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黒田日銀総裁、タブー破る緩和アイデア    黒田日銀、「想定内」でも市場は反応する
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/425.html
投稿者 eco 日時 2013 年 3 月 27 日 11:20:07: .WIEmPirTezGQ
 

2013年 3月 27日 10:54 JST
黒田日銀総裁、タブー破る緩和アイデア

By TAKASHI NAKAMICHI AND TATSUO ITO

 【東京】日銀の黒田東彦新総裁は、15年間のデフレからの脱却のため大胆な金融緩和に乗り出す際に、従来タブーだった措置を講じる用意があることをこれまでになく強く示唆した。

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Reuters
黒田東彦日銀総裁(26日)

 同総裁は26日、衆院財務金融委員会で、「あらゆる可能性を検討課題にして実効ある緩和を進める」と述べ、これまでよりずっと償還の長い国債の日銀買い入れ、日銀による国債買い入れ金額を抑制している自主ルールの廃止、金融緩和プログラム構造の簡素化を具体的に挙げた。

 総裁は、就任後初めての日銀政策委員会を1週間後に控え、日銀が1月に採用した2%のインフレ目標達成のため、どこまで踏み込む用意があるか最も具体的に示した形だ。日銀は前任の白川方明前総裁の下で緩和姿勢を次第に積極化したが、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)といった他の中銀が実施しているような全面的な措置を講じていないとの批判があった。

 1週間前に就任した黒田総裁はまた、政府に望むことも明らかにした。同総裁は金利の急上昇を阻止するため財政改革の重要性を強調するとともに、日本の潜在成長力を引き上げるために自由貿易協定や規制改革のような他の措置も大切だと語った。

 白川前総裁が2%のインフレ目標達成は日銀と政府の共同責任だと述べたのとは対照的に、黒田総裁はそうした責任は日銀にあると述べた。

 黒田総裁が言及した措置の一部は象徴的なものにすぎなかったが、実施されれば、日銀が慎重なスタンスを放棄し日本の慢性的な物価下落を逆転させてインフレを惹起するため、あらゆる資源を投入するとの覚悟を示す、と日銀ウォッチャーはみている。

 JPモルガン証券のチーフエコノミストで日銀出身の菅野雅明氏は、「もう後戻りはない」と述べ、「これは、彼ら日銀が2%のインフレ目標達成までほかのことを考えないことを意味する」と語った。

 日銀が今後講じる可能性があると黒田総裁が示唆した最も重要な措置の一つは、日銀の金融調節によって買い入れられる長期国債保有額を銀行券の発行残高以上にしないとの内部ルールの撤廃だ。銀行券の発行残高は3月20日現在で約82兆6200億円(約8773億4000万ドル)となっている。

 日銀は、こうした国債保有制限を課しているのは、財政規律を確実にし、日銀は政府債務を穴埋めしているに過ぎないと市場が考えないようにするためだと説明してきた。

 だが落とし穴は、日銀が通常行っている金融調節の一環である輪番オペ方式の国債買い入れに加えて、新たな積極的緩和(基金方式による国債買い入れ)を開始したあと、2つの方式による合計の買い入れ額がいわゆる「銀行券ルール」で許容された金額を突破していることだ。ただし、日銀は基金方式によって買い入れた国債は銀行券ルールによる保有残高に含まないと主張してきた。

 黒田総裁は26日の衆院委員会で、「銀行券ルールは形式的なものだ」と述べ、「欧州や米国ではそんなルールはない」と語った。

 黒田総裁はまた、2つのプログラムの統合を「検討する価値はある」と述べた。これら2つの規模は3月20日時点で国債が94兆0100億円に達している。

 黒田氏は国会議員の質問に対し、日銀は現在、償還まで3年以内の国債購入にとどめる方針を維持しているが、今後は5年間の国債購入を検討すると述べ、イールドカーブ(利回り曲線)全体を押し下げるため「量的にも質的にも」金融緩和を進めたいと語った。

 黒田総裁が日銀の買い入れるべき国債の償還期限に言及したのは初めて。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324559504578385282775350500.html


 

黒田日銀、「想定内」でも市場は反応する
村上尚己・マネックス証券チーフエコノミストに聞く
2013年3月27日(水)  渡辺 康仁

 日銀総裁に黒田東彦氏が就任し、新体制での金融政策決定会合が来週開かれる。「レジームチェンジ(体制転換)」の象徴となる政策メニューは広く取りざたされているが、村上尚己・マネックス証券チーフエコノミストは想定内であっても市場は反応すると予想する。
(聞き手は渡辺康仁)
アベノミクスに市場が大きく反応しています。これまでの流れをどう見ていますか。
村上:市場が意識しているのは、デフレから脱却する過程で何が起きるかということだと思います。すぐにインフレになるかどうかは分かりませんが、円高とデフレが続くだろうという前提がいっぺんに変わりました。現在の1ドル=95円前後の水準は円安とは言えません。購買力平価で見ると100円や105円が普通の水準ですから、そこに向かって円高是正が続いています。基本的にアベノミクスはまだ何もやっていませんが、少なくとも日銀が米連邦準備理事会(FRB)並みに金融緩和をすれば、今の流れはしばらく変わらないと見ていいでしょう。
 市場の反応は分かりやすいですね。政権交代で政治が変われば、日銀も変わる。日銀が変わって何が起こるかを想像すれば、株でも為替でも投資行動はまったく違ってきます。物価の安定は中央銀行の責任ですから、安倍晋三首相が昨年の自民党総裁選の時から金融緩和が足りないと言っていたのは普通のことだと思います。
米中経済の改善など、安倍政権は外部環境にも恵まれています。

村上尚己(むらかみ・なおき)氏
マネックス証券チーフエコノミスト。1971年宮城県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業、第一生命保険に入社。日本経済研究センターへの出向を経て第一生命経済研究所へ。2000年よりBNPパリバ証券で日本経済担当エコノミスト。2003年にゴールドマン・サックス証券に移りシニア・エコノミストとして独自の計量モデルで日本経済の分析・予測を行う。2008年9月より現職。
(撮影:清水盟貴)
村上:そういう面もあるでしょう。しかし、米国の長期金利は2%前後にとどまっています。株価が上昇しているわりに金利は上がっていません。FRBが金融緩和を続けると約束していることが効いています。1ドル=70円台から95円前後までの円相場の変動は日米の金利差だけでは説明できないのです。
 一番重要なポイントは予想インフレ率が変わったということです。デフレが続くと思っていたのに、もしかしたら2年後にインフレになるかもしれないと思うと、予想の経路はまったく違うものになります。デフレは貨幣の価値が高まることですから、それが続けば円高も続きます。この経路が将来変わるかもしれないということだけで為替は動きます。金融政策のレジームが変わることによって、マーケットの予想インフレ率が変わったのです。
「買い続ける」と宣言することが重要
株価も相当程度、期待を織り込んでいますか。
村上:株価は為替の動きを後追いしています。為替レートの変化によって企業業績が変わるというプラスの効果と、デフレから脱するだろうという期待があって上昇基調にあります。今期の業績予想を前提にするとPER(株価収益率)は20倍程度とまだ高い水準にありますが、円高修正もあって来期に4〜5割の増益になると一気に13倍程度になります。十分に正当化されるでしょうね。
 ただ、外国人投資家が意識する東証株価指数(TOPIX)で見ると、リーマンショック前の水準は超えていません。外国人投資家はまだまだ日本株は戻っていないという実感を持っていると思います。時価総額が大きい銘柄が十分に買われていないとか、電機各社の業績が厳しいといった面があるのでしょう。円高修正などマクロ環境が変われば、こうした銘柄も上がってくると見ています。
 経済が拡大基調に入り、名目GDP(国内総生産)も増えると、企業業績も家計の所得も増えます。そういう状況になれば、日経平均株価が年内に1万3000円を超えて1万5000円を目指す展開も十分にあり得るでしょう。
黒田東彦・新総裁の下で日銀の金融政策が当面のポイントになります。市場は次の一手を既に織り込んでいませんか。
村上:新執行部で最初となる4月の金融政策決定会合で、量的緩和の拡大や上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い増しを決めることが想定されます。市場が織り込んでいるという見方もありますが、今回の特徴はそういった緩和策が出てくるたびに市場が反応するということではないでしょうか。エコノミストが普通に予想することをやれば、外国人投資家もやはり黒田さんは違うと認識し、今の流れを後押しすることになるでしょう。
取りざたされるメニューを繰り出したとして、それが果たして「レジームチェンジ」になるのでしょうか。
村上:そうなると思いますよ。重要なのは、何を目標にして金融緩和を続けるのかということです。つまり、人々の期待をデフレからインフレに変える約束です。FRBは失業率が下がるまで米国債を買い続けると言っている。買い続けると宣言することが重要だと思います。
 日銀がずっと国債を買い続けると何が起きるか。いつかインフレが起きると皆が想像することが重要です。これが期待への働きかけであり、黒田さんも副総裁の岩田規久男さんも意識してやっていくと思います。2%の物価上昇率という目標は明確になっていますが、どのタイミングまで金融緩和を続けるのかを明示できれば、市場の反応もまったく違ったものになると思います。
経営はバランス、人に報いるのは合理的
賃金が上がらないとデフレ脱却は難しいという見方もあります。
村上:金融緩和をして、景気が回復して、労働市場の需給が変化して、賃金も上がるのが一番素直な動きです。企業経営者も変わるはずです。今起きていることに対して、起き始めてから動いても遅いということも言えます。それは投資にも企業経営にも当てはまります。企業経営者は今までは株主の方を向いて、なるべくコストを抑えて利益を上げて、配当を増やそうとしていました。それが合理的だったわけです。
 当然のことですが、日本は人口が減少する中で、ちょっと景気が良くなると人手不足になる可能性があります。デフレから脱してインフレになるのはそういうことです。企業は人を大事にしないと生きていけません。ある程度、人に報いないとほかに引っ張られてしまいますから。
 企業経営というのはバランスです。様々なステークホルダーがいて、その中でどう調整していくかです。利益の配分を変えることは、人に優しくなったというわけではありません。その方が経営していくのに合理的だということです。
アベノミクスによって財政規律が危うくなる心配はありませんか。
村上:デフレ脱却を最優先するなら、金融緩和を強化し、財政支出も減らすよりは増やした方がいいでしょう。それは妥当なことです。ただし、使い方の問題はあります。「国土強靭化」を名乗って、そこだけにお金を振り向けるのは長期的には望ましいことではありません。社会保障などにも回していくべきです。
 2012年度の補正予算は公共投資に偏りすぎています。補正予算でなくて、普通の一般会計の予算でニーズが高いところを万遍なく増やしていくべきです。名目ベースで2%とか3%とかわずかに増やすだけで十分です。それだけ増やしてもデフレから脱却すれば税収も増えるのでバランスはします。
長期金利が跳ね上がるリスクはありませんか。
村上:国債なので大丈夫です。何かあった時に回避する手段はいくらでもあります。そこが株とは違うところです。株は外国人が売りたてると抵抗できませんが、国債価格はマクロのバランスで決まります。銀行も生命保険会社もお金があり余っていて、どう運用するか常に困っている状況です。仮に金利が急に1%上がったとしたら喜んで買いますよ。そのお金がなくならない限り大丈夫なんです。
 経常収支はまだ黒字です。黒字であるということは、国内の金融機関にお金がたまっていっているということです。国債の買い手は潜在的にいます。経常収支がいつ赤字になるかは大事なテーマですが、まだそれまでには時間があります。その間に道筋をつければいいわけです。
軽減税率終わり、秋口から調整の可能性も
4〜6月期のGDPはかなりいい数字になりそうです。消費税率を引き上げられると見ていますか。
村上:GDPの前期比は振れが大きいので、名目GDPの前年比や物価の上昇率などを総合的に判断すればいいと思います。どう判断するかは安倍首相も明らかにしていません。公共投資の後押しもありますから、前期比の実質成長率は年率換算で2%程度が続くでしょう。しかし、それだけで来年、消費税を引き上げていいかどうかは別の判断だと思いますね。
 心配なのは7月の参院選後です。安倍政権は少なくともそれまでは経済に集中するでしょう。実際にそれが成功しています。参院選に勝利して経済政策の優先順位が下がると、官僚主導になる恐れがあります。財務省の意向が強くなれば増税に突き進むことが予想されます。消費税を上げる直前まではいいのですが、リスクはありますね。
 株式などからの収益への課税を本来の20%から10%に軽減する優遇措置が年末に終わります。株はそこに向けて売られる公算が大きいと見ておいた方がいいでしょう。参院選後に不透明感が出てきたり、FRBが金融緩和をペースダウンするという話が出てきたりすると、秋口から調整するかもしれません。
今の基調が崩れることはありませんか。
村上:基調としてはそう大きく崩れることはないでしょう。景気のサイクルは、最後は中央銀行が利上げをして株価や投資を抑え込むことによって変わります。日銀は物価目標を高く掲げているので大丈夫だと思います。日銀は利上げで失敗した経験もあるので、引き締めはまだ見えてきません。来年も再来年も難しいのではないでしょうか。
インフレになると株式投資が有効という経験則は今回も当てはまりますか。
村上:現金を持つよりはいいです。株式は相対的にインフレには強い資産ですが、当然、程度の問題でもあります。2〜3%のマイルドな物価上昇であれば、株式を保有してインフレのリスクをヘッジ(回避)することは当然考えられます。
 しかし、米国は1970年代から80年代に高いインフレ率を経験し、株価も上がりましたが、実質的な株価上昇率はマイナスになってしまいました。インフレが行き過ぎると、株も負けてしまう可能性があります。私は物価上昇と景気後退が同時進行するスタグフレーションにならないと思っていますが、何でも行き過ぎは良くないということです。

渡辺 康仁(わたなべ・やすひと)
日経ビジネス副編集長
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130325/245553/?ST=print
 

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コメント
 
01. 2013年3月27日 11:24:59 : GnRfb4ci8o
【第50回】 2013年3月25日

藤井 英敏
花見客が「給料が上がってウハウハです!」
というまで上昇相場は続く!

また、13週移動平均線・26週移動平均線共に上昇しています。基調は完全に上昇です。しかしながら22日現在、13週移動平均線との乖離率は8.81%(前週は12.60%)と10%は下回りましたが、26週移動平均線とのそれは20.39%(同24.06%)と超過熱状態です。 
日経平均週足チャート(1年)。緑が13週、赤が26週、青が52週の移動平均線(出所:株マップ)
しかしながら、私は2月22日の週の1万1175.67円までの下落で、値幅及び時間調整が一巡したとみておく必要があるとみています。つまり、1万1175.67円を起点に上昇トレンドが再び開始されており、かつ、現在も継続しているとの認識です。 
上値メドについては、2007年3月2日の週の1万8300.39円から2008年10月31日の週の6994.90円までの下げ幅1万1305.49円の半値戻しの1万2647.65円を想定していましたが、22日の週に1万2650.26円まで上昇し、ほぼこれを達成しました。このため、今後、1万2650.26円をブレイクするようなら、いよいよ心理的節目の1万3000円が視野に入るでしょう。 
一方、下値メドは3月22日の週の安値1万2220.63円です。次のメドが、3月の日経225のSQ値1万2072.98円です。これらを下回ると、3月8日の週の安値1万1613.59円が視野に入るでしょうが、相当な悪材料が飛び出さない限り、3月の日経225のSQ値1万2072.98円が押し目限界と考えています。 
「解雇規制の緩和」は株にプラスとなる
ところで、政府が雇用制度の見直しを本格化させています。具体的には、職務や勤務地を限定した新たな正社員制度の導入や、正社員に関する解雇規制の緩和です。 
とりわけ注目したいのは、解雇規制の緩和です。この緩和が実現すれば、企業が余剰人員を抱え込まず、人材を成長企業に移行させることで、産業の「新陳代謝」が活発になる可能性が高まるからです。 
次のページ>> 政策は川下からではなく川上から見る
3月15日の産業競争力会議では、民間議員は、再就職支援の実施や解雇人数の半分以上を外部の若手・中堅社員から採用することを前提に、解雇ルールの明文化を提言したようです。 
労働契約法を改正し、具体的なルールを明記するよう求めたと伝わっています。訴訟で解雇無効になっても、一定の金銭を払えば解雇できる「金銭解決」導入も図るもようです。ただし、解雇規制の緩和は労働界などからは反発が出ることが予想される上、参院選を控えていることもあり、6月にまとめる成長戦略に反映されるかは微妙です。 
とにかく、解雇規制の緩和の方向で政治が動けば、株式市場にはポジティブ材料です。雇用のミスマッチが解消され、企業の新陳代謝も加速し、日本経済の成長力底上げが見込めるからです。 
川上サイドから政策を判断するクセをつける
投資で成り上がりたいあなたは、政策を川上(資本家、雇主、供給者、多くの場合の勝ち組)サイドにとってメリットがあるかないかという観点にだけ絞り、判断材料にするようにしないといけません。 
間違っても、川下(労働者、被雇用者、消費者、多くの場合の負け組)サイドから政策をみてはいけません。通常、川上にとってメリットがある政策なら株は上がり易く、デメリットが生じるのなら株は下がり易いからです。 
例えば、最近、TVなどで、花見客に「アベノミクス」による景気浮揚の実感があるかどうかなどのインタビューが行われていますが、そこで、多くの花見客が「まだまだです。」「まったくありません」「一部の大手企業だけでしょう」などと答えています。これは極めて当然のことです。 
川下サイドに「アベノミクス」効果が行き渡るのは、2〜3年後でしょうから・・・。間違っても現段階で、「ああ、やっぱり、「アベノミクス」なんてまやかしで、「アホノミクス」なんだな」なんて間違った判断してはならないのです。 
2〜3年後に川下に効く薬なのに、投与して、わずか数カ月で効かないから、「アベノミクス」という薬は効かないなんて誤解をすべきではありません。株式投資で成り上がりたいなら、猿になって「アベノミクス」という薬は必ず効くと信じて、「株」を買っていればいいのです(笑) 
逆に数年後、マスゴミがまたぞろ、花見客に同じような内容のインタビューをして、それに対して、多くの花見客が「給料も上がってウハウハです。」と答えるようなら、そろそろ、保有株の売却時期を探るべきなのです。 
猿相場はまだまだ続く
また、株式投資で成り上がりたいあなたが、投資する対象は、証券取引所に上場している、選ばれし「一部の大企業」だけなのです。 
とりあえず、あなたは上場企業の景況感のみにケアして、その中から「今後、景況感がよくなる(業績が伸びて、1株当たりの当期純利益や、純資産が増大化する)であろう企業」を探し出して、投資すればよいのです。 
なお、現時点においては、TPP交渉参加に加え、解雇規制が緩和される可能性が高まるなど、投資家サイドからすれば非常にポジティブな方向に政策が向かっているといえるでしょう。 
つまり、株を買えば猿でも儲かる、猿相場は続くということです。(笑) 

http://diamond.jp/articles/-/33800


2013年3月26日 円安大転換はいつまで続くか〜過去の経験則
キプロス発の欧州金融問題への懸念で、今週も市場はナーバスである。昨日、EU(欧州連合)などからのキプロスへの支援策は合意に至ったが、欧州リスクが懸念され、為替市場でユーロ安が止まらず、ドル円相場でも円安は一服した。25日の海外時間で、ドル円は一時93円台半ばまで円高が進んだ。

欧州の「きな臭い」展開をみると、アベノミクス発動で始まった円安ドル高トレンドも変わるのではないかと思う投資家もいるかもしれない。ただ、筆者は、2012年秋口までの歴史的な超円高の終焉に伴う、「円安大転換」は始まったばかりだと考えている。

2012年11月以降、短期間で急激に進んだ円安は、歴史的にどのように位置づけられるのか?グラフでは、1973年以降のドル円相場における、主な円安局面を表示している。具体的には、今回のように3ヶ月対比でドル円(月中平均)が10%以上円安に進んだケースを選んだ。グラフでは始まったタイミングと、継続期間を表示している。


今回同様の急激な円安が起きたのは、現在を含めて5回である。前回は1995年半ばの円安だから、ほぼ20年振りに起きた円安の大転換ということになる。なお過去約40年間で5回目だから、「8年に1回」の稀な出来事ということだ。

「8年に1回」の急激な円安が既に起きたことを踏まえ今後を展望すれば、まず言えることは、さすがに、これまで同様の急激な円安は期待しづらいということだ。つまり、円安による為替差益で、短期間でリターンが稼げる「最もおいしい期間」は終わったのだろう。11月半ばに始まった、アベノミクスつまり日本銀行の金融政策転換の意味を理解できなかった投資家は、「最もおいしい期間」でリターンを得られなかったわけだ。

ただ、「最もおいしい期間」は終わったが、円安トレンドが終わった可能性は低いと考えている。例えば、約20年前の1995年秋口からの円安は今回よりも急激で、1973年以降で最も劇的な円安への大転換だった。この時も円安が始まって5ヶ月経過するとペースダウンした。今回の円安も5ヶ月目に入りつつあり、1995年の円安大転換の経験からみても、今後円安のピッチがペースダウンしてもおかしくない。

ただ、先にあげた過去4回の円安への大転換(急激な円安)をみると、いずれもそれは半年程度で終わることなく、円安は長期化した。一度強く現れた円安トレンドは簡単には転換しない、ということだ。為替市場では、バンドワゴン効果(時流に乗る・多勢に与する)が働くためだろう。

ちなみに過去4回を平均すると、円安は平均33ヶ月続き、円高のボトムから平均で41.3%円安が起きた。2012年秋口からの円安局面は、まだ半年程度で約20%円安である。ロジカルではないが、過去4回の円安大転換の経験則を当てはめると、まだ円安局面は序盤が終わったばかりという位置づけになる。

どこまで円安が進むのだろうか?今後のレポートでお伝えする予定だが、この点を含めドル円相場を解説したのが、筆者の新著「『円安大転換』後の日本経済 為替は予想インフレ率の差で動く」である。今後のドル円相場の展望を考える一助となれば幸いである。なお、皆様のご支援を得て発売一週間で重版となりました。ありがとうございました。

村上尚己著「『円安大転換』後の日本経済 為替は予想インフレ率の差で動く」光文社より発売中!

http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm


 

 

広木隆の「投資の潮流」
2013年03月26日
第35回 消費マインド改善に見るアベノミクス効果

デパートでモノが売れているようだ。日本百貨店協会が発表した先月の全国の百貨店売上高は、前

の年と比べて0.3%増えて2ヵ月連続で前年の実績を上回った。特に海外ブランドのハンドバッグや

高級時計など高額商品の売れ行きが好調だという。そう聞くと、まっさきに思い浮かぶのは「資産

効果」である。資産効果とは、株式や土地など保有する資産の値上りによって消費が刺激されるこ

とをいう。

2010年11月、米国でQE2が発動された直後にベン・バーナンキFRB議長は自らワシントン・ポストに

論文を寄稿しQE2の正当性を訴えた。そのなかで議長は、量的緩和は株高など資産価格の上昇を通じ

て消費を刺激し経済成長に寄与するとはっきり述べている。FRBによる金融政策は資産効果を狙った

面もあるのだ。

しかし、資産効果は米国では有効に働くかもしれないが、日本ではどうだろうか。なにしろ日本で

は個人金融資産に占める株式や投資信託の比率が少ない。日銀が昨日発表した2012年10〜12月期の

資金循環統計によると、家計が保有する金融資産の残高は12月末時点で1547兆円。前年と比べて約3

%増加した。昨年後半からの円安・株高の流れを受けて、家計が保有する株式や投資信託などの評

価額が大きく上昇し、家計の金融資産残高を押し上げたという。家計の株式・出資金は106兆円と前

年比で12%強増加した。伸び率は05年以来7年ぶりの大きさとなった。投資信託は61兆円と13%強

増加し、09年以来3年ぶりの伸び。しかし、ともに二桁で伸びた株・投信合わせても167兆円だ。金

融資産全体のやっと1割に届いたところである。

不動産価格も下げ止まりが顕著だが、まだ資産効果を発揮するほどの回復には至っていないだろう

。一部の富裕層を除いて、デパートで高級品を買うような消費マインドを刺激するほど資産効果が

表れているとは、どうにも腑に落ちないところがあるのだ。

もうひとつ考えられるのは、駆け込み需要である。売れているのは海外ブランドのハンドバッグや

高級時計などと聞く。円高是正が急速に進んだせいで、海外ブランドは値上げが相次いでいる。例

えばルイ・ヴィトンが2月半ば、バッグなどの一部商品を平均約12%値上げしたのに続き、ティファ

ニーも4月から、ジュエリー類などを平均約10%値上げする。単価が高いだけに二桁の値上りは購

入者には痛手だ。更に値上りする前に買っておこうという気にもなるだろう。

また、企業のなかには賃上げを検討するところも出始めた。今年の春闘では各社軒並み満額回答で

ある。所得増の期待が持てるようになったことも、消費を支えている面は多少なりともあるのかも

しれない。

とにかく、百貨店売上高の好調に見られる消費マインドの改善は、アベノミクスがもたらした各効

果の「併せ技」だろう。一部に資産効果、一部に円安を背景とした駆け込み需要、また一部に所得

増や景気回復期待などがあり、それらの複合的効果の表れだと見る。それを一言で表せば、インフ

レ期待の醸成に成功していると言えるだろう。安倍政権発足からのこの3カ月、アベノミクスは上々

の滑り出しである。

1月22日付けの小欄で「バブルの予兆を知る方法は、株式投資と最も縁遠いと思われる人たちの言動

を観察すること」と述べた。普段はおしゃれやグルメにしか興味がない若い女の子がマネー誌を読

み始めたら「危ない」と思ったほうがいい。その時は「筆者が付き合っている女の子たちの口から

は『ヴィトンのバッグ、買って〜』としか出てこないから、まだ大丈夫である」と書いたが、全然

、大丈夫じゃない。円安→値上げ→駆け込み需要で「買って」コールが加速する恐れがある。バブ

ルを見分けるバロメーターを手放すのは惜しいが、破産と家庭崩壊の危機を免れるほうを優先、こ

こらで一気に関係を清算することにしよう。


(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

前の記事:第34回  投資教育 その2 −2013年02月26日
前回、このコラムでは2月8日付日経新聞の特集記事「金融ニッポン」を取り上げた。「教育の空白

1500兆円眠らす」というサブタイトルがつけられたその記事は、わが国における投資教育の不備が

お金の流れを停滞させ経済が活性化しない原因のひとつになっていると指摘する。

記事の基本的な主張に異を唱えるつもりはない。ただ、その論法として、詐欺に騙されてしまう主

婦の例を引き合いに出すのはいかがなものかと述べたのだ。それは単に一般常識の欠如であって投

資教育以前の問題であると。

こうした記述にも首を傾げてしまう。<1500兆円の個人金融資産の半分以上を占める預金から

、株式や投信などに資金を移し、資産形成を促す。そんな狙いから、国は「貯蓄から投資へ」の旗

を振る。しかし、多くの個人は投資に関する基本的な知識を持たず、お金はなかなか動かない。>

 この論法が正しいとすれば、預金から株式や投信などにお金が動かないのは、多くの個人が投資

に関する基本的な知識を持たないからだということになる。

日本経済は長期にわたってデフレに悩まされてきた。デフレのもとでは「Cash is King (キャッシ

ュ・イズ・キング)、現金が王様」である。誰に教えられることもなく、多くの個人は経済的に合

理的な選択をしてきたのである。下手に株や投信に手を出しても、きっと報われることはなかった

であろう。大雑把な例を挙げれば、TOPIXの昨年末の値は約860ポイントで、その10年前、2003年末

の値が1043ポイントだから10年間日本株市場全体に投資し続けてもリターンはマイナス17%であっ

た。この間に、大きな相場の上げ下げがあったが、上手くマーケットタイミングを捉えてそこを乗

り切れた投資家は少数だろう。

これに対して米国のS&P500は10年前、2003年末の値が1,111ポイントで昨年末が1,426ポイント、28

%の上昇である。しかも、過去10年間の年間のリターンを見ると、リーマンショックが起きた2008

年を除いてはマイナスの年がない(厳密には2011年はマイナスだが、ほぼ横ばいといえる)。

投資教育の欠如が、預金から株への資金シフトを阻害しているというよりは、自国マーケットに投

資するだけの魅力がなかっただけであり、「預金から株式へ」というお金の流れが生まれなかった

のはむしろ当然ではないかと思う。機関投資家でさえ敬遠するような株式市場に、個人が投資を行

うほうが不自然ではないか。

属人的ベースでみた個人には投資に関する知識が足りないかもしれない。しかし、それは決定的な

欠陥というほどではない。むしろ個人総体としては正しい投資判断をしてきたとさえ言える。そし

て、いざ株式市場の潮目が変わったと見るや、四季報が品切れになるくらい投資熱が高まる。最近

の株式市場はかつての閑散が嘘のように活況である。一旦潮目が変わればこれほど相場は様変わり

する。そうしたマーケットというものの面白さや魅力を伝えるほうが、投資教育などと大上段に振

りかぶるよりも、ずっと効果的ではないかと思うのだ。
http://lounge.monex.co.jp/pro/hiroki/2013/02/26.html


 

 

中小の賃上げ回答倍増 金属労協
 自動車や電機など製造業系の労働組合でつくる金属労協は26日、「中堅・中小労組」の今春闘

の中間状況を発表した。定期昇給と別に賃上げ回答があった組合は回答済み107組合のうち24

。すでに前年の最終結果より倍増している。


非正社員、大幅賃上げ 春闘回答
 全労連は26日、今春闘の回答状況を発表した。22日時点で金額のわかる206組合では、単

純平均で1人あたり月額5528円(定期昇給相当分含む)引き上げられた。建設や出版関係で高

額回答が出ており、前年同期より134円多い。パートなどの非正社員では、時給の引き上げ額が

集計可能な50組合の単純平均で18…

パート時給アップ相次ぐ 大手流通、正社員の賃上げ波及(3/20)
(アベノミクスって、なに?:48)雇用編 首相自ら「賃上げして」…なぜ?(3/23)
非正社員の待遇改善へ新組織 連合、13年春闘方針案(11/14)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201303260666.html


 

 

【第92回】 2013年3月27日 高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
今回の安倍政権が「持っている」のはなぜ?
アベノミクス旋風に乗って脱“失われた20年”も視野に
――高田 創・みずほ総合研究所 チーフエコノミスト
日本の「失われた3年」
 先月の当レポートで、過去3年は日本の「失われた3年」とした。図表1は過去15年にわたる日米独株価指数の推移である。1990年代の日本のバブル崩壊局面においても、長期にわたり、日本株は他の主要株式市場である米・独と連動した動きにあった。
しかし、2009年半ば以降、日本株だけが出遅れた状況にあった。過去3年余り、これだけの乖離が生じるということは、海外投資家を中心にインデックス対比で大幅なアンダーウェイトが続いたと考えられる。それだけに、その水準の修正が生じれば想定以上の株高も生じる。 
さらに、「失われた3年」として、@「為替市場の失われた3年」、A「日米関係の失われた3年」、B「政官財の絆の失われた3年」とした。日本は東日本大震災も含め「ジャパンペシミズム」の状況に陥ったなか、海外では日本もようやく「普通」に戻るとの意識が大きい。 

みずほ総合研究所の
世界中期見通しの大きな転換
次の図表2は、みずほ総合研究所による世界経済の中期(2017年まで)の予測の総括表である。今回の中期見通しで、2013年の海外環境は依然慎重な見方も必要との認識としたが、2014年以降を展望すれば、米欧で2007年以降生じた長期バランスシート調整圧力が次第に減退し、安定成長パスに戻るとの判断を初めて示した。 
拡大画像表示
調整が終盤に向かいだした米国
我々も大きくシナリオを転換した
我々がこれまで抱いてきた世界経済の基本認識は、米欧のバランスシート調整に伴う経済停滞の長期化であった。これまでもストーリーラインとして米欧の「財政の崖」に伴うフィスカル・クランチから、米国を中心に市場のコンセンサス水準よりも低めの成長率予想を掲げてきた。 
今回の改訂でも、米国の2013年見通しは依然1.4%と、2%程度とされるコンセンサス水準よりも低めの見方にある。ただし、今回米国におけるバランスシート調整は緩やかながらも住宅分野を中心に着実に進捗していることを勘案し、2013年を底に2014年以降は2%台に戻るとした。 
同時に、日本についても2013年を底に、1%台半ばの安定成長が続くとした。米国を中心としたバランスシート調整も終盤にさしかかり、この中期見通しの期間に金融制度の出口戦略を議論することにしたのは、我々にとって大きなシナリオ転換である。 
日本も海外中心の先行き期待改善を通じて、ようやく前向きな方向に舵を切るとの判断に修正し、期待も込めて長いトンネルからの脱却も視野に含む方向に踏み出したとした。 
日本の調整は2007年に完了したが
海外から「大波」が来た
日本のバブル崩壊は1990年が起点となり、バランスシート調整に伴う長期経済停滞、「日本化」が生じた。バランスシート調整の前提条件には信用拡大があり、図表3はその指標である日米欧の民間債務の対名目GDP比較を示す。 
日本の信用拡張は1990年頃がピークで、その調整が10年以上、2000年代半ばまでかかった。一方、米欧は90年代後半以降、急速に債務を積み上げた結果、2007年以降、欧米もバブル崩壊によるバランスシート調整が生じた。 
日本の債務調整が完了したところに、タイミング悪く米国中心の海 外の調整圧力が再びかかったことで、日本の「失われた20年」に至った。さらに、その間に生じた円高トレンドが企業の債務圧縮やマージン圧縮を定着させて「デフレ均衡」、マインド低下に陥った。

日本の残る課題は
円安の成長戦略とマインド改善
次の図表4はバランスシート調整の概念図である。その基本形は次の3原則、@債務の肩代わり、A債務処理原資確保(多くの場合は自国通貨切り下げ)、B先行き期待改善である。 
まず先に、@の国債を用いた「肩代わり」が行われる。次に図表4左側に示される成長戦略が必要になる。理想的には新商品開発や生産性向上などで新たな市場を確保することだが、実際には自国通貨切り下げが多く、過去の国家ベースでの対応ではほとんどこの手段がとられた。自国通貨切り下げは、世界市場において収益性確保を目的に自国製品を「安売り」する「価格戦略」を意味する。 

脱「失われた20年」第一歩の背景に
米国の改善による円安
先の図表4の概念図で、日本は債務の肩代わりを国債を通じて実現できたが、問題は収益を確保する成長戦略と、マインドの改善ができないことにあった。すなわち、図表4で斜線を示した2ヵ所、自国通貨安とマインドの改善が今日の課題である。 
日本の債務調整にメドがついた2007年以降、今度は米国中心の新たな調整圧力が再び生じたことで、外需による成長戦略は後戻りしてしまった。今回、初めて「失われた20年」からの脱却の第一歩としたのは、米国の2007年からの調整がすでに6年近い年限が過ぎるなか、ようやく債務調整が終盤にさしかかり、緩やかながらも回復に向けた道筋が2014年以降にかけて生じ得ることにある。その結果、それまでかかっていたドル安圧力も転換することになる。 
今回の安倍政権は「持っている」
今回、第二期安倍政権の恵まれた点は、民主党政権における「失われた3年」とされるように、期待水準が極めて低い段階から出発している点にある。ただし、今次安倍政権のタイミングで最も重要なのは、前述の米国を中心とした海外経済金融環境にある。すなわち、前回第1期安倍政権は2007年半ばの欧米バブルのピークと重なり、その崩壊に向かった時期にあった。 
海外経済環境を考えれば、2007年のピーク以降、欧米経済はバランスシート調整を迎えた。その結果、リーマンショックも含め、深刻な事態に陥った米国は、一国の回復を志向し、ドル安策、自国の自動車産業を守る保護主義的な政策に陥り、日本の産業界との摩擦も先鋭化した。 
しかし、調整から約6年、2013年になり、米国のバランスシート調整はようやく終盤に向かう段階へと進展した。さらに、米国でのシェールガス革命も加わって米国サイドに余裕ができ、加えて、太平洋を巡る地政学的関係上、日米関係の重要性が高まる転換が生じ、ドル安のバイアスにも大きな転換が生じた。これは、第二期安倍政権が「持っている」とされる最大のポイントである。 
アベノミクスの風に乗って
「失われた20年」からの転換も視野に
今回の第二期安倍政権は、過去の「失われた3年」からの脱却に止まらず、1990年代以降、初めて「失われた20年」からの転換も視野にできる状況にある。よく言われる議論のなかで、「安倍政権は何もしないなか株だけ上がるバブルに過ぎない」との評価がある。 
ただし、今次安倍政権は、内外の環境転換を捉えた「持っている政権」のタイミングに巡り合ったと考えるべきだろう。また、それまでの「失われた3年」の閉塞感にあった「空気」の転換を求める声に呼応した、期待の転換を実現したことにある。 
ただし、課題も大きい。先に米国の調整は終盤としたが、2013年は財政の崖も含め最後の大きな峠を越える必要があり、経済面では不確実性がある。一方国内面では、今年7月の参院選までは政権基盤が不安定なことにある。そこでは、具体的成長戦略のシナリオを示しつつ、期待で資産価格を引き上げることが不可欠だ。その観点から見て、2013年の資産価格維持が最重要戦略になる。それを単にバブルと決め付けるにはあたらない。 
http://diamond.jp/articles/print/33831


 


 


2013年3月26日 橘玲
[橘玲の日々刻々]
80年代のバブルとアベノミクス最悪のシナリオ

 いまの若いひとに80年代のバブルの頃の話をするとほんとうに驚かれます。

 当時は、クリスマスイブに大学生がホテルのスイートルームでパーティをしたり、OLが週末にハワイや香港に行って、最高級ホテルに泊まってブランドものを買いあさるのが当たり前でした。皇居の地価がカリフォルニア州と同じで、東京の不動産を担保にすればアメリカ全土が買えるといわれ、不動産成金たちは自家用ジェットで世界じゅうを飛び回って札束をばら撒いていました。

 アベノミクスによって、これから日本は人類史上例をみない大規模な金融緩和を行なうことになります。経済学者のなかには、それによって資産バブルが起こると警告するひともいます。

 80年代のバブルが崩壊して、日本経済は「失われた20年」に沈みました。サブプライムバブルが崩壊したアメリカではマイホームを失ったひとたちが路上にあふれ、若者たちは格差是正を求めてウォール街を占拠しました。ユーロ導入で空前の好景気に沸いたギリシアは、いまでは国そのものが解体しかけています。このような惨憺たるあり様を見れば、「資産バブルは起こしてはならない」というのはそのとおりです。

 しかしその一方で、80年代のバブルを経験したひとたちは、「あんな面白い時代はなかった」と口を揃えます。夜中まで働いてから六本木に飲みに行き、朝まで騒いでタクシーで帰宅しても、5万円の飲食費も2万円のタクシー代もぜんぶ会社が払ってくれたからです。

 いまでは接待交際費やタクシー代はもちろん、取引先との喫茶店代すら経費精算できないこともあります。そんなショボい会社しか知らない若者たちは、バブルの話を聞くと、「いちどでいいから自分もそんな時代を体験してみたい」と思います。

 ひとはみな近視眼的にできていますから、将来どれほどの不幸が待っていても目先の快楽を追い求めます。経済合理性でバブルを抑制できるのなら、ダイエットに苦労するひとなどいなくなるでしょう。

「アベノミクスが資産バブルを起こす」と警告すると、アベノミクスへの支持が上がります。好景気と資産バブルのちがいなど、ほとんどのひとにとってはどうでもいいのです。

 だとしたら、アベノミクスは成功しても失敗してもやってみる価値があるのでしょうか。

 アベノミクスの最悪のシナリオは、実は別にあります。

 物価と金利が上がっても資産バブルが起こらず、逆に地価や株価が下落すると、金融機関が次々と破綻して日本国の債務だけが膨張していきます。これが「財政破綻」と呼ばれる国民経済の全面的な崩壊ですが、この不吉な予言に現実味があるのは、80年代と比べて日本国の借金が増え、潜在成長力が大きく下がったからです。

 未来は誰にもわかりませんが、実際には、アベノミクスで80年代バブルが再来するよりも、財政破綻で大不況に陥る可能性のほうがずっと高そうです。

 その経済的混乱から、私たちはどのようにして身を守ればいいのか? その方法を『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』で書いたので、興味のある方は手にとってみてください。

『週刊プレイボーイ』2013年3月18日発売号に掲載


http://diamond.jp/articles/-/33803?page=2


02. 2013年3月27日 11:44:29 : GnRfb4ci8o
【第273回】 2013年3月27日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
公的年金運用の「見直し」はどこに行くのか?
公的年金の積立金の運用見直しが
会計検査院の指摘でとは情けない

 3月25日、月曜日の『日本経済新聞』の朝刊の一面トップに、公的年金の積立金の運用見直しの記事が載った。見出しは、「海外インフラにも投資」「公的年金 運用、毎年見直し」である。国民年金と厚生年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針を、「抜本的」に見直すのだという。

 年金問題は、すぐに結論が出ない。したがってニュースとしては急がない記事や、いわゆる「観測記事」が多いので、緊急性のある経済ニュースが少ない月曜日の朝刊に載ることが多い。例によって「検討中」の問題を報じており、「ヒマネタ」的な記事だが、内容には、いくつか考えさせられる問題がある。

 運用方針の抜本的な見直しに至った経緯として、「04年度から運用資産の構成を変更しておらず、昨年10月に、会計検査院からも機動的な見直しが必要と指摘された。このため、GPIFでは」と記事にはある。

 考えてみると、これはかなり妙だ。

 GPIFの運用方針は、外部の専門家で構成される運用委員会の検討を参考に、理事長の責任で決定されている。「国内株式」「海外株式」などの大まかな資産分類(「アセット・クラス」と呼ぶ)の基本的な配分計画を決めた「基本ポートフォリオ」は、確かに04年から動いていないが、GPIFとしては運用方針の適切性を毎年見直している建前ではなかったか。

 また、基本ポートフォリオが動いていなくても、基本ポートフォリオが定める資産配分計画には、かなり大きな「許容乖離幅」(注:私見では少し大きすぎる)があり、現実のポートフォリオも基本ポートフォリオとズレがあり、このズレは変動していたはずだ。

 一方、会計検査院は、公費の使用が適切であるか否かに関してチェックを行うプロであはあろうが、たとえばアセット・クラス別の期待リターンを推定するような運用の意思決定のプロではない。

 何が言いたいのかというと、会計検査院が不適切だと指摘するということは、GPIFがよほど不真面目であるように彼らの目に映ったのではないかということだ。これを受けてGPIFが運用方針を見直すという今回の経緯は、それをGPIF自身が認めているかのように見える、ということだ。

 GPIFの運用意思決定は、会計検査院の指摘に反論できないくらい形骸化していたということなのだろうか。

 だとすると、GPIFには、海外インフラへの投資といった新しいアセットクラスの運用など、とても任せられるものではないだろうし、そもそも、100兆円を超える公的年金資産を運用する任務に堪える組織ではないということにならないか。

 本当のところは、どうなっているのだろうか?

民主党で見直しの結論は出ず
公的年金の「失われた3年」

 公的年金の運用に関しては、多くの問題点と多様な意見がある。実は、民主党政権時代に、長妻昭・元厚労大臣の下で、「GPIFの運用のあり方検討委員会」という外部識者を集めた会合が開かれたことがあり、筆者も参加した。

 詳しくは報告書や議事録を見ていただきたいが、運用方針に関しては、「非市場性国債100%で運用すべきだ」という意見から、「もっとリスクを取り、ヘッジファンドなどに積極的に投資すべきだ」という意見まで幅があり、結論は出なかった。

 多様な意見のあった参加者の中で、まとまりかかった意見の1つは、04年度の財政検証で想定された将来の運用利回りの数字である「4.1%」が非現実的に高く信憑性がないので、この数字を再検討すべきだというものだったが、この数字はそのままに(注:2014年度に再検証される予定なのだろう)、運用方針を見直すということなのだろう。

 また、付け加えておくと、かつての民主党政権は「最低保障年金」の仕組みをつくるなど、公的年金の仕組みを抜本的に見直すというマニフェストを掲げて総選挙に勝った。そして、これが建前となっていたため、年金一元化をはじめとする公的年金の制度改革全般が滞る結果を招いた。

 民主党政権の間、将来の年金制度の前提が確定しないまま、制度を現状維持しつつ、運用その他の業務は、様子を見て時間を空費した。民主党政権時代は、日本の公的年金にとって「失われた3年」だった。

 結果から見ると、民主党政権には日本の年金制度を変えるような大きな仕事をするマネジメント能力がなかったということだろうし、厚労省は現行の枠組みを守ることができた。しかし、年金の制度にとっても、積立金の運用にとっても、この3年間の時間は大きなコストであったと言わざるを得ない。

公的年金運用の検討ポイント
個人的には保守的な運用が望ましい

 公的年金の運用がいかにあるべきかについては、検討のポイントが数多くあり、論者によって結論も多様だ。

 簡単に思いつくだけでも、@「積立金の額」(そもそも、運用すべき積立金の額が適切かどうか)、A「リスク資産での運用の適否」(株式は民間が投資すればいいのではないか、など)、B「公的年金運用が民間経済に与える影響」(公的年金が民間会社の大株主になることの適否と影響)、C「公的年金運用が市場に与える影響」(市場の機能を育成するか、あるいは阻害するか)、D「公的年金運用の運用組織はいかにあるべきか」(厚労省の官僚は運用のプロか、など)、E「公的年金運用と運用業の関係」(手数料は適切か、癒着はないか、運用業界に与える影響はどうか、など)の問題がある。

 ちなみに筆者個人は、まず公的年金を一からスタートできるなら(あるいは制度を抜本改革できるなら)、積立金のリスク資産での運用は必要ないし、やらない方がいいと思っている。資本市場での運用は、「民間で出来ること」だし、「民間がやった方がいいこと」の最たるものの1つだからだ。

 しかし、積立金が存在し、運用業務が存在するという「現実」がある。この現実を考えた場合、運用額(積立金の額)、運用リスクを抑えつつ、大方の理解と合意が得られる「保守的な運用」を行うことが望ましいと考えている。

 率直に言って、巨額の運用資産の運用を十分に把握し管理できる人材と組織を政府が持ち、かつこれを責任を持って管理することは現実的ではない。能力以上の背伸びをすべきではない。

 また、年金の運用は、他人の(年金加入者、あるいは納税者の)お金の運用であり、多くの他人の十分な理解が得られ、説明責任が果たせる保守的な運用が望ましい。リスクなどが十分説明できない実験的な運用を行うべきではない。

 新興国株式へのインデックス運用くらいまでは理解が及ぶ許容範囲だろうが、インフラ投資やPE(プライベート・エクイティ)への投資などは、外部の自称専門家(ゲートキーパー業者など)に「丸投げ」になるのではないか。運用業者、関連業者から見て「いいカモ」になる公算が大きい。

 ついでに言うと、巨額の公的な運用資金に対して群がる運用業者を大いに警戒すべきでもある、と考えている。年金基金自身が良し悪しを判断できないような運用者に、高い運用手数料を払うべきではない。

厚生年金基金も追随か
GPIF方針変更の影響

「べき論」はさておき、GPIFは運用方針を変更するのだろう。おそらくは、内外の株式投資比率の引き上げと、新興国への投資、インフラ投資や未上場株投資など上場証券以外への投資、ヘッジファンドでの運用などの全部、またはいくつかを実行することになるのだろう。

 GPIFが新たに採用する運用方針は、企業年金の仕組みの1つである厚生年金基金の運用にも影響を与える。厚生年金基金は、厚生年金から運用を代行している「代行部分」について、GPIF並みの利回りで運用する必要があるので、株式組み入れ率の変更や、新しいアセットクラスの追加は無関係ではない。

 たとえば、GPIFが株式投資の比率を上げるなら、多くの厚生年金基金がこれに追随することになるだろう。

 また、特に新しいアセットクラスの採用については、おそらくGPIFの運用方針変更をビジネス・チャンスと捉えて、企業年金に営業攻勢をかける運用業者が登場することだろう。

 厚生年金基金側での対応は、それなりに複雑なものになる可能性がある。「アベノミクス相場で運用収益を上げて、さっさと代行返上してしまいたい」と考える基金も登場するだろうし、少々の相場回復では代行返上は無理だとして、GPIFの方針変更について行かざるを得ない基金もあるだろう。

GPIFの運用方針変更は14年度?
運用リスクを最終的に担うのは国民

 GPIFの運用方針変更の実施時期は、日経の記事では「14年度に向け」とあり、「13年度に前倒しで資産構成を変更する可能性もある」とも書かれている。動く金額が大きいので、運用業者のみならず、市場全体が今後GPIFの方針変更を探ることになる。

 運用計画について十分な説明責任を果たすと、自分の投資行動を事前に明かすことになり、市場に利用されやすい巨大公的年金運用の弱点がここにも見える。

 GPIFの運用リスクを最終的に負っているのは、公的年金の加入者ないしは納税者だ。一国民としては、「アベノミクス相場」の天井を掴むような投資タイミングにならないことを祈ろう。


 

 

【第56回】 2013年3月27日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
小学校教育もシューカツも根は一緒
日本社会を停滞させる「本音と建前」
 大学4回生の就職活動が本格化している。今年は、経団連が加盟企業に対して採用試験や面接を4月1日以降に行うことを「紳士協定」として呼びかけたこともあって、例年よりも就職活動の開始時期が遅くなった。

 大学では1、2回生時に、専門分野に入る前に必要な知識・教養、技法・スキル、語学力などの基礎を身に着ける。そして、3回生から、卒業論文の完成を目標にして、より専門的な研究に取り組むことになっている。ところが、3回生の大半の期間を就活に費やすことになり、学生は大学らしい教育を受けることなく社会に出ることになっていた。

 だが、今年の4回生は就活の開始時期が遅くなったことで、3回生時に学業に専念できる時間が長かった。知識・教養・スキルの習熟度は、例年よりも高いように思う。企業側は、学生が大学で身に着けた知識やスキルに期待などしていないだろうが、今年の4回生が、企業側の残念な認識を、少しでも変えてくれればと思う。

私の就職活動:
「就職協定」の建前と本音

 この連載のプロフィールに記載の通り、私は1991年に伊藤忠商事(株)に入社した。私の就職活動は、現在とは真逆で「売り手」市場だった。バブル経済による好景気で、企業活動は拡大し、新卒の求人を増やしていた。学生1人に対し、何社も殺到するような状態であり、企業は優秀な学生の囲い込みに必死であった。

 当時と現在の就活で大きな違いなのが、現在は廃止されている「就職協定」の存在だ。高度成長期、企業側が優秀な学生を確保しようとして、就活がどんどん早期化した。これに対し、大学側は学生の学業専念が阻害されると企業側を批判した。企業側と大学側の間で協議の場が設けられ、一定の時期まで企業から卒業見込みの学生に対するアプローチを行わないという「就職協定」が締結された。

 私が就活を行った1990年は、10月1日が会社訪問解禁日だった。企業は、10月1日以前に学生に接触しないことになっていた。だが実際には、多くの学生が10月1日以前に企業の採用内定を獲得していた。私の場合は、5月頃から「OB訪問」として企業と接触し、7月中旬から一斉に始まった商社の面接に呼ばれ、伊藤忠など4社の内定を得た。

 企業は、表向き「就職協定」を遵守するとしながら、実際には「青田買い」と呼ばれた学生の囲い込みを行っていた。特に、総合商社のような大手企業は、人事部の下に出身校別の「リクルーター制度」を設けていた。これは、出身校別に1〜10年目の若手から課長補、課長役クラスの社員を「リクルーター」として階層的に組織し、「OB訪問」という名目で学生と接触させる制度であった。

 リクルーターは、社外のレストラン・喫茶店などで学生と面会した。リラックスした雰囲気で食事をしながら、学生に対して会社の様子を話し、学生の質問に答えたが、これは事実上の一次面接であった。リクルーターは、面接結果のよかった学生を、年次の高いリクルーターに紹介した。こうして、非公式な学生の選考が進められ、選考に残った優秀な学生が7月頃の正式な面接に呼ばれたのである。

 企業の正式な面接といっても、10月1日以前に行われたため、明らかに就職協定違反であった。しかし、違反企業が新聞で協定破りを公表されることはあっても、それ以上のペナルティは一切なかったため、協定破りは堂々と行われていた。そして、解禁日の10月1日は、事実上内定者が集合し、顔を合わせる場であった。

 就活は、当時の若者に対して、社会に「表」と「裏」、「建前」と「本音」があることを、しっかりと教えてくれた。社会の公式ルールを遵守することが大事というのは表面的な話で、「建前」にすぎない。現実の社会では組織利益を守るために、公式ルールを逸脱しても許される。むしろ組織利益に準じることが、世渡りの術である、という世の中の「本音」を、若者は就活を通じてしっかり叩き込まれたのだ。

 バブル経済が崩壊した後、政官財のさまざまなスキャンダル・汚職が噴出した。その中には、若手のキャリア官僚や、大手企業の若手社員が逮捕される事件もあった。当時の日本の若者が、組織利益のために、モラルに反する行為、犯罪に走ったことと、就活を通じて世の中の「建前」と「本音」を知ったことには関連があるように思う。

学習塾の「受験戦争」と学校の「平等教育」:
小学生が学ぶ世の中の建前と本音

 かつて、私たちの世代が、就職活動時に教え込まれた世の中の「建前」と「本音」を、いまや小学生までもがしっかり教え込まれている。「ゆとり教育の学校」と「中学受験のための塾通い」という建前と本音である。公立中学校で、校内暴力、いじめ、授業崩壊など教育の荒廃の問題が深刻化し、中高一貫校や私立中学への進学を目指す親子が増えている。また、公立学校の「ゆとり教育」への単純な不安感もある。小学生が受験のために学習塾に通うのは、完全に一般的になった。

 小学生は学習塾で、学校よりも難しいことを習っている。中学受験では、高度な発想力・論理的思考力・読解力・記述力を試される高度な問題を解かなければならず、小学校の授業だけでは受験対策として不十分だからだ。一方、公立の小学校では近年「脱ゆとり教育」が進んではいるものの、基本的に「平等教育」であることは変わらない。同じ学年の子ども全員が理解できる教育を目指し、勉強ができない子どもに標準を合わせている。

 そのため、例えば小学2年生の場合、学習塾で掛け算・割り算の筆算や、分数の計算など4年生並みのことに取り組んでいる一方で、学校の宿題では、九九をひたすら書き写す単調作業を強いられるということが起こる。これは、塾通いの子どもにとっては、ただひたすら退屈なだけの作業であり、親に「やりたくない」と不満を漏らす。しかし、親は子どもに黙って宿題を続けることを求める。

 また、親は子どもに対して、学校で決して塾通いでレベルの高い勉強をしていることを披露しないように言い聞かす。学校では、子どもが周囲に合わせて、決して“出る杭”にならないように気をつけるのだ。子どもたちは、「平等教育」「ゆとり教育」の学校と「受験戦争」の学習塾の間で、しっかりと本音と建前の使い分けを理解するようになる。

就職活動で突然、学生を
奈落の底に叩き落とす企業の「本音」

 次に、現在の大学生の話をしたい。「若者の就職難」が深刻となり、我々の世代とは比べ物にならないくらい、就活は激しさを増している。しかし、現在就活に必死な4回生は別だが、1〜3回生を見ていると、不思議なほどのんびりしている。彼らはいずれ直面するシューカツの大変さを知っているはずだ。だが、早めに危機感を持ってその準備をしたり、専門知識を身に着けるために必死で勉強したり、語学や技術を磨く学生は少ない。大多数の学生は、ほどほどにサークル活動を楽しみ、バイトし、楽勝科目を選んで出席している。

 私には正直理解しがたい、この学生の緩さは、高校までの「ゆとり教育」に加え、大学でも基本的に勉強ができない学生を手取り足取りサポートして甘やかす風潮があるからだろう。だが、こんな若者を取り巻く甘い環境は、就活が始まると一変する。若者は就活が始まると、突然奈落の底に叩き落される。グローバル経済の厳しい生存競争に晒されている企業には、若者を甘やかす「ゆとり教育」という「建前」はなく、ひたすら「本音」をむき出しにして、優秀な学生を獲得しようとするのである。

 だが、突き詰めて考えると、企業にも「建前」と「本音」がある。企業の建前とは、若年層の就職難を、彼らの努力不足とみなし、批判することである。しかし、企業の本音は実は違うのではないだろうか。

 企業は、長期的な景気停滞に対して、国内の正社員の「終身雇用」を頑なに守ろうとしてきた。「終身雇用」とは言うまでもなく、新卒で正社員として就職できれば、定年近くまでの数十年間、失職しないシステムだが、これは企業のみならず、自民党から共産党までのすべての政治家、財界、労組、マスコミのほとんどから、いわば「聖域化」されてきたといえる。

 そして、企業は「聖域」である既存社員の雇用を維持するために、若者の新規採用を抑制し、派遣や請負等の非正規雇用社員を増加させた。若者を「努力不足」というのは「建前」で、実は終身雇用という「聖域」を守るために、若者を犠牲にするというのが企業の「本音」なのだ。

 だが、若者は、企業の「本音」を薄々知りながら、少なくなっていく大企業の正社員のポストをなんとか手に入れたいと、怒りを露わにすることなく、大人しく振る舞っている。さまざまな「建前」と「本音」の存在が、日本社会を停滞させているように思えてならない。


 

 

【最終回】 2013年3月27日 安間裕
ITコストだけは低く、総コストは世界一高い日本企業を変えるために必要なこと――リアルタイム・ビジネスを支えるITの作り方
 不定期で連載をしてきたこのコラムも、今回で最終回となりました。
 最後は、タイトルにふさわしく、リアルタイム・ビジネスの重要性と、それを支えるITの作り方について考察をしてみたいと思います。

 リアルタイム・ビジネスで、私が大切だと思っていることは、3つです。

 1. テクノロジーにこだわること
 2. ITをコストとして考えないこと
 3. データと現場にこだわること

1.テクノロジーにこだわること

 最近、『リバース・イノベーション』(ビジャイ・ゴビンダラジャン, クリス・トリンブル (著))、という本を読んだのですが、示唆に富んでいて、大変面白かったです。
 この本の主旨は、「先進国で売れた製品やサービスは、数年後に必ず発展途上国でも売れる」というグローカリゼーションは、最早、幻想であるというものです。
 その理由は、驚くべきITの進化にあり、30年前の先進国のニーズを当時の技術で解決をした製品を、周回遅れで発展途上国に展開したとしても、受け入れられない。今の発展途上国のニーズを先進のITによって解決する商品やサービスを提供しない限り、絶対に生き残れない、それほど、ITの進化は環境を変えてしまっているという、とても的を射た論を展開しています。

 この本に載っている事例ではないのですが、有名な「インドの洗濯機」の話はご存知でしょうか?インドでは、停電が多発する、でも、日本の高性能な全自動洗濯機は、停電が起きると、最初に戻って、また、給水から始める、つまり、インドでは永遠に洗濯が終わらないことになってしまいます。それに対して、サムスン社は、超小型バッテリー内蔵メモリーチップを搭載することでレジューム機能を実現して大ヒットしたという有名な事例です。

 これは、後述する「現場にこだわること」にもつながるのですが、ここではそれよりも、「ITの進化は、新たなニーズとその解決方法を、異なる進化形として生み出す」と認識しておくことが重要だと思っています。

 このコラムでも書いてきたリアルタイム・ビジネスを実現するためのテクノロジーの事例は、ほんのわずかな期間に、既に実用化され、また進化を遂げています。

 これまで何度か取り上げた、MITのメディアラボの天才、Pranav Mistry君が、最近、またしても、「透明マウス」(Mouseless - an invisible computer mouse)という面白いものを作りました。これは、文字通り、手で、マウスがあるふりをして動作をすると、本当にポインタが動いたり、クリック、ドラッグが出来てしまうというものです。


 AR(Augmented Reality:拡張現実)も、最早、当たり前になっています。
 先日、劇団四季の「リトルマーメイド」のチケットを買ったら、ポストカードが送られてきて、それにスマホをかざすと、泡がぶくぶく出てきて、そこにはいないはずのヒロインの「アリエル」が登場していました。これ欲しさにチケット予約する人もかなり多いのではないかと思います。


 一方、このコラムでも紹介をしたFusion-ioやHadoopなどの高速化の技術も、どんどん、実用化されてきています。
 データ解析などに基づく戦略策定は、通常、小さな「試み」を繰り返し、学習しながら、有効な戦略を発見していくというアプローチが重要になります。我々が、あるお客様で実現をした情報系分析システムは、これら最新の技術を活用し、最小のコストで分析と試験施策を始め、効果が見えた時点で、規模を拡大するという、上記のアプローチに即したものになっています。それは、巨大ITベンダーが推奨する機器よりも、リニアにコストパフォーマンスと処理性能が保て、かつ、先行投資が無駄にならず、社内稟議も通しやすい仕組みとなっています。
 これらの技術は、今のところは、データ解析系に対する活用が中心ですが、より、基幹系に近い仕組みにおける、「バッチ処理」の撲滅のための武器としても、既に実用が可能となっています。

 大切なことは、メーカーの営業が紹介する技術だけを意識するのではなく、自ら能動的に最新テクノロジーを学習し先んじて取り入れていく姿勢を持つことだと思います。

 システムの構築は、残念ながら、大きなものでは数年にわたります。加えて、それを活用し、投資を取り返すためには、更に数年が必要です。

 ITは、かつてよりも加速度的に進化しており、数年後から利用を開始し、数年にわたって活用される仕組みを考える上では、「今使える技術」に加え、「将来主流となる技術」を、意識することはとても重要です。
 日本が世界のトップランナーに返り咲くために、そこで意識をするべきは、国内の競合のみではなく、グローバルの「先駆者」であり、「世界的に見て、将来にわたり陳腐化しない弾力性のある仕組み」を手に入れることが不可欠だと思います。

2. ITをコストとして考えないこと

 ITは、いろいろな勘定科目の中で、唯一、「他の費目」を減らすことを可能とする特殊な科目です。
 つまり、営業費は、営業費用自身を削ることでしか、全体のコスト削減には寄与できませんが、ITは、IT費を使うことによって、営業費など、さまざまコストを削減できる「武器」になります。
 このコラムの第1回にも書きましたが、日本企業のIT部門は、ITコストの削減を主要な目標にあげていらっしゃいます。
 JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が挙げている指標を見ても、日本は、対売上比で1.03%くらいしかITコストを使っていません。
 よく言われるように、これは、米国の1/3から1/4、ヨーロッパなどと比較しても非常に低い値となっています。
 一方、日本の販管費は、対売上比で、北米の1.5倍、アジアの2倍弱となっています。
 この結果、当然ですが、日本のEBITDA(営業利益とみていいと思います)は、グローバルで最も低い数値になっています。

-日本のIT費用は、米国の1/3〜1/4、世界的に低いことで知られる。

-日本の販管費は、世界で最も高く、全産業平均で、売上比で日本は17.3%、北米が11.6%、欧州、13.1%、アジアに至っては9.0%
(出所:日本機械輸出組合「日米欧アジア機械産業の国際競争力の現状2010年度」より)

-利益は最も低く、金融を除くEBITDAの全産業平均で、北米17.9%、欧州18.3%(英国除く、英国は18.6%)、アジアは16.8%、日本は9.8%
(出所:野村證券株式会社金融研究所企業調査二部情報通信産業調査室)

 ITコストのみを下げることに躍起になり、ITを武器とし、コスト全体を抑えることができていない、とっても陳腐な日本企業の構図が透けて見える気がします。
 これでは日本企業が勝てないのは、当然ではないでしょうか?

3. データと現場にこだわること

 昨今、データサイエンティストという職種がとても重要視されてきています。日産自動車でも、米シリコンバレーに、データサイエンティスト拠点を作られていますし、マッキンゼーのグローバルレポートでも、データサイエンティストは、これから最も必要とされる人財だと言っています。
 統計学を駆使し、ITを理解し、戦略を洞察する。ITが進化をすればするほど、前述のようなテクノロジーを活用し、大量の情報がデジタル化され、統計演算が高速化し、「リアルタイム」に意思決定を支援できるようになります。

 しかしながら、その戦略を洞察するうえで、私が最も重要だと思うのは、「現場」「現地」という視点です。

 先に述べた、『リバース・イノベーション』には興味深い事例が満載ですが、その中の、GEヘルスケアの心電計(ECG)の話はとても示唆に富んでいます。
 GEヘルスケアのECGは市場で大きなシェアを占めていて、その高性能さには絶対の自信を持っていた。
 一方、インドでは、心臓疾患の患者が非常に多く、爆発的に売れるはず、または、周回遅れで、いつかは必ず売れるはずという思いもあったんだそうです。
 ところが、いつになっても全然売れない。
 そこで、データからだけでは分からないということになり、現地に長期滞在をし、真のニーズを探ったところ、インドは、人口が多いとはいえ、地方に分散していて、病院まで行けない、その上、お金も持っていない、お医者さんも複雑なECGの操作に長けていない、などの課題やニーズが「現場」に存在していた。
 これをもとに、現地で調達しやすい機材を使い(心電図の記録には公共バス用に何百万台と使われているチケット印刷機を転用したり、大量生産型のチップに切り替えたり…)、簡便でポータブルで、安価なECGを売り出したところ、爆発的なヒットにつながり、その後は、米国の過疎地にも展開しようとしているという話です。

 データによる「事実尊重型意思決定:Fact Based Decision Making」は重要ですが、それは、「現場」「現地」を知ってこその洞察に支えられることが重要です。

 これは、日本のITにも言えることだと思います。
 日本のIT部門は、自部門に閉じこもり、「現場」を見ようとしない。
 業務部門も、ITは、「IT部門の仕事」として、企業全体の武器として活用するという視点が欠落している。

 東京海上ホールディングスでは、「アプリケーション・オーナー・システム」という仕組みを根付かせ、業務部門にITの責任を持たせています。
 これにより、経営、業務部門において、「ITをビジネスに貢献させるのは自分たちの仕事である」ということが、「他人事」ではなく、「自らを主語」として植えつけられています。結果、ITの障害として最も大きいとされる「要件の誤り」が激減するという、うれしい副次効果も出ているということです。

 IT部門の方々が、「現場」「現地」を自らの課題として知ることも重要ですが、「現場」「現地」の方々も、ITはIT部門だけの仕事ではなく、業務、ひいては、経営を支える、全社の「仕事」であると捉えることが、ITを武器としたリアルタイム・ビジネスの実現に、最も重要なことではないかと思います。

 約1年にわたって不定期連載をしてきましたが、これで最後になります。
 是非、皆さんの会社が、テクノロジーにこだわり、ITを武器とし、現場を変え、企業を変え、日本再生のエンジンになっていただくことを願ってやみません。


 

• REAL TIME ECONOMICS
• 2013年 3月 27日 07:37 JST
• 3月の米消費者信頼感指数は大幅に低下

By KATHLEEN MADIGAN
全米産業審議会(コンファレンスボード)が26日発表した3月の米消費者信頼感指数は、前月比約8ポイント低い59.7で2月に上昇した分がほぼ全て帳消しとなった。歳出の強制削減など財政の不確実性が要因だ。
2月の指数は速報値の69.6から68へ下方改定された。ダウ・ジョーンズ経済通信がまとめたエコノミストによる3月の予想値は67.1だった。
今後6カ月間の経済活動を予想する期待指数も、前月の改定値72.4(速報値は73.8)から大幅低下し60.9となった。
現時点の景気に対する消費者の評価を示す現況指数は、やはり2月改定値の61.4から57.9に低下した。前月の速報値は63.3だった。
この3指数全てが今年に入っての最低を記録した。
財政健全化のために発動された連邦政府支出の強制削減と、一部税率の変更が、過去2、3カ月、消費者心理を暗くさせている。コンファレンスボードの経済指標担当部長のリン・フランコ氏は、3月の下落はやはり「財政の崖」問題で12、1の両月に低下したのと似ていると指摘、「最近発動された強制削減が経済見通しを不透明にし、その結果として消費者心理が弱気になっている」と話した。
また、2月は雇用が増加し、失業率が落ちているにもかかわらず、3月調査では消費者が労働市場の見通しについてより悲観的になっていることがわかった。
調査では就職先が「多数ある」と考える消費者が全体の9.4%にとどまり、2月の10.1%を下回った。就職が「難しい」と回答した人は36.2%だったが、こちらは前月の36.9%と大差はなかった。
また、6カ月先の雇用情勢についても悲観的になっていることが示された。就職機会が増えるだろうとみている消費者は12.3%で2月の16.1%から低下した。一方、26.6%が就職機会が減ると予想しており、前月予想の22.1%から増加した。
6カ月先の所得については、増加を予想する消費者は13.7%で前月の15.8%から低下、減少を予想する人は前月の19.3%からわずかに下がり18.0%だった。


• 2013年 3月 26日 13:10 JST
• 「大学は出たけれど…」―米国の大卒者、景気回復でも低スキル職のままか

By BEN CASSELMAN
 リセッション(景気後退)の結果、何百万人もの米国の大卒者がコーヒーショップや小売店で働いている。そんななか、景気が回復しても、こうした大卒者の雇用見通しは大して改善しないかもしれないと予測する論文が発表された。
 アンダーエンプロイメント(学歴・職歴に見合わない仕事に従事すること)は、景気回復の遅さを証明する事象の1つとなっている。一部のデータによると、大卒の被雇用者の半数近くは、従来大卒の資格を必要としなかった仕事に就いている。
 エコノミストたちは概して、この問題が一時的なものだと想定していた。つまり、景気が回復するにつれて、企業は高学歴の従業員が必要になるだろうと考えている。しかし、全米経済研究所(NBER)が25日に公表した論文で、カナダのエコノミストチームは米国がより長期的な問題に直面していると主張する。
 同チームは、企業がイントラネットから製造ロボットに至るまで、あらゆるハイテクシステムの開発、構築、それに導入のため高スキルを持つ労働者を多数必要としていた1990年代と違い、近年はこういったスキルへの需要が低下していると述べ、にもかかわらず、若者はこういったスキルを習得するためのプログラムに集まり続けていると指摘した。

1991年比で見た平均年収の推移(上から4大卒、高卒、短大卒、大学中退) 出典:商務省
 論文の主執筆者である加ブリティッシュコロンビア大学のエコノミスト、ポール・ボードリー氏は、「ロボットの導入後もある程度の人員は必要だが、導入当初よりもずっと少なくてよい」と述べる。同氏は、新技術がゆくゆくは高スキルを持つ労働者への需要を回復させるかもしれないが、景気回復だけでは不十分だろうと付け加えた。
 スキルと教育の問題について研究している米マサチューセッツ工科大学のエコノミスト、デービッド・オーター氏は、ボードリー氏の論文が「挑発的」かつ「憶測的」だと指摘した。オーター氏は大卒者が享受していた賃金プレミアム(上乗せ額)が、2000年代にそれ以前ほど急速に伸びていないことに異論はないとしながらも、それが大卒者の供給過剰の結果なのか、それとも何か別の理由があるのかはまだ不透明だと述べた。
 ブライアン・ハケットさん(25)は2010年にニュージャージー大学(TCNJ)を優秀な成績で卒業し、政治学の学位を持っているが、フルタイムの仕事を見つけられずにいる。ハケットさんはパートタイムで事務的な作業と電話インタビューをする仕事をしている。しかも、高い学歴を持ちながら働いているのは、職場でハケットさん1人ではない。
 ハケットさんは「修士号や学士号を持つ人がいるほか、法律の学位を持つ人までもが時給10ドル(約940円)の仕事に応募してくる」と話す。
 ハケットさんは数週間後に政治コンサルティングの分野でフルタイムの仕事を始められそうだという。だが大半の友人は依然として求職中か、アンダーエンプロイメントの状態にある。多くは就職活動で優位に立とうと、学校に戻り、さらに高い学位を取得しようとしているという。
 企業の幹部は、最適のスキルを備えた労働者が少なすぎると不満をこぼすことが多く、それはハイエンドの製造業や一部の職種で特に顕著だ。ボードリー氏は特定の業界にこういった人材不足が存在することはあり得ると述べる。
 しかし、ボードリー氏らのチームは、労働省のデータを引き合いに出し、大卒レベルの職(主に管理職、専門職、それに技術者)に対する需要が労働者全体の需要に占める比率は、インターネットバブルが崩壊する直前の2000年前後にピークに達し、その後低下し始めたと指摘した。一方、こういった労働者の供給は2000年代の間ずっと増え続けた。これに続く住宅バブルがこの問題を覆い隠すのに一役買った。つまり、あらゆる種類の労働者需要が人為的に作られたが、それも一時的だったという。
 それでも、高学歴の労働者の雇用見通しは、低学歴の労働者のそれと比較するとずっと良い。2月の少なくとも学士の学位を持つ米国人の失業率は3.8%と、高卒の7.9%を下回っている。また大卒の従業員はたとえ学位を必要としないアンダーエンプロイメントの分野に就いていても、より多くを稼ぎ、より早く昇進する傾向にある。
 しかし、大卒の労働者がより低レベルの仕事を余儀なくされているために、より低スキルの労働者が追いやられ、学位のない人々の職の選択肢がほとんどない状態になっている面もある。ボードリー氏氏は「大卒者は、ゆくゆくは最低スキルの人々を市場から追いやってしまう」と述べる。
Taylor Glascock for The Wall Street Journal
タメラ・オーガスタさん
 シカゴ在住のタメラ・オーガスタさん(42)はこのトレンドを肌で感じている。オーガスタさんは建設業界を中心に事務アシスタントとして15年近く働いた。しかし、昨年職を失って以降、求職活動はしているものの、より高学歴のライバルに負け続けている。
 オーガスタさんはノーザン・イリノイ大学に2年間通った。オーガスタさんは、「昔は企業がたいてい高卒の人を求めていた」が、現在は仕事を探す人の多くが大卒の学位を持っていると述べた。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324559504578383371452762136.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird

 


噂の「ハッカソン」に密着した

企業が集う新たな出会いの場

2013年3月27日(水)  西 雄大

 「ハッカソン」という言葉をご存知だろうか。米西海岸で流行している企業のイベントだが、最

近、日本でもあちらこちらで開かれているという。企業同士の出会いの場とも言われるハッカソン

に密着した。

 1月21日、東京・品川。机とパソコンが並べられたホールは、定刻の午後1時になると、大勢の参

加者でにぎわっていた。

 今回の主催者はNTTレゾナント。翌日の朝9時までとなる長丁場だ。チームとして参加する人もい

れば、会場で仲間を見つけて即席のチームを編成する人もいる。社会人として名刺交換を終えると

、大きな模造紙を前にソフトのアイデアを議論し始めた。


ひたすらプログラムを書き続ける 撮影:北山宏一、以下同
 夕刻が近づくとピザとビールが配られる。ビールで赤い顔になりつつも、各チームともパソコン

に向かい、キーボードを叩き続ける。終電で帰宅する人もいたが、多くは居残りだ。

笑顔で「今日は徹夜」

 システム開発といえば3K職場(きつい、厳しい、帰れない。企業によっては7Kという説もある)

と言われるように、普段、人材集めに苦労している。しかし、通常の業務とは違うからか、会場の

雰囲気は明るい。「今日は徹夜ですわ」とぼやきつつも、表情は笑顔だ。翌朝、夜通しかけて制作

した力作を審査員にプレゼンする。発表するチームには拍手が送られ、優秀作には感嘆の声が漏れ

る。一晩を共に過ごすことで、会場に一体感が生まれていた。

 ハッカソンは造語だ。プログラムを改良する「ハック」とマラソンをつなげたもの。週末などを

利用して長時間にわたってプログラムを書き続け、力量を競うイベントが、ハッカソンになる。シ

リコンバレーなど米国の西海岸で盛んに行われているが、最近は日本でもハッカソンを取り入れる

動きが広がっている。社内だけで単独で開催する場合もあるが、ベンチャー企業などの参加を募る

ケースも多い。

 社内だけで集まると、どうしても発想が似てしまう。しかし、規模も業態も違う会社から人材が

集まれば、社内では考えが及ばなかったアイデアが出る。大企業が有望なベンチャーを探すきっか

けにもなる。

 米エバーノートが2月に企画したハッカソンは、トヨタ自動車のシステム子会社のトヨタIT開発セ

ンターや、ぐるなび、リクルートが協賛企業として名を連ねた。トヨタが募集していたのは未来の

車に必要なシステムだ。参加者はベンチャー企業だけでなく、中学生や高校生まで幅広い。エバー

ノートの外村仁会長は「協賛企業には、アイデアを練ってから、試作品を開発するまでのスピード

を体感してほしい」と話す。


ハッカソン参加者のなかには中高生の姿も
 このハッカソンで、高く評価されたチームが提案したのはカーナビゲーションだ。目的地までの

最短距離を表示するのがカーナビだが、このチームが開発したシステムは目的地に行くまでに、利

用者が好みそうな寄り道を提案するのが特徴。カーナビ専門の開発者からは、出にくい発想だ。ト

ヨタIT開発センターの橋本雅人社長は「社内からは出てこないアイデアだ。参考にしたい」と満足

げ。このイベントで生まれたアイデアが、商業ベースの新サービスとして出てくる可能性もあると

いう。

 斬新なアイデアを探すだけではない。大企業から見れば、ハッカソンは有望なベンチャーや技術

者を発掘する場ともなる。ベンチャーから見れば、取引の無かった大企業とつながりを持つ絶好の

機会。シリコンバレーへの視察旅行や、最新タブレットのプレゼントなど、豪華な副賞が付くこと

もある。双方の要望が重なり合い、ハッカソンは日本で徐々に広がっていく。

 ただ、うがった見方をすれば、大企業で働く社員が均質化し、社内からは尖ったアイデアが出に

くくなっているとも言える。一昔前、社内ベンチャーが流行した時代もあったが、現在まで制度を

続けている企業は少数派。社員なのか経営者なのか線引きがあいまいだったからか、成功した社内

ベンチャーは少ない。ハッカソンは社内ベンチャーの反省を基に、社外の優秀なベンチャーと組も

うとする試みなのかもしれない。

 広がり始めたばかりのハッカソン。目立った成功事例が生まれれば、このイベントを採用する企

業も増えるだろう。ハッカソンという出会いの場から、新たな商品が生まれる日は、近い。


西 雄大(にし・たけひろ)

日経ビジネス記者。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130322/245414/?ST=print



03. 2013年3月27日 11:56:53 : sekAj4S9tQ
1様、長文をそのまま貼付けるのはやめませんか。その記事が重要だと思われるのならば、せめてその部分を要約するか切取って、あとはリンク先に譲る方がより多くの読者の目に留まると思います。

04. 2013年3月27日 13:12:34 : cIkmTyypTY

 愛です

 ポイントは2点ですね!!

 1. 岩田理論 ベースマネーは インフレを発生させる
    そのためには 予想インフレ(気分)をあげる

 2. 予想インフレを上げるため 長期国債を購入して
    日銀のやる気を 市場に伝える

 ===

 結果  

 2年間は 好景気になる

 ハイパー・インフレは 長期国債の購入という 一石2丁の策で
 とりあえずは 防ぐ ハイパー・インフレは 5年後くらいに問題となる
 


05. 2013年3月27日 13:40:22 : GnRfb4ci8o

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK9HZJ6K50XW01.html
「2年は無理、5年も困難」、物価目標2%の実現−岩田元日銀副総裁

  3月27日(ブルームバーグ):日銀元副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は、黒田東彦総裁が率いる日銀新体制について「強力な布陣で、2%の物価目標の実現にはベストに近い組み合わせだ」と評価した。一方、同総裁や岩田規久男副総裁が主張する2年での目標達成は無理があり、「5年で達成するのも決して容易ではない」と述べた。

岩田氏は26日のインタビューで、次回4月3、4日の金融政策決定会合で予想される政策として、@資産買い入れ等基金の長期国債購入と成長通貨供給のための輪番オペの統合A日銀保有の国債残高を日銀券発行残高以下に制限する「日銀券ルール」の撤廃B購入国債の年限の制限撤廃C期限を定めない買い入れ方式の5月からの実施−を指摘。月々の国債購入額は現在の約4兆円から6兆円に拡大するとの見方を示した。

先行きどれくらい緩和を続けるかのコミットメント(約束)も、従来の「必要と判断される時点まで」から、宮尾龍蔵審議委員が提案している『2%が見通せるまで』に書き換える」と予想。こうした施策の決定時期が、物価見通しなどを公表する4月26日になるとの見方に対しては、「そこまで先延ばしするのはちょっと無理だろう」としている。

黒田総裁は3月26日の衆院財務金融委員会で、2%の物価安定目標について「2年を念頭に置いて、必ず日銀の責任において達成したい」と言明。岩田副総裁も2年で目標の2%を達成できなかった場合、「最高の責任の取り方は辞職」との考えをあらためて語った。

5年間なら平仄が合うが

しかし、岩田一政氏は「2年で実現するのはいろいろと無理がある」と語る。同氏によると、2001年−06年の量的緩和政策の下で、GDPギャップはマイナス4%からプラス1%へ5ポイント変化。その間、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI )はマイナス1.0%前後から1.5ポイント変化した。つまり、GDPギャップが1ポイント変化すると消費者物価は0.3ポイント変化するという関係がみられた。

同氏は「コアCPIは今は若干マイナスで、2%を達成するにはGDPギャップは7ポイントの改善が必要だ。それを2年間で実現するのは極めて難しい」という。一方で、「5年間なら可能性はある。政府は2%の実質成長率を目標にしており、5年間で平均2%の実質成長を実現できたら、潜在成長率を0.5%だとすると、GDPギャップは7.5ポイント変化するので、だいたい平仄が合う」と語る。

しかし、「それも決して容易ではない」と指摘。「過去20年間の実質成長率はほぼ1%なので、その倍の成長が必要だ。小泉政権下の02年から07年にかけて戦後最長の景気拡大期と言われたが、平均成長率は1.8%だった。それと同じくらい長い2%成長が実現すれば可能性はゼロではないが、消費税率の引き上げを2度にわたりやりながら、2%の実質成長を続けるのは、決して容易ではない」と語る。

市場のほか企業と家計も信じないと   

もっとも、岩田氏は「岩田副総裁は戦前の高橋是清の下で金本位制からの離脱と財政拡大と日銀の国債直接引き受けというレジーム転換が起こり、期待が大きく変化したとして、今回もレジーム転換が必要だと主張している」と指摘。縦軸に物価、横軸に失業率を並べた「フィリップスカーブの傾きと位置に変化を起こすことができれば、5年を短縮する可能性がゼロだとは必ずしも言わない」という。

そのためには「市場が大きな体制転換があったと受け止めることが必要だ」と指摘。「単に金融市場の参加者がそう思うだけではなく、企業経営者や家計の消費者も体制が転換したと信じないと、フィリップスカーブのシフトは起こらない」という。

黒田総裁は26日の衆院財務金融委で、金融緩和の出口政策について「物価 がまだマイナスの中で出口うんぬんするのは時期尚早」と述べた。これに対し岩田氏は、金融緩和の出口政策についても検討が必要で、「イングランド銀行(BOE)のやり方が望ましい」と指摘する。

政府が損失負担する必要    

具体的には「BOEも国債を大量に買っているが、始める前に財務大臣とキング総裁が話をして2つの合意をした。1つは、政府が国債管理政策によって、発行する国債の平均満期を変化させないことだ。満期をどんどん長くすると、中央銀行による長期国債の買い入れの効果が薄まってしまうためだ」と説明。

さらに、「同時に合意したのは、大量に国債を買うことに伴う収益と損失をすべて財務省が負うことだ」と指摘。「大量の国債を買う際は常に財政ファイナンス(穴埋め)との批判が付いてまわるが、損失負担の合意には、透明な形で責任を明確にする役割がある。その2つの論点を議論する必要が必ずどこかで生じるのではないか」としている。


更新日時: 2013/03/27 11:21 JST


 


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKAHTA0D9L3501.html
日経平均が小幅高、輸出一角や不動産上昇−配当落ち重しに


トヨタアセットマネジメントの浜崎優チーフストラテジストは、米経済について「住宅が順調に回復しており、先行き内需を押し上げる期待がある。量的金融緩和の継続が効いている」と見ていた。

前日発表された米国経済指標は、全米20都市を対象にした1月の米S&P/ケース・シラー住宅価格指数 が前年同月比で8.1%上昇とエコノミスト予想の中央値(7.9%上昇)を上回り、2006年6月以来の高い伸びとなった。また、2月の米製造業耐久財受注 は前月比で5.7%増と、昨年9月以来で最大の伸び。26日の米ダウ工業株30種平均 は0.8%高の14559.65ドルと、史上最高値を更新した。

国内の政策関連では、日銀がデフレ脱却へ国債買い入れを拡大するため新たな購入目標を設ける、と27日付の日本経済新聞朝刊が報道。資産買い入れ基金と、通常の資金供給のための国債買い入れ枠を統合、緩和規模を分かりやすく示すという。SMBC日興証券株式調査部の西広市部長は、米経済が回復基調をたどっていることに加え、「日銀の大胆な金融緩和への期待もあり、投資家はリスクを取りやすい」と話した。

落ち分埋める

ブルームバーグ・データによると、日経平均ベースの配当権利落ち分 は90円程度。カブドットコム証券の山田勉マーケットアナリストは、「配当落ち分を考慮すれば、相場の基調はかなり強い」と指摘。キプロス問題、中国経済の減速懸念はあるが、「今の日本株は以前のように、外部環境のみに振り回される状況ではなくなっている」と見る。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK9AT66S972901.html
債券は続伸、長期金利は10年ぶり低水準−国債購入拡大観測で買い優勢

  3月27日(ブルームバーグ):債券相場は続伸。日本銀行が金融緩和強化の一環で国債購入を拡大するとの観測を背景に買いが優勢だ。長期金利は10年ぶり低水準まで達している。


みずほ証券の三浦哲也チーフ債券ストラテジストは、前日の黒田総裁の発言内容はこれまでと特段大きく変わらなかったものの、債券市場の方ではあらためて日銀による長期国債の大量購入による需給タイト化を強く材料視したと指摘。「この流れは少なくとも、黒田総裁による『最初の一手』が明らかになるまで簡単に変わらないのかもしれない」と言う。 

日銀はデフレ脱却へ国債買い入れを拡大するため新たな購入目標を設ける、と27日付の日本経済新聞が伝えた。具体的には資産買い入れ基金と、通常の資金供給のための国債買い入れ枠を統合し、緩和規模を分かりやすく示すとしている。


06. 2013年3月27日 15:44:42 : zBYc960RaI
いいからやれるもんならさっさと「実行」しなよ。
現在のところ全て口先であって、実行が伴っていない。
ここまで市場をたきつけておいていざ実行の段にショボい内容にすり替わって
いたりしたら一気に失望で巻き返しだぞ。

07. 2013年3月27日 15:54:58 : cIkmTyypTY

 >05 さん

 岩田の言ってることは 至極当たり前のようですね

 いきなり2%にするには 80兆円の 日銀の買オペをしなければならないが
 それだけ 急激にはしたくないのだと思います

 それでも やらないというと 白川と同じになってしまう
 岩田の理論では ヤルヤル詐欺 が一番なわけで

 やんわりと やるっていってるのでしょうね〜〜
 


08. 2013年3月27日 20:17:40 : GnRfb4ci8o

無担保コール翌日物の加重平均0.059%、約6年8カ月ぶり低水準
2013年 03月 27日 19:08

ビジネス
外為持ち高報告義務を再延長、6月末まで=財務省
第4四半期の英GDP確報値、前期比‐0.3%・前年比+0.2%
南アフリカ、中国の奇瑞控股と船舶の建造・修繕事業で合意
クレディ・スイス、Mスタンレー欧州ウェルスマネジメント部門買収へ

[東京 27日 ロイター] 日銀によると、27日の無担保コール翌日物取引の加重平均レート(速報ベース)は0.059%と前日(0.076%)を大きく下回り、前回のゼロ金利政策解除前日に当たる2006年7月13日以来、約6年8カ月ぶりの低水準を記録した。最高レートは0.150%、最低レートは0.040%。

短期金融市場では、日銀の積極的な緩和姿勢を受け、資金余剰感が強まっている。27日の当座預金残高は56兆0800億円(速報ベース)と5営業日連続で過去最高を更新している。

日銀の黒田東彦総裁は26日の衆院財務金融委員会で、金融政策の効果をみる上で、毎月の買い入れ額などのフローよりも「ストックがどう動くかということがイールドカーブを下げるのに重要な要素」と述べ、ストックを重視する考えを示している。

セントラル短資・総合企画部長の金武審祐氏はコール市場について、足元の資金余剰感を受け、限られた資金の取り手(運用側)が示す低い調達レートに対し、運用難の資金の出し手(運用側)が応じざるを得ない構図が続いていると指摘。その上で「黒田新総裁は、ストックベースの分かりやすい指標で金融緩和を進める姿勢を示しており、当座預金残高は増加傾向をたどる可能性が大きい。今後は翌日物金利が下がりやすい地合いが続くのではないか」と述べた。

(ロイターニュース 星 裕康)


日銀、国債買入一本化と無期限緩和の前倒しを検討へ
2013年 03月 27日 14:12 JST
[東京 27日 ロイター] 日銀は次回の金融政策決定会合で、黒田東彦総裁ら新執行部体制の下で質・量両面から大胆な金融緩和を進めるため、金融政策運営の枠組みや緩和の規模などを議論する。

新たな枠組みの下で緩和手段の柱となる長期国債買い入れについては、資産買入基金と金融調節上の必要性から実施している「輪番オペ」の一本化を検討する。2014年から予定されている期限を定めない資産買い入れ(オープンエンド方式)も前倒しで導入する方向だ。複数の関係筋が語った。

黒田東彦総裁は26日の衆院財務金融委員会で、基金と輪番オペでそれぞれ実施されている長期国債買い入れを「わかりにくい」とし、一本化も「検討に値する」と明言した。現行「1年以上、3年以下」となっている基金の国債買い入れ対象を、年限の制約がない「輪番オペ」に合わせることで、「イールドカーブ全体を下げていく」(黒田総裁)ことが狙いだ。3月6、7日に行われた金融政策決定会合では、白井さゆり審議委員が統合案を提案して反対多数で否決されているが、2月会合の議事要旨からは複数の委員が選択肢と指摘していることが明らかになっている。黒田総裁の前向きな発言を受け、新体制下で初となる次回会合で統合が検討対象となる可能性が大きい。ただ、統合は基金の存廃など金融政策運営の枠組み見直しに直結するため、次回会合でどこまで詳細を詰められるか、不透明な部分もある。

基金による国債買い入れは、長めの金利を押し下げる金融緩和が目的で、2013年末に44兆円まで残高を積み上げる計画。一方、輪番オペは基金とは別に資金需給を均す金融調節の一環との位置づけで、月間1.8兆円、年間21.6兆円を購入している。統合した場合の買い入れ方式は、利付国債について現行の輪番オペで実施している「利回較差入札方式」が有力。

また、統合に伴い、日銀による国債購入が財政ファイナンス(穴埋め)とみなされないよう、輪番オペに設定されている「銀行券ルール」の扱いについても議論は避けられない。同ルールは、日銀保有の国債残高を銀行券の発行残高以内に抑える歯止めの役割を果たしているが、基金と輪番オペを合わせた国債保有残高はすでに銀行券発行残高を超過している。

国債買い入れの統合に合わせて、2014年から導入予定のオープンエンド方式による資産買い入れの前倒しも検討する。金融資産を毎月一定額、期限を定めずに購入し続けるもので、1月の金融政策決定会合で導入を決めたばかり。導入前倒しで、緩和の規模を毎月の買い入れ額である「フロー」で示す案も浮上しているが、黒田総裁は金融政策の効果をみるにはフローよりも、「ストックがどう動くかということが、イールドカーブを下げるのに重要な要素」と指摘している。このため、過去に日銀に実施した当座預金残高のほか、日銀のバランスシート、マネタリーベースなどもターゲットに浮上する可能性がある。

質・量ともに大胆な金融緩和の推進が必要=黒田日銀総裁 2013年3月26日
黒田総裁、5年超の国債買い入れは「当然検討対象になる」 2013年3月26日
ドル94円前半、黒田日銀総裁発言が短期筋の円売り誘発 2013年3月26日
黒田日銀総裁「できるだけ早期の2%物価目標達成が使命」=諮問会議 2013年3月26日

 

 

崩れない安倍相場、リスクオフの円買いは「流行遅れ」に
2013年 03月 27日 16:49 JST
[東京 27日 ロイター] キプロス問題は長引いているが、日本株とドル/円は底堅い動きを続けている。海外勢の「アベノミクス」期待が依然高いほか、欧州や新興国の経済が不安定であることも、日本株の相対的な魅力を高めている要因だ。

一方で日銀の金融緩和期待が円高を阻止しており、リスクオフの円買いは「流行遅れ」になりつつある。来週の日銀決定会合で材料出尽くし感が広がったとしても、海外勢は押し目を狙っているという。

<今はドルが受け皿に>

「安倍相場」が始まる昨年11月半ばまでは、市場のリスクオフムードが強まると、逃避資金は日本円に流れ込み、円高を加速させることが多かった。だが今回、「キプロス・ショック」が広がるなかでもドル/円は底堅い動きをみせている。上値は3月12日の96円71銭をピークに切り下がっているが、下値は25日の93円53銭を底に切り上がってきた。イタリア総選挙の混乱で円買いが加速した2月25日の市場でも90円の大台を割り込むことはなかった。

「キプロス・ショック」が昨年までのように世界的な金融システムの不安につながっていないこともあるが、以前との大きな相違点は、やはり新生日銀による「大胆な金融緩和」への期待だ。「リスクオフで円買いに動けば、日銀緩和期待の円売りにやられるのではないかとの警戒がある。ドル/円の押し目を狙う海外勢も依然多い」(邦銀)という。

4月3─4日の日銀決定会合で、市場の期待を超えるような金融緩和策が出なかった場合、いったん材料出尽くしによる円買いが進む可能性もある。だが、黒田東彦総裁率いる新生日銀が金融緩和を継続する姿勢を打ち出せば、円高は一時的な動きにとどまるとの予想も多い。貿易赤字の定着などファンダメンタルズからの円安材料が増えてきたことも長期円安予想の要因だ。

もともとリスクオフの円買いの根拠は確固たるものではなかった。日本の金融システムへの安心感などが理由として挙げられていたが、理論的な裏付けがあったわけではない。そのときのトレンド(流行)といったムードが大きく影響していたとみられている。日本株が売られるなかで、進む円買いに違和感を感じる市場関係者も少なくなかった。

野村信託銀行・資金為替部次長の網藏秀樹氏は「日銀の金融緩和期待が支えとなり、リスクオフになったからといって円買いは進めにくくなった。ユーロ圏のほか、中国など新興国経済も不安定になってきており、いまは資金が逃避する場合、消去法的に米国に流れている。FRBが金融緩和を続けているが、ドルは下落していない」と指摘する。

<配当落ちを即日埋め>

円高が進まなければ日本株も買いやすい。海外投資家にとってドル高・円安は日本株のドル建て投資を目減りさせるが、円安による収益改善期待が日本株高の大きな原動力であり、円高不安の後退は買い安心感につながる。

27日の日経平均.N225は22円高と続伸。市場筋の試算では3月決算企業の配当権利落ち分が約90円あり、それを即日埋めてプラス圏に浮上した。即日埋めは相場の強さを示すとみられており、2001年以降、即日埋めをした2003─2006年、2009年の日経平均はすべて年間でプラスだ。

東証1部売買代金は1兆8977億円とやや縮小気味だが、強気ムードは依然健在。「月末が近づき様子見の海外勢が多いが、日本についての積極的な質問は途切れていない。押し目をたんたんとねらっているようだ」(大手証券トレーダー)という。

野田佳彦前首相が解散を明言した11月半ばから約4カ月。東証の3市場投資主体別売買内容調査によると、海外投資家の買い越しは5兆円を上回っているが、「海外勢の日本株に対する興味は以前衰えていない」(投資顧問業者)との指摘は多い。

立花証券・顧問の平野憲一氏は「日本株に慎重なファンドマネージャーは少なくないが、一方でファンドには日本株を買ってくれという顧客からの要請が続いているようだ。資金を一気に投入するのではなく、少しずつ投資しているので相場の息が長くなっている」と指摘する。

期待感が大きく先行している「安倍相場」であり、「結果」とのかい離が明らかになれば大きな反動も起きやすいが、日銀緩和期待が支配する円債市場と同様、日本株やドル/円も需給要因が下支えする状況が続いている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 吉瀬邦彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92Q03K20130327

 

  


 

焦点:欧州自動車販売の不振、南部から北部に連鎖
2013年 03月 27日 16:16 JST


[ベルリン/アムステルダム 26日 ロイター] 欧州自動車販売の不振が、ユーロ圏債務危機の震源地である南部から主要市場のドイツを含む北部に広がっている。

年初来の新車販売台数はドイツで10%、オランダで30%近く、スウェーデンでは14.8%減少している。欧州北部の市場で唯一販売が好調なのは英国で、2012年の同国の販売台数は2008年以来の高水準を記録、2月単月の販売台数も7.9%増加した。

2012年の欧州新車販売台数は17年ぶりの低水準に落ち込んだ。特に南欧で物価上昇や抑制された賃金、政府の緊縮措置によって可処分所得が圧迫されたことが要因だが、ユーロ圏危機の長期化を背景に北部の消費者も大きな買い物への慎重姿勢を強めつつある。

ドイツとオランダでは昨年、民間消費が増加したにもかかわらず、自動車販売はやや減少した。

仏PSAプジョー・シトロエン(PEUP.PA: 株価, 企業情報, レポート)のベルリンのショールームに勤務する営業マン、クリスチャン・ギブラーさんは「問題はドイツ人の気質だ。われわれは安心を好む。したがって何か悪いことが起きるかもしれいないとの不安があるときは慎重になって支出するよりも貯蓄したくなる」と語った。ギブラーさんの今年の販売台数は昨年同時期の半分ほどだ。

プジョーのドイツでの2月の新車販売台数は35.1%減少した。

独ダイムラー(DAIGn.DE: 株価, 企業情報, レポート)の高級車ブランド、メルセデス・ベンツ、高級車メーカーの独ポルシェ(PSHG_p.DE: 株価, 企業情報, レポート)、独BMW(BMWG.DE: 株価, 企業情報, レポート)の1─2月のドイツ販売台数は4.9%増と、米フォード・モーター(F.N: 株価, 企業情報, レポート)や独フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE: 株価, 企業情報, レポート)、仏メーカー各社など量産メーカーと比べて健闘している。

年初から続く厳しい寒さも消費者信頼感の改善には役に立たず、ディーラーによると、購入者は試乗を申し込んでも降雪によってキャンセルしてしまうという。

<需要>

だが欧州北部の需要は、大きく落ち込んでいる南欧と比べて依然として強い。

LMCオートモーティブの市場予測担当ジョナソン・ポスキット氏は「ドイツの市場は昨年、ほぼ危機前の水準に回復した。一方、スペインは危機前の半分以下で、イタリアではこれまでの水準の半分に激減した」と指摘。

「ドイツ市場は通年で2─3%縮小すると予想する。最初の数カ月間に大きく落ち込み、その後は昨年下期が弱かったため、それほど大きな落ち込みにはならないだろう」と語った。

ただ、北部の自動車市場の一部は急激に落ち込んでいる。特に見通しが暗いのはオランダで、同国の経済はドイツと異なり、2013年にマイナス成長が見込まれている。

オランダでは失業率が18年ぶりの高水準に達する一方、消費者信頼感は2月に1986年のデータ集計開始以来の低水準に落ち込んだ。

オランダ統計局(CBS)によると、2012年の同国の自動車、バイク、原動機付き自転車、自転車の小売販売台数は前年比14.8%減少し、すべての製品カテゴリーの中で減少ペースが最もきつかった。

<かすかな希望>

ドイツでは中古車へのシフトが見られている。ドイツ政府自動車局(KBA)のデータによると、1─2月の中古車販売台数は2%増加した。

ドイツの自動車ディーラー・整備業界団体ZDKによると、昨年も新車販売が8%減少するなか、中古車販売は5.8%増加し、整備収入も3.2%増加した。

議論を呼んでいる販売慣行である自動車メーカーやディーラーによる「自己登録」が、昨年の新車販売をつり上げるとともに2013年初めの中古車販売も促進した。

ドイツで昨年販売された新車10台につき約3台が「自己登録」車で、これらは値下げされ、カタログ記載価格の3分の1ほどで売られる可能性もある。

アーンスト&ヤングのグローバル・オートモーティブ・センターのアナリスト、ピーター・ファス氏は「昨年は非常に大規模な値下げと自己登録が見られ、販売統計が作為的につり上げられた。これが持続できないことは明確だ」と指摘した。

ただ、同氏はドイツの自動車市場は今年、全般的に安定を維持する見込みだとし、ドイツ経済はリセッション(景気後退)には陥らないとの見方を示した。

ダイムラーの最高経営責任者(CEO)も今月の記者会見で、今年下期に改善を見込んでいると述べている。

(Sarah Marsh/Gilbert Kreijger記者;翻訳 佐藤久仁子;編集 田中志保)


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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92Q03I20130327?sp=true


http://asyura2.com/13/hasan79/msg/394.html#c21 #c22


09. 2013年3月28日 00:57:51 : GnRfb4ci8o
外貨準備膨張、問われる中銀

2013年3月28日(木)  FINANCIAL TIMES

金融危機以降の金融緩和や通貨戦争で、各国の総外貨準備高は10年強で5倍超に急増。自国通貨を切り下げようと介入する中央銀行は、為替市場をも動かす影響力を持つ。それだけにその介入活動や外貨準備の運用については透明性が求められる、との指摘も。

 東京にいる為替トレーダーは昨年、夜の散歩というのを妙に気に入ったらしい。

 投資銀行が入る高層ビルが密集する丸の内の金融街では、同僚が退社してから何時間も経った深夜になると、トレーダーたちが1〜2ブロックほど北にある日本銀行へと足を運んだという。欧州の古典的な建築スタイル、ボザール様式で建てられた日銀の壮麗な建物をぐるりと取り囲む客待ちタクシーの数を数えるためだ。タクシーの数が多ければ、職員が深夜まで働いていることを意味し、それは日銀が為替市場への介入を計画している証拠だと、トレーダーは想像したりしたようだ。


日本では財務省の命を受け、日銀(上)が実務部隊として為替市場に介入する(写真:ロイター/アフロ)
ベールに包まれた外貨の運用先

 日銀はここ数年、輸出業者を支援すべく、対ドル円レートを押し下げようとドル買い介入を実施、日本は膨大な外貨を抱え込むに至っている*1。こうした介入は事前に発表されることはないが、財務省は介入直後に購入した外貨の規模を発表する。

*1=日本の場合、外貨準備を保有するのは財務省で、為替介入は財務大臣の権限で決め、日銀はその指示に基づいて介入の実務を担っている
 しかし、購入された外貨の運用先は秘密のベールに包まれている。日銀を含む世界の中央銀行が購入し、積み上がった外貨準備がどう運用されているかはほとんど知られていない。

 トレーダーや投資家は、その秘密主義に包まれた膨大な外貨資産(日本は昨年末時点で1.28兆ドル=約122兆9900億円=と世界第2の外貨準備高を誇る)が、どんな形で運用されているのか知るのに頭を悩ませてきた。

 通貨戦争や世界的な金融緩和によって、各国が抱える外貨準備高は2006年以降倍増し、過去にない規模に膨れ上がっている。今や介入を実施する各国の中央銀行の影響力は極めて大きく、中央銀行は金融市場の重要なプレーヤーとなっている。にもかかわらず、外貨準備に関する透明度は低く、説明責任もほとんどなされていない。

 通貨戦争勃発の不安が高まっているうえ、金融緩和に打ち切りの兆しも見えない中、各国の外貨準備高はさらに積み上がる可能性がある。

 1日の取引高が4兆ドル(約384兆3600億円)に上る外国為替市場は、市場規模としては世界最大だ。中央銀行の担当者は、この巨大市場をも動かす影響力を有している。あるヘッジファンドの投資家は匿名を条件にこう語る。

「中銀が不安定を増幅させる」

 「中央銀行は市場に大きな歪みをもたらしている。私は投資家として、世界最大の債券ファンドを運用する米ピムコ(PIMCO)が債券市場でどんな動きをしているかを知ることはできるが、中央銀行が何をしているかは聞けない感じがあり、納得できないものがある。こうした中央銀行の動きが分からないことが今後、世界経済の不安定さをさらに増幅するのではないか」

 為替市場への介入が金融市場に及ぼす直接的影響については広く知られている。例えば、2月に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、参加国は金融市場における資金フローの「過剰な乱高下」と為替相場における無秩序な動きは、「経済と金融市場の安定に悪影響を及ぼす」と警鐘を鳴らした。だが、外貨準備高の急増が長期的に及ぼす影響については、あまり関心が向けられていない。

外貨準備、ヘッジファンドの4倍


 国際通貨基金(IMF)の推定によれば、各国が保有する外貨準備高は2012年9月末時点で10.8兆ドル(約1036兆円)と、世界のヘッジファンドが抱える資産の実に4倍強に達する。

 世界最大の外貨準備高を抱える中国だけで3兆3200億ドル(約318兆円)の資産を保有しており、日本とサウジアラビア、ロシアがこれに続く。第5位がスイスで、その規模は4680億ドル(約44兆9200億円)に上る。

 この大半は昨年積み上がったものだ。スイス国立銀行(中央銀行)がスイスフラン高に歯止めをかけるため、フラン売り・ユーロ買いの大規模な介入を行った結果だ。昨年、ユーロ圏の危機を受けて、安全資産を求める投資家の資金がスイスフランに殺到、同通貨の急騰を招いた。

 さらなる通貨戦争勃発の恐れが台頭していることを考えると、ほかの中央銀行がスイス中銀と同様の行動に出ることもあり得る。

 新たに膨大な外貨資産を抱えるに至ったことで、通貨当局はその運用先を分散化するため、これまで運用先とは見なしてこなかった通貨に資金を向け始めている。あまり知られていないが、中央銀行の中には、しばしば米大手運用会社ブラックロックなどの民間金融機関をはじめとする第三者機関を使って、資産運用や取引を行っているところがある。

 スイス中銀は昨年、介入の際、情報が漏れないようにオランダのラボバンクのプライムブローカレッジ・サービス*2を通じてユーロを購入し、市場を出し抜いた。

*2=ヘッジファンドなどに対する証券管理から融資までを含む総合的なサービス
 「安全性、流動性、リターンの3つを確保することが中銀の外貨準備運用担当者の伝統的信念だったが、今や流動性があって安全な資産などない。最も安全性の高い資産でさえ安全ではなくなっている」と、ブラックロックの公的金融機関グループのグローバル責任者、テレンス・キーリー氏は話す。

 外貨準備運用担当者は伝統的に、資産をすぐ売却できる低利回りの資産という形で保有してきた。為替相場が急変して輸出や対内投資にマイナスの影響を及ぼしたり、金融危機発生につながるような事態が発生したりした場合に迅速に対応するためだ。

 米国債やユーロ圏各国の国債なら即座にドルやユーロに換金することが可能で、代表的な準備通貨とされてきた。だが両通貨の魅力は薄れ始めている。米連邦準備理事会(FRB)は各国の通貨当局に代わり、今も約3.25兆ドル(約312兆円)と過去最高の米国債を保有しているが、各国の外貨準備高に占めるドル資産の比率は年々低下している。

 ドルは2000年には外貨準高の71%を占めていたが、今は62%を占めるにすぎない。ユーロの輝きも当然、低下しており、外貨準備に占める比率は2009年の28%から現在は24%に落ち込んでいる。

 金利がほぼゼロという状況下、運用担当者はリターンの低下に苦しんでいる。中銀の運用担当者がリターンを主たる目的に外貨準備の運用判断を下すことなどこれまでなかったが、巨額の外貨準備を維持するにはコストがかかる。1年物米国債の利回りがわずか0.14%では、コストもカバーできない。

新興国通貨の保有は今後も拡大

 こうした問題への対処を余儀なくされる形で、外貨準備運用担当者は高利回りの資産に目を向け始めており、従来は対象外だった通貨建ての資産も運用先と見なすようになっている。これは、外為市場への介入や貿易を通じて新たに積み上がった資産が、ドルやユーロ以外の通貨に分散投資される公算が大きくなっていることを意味する。

 米金融大手、JPモルガン・チェースの外国為替市場戦略部門の責任者、ジョン・ノーマンド氏の推定によれば、今や中銀のほぼ半分が新興国通貨を保有しており、2年前の25%から倍増したという。「ユーロ圏危機によって、中銀は購入する資産の質に一層敏感になった。今年は外貨準備を巡る動きが一段と面白くなりそうだ。ユーロ圏危機が和らいでも、代替通貨への資金流入は一段と勢いを増すだろう」。

大胆な介入に動いたスイス中銀

 スイス中銀の動きはまさしくこの点を裏づけている。同行は昨年夏、世界の外為市場の動向を左右するまさに主要プレーヤーだった。

 ユーロ圏危機が頂点に達した昨年5月、不安に駆られた海外投資家の資金が殺到してスイスフランが高騰。スイス中銀は、スイスフラン高の影響から自国の輸出業者を守るため、毎月数百億ドル規模のユーロを買う介入を行い、スイスフラン高に歯止めをかけ、勇名をとどろかせた。

 だが、スイスは莫大なユーロを抱えて身動きが取れなくなることへの懸念から、ユーロをほかの通貨に替えることを決断した。

 FX投資家の間では、スイス中銀がスウェーデンクローナと豪ドルを買っているという噂が盛んに流れた。いずれの通貨も、スイス中銀の尻馬に乗ろう、あるいはスイス中銀に先んじようという投資家に積極的に買われた。

 銀行関係者らによれば、スイス中銀がオーストラリア国債の最大の買い手となった日も数日あったという。スイス中銀が年後半に明らかにしたデータは、こうした噂を裏づけていた。同中銀のバランスシートに計上された外貨資産に占める「その他通貨(豪ドル、スウェーデンクローナ、デンマーククローネ、シンガポールドル、韓国ウォン)」の比率が上昇したのだ。

 中銀がバランスシートの内容をこれほど明らかにするのは稀だ。アジアや中東の金融当局の多くは、外貨準備のデータを編集しているIMFに対してすら、外貨準備の通貨別構成比率を開示することを拒んでいる。しかも近年、外貨資産の保有額が最も大幅に増加しているのはこれらの地域だ。

 だが、これらの中銀の行動は、スイス中銀及び、アジアの中銀よりは透明性を維持しているイスラエル銀行(中央銀行)などの開示資料から、ある程度推測することができる。

 ほかの投資家と同様、中銀も群衆的な行動を取る傾向がある。積極的に外貨準備の分散化を図ろうとするスイス中銀と似た行動をほかの中銀も取っていることが、実証データや経験的なデータによっても裏づけられている。


スイス中央銀行(上)は昨年夏のユーロ危機の際、大規模な為替介入を行い注目を集めた(写真:Bloomberg via Getty Images)
外貨準備の非主要通貨比率、上昇

 IMFに外貨準備の通貨構成を開示している国々においては、外貨準備をドル、円、ユーロ、ポンド以外の通貨で運用している比率が2006年の2%から昨年は6%近くまで上昇した。


 相対的な金利の高さとトリプルAという高い国債格付けゆえにカナダドルと豪ドルが、過去2年間、強い関心を集めた。このため、IMFは両通貨の分類を「その他通貨」から「準備通貨」に変えることを検討している。

 アナリストは、これらの通貨の外国人による保有比率の上昇は、中銀が積極的に買いに出ている証左だと見ている。野村証券によれば、カナダ国債の外国人保有比率は2007年の12%から現在28%に、オーストラリア国債も58%から同72%にそれぞれ上昇した。

 多くの中銀は外為市場などの市場で自ら取引を行っている。しかしトレーダーによれば、中銀は取引の足跡をたどりにくくするため、スイス中銀がラボバンクを使ったように第三者機関を活用するケースが増えているという。

 市場から少額ずつ買い入れるために、自動化システムやアルゴリズムの使用を検討している中銀もある。

 中銀が扱う資産が膨大なため、その秘密主義に懸念を示す投資家もいる。

 「中央銀行はプレーヤーとレフェリーの両方になりつつある。中銀は規制当局に報告する義務はないし、危機が発生した際には、その危機を制御することもできるが、同時に市場を歪めてもいる。あまりにも膨大な“公的資産”を抱えている」(投資家)

 昨年、米格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、スイス中銀の積極的なユーロ買い介入が、欧州中核国と周辺国の国債利回りの格差(スプレッド)縮小に大きな役割を果たしたとするリポートを発表した。

 ちなみに投資家は当時、このスプレッドをユーロ圏危機のバロメーターと見なしていた。スイス中銀は、格付け機関は中銀の市場への影響力を過大評価していると述べている。

 一部の中銀は、伝統的な中核市場に比べ規模の小さい新興国の債券市場や為替市場に外貨準備の運用の分散化を図ることのリスクは認識しているとのメッセージを積極的に発信している。

 スイス中銀は最近、どうすれば価格を歪ませることなく外貨準備を分散できるか、ほかの中央銀行と頻繁に意見交換していると述べた。だが、礼を尽くす中銀ばかりではない。中には、こうした警鐘をほかの投資家による要らぬお節介だと辟易する国もある。

 中銀の資産を預かっているある投資会社は、外貨準備高の急速な膨張が市場を不安定にするとの懸念は杞憂だとする。米大手運用会社フランクリン・テンプルトンのデビッド・スマート氏によれば、中銀が一段の情報開示に踏み切ることは期待できそうもないという。だが、近年の外貨準備運用担当者の行動の変化をさほど動揺することもなく消化してきた市場の能力を見れば、心配の必要はほとんどないと同氏は考えている。

 「数年前から分散化の動きが始まったが、さほど大きな問題に遭遇していない。ほかの投資家に比べ中銀が特段有利なわけではない。これらの市場でどの程度の資金規模なら歪みを起こさないか非常に慎重に考えて動いている」(スマート氏)

外債は購入しないとした日本だが

 さて、話を東京に戻そう。円トレーダーはもはやタクシーの数を数える必要はない。日銀の新総裁が日本をデフレから脱却させるべく非伝統的な手法を講じるとの期待感が高まる中、今年に入ってヘッジファンドの間では、円売りがすっかり主流になったからだ。

 とはいえ、スイスと異なり日本は外債を購入するとの示唆を引っ込めた。外債の購入による介入を行えば、外貨準備はさらに積み上がり、世界の金融市場の安定を損なうと見る中銀は少なくない。日本は目下のところ、軍資金をため込み、いつでも戦えるようにと情勢を見守っている。

Alice Ross and Claire Jones
(©Financial Times, Ltd. 2013 Mar. 11)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130325/245512/?ST=print


 

転換期の公共事業

従来型の全総から脱却できるか

2013年3月28日(木)  青野 昌行

 かつての全国総合開発計画をほうふつさせる国土強靭化計画。高度経済成長期には一定の役割を果たした全総だが、当時の考え方をそのまま現在に適用できるわけではない。人口減少時代を見据えた新しい方針が求められる。
(前回の「巨額に上る首都高・東海道新幹線の老朽化対策」から読む)

 ミッシングリンクの解消──。自民党が唱える国土強靭化にも盛り込まれ、国土交通省も道路整備に関して常々、使っている表現だ。ミッシングリンクとは、直訳すれば「失われたつながり」。道路網のあるべき姿、いわば「完成形」に対して、欠けている部分ということだ。

 では、いったい道路網の完成形とは何か。

 旧建設省で長らく道路行政に携わった土木学会の橋本鋼太郎次期会長も、「ミッシングリンクという言葉は、一般の人には分かりにくい」と指摘する。

1万4000kmの高規格幹線道路

 通常、1987年に閣議決定された第四次全国総合開発計画(四全総)の総延長1万4000kmに及ぶ高規格幹線道路を基準とすることが多い。高規格幹線道路は、地方都市やその周辺地域からインターチェンジまで1時間程度で到達できるように高速道路ネットワークを全国に整備するという観点から定められた。その未整備区間をミッシングリンクと呼び、解消を急いでいる。国交省は優先度の高い区間に事業を絞って予算を配分しているというが、最終的には1万4000kmをすべて整備することを目標としている姿勢は現在でも一貫している。


上の地図は、第四次全国総合開発計画(1987年閣議決定)に盛り込まれた高規格幹線道路網。総延長1万4000kmのネットワークを整備する構想を描いた。現在、そのうち約1万kmが供用。写真は2012年4月に一部区間が開通した新東名高速道路(写真:大村 拓也)
 四全総が決定された87年と言えば、バブル景気が始まりつつあった頃。「多極分散型の国土」をうたった四全総の時代には、バブル景気と相まって、日本各地でリゾート開発などが盛んに進められた。そんな時代に作られた計画が現在にも適用できるのか、当然、疑問がわく。「新たな観点から見直した方がいい」と橋本次期会長は指摘する。

 2011年4月時点で供用している路線は9855km。延長では全体のまだ7割にとどまる。しかし、到達時間1時間以内の人口カバー率は、既に95%に上る。日本全国の95%の人が、1時間以内に高規格幹線道路に到達できる地域に住んでいることになる。

高規格幹線道路の整備状況と人口カバー率

国土交通省の資料をもとに日経コンストラクションが作成。人口カバー率とは、おおむね1時間以内に高速 道路ネットワークに到達できる地域に住む人の割合
2050年までに無居住化する地点

沖縄県や離島の一部は省略(資料:国土交通省)
 残り約4000kmのミッシングリンクをすべてつないだとしても、人口カバー率は98%。現状より3ポイントしか高まらない。比較的人口の少ない地域が、未整備区間として残っているからだ。

 国交省の資料によると現在、日本の国土のうち人が居住している地域は約5割。それが2050年には4割に低下すると推計している。これから人口が減少していくなか、ミッシングリンク部分の需要はますます下がっていく。


全国総合開発計画の復活か

 国土強靭化計画には、「国土の均衡ある発展」や「多極分散型の国土」など、かつての全国総合開発計画(全総)で使われたキーワードがいくつも見受けられる。大和総研金融調査部の中里幸聖主任研究員は「全国総合開発計画は、高度成長期まで一定の役割を果たした」と評価しつつも、次のような問題点を指摘する。「中央集権的に全国一律で開発を進めたことで、例えば地方の駅前が“金太郎飴”的になってしまった。全国各地で『俺の地方にも空港が欲しい』などと言い出して、適切な配分という発想が貧弱になった」(中里主任研究員)。

 最後の全総は、1998年に閣議決定された「21世紀の国土のグランドデザイン」(五全総)。その後、2005年に国土総合開発法が改正され、全総は歴史的な役割を終えた。

 ここにきて登場した国土強靭化が問われているのは、かつての全総とどこが違うのかということだ。それを示せなくては、時代錯誤の全総復活との批判を免れない。

 中里主任研究員は、「国土強靭化基本法案は総花的ではあるが、人口減少下で、集中と選択が必要になることは踏まえている」と評価する。「補正予算でも、コンパクトシティーなどのキーワードが示された。従来のように全国一律で同じものを保証するのは難しい、という方向にかじを切っているようだ」。

 東京大学大学院経済学研究科の井堀利宏教授は、「人のいない場所で公共事業をやっても仕方がない。割り切りが必要だ」と、効果のある事業だけに絞り込む必要性を強調する。

 評価が難しいのは、今回の補正予算で重点的に配分されたような防災事業だ。防災の「便益」は数値化が困難なことから、公共事業評価に使う費用便益比(B/C)には防災面の効果を算入していない。

 災害時に防ぐことができる経済的損失に発生確率を乗じることで、防災事業の便益が算出できるはずだ。しかし、大きな地震や津波などの発生確率は、100年に1度とか1000年に1度といった数値でしか求められない。防げる経済的損失をいくら綿密に計算したところで、発生確率が大ざっぱでは意味がない。

 「今までは数百年の単位だったのが、東日本大震災以降は数千年の単位でリスクを考えるようになった。そのための防災対策がいま本当に必要なのかを、きちんと考えた方がいい」と井堀教授は言う。

 早稲田大学政治経済学術院の原田泰教授も、「人間の命の価値は“無限大”と言い出したら、どんな事業でも必要なことになる」と警告する。

公共事業の縮小傾向に終止符

 1990年代後半以降、減少を続けていた公共事業費は、ここにきて増加に転じた。公共事業は転機を迎えていると言っていい。GDP(国内総生産)のうち公的固定資本形成(主に公共事業費に相当し、用地費などは含まず)の割合は96年には6.2%に達したが、08年は3%まで落ち込んだ。

GDPに対する一般政府公的固定資本形成の割合の国際比較

OECD(経済協力開発機構)のナショナル・アカウントと内閣府の国民経済計算(確報)をもとに日経コンストラクションが作成
 欧米諸国の数値をみると、フランス3.1%、米国2.3%、英国2.2%、ドイツ1.6%。もはや日本だけが突出した状態ではない。

 日本の人口が減少していくなか、インフラの新設よりも維持管理や更新の比重が高まることは間違いない。問題は、維持管理などにきちんと予算を配分できるかどうかだ。

 政府は、自治体がある程度自由に使い道を決められる地域自主戦略交付金(一括交付金)を廃止し、それを原資に防災などに使途を限定する「防災・安全交付金」を創設した。国が号令をかけて、自治体に対して防災やインフラの維持管理・点検に予算を使うよう指導するわけだ。背景には、国が音頭を取らないと、財政が厳しい自治体では維持管理に予算を回せないという現実がある。

 地方分権の考え方に立てば、地域のことをよく知っている自治体自身に使い道を決定させる方が、本当に必要な事業に税金が使われるはずだ。だがその一方で、自治体に任せきりだと維持管理に回されないので、ある程度の縛りは必要だとの意見もある。議論が分かれるところだが、いずれにせよ、本当に必要な事業に予算が付く仕組みが必要だ。

 防災対策や老朽化対策に関する世間の関心が今までになく高まっているなか、公共事業費の縮小は底を打った。公共事業の転機を迎え、一時的な景気対策に振り回されない、地に足のついた事業が求められる。

特別インタビュー
公共事業費の削減はもう限界

橋本 鋼太郎(はしもと・こうたろう)氏
土木学会次期会長
1940年生まれ。64年に東京大学工学部土木工学科を卒業後、建設省(当時)に入省。同近畿地方建設局長、道路局長、事務次官、首都高速道路公団理事長、首都高速道路会社社長などを経て12年6月からNIPPO顧問。12年6月に土木学会次期会長に就任
政権交代後の状況をどうみますか。
 これまで公共事業費がどんどん削減されましたが、もう限界だと思います。かつては、GDP(国内総生産)に対する割合が日本だけダントツで高いと言われましたが、今では欧米並みにまで下がっています。
 本来、日本は地震や災害が多い国ですから、GDPに対する割合は諸外国と比べて少し高めでないといけない。土地は高いし、構造物を造るにも耐震性を確保しないといけない。ただ舗装するだけでいいような米国のハイウエーと違って、日本では新東名高速道路を見ても、橋やトンネルが非常に多い。どうしてもお金が掛かります。
 かといって、かつてのように増やすのは無理。必要なところには投資するという意味で、強靭化計画はちょうどいいバランスだと思います。
 ただ、少し気になるのは、ここにミッシングリンクの解消を挙げている点です。一般の人には分かりにくいので、もう少しきちんと説明する必要があると思います。
一般的には、高規格幹線道路1万4000kmを基準にしているようです。
 それは、新たな観点から見直した方がいい。1万4000kmのうち欠けている箇所をつなぐということは、別の言い方をすれば、1万4000kmは必要なものとして承認したことになる。本当に1万4000kmが必要なのかどうか、広く理解してもらえるような説明が要るのではないでしょうか。改めて検討した結果、国土強靭化には1万4000kmが必要だという結論になるのなら、それでいいと思います。
この1月に、土木学会で「社会インフラ維持管理・更新検討タスクフォース」を立ち上げましたね。
 やはり、笹子トンネルの事故を重く受け止める必要があると思います。維持管理の重要性について誰もが以前から認識しているのですが、実態はなかなか改善されない。一般的に、予算や人員が不足しているからと言われますが、それは単なる言い訳にすぎません。なぜできなかったのかを解明しなくてはいけない。
 新設には光が当たりますが、メンテナンスは地味ですよね。その意識を変えないと。新設も大事だけれど、メンテナンスも同じように大事だと。このままインフラが老朽化すると新設の予算が無くなると言われますが、実際は依然として新設に意識が向き、維持管理費が削減されています。
意識だけでなく、仕組みも変える必要があるのでは。
 今は、何にでも使える交付金が良いように言われています。補助金は「ひも付き」と呼ばれて批判されている。しかし、地方が自ら選択することが、必ずしも最適だとは限らないと思います。国でさえ、予算が新設に流れがちなのですから、目的をはっきりさせた交付金のような制度が必要でしょう。「ひも付き補助金」は好ましくないですが、維持管理のように地味だけれども必要不可欠な仕事に対しては、あってもいいと思います。
(この記事は、日経コンストラクション2013年2月25日号の特集「国土強靭化の正体」を再編集したものです。)


青野 昌行(あおの・まさゆき)
 

 
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130326/245651/?ST=print


10. 2013年3月28日 01:45:27 : GnRfb4ci8o
http://ikedanobuo.livedoor.biz 
2013年03月23日 23:15 経済 テクニカル
超金融緩和のジレンマ

安倍首相は日銀の新体制に「今までと次元の違う金融政策」を期待したようだが、黒田総裁のいう長期国債の購入も岩田副総裁のいう準備預金の積み増しも、今まで日銀がやってきたことであり、4月の金融政策決定会合でも市場を驚かすような政策が出てくるとは思えない。本書は過去の日銀の非伝統的金融政策の効果を実証データで総括したものだ。
最大の問題は「日本のデフレは貨幣的現象か」という点だが、著者の答は「最大の原因は賃下げや交易条件の悪化などの実物的現象だ」ということである。特に製造業の業績悪化で生じた余剰労働力がサービス業に移り、その大部分が非正規雇用に切り替えられたため、サービス業の平均賃金(特に医療・福祉)が2000年代で2割近く下がった。これに引っ張られて、製造業も含めて単純労働全体の賃金が下がる生産性格差デフレが起こっている。

もう一つの原因は、輸出産業の国際競争力がなくなったことだ。スマートフォンのような付加価値の高い市場で負け続け、コモディタイズした半導体や液晶を赤字輸出したため、半導体・電子部品の交易条件はこの10年で40%も悪化した。つまり輸出品価格が輸入品に対して4割も下がったわけで、これは為替レートとは別問題である。「日銀がエルピーダをつぶした」などという老経済学者は、IT産業の激烈な国際競争を知らないのだ。

だから日銀にできることは少ない。2%のインフレ目標が実現することも考えられないが、本当に(海外要因などで)起こったら大変だ。著者もいうように「CPI上昇率2%という目標と、現在のように1%以下の長期金利の水準は、もともと整合性がとれていない。CPIが0%近傍にあるから長期金利は1%以下の水準にある」ので、物価が上がると、それなりに安定している金融市場が大混乱に陥る。

2%のインフレになると時間軸政策が終了するので、日銀は金利を上げる。もちろんいきなり2%も上昇しないだろうが、長期的には国債費が20兆円ぐらい上昇する。これは消費税を10%上げないとファイナンスできない。国家財政は危機的な事態に陥り、資産の2割以上を国債が占める地方銀行は大きな評価損を抱えて自己資本が毀損し、取り付けが起こる可能性もある。

黒田氏は「出口戦略については心配していない」と豪語したが、彼も岩田氏も金融政策の実務を知らない素人である。ここまで大きな潜在的リスクを抱えた日銀がソフトランディングできるかどうかは楽観できない。


2013年03月24日 12:21 経済
「逆所得政策」は世界の笑いもの
日経新聞によると、「賃上げへ政労使協定」という構想が出ているそうだ。これはオランダが1982年に実施した所得政策「ワッセナー合意」がモデルだというが、ちょっと早い悪趣味なエイプリル・フールだろうか。
所得政策というのは、スタグフレーションの対策として賃金抑制のために行なわれる価格統制である。ところが今度の「政労使協定」は、官民で談合して賃上げしようという逆所得政策である。企業収益が上がっていないのに組合員の賃金を上げたら、非組合員が切られるだけだ。それを「雇用の流動化」と称しているが、そんな「流動化」を望む労働者がどこにいるのだろうか。

政府もようやく「デフレ」の原因が日銀ではなく賃下げだと気づいたのは一歩前進だが、賃金は企業収益の従属変数であり、それだけを上げることはできない。政府が強制したら、ワッセナー合意の逆に失業率が上がって、スタグフレーションが起こるだろう。

もちろん賃金を上げることは必要だが、それには近道はない。John Taylorもいうように、長期的には労働生産性を上げるしかないのだ。政府が「魔法の矢」で経済を一挙に復活させるというお伽話は、いい加減にやめてはどうだろうか。


2013年03月21日 17:51 経済
高橋洋一氏のお笑い貨幣数量説
今までは外野で適当なことを言っていたリフレ派も、自分たちが責任を問われる側になってから内部対立が目立つようだ。日銀の副総裁になった岩田規久男氏は「ゼロ金利制約のもとでは、日銀が通貨供給を増やせば物価が上がるといった単純な貨幣数量説は成り立たない」と明言しているのだが、高橋洋一氏は「貨幣数量理論」はいまだに正しいと主張する。
その論拠は、なんと「岩田・翁論争」である。これは1992年から94年にかけて行なわれた論争で、政策金利が2〜5%の時期の話だ。金利操作がきくときには、日銀がある程度マネーストックをコントロールできるが、問題は今のようにゼロ金利制約のもとでコントロールできるのかということだ。高橋氏は「2年前のマネーストック増加率でインフレ率が説明できる」と主張する。それが本当かどうか、ゼロ金利時代のデータで見てみよう。

マネーストック(M2)と物価上昇率(コアCPI)の推移(日銀調べ)

2000年代のM2とコアCPIの動きを見ると、たしかに2年遅れで一致するように見える部分がある。2008年後半から2009年にかけてコアCPIが6%近く下がった時期があり、その2年前(2006年)にはM2が減っている。しかし言うまでもなく、2008年の物価下落の原因は世界金融危機である。高橋氏は、日銀が2006年にリーマンショックの引き金を引いたとでもいうのだろうか?

上の図の青線を2年右にずらしてみればわかるように、フィットしているように見えるのはここだけで、あとはほぼランダムだ。そもそも岩田氏が批判してやまないように、2000年代には日銀はM2をコントロールできなかったのだから、M2とCPIの関係を示しても日銀がCPIをコントロールできる根拠にはならない。

高橋氏も、さすがに吉川洋氏の名目賃金の説明には困ったようで、なんと「賃金上昇率は2年前のマネーで決まる」と主張する。なるほど今年の春闘では、労使は2年前のM2を見て賃上げ交渉するのか。回帰分析は相関関係を示すもので、因果関係については何もいえないというのは統計学の最初に教わる話だが、高橋氏の学んだ東大の数学科では、この程度のことも教えなかったのだろうか。

ちなみにLaLaLanLanLan氏は、高橋氏と同じ手法で、上の図のように1年前の生鮮果物消費量でインフレ率が決まるという推定結果を出している。日銀が2%のインフレ目標を達成するには、青果物の消費量に介入したほうがいいだろう。

http://twitpic.com/cd1lqj
デフレ対策決定版!果物喰うと翌年のインフレ率が上がる!この図の回帰式を考えれば、インフレ率は果物消費量でコントロールされるのが明らかなので、高橋洋一氏は日銀だけでなく、果物消費量をコントロールできないと言う国民をバンバン批判すべきだ!


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株高の秘密は「巧みなコミュニケーション」
発足3カ月の安倍政権を評価する(その1)
2013年3月28日(木)  門司 総一郎


 安倍晋三政権は昨年12月26日に発足してまだわずか3カ月ですが、様々な課題に積極的に取り組んでおり、これを好感して株式相場も大きく上昇しました。しかし両者の関係は、政権発足当初に市場参加者の間で言われたような、「金融緩和と円安で輸出関連株」「国土強靭化計画と公共投資で建設株」といった単純なものではありません。
 政権発足前日の12月25日から3月22日までの東証業種株価指数の騰落率を見ると、輸出関連の中でもゴムや輸送用機器(自動車が含まれる)は、東証株価指数(TOPIX)を上回る上昇となっているものの、同じ輸出関連の電機、精密、機械などの加工組立産業や鉄鋼、化学などの素材産業は、いずれもTOPIX並みかそれ以下の上昇にとどまっています。
安倍政権発足以降の東証業種別株価指数の騰落率

出所:Bloomberg、2012年12月25日(安部内閣発足前日)終値から2013年3月22日終値までの騰落率
 一方で、大きく株価が上昇したのは陸運、倉庫・運輸、銀行、証券、不動産など内需関連がほとんどです。しかし、同じ内需関連でも国土強靭化計画に関連して期待されていた建設はわずか7.7%しか上昇していません。このような業種別株価指数の動きを見ると「金融緩和と円安で輸出関連株」「国土強靭化計画と公共投資で建設株」が正しかったとは言えないでしょう。
 安倍政権も金融緩和と公共事業だけに集中して取り組んだわけではありません。むしろ特定の分野に偏ることなく、バランスよく様々な課題に取り組んだことが政権への安心感、信頼感につながって、ここまでの株価上昇をもたらしたと考えています。そこで今回は、政権発足後の安倍政権の実績を1:三党合意関連、2:経済(マクロ)、3:経済(ミクロ)、4:外交/国防、5:その他、の5つに分類した上で、それぞれについて評価していきます。
予想外の進展を見せた選挙制度改革
 三党合意関連に含まれるのは、昨年民主・自民・公明が今後の推進を約束した税と社会保障の一体改革や選挙制度改革などです。公党同士の約束なので、必ずやらなければならないものですが、色々な理由から参院選前の進展は期待できないと考えていました。その理由としては、例えば一体改革のうち税については消費税率の引き上げは既に決定済みで、当面やらなければならないことではありません。また、社会保障改革(高齢者医療や年金など歳出面の見直し)については、8月に出る予定の有識者による社会保障国民会議での結論を待って政府や国会が動くことになっているため、それまで何もしなくても問題はないことなどがあります。
 選挙制度改革(衆院議員の定数削減を含む)は、昨年の衆院解散時に「次期通常国会終了(6月26日)までに結論を得た上で必要な法改正を行う」と3党で合意しており、早急に議論を進める必要がありますが、与野党問わず国会議員からの強い抵抗が予想されるため、先送りかせいぜい玉虫色の結論に止まると考えていました。
 しかし、この選挙制度改革が予想外の進展を見せます。
 選挙制度改革について政府・与党では、自民党に叩き台作りが任されていましたが、石破茂幹事長は「(成立は)極めて困難な状況だ」(日本経済新聞、2月16日)と、あまり積極的ではありませんでした。これは党内の意見集約が難しく、強行すると参院選前に党内がばらばらになる恐れがあったためです。
 しかし、2月14日に安倍首相が石破幹事長に「三党合意に沿って進めてほしい」(同)と指示したことをきっかけに、動きが加速します。1カ月後の3月14日には、「a.比例代表を180→150議席に、総議席数を480→445議席に削減」「b.比例代表の150議席のうち60議席を特例枠として得票率2位以下の政党だけに配分」「c.小選挙区については昨年成立した関連法に基づき『0増5減』を実施」などを骨子とした自民案をまとめ、公明・民主両党に提示しました。
 ちなみに3月15日付の日本経済新聞が自民案に昨年の衆院選の比例代表の得票数を当てはめた試算によれば、自民党の獲得議席は24議席減となる一方、公明党は変わらず。また共産党は2議席増、社民党は1議席増と中小政党に有利な改正となっています。自党に不利にもかかわらず自民党がこうした案を提示したのは、早期に連立パートナーの公明党の了解を取り付け、三党合意を実現することを優先したためです。このような経緯で、選挙制度改革は予想外の進展を見せました。
昨年の衆院選比例代表獲得議席と自民党の改革案に基づく試算による獲得議席

出所:日本経済新聞、3月15日
自民の改革案が波乱の芽に?
 しかし、この自民案は出来が良いとは言えません。中でも比例代表150議席の40%に相当する60議席を特例枠としてしまったことは、議席配分をゆがめると批判されています。例えば3月23日付読売新聞が自民案に昨年の衆院選の北陸信越・東海ブロック(現在は北陸信越ブロックと東海ブロックに分かれているが自民案では統合が予定されている)比例代表の得票数を当てはめた試算によれば、得票数1位の自民党は312万票で5議席獲得、これに対して第3位の民主党は200万票で5議席、公明党は108万票で4議席獲得と得票数が大きく違うにもかかわらず議席の差はないか、ごくわずかです。そのため特例枠については、「わかりにくい」「一票の重みが違う」などの問題点が指摘されています。
 また、こうした中小政党優遇は、議席を分散させて衆院での過半数形成を困難にすることになりかねません。その結果、政治が不安定化するリスクがあり、日本維新の会の橋下徹共同代表は「中小政党に配慮、こんなのはいらない」(日本経済新聞、3月15日)と批判しています。さらに民主党の「小選挙区比例代表並立制のもとで定数を80削減」(読売新聞、3月23日)など、主要野党がいずれも大幅削減を主張するのに対し、自民案では35議席の削減にとどまっていることについても、不十分との指摘があります。
 民主党・日本維新の会・みんなの党の3党は、既に共同で自民案への反対を表明しており、ここまでほとんど抵抗なく物事を進めてきた安倍政権は、選挙制度改革で初めて野党と対決することになりそうです。前述のように自民案は内容に問題を抱えていること、また自民党にとって不利な案であるため党内からの反発も予想されることを考えると、主要野党が共同でまともな対案を提示できれば苦戦を余儀なくされ、参院選に悪影響を及ぼすことも考えられます。そうなれば株式市場へもマイナスの影響が出てくるでしょう。
 しかし安倍政権発足後ここまで、この野党間の連携がうまくいっているようには見えず、さらに日本維新の会は、国会議員団が中選挙区制の復活を提案しているのに対し、橋下共同代表は小選挙区を主張するなど、党内で意見が割れています。このような状況では、3党が反対することにより自民案の成立を阻むことはできますが、対案を策定してさらに安倍政権を追い込むことは難しいと思われます。単に成立を阻む程度であれば安倍政権の支持率への影響は軽微、むしろ「安倍政権の改革を野党が反対した」ことにより、この3党が批判される可能性も考えられます。
 この程度であれば株式市場への影響も小さいと思われますが、まだどう転ぶか分からないところもあるので、進展があればまた取り上げたいと思います。
手堅く進める安倍政権のマクロ経済政策
 マクロ経済政策には財政政策、金融政策、国土強靭化計画などが含まれます。「アベノミクス」に象徴されるように、安倍政権が最優先で取り組んでいるのは経済政策とのイメージがありますが、必ずしもなにがなんでもというわけでなく、むしろバランスを考えて引くところは引きながら、手堅く進めているとの評価です。
 例えば景気対策ですが、政権発足後直ちに緊急経済対策の策定に取り組み、年明け早々の1月11日には閣議決定、2月26日には経済対策のための2012年度補正予算を成立させました。ほとんど最速に近く、手際の良い動きだったと評価できます。補正予算の規模は公共投資の増額などにより13兆円に膨らみ、資金調達のため国債増発に踏み切ったため、「安倍政権は借金して公共投資」との印象を持った方も多かったようです。
 しかし続いて策定した2013年度予算では、国債発行額を170.5兆円と12年度の当初予定額174.2兆円以下の水準に抑えました。補正予算策定時に前倒しで国債を発行しておいた分、2013年度予算での国債発行抑制が可能になったとのからくりはありますが、景気のために財政規律を無視するわけではないとのメッセージを送ったことになります。
「景気か財政か」でなく「景気も財政も」
 さらに安倍首相は「財政健全化に関する立法措置を検討する意向を表明」(日本経済新聞、3月5日)しました。これは財政赤字に関する数値目標を法律に盛り込むことにより、長期的な財政再建の道筋を規定するものです。このように安倍政権の財政運営は「景気か財政か」の二者択一でなく、「景気も財政も」というスタンスですが、これは大切なことです。もし安倍政権が「景気浮揚が最優先で、そのための財政拡大はやむを得ない」とのスタンスだったらどうでしょう。景気にはプラスですが、有権者や市場参加者は安倍政権に危うさを感じ、支持率も株価もここまで上がることはなかったと思います。両者のバランスを考慮していることが、政権への信頼感の高まり、さらに高支持率や株高につながったといってよいでしょう。
 金融政策についても同様です。衆院選の際に「大胆な金融緩和」が喧伝されたことから、政権発足時に投資家の間では、安倍首相が日銀に対して「株を買え」「外債を買え」「国債を直接引き受けろ」などと逐一指示し、白川方明総裁にそれを実行させるイメージがありました。しかし政権発足後3カ月の間に決まったことは、政府と日本銀行による共同文書の策定と2%のインフレ目標の設定だけ。途中で白川総裁の首をすげ替えることもありませんでした。もし政権発足後に日銀法を改正して白川総裁を解任、積極的なリフレ論者を後任に任命し、外債購入などを実行していたら、今以上の円安になったかもしれませんが、ルールを変更してまで目的を達成する姿勢に有権者や市場は警戒を強めたと思います。
 また為替について、2月15日から16日にかけての20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議前後で複数の国から「円安誘導」との非難が出て「あわや日本叩きか」に見えた時も、「日本は円安誘導していない」と各国に説明し、その後は口先介入と受け取られかねない発言は一切封印。外債購入も安倍首相自らが否定していました。もし、海外からの非難を無視してそれまでのような円安誘導的な発言を続けていれば、海外からの批判が強まり、安倍政権は窮地に追い込まれたかもしれません。ここでもバランス感覚を発揮し、手堅く対処したといえます。
 ちなみに市場ではG20の結果について「これで円安が容認された。更に円安が進む」との解釈が多くありましたが、これは正しくありません。自然体の円安は容認されますが、口先介入を含む意図的な円安は容認されないし、安倍政権もこれ以上円安を囃すつもりはないというのが正しい解釈でしょう。実際その後も円安基調が途切れた訳ではありませんが、1ドル95円前後で一進一退に近い動きが続いています。
巧みなコミュニケーションが株高の秘密
 このように安倍政権のマクロの経済政策は、口では色々思い切ったことを言いながらも、実際は冒険を避けて手堅く進めています。やると見せてやらない、やらないと見せてやるという、市場との巧みなコミュニケーションが、ここまでの株価上昇の理由と言ってよいかもしれません。
 なお、国土強靭化計画は「今国会に議員立法で再提出を目指す」(読売新聞、3月3日)と報道されていますが、ここまでほとんど進展がなく、安倍政権が積極的に取り組んでいるようには見えません。また、連立パートナーの公明党は国交相に太田昭宏前代表を送り込んでいるにもかかわらず消極的な姿勢で、「『公共事業のバラマキ』というイメージがあり、参院選で野党からの攻撃材料になる」(同)として、名称変更を要求しているとのことです。
 国土強靭化計画については前回書いたように、「部分的に実現することはあっても、全面的な実現は困難」との見方で、建設株は他の理由で買われて上昇することはあっても、国土強靭化計画を理由に買われることはないと考えています。安倍政権のミクロの経済政策などについては、次回解説していきます。

門司 総一郎(もんじ・そういちろう)
大和住銀投信投資顧問経済調査部長。東京大学法学部卒業後、1985年大和証券入社。88年大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)転籍、アジア株ファンドマネージャーなどを経て現職。同社ホームページに「ストラテジストコラム」を掲載中。



政治と市場の“正しい”見方
 今、日本は新政権の誕生で「政治」と「金融市場」の関係がこれまで以上に強まり、複雑化しています。さらに欧州の債務危機や米国の財政の崖、中国の新執行部選出など、政治と市場を巡る動きは、海外でも大きな焦点となっています。
 しかし、市場関係者がこの両者の関係を論じる場合、「アベノミクスで日本は変わる」など物事を極めて単純化した主張になりがちで、十分な分析がなされているとは言えません。そこで、このコラムでは政治と市場の関係について深く考察し、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130326/245636/?ST=print


11. 2013年3月29日 17:54:04 : a1iNOS3XDA
長文貼り付けの無能学者。こやつのみすぼらしインテリ風情が眼に浮かぶ。

バカにつける薬は無い。


12. 2013年3月31日 12:06:54 : GnRfb4ci8o
 

 

前回に続いて、力強い数字となるか 〜米雇用統計
2013/03/31 (日) 08:00


さて、明日から4月ということで
5日金曜日は月一のビッグイベント
米雇用統計(3月)が発表されます

3月8日に発表された前回2月分の米雇用統計において
非農業部門雇用者数(NFP)は、前月比+23.6万人と
予想の16万人増、1月の+11.9万人(速報+15.7万人)とくらべて
相当強い数字となりました。
失業率も7.7%と、予想および前回値である7.9%から低下し、
2008年12月以来約4年ぶりの低水準となっています。

1月に給与減税が失効し、個人消費意欲の減退も懸念された中で
好調な雇用市場の状況は、市場にかなり好感されるものとなりました。

内訳を確認してみると、
製造業が+1.4万人と、好調な自動車産業などを中心に雇用増が続いています。
建設業が+4.8万人と大幅に拡大。
2月は比較的好天に恵まれたという天候要因もありますが、
低い住宅ローン金利などを背景に、住宅市場が回復している状況が
雇用にも現れています。
サービス部門では、小売り部門が+2.37万人と8ヶ月連続での増加。
日本でもそうですが、小売り部門は人材の流動性が高く
雇用市場の状況が如実に出てきますので、
この8ヶ月連続増は相当よい印象を与えるものとなっています。
1月はマイナスとなった雇用全体の先行指標でもある人材派遣業も
+1.6万人と回復を見せています。

こうした内訳も含め強めの前回数字を受けて
今回の予想ですが今のところ+19.5万人前後となっています。
前回が相当強かっただけに、そこからの比較となる今回は
少し拡大幅が縮小していますが
なかなかの好数字が予想されています。

先週木曜日に発表された週ベースの新規失業保険申請件数(3月17日〜23日分)が
予想の34万件、前回の34.1万件に対して
35.7万件と予想外に増加するなど、
やや懸念材料も出ていますが、
雇用統計の基準日である12日を含む週の同指標は34.1万件と低めの数字、
その前の週は33.4万件と、このところ低めの数字が目立っており
その反動とすると、それほど強い数字でもなく、
雇用情勢は依然堅調という見方が一般的です。

もっとも、今週発表されるISM製造業/非製造業景気指数、ADP雇用者数など
関連指標の動向で予想が直前までにかなりぶれますので
そのあたりは要注意でしょう。

今回は、予想の少し上、+20万人に乗るかも一つのポイント
クリーブランド地区連銀のピアナルト総裁は
20万人越えが後数ヶ月続けば、
雇用の著しい改善という判断に至る可能性と発言しており、
大台超えが続くようだとFRBの資産買い入れ縮小が近いと発言しています。
同総裁は今年はFOMCの投票権を持つメンバーではなく、
また、バーナンキFRB総裁やイエレン副総裁などの
ハト派(金融緩和志向)を考慮すると、
実際にはそうすぐに買い入れ縮小とはいかない可能性が高いですが
市場の期待を高める効果は相当ありそうです。

発表は4月5日金曜日午後9時半、
先月までと違い、夏時間になっています。

 /yamaoka/


13. 2013年3月31日 15:38:06 : GnRfb4ci8o
値上げ、高齢者雇用義務化…こうなる暮らし
産経新聞 3月31日(日)7時55分配信

4月からこう変わる(写真:産経新聞)

 新年度の4月から暮らしや企業活動に関わる制度が変わる。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う円安進行で輸入品の価格が上昇し、食料品や電気料金などが値上がりする。給料が上がらなければ、家計には大きな痛手だ。一方で、希望者全員の65歳までの雇用確保の義務付けや、新しいリサイクル制度、高齢者から若い世代への資産移転を促す税制も始まり、生活スタイルを考えるきっかけにもなりそうだ。

【生前贈与】「あげる」「もらう」の意思表示がポイント

 値上げの動きは、食料品などの生活消費財で顕著だ。輸入小麦の政府売り渡し価格が平均で9・7%上がり、大手製粉メーカーは家庭用小麦粉の値上げを検討する。円安や輸入に頼っている原材料の高騰で、食用油の一部メーカーも出荷価格を値上げする。製紙メーカー各社も、ティッシュペーパーやトイレットペーパーの出荷価格への転嫁を検討している。光熱費では、原油や液化天然ガス(LNG)の輸入価格上昇の影響で、電力・ガスの大手14社が一斉に値上げする。

 「まさか」のための保険料も値上げされる。金融庁が、保険会社が契約者に約束する運用利回りの目安である「標準利率」を、年1・5%から1・0%へと12年ぶりに改定。保険会社は将来の保険金支払いの原資を確保するため、4月以降の新契約分について、終身保険や年金保険の保険料を値上げする。自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料も、平均13・5%引き上げられる。

 制度面では、使用済みの携帯電話やパソコンなどの小型家電を市区町村が回収し、中に含まれるレアメタル(希少金属)などを再資源化する「小型家電リサイクル法」が施行される。

 このほか、改正高年齢者雇用安定法の施行により、65歳までの希望者全員の雇用が企業に義務付けられる。年金を受け取るまでの収入のない空白期間が生じることを避けるためだが、企業側は定年延長や継続雇用で対応する。平成25年度税制改正では、祖父母または父母が、子や孫の教育費を援助する特例が設けられる。27年末まで1人当たり1500万円までの贈与税が非課税となる。

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最終更新:3月31日(日)14時39分

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14. 2013年4月02日 09:51:58 : xEBOc6ttRg
コラム:黒田日銀、脱デフレへの挑戦に「勝算」あり=嶋津洋樹氏
2013年 04月 1日 17:30 JST
嶋津洋樹 SMBC日興証券 債券ストラテジスト(2013年4月1日)

黒田東彦・日本銀行総裁の誕生から2週間も経たないうちに、金融緩和策の副作用や出口戦略の困難さについて、各方面で警鐘が鳴らされている。これは、はっきり言って、異常な事態だろう。

安倍晋三政権が誕生し、大胆な金融緩和策でデフレ脱却を目指すと言い始めたのでさえ、わずか3ヵ月前だ。金融政策が実体経済に効果を及ぼすまでに1―2年、インフレ目標の達成時期の目安が2年程度、デフレが放置された期間は10年以上である。今は、新たな金融緩和策を批判的に語るのではなく、これまでデフレから脱却できなかった要因を改めて分析することこそが重要に思える。

そもそも最近の株式や不動産市場への資金流入は、国内の長期金利が2006年以降、ほぼ一本調子で低下してきたことに比べ、必ずしも異常とは言えない。日本のインフレ上振れリスクを指摘するのも、気が早い。米国やユーロ圏のインフレ率はプラス1%台で推移しており、両当局が金融政策の目標とする2%を下回っている。日本の財政がインフレに伴う長期金利の上昇で破綻するという指摘は、欧米の状況に照らしても現時点では行き過ぎた懸念であるうえに、デフレの長期化が財政破綻を招く可能性を軽視している。

実際、昨年12月時点の日本の家計純資産(総資産と総負債との差額)は1250兆円あるが、国が国債などで借り入れている997兆円に比べて253兆円上回っているに過ぎない。国債の新規発行額が今後も毎年40―50兆円程度増加すると、5年後には国債の消化を海外に依存せざるを得なくなることも現実味を帯びる。その際、諸外国と比べて大幅に低い金利が受け入れられるとは考えにくく、円債相場は日銀が従来と同じ政策(すなわちデフレ脱却に消極的な姿勢)を続けていても、そう遠くない将来に大きな調整に見舞われるリスクを抱えていた。

もちろん、日銀が一段と積極的な緩和策を打ち出すことにリスクがまったくないとは言わない。日本の抱えるすべての問題がデフレ脱却で解決するわけでもない。今よりも悲惨な結果を招く可能性もゼロではない。しかし、現状維持に未来があると思えないのも事実だ。

上述した通り、早ければ5年程度で日本は家計の貯蓄すらも食いつぶす。その時に試せる政策の選択肢が今よりも少なくなっていることは、欧州債務問題をみれば明らかだろう。一方、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の常識にならえば、黒田日銀総裁の挑戦は、それなりに勝てる見込みがある。

<世界の常識を否定していた日銀前体制>

では、FRBとECBの常識とは何か。FRBは金融政策の目的(goals)について「雇用の最大化、物価の安定、および適度な長期金利という目的の効果的な推進」と解説し、ECBはその主要な目的(the primary objectives)として「物価安定の維持」を掲げている。ちなみに、FRBは「雇用の最大化」を金融政策の目標としているが、物価は金融政策、物価以外は財政や税制、規制などの非金融政策で決まるとの立場を明確にしている。要するに、FRB、ECBとも「物価安定は中央銀行の責務」という立場である。

一方、日銀は対外的には確かにそう謳(うた)っている。同行のウェブサイトでは、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと」および「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」が目的であると説明。そのうえで、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」と述べている。ちなみに、日銀の英訳では、理念は「principle」だ。

広辞苑によれば、理念とは「俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方」であるが、「principle」という英訳のほうがよりストレートで日本語よりも言葉の力が強いと言えよう。それでも、白川前体制下の日銀の「物価の安定」に対する姿勢がFRBやECBに比べて「引き気味」だったとの印象を抱くのは筆者だけではないだろう。

実際、バーナンキFRB議長とドラギECB総裁はともに、中長期のインフレ率(≒物価上昇率)は主に金融政策で決まると講演や記者会見で説明している(黒田日銀総裁の「物価安定は中央銀行の責務」という主張とも合致する見解だ)が、白川前日銀総裁はインフレ目標の達成について日銀と政府との共同責任だと繰り返していた。「共同責任」との文言は、すべてを負わないという意味で日銀の責任が軽減されたかの印象を与えると同時に、「物価安定は中央銀行の責務」という「世界の常識」を否定し、中央銀行に与えられた使命を分かりにくくしている。日本国内では今でも、物価は主に構造改革や規制緩和などを含む成長戦略で引き上げられるとの見方が優勢だ。物価は需給ギャップが縮小して初めて上昇へ転じると考えられている。

しかし、そうした考え方に筆者は懐疑的だ。成長戦略はあくまで「成長」のための戦略であって、物価を直接的に押し上げることができないうえ、短期的には競争の激化によって需給ギャップを拡大させる可能性すらある。需給ギャップを埋めるだけであれば、財政政策が最も直接的で確実な方法だろう。ただし、バブル崩壊以降、財政支出は何度も繰り返されたが、景気浮揚への効果はあっても、デフレの解消には至らなかった。

岩田規久男・日銀副総裁は3月21日の就任記者会見でデフレの原因について質問された際、貨幣的な現象だと回答した。そのうえで、「金融政策によってデフレ予想からインフレ予想に変わることで、最初に出てくるのは、自己資金を使って、あるいは増資をして企業が設備投資をするということ」と説明した。「インフレ予想が出てくると、(現金・預金は)最初は株や外貨に移るが、やがて物・設備投資や在庫投資に移ってくる」という。

バーナンキFRB議長も金融緩和策の最初の効果として、資産価格の上昇や自国通貨の下落を指摘している。日本国内では依然として、緩和効果に懐疑的な見方が多いものの、今のところは岩田日銀副総裁やバーナンキFRB議長の想定したとおりの展開が続いている。日銀がその気になれば、デフレ脱却は可能だと筆者は考えている。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。


 


 

インタビュー:80年台後半のバブル相場と類似=楽天証券研山崎氏
2013年 04月 1日 22:07 JST
[東京 1日 ロイター] 楽天証券経済研究所・客員研究員(経済評論家)の山崎元氏はロイターとのインタビューで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、人々が抱く「期待(予想)の働きかけ」で円安・株高の流れが継続しており、順調な滑り出しを切ったと述べた。

ただ、2%の物価目標達成まで金融緩和を止めることは難しくなる可能性を指摘し、株価が高騰しても、金融引き締めに政策転換できないリスクを警戒。1989年に日経平均が最高値を付けるまで株価が上昇トレンドを描いた80年台後半のバブル相場と構図が似ているとの認識を示した。

インタビューの概要は以下の通り。

──アベノミクスと物価目標2%について

「アベノミクスの初動としては順調だ。アベノミクスは口先介入だけで円安・株高になっているとの論調が一部で見受けられるが、人々が抱く『期待(予想)への働きかけ』を通じて、円安・株高の経路を描いている」

「将来の物価見通しは不確実性が強いが、問題は物価が小幅でも上昇してきた時に、何が起こるかだ。例えば物価目標が1%であれば、日銀は金融緩和・ゼロ金利政策を止めるかもしれないとの疑心暗鬼が生じる。しかし、物価目標が2%に天井が高くなれば、金融緩和・ゼロ金利政策が長期間続くことになる。強いコミットでゼロ金利政策が継続し、物価がプラスで推移すれば、実質金利はマイナスだ」

──金融市場への影響について。

「実質金利の低下は為替市場にとって強力な円安材料だ。ゼロ金利で調達した円資金を外貨建て資産に投資するキャリー・トレードが可能になる。物価目標を強く宣言することは、将来にわたり形成される為替レートに影響を与えることになる。円安は国際競争力が低下していた日本企業にとってもプラスで、株価にも好影響をもたらす」

「黒田日銀新総裁は、イールドカーブを押し下げ、より長期の国債の購入を示唆している。米連邦準備理事会(FRB)の資産購入をみても長期国債の買い入れはオーソドックスな政策。物価目標達成に向けて、長期の国債を買い続けるだろうとの期待が醸成されることが重要だ」

──アベノミクスへの懸念はないのか。

「アベノミクスは初期段階で円安に大きく依存する。期待への働きかけで円安が進行してもそれを阻害する外部要因が出てくることが目先のリスクだ。キプロス危機で為替が円高に振れ、為替が日本国内の要因で決まるわけではないことを再認識させられた」

「仮に、実質成長率2%、物価上昇率2%と目指すべき経済状況になれば、長期金利の妥当な水準は4%付近。長期金利が単独で上昇することがないだろうかということが、アベノミクスの処方を続ける上でのポイントの一つだ。しかし、日銀の新体制発足に対して長期金利は低下で反応した。日銀の長期国債買入によって、長期金利の急激に上昇しないと考えているのだろう」

「資産バブルは長期的には維持できないような資産価格の大規模な高騰現象。物価目標2%達成まで金融緩和が継続されるとみられるが、株価が急騰し、金融引き締めに政策転換をしたくてもできない状況がないとは言えない。1985年のプラザ合意以降、1989年にかけての株高局面と構図が似ているだけに、バブル的な状況も想定しておく必要がある」

──長期金利は上昇した場合の影響について。

「政府債務1000兆円とすれば、金利が1%上昇しただけで利払費用が単純計算で10兆円増えることになる。巨額な債務について、インフレ率に長期金利が追い付かない状況を人為的につくり、将来的に債務価値を薄めることで調整していくことになるのではないか」

「日銀が昨年10月の金融システムリポートで、全期間の金利が1%上昇すると、国内債券投資で合計8.3兆円の損失が発生することを公表した。白川前日銀総裁が金融緩和を小出しにし、デフレ脱却に消極的だった背景に、銀行のバランスシート問題があったとすれば問題だ」

(ロイターニュース 星 裕康;編集 村山圭一郎)


 


 

 

インタビュー:アベノミクスで悪い金利上昇生じるリスクも=全銀協会長
2013年 04月 1日 17:06 JST
[東京 1日 ロイター] 全国銀行協会会長に就任した国部毅・三井住友銀行頭取は、ロイターとのインタビューで、銀行貸出は底打ち感が出ているとの認識を示したうえで、日本経済の成長期待が一段と高まればさらに貸出が増える動きが進むとの考えを示した。

一方で、アベノミクスにより「悪い金利上昇」が生じるリスクもあるとし、財政規律維持の方向性を示すことが重要との見方を明らかにした。

主なやり取りは以下の通り。

――アベノミクスの評価は

「昨年12月に誕生した安倍政権は、三本の矢の方針を打ち出して、矢継ぎ早に政策を出した。円高修正、株高、景気回復に向けた動きが出つつあるのは、率直に評価できる。これを持続的な成長につなげる必要ある。中長期的視野に立った構造改革を実行して、潜在成長率を上げていくことが不可欠だ。そのためには、抜本的な規制緩和など、成長戦略の本格化が望まれる。もうひとつは財政規律維持への展望をはっきりさせる必要がある」

――全銀協としての取り組みは

「邦銀はバランスシートは健全で、金融システムも安定している。これらはポジティブな要因だ。銀行界に課せられた重要なミッションは、日本経済が長期停滞から脱却し力強く一歩踏み出せるように、金融面でしっかりサポートすることだ。顧客のニーズに真正面に向き合って、リスク管理しながら、取るべきリスクを取っていくことが重要だ。こうしたことを通じて、経済活性化や新たな成長分野の開拓に貢献する」

――アベノミクスのリスク要因は

「悪い金利上昇が生じるリスクがある。財政規律維持の方向性が見えなくなった時に生じかねない。現在、国債はほとんどが国内で消化されているが、貯蓄が少しずつ減少し、国内消化の比率が減っていき、財政規律健全化の道筋も見えないとなると、悪い金利上昇が起きて金融機関の経営にも大きな影響を与えることがありうる。また、米国をはじめ各国で大胆な金融緩和、資金供給を続けており、それが過剰流動性になっていくと、金融活動や企業活動がグローバル化している中で、バブルとして各国に伝播(でんぱ)するリスクはある」

――「悪い金利上昇」が生じる可能性は

「蓋然(がいぜん)的には、起こる確率は低いだろう。そういう意味ではテールリスクかもしれない。滅多には起こらないだろう」

――銀行の貸出動向はどう見ているか

「銀行全体の貸出は個人、法人合わせて前年比プラスできている。昨年9月頃から設備投資の末残も前年同月比プラスとなっていて、貸出は底打ちをしている感じだ。個別行の貸出では、中堅中小の法人がここ数年貸出減少していたが、2月以降、平残でもプラスに転じている。12月末も9月末比増加しているので、個別行でも底打ちしている感触だ」

「日本企業は六重苦という中で、将来の日本経済の成長についてあまり自信が持てない状況だったので、設備投資を控えていた。アベノミクスにより、将来の日本経済に対する成長期待、あるいは、デフレ脱却に向けた向けたさまざまな施策により、設備投資需要や運転資金需要が出てくれば貸出にとっては非常にいい環境になると、期待感を持ってみている」

(ロイターニュース 布施太郎 浦中大我;編集 田中志保)


 

 


〔特集:2年2%の波紋〕達成時期明示は実現性高める、エンドレスな円安続かず=行天元財務官
2013年 03月 29日 12:29 JST
 [東京 29日 ロイター] 国際通貨研究所の行天豊雄理事長(元財務官)は、「黒田日銀体制」が2%の物価目標達成を2年の時限を切って取り組む決意を示していることについて、政策の実現性を高める意味で効果があり、手法として間違っていないと評価した。問題は悪性インフレを回避するために市場の変化を見過ごさないことだと語り、金融政策のレジームチェンジの成功のカギは、変動する環境に適合した政策をとれる能力にかかっていると述べた。

 

 アベノミクスの第一の柱である「大胆な金融緩和」には、海外からは円安誘導との批判がくすぶる。「プラザ合意」や「ルーブル合意」などで先進国の「通貨マフィア」と渡り合った経験をもつ行天氏はこうした疑念はやむ得ないとする一方、日本が打破すべき当面の「敵」がデフレでありデフレ脱却のための当面の手段が金融緩和だということを粘り強く説明することだと指摘。さらに、今後日本がとり得る緩和策のメニューは「全部出ている」うえ、外債購入や国債の直接引き受けは行わないとの縛りもかけている以上、「さらにエンドレスな円安が続くとは思わない」と見通した。

 

 

 インタビューの概要は以下の通り。

 

  ──黒田新体制は2%の物価目標について、2年を念頭に取り組む決意を表明している。15年余続いたデフレ状況からわずか2年で脱却できるか。リスクはないか。

 

 「金融政策にしても財政政策にしても、政策の中身の有効性と、政策を実現する社会的、経済的環境は若干分けて考える必要がある。政策目標をはっきり打ち出し、それに至る過程、時間的な工程表をはっきりさせることは、少なくとも、政策の実現性を高める環境を整えるという意味で効果があり得る手法だ。できるかどうか議論し始めればいくらでも議論はできる。どのような政策にもリスクはある。しかし、手法としては間違っていない」

 

 「日本経済は、15年間にわたってデフレ的状況が続いてしまった。それを変えようというわけだから、従来の路線では、実現不可能ではないかという疑問が生まれるのは当然だ。短期・中期・長期の難問が山積するなかで、戦術としては、何をまず打破するか、『第一の敵』を特定することが大事だ。それがまさにデフレ脱却だった」

 

 「デフレを逃れられない宿命的なものとして受け入れてしまう、そのマインドを変えることが、何よりも大事で、家計と企業の期待に働きかける手法そのものは間違っていない。ただ、この手法が成功するかどうかはわからない。理論的に言えば、マネタリズムという理論が正しいかどうかということだからだ。デフレ脱却でそういう手法を使ってうまくいった国はあまりないのではないか」

 

  ──財政ファイナンス、マネタイゼーション懸念にはどう対処すべきか。

 

 「最初からこうすれば乗り越えられるという安全弁はない。やってみて、変化をみながら、その時々の状況にもっとも適切な政策、そのなかには政策変更も含まれるが、変動する環境に最も適合した政策がとれるかどうか、その能力にかかっている。絶対悪性インフレにならない、財政破たんを起こさないという手法はない。だから、やってみろということ」

 

  ──求められるのは、政府こそが財政健全化のスタンスを明確にすることか。

 

 「マーケットを非常に注意深く見続けなければならないということだ。金融政策、財政政策でこういうことが行われていると、実際の経済がどうなっていくか、また、それを見るマーケットがどう変わっていくか、時々刻々注視し、変化を読み取って、それに一番適合できる政策、政策変更を含めてやっていかなければならないということだろう。(日銀と)政府との協調はますます強まっていく」

 

  ──アベノミクスに対する評価は。

 

 「正しい。第一の敵は誰かということを特定し、その戦いのために、第一の手段は何かということを確定する。そして実行する。今はそれしかない。大事なことはいつも先を考え、環境、特にマーケットが変わったときの対応を用意することだ」

 

 「政治的には、仮に参院選で自民党が過半数を獲得しねじれ現象が解消することはプラスの面があるが、同時に、最も恐れるのは、自民党がhubris(傲慢)に陥ってしまうこと。過半数の支持、お墨付きをもらえたのだから何をやっても良いという気持ちが起きてくると、経済政策はじめあらゆる政策で間違ったことをしてしまう。このことを最も恐れる」

  

  ──参院選後には消費増税の最終判断を迫られる。安定政権として増税を避けずに財政健全化を明確にすべきということか。

 

 「方向としてはそうだ。税と社会保障の問題を明確に言うべきだ。それだけの支持を得た政権が何をしようとしているのかということを国民に伝えるべきだ」

 

  ──量的緩和の強化には根強い為替誘導批判がある。解決の道は。

 

 「何を言おうと、円安、その反対側の通貨高によって損をしたと思う国は必ず出てくる。日本の場合、当面の第一の敵はデフレであり、デフレからの脱却のための当面の手段は金融緩和だということを言うべきであって、円安で一部の輸出業者の採算を改善することを政策の目標にすることは考えてはならない」

 

 「アベノミクスが表明されて以来の海外論調をみれば、批判はもちろんある。半面、日本が置かれている状況を考えれば、かなり思い切った金融緩和が必要という意見も出ている。実際問題として、これから日本が金融緩和策として何をするかについては大体メニューは全部出ている。ということは、これ以上、誰もが全く予想もしていないような強烈な金融緩和策がとられるとは誰も思っていない。他方で、外債投資はしない、直接引き受けはしないという縛りもかけており、さらにエンドレスな円安が続くとは思わない」

 

  ──財務官経験者が日銀総裁になるメリットは。

 

 「黒田東彦という個人が、この時期に日銀総裁になったことは、彼を知るものとしては、大いにサポートしたい。彼が財務官経験者だからということではない。あくまでも彼の知識・経験・力量からみてだ」

 

  ──現在の為替状況について。

 

 「アベノミクスの結果、金融緩和が進み、他方、米国では出口政策が現実の問題として議論されるようになってきた。日米両国の金融環境を考えれば、円安に動いたのは当然だが、4カ月程度続き、状況変化がもたらした影響はそろそろ出尽くしているのではないか」

 

 「日本については、今後の金融緩和について、規模は別にして、方向性や何が起こるかについて市場の期待は大体決まっている。他方、米国は出口政策の議論はあるが、ここにきてさらに一層具体化することはできない状況になっている。円安・ドル高に動いていたモメンタムが基本的にはあっても、その動きはほぼ均衡してきた」

 

 「欧州については、キプロスの事件でわかるように、ユーロ自体は生き延びる。しかし、欧州経済がしばらく停滞することもはっきりした。世界的に為替相場の大きな変動が起きる環境はかなり減ったのではないか」

 

  *このインタビューは3月28日に実施しました。

 

  (ロイターニュース 吉川裕子;編集 石田仁志)


 


ドルが対円で一時1カ月ぶり安値、米指標下振れで売り圧力−93円前半 
  4月2日(ブルームバーグ):日本時間朝の外国為替市場では、ドルが対円で一時約1カ月ぶり安値を付けている。米製造業景況指数が予想を下回り、米長期金利の低下を背景にドル売り・円買いが優勢となった海外市場の流れを引き継いでいる。
午前8時5分現在のドル・円相場は1ドル=93円19銭前後。早朝には一時93円06銭を付け、海外時間に付けた先月6日以来のドル安値(93円16銭)を更新する場面も見られている。
また、ユーロ・ドル相場も海外時間に一時1ユーロ=1.2868ドルと、約1週間ぶりの水準までドル安が進行。その後は1.28ドル半ばでもみ合う展開となっており、足元では1.2847ドル前後で推移している。
バークレイズのFXストラテジスト、逆井雄紀氏(ニューヨーク在勤)は、欧州市場が休場でマーケットが薄い中、「米ISM製造業の数字が悪かったということで、全般的にドル売りになっている」と海外市場の動きを説明。その上で、「今週のドル・円に関しては、日銀と米雇用統計に尽きるという感じ」だとし、「リスクはどちらの方向にもある」との見方を示す。
米ISM指数が低下
米供給管理協会(ISM)が1日発表した3月の製造業景況指数 は51.3と、前月の54.2から低下し、市場予想(54)も下回った。生産や受注の落ち込みが目立った。一方、雇用や輸出は前月から上昇した。
ISM指数の下振れを嫌気して、1日の米株式相場は反落。米国債市場では10年債利回りが4週間ぶりの水準付近に低下した。
逆井氏は、米国も一時期とは違い、経済指標が多少弱含む場面が出てきているとし、「ドル・円もそれに反応して下がってきている面がある」と解説。「日銀に対する期待が後退しているということではないと思う」と話す。
日本銀行は3、4日に黒田東彦総裁就任後、初めてとなる金融政策決定会合を開く。追加緩和に踏み切るとみられているが、正副総裁が就任間もない中で、市場が期待する大胆な金融緩和にどこまで踏み込めるかが焦点となっている。
一方、この日はオーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利を発表する。ブルームバーグがエコノミスト28人を対象に行った調査では、全員がキャッシュレートの誘導目標3%の据え置きを予想している。
ユーロ相場
ユーロ・円相場は前日に一時、1ユーロ=119円51銭と2月27日以来の水準までユーロ売り・円買いが進行。その後120円前半に戻したが、ユーロの上値は重く、2日の東京市場にかけては再び120円台を割り込む展開となっている。同時刻現在は119円72銭前後。
逆井氏は、今週は欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開かれるが、「あまりこの時点で利下げするという話はないと思う」とし、ドラギ総裁の記者会見で「どういうトーンでユーロ圏経済のリスクなどについて発言が出るかという方が注目」だと指摘。その上で、イタリアの政局も依然として解決しておらず、「ユーロに関してはリスクは下向き」とみている。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/02 08:08 JST


 

 


4月1日の海外株式・債券・為替・商品市場

  (ブルームバーグ):欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は次の通り。
◎NY外為:円が対ドル約4週ぶり高値、米製造業統計で逃避需要
1日のニューヨーク外国為替市場では円が対ドルで約4週ぶりの高値に上昇した。3月の米製造業景況指数が予想を下回ったことから安全逃避先として円が買われたほか、米金融当局が資産購入のペースを減速するとの観測が後退したことが背景。
ユーロは対円で下落。2日に発表されるユーロ圏の失業率は過去最高への上昇が予想されている。4日には欧州中央銀行(ECB)が金融政策会合を開く。この日の円は主要16通貨すべてに対して上昇した。日本銀行は3−4日に金融政策決定会合を開く。
チャプデレーンのマネジングディレクター兼外国為替責任者、ダグラス・ボースウィック氏は「この日の値動きは予想以上に弱かった米国の統計が基になっている」と述べ、「米国が量的緩和を縮小するとのあらゆる見方がある程度後退した」と続けた。
ニューヨーク時間午後5時現在、円は対ドルで1.1%上昇して1ドル=93円23銭。一時は93円16銭と、3月6日以来の高値まで上げた。円は対ユーロで0.8%上昇して1ユーロ=119円79銭。一時は2月27日(119円22銭)以来の高値となる1ユーロ=119円51銭を付けた。ユーロは対ドルで0.2%上昇して1ユーロ=1.2849ドル。
日銀の会合
日銀にとって今回の金融政策決定会合は黒田東彦新総裁の下で初めてとなる。黒田総裁は先週、衆院財務金融委員会で「通貨及び金融の調節に関する報告書(半期報告)」の概要説明を行い、関連質疑に臨んだ。この中で、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標について「2年を念頭に置いて、必ず日銀の責任において達成したい」と述べた。
シティグループのG10通貨戦略担当責任者、グレッグ・アンダーソン氏(ニューヨーク在勤)は、「明らかにこの日は円が大きく動いた」と述べ、「日銀の会合を前に円のショートポジションが縮小していると解釈できるだろう。この動きが続いてもそれほど驚かない。1ドル=92円50銭もあり得るだろう」と続けた。  
先進10カ国の通貨で構成されるブルームバーグ相関加重通貨指数によると、円は過去3カ月で4.2%下落。ユーロは0.2%上昇、ドルは3.2%上げた。 
ユーロと円の見通し
米商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドや大口投資家による円のネットショートは26日終了した1週間では8万9149枚と、前週の7万9993枚から増加した。ユーロの下落を見込んだポジションは4万9095枚と、昨年11月30日終了週以来で最高だった。
米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数は51.3と、前月の54.2から低下した。同指数で50は製造業活動の拡大と縮小の境目を示す。
ユーロ圏の失業率は2月に12%と、過去最高に上昇したと予想されている。ブルームバーグがまとめたアナリスト調査によると、ECBは今週の会合で政策金利を過去最低の0.75%で維持すると予想されている。
原題:Yen Gains to Almost 4-Week High as U.S. Data Add to HavenDemand(抜粋)
◎米国株:反落、製造業景況指数の低下を嫌気−先週の高値更新で警戒
米国株相場は反落。前週に過去最高値を更新したS&P500種 株価指数は下げた。米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数が予想を下回ったことを嫌気して売りが出た。ISM指数では生産や受注の落ち込みが目立った。
ジョイ・グローバルやUSスチール、フリーポート・マクモラン・カッパー・アンド・ゴールドを中心に工業株や素材株の下げが目立った。インテルやマイクロン・テクノロジーなどハイテク株も安い。一方、MFPインベストメントのマイケル・プライス氏が買収対象になり得ると指摘したヘスは大幅高。
S&P500種株価指数は前営業日比0.5%安の1562.17で終了。ダウ工業株30種平均は5.69ドル(0.1%未満)下落の14572.85ドルで終えた。3月29日はグッドフライデー(聖金曜日)の祝日のため休場だった。欧州の大部分の市場ではこの日も休場。
ウォレン・ファイナンシャル・サービスのランドール・ウォレン最高投資責任者は前日の電話インタビューで、「市場はかなり微妙な水準にある。つまり、株価をさらに押し上げるには景気が改善し続けることが必要になる」と指摘。「良好な経済指標が求められており、今月は良好な決算も必要だ」と語った。
S&P500種は28日に0.4%上昇して終値ベースでの最高値を更新したが、日中ベースでの過去最高値1576.09には届いていない。同指数は1−3月(第1四半期)に10%上昇した。
経済指標
米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数 は51.3と、前月の54.2から低下。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は54だった。同指数で50は製造業活動の拡大と縮小の境目を示す。
2月の建設支出は前月比で増加した。住宅建設が4年ぶり高水準となり、全体を押し上げた。3月29日に発表された2月の米個人消費はここ5カ月で最も高い伸びだった。3月の消費者マインド指数は予想外に前月から上昇した。
S&P500種の下げに備えたオプションのコストを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は6.9%上昇の13.58。前週は6.4%低下、年初からでは25%下げている。
景気敏感株に売り
S&P500種のセクター別では工業株と素材株の下げが特にきつい。景気敏感株に売りが出たため、モルガン・スタンレー・シクリカル指数は1.2%安、ダウ輸送株平均は1.5%下落した。
採鉱機メーカーのジョイ・グローバルは3%、フリーポートは2.2%、USスチールは4%それぞれ下落した。アルコアは1.5%安。
ヘスは2.7%高。MFPのプライス氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、同社が1株当たり80−90ドルで買収される可能性があるとの見方を示した。
セクター別ではハイテク株が1%下落。マイクロンは6%安と、S&P500種の構成銘柄で最も下げた。
電気自動車メーカー、テスラ・モーターズは四半期決算が初の黒字に転じたことを明らかにした。株価は16%上昇。
原題:U.S. Stocks Fall From Record Level as Manufacturing IndexSlips(抜粋)
◎米国債:10年債利回りが4週ぶり低水準付近−製造業景況指数に反応
米国債市場では10年債利回りが4週間ぶり低水準付近で推移。製造業景況指数が市場予想を下回ったことで、安全資産としての米国債を求める動きが広がった。
米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数は51.3と、前月の54.2から低下した。5日発表される3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は19万5000人増が見込まれている。2月は23万6000人増だった。金融当局はこの日、景気浮揚策の一環として31億8000万ドル相当の米国債を買い入れた。
三菱UFJ証券USAのシニア米国債トレーダー、トーマス・ロス氏(ニューヨーク在勤)は「市場では春の景気減速を懸念している」と分析。「経済統計で1つ弱い内容が出ると、市場は『不景気が戻ってきた』という反応になる。5日の雇用統計まではレンジの下限付近にとどまるだろう」と述べた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによれば、ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回り は前営業日比2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の1.83%。一時1.8297%と、3月4日以来の水準付近に下げた。同年債(表面利率2%、2023年2月償還)価格は5/32上げて101 1/2。
バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数によれば、30年債の1−3月(第1四半期)のリターンはマイナス3.1%。米国債全体ではマイナス0.3%。
リターン
BOAメリルの指数によると、償還年限が10年以上の米国債は世界の同年限の国債と比較し、ここ19カ月で最も割安な水準付近で推移している。同指数では3月25日、米国債の利回りが世界の国債の利回りの指数を57bp上回った。この格差は11年8月以来で最大。
金融当局による景気浮揚策を背景に米国債は3月、S&P500種株価指数を下回るパフォーマンスとなった。BOAメリルのデータによれば、米国債のリターンは3月28日までに0.1%。一方S&P500種は配当再投資分を含めて3.75%。
ISM製造業景況指数は、エコノミスト調査の中央値では54と見込まれていた。
市場は雇用に注目
10年債利回りは3月8日に2.08%と、昨年4月5日以来の水準に上昇した。2月の雇用統計で雇用者が増加し、失業率が7.7%に低下したことが背景。
グッゲンハイム・パートナーズ(ニューヨーク)の米政府債トレーディング担当ディレクター、ジェーソン・ローガン氏は「市場は、金利上昇を求め雇用面に注目するだろう」とし、「経済指標はこのところ明るい兆しを示している」と続けた。
米商務省が3月29日発表した2月の個人消費支出(PCE)は前月比0.7%増。前月は0.4%増だった。
30年債と10年債の利回り格差は先週、一時1.26ポイントと、ここ1年半で最大となった。この日は1.25ポイント。
原題:Treasury 10-Year Yields at Almost at 4-Week Low on FactoryData(抜粋)
◎NY金:上昇、中国統計や日銀短観受け刺激策拡大の観測
中国の製造業購買担当者指数(PMI)と日本の短観はいずれも市場予想を下回った。
原題:Gold Advances for Second Time in Three Days Amid StimulusBets(抜粋)
◎NY原油:6日ぶり下落、エクソンのパイプライン閉鎖で
エクソンは原油漏れを理由に29日、米イリノイ州とメキシコ湾岸を結ぶパイプラインを閉鎖。操業再開のめどは明らかにしていない。
ISM製造業景況指数が市場予想を下回ったことも売り材料
原題:WTI Oil Falls for First Time in Six Days as Exxon ShutsPipeline(抜粋)
◎欧州株:イースターマンデー(復活祭後の月曜日)の祝日で休場
取引は2日に再開される。
◎欧州債:イースターマンデー(復活祭後の月曜日)の祝日で休場
取引は2日に再開される。
更新日時: 2013/04/02 07:03 JST


15. 2013年4月02日 09:58:39 : xEBOc6ttRg
質・量の大胆緩和で目標実現へ、2年程度念頭に=黒田総裁
2013年 04月 2日 09:32 JST 

トップニュース
シリア3月の死者6000人超、過去最悪に=人権団体
日経平均が大幅続落、新年度の処分売り加速で1万2000円割れ
3月のマネタリーベース、過去最高の134兆7413億円
韓国「北朝鮮挑発なら迅速な軍事対応」、米軍はミサイル駆逐艦配備


[東京 2日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は2日の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、2年程度を念頭に置き、質・量の大胆な金融緩和で目標を1日も早く実現する決意だと語った。その上で、強いコミットメントにより、期待を転換させることも重要だと指摘した。

山本幸三委員(自民)の質問に答えた。


 


 
3月のマネタリーベース、過去最高の134兆7413億円
2013年 04月 2日 09:29 JST
[東京 2日 ロイター] 日銀が2日に発表した2013年3月のマネタリーベース(日銀券、貨幣流通高、日銀当座預金の合計値、平均残高)は前年比19.8%増の134兆7413億円と昨年12月の過去最高を更新した。日銀の金融緩和による大量の資金供給で金融機関の手元資金量を示す当座預金残高が前年比72.2%増の47兆3674億円と大幅に増えた。

当座預金残高は2012年中、おおむね30兆円台で推移していたものの、日銀による度重なる追加緩和で同年末から増勢を強め、今年3月は月初の43兆円程度から月末には58兆円まで急増した。

3月の紙幣(銀行券)発行高は前年比3.0%増の82兆8371億円、貨幣は同0.7%増の4兆5368億円だった。準備預金は同75.0%増の42兆0310億円。季節調整済みマネタリーベースは同72.3%増の138兆9247億円。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 山川薫)


 


日経平均が大幅続落、新年度の処分売り加速で1万2000円割れ
2013年 04月 2日 09:22 JST
[東京 2日 ロイター] 寄り付きの東京株式市場で日経平均は大幅続落。取引時間中としては3月7日以来の1万2000円割れとなり、下げ幅は一時300円を超えた。

前日発表の米ISM製造業景気指数が予想を下回ったことで、米国景気に対する楽観的な見方が後退。為替市場では対ドル、対ユーロで円高に振れたことから輸出株を中心に売りが先行した。前日から新年度に入り国内機関投資家などの利益確定売りが出ているが、売り遅れた国内勢が寄り付きに処分売りを急いだとみられている。先物安から裁定解消売りも誘発した。

(前営業日比)

日経平均.N225 12051.57 -83.45

日経平均先物中心限月2JNIc1 12050 -130

 

株式見通し=続落、米景気回復期待の後退と円高で売り先行
2013年 04月 2日 08:25 JST
[東京 2日 ロイター] きょうの東京株式市場で日経平均は続落となりそうだ。前日発表の米ISM製造業景気指数が予想を下回ったことで、米国景気に対する楽観的な見方が後退。為替市場では円高に振れていることから主力輸出株を中心に売りが先行するとみられる。

取引時間中は為替にらみと展開となり、円高が進展すれば先物主導で1万2000円の心理的な節目を割り込む可能性もある。

日経平均の予想レンジは1万2000円―1万2150円。

1日発表の米ISM製造業景気指数は、新規受注の減少が響き51.3と3カ月ぶりの低水準になった。これを受けた米国株は小幅安にとどまったものの、ドル/円は93円台前半まで円高に振れている。シカゴの日経平均先物6月限(円建て)は大証終値比120円安の1万2060円と下落しており、朝方はこれにサヤ寄せする動きが予想される。

日経平均は前日に262円安と大きく下げたが、「米景況感がさえない。前日に売り残した投資家の処分売りが出る可能性もあり引き続き調整含みだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資ストラテジストの三浦誠一氏)とみられている。

3─4日の日銀金融政策決定会合では、黒田新体制のもと2%の物価上昇率目標達成に向け、積極的な追加緩和策が打ち出されるとみられる。ただ、市場では「すでに最大限織り込んだ」(大手証券)との声もあり、サプライズへの期待は後退しつつある。為替が1ドル93円を割り込むような円高に進めば、日経平均も1万2000円割れが視野に入る。一方、連日の大幅安となれば、イースター休暇明けの海外勢や個人が押し目買いに動くと予想される。好業績株などは底堅さを示しそうだ。

きょうの主なスケジュールは、国内で3月マネタリーベース(日銀)、2月毎月勤労統計(厚労省)などが発表される。海外では、豪中銀理事会(金利発表)が行われるほか、2月ユーロ圏失業率(統計局)、2月米製造業新規受注(商務省)、3月米自動車販売台数などの経済指標が発表される。

(ロイターニュース 河口浩一)


16. 2013年4月02日 11:46:35 : xEBOc6ttRg
予想インフレ率上がれば2%に必要な需給ギャップ改善幅縮小=日銀総裁
2013年 04月 2日 11:24 JST
[東京 2日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は2日、衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、「予想インフレ率が上がれば、物価目標の2%達成に必要な需給ギャップの改善幅も縮小する」と述べ、大胆な金融緩和を通じて人々に根付いたデフレ期待をインフレ期待に転換することの重要性をあらためて強調した。

前原誠司委員(民主)の質問に答えた。

黒田総裁は、日本経済の潜在成長率が0.5%程度にとどまる現状では、2%の物価上昇率を達成するには相当な需給ギャップ縮小が必要となるものの、金融緩和で期待インフレ率が上がれば埋めるべき需給ギャップが小さくなるとの見方を示した。また、物価上昇には期待インフレ率など多数の要因があるため、「2%達成に必要な実質経済成長率は現時点で特定できない」と述べた。

日本で巨額の財政赤字にもかかわらず長期金利が低位で安定している理由について、「物価が下落しており、国債の9割以上が国内居住者に保有されているうえ、政府が財政健全化の姿勢を示しているため」と説明。日銀の国債買い入れは「あくまで自主的に金融政策を進めるため」とし、日銀など公的セクターによる事実上の国債引き受けが金利を抑えているとの見方をけん制した。

日銀が財政ファイナンス(穴埋め)を行っているとの懸念を払しょくするため、保有する長期国債を紙幣の発行量内に収めるよう定めている「日銀券ルール」については、保有国債は紙幣発行量を「もはや超えている。(代わりに)どのような歯止めが適切か、政策委員会で検討する」と述べた。

また、「金融政策が為替に影響するとの考えに変わりはない」、「他の状況が一定ならば、大胆な金融緩和で円安になる傾向がある」などと指摘、金融緩和の円安効果を認めた。同時に「為替安定や介入は政府の責任。日銀はあくまで物価目標の達成に全力を尽くす」とし、円安誘導は目的でなく結果との姿勢をあらためて示した。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 山川薫)


17. 2013年4月02日 14:36:21 : xEBOc6ttRg
「第2の矢」に積極的に取り組む=物価目標達成で麻生財務相
2013年 04月 2日 12:58 JST 

トップニュース
今は日銀に任せるが、日銀法改正は常に視野に入れていきたい=首相
焦点:ポルトガルの工業再生、鍵は新興ハイテク企業の育成
豪中銀、政策金利を3.0%に据え置き:識者はこうみる
焦点:中国が批判の矛先を北朝鮮に、米軍の動きは静観

[東京 2日 ロイター] 麻生太郎財務相は2日午前の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、2%の物価目標達成にはマインドを変えることが重要だとし、財政政策を所管する財務相として「第2の矢」を積極的にやらなければならないと述べた。

原口一博委員(民主)の質問に答えた。

政府・日銀間で2%の物価目標を設定した経緯に関連し、麻生財務相は「マイナスをプラスにするインフレターゲットは世界初だ。気持ちが変わるのが大変だろうなと感じ、簡単に安請け合いできないと(思った)」と指摘。大胆な金融政策、機動的な財政政策と成長戦略の「3つの矢」を一緒に行うことが示され、「第2を担当する私どもとしては、積極的にやらなければならないと思っている」と語った。

長期金利と名目経済成長の関係について「経済成長だけでは財政健全化はなかなかできない」とし「経済成長をしながらも、社会保障や税の一体改革、歳出合理化など、中長期の財政健全化にきちんと取り組んでいく必要がある。そういうことをしていかなければ、思わぬ金利上昇を招く」と警戒した。

そのうえで、「金利が上昇することは極力抑えておかないと、財政としては厳しいことになる」と語った。

安倍晋三首相は「名目成長を増やすことですべては解決しないが、他方、しっかり名目経済を成長させる精神を失ってはならない」と述べ「名目経済を成長させるにはデフレから脱却する必要がある。同時に不断の行政改革努力、歳出(削減の)徹底化は行わなければならない」と語った。

(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 佐々木美和) 


 

今は日銀に任せるが、日銀法改正は常に視野に入れていきたい=首相
2013年 04月 2日 13:57 JST
[東京 2日 ロイター] 安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、日銀法改正は常に視野に入れていきたいと述べた。

小沢鋭仁委員(維新)の質問に答えた。

安倍首相は日銀法改正について「法的な担保は頭に入れておく必要がある」と語った。さらに「物価目標を設定し、2年という(達成への)期間や責任にコミットがあるので、今は日銀に任せるが、日銀法改正は常に視野に入れていきたい」とした。

また自身が官房長官を務めていた2006年当時の量的緩和解除について「政府は、小泉(純一郎元)首相も含めて、その段階での解除は早すぎると判断していた」と指摘。「市場関係者の中にも、もうしばらく続けることが大切だと言っている人が多かった。そうした期待を裏切ったことが、金融政策が雲散霧消したことにつながった」と語った。

(ロイターニュース 石田仁志;編集 田中志保)


 

物価を目標範囲内に収めるのが中銀の腕の見せ所=安倍首相
2013年 04月 2日 12:15 JST
[東京 2日 ロイター] 安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、日銀が従来から国債買い入れの歯止めとしてきた銀行券ルールが形骸化していることについて、物価目標の範囲内に物価を収めること自体が代わりの歯止めになるとの考えを示した。

また2%の物価上昇率達成への波及ルートについて、まず最初に強いコミットメントがあり、それにより市場との正しいコミュニケーションが為替・株式市場に影響することでインフレ期待が生まれ、現実に物価の伸びが2%に上昇していく、との見通しを示した。

前原誠司委員(民主)の質問に答えた。

前原委員は、安倍政権が目指す2年で2%の物価上昇率目標を達成する際のさまざまな弊害について問い正した。

日銀は財政ファイナンスを回避するため、買い入れ国債残高の総額を銀行券流通残高以下に抑制する「銀行券ルール」を設定している。しかし、すでにこのルール超えて買い入れているため、黒田日銀総裁が他の歯止めの検討に言及している。安倍首相はこの点について「物価目標の範囲内に収めることが中央銀行の腕の見せ所。それが歯止めになる」との考えを示した。

また予想されるさまざまな歪み対し、物価上昇率達成に向かって「何が何でもしゃにむにやるということではない」とし、「経済は生き物なので、何が起こるかわからない。できない場合は日銀に説明責任が生じる。バランスの問題だ」として、物価目標の達成に際しては、副作用にも適切な配慮が必要との姿勢を示した。

2%の物価目標達成への波及ルートに関して安倍首相は「日銀が2年で2%の物価目標を達成するという強いコミットをしていることで、為替や株式市場に現実に影響が出てきている。これは強いコミットと市場とのコミュニケーションがうまくいっているということ。それにより、輸出産業が回復し、産業にも産業競争力が出てくる。企業収益にも雇用にも効果が出てくる」と説明。まずは強いコミットが必要であり、市場が反応して円安・株高により企業競争力が出てくることで雇用・所得の改善がインフレ期待をもたらす、という経路により2%の物価上昇率が達成できるとの波及経路に自信を示した。

(ロイターニュース 中川泉;編集 山川薫)


豪中銀、政策金利を3.0%に据え置き:識者はこうみる
2013年 04月 2日 13:49 JST
[シドニー 2日 ロイター] オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は2日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを3.0%に据え置いた。ただ、必要なら緩和の余地があるとの認識を示した。

市場関係者の見方は以下の通り。

●年内に複数回利下げの可能性も

<マッコーリー銀行のシニアエコノミスト、ブライアン・レディカン氏>

興味深いのは、国内の経済指標が上向いているのに、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)はそれに全くとらわれていないように見えることだ。

RBAは、通常なら通貨も下落することが見込まれると指摘しており、今回そうしたことは起きていない。財政政策は依然として縮小しており、それゆえに金融政策のやるべきことがさらにある可能性がある。

われわれは依然として、RBAが年内に複数回の利下げを迫られると見ている。ただ、機先を制して金利を動かすことはなく、経済指標が幾分弱くなるまで待つことになるだろう。住宅ローン金利は、年末までに75ベーシスポイントは低下するだろう。

●年末近くに追加利下げの可能性

<JPモルガンのシニアエコノミスト、ベン・ジャーマン氏>

過去数カ月間と非常に似た声明で、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は現在の金融政策が当面適切だが、必要に応じて追加措置の余地があると考えている。

インフレ見通しは十分抑制されており、成長が圧迫された場合、追加利下げが可能とし、依然として緩和バイアスを維持している。

追加利下げは当面はないだろうが、年末近くにあるとみている。

●今年は据え置きの見通し

<UBSの金利ストラテジスト、マシュー・ジョンソン氏>

市場が期待したように緩和バイアスが維持された。先物もこれを好感して上昇している。一部の状況が改善していることで、中銀は若干自信を強めているようだ。

ややハト派的だが、先月の声明からあまり変わっていない。豪ドル高により、緩和バイアスをやめる余地は限定的だ。中銀は今年は金利を据え置くだろう。

●景気認識若干上向き、緩和バイアスは維持

<RBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、マイケル・ターナー氏>

2月や3月とかなり似た見解が示された。

しかし、微妙にニュアンスがより前向きになっている。住宅投資だけでなく、鉱業以外の業況の改善にやや自信を強めているようだ。

それでもなお、緩和バイアスは明らか。6月に25ベーシスポイント(bp)の利下げを予想する。


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18. 2013年4月02日 14:51:50 : xEBOc6ttRg
岩田日銀副総裁、株価の動き「バブルを警戒する必要はない」
2013/4/2 14:00
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 日銀の岩田規久男副総裁は2日午後、衆院予算委員会に出席し、昨年11月以降に株価が急上昇したことについて問われ、「バブルを警戒する必要はない」との考えを示した。また、金利上昇のリスクについては「国債のリスクプレミアムが上昇することによる金利上昇には警戒が必要だ」と主張。「財政の持続可能性を担保していただけると、悪い金利上昇は防げる」と付け加えた。

 日本維新の会の小沢鋭仁氏の質問に答えた。小沢氏がマネタリーベース(資金供給量)と為替相場の関係を尋ねたことに対し、岩田副総裁は「長期的には購買力平価によって、通貨の価値は決まる。将来の購買力平価は予想インフレ率によって決まるので、円ドル相場は長期的には日米の予想インフレ率の差によって決まる」と答えた。

 小沢氏は日銀法改正の是非も尋ねた。これに対して岩田副総裁は「私の立場としては、現在の法律のもとで2%の(物価安定)目標を2年程度で達成することにまい進したい。(日銀法改正は)政府・国会で議論を深めていただきたい」と述べるにとどめた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕 
 

黒田日銀総裁、物価目標の実現「2年程度を念頭に」 (9:39)
日銀総裁「あらゆる手段で物価目標実現」(28日 11:40)
新年度、株に優しい「黒田節」に熱視線(1日 7:00) [有料会員限定]
黒田日銀、そろり始動?月内に2段階緩和も(1日 7:00)
日銀総裁の「始めよければ終わりよし」(27日 6:00) [有料会員限定]
突出を警戒? 黒田日銀の「やんちゃな」岩田副総裁(15日 10:06) [有料会員限定]
主要金融ニュース 記事一覧
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黒田総裁、物価指標「生鮮除く総合CPIをみていく」 (21日 21:15)
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黒田総裁「緩和としての国債購入は財政ファイナンスにならず」 (21日 20:59)
黒田総裁、金融政策「円安に誘導したということはない」 (21日 20:55)
黒田総裁「端的に分かる金融政策運営で市場との対話強化必要」 (21日 20:47)

12年冬のボーナス1.5%減、4年連続マイナス 過去最低を更新
2013/4/2 10:30 
 厚生労働省が2日発表した毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によると、2012年の従業員1人当たり平均の年末賞与(冬のボーナス)は前年比1.5%減の36万5687円で、4年連続のマイナスだった。支給額は比較可能な1990年以降の最低を更新した。

 年末賞与は12年11月〜13年1月に支給したボーナスを集計したもの。製造業は3.2%減の46万5007円だった。東日本大震災や欧州債務問題、円高により電機など11年度の業績悪化が響き、3年ぶりにマイナスへ転じた。

 併せて発表した2月の現金給与総額の平均(速報値)は前年同月比0.7%減の26万2523円で、2カ月ぶりのマイナスだった。相対的に賃金水準が低いパートタイム労働者の割合が増え、全体を押し下げた。

 製造業の残業時間などの所定外労働時間は5.8%減の14.6時間と7カ月連続のマイナスだった。一方、季節調整して前月と比べると4.6%増えた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕


19. 2013年4月02日 15:44:54 : xEBOc6ttRg
インフレ目標設定、財政ファイナンス防ぐ1つの手段=岩田日銀副総裁
2013年 04月 2日 14:34 JST

焦点:13年度日本企業のM&A、円安進んでも高水準の可能性
北朝鮮、すべての核関連施設の稼働再開へ=KCNA
インタビュー:株高・債券高、どこかでバランス崩れるだろう=信託協会会長
今は日銀に任せるが、日銀法改正は常に視野に入れていきたい=首相

[東京 2日 ロイター] 日銀の岩田規久男副総裁は2日の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、インフレ目標の設定が財政ファイナンスを防ぐひとつの手段になっていると述べた。

小沢鋭仁委員(維新)の質問に答えた。

岩田副総裁は、インフレ目標政策を採用することで、目標が達成された場合、政府の要請などに基づいて国債買い入れなど金融緩和を進める必要性がなくなることから、「インフレ目標の設定が、財政ファイナンスを防ぐひとつの手段になっている」との見解を示した。

その上で、日銀法改正の是非を問われ、「現在の日銀法の下で、2%の物価目標の2年程度での達成にまい進したい」とし、法改正については「政府・国会の中で議論を深めてほしい」と述べるにとどめた。

アベノミクスへの期待も反映し、金融市場は円安・株高・債券高(金利低下)の動きになっている。岩田副総裁は株高について「長く続いた資産デフレの中で株価水準が低くなっている」とし、「大胆な金融緩和というレジームチェンジによる株価の上昇は自然だ。すぐにバブルを警戒することはない」と強調。今後、金融政策の効果が発現していくことで、需給ギャップが縮小、物価が穏やかに上がっていくことで金利が上昇する可能性を指摘したが、「これは正常な金利上昇」と語った。一方、国債のリスクプレミアム拡大による金利の上昇を「悪い金利上昇」とし、警戒が必要と指摘。中長期的に財政の持続可能性を確保することが必要との認識を示した。

(ロイターニュース 伊藤純夫)
 
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インタビュー:株高・債券高、どこかでバランス崩れるだろう=信託協会会長
2013年 04月 2日 15:08 JST 
[東京 2日 ロイター] 信託協会の会長に就任した三菱UFJ信託銀行の若林辰雄社長は、ロイターとのインタビューで、株高・債券高の状態が続いていることについて、どこかのタイミングでバランスは崩れるだろうとの見解を示した。市場は引き続き不安定な動きを続けるだろうとし、リスク管理が重要との姿勢を示した。

主な一問一答は以下の通り。

――信託業界が取り組むべき課題は何か。

「成長戦略にどのように貢献できるかが、大きなテーマだ。成長戦略に資する信託関連の商品をどんどん開発して、それにより、新しいお金の流れを作っていかなければならない。教育資金贈与の非課税措置は1500万円を限度に時限立法になったが、いかにいい商品に仕立て上げて、すみやかに市場に出さなければならない。資金を世代間で移転させる金融商品となり、消費に回ることで経済の浮揚効果を持つ。それ以外でも信託の仕組みを利用した様々な商品やサービスを開発し、成長戦略後押しするのが大事だ。既存の規制の中だけでものを考えるだけでなく、規制の在り方の変更も含めて提案や発信をしていかなければならならない」

――アベノミクスのリスクはあるか。

「現在、株高で債券も買われている状態だが、どこかでバランス崩れるだろう。過去もそういうトレンドだ。これがいつくるのか。常にアンテナを高くして、リスク管理をしなけれればならない。欧州はキプロスの動きでかなり為替も動いた。非常にボラタイルにマーケットが動く状態が想定できる。リスクコントロール慎重にしないといけない」

――具体的にリスクコントロールとは。

「信託のみならず金融機関共通の問題だが、市場業務の収益に依存している。スケールの違いはあれ、同じ構造だ。商業銀行と同じレベルの管理をしなければならない。受託財産業務では、運用のパフォーマンスも問われる、きちんとリスクコントロールしながら、一定の運用を上げなければならない。足元は確かにいいが、このまま続くかといえばそんなことはないだろう。統計学を駆使したリスクコントロールというよりは、運用力を弱らせないことが大事だ」

――株高・債券高の状態はいびつか。

「いびつでしょうね。警戒している。(バランスが崩れるタイミングは)年度内、年度後半だと考えている」


 

 


 


焦点:13年度日本企業のM&A、円安進んでも高水準の可能性
2013年 04月 2日 15:14 JST
[東京 2日 ロイター] ドル/円を中心に円高が是正されつつあるなかでも、2013年度の日本企業のM&A(合併・買収)は高水準で推移するとの見方が大勢を占めている。為替がどう振れようと、日本企業が国外で成長を模索する戦略に変わりはなく、海外企業の買収はこの先も主要な選択肢であり続けるとみられているためだ。

一方、国内では事業の効率化を迫られており、業界再編を見据えた日本企業同士のM&Aが増えるとの見方もある。

<急速な為替変動、中止になった案件も>

「急激な円安で、今年に入って(海外買収を)取りやめた企業が1社あった」──。ある投資銀行のM&A担当幹部はこう話す。自民党政権誕生への期待が高まり始めた昨年11月以降、ドル/円は約18%下落。日本企業にとっては、買収のために予定より高い金額を支払わなくてはならなくなった。

トムソンロイターが2日発表した確定値によると、日本企業のM&Aの金額は2012年4月─13年3月末(2012年度)、前年同期比9.6%減の12.4兆円、件数は同3.5%減の2611件となった。13年1─3月期の落ち込みが顕著で、金額は同49%減の1.4兆円と、四半期ベースでは2000年以来、最も低い水準。なかでも海外企業に対するM&Aが前年同期比で57%縮小した。

シティグループ証券・投資銀行本部長の神保裕一氏は1─3月期の急減の理由について、「1ドル90円台半ばの水準に心理的に慣れるのに時間が必要だったためではないか」と、為替の水準が急変した影響を指摘する。

<「過去に例のないほど多忙な一年に」>

それでも、日本企業による海外企業のM&A案件は潤沢で、今年度も積極的に買収を打ち出してくると、投資銀行の関係者は口を揃える。最大の理由は、少子高齢化による国内市場の縮小という日本をとりまく事業環境が変わっていないという点だ。神保氏は「グローバルな競争を意識する企業は引き続き海外に成長の機会があると認識している」と、日本企業の海外M&A志向は続くと予想する。

低コストで資金を調達できる点も、日本企業のM&Aには追い風だ。弁護士事務所モリソン・フォースター東京オフィス代表のケン・シーゲル氏は、日本の大手企業は長期的な戦略を見据えてM&Aを検討しているうえ、買収資金の調達を低金利の円建てでできるため資金が潤沢と指摘。為替相場などが落ち着けば「下半期辺りから非常に積極的に買収を行うだろう」と話す。

シーゲル氏はさらに、海外の買い手による対日M&Aも不動産を中心に増えると予想。「プライベート・エクイティ・ファンドも日本で過去に例を見なかったほど多くの案件を抱え、多忙な一年になるだろう」と語る。「総じてクロスボーダー案件が豊富になり、M&A全体のマーケットは年度後半から回復する」と、同氏はみている。

<国内再編、アベノミクスで加速も>

一方、国内企業同士のM&Aも増える可能性がある。国内同士のM&Aのパターンは大きく2つあり、1つは救済色の強いパターン、もう1つは、国内の1位と2位が一緒になって世界3位を目指すなど、国際的な競争力強化を狙うパターンだ。

後者の例としては、2012年に統合した新日鉄と住友金属(現新日鉄住金(5401.T))、今年10月に統合する予定の国内アルミ圧延板材最大手の古河スカイ(5741.T)と住友軽金属工業。しかし大手証券のM&A担当幹部は、国際競争力の強化を目指したこうした案件は「なかなか起こらない」と語る。同幹部は「こういう簡単ではない案件が増えている」と、国内同士の前向きなM&Aも進みにくいと明かす。

これまで日本企業は、業績が悪化しても、景気が回復すると改革の手を緩めるとみられがちだった。しかしシティの神保氏は「アベノミクスが成果を上げて本当にインフレや成長が見えてくると、国内再編は進むのではないか」と話す。金利が上昇すれば借入れの金利負担や事業運営コストが上がるため、「収益性が悪くても生き延びれてしまう超低金利下の現状とは違ってくる」と、同氏は言う。そのうえで、「人員削減などの痛みを伴う再編は、マクロ環境が冷え込んでいる時よりも景気が回復した時ときこそ進めやすい」と語り、M&Aを通じた国内の業界再編が進むと予想する。

(ロイターニュース 江本恵美、ネイサン・レイン、編集:久保信博)


20. 2013年4月02日 17:42:21 : xEBOc6ttRg
基金と輪番合体してわかりやすい形で緩和示していく=日銀総裁
2013年 04月 2日 16:57 JST

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キプロス銀とキプロス・ポピュラー銀は15日まで取引停止=証取
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ドル92円後半、フロー主導で1カ月ぶりの円高水準
日経平均続落、一時300円超下落も次第に下げ渋る

[東京 2日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は、2日の衆院予算委員会における金融・経済・財政等に関する集中審議で、「基金と輪番を合体してわかりやすい形で緩和を示していく」と述べ、日銀が国債を買い入れるため現在併用している2つの方式を統一する意向を明言した。

物価2%の目標達成のためわかりやすい形で金融緩和のペース拡充を進めるのが狙いだ。渡辺喜美委員(みんな)の質問に答えた。

日銀は財政ファイナンス(穴埋め)懸念を払しょくするため、保有国債を紙幣発行量内にとどめる「日銀券(銀行券)ルール」を定めている。ただ2010年10月に日銀券ルールの範囲外となる資産買い入れ基金を入れ子のように作り、国債や社債などを買い入れてきた。従来の国債買い入れが経済成長に合わせて紙幣を増発するのが目的であるのに対して、基金による国債買い入れは金融緩和が目的で、いつか売却する臨時の措置だから、というのが理屈だ。

ただ基金とその他を合計した国債保有残高は昨年に紙幣の発行量を突破し、ルールは形骸化。黒田総裁は国債買い入れに2方式並立している現状をわかりにくいとたびたび批判してきた。2日も黒田総裁は日銀券ルールについて「廃止を含め政策委員会で審議が必要」と指摘した。

30年債など超長期債の買い入れ増額についても「どの年限の国債を買うかは委員会で決定する。特定の年限を排除しない」として市場の期待を温存させた。

黒田総裁は、金融政策で「期待に働きかけるのは重要な波及経路の1つ」と指摘。「マネーストックと物価の間には一定の関係がある」として資金供給でマネーストックを増やせば物価上昇につながるとの見解を改めて繰り返した。その際予想インフレ率の目安として物価連動国債と利付国債の利回りから計算されるブレイク・イーブン・インフレ率(BEI)を「十分参考にしたい」と述べた。

同席した岩田規久男副総裁は、マネーストックではなく日銀の制御がより容易とされるマネタリーベースと予想インフレ率には明確な関係ある、と強調。短期的には日銀の金融緩和に対する姿勢が明確でないため、「マネタリーベースと予想インフレ率の関係は不安定だった」ものの、昨年2月に日銀が事実上の物価目標である1%の「目途(メド)」を導入した際など、日銀が強い姿勢を示せば「マネタリーべースが変わらなくとも、予想インフレ率は上昇した」と述べた。

黒田総裁はリーマンショック後、欧米の中央銀行と比べ、日銀の金融緩和程度が小さかったことが、日本におけるデフレ継続に影響したとし、「デフレ脱却に至らなかったことを日銀は反省すべきだ」と指摘。「この2年間はいわば集中治療期間。2年間を念頭に大胆な量的・質的緩和を進める」と強調した。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 宮崎亜巳) 

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黒田日銀総裁:基金と輪番オペを合体、日銀券ルールは廃止含め審議へ 
  4月2日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は2日午後の衆院予算委員会で、資産買い入れ等基金における長期国債の買い入れと、成長通貨の供給を目的として行っている長期国債の買い入れ(輪番オペ)を統合するとの考えを示した。日銀券ルールについても、廃止を含めて審議する必要があると述べた。
みんなの党の渡辺喜美氏が30年債の購入を行う可能性について質問したのに対し、黒田総裁は「輪番オペはそういったものを対象にしているが、現在のいわゆる資産買い入れ基金は主として1年から3年の残存期間の国債を買っている」と指摘。「それを合体して、全体として、市場に分かりやすい形で示していくつもりだ」と述べた。
さらに、「その際どういった年限のものを買うかは非常に重要なポイントなので、委員会で十分議論して決定していただきたい。特定のものを今から排除するつもりはない」と語った。
日銀は白川方明前総裁の下で、日銀が保有する長期国債保有額を日銀券発行残高以下にとどめる日銀券ルールを定めていた。黒田総裁は「現在、既に日銀の長期国債保有残高は日銀券発行残高を超えており、その意味では、日銀券ルールはその通りに守られていない」と言明。「今後さらに長期国債の購入額を増加させていくということになると、現在の日銀券ルールは当分の間、守ることはできない」と述べた。
黒田総裁はその上で「したがって、当然のことながら、日銀券ルールの廃止、その他を含めて、政策委員会で十分に審議していただく必要がある」と述べた。
黒田総裁はさらに、「私どもとしては何としても2%の物価安定目標を、2年という期間を念頭に置いて実現したい、実現する必要があると考えており、国債、特に期間の長い長期国債を含めて、量的にも質的にも、大胆な金融緩和を進める必要がある」と語った。
大胆な金融緩和を進める期間については「物価安定目標にどの程度で到達するかにも関係すると思うが、私どもとしては、この2年間というのは、集中治療期間というとちょっと日本経済に対して失礼だが、やはり2年を念頭に置き、大胆な量的、質的な緩和をして、デフレから脱却するというふうにしていきたい」と述べた。 
更新日時: 2013/04/02 16:48 JST

 

海外勢19週ぶり売り越す、個人大幅買い越し−3月3週日本株 
  3月28日(ブルームバーグ):日本株が大幅安となった3月第3週は、海外投資家が買いから売りに転じたほか、年金資金の動向なども含む信託銀行が大幅に売り越していたことが東京証券取引所の公表データで明らかになった。
東証が28日に発表した3月3週(18日−22日)の投資部門別売買動向(東証、大証、名証の1・2部等合計)によると、海外投資家 は差し引き919億円を売り越した。売り越しは昨年11月1週以来、19週ぶり。
同週のTOPIX は前の週末に比べ1.2%安の1038.57と、5週ぶりに下落した。ユーロ圏のキプロスに対する金融支援をめぐる不透明感が急きょ浮上したことが嫌気された。
大和証券投資戦略部の熊澤伸悟課長代理は海外勢の売り越しについて、「キプロス問題が一番気にされていた週で、欧州投資家中心にリスクオフ(回避)が強まったため」と言う。ただ足元では、キプロス問題は限定された特殊ケースとの認識が広がりつあり、「翌週以降の売り越しを示唆するものではない」とも見ている。
主な売り越し主体は、信託銀 (2513億円)が22週連続で、売越額はことし最大。生保・損保(317億円)は28週連続、事業法人(281億円)は2週ぶり、投資信託(200億円)は14週連続など。
半面、個人投資家 は5週ぶりに買い越し、買越額は3137億円と東日本大震災の発生日を含む2011年3月2週(7−11日)以来、約2年ぶりの大きさ。日本株の上昇局面長期化を受け、「中長期的なスタンスに立った個人の買いが増えている可能性がある」と、熊澤氏は分析した。 
更新日時: 2013/03/28 17:15 JST


21. 2013年4月02日 21:46:20 : xEBOc6ttRg
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いよいよ明日から日銀金融政策決定会合
2013/04/02 (火) 20:03


明日、明後日、黒田新総裁体制で初めての日銀金融政策決定会合が行われます。

昨年末からの円安相場の大きな原因の一つは、当時の白川日銀総裁退任後の新しい日銀総裁が「次元の違う大胆な金融緩和」を行う事に対する期待感でした。この期待は、新総裁候補者が様々なメディアを通じて大胆な金融緩和に対する意欲を述べる事で継続してきました。

しかし、実際に黒田新体制での日銀金融政策決定会合が行われる直前になって、やや円高方向への調整の動きとなってしまっています。

もちろん、80円付近から90円台半ばまでわずか4ヶ月で20%近くも円安が進んだ後ですから、多少の調整はあって当然です。また現在の調整の動きの主な要因は、アメリカの長期金利が低下する一方で日本の長期金利が下げ止まって反発したことです。

ただ、それに加えてこれまで黒田日銀総裁が次回の日銀金融政策決定会合などでどういった決定を行うのか、という事を話しすぎているのが気になります。今日行われた衆院予算委員会でも「(長期国債の買い入れについて)資産買い入れ等基金と、成長通貨供給のために行っている輪番オペを統合する」「今後さらに長期国債の購入額を増加させていくということになると、現在の日銀券ルールは当分の間、守ることはできない」などと発言しています。

通常、中央銀行の政策委員会が開催される直前は、ブラックアウト期間と呼ばれ、委員会の出席者は金融政策について踏み込んだ発言を禁じられています。日銀も政策委員の申し合わせで金融政策決定会合開始の2営業日前から会合終了当日の総裁記者会見終了時までの期間は、原則として金融政策および金融経済情勢に関して発言をしない、とされています。今日の場合は国会の答弁ですので、申し合わせの範囲外ですから問題はないのですが、そもそもなぜこういったブラックアウト期間が設けられているのか、を考えると少し話しすぎ、という印象があります。

ブラックアウト期間は、委員会での決定が、事前に市場に織り込まれすぎてしまうと、実際に新たな政策を決定してもその効果が薄れてしまったり、意図したような結果にならなかったりする事を防ぐためのものです。

今回の日銀金融政策決定会合は、世界中から注目されていますが、事前にこれだけ情報が出てきてしまうと、「もうこれ以上のサプライズはない」「結局これまでの延長なのでは」などとという思惑や疑念が強まって、円売りのポジションの手仕舞い(=円買い)が出やすくなったと考えられます。

 


2013年4月2日
円高は続くのか?〜再び好機到来〜印刷用PDF

村上尚己「エコノミックレポート」

チーフ・エコノミスト 村上尚己が、ファンダメンタルズ分析を中心に内外経済・金融市場に鋭く切込みます。(@Murakami_Naoki )

[ プロフィール ]

為替市場でドル円は93円前後まで円高が進んでいる。3月初旬の雇用統計改善の後、96円台半ばまで円安が進んだが、それ以降キプロス発の欧州への懸念などが浮上し、円高の材料とされている(グラフ参照)。


ただ、自称専門家などがよく口にする「欧州債務問題で円高が起きる」という説は意味不明である。実際には、2012年11月以降の円安が急ピッチに進み、欧州懸念を口実にしたポジション調整が起きているとみられる。また、3月26日レポートで紹介したが、今後円安が続くとしても、これまでのような急ピッチな円安はさすがに期待し難くなっている面もあるだろう。

ところで、ほぼ1ヶ月前の2月25日に、イタリアの総選挙において中道右派勢力が過半数を占めるとの「サプライズ」で、ドル円は一時90円台まで円高に動いた。この時の 2月26日のレポートで、「ドル円のトレンドは日本銀行の今後の金融政策次第」とお伝えした。

結局、前回のイタリアの政局混乱を材料とした円高は絶好の押し目買いのチャンスだった。これ以降、イタリア発の混乱とほぼ同じタイミングで誕生した黒田新総裁が率いる日銀による金融緩和への期待や、米国を中心とした世界経済の回復を背景に、ドル円は96円台半ばまで大きく円安が進んだ(グラフ参照)。


アベノミクス発動による、日銀の金融緩和強化が、円安をもたらしたわけである。この構図が変わっていないなら、最近3週間の円高の動きは、日本株や外貨資産の押し目を拾う機会が、再び到来しているということになる。

さて、4月4日(木)の昼過ぎ(あるいは夕方)に結果が公表される、黒田体制による最初の金融政策決定会合に、市場の注目が集まっている。既に黒田総裁は「できることは何でもやる」と決意を示しており、かなり市場の期待が高まっており、専門家ではない為替コメンテーターまでが、想定される金融政策のメニューを解説する状況に至っている。

こうした状況をうけて、「よほどのサプライズがないと、ドル円は円高に動く」というのが、メディアで報じられるコメンテーターの一般的な意見だろう。このため、「ETFやリート購入積み増しが実現しないと期待外れ」と、極端な政策オプションが語られるなど、やたらハードルが高まっている面がある。

筆者は、現在FRBと同様な、(1)長期国債を中心とした大量購入(4〜5兆円毎月国債を積み増し,更にベースマネー拡大が目標となる)による金融緩和強化が採用され、(2)+2%物価目標実現を目指し金融緩和を継続する方針が明確になる、が今回の金融政策決定会合で決まると予想している。

現行の資産買入れ基金の枠組みへの対応、あるいはETF・リートなどの小規模な資産購入が実現する可能性もある。ただ、これらの小規模の資産購入は、金融緩和拡大による予想インフレを高めることに直接つながらないため、余り重要な政策手段ではない。これらの資産購入は、せいぜい白川体制で実現したのと同程度の購入金額に止まる程度だろう。

筆者の想定どおりの、「奇をてらわない」国債購入を中心とした大規模金融緩和だと、4月4日の会合直後などは「物足りない」と、市場が反応する可能性もある。ただ、金融緩和を頑なに拒否していた白川前総裁らと、正反対の考えを持つ黒田総裁・岩田副総裁が、政策決定会合の議論をリードすれば、こうしたオーソドックスな決定が実現するのではないか。国債の大量購入による金融緩和の強化が、物価目標+2%の早期実現の最善の手段である。
デフレ放置を続けていた日本銀行が、黒田総裁のもとでデフレファイターに生まれ変わることが認識されれば、仮に「想定内の対応」でも、ドル円相場における円安要因になる。リーマンショック以降続いていた、日本銀行による量的金融緩和の規模が圧倒的に劣っていた状況が、超円高をもたらしてきたわけであり、それが変わる影響は決定的に大きいのである(グラフ参照)。


なお、今起きている円安進行は、未だに円高是正の過程が続いているに過ぎない。未だに、購買力平価などの観点などから依然「円高過ぎる」状況にあり、早期の脱デフレを実現するためには、更に円高が是正される必要があるだろう。http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm


 


 
次は黒田氏の番、ドラギ流「何でもやる」-ペセック 

  4月2日(ブルームバーグ):日本銀行総裁として初となる金融政策決定会合に際して、黒田東彦総裁にはドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁と同じ気構えで臨んでほしい。
ドラギ総裁の前任トリシェ氏と、黒田氏の前任の白川方明氏のことを思い出してみよう。白川氏は尊敬に値するエコノミストだが、教条的なその手法は2008年の金融危機のような予期せぬ事態が起きた際につまずく原因をつくった。。トリシェ氏の世界情勢認識が時代とずれていた(トリシェ氏は実際、08年半ばに政策金利を引き上げた)のとちょうど同じように、白川氏も理念に邪魔されて経済の現実の姿が見えていなかった。
ドラギ総裁はトリシェ氏に代わって11年後半に就任した際、ECBが新総裁の下で変わったことを直ちに言葉と行動で示して見せた。今週3、4日に日銀決定会合を初めて主宰する黒田氏も、それに倣うべきだ。内なる「ドラギ氏」的な要素に耳を傾けるため、黒田氏は次の一つの数字を意識してほしい。それは08年9月以降に日銀がどの程度バランスシートを拡大したか、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が示した51%という数字だ。イングランド銀行(英中銀)の333%、米連邦準備制度理事会(FRB)の253%、ECBの82%と比べ、その増え方は圧倒的に少ない。
黒田氏が本物のデフレファイターか、あるいは臆病な日銀の歴代総裁に連なる1人なのかどうかを見分けるポイントは、黒田氏が4日の決定会合終了後の会見で、日銀の国債保有に関して日銀自身が課した制限を外すかどうかだ。
多くの選択肢
黒田氏には数多くの方策がある。バーナンキFRB議長の「オペレーションツイスト」を見習う。それにより日銀が保有する国債の年限は大幅に長期化する。社債や資産担保証券(ABS)、上場投資信託(ETF)など、よりリスクの高い資産を大幅に買い入れる。株式だってあり得る。外債の購入の可能性も残しておく必要がある。財政支援のために日本国債を一定程度引き受けるマネタイゼーションも、その目的が手段を正当化するなら排除する必要があるだろうか。
しかし、日銀が保有する国債規模を銀行券の発行残高以内に収める「銀行券ルール」を撤廃することほど、日銀の変化を明確に示すものはないだろう。その姿勢だけで、黒田日銀がこの10年余りの日銀とは大きく異なることを示すことになる。
S&Pのチーフ・グローバル・エコノミスト、ポール・シアード氏(ニューヨーク在勤)は、「日銀が量的かつ質的な緩和に踏み切れば、世間のデフレ予想を覆すのに効果的だろう。日銀は買い入れる資産に関して居心地の良い場所から抜け出し、従来よりもずっと思い切ったことをする必要がある」と述べた。
信頼
デフレを収束できるかどうかは、どれだけ信じ込ませることができるかにかかっている。黒田氏は信頼感を世間に植え付けることが欠かせない。就任から2週間、われわれは黒田氏の多くの発言を聞いてきた。それは素晴らしいことだ。彼は透明性とコミュニケーションはそれ自体が金融政策のツールであると信じている。FRBやECB、英中銀の総裁のように、黒田氏は「オープンマウス・オペレーション(言葉による操作)」が「オープンマーケット・オペレーション(公開市場操作)」と同様にインフレ期待を統制する上で必要不可欠であることを理解している。
市場は黒田氏に明確なメッセージを送っている。ブルームバーグ・ニュースによると、日経平均株価のコール(買う権利)に対するプット(売る権利)の割高度合いが約8カ月ぶり高水準となった。別の言葉で言えば、ここ数カ月の日本株上昇の流れに乗った投資家は、日銀が自ら約束したことをきちんと実行できるかどうかを疑っている。デフレ脱却のために「何でもする」と表明した黒田氏の姿勢が金融の世界で既に疑問視されていることは、同氏を悩ませるはずだ。
創造的に
追加の金融刺激策を前倒しで実施し、他のさまざまな選択肢を提示してトレーダーに勢いを与える−。日銀が10年前に取るべきだったと市場が考えているこうした行動を遅らせるのは間違いだ。新たに流動性を供給してもデフレを終わらせることができなければ、最悪シナリオを幾つか出すのも良い。融資を渋り債券をため込んでいる銀行を罰するなど、黒田氏が考えつくことは全て示せばよい。今はありきたりの効果のない処置ではなく、創造的で急進的な考え方が求められる時だ。
黒田氏はまた、自身の権限を生かして政府にも役目を果たすよう促す必要がある。安倍晋三首相は日銀と同様の積極的な構造改革と成長戦略によって、家計や企業、投資家に真の信頼感を醸成させなければならない。
黒田氏が取る行動で最悪なのは、それが典型的な中銀総裁のものと捉えられることだ。ECB総裁が最高だと言っているわけではないが、トリシェ氏の時代からドラギ氏の時代にムードが大きく変わったことで、欧州はともかくも大きな混乱を避けられた。日本を同様の転換に導けるかどうかは黒田氏にかかっている。時間を浪費する余裕はない。(ウィリアム・ペセック)
(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:‘Whatever It Takes’ Arrives in Land That Needs It: WilliamPesek(抜粋) 
更新日時: 2013/04/02 14:25 JST


22. 2013年4月02日 22:22:52 : xEBOc6ttRg

 
日銀のインフレ目標は「2015年に5%」
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51849870.html
 日銀の黒田総裁は「消費税が3%ポイント引き上げられた場合、物価には2%程度影響が出る」と答弁した。2015年には5%ポイント上がり、この影響は3%程度と推定されている。黒田氏は「増税の効果を除いて2年後に2%の物価上昇」が目標だと明言したので、彼は2015年に5%の物価上昇を約束したことになる。

小黒一正氏も指摘するように、1997年に消費税率が2%ポイント上がったときも、コアCPIは2%上がっているが、5%のインフレというのは、石油危機以来なかったものだ。クルーグマンは4%の物価上昇を約束する政策をcommitment to be irresponsibleと表現したが、世界の中銀総裁がここまでirresponsibleな目標を公言したのは史上初だろう。

マーケットも、増税はすでに織り込んでいる。次の図はBloombergの出している予想インフレ率(物価連動国債のブレークイーブン・インフレ率)で、昨年の初めに野田内閣が消費税の増税を閣議決定したとき0.5%ポイントぐらい上がったが、その後の国会情勢で増税が不透明になってからやや下がり、自民党政権になってから上がっている。

それでも1.37%というのは5%のインフレの1/3しか織り込んでいないので、黒田発言で予想インフレ率は上がるかもしれない。本当にマーケットが5%のインフレを織り込むと、長期金利は5%を超え、イタリアやポルトガル並みになる可能性もある。黒田氏はそれで日本経済がよくなると思っているのだろうか。

4月から始まるアゴラ経済塾では、このようにますます先行きが不透明になる日本経済のゆくえをみなさんと考えたい。
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23. 2013年4月03日 00:24:15 : xEBOc6ttRg
「異次元の金融政策」を検証する
“量”よりも“期待”を通じた緩和を
2013年4月2日
経済調査部 久後 翔太郎
サマリー

◆本稿では、ゼロ金利制約下で中央銀行が採りうる金融政策のオプションを整理したうえで、黒田新総裁の下で検討されるであろう、「異次元の金融政策」の政策オプションのメリットおよびデメリットについて考察した。

◆ゼロ金利制約下での金融政策のオプションについて整理すると、1)時間軸政策、2)中央銀行のバランスシートの拡大、3)中央銀行のバランスシートの構成内容の変更、という3つの政策に分類できる。

◆今後考えられる金融政策の選択肢としては、買い入れ対象とする長期国債の年限を拡大することが考えられる。ただし、日本銀行の長期国債の購入は、バランスシート硬直化のリスクがあることも考慮する必要がある。そのため、残存期間の長い長期国債を購入するのであれば、出口戦略に支障が出ないように、慎重に行う必要があるだろう。加えて、出口戦略に関する説明も求められるであろう。

◆今後の金融政策運営で求められる観点は、時間軸政策により将来の景気拡大期待に働きかけることで、実体経済に効果を与えていくことであると考える。


1. 初めに
現在、金融政策に対する世の中の関心が高まっている。これまで採用していた1%のインフレ
目途を、1 月に2%のインフレ目標に変更し、現在、その目標を達成するための具体的な手段に
ついて、議論が盛り上がっている。白川前総裁から職務を引き継ぐ黒田新総裁は質・量ともに大
胆な緩和を行うことを主張し、このような「異次元の金融政策」への期待から、市場では円安・
株高が進行している。しかし、市場の金融緩和に対する期待とは裏腹に、政策金利は実質的にゼ
ロであり、長期金利も極めて低位を推移する現状では、追加的な金融緩和の余地が限られるとの
意見もある。そこで本稿では、ゼロ金利制約下での金融政策を分類したうえで、黒田新総裁が選
択しうるいくつかの政策について、そのメリットおよびデメリットを考察する。結論として、筆
者は、単純な量の拡大ではなく、時間軸政策の明確化という観点からの金融政策運営を期待する。
2. 金融政策の波及経路
初めに、金融政策の波及経路を確認する。中央銀行は政策金利を変動させることで様々は経路
を通じて実体経済に影響を与えることができる。これらの経路は、大きく分けて以下の5 つに集
約される。
@ 金利チャネル
政策金利の変動が金利の期間構造により中長期金利に影響を与え、中長期金利の変動
が設備投資や住宅投資などを通じて実体経済へ波及する経路。
A 資産チャネル
政策金利変動による資産価格の変化が企業の設備投資行動や家計の消費行動を通じて
実体経済へ波及する経路。
B 為替レートチャネル
政策金利変動による為替レートの変化が輸出入の動向や企業収益を通じて実体経済へ
影響を与える経路。
C 狭義の信用チャネル
政策金利の変動が民間金融機関の貸出金利にも影響を与え、民間部門への資金供給と
いう経路を通じて実体経済へ影響を与える経路。
D 広義の信用チャネル
資産価格上昇によって担保価格が上昇する結果、企業や家計が借入を行いやすくなり、
これらの部門への資金供給を通じて実体経済へ影響を与える経路。

伝統的金融政策は、政策金利を目標水準に誘導することで、上記のような波及経路を通じて実
体経済へ影響を与える。
しかし、過去の経済危機への対応や長期化するデフレへの対応で金融緩和を続けたため、政策
金利は既に0.1%と、ほぼゼロ金利まで低下している(実質ゼロ金利)。そのため、政策金利をこ
れ以上引き下げることができず、通常の金融緩和手段を行使できない状況となっている。そこで、
金利の引き下げ以外の方法による金融政策(いわゆる、非伝統的金融政策)が現状および今後の金
融緩和政策の主要な政策手段となっている。
3. ゼロ金利制約下での金融政策の整理
ゼロ金利制約下での金融政策のオプションについて整理すると、1)時間軸政策、2)中央銀行の
バランスシートの拡大、3) 中央銀行のバランスシートの構成内容の変更、という3 つの政策に
分類できる1。
1 Bernanke and Reinhart(2004)による分類。


3.1 時間軸政策(フォワード・ガイダンス)2
第1 のオプションとして時間軸政策(フォワード・ガイダンス)3が挙げられる。将来において経
済状況が好転し、政策金利の引き上げが予測される時点以降も、政策金利を引き上げず、低金利
を維持すると中央銀行が公約(コミット)するような政策である。より厳密には、時間軸政策とは、
「政策金利がほぼゼロ%にまで低下した場合でも、中央銀行がゼロ金利政策を将来にわたり継続
すると公約することで、民間部門が予想する将来の短期金利を低下させ、より長期の金利を低下
させて、さらなる緩和効果を生み出す政策」と定義される。
このように定義される時間軸政策には、1)イールドカーブへの効果、2)現時点の実体経済を刺
激する効果、という2 つの効果が期待される。
初めに、イールドカーブへの効果について説明する。長期金利は将来の短期金利の予測値の平
均にプレミアムを加えることで算出される。そのため、中央銀行が低金利を約束し、民間部門が
予測する将来の短期金利を引き下げることができれば、長期金利を引き下げることが可能となる。
図表2 は、イールドカーブへの効果の概念図である。政策金利は第4 期にゼロ金利制約に直面し、
民間部門は第12 期(すなわち、第4 期から数えて2 年後)以降に、政策金利が段階的に引き上げ
られると想定していたとする。この時、中央銀行によるコミットメントがなければ、第5 期以降
に2 年国債利回りは上昇する。しかし、中央銀行が第12 期以降も、政策金利を引き上げないと
いうコミットメントを行えば、第5 期以降の2 年国債利回りはコミットメントがない場合よりも、
低い水準で維持できる。
図表2:時間軸政策による長期金利の低下

2 本節の説明は主に、宮尾(2007)を参考にした。
3 時間軸政策とフォワード・ガイダンスとは厳密には別の政策であるため、区別して議論する必要がある。すな
わち、時間軸政策には明確なコミットが伴うものの、フォワード・ガイダンスは単に政策の見通しを述べただけ
にすぎないという点である。この意味において、フォワード・ガイダンスでコミットするという表現は厳密には
不適切であろう。しかし、本稿では議論の複雑化を避けるため、断りのない限り同一のものとして扱う。


次に、時間軸政策に期待される2 つ目の効果として、現時点の実体経済を刺激する効果につい
て説明する。
図表2 に示したように、経済の回復に伴って政策金利が引き上げられる時点においても、政策
金利を低い水準で維持することで、民間部門が将来の景気拡大を見通すことができる。民間部門
がフォワード・ルッキング(将来の経済見通しを織り込んで、現在の行動が決定する性格)である
ことを想定すると、将来の景気拡大の見通し(図表2 左図のシャドー部分)が、民間部門の現時点
での支出行動に影響を与える。よって、このような場合には、時間軸政策が現時点の実体経済を
刺激する効果を有することとなる。
次に、 時間軸政策の具体的な手段について整理する。時間軸政策には、1)期間基準、2)指標基
準、という2 つの種類による働きかけの方法が存在する。
期間基準とは、低金利政策を維持する期間の見通しを中央銀行がコミットすることである。具
体的には、Fed が2015 年半ばまでFF レートを低水準で維持するとの見通しを公表した政策が挙
げられる。期間基準の時間軸政策は具体的な期間を示すため、イールドカーブへの効果に働きか
けやすいと考える。
指標基準とは、特定の指標がある一定の条件を満たすまで低金利政策を維持することをコミッ
トすることである。実体経済との関連する指標を基準とすることで、現時点の実体経済を刺激す
る効果に働きかけやすいと考える。
3.2 中央銀行のバランスシートの拡大(量的緩和政策)4
ゼロ金利制約下での第2 のオプションとして、中央銀行のバランスシートを拡大させる政策が
考えられる。中央銀行がバランスシートを拡大させるということは、すなわち、中央銀行が金融
機関から国債を中心に様々な資産の購入を通じて、金融機関に資金を供給するということである。
ゼロ金利制約に直面した状況でも、中央銀行が当座預金を積み増し、バランスシートを拡大さ
せることで、理論的には実体経済に刺激を与えることができる。バランスシートの拡大により期
待される効果としては、@マネタリスト的な効果、Aポートフォリオ・リバランス効果、B時間
軸政策の補完、などが挙げられる。
マネタリスト的な効果とは、信用乗数が安定的という極めて強い仮定のもと、マネタリーベー
スの増加がマネーストックの増加を生むことで、物価や実体経済へ影響を与える効果である。
4 本節の説明は、主に白川(2008)を参考にした。


しかし、少なくとも日本においてはマネタリスト的な効果は観察されなかった。図表3-1 およ
び3-2 はそれぞれ2001 年以降の量的緩和政策時と2010 年以降の包括的な金融緩和政策(以下、
包括緩和政策)時のマネタリーベース、コアCPI、名目GDP、マネーストック(マネーサプライ)の
推移を示したものである。双方とも共通して、マネタリーベースは急激に増加しているが、名目
GDP やコアCPI には大きな変動は見られない。また、マネーストックを見ても、緩やかに増加し
ているものの、マネタリーベース程の激しい増加は見られない。これは、信用乗数が安定的とい
う仮定が成り立っていないためであり、マネタリスト的な効果はほとんど観察されていないと言
えるだろう。
次に、中央銀行のバランスシートの拡大に期待される2 つ目の効果として、ポートフォリオ・
リバランス効果を説明する。ポートフォリオ・リバランス効果とは、「民間保有のポートフォリ
オのリスクを中央銀行のオペレーションによって減少させると、リスクの総量を一定の限度額以
下に抑えるという制約条件の下で目的を最大化するように行動している経済主体が、新たにリス
クをとる結果、マネタリーベースの一部がリスク資産に交換される効果5」と定義される。より簡
潔に述べると、民間金融機関が中央銀行に国債を売却した分、貸出やリスク資産の購入が増える
ことを期待する効果である。
図表4 はポートフォリオ・リバランス効果のイメージ図を示した。中央銀行が民間の金融機関
から、国債を購入した場合を考える。中央銀行は民間金融機関から購入した国債の代金を当該金
融機関の当座預金に振り込む。すると、中央銀行に国債を売却した民間金融機関のポートフォリ
オには無リスク資産である現金(当座預金に預けられた代金)が増えることで、資産全体のリスク
量が減少する。民間金融機関は資産のリスクとリターンをもとにポートフォリオの構成を決定す
るので、リスクが減少すると、新たにリスクを取ってリターンを求める。この際、日本銀行が民
間金融機関から購入した資産のリスク量が大きい程、民間金融機関は超過準備を運用するインセ
ンティブが生まれる。
5 鵜飼(2006)。


通常、超過準備の運用方法としては、貸出の増加、国債の購入、リスク資産の購入が考えられ
るが、超過準備に対する付利が行われている現状では、これらの選択肢に加え、超過準備を当座
預金に預けておくことも民間金融機関の資産運用の選択肢となりうる。
これらの選択肢の実体経済への波及経路を、図表1 を用いて説明すると、貸出の増加は狭義の
信用チャネルを通じた実体経済への影響を意図している。国債の購入は中長期国債の金利を低下
させることで金利チャネルを、リスク資産の購入は資産チャネルや広義の信用チャネルを通じた
実体経済への働きかけを意図している。
中央銀行のバランスシートを拡大させる効果の3 つ目として、時間軸政策を補完する効果につ
いて考察する。時間軸政策を補完する効果とは、金融緩和が続くという民間部門の期待形成に影
響を与える効果である。単に将来の短期金利のパスについてコミットするよりも、バランスシー
トの拡大によって超過準備が発生している場合には政策金利の変更を行いにくくなるため、時間
軸政策に対する信任を高めることができる。この意味において、バランスシートの拡大は時間軸
政策を補完する効果を有する。ただし、一度このような効果が発生すると、追加的にバランスシ
ートを拡大させることで、時間軸政策を補完する効果がより強化されるわけではない。
3.3 バランスシートの構成内容の変更
ゼロ金利制約下で中央銀行が採りうる3 つ目の政策オプションは、中央銀行のバランスシート
の構成内容を変更することである。金融市場の主たるプレイヤーである中央銀行が各種金融商品
の買入や売却を行うことでバランスシートの構成内容を変更することにより、金融商品の需給構
造に変化を生じさせることができる。これにより、金融商品の価格を変化させることができる。
伝統的金融政策では、金利の変動が資産価格へ影響を与える「資産チャネル」が想定されている
が、直接金融商品を購入することにより、ゼロ金利制約下においても、金融市場へ働きかけるこ
とができる。


バランスシートの構成内容の変更方法は、主に2 種類存在する。1 つは、すでに保有する国債
の残存期間の構成を変更させること、もう1つは中央銀行が通常は保有しない資産を購入するこ
とである。
国債の残存期間を変更する例としては、中央銀行の保有する短期国債を売却し、長期国債を購
入する、いわゆるツイストオペが挙げられる。長期国債の購入により、リスクプレミアムを低下
させることで、中長期金利を低下させることができる。このような政策の具体例としては、Fed(連
邦準備制度)の採用したMEP(Maturity Extension Program)が挙げられる。MEP は2011 年9 月か
ら2012 年12 月まで採用されていたプログラムであり、長期金利の低下を通じて経済を刺激する
ことが意図された。
中央銀行が通常保有しない資産を購入する例として、社債、株式、外債などの購入が挙げられ
る。実際、リーマン・ショックの発生以降、各国中央銀行がリスク資産を購入する政策が採られ
た6。ただし、これらの政策は、金融緩和政策という側面よりも、金融システムの安定化政策とい
う側面が大きい。
例えば、リスク資産の例として社債金利を用いて説明すると、社債金利はリーマン・ショック
の前後で大幅に上昇した。これは、社債にかかる各種リスクプレミアムが大幅に増加したためで
ある(図表6-1)。また、金融機関同士の資金調達のリスクに対するプレミアムである、LIBOR-OIS
スプレッドを見ても、リーマン・ショックの前後に急激に拡大していることがわかる(図表6-2)。
このような事態を放置しておくと、金融機関や企業の資金調達に不安が生じ、システミックリ
スクが顕在化することとなる。このような事態を避けるため、中央銀行がリスクを取ることで、
各種リスクプレミアムの低下を図った。
6 リーマン・ショック以降の各国中央銀行による非伝統的資産の購入はバランスシートの拡大を伴っているため、
厳密には、1)中央銀行のバランスシートの拡大、2)中央銀行のバランスシートの構成内容の変更、という2 つの
要素を持つ。


3.4 これまでの金融政策〜包括緩和政策の整理
ゼロ金利制約下での金融政策オプションを踏まえたうえで、白川前総裁のもとで2010 年10 月
から実施された包括緩和政策の枠組みについて説明し、「異次元の金融政策」へのインプリケー
ションを探る。包括緩和政策は、1%のインフレ目途のもと、@実質的なゼロ金利政策、A時間
軸政策、B資産買入等の基金(量的緩和政策)、という枠組みで金融政策を運営している。前述の
枠組みに照らし合わせて説明すると、資産買入等の基金が、中央銀行のバランスシートの拡大お
よび中央銀行のバランスシートの構成内容の変更に対応している。
図表7:現在の日本銀行の金融政策運営
政策
実質ゼロ金利政策
時間軸政策
2013年末まで101 兆円程度の資産買入
2014年初め以降長期国債2兆円程度を含む13 兆円程度の金融資産の買入れを行う
(出所)日本銀行ウェブサイトより大和総研作成
資産買入等の基金
(量的緩和政策)
内容
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す
物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続


資産買入等の基金については、国債を購入することで中長期の金利を低下させるという側面と、
リスク資産を購入することで、リスクプレミアムを縮小させるという側面を有する。よって、前
述の経路の概念で説明すると、中長期金利と資産価格という点に働きかけていることになる。(図
表8)。
基金の内容としては、共通担保資金供給オペを除くと、長期国債と国庫短期証券を中心に積み
上げていることがわかる(図表9-1)。また、長期国債については、残存期間が3 年以下のものを
対象とするなど、残存期間が比較的短め(1〜3 年程度)の長期国債の買入を進めている(図表9-2)。
白川前総裁によると、日本では企業の金融機関からの借入を期間別に見ると、3 年以下が多い。
そのため、3 年以下のゾーンの金利を重点的に低下させることで、効果的に実体経済に影響を与
えることができるとしている7。加えて、一般的にドル円レートを説明するのに、日米の2 年物国
債金利差が有効であることから(図表10-1)、比較的短め(1〜3 年程度)の金利を引き下げること
で、為替レートへの影響が大きいことも理由として考えられる。
7 総裁記者会見要旨(2010 年10 月6 日),p.13-14.
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2010/kk1010a.pdf


さらに、長い残存期間の国債を大量に購入してしまうと中央銀行のバランスシートが硬直化し
てしまうため、出口戦略の観点からも、比較的短め(1〜3 年程度)の国債を購入することが望まし
いと考えられる。通常、中央銀行はオペで長期国債を大量に売却することはほとんどなく、この
期待が長期国債の金利に織り込まれているとすると、中央銀行がオペのため大量の長期国債を売
却することは長期金利に大きな影響を与えうる要素となる。このように、長期国債は中央銀行に
とっては非常に流動性の低い資産であるため、長期国債の購入は中央銀行のバランスシートを硬
直化させることとなる。
金融緩和局面では、バランスシートの硬直化はさほど問題とならないかもしれないが、出口戦
略という観点からは非常に重要な問題となる。
図表10-1:為替レートと日米2 年債金利差 図表10-2:金利の期間構造


経済が回復軌道に乗ったのち、金融引き締めが必要なった場合に、中央銀行は金融引き締めを
行う必要がある。この際、通常の引締め手段である公開市場操作による政策金利の引き上げと、
超過準備に対する付利の引き上げという2 つの手段が存在する。
公開市場操作によって引き締めを行うのであれば、初めに超過準備を圧縮する必要が生じる。
その際、長期国債を大量に売却すれば、市場に混乱を与え、長期金利の急騰といった事態を招く
恐れがある。一方、そのような事態を恐れ、国債の償還を待っていると、引き締めが遅れてしまうという事態が想定される。
では、超過準備に対する付利の引き上げによる場合では、どのような事態が想定されるか。超
過準備に対する付利は金利の下限として機能することから、理論的には超過準備に対する利率を
変更することで、短期金利を誘導することが可能となる。しかし、超過準備に対する利率を引き
上げると、民間金融機関への利払いを通じて、日本銀行の財務的な負担が発生する。この場合、
日本銀行が国に納める国庫納付金が減少することから、実質的には政府部門の減収となるという
問題点が生じる。
このように、年限の長い国債を大量に購入する場合に、日本銀行のバランスシートの硬直化が
出口戦略といった観点から問題となってくる。そのため、長期国債の買入対象の拡大や買入金額
の増加という政策がとられる場合には、これらの問題点に対して、日本銀行による丁寧な説明が
求められる。
包括緩和政策では、このような出口戦略での問題点と長期国債購入による効果を比較した結果、
残存期間が3 年以下の比較的短い長期国債を多く購入しているものと考えられる。
次に、時間軸政策について、波及経路上の位置づけを確認する。前述のように、現在の時間軸
政策は、「物価安定の目標の実現を目指し、(中略)、それぞれ必要と判断される時点まで」とい
う、実質的なゼロ金利と資産買入措置を継続することをコミットしている。実質的なゼロ金利に
ついてコミットすることで、将来の短期金利が極めて低位で推移するとの期待を生み、結果とし
て中長期金利を低下させている。加えて、指標基準の時間軸政策を用いることで、時間軸政策の
効果のうち、特に現時点での実体経済を刺激する効果を高める意図があると考える。しかし、「そ
れぞれ必要と判断される時点まで」という曖昧なコミットメントであるため、時間軸政策の効果
を効果的に発揮できていない可能性が残る。
4. 「異次元の金融政策」〜考えうる選択肢の検討
これまでは、ゼロ金利制約を想定したうえで、ゼロ金利制約下における金融政策を整理し、そ
の整理に基づいて、現在の日本銀行の採用する包括緩和政策について説明した。次に、2%のイ
ンフレ目標の実現に向けて、新執行部のもと今後採用が検討されるであろう「異次元の金融政
策」における選択肢を取り上げ、それらのメリットおよびデメリットについてまとめ、今後どの
ような金融政策を行うべきか考察する。今後検討されるであろう政策を大きく分けると、@金利
操作、A資産購入、B時間軸政策、という3 つに分類できる。以下、これらの政策について検証する。

4.1 金利操作〜超過準備に対する付利の撤廃
初めに、超過準備に対する付利撤廃について、そのメリットおよびデメリットを考察したい。
メリットとしては、さらなる金利低下余地を生むことが挙げられる。超過準備に対する付利は、
通常、金利の下限として機能する。実際、現在と同様に、当座預金が拡大した2001 年以降の量
的緩和政策期と比較しても、金利が0.1%近傍を下限としていることがわかる(図表13-1)。この
下限を撤廃することにより、理論的にはコールレートをさらに低い水準に誘導することが可能と
なる。その結果、中長期の金利も若干低下させることができる。加えて、当座預金に対する付利
がなくなることから、民間金融機関は超過準備を積み立てておくインセンティブがなくなる。そ
のため、当座預金と代替性の高い資産である国債を購入することが期待される。この結果、前述
のように3 年程度のゾーンの金利が低下することで、効果的に実体経済に影響を与えることがで
きると考えられる。ただし、すでに金利の低下余地は小さいことから、付利の撤廃および引き下
げのメリットは小さいと考える。

むしろ、超過準備に対する付利の撤廃にはデメリットが大きいと考える。例えば、短期金融市
場の金融仲介機能に対する影響、日本銀行のオペに対する影響が挙げられる。
すでに述べたように、付利撤廃によりコールレートの下限がなくなることで、コールレートは
ほぼゼロまで低下するとみられる。このとき、民間金融機関はコール市場での運用により利益を
上げることが困難となるため、コール市場から多くの資金が引き揚げるだろう。実際、過去2 回、
金利がゼロ近傍となった時期には、コール市場の残高が急激に減っていることが確認できる(図
表13-2)。このような状況では、金融機関の資金調達が困難となり、金融システムに不安が生じ
る恐れがあるため、短期金融市場での資金調達に不安をもつ民間金融機関は予備的需要としてあ
る程度当座預金に積み上げておくことが想定される。ただし、このような場合には、超過準備を
運用するインセンティブは全く持たないことになるため、量的緩和政策によるポートフォリオ・
リバランス効果は全く期待できないであろう。また、この場合、本来市場が担うべき金融仲介の
役割を中央銀行が担うこととなる結果、市場における適切な価格形成機能が喪失してしまうとい
う事態も想定される。
また、超過準備に対する付利を撤廃することにより、日本銀行がオペを円滑に行うことができ
なくなる懸念が生じる。現在、日本銀行は2013 年12 月末時点までに、基金の残高を101 兆円程
度まで積み上げることにコミットしている。この残高目標を達成するために、中央銀行はオペを
通じて国債などの資産を購入する必要がある。今、超過準備に対する付利が撤廃された状況を想
定する。付利撤廃のメリットの部分で触れたように、このような状況では、民間金融機関は超過
準備を当座預金以外で運用するインセンティブを有する。すると、中央銀行がオペにより資産を
購入しようとしても、超過準備が積み上がることを嫌う民間金融機関はオペに応じず、札割れが
発生する可能性がある。その場合、現在コミットしている水準へ基金を積み上げることが困難と
なることが予想される。
このように考えると、超過準備に対する付利撤廃と包括緩和政策に基づく基金の積み上げとい
う2 つの政策は同時にはなしえないものと考えられる。金利の低下余地が小さいことを考慮する
と、付利撤廃だけでなく引き下げについても、得られるメリットよりも、短期金融市場での価格

形成機能への影響や円滑なオペを担保できないというデメリットの方が大きいと考える。
4.2 資産購入
「異次元の金融緩和」で採りうる政策の2 つ目として、資産購入が挙げられる。対象として考
えられる資産は、国債とリスク資産に大きく分けることができる。以下に述べるように、資産購
入自体が、経済を押し上げる余地は小さいと考える。そのため、主として資産購入に期待される
効果は時間軸政策の補完になると考える。
4.2.1 国債の購入
2013 年2 月末時点の日本銀行の国債の保有構造を確認すると、残存期間が3 年までの国債が大
部分を占めていることがわかる(図表9-2)。しかし現在、より長めの国債の購入が議論となって
いる。これは、足下で低下余地のあるのが、5 年以降の国債金利であることや、発行残高に占め
る日本銀行の保有割合が比較的小さく、市中からの買入を比較的行いやすいことなどが考えられ
る(図表14)。
図表14:日本銀行保有国債の残存期間別残高

しかし、すでに5 年物国債金利までは下限である0.1%程度を推移しており、それより長い年
限のものについても、金利の低下余地は極めて小さいことから、長期国債買い入れによる効果は
非常に限定的であると考える。また、日本銀行の長期国債の購入は前述のように、バランスシー
ト硬直化のリスクがあることも考慮する必要がある。そのため、長期国債の購入オペを行うので
あれば、出口戦略に支障が出ないように、日本銀行が保有する国債の残存期間を考慮したうえで、
慎重に行う必要があるだろう。
包括緩和政策下では、国債の購入の効果としては、上記のようにメリットとデメリットを整理
することができるが、足下の金融緩和議論において注目される「異次元の金融政策」では、期待

インフレ率の押し上げ、為替レートの減価という効果をより大胆に狙っているようだ。
期待インフレ率の押し上げについて、岩田副総裁は、半年前のマネタリーベースの残高と期待
インフレ率の間に正の相関があることから、マネタリーベースの増加が期待インフレ率を押し上
げると主張している8。
また、為替レートへの影響については、日本銀行が直接介入することができない領域ではある
が、強く意識されているであろう。マネタリーベースと為替レートとの関係を表す経験則として
は、修正ソロスチャートがしばし用いられる。修正ソロスチャートとは、超過準備を除いた日米
のマネタリーベースの比率であり、それがドル円レートと極めて近い動きをすることが知られて
いる(図表15-1)。一方、超過準備を含むベースでのソロスチャートでは、量的緩和政策が行われ
ている時期に、ドル円レートから大きく乖離していることが分かる(図表15-2)。そのため、現在
のように超過準備を積み増している状況では、経験則的にはマネタリーベースによってドル円レ
ートを動かすことはできない。
図表15-1:修正ソロスチャートの推移 図表15-2:ソロスチャートの推移

足下で為替レートが円安基調で推移している要因は、欧州ソブリン危機の沈静化と米国での財
政問題という市場の不安が後退したことが最大の要因であると考える。ただし、仮に為替市場参
加者の多くが何らかの理由で「マネタリーベースが増加すれば、(期待インフレ率が上昇するこ
とで?)、円安になる」という期待を有していたとすると、12 月以降の円安基調の一部は、マネ
タリーベースの増加“期待”が寄与した可能性がある。
4.2.2 リスク資産の購入
次に考えられる手段としては、リスク資産(REIT、ETF など)の購入がある。リスク資産の購入
について、日本銀行はその目的を「各種リスクプレミアムの低下」を促すものとしている。すで
に見たように、足下でのリスク指標は安定しており、これ以上のリスクプレミアムの低下の余地
は小さいと考える。そのため、日本銀行がリスク資産の購入により、一層リスクを取っても低下
8 岩田(2012),p.256.


させることのできるリスクプレミアムは極めて小さい。加えて、さらなるリスク資産の購入は、
金融市場が適切にリスクを判断する能力を奪うことにつながる恐れがある。このように考えると、
さらなるリスク資産の購入には、慎重な判断が求められよう。
4.3 時間軸政策
次に、「異次元の金融緩和」で採りうる政策の3 つ目に挙げられる時間軸政策として、考えう
る選択肢を議論する。これらの政策は中長期金利に影響を与えるだけでなく、民間部門の経済見
通しへの影響という観点からも、重要な位置づけとなる。
4.3.1 期間基準の時間軸政策
初めに、期間基準の時間軸政策について説明する。これは、将来経路について、具体的な時期
または時間の長さを伴った表現でアナウンスすることである。具体的には、Fed が採用していた
時間軸政策がこれに当てはまる。図表16 に、リーマン・ショック以降のFed の時間軸政策をま
とめた。リーマン・ショック以降昨年の12 月まで、Fed はFF レートの推移の見通しについてそ
の期間を示すかたちで、時間軸政策を行ってきた。当初は、Fed はFOMC の声明で、「しばらくの
期間」、「長期間」という抽象的な表現を用いてきたが、その後は、「2013 年半ばまで」、「2014
年終盤まで」、「2015 年半ばまで」というある程度具体的な期間を示す形で、期待に働きかけた。
具体的な時期を示すことで、短期金利の将来の経路についてより明確な期待が生まれることから、
期間基準の時間軸政策は、金利を引き下げる効果が高いと考えられる。すなわち、時間軸政策の
1 つ目の効果として挙げたイールドカーブへの効果は大きいと考える。
図表16:Fed による時間軸政策(フォワード・ガイダンス)

しかし、期間基準の時間軸政策には欠点があるとの指摘がある9。すなわち、対象とする期間が
延長されるということは、中央銀行が景気回復の遅れを示唆していると捉えられる可能性がある。
このような場合、時間軸政策の2 つ目の効果として挙げた現時点の実体経済を刺激する効果が極
めて小さくなると考えられる。このような欠点を回避するために、期間ではなく、経済指標に基
づいた時間軸政策が適切であると考える。以下、経済指標に基づく時間軸政策について考察する。
9 たとえば、Woodford(2012)など。

4.3.2 指標基準の時間軸政策〜総論
期間基準との比較から、指標基準の時間軸政策に共通するメリットおよびデメリットを考察す
る。すでに述べたように、メリットとしては、景気刺激効果が大きいことが挙げられる。一方、
デメリットとしては、不確実性が大きいことが挙げられる。例えば、ある指標に基づく条件が満
たされるまで、金融緩和政策を継続することにコミットしたとする。この場合に、不測の事態に
より、条件が満たされていないにもかかわらず、金融引き締めを行う必要が生じたとする。短期
的な視点に基づけば、コミットメントを破棄すること望ましい。しかし、長期的な視点に基づけ
ば、条件が満たされていないにもかかわらず、コミットメントを破棄することは、中央銀行の信
任を傷つけ、将来にわたり中央銀行の政策に対する信任を得られない可能性が生じる。この場合、
それ以降、時間軸政策を行っても、効果を上げることができなくなる、という事態が発生するこ
とが考えられる。そのため、時間軸政策には「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点
検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」
といったような文言を加えることで、条件が満たされない場合の金融引き締めの余地を残してい
る。ただし、時間軸政策を破棄し、中央銀行の信任が傷ついた場合に、それが将来にわたりどの
程度金融政策運営に影響するかは判断が難しい。そのため、時間軸政策のデメリットをどの程度
評価するかは、現時点では時の中央銀行総裁や世論によって異なるであろう。
また、民間部門は時間とともに経済の先行きに関する不確実性が増し、コミットメントを満た
すと想定される時点が遠くなるほど、中央銀行がコミットメントを破棄する蓋然性が高まること
は理解しているとすると、一般的には、期間基準および指標基準を問わず、コミットメントを満
たすと思われる時点が遠くなるほど、時間軸政策への信任は低下する。
以上をまとめると、指標基準に基づく時間軸政策を行うには、1) 条件が満たされない場合の
デメリットの検証と、2)長期になる程時間軸の効果が低下する点、という2 つの観点から判断す
ることが必要となる。
4.3.3 指標基準の時間軸政策〜失業率
経済指標に基づく時間軸政策の具体例としては、現在Fed が採用している失業率目標や、名目
GDP 目標が挙げられる。
初めに、失業率目標について説明する。前述のように、Fed は、1〜2 年先のインフレ率が2.5%
を上回ることなく、長期の期待インフレ率が安定する範囲で失業率が6.5%を下回るまで、FF レ
ートを低水準で推移させることを発表している。このような形でのアナウンスであれば、期間基
準の時間軸政策の欠点は回避される。Fed が失業率をフォワード・ガイダンスに使用した理由に
は、アメリカにおいて失業率と景気の関係性が強いことが挙げられる。アメリカの失業率は景気
後退期に入ると急激に上昇し、景気後退期を過ぎた後ある程度のラグを伴って、低下することが
わかる(図表17-1)。よって失業率を時間軸政策に用いることで、景気回復後も金融緩和政策が継
続するとの期待に働きかけることができる。
図表17-1:失業率の推移(アメリカ) 図表17-2:失業率の推移(日本)

では、日本において米国のように失業率をアンカーとした金融政策により、期待に働きかける
ことは可能であろうか。図表17-2 を見ると、2002 年以降については、米国と同様に、景気拡大
期には失業率が低下するという傾向が見られることから、景気とはある程度関係性を有すること
が分かる。しかし、現時点で日本銀行は雇用最大化や安定をその使命と位置付けておらず、仮に
失業率を用いた時間軸政策を行った場合には、インフレ目標との整合性が問題となる。また、非
正規労働者の増加に伴う失業率の低下をどのように考慮するかといった問題点もあるだろう。仮
に採用するのであれば、日本銀行の使命に雇用の雇用最大化または安定を加えたうえで、物価安
定と失業率との金融政策上の位置づけについてきちんと説明責任を果たすということが必要と
なるだろう。
4.3.4 指標基準の時間軸政策〜名目GDP
名目GDP を時間軸政策に用いる案も、現在注目されている。例えば、名目GDP がリーマン・シ
ョック以前のトレンドに達するまで、金融緩和を続けるようコミットするという政策が挙げられ
る10。これは、CPI を基準とする時間軸政策との比較でいうと、より実体経済を反映した指標であ
ることから、時間軸政策に用いる指標としてより適切であると考える。
10 Woodford(2012)

ここで、実際の各国の名目GDP の推移を比較すると、アメリカやイギリスはリーマン・ショッ
ク以前までは、トレンドに沿って推移している。よって、このトレンドに従って成長することを
目指すことは、恐らく持続可能な成長を大きく超えたものではないであろう。しかし、日本の名
目GDP の推移をみると、アメリカやイギリスのようなトレンドラインに沿った成長は見られない。
また、期間の採り方によって、トレンドラインの傾きが大きく変わってしまうこともわかる。こ
のように考えると、日本においてはどの程度の名目GDP を目標とすべきか、判断が非常に難しい。
この判断を誤った状態で、名目GDP に基づく時間軸政策を行うと、過剰または過小な金融緩和と
なりかねないという問題点が存在する。
加えて、GDP の統計上の性格も名目GDP を時間軸政策の基準とする金融政策のネックとなろう。
具体的には、1)公表系列の大幅な改定が行われる可能性、2)公表時期が遅いという点である。1)
については、名目GDP は1 次速報が公表されたのち、1 ヶ月程度してから2 次速報が公表される。
その後、確報が公表され、最終的には確々報の公表を待って最終的に決定される。そのため、1
次速報や2 次速報での名目GDP に従って行った政策が事後的には誤っていたという可能性を排除
できない。また、公表時期が遅いということも名目GDP 目標の欠点となろう。通常、1 次速報が

公表されるのは、対象となる四半期の最終月が終了してから1 ヶ月半程度経ってからである。そ
のため、月次統計よりもデータの取得に時間がかかり、機動的な金融政策運営が行えないという
欠点が存在する。
このように、理論的には名目GDP を基準とする時間軸政策は効果的なものであろうが、日本の
名目GDP が安定的なトレンドを持たないことや、現時点での統計の作成方法に基づく問題点から、
実際の政策運営の指標として用いることは困難であろうと考える。
4.3.5 指標基準の時間軸政策〜インフレ率
指標基準の時間軸政策として、最後に、インフレ率にコミットした時間軸政策について検討す
る。この政策は、過去に2 度日本銀行が採用している。1 度目は、1999 年2 月に採用したゼロ金
利政策を「デフレ懸念の払拭ということが展望できるような情勢になるまで11」解除しないとい
うコミットメント、2 度目は2001 年3 月に採用した量的緩和政策による潤沢な資金供給を「消費
者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」という
コミットメントである。
図表19-1:コアCPI と実質GDP の推移 図表19-2:基準年ごとのコアCPI 上昇率の推移

しかし、CPI の推移をみると、コミットした状況を満たしたとは判断し難い時点でのゼロ金利
政策および量的緩和政策の解除を行っている。特に、2000 年8 月にゼロ金利政策を解除したとき
は、解除したのちすぐに景気後退が鮮明となり、再びゼロ金利に戻す結果となった。
また、量的緩和政策の解除については、事後的に消費者物価指数の基準改定に伴う問題が大き
な論点となった。図表19-2 は、基準年ごとのコアCPI 上昇率の推移を示したものである。2006
年3 月の量的緩和政策解除時には、2000 年基準の消費者物価指数が用いられていた。2000 年基
準に基づくと、コアCPI 上昇率は2005 年末頃からプラス圏を推移していたことから、日本銀行
は、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで」とい
う解除条件を満たしたと判断した。しかし、基準変更後の2005 年基準で見ると、量的緩和政策
11 1999 年4 月13 日の速水総裁の発言による。

解除前のコアCPI 上昇率は概ねゼロ近傍で推移しており、事後的には、2006 年3 月での量的緩和
政策の解除は上記の解除条件を満たしていなかったと判断される。
このような過去の日本銀行の行動は、現在の金融政策の見通しについても織り込まれている可
能性がある。すると、曖昧な表現では、景気が回復した後も中央銀行が金融緩和的な環境を維持
するという予想を民間部門に持たせることができない。その結果、指標基準の時間軸政策の効果
として期待される現時点の実体経済を刺激する効果が極めて小さくなってしまう恐れがある。そ
のため、時間軸政策の効果を発揮するという観点からは、明確な表現による時間軸への働きかけ
が重要となる。
2010 年に導入された包括緩和政策おける時間軸政策を確認すると、「物価安定の目標の実現を
目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点
まで継続する」というコミットメントにより、時間軸へ働きかけている。しかし、「必要と判断
される時点まで」という曖昧な表現となっていることから、時間軸への働きかけという点では、
改善の余地があると考える。
実際、金融政策決定会合の議事録を見ると、このような観点からの提案がなされている。例え
ば、2013 年2 月13 日、14 日の金融政策決定会合の議事録によると、宮尾議員から実質的なゼロ
金利政策について、以下のような提案がなされている。
「日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、@実質的なゼロ金利政策についてはそ
れが見通せるようになるまで、A金融資産の買入れ等の措置については必要と判断される時点ま
で、それぞれ継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する。併せて、金融機関による成長
基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援していく」
現在の時間軸政策である「必要と判断される時点まで」という表現にくらべ、「それが見通せ
るようになるまで」という表現はさらに踏み込んだ表現である。議事録を見る限りこの提案の否
決理由は述べられていないが、恐らく指標基準の時間軸政策の総論部分で述べたデメリットを考
慮したものと考えられる。すなわち、その時点の日本銀行の物価見通しでは、2%を見通せてお
らず、上記のようなコミットメントを万が一破棄した場合のデメリットをメリットよりも高く評
価した可能性がある。または、コミットメントを満たすと期待される時期が極めて遠く、将来の
金融政策運営に対する不確実性が高まることから、時間軸政策の効果があまり期待できないとみ
なされたのかもしれない。いずれにせよ、ボードメンバーのCPI 上昇率の先行きに対する弱気な姿勢が感じられる。

宮尾議員によるこの提案は結果として否決されてしまったが、本稿の問題意識である期待に働
きかける政策であり、今後もこのような観点から、うまく時間軸へ働きかける金融政策運営を期
待したい。
5. 終わりに
本稿では、ゼロ金利制約下での金融政策について整理したうえで、「異次元の金融政策」にお
いて選択しうるオプションについて、そのメリットおよびデメリットを考察した。現在、今後考
えらえる選択肢としては、無期限の長期国債購入オペといった措置が挙げられる。しかし、長期
金利が極めて低位で推移している現状では、単純な量の拡大では量的緩和政策の効果は見込めな
いであろう。そのため、今後の金融政策運営で求められる観点は、時間軸政策により将来の景気
拡大期待に働きかけることで、実体経済に効果を与えていくことであると考える。
デフレ脱却に向けた機運が高まるなか、日本銀行の新執行部には政策のメリットとデメリット
を適切に判断したうえで、効果的な金融政策運営を期待したい。

http://www.dir.co.jp/research/report/japan/sothers/20130402_007010.html


24. 2013年4月03日 00:33:01 : xEBOc6ttRg
ストラテジスト・レポート
〜鳥瞰の眼・虫瞰の眼〜
1
リフレ政策の手本は米国
2013 年4月2日
アセットマネジメント部
チーフ・マーケット・ストラテジスト 黒瀬浩一
koichi.kurose@resonabank.co.jp
新執行部を迎えて新生日銀が3月 20 日に船出した。新生日銀の優先課題はデフレ脱却と2%の安定
的なインフレ醸成だが、その手本は米国だ(図表 1)。米国は、2008 年 9 月のリーマン・ショック前後
に 10 ヶ月だけデフレに陥ったが、その後は概ね2〜3%前後の安定的なインフレが続いている。
リフレーション(以下、リフレ)の定義は、
「景気循環の過程で、デフレーションから
は脱したが、インフレーションにはなって
いない状態。また、そうした状態になるよ
うに財政・金融を調節していくこと(注
1)」だ。この定義に照らして米国はリフ
レ政策の成功例だ(注2)。
新生日銀の優先課題は、言葉を変えれば、
金融面でのリフレ政策と解釈してよいだ
ろう。更に敷衍すれば、「失われた国民所
得 50 兆円奪還プロジェクトを」標榜する
安倍政権の経済政策がリフレ政策だ。
米国の金融危機収束後のリフレ政策の金融面での実体が、QE2と QE3だったことは周知の事実だろう。
ただこれは後講釈であり、実は市場では早い段階から金融緩和を収束させる出口戦略が取り沙汰されて
いた。2009 年 11 月には早すぎる出口戦略を牽制する意味で、IMF が「世界経済見通しと出口戦略の原
則(注3)」を取りまとめている。2010 年2月には FRB のバーナンキ議長が早すぎる出口戦略を牽制す
る講演を行なっている(注4)。そして、現実に FRB が打ち出したリフレ政策が、出口戦略とは真逆の
QE2 と QE3 という金融緩和の強化だった。
QE2 と QE3 は、金融資産のプライシングに
重大な変化をもたらした。平時においては、
景気を軸に、株価と金利は連動する。景気が
良ければ、企業収益が増加するので株価が上
昇する一方、利上げ懸念から金利も上昇する。
逆に景気が悪ければ、株価は下落するし金利
も低下する。こうした関係を見たのが図表2
だ。1998 年から 2008 年9月のリーマン・シ
ョックまで、株価と長期金利は長期にわたり
連動していた。ところがリーマン・ショック
以降4年以上にわたり、株価と金利の連動は、
FRB のリフレ政策を受けて真逆になった(注5)。こうした金利の低下は、「金融抑圧」と表現されるこ
ともある(注6)。


翻って日本だが、米国と類似の状況が示現し
ている。安倍政権が誕生する前までの株価と金
利の関係は、リーマン・ショック前の平時の米
国と同様で、株価と長期金利は連動していた(図
表3)。今年1月頃まで市場では、こうした平時
の関係を外挿する形で、株価が上昇すれば金利
も上昇する、という見方が根強くあった。しか
し、日銀の金融緩和のスタンス強化を受け、足
元の長期金利は低下した。結果的には、株価と
金利の連動が、リーマン・ショック以降の米国
と同様で真逆になった。
リフレ政策の手本である米国と類似の状況が
日本で示現した事実は、リフレ政策が正しい方
向に向かっているシグナルと考えて良いと考え
られる。但し、更なる金利の低下余地はもはや限定的である。
以上
(注1) ヤフー辞書(大辞泉)より抜粋
(注2) リフレ政策に対しては、将来にハイパーインフレを引起こすリスクを内包するという批
判がある。米国でまだ QE1〜3 を撤回、更に利上げで実質金利をプラスに戻す出口戦略が実
現していないと言う意味では、ハイパーインフレが起こるリスクが皆無になった訳ではない。
(注3) http://www.imf.org/external/np/g20/pdf/110709.pdf
(注4) このバーナンキ議長の講演に関する同シリーズの筆者作成のレポートは以下サイト。
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/nenkin/info/economist/pdf/100209.pdf
(注5) 資産運用で複数資産から成るポートフォリオを構築するに当たっては、資産価格の変動の相
関がリスク低減をもたらすカギとなる。相関係数は、-1 から+1 の値となり、相関係数が低
いほど相性は良い。リーマン・ショック以降のように、株価と債券価格の相関がマイナスか
らプラスに転換する事態の示現は、ポートフォリオ構築に重大な変化をもたらす。
(注6) 金融抑圧も、債権者から債務者への所得移転をもたらすという考え方から、資産運用に多大
な影響を及ぼすとする見方があり、運用会社のピムコ社などが調査レポートを出している。
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/nenkin/info/economist/pdf/130402.pdf


 


  
公債発行下の財政競争
−資本移動が財政健全化に与える影響に関する実証分析−
田 中 宏 樹∗
(同志社大学政策学部教授)
1.はじめに
資本移動下における地方政府間の競争的かつ非協力的な政策決定が,過小課税と公共財の過小供給を引
き起こすことを示したZodrow and Mieszkowski(1986),Wilson(1986)らの資本税競争モデルは,理論・
実証両面から様々な方向に拡張されてきた。少数派ながら,政府が操作可能な政策変数として,租税のみ
ならず,公債発行も含めた場合の租税競争を理論分析したものに,Jensen and Toma(1991),Matsumoto(2011)
らが,実証分析を試みたものに,Krogstrup(2002)がある。
Jensen and Toma(1991)は,Zodrow and Mieszkowski(1986)の同質小地域からなる地方政府間の水平的
資本税競争モデルを,公債発行を組み入れた2期間モデルに拡張し,公債発行下での資本税競争の理論的
帰結を解明している。これによると,両地方政府の反応関数の傾きが正であれば,地方政府は(2 期目の
相手の資本税率を引き上げるために),財政赤字の拡大を志向することが示されている。
Matsumoto(2011)では,Jensen and Toma(1991)と同じく公債発行を組み入れた2期間モデルを採用し
つつも,地方政府同士ではなく,中央政府と地方政府間の垂直的資本税競争モデルを用いて,公債発行下
での資本税競争について理論分析している。課税ベースが重複する垂直的資本税競争モデルでは,互いに
相手の資本税率引き下げを画策する結果,両地方政府の反応関数の傾きが正であれば,中央政府および地
方政府は,財政余剰の拡大を志向するとし,Jensen and Toma(1991)と異なる理論的帰結を導き出してい
る。
財政競争モデルの現実適用性を高める上で,同質地域の想定や資本供給一定の仮定を緩めることに加え
1

,公債発行の可能性を考慮することは,重要な視点である。しかしながら,地域間の非対称性や資本蓄

1967 年生まれ。1998 年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。2000 年同研究科博士後期課程修了。博士(国際公共政策)。
咳HP 総合研究所主任研究員,内閣府経済社会総合研究所客員研究員等を経て,2004 年より現職。専門は財政学,公共経済学。主な編著
書に,『公的資本形成の政策評価』(PHP 研究所,2001 年),『検証 格差拡大社会』(日本経済新聞出版社,2008 年)など。日本経済
学会,日本財政学会,公共選択学会に所属。E-Mail: hitanaka@mail.doshisha.ac.jp URL: http://www.cam.hi-ho.ne.jp/thiroki/
1) 例えば,前者を対象とする代表的な理論分析として,Bucovetsky(1991)が,後者を対象とする代表的な理論分析として,Batina(2009)
がある。会計検査研究 No.47(2013.3)
− 12 −
積を考慮した資本税競争の研究に比べると,公債発行を組み入れた研究の蓄積は乏しい。主に,反応関数
を推定することで,資本税競争の有無を検証した実証分析においては,公債発行を前提としないZodrow and
Mieszkowski(1986),Wilson(1986)らの理論モデルが想定されている。
Krogstrup(2002)は,公債発行を明示的に扱った理論モデルをベースに,資本移動下での財政競争が,
公的債務比率の高い国において,債務比率の低い国よりも,高い法人税率と低い財政支出比率を引き起こ
すことを,EU 諸国のパネルデータ用いて,実証的に示している。日本において,水平的租税競争を扱っ
た実証研究には,大島・國崎・菅原(2008),深澤(2009)等があるが,公債発行を前提としたモデルでの
租税競争の検証までには至っていない。
本稿では,公債発行下での水平的財政競争に着目し,公債利払いの増加とともに加速化が予想される地
方政府の財政再建(歳入増・歳出減)の取り組みが,租税競争および支出競争の拡大によって影響を受け
たか否かを,日本の自治体のデータをもとに実証的手法を用いて検証する。具体的には,1975〜2009年度
における47都道府県のパネルデータを用いて,公債利払い費と法人事業税平均税率および公債利払い費と
基礎的歳出(除く公債費)との関係が,民間資本移動拡大の影響を受けて変化するか否かを実証分析する。
本稿の構成は,以下のとおりである。第2節では,公債発行下での財政競争モデルを構築し,(資本移動
を誘発する)財政競争の拡大によって,公債利払いの水準が資本税率および財政支出に与える影響に違い
が生じうることを示す。第 3 節では,2 節の理論モデルを踏まえ,公債費元利償還金を都道府県の法人事
業税平均税率および基礎的歳出(除く公債費)に回帰させることで,都道府県の財政再建の取り組みに対
する財政競争の影響を実証分析する。第4節では,本稿の結論を要約し,残された課題を指摘する。

一連の実証分析は,民間資本移動が活発化した1990年代の半ば以降,都道府県は租税競争や支出競争の
影響に対する懸念から,税率の引き上げ(歳出削減)を通じた財政健全化の取り組みを鈍らせた(活発化
させた)可能性があることを示唆するものといえよう。
4.おわりに
本稿では,公債発行下での水平的財政競争に着目し,公債利払いの増加とともに加速化が予想される地
方政府の財政再建(歳入増・歳出減)の取り組みが,財政競争の拡大によって影響を受けたか否かを,日
本の自治体のデータをもとに実証的手法を用いて検証した。具体的には,1975〜2009 年度における47 都
道府県のパネルデータを用いて,公債利払い費と法人事業税平均税率,および基礎的歳出(除く公債費)
との関係が,資本移動下における租税競争および支出競争拡大の影響を受けて変化するか否かを実証分析
した。
実証分析から,以下の2 点が明らかとなった。第1 に,公債費元利償還金の係数が,被説明変数を法人
事業税平均税率とする推定結果において,サンプル (3) の期間のみプラスで有意,被説明変数を基礎的歳
出とする推定結果において,すべてのサンプル期間でマイナスで有意となったことから,都道府県は公債
利払いが積み重なってくれば,法人事業税率の引き上げよりは基礎的歳出の減少によって,予算制約を満
たすよう行動する傾向にあり,その傾向は近年強まっているということである。
第2に,民間資本移動が低調だった前期(1975〜1995年度)と活発だった後期(1996〜2009年度)でサ
ンプルを二分し,資本移動下の租税競争および支出競争の拡大が,都道府県の財政再建に与えた影響を検
証したところ,後期のサンプル期間についてのみ,法人事業税平均税率を被説明変数とする場合には,公
債費元利償還金の係数(β1)がプラス,公債費元利償還金×資本移動指標の係数(β2)がマイナスに,基
礎的歳出を被説明変数とする場合には,公債費元利償還金の係数(β1),公債費元利償還金×資本移動指標
の係数(β2)がともにマイナスとなったことから,租税競争および支出競争の拡大によって,都道府県は
近年,法人事業税率の引き上げに消極的になった(基礎的歳出の減少に積極的になった)ということであ
る。
一連の実証分析によって,租税競争や支出競争が公債の利払い費増加による税収増加の効果を減じ,基
礎的歳出減少の効果を増すとした2節の理論的帰結は,最近年においては支持されることが明らかとなっ
た。本稿の実証分析は,民間資本移動が活発化した1990年代の半ば以降,都道府県は租税競争や支出競争
の影響に対する懸念から,税率の引き上げを通じた財政健全化の取り組みを鈍らせた可能性が高い一方,
歳出減を通じた財政健全化の取り組みを活発化させた可能性が高いことを示唆するものといえよう。
最後に,本稿に残された課題について,3点指摘しておきたい。第1に,モデルの前提についてである。
本稿では,Krogstrup(2002)と同様に,理論分析の単純化のため,定常状態において先決された公債水準
を前提に,財政競争の影響が考察されている。しかし先行する理論分析では,地方政府が資本税率と公債
発行という2つの政策変数を同時決定するモデルが前提となっている。現状では,公債発行から資本税率
や公共財供給への一方向への影響しか考慮されていない。この点については,さらなる改善を模索したい。
公債発行下の財政競争
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第2に,ラグ付き内生変数を含む推定モデルへの拡張についてである。被説明変数となっている法人事
業税平均税率および基礎的歳出は,説明変数として想定したもの以外に,前期のそれ自身の値からも影響
を受ける可能性があると考えられる。特に,基礎的歳出については,予算における増分主義の影響を受け
やすいと考えられ,Arellano-Bond の2 段階操作変数法やBlundell-Bond のシステムGMM 等のダイナミッ
ク・パネルでの推定を試みる必要がある。この点については,今後の課題として取り組みたい。
第3に,回帰分析における多重共線性の問題についてである。説明変数にあげられている変数は,いず
れも歳入・歳出に関連したデータであり,変数間で多重共線性の発生が懸念される。仮説の検証において,
やむを得ない定式化ではあるが,多重共線性のチェックと,それへの統計的対処によって,推定結果の頑
強性を確認する必要がある。この点についても,さらなる改善を目指して取り組みたい。
http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j47d02.pdf


25. 2013年4月04日 18:53:23 : xEBOc6ttRg
黒田日銀総裁「必要な政策全て講じた」:識者はこうみる
2013年 04月 4日 18:23 JST
[東京 4日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は、4日の金融政策決定会合後の会見で、量的・質的両面における大胆な金融緩和を決定したことについて、戦力の逐次投入はしないとし、現時点で必要な政策は全て講じたと述べた。

市場関係者の見方は次の通り。

●積極果敢な姿勢を最大限評価する

<第一生命経済研究所 首席エコノミスト 嶌峰義清氏>

黒田総裁の発言は、おおむね声明文に沿った内容だが、物価目標達成に向けた積極果敢な姿勢が表れている。特に「必要があれば躊躇なく調整する」というコメントは日銀が変わったとの印象を与える。これまでは政策の効果について自己正当化するようなフシも見受けられたが、黒田氏は今後も必要があれば何でもやるという意思を示している。

今回の緩和策により金利上昇リスクは相当程度抑えられ、企業の景況感も上向くだろう。円安・株高も持続すると予想される。最大限に評価したい。欧州情勢などに異変があれば、さらなる緩和策もあり得る。

●長期金利低下、かなりバブルに近い現象

<明治安田生命 チーフエコノミスト 小玉祐一氏>

黒田日銀総裁の会見では、国債バブルが生じていると思わないとの発言が伝わったが、実際のところ長期金利は0.5%程度とされる潜在成長率を下回る水準にまで低下しており、かなりバブルに近い現象となっている。修辞学の世界で市場の期待を盛り上げようとしているのではないか。

日銀は市場予想を上回る緩和政策を打ち出したが、量的質的という意味では「量的」という意味合いが大きい。日本では市場の厚みが薄いために、米国のように大々的にリスク性資産を購入することが難しいことも改めて明らかになった。金融緩和の効果は遅れて出てくるだけに、今後長期的な緩和継続となった際、物価上昇が行き過ぎるリスクも懸念される。

●買い入れ規模を強調、デフレ脱却に自信

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券・債券ストラテジスト 稲留克俊氏>

黒田東彦日銀総裁は会見で、大胆な金融緩和を決定したことについて、戦力の逐次投入はしないとし、現時点で必要な政策は全て講じたと述べた。また、グロスで買い入れる長期国債は7兆円で、毎月発行額の7割に相当する額を買い入れるとして、買い入れの規模を意識した発言が目立った。

マーケットは打ち止め感をそれほど意識しているわけではない。しかし、日銀としては間断なく政策を実行に移せば、今回緩和策でデフレを脱却できるとのメッセージを伝えたかったのだろう。

●政策効果を見極める時間帯に

<みずほ証券 FXストラテジスト 鈴木健吾氏>

黒田東彦日銀総裁は、できることを全てやったという強い姿勢を示した。今後も物価目標2%に向け緩和を続けていくという姿勢を示したことで、外為市場では再び円安に振れ、ドル/円は高値を更新した。

今回、日銀は市場予想の上限か、それを超える水準の政策を、小出しではなく一発で打ち出してきた。こんなことは何度もできないので、いったんはその効果を見極める時間は必要になるだろう。

もっとも、この出し方をどう捉えるかは難しい。月内はこれを好感してもつかもしれないが、数カ月経って追加緩和と言われたときに、いったい何を出してくるのか。出尽くし感につながるリスクがあり注意が必要だ。

ドル/円については、長期的には日銀の強い緩和姿勢が維持されることや、米国経済の回復、欧州も問題解決に向け話し合いが進む可能性が高いことから、100円、110円に向かっていくのだろうが、足元をみると不安材料が多い。

米国サイドでは年初からの増税や歳出削減で4─6月期の経済指標が下押す懸念があり、欧州でもキプロス、イタリア、経済のファンダメンタルズとリスクしか見当たらない。4─6月に前回の96.71円を上抜くには、欧米の状況がネックになる可能性があり、微妙だ。

●マネタリーベース拡大政策、日銀に説明責任

<東海東京証券 チーフエコノミスト 斎藤満氏>

マネタリーベースを拡大する政策は、欧米で既に実施されているが、いわば「種子米」にあたるマネタリーベースをいくら蒔いても、M2、M3などより広い意味でのマネーは、これに呼応して伸びなかった。つまり、種子米を2倍蒔いても、コメの収穫高は2倍にならなかった。

欧米で起きなかったことが、日本では起こるという論拠を日銀は明確に説明しておらず、日銀には説明責任がある。

さらに、M2、M3が伸びたとしても、マネーが資産市場のみに流入し、実物経済に還元しない可能性がある。GDPというパイが大きくならず、所得が高まらないまま、コスト高によってインフレが起きるリスクもあり、日銀の手腕が試される。

今回の緩和について、黒田総裁はこれまでとは全く次元が違うと表現しているが、規模が拡大しただけで、従来の政策の延長線上にあるという印象を受けた。

マネタリーベース残高という中間目標は、日銀が過去に採用した当座預金残高目標と本質的に同じである。当座預金残高目標について、日銀は当時、量的緩和としては効果はなかったと総括している。規模を拡大すれば効果を発揮するかはまだ検証されていないが、FRBでは懐疑的な見方が広がっている。

これまでと違うのは、2年分の緩和をまとめてコミットしたことだが、その成果のチェックや、メンテナンスをどうするのかが今後の課題となるだろう。

●金融緩和、社債スプレッドのタイト化を加速

<メリルリンチ日本証券 チーフクレジットストラテジスト 上田祐介氏>

長期国債などが日銀による買い入れの対象となることで、長期金利が低下しやすく、社債のスプレッドは明らかにタイト化するだろう。投資家は国債を大規模に日銀に売却した後に、帰ってくる資金の運用対象を選ばなければならない。ここで、長期金利の低下によりキャピタル・ゲインを得た資金などは短期のクレジット市場にも向かいやすくなるだろう。

利回りを求める資金の流れは、中低位格付けの社債にも広がりやすくなる。日銀が買入対象とする新規のETFが個社の株式を購入することにより、個別企業の株式時価総額が増え、実効的な信用バッファーも大きくなる。この結果、社債スプレッドのタイト化圧力がさらに高まることになる。

●投資家は均衡点を探る展開に

<バークレイズ証券 チーフストラテジスト 森田長太郎氏>

現実的には、消費者物価指数(CPI)はやはり上がらないと思う。今回の措置は国債市場への強烈な介入だが、CPIを2%まで押し上げ、実体経済に波及させるパスがあるのかというと、メカニズムとしては考えにくい。数カ月すると、CPIの上昇率が2%に届かない事態に直面するはずだ。「戦力の逐次投入はしないとし、現時点で必要な政策は全て講じた」と黒田東彦日銀総裁は述べているが、2%達成が困難な場合は追加策の話が出てくるはずで、材料の出尽くしにはならないだろう。

また、現段階で市場参加者はきょうの緩和に反応し切れているわけではない。おそらく、機関投資家の投資行動を抜本的に変えてしまう可能性がある。変化はこれから見えてくると思われる。どの金利水準まで下がったら銀行が中長期債投資から撤退していくのか、超長期債の主力投資家の生保がどの水準で投資を引き、外債などへ振り向けるのか、今後は均衡点を探る展開になりそうだ。オペや新発債の入札を何度か経て、均衡する水準を探ることになる。まだ、今回緩和の余波が続くと見ている。円債市場では、非常に大きな歴史的な転換点になった。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93304V20130404



戦力逐次投入で2%達成無理、必要な政策全て講じたと確信=日銀総裁
2013年 04月 4日 18:03 JST
[東京 4日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は就任後初となる金融政策決定会合後の記者会見で、これまでの日銀は「戦略を逐次投入していたためデフレから脱却できなかった」として「現時点で必要と考えられるあらゆる措置を取ったと確信している」と断言。

巨額の国債購入を軸にマネタリーベース(資金供給量)の拡大を進める新政策で、今後2年を目途に物価目標の2%を達成する姿勢を強調した。

潜在的な緩和手法として取りざたされていた当座預金に付く金利(付利)の引き下げは「現時点は必要ない」と明言した。満期までの年限が10年超の超長期債の買い入れペースを現在の毎月1000億円からいくらに引き上げるかは事務方が近く決めるとの見通しを示した。

黒田総裁は、日銀が2010年に始めた資産買い入れ基金を通じて国債やETF(上場投資信託)などを買い入れる「包括緩和政策」のように「漸進的に少しずつ量的・質的に緩和を拡大するやりかたでは、デフレ脱却を2年で達成できない」として「現在取り得るあらゆる手段を動員して実現する」と言い切った。

総裁は3枚ものフリップボードを活用して日銀が急速なペースでマネタリーベースを増やすことで、1)金利やリスクプレミアム、2)企業や家計が安全資産からリスク性資産に資金を移すリバランス効果、3)デフレが染みついた期待の転換──を図る狙いを力説。その中で更なる金利引き下げ効果があるとして一部審議委員が追加緩和手段として提案した経緯もあり、市場でも期待のくすぶっていた付利引き下げは必要ないとの見方を示した。

日銀が現在毎月1000億円買い入れている年限が10年超の超長期債の買い入れ規模は今後担当部署が判断する。日銀は今回買い入れ対象を40年債まで広げるとともに、日銀が保有している国債の平均残存期間を従来の3年弱から6─8年に伸ばすと決めた。黒田総裁は「平均残存期間が7年程度になるよう、10年超の国債もバランスを取って買い入れる」と述べた。

これまで日銀は日経平均株価が1%下げた直後にETFを買い入れていた。ETFの買い入れ増額に伴い、株価に効果的な買い方を執行部で検討する、とした。

安倍政権と黒田総裁が提唱してきた異次元の金融緩和は、非アングロサクソン系の諸外国からは通貨安誘導につながるとして批判されることも多い。黒田総裁は中銀総裁として為替についてコメントできないとしつつも、「一般論として大幅に金融緩和した国の為替レートは下落する傾向がある」とし、円安効果があることを認めた。

今回の巨額の国債買い入れにより長期国債は「新発債の7割をグロスで買い入れる」ことになるが、「発行残高の7割ではないため、市場に大きなゆがみが生じることはない」と述べた。

日銀は、財政ファイナンス(穴埋め)懸念を払しょくするため、保有する国債の上限を紙幣(日本銀行券)が市中に出回っている量の範囲内に収める「銀行券ルール」を一時停止したが、「国債買い入れは自主的な緩和の方策で、財政ファイナンスの意図は全くない」と述べた。

(ロイターニュース 竹本能文;編集 宮崎大)


日銀は見事に期待に応えた=安倍首相
2013年 04月 4日 18:16 JST
[東京 4日 ロイター] 安倍晋三首相は4日午後、TBSとのインタビューで、日銀が決定した新たな金融緩和策について「今回の決定会合の結果を(黒田東彦・日銀)総裁から聞いたが、見事に期待に応えてもらったと思う」と述べた。

日銀は変わった、今後も大胆な金融緩和を期待=麻生財務相
2013年 04月 4日 17:32 JST
[東京 4日 ロイター] 麻生太郎財務相は4日午後、日銀の金融政策決定会合を受けて記者会見し、日銀の決定は量的・質的金融緩和と呼ぶにふさわしい大胆かつ広範な緩和策と指摘し、2%の物価安定目標の早期実現に向け、今後とも、大胆な金融緩和の推進を期待した。

金融政策としてできるものを小出しにせず一挙に打ち出したことを評価すると述べ、黒田東彦新総裁のもと、日銀は変わったと評価した。

<まさに次元の違う金融政策、「日銀は変わった」>

黒田総裁就任後、初の金融政策決定会合では、2年程度で2%の物価上昇率を目指す新たな金融緩和策を決めた。「質的・量的金融緩和」の概念を導入し、マネタリーベースと長期国債・上場投資信託(ETF)の保有額を2年間で2倍に拡大するとともに、長期国債買い入れの平均残存期間を2倍以上に延長することが柱。金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに変更し、年間60─70兆円に相当するペースで増加させる。

従来の枠組みを大きく見直し大胆な緩和策を打ち出した決定内容に、麻生財務相は「量的・質的金融緩和と呼ぶにふさわしい、大胆かつ広範なものと理解している」と指摘。2%の物価安定目標の実現に向け「まさに次元の違う金融政策に踏み込んだ」として「大いに歓迎している」と指摘。「日銀は変わった」と評価した。

今後の金融政策運営について、「今後とも共同声明に則って、2%物価安定目標の早期実現に向けた大胆な金融緩和を今後も推進することを期待する」と語った。

<黒田新総裁の手腕を高く評価>

最も評価する決定内容を聞かれると「できるものを一挙に小出しにしなかったこと」と述べ「兵力の一点集中投入」を評価した。新執行部が発足して約2週間。「極めて短期間に、これだけ大きな成果を迅速かつ果断にまとめてもらい、心から敬意を表する」と賛辞を送った。

そのうえで黒田新総裁の手腕について「やれるものは大胆になんでもやりますと言っていた。それを確実に実行した」と『有言実行』を挙げ、「能力として、極めて高い」と評価した。

<政府の財政再建への取り組みが「財政ファイナンス」の歯止めに>

一方で、日銀は、「財政ファイナンス」の懸念に対応して、緩和の行き過ぎを防ぐために自主的に設定していた銀行券ルールを「一時停止する」ことを決めた。

麻生財務相は「日銀券ルールを止めることに関しては、共同声明の財政再建が、その歯止めになる」と説明。財政健全化の取り組みを明記した「政府・日銀間の共同声明」を重く受け止めなければならないとし、政府として「財政健全化目標を達成するための中期財政計画を年央メドに作成する。持続的な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進していきたい」と決意を語った。

<市場の反応は予想の範ちゅう>

日銀決定を受け、株価は午前のマイナス圏からプラス圏に浮上し272円高で終了した。ドル/円は、95円半ばまで円安が進んだ。

市場の反応について財務相は「今やれることは全部やりましたという感じが、市場の評価につながったと思う」とし、「こういう決定がなされればこういう反応になるだろうという予想の範ちゅうだ」とした。ただ、円安が進んだことに関しては「為替について発言することはない」と言及を控えた。

(ロイターニュース 吉川 裕子:編集 佐々木美和)
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE93303T20130404

市場も驚いた異次元緩和、黒田日銀の「バズーカ砲」炸裂
2013年 04月 4日 16:42 JST

[東京 4日 ロイター] 黒田日銀の「バズーカ砲」に市場も驚いた。長期国債やETFの買い入れ額は市場の予想上限さえ上回ったことで、ドル/円は2円以上円安に振れ、約200円安だった日経平均は272円高まで急反転。10年債利回りは史上最低水準を更新した。

政策目標を金利からマネタリーベースの量に変更したことは、ボルカー元FRB(米連邦準備理事会)議長がとったインフレ退治政策以来の衝撃との声もある。

<ECBのLTROに匹敵>

黒田総裁就任からちょうど2週間。時間の乏しさや購入可能な資産は限られているとの見方から、今回の決定会合ではサプライズはないと高をくくっていた市場参加者も多かったが、黒田東彦日銀総裁が、就任後初の日銀決定会合で打ち出した金融緩和策は、予想されていた緩和メニューがほぼ盛り込まれ、各資産の購入額も市場予想の上限さえ超える内容となった。

長期国債の償還を考慮しないグロスの買い入れ額についての市場中心予想は月5兆円、上限でも6兆円だったが、今回の緩和では7兆円強になる見込みだ。長期国債購入の上限を定めていた銀行券ルールは一時、停止されることになった。上場投資信託(ETF)は市場規模が4.4兆円程度と小さいため、増額されても少額との予想が多かったが、これも市場予想を大きく上回り、ETF及びJ─REITの保有残高は、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買い入れることになった。

シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は、ドラギECB総裁のLTRO(長期流動性供給オペ)に匹敵するような黒田総裁の「バズーカ砲」がさく裂したと指摘。「現時点でできるものは全て出したという印象だ。打ち止め感さえ心配されるほどだが、海外勢は日本勢以上に驚きをもって受け止めそうであり、材料出尽くしにはしばらくならないだろう」との見方を示す。

<ボルカー以来の衝撃>

今回の「量的・質的金融緩和」では金融市場調節の操作目標をこれまでの無担保コール翌日物からマネタリーベースに変更し、年間60─70兆円に相当するペースで増加させる。「金利」からマネーの「量」にターゲットを変更したわけだが、市場では「政策目標がわかりやすくなり、市場とのコミュニケーションがとりやすくなる」(国内銀行)と好評だ。

三菱東京UFJ銀行シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は「1979年にボルカー元FRB議長が、米国のインフレを止めるために、マネタリーベースの量をターゲットにし、インフレを退治した。黒田総裁がデフレを止めるためにマネタリーベースの量を目標を変更したことは、それ以来のインパクトがある」と驚きを隠さない。

3月ADP全米雇用報告で民間部門雇用者数が5カ月ぶり低水準となったことで、今週末の3月雇用統計に警戒感が強まっている。米10年債利回りは1.811%に低下し、ドル/円も上値が重くなっているが、日本の10年債利回りは0.43%を割り込み、史上最低水準を更新した。「ここまで日本国債の利回りが押し下げられるとドル高/円安要因になる」(国内シンクタンク)との見方が多く、ドル/円は4日夕方時点で95円前半まで上昇。調整が続いていた日経平均も円安を好感し、一気に年初来高値を視界にとらえた。

ただ、中央銀行がマーケットに深く介入することで発生する「歪み」には警戒が必要だ。円債市場の財政規律に対する警告機能は事実上失われてしまった。企業業績も市場の期待ほどには回復していない。衝撃の「余韻」はしばらく続きそうだが、資産価格が経済実体から大きくかけ離れれば、反動も大きくなる。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 久保信博)
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情報BOX:黒田日銀「異次元緩和」、従来政策との違い一覧
2013年 04月 4日 14:50 JST
[東京 4日 ロイター] 日銀は4日、黒田東彦新総裁のもと物価2%の早期実現に向け金融緩和を強化するため、従来の政策の枠組みを大きく変更した。金融調節方針として、従来の「無担保コールレート(オーバーナイト物)」を目安とした金利目標を廃止し量的および質的な金融緩和に変更した。

長期の国債を含むリスク資産保有規模を拡大し通貨供給量を増やしていく。緩和度合を測る目安は、従来の「資産買入基金」の規模拡大から、マネタリーベースの規模に移ることとなる。

資金供給量の拡大による期待インフレ率の引き上げを通じてデフレ脱却を狙う。基金による従来の金融緩和の枠組みとの主な違いを並べた。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

従来の包括緩和政策            新政策━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●金融調節の金利目標

無担保コールレート(オーバーナイト物)  廃止

●緩和度合を測る目安

資産買入基金の拡大             マネタリーベースとリスク資産の規模拡大

●マネタリーベース規模

2012年末138兆円               2013年末200兆円 2014年末270兆円

●金融緩和継続期間

必要と判断される時点まで継続       物価目標2%を安定的に持続するために必要な時点まで継続

●金融緩和の狙い

金利や各種プレミアムの引き下げ     バランスシート拡充と金利・各種プレミアム引き下げ

●買入資産

国債や各種リスク資産            平均残存期間のより長い国債や各種リスク資産

●買入れ国債の残存期間

資産買入基金では最長3年         輪番オペと統合、7年程度に延長

●毎月の国債買い入れ

輪番オペ1.8兆円+              7兆円強

基金買入れ2兆円程度

●財政ファイナンス懸念の払しょく方法

銀行券ルール                 銀行券ルール一時停止、共同声明における政府の財政再建取組み
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93304D20130404?sp=true


26. 2013年4月04日 19:13:22 : xEBOc6ttRg
黒田日銀総裁の再任人事は国会承認の公算−渡辺みんな代表が支持表明

  4月4日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁を再任するための人事案が5日の衆参両院本会議で可決され、承認される公算となった。3月の採決では反対した「みんなの党」の渡辺喜美代表が再任支持を表明し、対応を決めていない民主党が仮に反対した場合でも過半数確保にめどが立ったためだ。
渡辺氏は4日、日銀が新たな金融緩和策に踏み切ったことについて「合格点をさし上げたい。この調子でいけば2年後、物価安定目標2%は達成できるだろう」と評価。再任人事案への対応に関して「マルでよろしいかと思う。最終的には明日の朝、政調で決める」と述べ、賛成する方向で調整する考えを示した。国会内で記者団に語った。
みんなの党は3月に退任した白川方明前総裁の残りの任期(8日まで)を黒田氏が務める人事には反対していた。3月15日の参院本会議は黒田総裁就任の同意人事案を186対34の多数で可決したが、この際に賛成した民主党は再任人事案への対応は金融政策決定会合の結果や国会質疑などを受けて決める方針を示していることから、野党側の対応が焦点となっていた。
参院は欠員があるため、現在の過半数は118人。自民、公明の連立与党と「日本維新の会」など、民主党以外に3月の黒田総裁就任人事に賛成した議員は111人になり、これにみんなの党(13人)が加われば過半数確保にめどが立つ。
5日は午前10時から衆院議院運営委員会、同11時から参院議運委理事会でそれぞれ黒田氏の所信聴取と質疑を実施。その後開かれる衆参両院の本会議で再任人事案を採決する。
最大野党の民主党は、今回対象となる黒田氏の任期(9日以降5年間)への対応については桜井充政調会長、前原誠司「次の内閣」財務相に一任している。海江田万里代表は4日の会見で、再任人事案への対応は5日の所信聴取後、衆参両院本会議までの間に判断する考えを示した。
更新日時: 2013/04/04 17:41 JST



黒田日銀総裁:必要なら「ちゅうちょなく調整」−一段の緩和示唆 (1)

  4月4日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は4日午後の会見で、同日の金融政策決定会合で打ち出した「量的・質的金融緩和」について、2年程度で2%の物価安定目標を実現するために「必要な措置はすべて取った」としながらも、「経済も金融も生き物なので、その時々の状況を見て、必要あればちゅうちょなく調整していく」と述べ、さらなる金融緩和を辞さない姿勢を示した。
総裁はその上で「現時点で考えられるあらゆる施策を動員して、2%の物価 安定目標を2年程度を念頭に置いて実現する。そのために必要な措置はすべて入っていると確信しているので、実際にも2年程度で物価安定目標を達成できるものと思っている」と語った。
今回の決定が為替相場に与える影響については「一般論として、他の要因が等しければ、金融を大幅に緩和した国の為替が下落する傾向があるというのはその通りだと思うが、それ以上、何か具体的に為替について申し上げるのは控えたい」と述べた。
日銀は4日開いた決定会合で「質的・量的金融緩和」を導入。消費者物価 の前年比上昇率2%という「物価安定目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すると表明した。そのための手段として、マネタリーベースは2年間で約2倍に、日銀の国債保有額とその平均残存期間を2年間で2倍以上に拡大する。ETFは年間約1兆円、J−REITについては同約300億円に相当するペースで増加するよう買い入れる。
付利引き下げは必要ない       
黒田総裁は長期国債の買い入れについて「10年超の超長期国債もバランスを取った形で買い入れていく」と表明。一方で、日銀当座預金の超過準備に適用している0.1%の付利については「金利を下げる必要はないという結論に達した」と語った。
指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを2倍に増やす一方で、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れを小幅にとどめた背景については、「ETFは潜在的に巨大市場だ。今のリスクプレミアム(上乗せ金利)の状況を見ると、まだまだ圧縮できる余地がある」と指摘。それに対し、REITは「市場がそれほど大きくない。今の条件の下では、それほど拡大する余地はない」と語った。
「量的・質的金融緩和」については、「これまでとは次元の異なる金融緩和だ」と言明。「戦力の逐次投入はせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」と述べた。また、マネタリーベースを新たな目標として掲げたことについては「日銀が出す通貨であり、分かりやすいし、学会的にも一番よく知られている指標である」ことを挙げた。
量的・質的金融緩和の継続期間  
マネタリーベースや長期国債の買い入れを倍増したことに関しては「2年程度で2%の物価安定目標に近づけ、それを実現するためには、これより少ない額では不十分だ。また、ここまでやれば、物価安定目標の達成が可能になる」と述べた。
日銀は「量的・質的金融緩和」の継続期間に関して、「2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する」と表明した。黒田総裁は「一時的に2%になっても、まだ安定的に物価安定目標が持続する状況でなければ、緩和を続ける」と述べ、「逆に、2%になってなくても、既に2%の物価安定目標が持続的に維持できるという状況になっていれば、それ以上の緩和は必要ないかもしれない」と語った。
今回の措置により金融市場でバブルが発生する可能性については「長期金利が跳ねるとか、資産バブルが膨れ上がるという懸念は持っていない」と指摘。「当然、そういったリスク、副作用には十分考慮しながら進めていくが、現時点でそういった重大な副作用が直ちに現れる可能性は極めて薄い」と語った。
長期金利は過去最低を更新
また、国債市場の現状についても「特に国債市場でバブルが生じているとは思っていない。イールドカーブ(利回り曲線)全体を引き下げようというのがまさに量的・質的金融緩和の中間目標なので、当然、価格は上がり、金利が下がると思うが、それは必要なことであり、バブルだとは思っていない」と述べた。
日銀の決定を受けて、同日の長期金利 は一時、前日比12.5bp低い0.425%と、2003年6月11日に記録した0.43%の過去最低水準を約10年ぶりに更新した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net

更新日時: 2013/04/04 18:38 JST

日銀は期待「はるかに超えた」、ドルは100円に−外為助言会社

  4月4日(ブルームバーグ):  外為助言会社アージェンテックスのカール・ジャニ最高経営責任者(CEO)が日本銀行の4日の緩和拡大後に述べた。*この日打ち出された措置は範囲も規模も市場予想をはるかに超えるものだった*新総裁が非伝統的な刺激措置への支持を取りまとめる十分な時間がないという見方が多かったが、この日のパッケージは疑念を払拭した*円・ドル相場が2009年半ば以来の水準に戻るのにそう長く待つ必要はないと思う*年末までに1ドル=100円を突破するだろう
原題:BOJ ‘Far Exceeded’ Expectations, USD/JPY to Reach100: Argentex(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先: 東証 Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/04 17:27 JST


債券は大幅高、長期金利は過去最低0.425%−日銀追加緩和で買い優勢
  4月4日(ブルームバーグ):債券相場は大幅高。日本銀行が長期国債の購入拡大などを軸とする金融緩和の強化を決めたことを受け、午後に買いが膨らんだ。長期金利は約10年ぶりに過去最低を更新したほか、超長期債利回りも大幅に低下。先物は最高値を更新した。
日銀は4日開いた金融政策決定会合で、金融緩和の枠組みを抜本的に見直し「量的・質的金融緩和」を導入。長期国債の購入について、資産買い入れ等基金を廃止し、成長通貨供給のために行っていた輪番オペに統合した上で、毎月の買い入れ額をこれまでの約4兆円から7兆円強に増やすことを全員一致で決定した。
みずほ信託銀行の吉野剛仁チーフファンドマネジャーは「日銀の決定内容は全部を盛り込んで出した感じ。あらかた選択肢の全部が入っている」と分析。「国債買い入れ年限の割り振りが出るまでは各年限への影響は判断しづらいものの、短い年限よりも、長期や超長期ゾーンなどへの資金の流入が続きそう。より高い利回りを求めた動きが続く」とも話した。
現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物国債の328回債利回りは前日比0.5ベーシスポイント(bp)高い0.555%で開始。午後の日銀会合結果発表後には急速に下げて、一時は12.5bp低い0.425%と、2003年6月11日に記録した0.43%の過去最低水準を更新した。
20年物の143回債利回りは1bp低い1.385%で始まり、午前は1.39%で推移した。日銀の決定が伝わると大幅に下げ、午後4時前には27.5bp低い1.12%と03年6月以来の水準を付けた。30年物の38回債利回りは一時29.5bp低い1.22%と、03年6月以来の低水準を記録した。
先物は146円台乗せ
東京先物市場で中心限月の6月物は1銭安の145円43銭で開始。午後1時半すぎまで145円50銭台を中心に取引された後、金融緩和発表を受けて、2時すぎには146円05銭まで急騰。これまでの最高値145円98銭を上回り、史上初めて146円台に乗せた。終値は前日比60銭高の146円04銭。夜間取引でも一段高となり、146円12銭まで上昇している。
DIAMアセットマネジメントの山崎信人エグゼクティブファンドマネジャーは、基金と輪番オペを統合した上での毎月3.8兆円から7兆円への増額は大きいと評価。10年債利回りは取引レンジが下振れ、目先1カ月は0.40−0.55%程度になると予想した。
3日の米国債相場は上昇。米10年国債利回り は一時1.79%と1月2日以来の水準まで下げた後、5bp低下の1.81%程度となった。米株式相場は反落。S&P500種株価指数 は前日比1.1%安の1553.69で終了。4日の円相場は日銀の金融緩和強化を受けて急落。対ドルで一時95円台後半、ユーロに対しても122円台後半を付けた。日経平均株価 は前日比272円34銭(2.2%)高の1万2634円54銭。

更新日時: 2013/04/04 16:41 JST


円急落、黒田日銀の緩和受け95円台-期待上回る内容で売り再燃

  4月4日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が急落。日本銀行が決定した金融緩和策を受け、円を売る動きが再燃した。
円は主要16通貨全てに対して下落。対ドルでは1ドル=92円後半から2円以上円安が進み、一時3月21日以来の安値となる95円56銭を付けた。円は対ユーロでも1ユーロ=119円前半から一時122円63銭まで急落。122円台を付けるのは3月25日以来となる。
日銀は黒田東彦新総裁の下で初めてとなる金融政策決定会合で、長期国債の購入について、資産買い入れ等基金を廃止し、成長通貨供給のために行っていた輪番オペに統合した上で、グロス(全体)の買い入れ額をこれまでの月額約4兆円から、毎月の国債発行額の7割に当たる7兆円強とすることを決めた。決定は全員一致。
野村証券金融市場調査部の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、日銀の金融緩和について「ほぼ全ての面で期待値か期待を上回る内容になっている」と指摘。「ここまでアベノミクスとは失望知らずできたが、今回も黒田日銀の最初の会合でポジティブ・サプライズになった」とし、「長期的な円安トレンドを強化する内容と言っていい」と話した。
期待を上回る緩和
日銀は今回、金融市場調節の操作目標を無担保コール翌日物金利からマネタリーベースに変更し、これを年60兆−70兆円ペースで増加させることも全員一致で決めた。長期国債の買い入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債とし、日銀の長期国債保有残高を日銀券発行残高以下にとどめる「日銀券ルール」の一時停止も決定。ETF、REITの買い入れ拡大も全員一致で決定した。
池田氏は、日銀の決定内容について、「今回は期待値が高く、さすがに難しいと思われていた中で、期待を上回る内容となったということで、マーケットの今後の黒田日銀に対する期待感というのはおそらく強化されただろう」と語った。
また、大和証券の亀岡裕次チーフ為替ストラテジストは、一部には日銀が今月2回目の会合で最終決定するという見方もあったので、「現実に1回目で決まったということもプラスに働いた」と言い、「でき得ることはだいたいやったという感じだ」と話した。
ECB会合
一方、この日は海外時間に欧州中央銀行(ECB)の政策決定会合も開かれる。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査では、56人中54人がECBが政策金利を過去最低の0.75%に維持すると予想。残り2人は0.5%への引き下げを見込んでいる。  
三菱東京UFJ銀行米州金融市場部マーケティンググループの村尾典昭マネジングディレクター(ニューヨーク在勤)は、「欧州景気が良くないことは事実だし、ドラギ総裁の会見も含めて利下げに向けて何かしらの一段のヒントを与えるようなことを言ってくるか」が焦点だと指摘。緩和について踏み込んだ発言が出てくれば、ユーロは対ドルだけでなく対円でも上値が重くなる可能性があると語った。
円主導の展開の中、ユーロ・ドル相場は小動き。ただ、午後はユーロの上値が重くなり、1ユーロ=1.28ドル半ば付近から前半へ弱含んだ。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/04 16:27 JST


ドイツ銀を中銀が調査、金融危機中に損失隠しとの指摘-関係者

  4月4日(ブルームバーグ):ドイツ連邦銀行(中央銀行)は同国最大の銀行であるドイツ銀行 について、元従業員が指摘した金融危機中の損失隠しの疑いを調査している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者が匿名を条件に述べたところによると、中銀の調査は進展した段階にはなく、当局者が元従業員の訴えの信ぴょう性を確認しているところだという。独当局者らは元バンカーなど関係者からの聞き取り調査のため来週にニューヨークを訪れる計画だと英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が3日に報じていた。
ドイツ銀の広報担当、ミシェル・アリソン氏は指摘は真実ではないとして、「慎重かつ徹底的な調査を行ったが全く根拠のないことが分かった。この問題について、これまでも今後も全面的に当局に協力する」と電子メールでコメントした。
シュテファン・クラウス最高財務責任者(CFO)は昨年12月に、損失隠しの指摘を受けて同行が内部調査のため法律事務所を起用したことを明らかにしていた。
原題:Deutsche Bank Said to Be Probed by Bundesbank Over Losses(1)(抜粋)
更新日時: 2013/04/04 16:48 JST


「最後のタカ派」豪中銀総裁襲う通貨戦争−再任後も挑戦続く

  4月4日(ブルームバーグ):インフレ抑制を重視するタカ派のスティーブンス豪準備銀行(中央銀行)総裁の再任が決まった。向こう3年の任期で同総裁は、国内景気を圧迫する自国通貨高対策をめぐって、通貨価値の押し下げ効果があるゼロ金利や量的緩和などの政策を取る主要国中銀総裁らに再び挑むことになる。
スティーブンス総裁は政策金利 を53年ぶりの低水準である3%に引き下げたが、オーストラリア・ドルは米欧や日本との金利差を背景に堅調さを維持している。自国通貨の対ユーロ相場に上限を設けているスイスや、住宅価格抑制のために融資規制を検討するニュージーランドなどとは対照的に、スティーブンス総裁が使える主要ツールは、あくまでも政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートだ。
野村ホールディングスの金利ストラテジスト、マーティン・ウェットン氏(シドニー在勤)は、「スティーブンス総裁を待ち受ける最大の課題は豪州の景気に打撃を与えている通貨だ」と指摘。「総裁は最後のタカ派の1人だが、その地位を保持できるだろう。豪経済は21年間にわたって拡大しており、成長維持のためになりふり構わぬ措置を講じる必要がないという、他がうらやむ立場にあるからだ」と述べた。
豪ドルは過去2年間、それ以前の10年間に比べて平均39%高かった。スワン豪財務相の指名により任期延長が決まったスティーブンス総裁はこの間、通貨問題に取り組んできた。豪ドル高は安価な輸入品に対抗できない製造業者を破綻に追い込み、海外からの観光客を敬遠させている。また、鉱業投資増加に沸く北部と西部の資源が豊富な地域と、停滞する製造業・建設業が多く占める南部と東部との分裂を深刻化させてきた。
ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)の市場調査責任者、ピーター・ジョリー氏は「豪ドルが高値を維持し、成長率が過去の水準を若干下回ったままだったら景気を支えるために利下げを継続するだろうか。これが向こう数年の金融政策決定における最大の課題となる」と述べた。
原題:Last Hawk Stevens Faces Currency War Fallout in New Term(1)(抜粋)

更新日時: 2013/04/04 15:33 JST



韓国政府が中銀に利下げ圧力−政策決定会合を1週間後に控え

  4月4日(ブルームバーグ):韓国政府は韓国銀行(中央銀行)が利下げに慎重な姿勢から脱却する必要性を示唆しており、金融政策決定会合を1週間後に控え金融当局者に圧力をかけている。
韓国大統領府の趙源東(チョ・ウォンドン)経済首席は3日、国債発行の必要性が生じるかもしれないことを勘案すると、中銀が利下げすれば「より良いだろう」と述べた。同首席は朴槿恵大統領との会合後、予告もなく大統領府のプレスルームを訪れて発言した。会合では企画財政省の当局者が2013年の予算や政策について報告書を提出した。
債券利回りは過去最高水準に低下している。韓国中銀の金仲秀総裁は2月に流動性は「潤沢」と述べたが、7−12月(下期)の景気下降回避で新政権から刺激策を求められている。ローレンス・サマーズ氏が共同執筆した1993年の論文によると、中銀の独立性拡大はインフレ率の低下と関係がある。同氏はその後、オバマ政権で国家経済会議(NEC)委員長を務めた。
ハンファ投資証券の債券アナリスト、コン・ドンラク氏(ソウル在勤)は「少なくとも1990年代半ば以降で前例のない圧力だ」と指摘。1月と2月の政策決定会合の議事録や同総裁の最近の発言では「利下げの意向はほとんど示されていない。利下げは中銀の独立性喪失を意味することは誰もが分かるだろう」と述べた。
原題:South Korea Government Adds Pressure on BOK to Lower Rates(1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ソウル Eunkyung Seo eseo3@bloomberg.net;シンガポール Kyoungwha Kim kkim19@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Regan jregan19@bloomberg.net;Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/04 14:52 JST


27. 2013年4月04日 20:47:39 : xEBOc6ttRg
焦点:ロケットスタートの黒田日銀、市場好感も道のり険しく
2013年 04月 4日 18:52 JST
[東京 4日 ロイター] 新体制の日銀が打ち出した緩和策に市場は大幅な円安・株高・金利低下で反応し、黒田東彦新総裁はロケットスタートを切った。しかし金融市場が好感することと、これで物価目標2%や景気浮揚を実現できるかどうかは別の話。

インフレ期待に上昇の兆候はみられるものの、それが消費や投資に向かうルートはいまだ不確実性が強い。物価だけが先行して上がり、肝心の賃金上昇や成長戦略が遅れれば、景気が悪化しかねない。最大限とも映る政策を打ってしまった後の黒田日銀が今後市場のさらなる期待にどう応えていくのか、手腕が問われるのはこれからだ。

<期待への働きかけ、多様なルートで波及>

黒田新体制となって初めての決定会合は、市場の予想以上に大規模な金融緩和が打ち出された。アベノミクスと一体となって市場のインフレ期待に働きかけ、円安、株高、金利低下に働きかけ、早期のデフレ脱却を実現しようという狙いは、ひとまず成功したと言えそうだ。

一般の人々が1年後に物価が上がるとみている割合も、このところ急激に上昇している。2月消費動向調査では、上昇するとの見通し割合は、リーマンショック前のミニバブル期の初期段階の70%まで増加、ここから内閣府が試算した期待インフレ率は1.76%と相当高い水準にある。円安などによるガソリン高や食料品高など、身の回りの物品の価格が上がっていることが背景にある。

一方、実際のモノや土地の取引にも少しずつ波及している。株高による資産効果により、百貨店での金の装飾品など高額商品販売や、高級自動車販売好調のほか、土地取引にも資産運用などの動きが見られる。不動産業者からは「政権交代後、急激に不動産流通マーケットが好転。リートの新規物件所得意欲は強い」との声が聞かれる。長野県の軽井沢などの別荘地も、個人が物件を取得し始め、地価が上がり始めた。みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏は「今日の会合で日銀によるREITの購入はせめて200億円以上ほしい」とみていたが、結果的に日銀は14年末までに600億円買い増すことを決定。土地の流動化にもポジティブな決定となった。

<伴わない賃上げ、円安で調達コスト上昇も>

もっとも、インフレ期待の醸成から、実体経済の活動が活発化し、持続的な景気回復と物価上昇の好循環が始まった、と言い切るには時期尚早だ。伊藤忠経済研究所の丸山義正・主任研究員は、日銀が掲げる物価目標2%について、「従来は全くゼロの可能性だったが、2、3割の可能性で達成可能性が出てきた」としながらも、「これまで日本経済が経験したことのない目標であり、達成に向けたハードルは極めて高い。今回の一連の方策を踏まえても、現時点で2年での達成が視野に入った、もしくは達成の蓋然性が高まったと論じるのは困難」と指摘する。

これまでのところ、需給ギャップ縮小の最大のカギを握る企業の設備投資と賃金引上げには、ほとんど動意が見られない。1日発表の3月日銀短観では、13年度大企業製造業の設備投資は過去2年を下回る当初計画となり企業の慎重姿勢に変化がなかった。今年の春闘も、ベースアップを実施した大手企業はわずかで、ほんとんどが業績見合いの一時金の引き上げにとどまった。

急激な緩和で円安が進みすぎれば、企業による原材料調達の見直しも追い付かなくなる。すでに東京商工会議所などには、資材調達資金に不安を感じる中小企業が借入の相談に訪れ始めている。日本総研の山田久・調査部長の試算によると、円安が国民総生産に与える影響が最も大きくなるのは1ドル90円台前半。足元の水準で安定するのが望ましいという。

<最大限のスタート、今後の緩和の行方は>

黒田総裁が最初から市場のサプライズを引き出すことに成功したことが、かえって今後の政策展開の足を引っ張る可能性もある。このまま、急激な緩和をすすめることの実体経済への副作用は前述のように「見えないコスト」(山田氏)となって、蓄積していく恐れがある。伊藤忠経済研究所の丸山氏は「企業が期待を持てればプラスの側面が景気回復につながるが、コストプッシュが先行すれば、物価だけ上昇して景気が悪化する可能性もありうる」と話す。

黒田総裁は会見で「戦力の逐次投入はしない、現時点で必要な政策は全て講じた」と発言した。しかし、サプライズは時間の経過とともにいずれ薄れる。「政策は最大限の政策を実行してしまうと、そのあと市場の期待にどう応えていくのかという懸念がある」と、日本総研の山田氏は言う。その上で「本来は必要最小限で行うことが望ましい」と述べ、次回以降の政策に一抹のリスクを感じるとしている。 (ロイターニュース 中川泉;編集 久保信博


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