02. 2013年3月27日 11:44:29
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【第273回】 2013年3月27日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] 公的年金運用の「見直し」はどこに行くのか? 公的年金の積立金の運用見直しが 会計検査院の指摘でとは情けない 3月25日、月曜日の『日本経済新聞』の朝刊の一面トップに、公的年金の積立金の運用見直しの記事が載った。見出しは、「海外インフラにも投資」「公的年金 運用、毎年見直し」である。国民年金と厚生年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針を、「抜本的」に見直すのだという。 年金問題は、すぐに結論が出ない。したがってニュースとしては急がない記事や、いわゆる「観測記事」が多いので、緊急性のある経済ニュースが少ない月曜日の朝刊に載ることが多い。例によって「検討中」の問題を報じており、「ヒマネタ」的な記事だが、内容には、いくつか考えさせられる問題がある。 運用方針の抜本的な見直しに至った経緯として、「04年度から運用資産の構成を変更しておらず、昨年10月に、会計検査院からも機動的な見直しが必要と指摘された。このため、GPIFでは」と記事にはある。 考えてみると、これはかなり妙だ。 GPIFの運用方針は、外部の専門家で構成される運用委員会の検討を参考に、理事長の責任で決定されている。「国内株式」「海外株式」などの大まかな資産分類(「アセット・クラス」と呼ぶ)の基本的な配分計画を決めた「基本ポートフォリオ」は、確かに04年から動いていないが、GPIFとしては運用方針の適切性を毎年見直している建前ではなかったか。 また、基本ポートフォリオが動いていなくても、基本ポートフォリオが定める資産配分計画には、かなり大きな「許容乖離幅」(注:私見では少し大きすぎる)があり、現実のポートフォリオも基本ポートフォリオとズレがあり、このズレは変動していたはずだ。 一方、会計検査院は、公費の使用が適切であるか否かに関してチェックを行うプロであはあろうが、たとえばアセット・クラス別の期待リターンを推定するような運用の意思決定のプロではない。 何が言いたいのかというと、会計検査院が不適切だと指摘するということは、GPIFがよほど不真面目であるように彼らの目に映ったのではないかということだ。これを受けてGPIFが運用方針を見直すという今回の経緯は、それをGPIF自身が認めているかのように見える、ということだ。 GPIFの運用意思決定は、会計検査院の指摘に反論できないくらい形骸化していたということなのだろうか。 だとすると、GPIFには、海外インフラへの投資といった新しいアセットクラスの運用など、とても任せられるものではないだろうし、そもそも、100兆円を超える公的年金資産を運用する任務に堪える組織ではないということにならないか。 本当のところは、どうなっているのだろうか? 民主党で見直しの結論は出ず 公的年金の「失われた3年」 公的年金の運用に関しては、多くの問題点と多様な意見がある。実は、民主党政権時代に、長妻昭・元厚労大臣の下で、「GPIFの運用のあり方検討委員会」という外部識者を集めた会合が開かれたことがあり、筆者も参加した。 詳しくは報告書や議事録を見ていただきたいが、運用方針に関しては、「非市場性国債100%で運用すべきだ」という意見から、「もっとリスクを取り、ヘッジファンドなどに積極的に投資すべきだ」という意見まで幅があり、結論は出なかった。 多様な意見のあった参加者の中で、まとまりかかった意見の1つは、04年度の財政検証で想定された将来の運用利回りの数字である「4.1%」が非現実的に高く信憑性がないので、この数字を再検討すべきだというものだったが、この数字はそのままに(注:2014年度に再検証される予定なのだろう)、運用方針を見直すということなのだろう。 また、付け加えておくと、かつての民主党政権は「最低保障年金」の仕組みをつくるなど、公的年金の仕組みを抜本的に見直すというマニフェストを掲げて総選挙に勝った。そして、これが建前となっていたため、年金一元化をはじめとする公的年金の制度改革全般が滞る結果を招いた。 民主党政権の間、将来の年金制度の前提が確定しないまま、制度を現状維持しつつ、運用その他の業務は、様子を見て時間を空費した。民主党政権時代は、日本の公的年金にとって「失われた3年」だった。 結果から見ると、民主党政権には日本の年金制度を変えるような大きな仕事をするマネジメント能力がなかったということだろうし、厚労省は現行の枠組みを守ることができた。しかし、年金の制度にとっても、積立金の運用にとっても、この3年間の時間は大きなコストであったと言わざるを得ない。 公的年金運用の検討ポイント 個人的には保守的な運用が望ましい 公的年金の運用がいかにあるべきかについては、検討のポイントが数多くあり、論者によって結論も多様だ。 簡単に思いつくだけでも、@「積立金の額」(そもそも、運用すべき積立金の額が適切かどうか)、A「リスク資産での運用の適否」(株式は民間が投資すればいいのではないか、など)、B「公的年金運用が民間経済に与える影響」(公的年金が民間会社の大株主になることの適否と影響)、C「公的年金運用が市場に与える影響」(市場の機能を育成するか、あるいは阻害するか)、D「公的年金運用の運用組織はいかにあるべきか」(厚労省の官僚は運用のプロか、など)、E「公的年金運用と運用業の関係」(手数料は適切か、癒着はないか、運用業界に与える影響はどうか、など)の問題がある。 ちなみに筆者個人は、まず公的年金を一からスタートできるなら(あるいは制度を抜本改革できるなら)、積立金のリスク資産での運用は必要ないし、やらない方がいいと思っている。資本市場での運用は、「民間で出来ること」だし、「民間がやった方がいいこと」の最たるものの1つだからだ。 しかし、積立金が存在し、運用業務が存在するという「現実」がある。この現実を考えた場合、運用額(積立金の額)、運用リスクを抑えつつ、大方の理解と合意が得られる「保守的な運用」を行うことが望ましいと考えている。 率直に言って、巨額の運用資産の運用を十分に把握し管理できる人材と組織を政府が持ち、かつこれを責任を持って管理することは現実的ではない。能力以上の背伸びをすべきではない。 また、年金の運用は、他人の(年金加入者、あるいは納税者の)お金の運用であり、多くの他人の十分な理解が得られ、説明責任が果たせる保守的な運用が望ましい。リスクなどが十分説明できない実験的な運用を行うべきではない。 新興国株式へのインデックス運用くらいまでは理解が及ぶ許容範囲だろうが、インフラ投資やPE(プライベート・エクイティ)への投資などは、外部の自称専門家(ゲートキーパー業者など)に「丸投げ」になるのではないか。運用業者、関連業者から見て「いいカモ」になる公算が大きい。 ついでに言うと、巨額の公的な運用資金に対して群がる運用業者を大いに警戒すべきでもある、と考えている。年金基金自身が良し悪しを判断できないような運用者に、高い運用手数料を払うべきではない。 厚生年金基金も追随か GPIF方針変更の影響 「べき論」はさておき、GPIFは運用方針を変更するのだろう。おそらくは、内外の株式投資比率の引き上げと、新興国への投資、インフラ投資や未上場株投資など上場証券以外への投資、ヘッジファンドでの運用などの全部、またはいくつかを実行することになるのだろう。 GPIFが新たに採用する運用方針は、企業年金の仕組みの1つである厚生年金基金の運用にも影響を与える。厚生年金基金は、厚生年金から運用を代行している「代行部分」について、GPIF並みの利回りで運用する必要があるので、株式組み入れ率の変更や、新しいアセットクラスの追加は無関係ではない。 たとえば、GPIFが株式投資の比率を上げるなら、多くの厚生年金基金がこれに追随することになるだろう。 また、特に新しいアセットクラスの採用については、おそらくGPIFの運用方針変更をビジネス・チャンスと捉えて、企業年金に営業攻勢をかける運用業者が登場することだろう。 厚生年金基金側での対応は、それなりに複雑なものになる可能性がある。「アベノミクス相場で運用収益を上げて、さっさと代行返上してしまいたい」と考える基金も登場するだろうし、少々の相場回復では代行返上は無理だとして、GPIFの方針変更について行かざるを得ない基金もあるだろう。 GPIFの運用方針変更は14年度? 運用リスクを最終的に担うのは国民 GPIFの運用方針変更の実施時期は、日経の記事では「14年度に向け」とあり、「13年度に前倒しで資産構成を変更する可能性もある」とも書かれている。動く金額が大きいので、運用業者のみならず、市場全体が今後GPIFの方針変更を探ることになる。 運用計画について十分な説明責任を果たすと、自分の投資行動を事前に明かすことになり、市場に利用されやすい巨大公的年金運用の弱点がここにも見える。 GPIFの運用リスクを最終的に負っているのは、公的年金の加入者ないしは納税者だ。一国民としては、「アベノミクス相場」の天井を掴むような投資タイミングにならないことを祈ろう。
【第56回】 2013年3月27日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授] 小学校教育もシューカツも根は一緒 日本社会を停滞させる「本音と建前」 大学4回生の就職活動が本格化している。今年は、経団連が加盟企業に対して採用試験や面接を4月1日以降に行うことを「紳士協定」として呼びかけたこともあって、例年よりも就職活動の開始時期が遅くなった。 大学では1、2回生時に、専門分野に入る前に必要な知識・教養、技法・スキル、語学力などの基礎を身に着ける。そして、3回生から、卒業論文の完成を目標にして、より専門的な研究に取り組むことになっている。ところが、3回生の大半の期間を就活に費やすことになり、学生は大学らしい教育を受けることなく社会に出ることになっていた。 だが、今年の4回生は就活の開始時期が遅くなったことで、3回生時に学業に専念できる時間が長かった。知識・教養・スキルの習熟度は、例年よりも高いように思う。企業側は、学生が大学で身に着けた知識やスキルに期待などしていないだろうが、今年の4回生が、企業側の残念な認識を、少しでも変えてくれればと思う。 私の就職活動: 「就職協定」の建前と本音 この連載のプロフィールに記載の通り、私は1991年に伊藤忠商事(株)に入社した。私の就職活動は、現在とは真逆で「売り手」市場だった。バブル経済による好景気で、企業活動は拡大し、新卒の求人を増やしていた。学生1人に対し、何社も殺到するような状態であり、企業は優秀な学生の囲い込みに必死であった。 当時と現在の就活で大きな違いなのが、現在は廃止されている「就職協定」の存在だ。高度成長期、企業側が優秀な学生を確保しようとして、就活がどんどん早期化した。これに対し、大学側は学生の学業専念が阻害されると企業側を批判した。企業側と大学側の間で協議の場が設けられ、一定の時期まで企業から卒業見込みの学生に対するアプローチを行わないという「就職協定」が締結された。 私が就活を行った1990年は、10月1日が会社訪問解禁日だった。企業は、10月1日以前に学生に接触しないことになっていた。だが実際には、多くの学生が10月1日以前に企業の採用内定を獲得していた。私の場合は、5月頃から「OB訪問」として企業と接触し、7月中旬から一斉に始まった商社の面接に呼ばれ、伊藤忠など4社の内定を得た。 企業は、表向き「就職協定」を遵守するとしながら、実際には「青田買い」と呼ばれた学生の囲い込みを行っていた。特に、総合商社のような大手企業は、人事部の下に出身校別の「リクルーター制度」を設けていた。これは、出身校別に1〜10年目の若手から課長補、課長役クラスの社員を「リクルーター」として階層的に組織し、「OB訪問」という名目で学生と接触させる制度であった。 リクルーターは、社外のレストラン・喫茶店などで学生と面会した。リラックスした雰囲気で食事をしながら、学生に対して会社の様子を話し、学生の質問に答えたが、これは事実上の一次面接であった。リクルーターは、面接結果のよかった学生を、年次の高いリクルーターに紹介した。こうして、非公式な学生の選考が進められ、選考に残った優秀な学生が7月頃の正式な面接に呼ばれたのである。 企業の正式な面接といっても、10月1日以前に行われたため、明らかに就職協定違反であった。しかし、違反企業が新聞で協定破りを公表されることはあっても、それ以上のペナルティは一切なかったため、協定破りは堂々と行われていた。そして、解禁日の10月1日は、事実上内定者が集合し、顔を合わせる場であった。 就活は、当時の若者に対して、社会に「表」と「裏」、「建前」と「本音」があることを、しっかりと教えてくれた。社会の公式ルールを遵守することが大事というのは表面的な話で、「建前」にすぎない。現実の社会では組織利益を守るために、公式ルールを逸脱しても許される。むしろ組織利益に準じることが、世渡りの術である、という世の中の「本音」を、若者は就活を通じてしっかり叩き込まれたのだ。 バブル経済が崩壊した後、政官財のさまざまなスキャンダル・汚職が噴出した。その中には、若手のキャリア官僚や、大手企業の若手社員が逮捕される事件もあった。当時の日本の若者が、組織利益のために、モラルに反する行為、犯罪に走ったことと、就活を通じて世の中の「建前」と「本音」を知ったことには関連があるように思う。 学習塾の「受験戦争」と学校の「平等教育」: 小学生が学ぶ世の中の建前と本音 かつて、私たちの世代が、就職活動時に教え込まれた世の中の「建前」と「本音」を、いまや小学生までもがしっかり教え込まれている。「ゆとり教育の学校」と「中学受験のための塾通い」という建前と本音である。公立中学校で、校内暴力、いじめ、授業崩壊など教育の荒廃の問題が深刻化し、中高一貫校や私立中学への進学を目指す親子が増えている。また、公立学校の「ゆとり教育」への単純な不安感もある。小学生が受験のために学習塾に通うのは、完全に一般的になった。 小学生は学習塾で、学校よりも難しいことを習っている。中学受験では、高度な発想力・論理的思考力・読解力・記述力を試される高度な問題を解かなければならず、小学校の授業だけでは受験対策として不十分だからだ。一方、公立の小学校では近年「脱ゆとり教育」が進んではいるものの、基本的に「平等教育」であることは変わらない。同じ学年の子ども全員が理解できる教育を目指し、勉強ができない子どもに標準を合わせている。 そのため、例えば小学2年生の場合、学習塾で掛け算・割り算の筆算や、分数の計算など4年生並みのことに取り組んでいる一方で、学校の宿題では、九九をひたすら書き写す単調作業を強いられるということが起こる。これは、塾通いの子どもにとっては、ただひたすら退屈なだけの作業であり、親に「やりたくない」と不満を漏らす。しかし、親は子どもに黙って宿題を続けることを求める。 また、親は子どもに対して、学校で決して塾通いでレベルの高い勉強をしていることを披露しないように言い聞かす。学校では、子どもが周囲に合わせて、決して“出る杭”にならないように気をつけるのだ。子どもたちは、「平等教育」「ゆとり教育」の学校と「受験戦争」の学習塾の間で、しっかりと本音と建前の使い分けを理解するようになる。 就職活動で突然、学生を 奈落の底に叩き落とす企業の「本音」 次に、現在の大学生の話をしたい。「若者の就職難」が深刻となり、我々の世代とは比べ物にならないくらい、就活は激しさを増している。しかし、現在就活に必死な4回生は別だが、1〜3回生を見ていると、不思議なほどのんびりしている。彼らはいずれ直面するシューカツの大変さを知っているはずだ。だが、早めに危機感を持ってその準備をしたり、専門知識を身に着けるために必死で勉強したり、語学や技術を磨く学生は少ない。大多数の学生は、ほどほどにサークル活動を楽しみ、バイトし、楽勝科目を選んで出席している。 私には正直理解しがたい、この学生の緩さは、高校までの「ゆとり教育」に加え、大学でも基本的に勉強ができない学生を手取り足取りサポートして甘やかす風潮があるからだろう。だが、こんな若者を取り巻く甘い環境は、就活が始まると一変する。若者は就活が始まると、突然奈落の底に叩き落される。グローバル経済の厳しい生存競争に晒されている企業には、若者を甘やかす「ゆとり教育」という「建前」はなく、ひたすら「本音」をむき出しにして、優秀な学生を獲得しようとするのである。 だが、突き詰めて考えると、企業にも「建前」と「本音」がある。企業の建前とは、若年層の就職難を、彼らの努力不足とみなし、批判することである。しかし、企業の本音は実は違うのではないだろうか。 企業は、長期的な景気停滞に対して、国内の正社員の「終身雇用」を頑なに守ろうとしてきた。「終身雇用」とは言うまでもなく、新卒で正社員として就職できれば、定年近くまでの数十年間、失職しないシステムだが、これは企業のみならず、自民党から共産党までのすべての政治家、財界、労組、マスコミのほとんどから、いわば「聖域化」されてきたといえる。 そして、企業は「聖域」である既存社員の雇用を維持するために、若者の新規採用を抑制し、派遣や請負等の非正規雇用社員を増加させた。若者を「努力不足」というのは「建前」で、実は終身雇用という「聖域」を守るために、若者を犠牲にするというのが企業の「本音」なのだ。 だが、若者は、企業の「本音」を薄々知りながら、少なくなっていく大企業の正社員のポストをなんとか手に入れたいと、怒りを露わにすることなく、大人しく振る舞っている。さまざまな「建前」と「本音」の存在が、日本社会を停滞させているように思えてならない。
【最終回】 2013年3月27日 安間裕 ITコストだけは低く、総コストは世界一高い日本企業を変えるために必要なこと――リアルタイム・ビジネスを支えるITの作り方 不定期で連載をしてきたこのコラムも、今回で最終回となりました。 最後は、タイトルにふさわしく、リアルタイム・ビジネスの重要性と、それを支えるITの作り方について考察をしてみたいと思います。 リアルタイム・ビジネスで、私が大切だと思っていることは、3つです。 1. テクノロジーにこだわること 2. ITをコストとして考えないこと 3. データと現場にこだわること 1.テクノロジーにこだわること 最近、『リバース・イノベーション』(ビジャイ・ゴビンダラジャン, クリス・トリンブル (著))、という本を読んだのですが、示唆に富んでいて、大変面白かったです。 この本の主旨は、「先進国で売れた製品やサービスは、数年後に必ず発展途上国でも売れる」というグローカリゼーションは、最早、幻想であるというものです。 その理由は、驚くべきITの進化にあり、30年前の先進国のニーズを当時の技術で解決をした製品を、周回遅れで発展途上国に展開したとしても、受け入れられない。今の発展途上国のニーズを先進のITによって解決する商品やサービスを提供しない限り、絶対に生き残れない、それほど、ITの進化は環境を変えてしまっているという、とても的を射た論を展開しています。 この本に載っている事例ではないのですが、有名な「インドの洗濯機」の話はご存知でしょうか?インドでは、停電が多発する、でも、日本の高性能な全自動洗濯機は、停電が起きると、最初に戻って、また、給水から始める、つまり、インドでは永遠に洗濯が終わらないことになってしまいます。それに対して、サムスン社は、超小型バッテリー内蔵メモリーチップを搭載することでレジューム機能を実現して大ヒットしたという有名な事例です。 これは、後述する「現場にこだわること」にもつながるのですが、ここではそれよりも、「ITの進化は、新たなニーズとその解決方法を、異なる進化形として生み出す」と認識しておくことが重要だと思っています。 このコラムでも書いてきたリアルタイム・ビジネスを実現するためのテクノロジーの事例は、ほんのわずかな期間に、既に実用化され、また進化を遂げています。 これまで何度か取り上げた、MITのメディアラボの天才、Pranav Mistry君が、最近、またしても、「透明マウス」(Mouseless - an invisible computer mouse)という面白いものを作りました。これは、文字通り、手で、マウスがあるふりをして動作をすると、本当にポインタが動いたり、クリック、ドラッグが出来てしまうというものです。 AR(Augmented Reality:拡張現実)も、最早、当たり前になっています。 先日、劇団四季の「リトルマーメイド」のチケットを買ったら、ポストカードが送られてきて、それにスマホをかざすと、泡がぶくぶく出てきて、そこにはいないはずのヒロインの「アリエル」が登場していました。これ欲しさにチケット予約する人もかなり多いのではないかと思います。
一方、このコラムでも紹介をしたFusion-ioやHadoopなどの高速化の技術も、どんどん、実用化されてきています。 データ解析などに基づく戦略策定は、通常、小さな「試み」を繰り返し、学習しながら、有効な戦略を発見していくというアプローチが重要になります。我々が、あるお客様で実現をした情報系分析システムは、これら最新の技術を活用し、最小のコストで分析と試験施策を始め、効果が見えた時点で、規模を拡大するという、上記のアプローチに即したものになっています。それは、巨大ITベンダーが推奨する機器よりも、リニアにコストパフォーマンスと処理性能が保て、かつ、先行投資が無駄にならず、社内稟議も通しやすい仕組みとなっています。 これらの技術は、今のところは、データ解析系に対する活用が中心ですが、より、基幹系に近い仕組みにおける、「バッチ処理」の撲滅のための武器としても、既に実用が可能となっています。
大切なことは、メーカーの営業が紹介する技術だけを意識するのではなく、自ら能動的に最新テクノロジーを学習し先んじて取り入れていく姿勢を持つことだと思います。 システムの構築は、残念ながら、大きなものでは数年にわたります。加えて、それを活用し、投資を取り返すためには、更に数年が必要です。 ITは、かつてよりも加速度的に進化しており、数年後から利用を開始し、数年にわたって活用される仕組みを考える上では、「今使える技術」に加え、「将来主流となる技術」を、意識することはとても重要です。 日本が世界のトップランナーに返り咲くために、そこで意識をするべきは、国内の競合のみではなく、グローバルの「先駆者」であり、「世界的に見て、将来にわたり陳腐化しない弾力性のある仕組み」を手に入れることが不可欠だと思います。 2. ITをコストとして考えないこと ITは、いろいろな勘定科目の中で、唯一、「他の費目」を減らすことを可能とする特殊な科目です。 つまり、営業費は、営業費用自身を削ることでしか、全体のコスト削減には寄与できませんが、ITは、IT費を使うことによって、営業費など、さまざまコストを削減できる「武器」になります。 このコラムの第1回にも書きましたが、日本企業のIT部門は、ITコストの削減を主要な目標にあげていらっしゃいます。 JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が挙げている指標を見ても、日本は、対売上比で1.03%くらいしかITコストを使っていません。 よく言われるように、これは、米国の1/3から1/4、ヨーロッパなどと比較しても非常に低い値となっています。 一方、日本の販管費は、対売上比で、北米の1.5倍、アジアの2倍弱となっています。 この結果、当然ですが、日本のEBITDA(営業利益とみていいと思います)は、グローバルで最も低い数値になっています。 -日本のIT費用は、米国の1/3〜1/4、世界的に低いことで知られる。 -日本の販管費は、世界で最も高く、全産業平均で、売上比で日本は17.3%、北米が11.6%、欧州、13.1%、アジアに至っては9.0% (出所:日本機械輸出組合「日米欧アジア機械産業の国際競争力の現状2010年度」より) -利益は最も低く、金融を除くEBITDAの全産業平均で、北米17.9%、欧州18.3%(英国除く、英国は18.6%)、アジアは16.8%、日本は9.8% (出所:野村證券株式会社金融研究所企業調査二部情報通信産業調査室) ITコストのみを下げることに躍起になり、ITを武器とし、コスト全体を抑えることができていない、とっても陳腐な日本企業の構図が透けて見える気がします。 これでは日本企業が勝てないのは、当然ではないでしょうか? 3. データと現場にこだわること 昨今、データサイエンティストという職種がとても重要視されてきています。日産自動車でも、米シリコンバレーに、データサイエンティスト拠点を作られていますし、マッキンゼーのグローバルレポートでも、データサイエンティストは、これから最も必要とされる人財だと言っています。 統計学を駆使し、ITを理解し、戦略を洞察する。ITが進化をすればするほど、前述のようなテクノロジーを活用し、大量の情報がデジタル化され、統計演算が高速化し、「リアルタイム」に意思決定を支援できるようになります。 しかしながら、その戦略を洞察するうえで、私が最も重要だと思うのは、「現場」「現地」という視点です。 先に述べた、『リバース・イノベーション』には興味深い事例が満載ですが、その中の、GEヘルスケアの心電計(ECG)の話はとても示唆に富んでいます。 GEヘルスケアのECGは市場で大きなシェアを占めていて、その高性能さには絶対の自信を持っていた。 一方、インドでは、心臓疾患の患者が非常に多く、爆発的に売れるはず、または、周回遅れで、いつかは必ず売れるはずという思いもあったんだそうです。 ところが、いつになっても全然売れない。 そこで、データからだけでは分からないということになり、現地に長期滞在をし、真のニーズを探ったところ、インドは、人口が多いとはいえ、地方に分散していて、病院まで行けない、その上、お金も持っていない、お医者さんも複雑なECGの操作に長けていない、などの課題やニーズが「現場」に存在していた。 これをもとに、現地で調達しやすい機材を使い(心電図の記録には公共バス用に何百万台と使われているチケット印刷機を転用したり、大量生産型のチップに切り替えたり…)、簡便でポータブルで、安価なECGを売り出したところ、爆発的なヒットにつながり、その後は、米国の過疎地にも展開しようとしているという話です。 データによる「事実尊重型意思決定:Fact Based Decision Making」は重要ですが、それは、「現場」「現地」を知ってこその洞察に支えられることが重要です。 これは、日本のITにも言えることだと思います。 日本のIT部門は、自部門に閉じこもり、「現場」を見ようとしない。 業務部門も、ITは、「IT部門の仕事」として、企業全体の武器として活用するという視点が欠落している。 東京海上ホールディングスでは、「アプリケーション・オーナー・システム」という仕組みを根付かせ、業務部門にITの責任を持たせています。 これにより、経営、業務部門において、「ITをビジネスに貢献させるのは自分たちの仕事である」ということが、「他人事」ではなく、「自らを主語」として植えつけられています。結果、ITの障害として最も大きいとされる「要件の誤り」が激減するという、うれしい副次効果も出ているということです。 IT部門の方々が、「現場」「現地」を自らの課題として知ることも重要ですが、「現場」「現地」の方々も、ITはIT部門だけの仕事ではなく、業務、ひいては、経営を支える、全社の「仕事」であると捉えることが、ITを武器としたリアルタイム・ビジネスの実現に、最も重要なことではないかと思います。 約1年にわたって不定期連載をしてきましたが、これで最後になります。 是非、皆さんの会社が、テクノロジーにこだわり、ITを武器とし、現場を変え、企業を変え、日本再生のエンジンになっていただくことを願ってやみません。
• REAL TIME ECONOMICS • 2013年 3月 27日 07:37 JST • 3月の米消費者信頼感指数は大幅に低下 • By KATHLEEN MADIGAN 全米産業審議会(コンファレンスボード)が26日発表した3月の米消費者信頼感指数は、前月比約8ポイント低い59.7で2月に上昇した分がほぼ全て帳消しとなった。歳出の強制削減など財政の不確実性が要因だ。 2月の指数は速報値の69.6から68へ下方改定された。ダウ・ジョーンズ経済通信がまとめたエコノミストによる3月の予想値は67.1だった。 今後6カ月間の経済活動を予想する期待指数も、前月の改定値72.4(速報値は73.8)から大幅低下し60.9となった。 現時点の景気に対する消費者の評価を示す現況指数は、やはり2月改定値の61.4から57.9に低下した。前月の速報値は63.3だった。 この3指数全てが今年に入っての最低を記録した。 財政健全化のために発動された連邦政府支出の強制削減と、一部税率の変更が、過去2、3カ月、消費者心理を暗くさせている。コンファレンスボードの経済指標担当部長のリン・フランコ氏は、3月の下落はやはり「財政の崖」問題で12、1の両月に低下したのと似ていると指摘、「最近発動された強制削減が経済見通しを不透明にし、その結果として消費者心理が弱気になっている」と話した。 また、2月は雇用が増加し、失業率が落ちているにもかかわらず、3月調査では消費者が労働市場の見通しについてより悲観的になっていることがわかった。 調査では就職先が「多数ある」と考える消費者が全体の9.4%にとどまり、2月の10.1%を下回った。就職が「難しい」と回答した人は36.2%だったが、こちらは前月の36.9%と大差はなかった。 また、6カ月先の雇用情勢についても悲観的になっていることが示された。就職機会が増えるだろうとみている消費者は12.3%で2月の16.1%から低下した。一方、26.6%が就職機会が減ると予想しており、前月予想の22.1%から増加した。 6カ月先の所得については、増加を予想する消費者は13.7%で前月の15.8%から低下、減少を予想する人は前月の19.3%からわずかに下がり18.0%だった。 • • • 2013年 3月 26日 13:10 JST • 「大学は出たけれど…」―米国の大卒者、景気回復でも低スキル職のままか • By BEN CASSELMAN リセッション(景気後退)の結果、何百万人もの米国の大卒者がコーヒーショップや小売店で働いている。そんななか、景気が回復しても、こうした大卒者の雇用見通しは大して改善しないかもしれないと予測する論文が発表された。 アンダーエンプロイメント(学歴・職歴に見合わない仕事に従事すること)は、景気回復の遅さを証明する事象の1つとなっている。一部のデータによると、大卒の被雇用者の半数近くは、従来大卒の資格を必要としなかった仕事に就いている。 エコノミストたちは概して、この問題が一時的なものだと想定していた。つまり、景気が回復するにつれて、企業は高学歴の従業員が必要になるだろうと考えている。しかし、全米経済研究所(NBER)が25日に公表した論文で、カナダのエコノミストチームは米国がより長期的な問題に直面していると主張する。 同チームは、企業がイントラネットから製造ロボットに至るまで、あらゆるハイテクシステムの開発、構築、それに導入のため高スキルを持つ労働者を多数必要としていた1990年代と違い、近年はこういったスキルへの需要が低下していると述べ、にもかかわらず、若者はこういったスキルを習得するためのプログラムに集まり続けていると指摘した。 1991年比で見た平均年収の推移(上から4大卒、高卒、短大卒、大学中退) 出典:商務省 論文の主執筆者である加ブリティッシュコロンビア大学のエコノミスト、ポール・ボードリー氏は、「ロボットの導入後もある程度の人員は必要だが、導入当初よりもずっと少なくてよい」と述べる。同氏は、新技術がゆくゆくは高スキルを持つ労働者への需要を回復させるかもしれないが、景気回復だけでは不十分だろうと付け加えた。 スキルと教育の問題について研究している米マサチューセッツ工科大学のエコノミスト、デービッド・オーター氏は、ボードリー氏の論文が「挑発的」かつ「憶測的」だと指摘した。オーター氏は大卒者が享受していた賃金プレミアム(上乗せ額)が、2000年代にそれ以前ほど急速に伸びていないことに異論はないとしながらも、それが大卒者の供給過剰の結果なのか、それとも何か別の理由があるのかはまだ不透明だと述べた。 ブライアン・ハケットさん(25)は2010年にニュージャージー大学(TCNJ)を優秀な成績で卒業し、政治学の学位を持っているが、フルタイムの仕事を見つけられずにいる。ハケットさんはパートタイムで事務的な作業と電話インタビューをする仕事をしている。しかも、高い学歴を持ちながら働いているのは、職場でハケットさん1人ではない。 ハケットさんは「修士号や学士号を持つ人がいるほか、法律の学位を持つ人までもが時給10ドル(約940円)の仕事に応募してくる」と話す。 ハケットさんは数週間後に政治コンサルティングの分野でフルタイムの仕事を始められそうだという。だが大半の友人は依然として求職中か、アンダーエンプロイメントの状態にある。多くは就職活動で優位に立とうと、学校に戻り、さらに高い学位を取得しようとしているという。 企業の幹部は、最適のスキルを備えた労働者が少なすぎると不満をこぼすことが多く、それはハイエンドの製造業や一部の職種で特に顕著だ。ボードリー氏は特定の業界にこういった人材不足が存在することはあり得ると述べる。 しかし、ボードリー氏らのチームは、労働省のデータを引き合いに出し、大卒レベルの職(主に管理職、専門職、それに技術者)に対する需要が労働者全体の需要に占める比率は、インターネットバブルが崩壊する直前の2000年前後にピークに達し、その後低下し始めたと指摘した。一方、こういった労働者の供給は2000年代の間ずっと増え続けた。これに続く住宅バブルがこの問題を覆い隠すのに一役買った。つまり、あらゆる種類の労働者需要が人為的に作られたが、それも一時的だったという。 それでも、高学歴の労働者の雇用見通しは、低学歴の労働者のそれと比較するとずっと良い。2月の少なくとも学士の学位を持つ米国人の失業率は3.8%と、高卒の7.9%を下回っている。また大卒の従業員はたとえ学位を必要としないアンダーエンプロイメントの分野に就いていても、より多くを稼ぎ、より早く昇進する傾向にある。 しかし、大卒の労働者がより低レベルの仕事を余儀なくされているために、より低スキルの労働者が追いやられ、学位のない人々の職の選択肢がほとんどない状態になっている面もある。ボードリー氏氏は「大卒者は、ゆくゆくは最低スキルの人々を市場から追いやってしまう」と述べる。 Taylor Glascock for The Wall Street Journal タメラ・オーガスタさん シカゴ在住のタメラ・オーガスタさん(42)はこのトレンドを肌で感じている。オーガスタさんは建設業界を中心に事務アシスタントとして15年近く働いた。しかし、昨年職を失って以降、求職活動はしているものの、より高学歴のライバルに負け続けている。 オーガスタさんはノーザン・イリノイ大学に2年間通った。オーガスタさんは、「昔は企業がたいてい高卒の人を求めていた」が、現在は仕事を探す人の多くが大卒の学位を持っていると述べた。 http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324559504578383371452762136.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird 噂の「ハッカソン」に密着した
企業が集う新たな出会いの場 2013年3月27日(水) 西 雄大 「ハッカソン」という言葉をご存知だろうか。米西海岸で流行している企業のイベントだが、最 近、日本でもあちらこちらで開かれているという。企業同士の出会いの場とも言われるハッカソン に密着した。 1月21日、東京・品川。机とパソコンが並べられたホールは、定刻の午後1時になると、大勢の参 加者でにぎわっていた。 今回の主催者はNTTレゾナント。翌日の朝9時までとなる長丁場だ。チームとして参加する人もい れば、会場で仲間を見つけて即席のチームを編成する人もいる。社会人として名刺交換を終えると 、大きな模造紙を前にソフトのアイデアを議論し始めた。 ひたすらプログラムを書き続ける 撮影:北山宏一、以下同 夕刻が近づくとピザとビールが配られる。ビールで赤い顔になりつつも、各チームともパソコン
に向かい、キーボードを叩き続ける。終電で帰宅する人もいたが、多くは居残りだ。 笑顔で「今日は徹夜」 システム開発といえば3K職場(きつい、厳しい、帰れない。企業によっては7Kという説もある) と言われるように、普段、人材集めに苦労している。しかし、通常の業務とは違うからか、会場の 雰囲気は明るい。「今日は徹夜ですわ」とぼやきつつも、表情は笑顔だ。翌朝、夜通しかけて制作 した力作を審査員にプレゼンする。発表するチームには拍手が送られ、優秀作には感嘆の声が漏れ る。一晩を共に過ごすことで、会場に一体感が生まれていた。 ハッカソンは造語だ。プログラムを改良する「ハック」とマラソンをつなげたもの。週末などを 利用して長時間にわたってプログラムを書き続け、力量を競うイベントが、ハッカソンになる。シ リコンバレーなど米国の西海岸で盛んに行われているが、最近は日本でもハッカソンを取り入れる 動きが広がっている。社内だけで単独で開催する場合もあるが、ベンチャー企業などの参加を募る ケースも多い。 社内だけで集まると、どうしても発想が似てしまう。しかし、規模も業態も違う会社から人材が 集まれば、社内では考えが及ばなかったアイデアが出る。大企業が有望なベンチャーを探すきっか けにもなる。 米エバーノートが2月に企画したハッカソンは、トヨタ自動車のシステム子会社のトヨタIT開発セ ンターや、ぐるなび、リクルートが協賛企業として名を連ねた。トヨタが募集していたのは未来の 車に必要なシステムだ。参加者はベンチャー企業だけでなく、中学生や高校生まで幅広い。エバー ノートの外村仁会長は「協賛企業には、アイデアを練ってから、試作品を開発するまでのスピード を体感してほしい」と話す。 ハッカソン参加者のなかには中高生の姿も このハッカソンで、高く評価されたチームが提案したのはカーナビゲーションだ。目的地までの
最短距離を表示するのがカーナビだが、このチームが開発したシステムは目的地に行くまでに、利 用者が好みそうな寄り道を提案するのが特徴。カーナビ専門の開発者からは、出にくい発想だ。ト ヨタIT開発センターの橋本雅人社長は「社内からは出てこないアイデアだ。参考にしたい」と満足 げ。このイベントで生まれたアイデアが、商業ベースの新サービスとして出てくる可能性もあると いう。 斬新なアイデアを探すだけではない。大企業から見れば、ハッカソンは有望なベンチャーや技術 者を発掘する場ともなる。ベンチャーから見れば、取引の無かった大企業とつながりを持つ絶好の 機会。シリコンバレーへの視察旅行や、最新タブレットのプレゼントなど、豪華な副賞が付くこと もある。双方の要望が重なり合い、ハッカソンは日本で徐々に広がっていく。 ただ、うがった見方をすれば、大企業で働く社員が均質化し、社内からは尖ったアイデアが出に くくなっているとも言える。一昔前、社内ベンチャーが流行した時代もあったが、現在まで制度を 続けている企業は少数派。社員なのか経営者なのか線引きがあいまいだったからか、成功した社内 ベンチャーは少ない。ハッカソンは社内ベンチャーの反省を基に、社外の優秀なベンチャーと組も うとする試みなのかもしれない。 広がり始めたばかりのハッカソン。目立った成功事例が生まれれば、このイベントを採用する企 業も増えるだろう。ハッカソンという出会いの場から、新たな商品が生まれる日は、近い。 西 雄大(にし・たけひろ) 日経ビジネス記者。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130322/245414/?ST=print
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