換レートで米ドルとの交換性が保証されていることで国際通貨になっています。

例として上げた内容で言えば、

日本経済主体:100億円を貸して、利息を含み91億円しか返済してもらえなかった。

米国政府:100億円を借りて100億円に相当する財やサービスを購入したが、利息を含み91億円しか返済しないで済んだ。


この損得が問題なのです。

購入した財やサービスが、すべて米国内のものであっても同じことです。
97年当時にそのような財とサービスを日本円評価で買おうとすれば、100億円必要だったということです。
00年も、97年に購入された米国内の財とサービスは1億ドルだとします。
日本の経済主体が、00年もその財とサービスを購入したいと思えば、償還された1億ドルで購入できますから損得はないように見えます。
しかし、100億円を日本の銀行に無利子で預けていた別の経済主体なら、それらの財とサービスを70億円で購入することができます。


最後に、別の実例を

これまでと同じ条件とします。

1)米国の経済主体が、ドルを1億ドル借りて、日本円を100億円手にした。

2)その100億円で3年物日本国債を購入した。

3)3年後に手にしている日本円は、115億円です。

4)借りた1億ドルは、元利合計で1億2,100万ドルを返済しなければなりません。
5)115億円をドルに転換すると1億6,428万ドルになったので、“儲けとして”4,328万ドルを手にしました。

6)米国の財やサービスはあまり値上がりしていなったので、97年当時3,500万ドルで00年は3,800万ドルになっていたビルを購入しました。


この米国の経済主体は、元手なしで高利(年利10%)の借金をして、3年後には、3,800万ドルの価値がある不動産と現金528万ドルを“所有”しています。

この経済主体が儲けたポイントは、ドル建てで借金をしたことです。

「実質的な債務切り捨て効果」で儲けた人は見えやすいのですが、切り捨てられて損をした人は、明確ではありません。
債務切り捨てという損を被ったのは、その人に1億ドルを貸した経済主体です。
その人が米国人で米国内の取引だけを行っているのであれば気づきにくいことかもしれませんが、返済してもらった1億ドルは、その時点では、実質価値が0.7億ドルしかないのです。


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