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かくも危険な重責を負った日銀   “悪い円安”に転落するか土俵際  もう1つのアベノミクス 「国土強靭化」の正体
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/394.html
投稿者 eco 日時 2013 年 3 月 19 日 01:08:28: .WIEmPirTezGQ
 

かくも危険な重責を負った日銀

2013年3月19日(火)  FINANCIAL TIMES

日銀は今後、黒田東彦新総裁の下、積極的金融緩和策により2%のインフレ達成に挑む。だが、問題はインフレを起こせるかというより、インフレ率を適正に制御できるかだ。想定以上のインフレの発生は、日本のみならず世界経済をも混乱に陥れるリスクを伴う。

 日本の安倍晋三首相が、世間を驚かせ続けている。首相はこれ以上はあり得ないほど過激なチームを日銀のトップに指名した。これまで日銀は消極的だったと批判してきた黒田東彦氏が日本の金融政策を担うことになる。

 黒田氏は年率2%のインフレを実現させたいと思っているだけでなく、中央銀行の力でこの目標を達成できると考えてもいる。この点は疑う余地がない。

 黒田氏は、政府と新副総裁となる岩田規久男、中曽宏両氏の支持も期待できるだろう。日銀の職員には納得しない人もいるかもしれないが、政策を転換することはほぼ確実のようだ。


3月5日、黒田東彦氏は衆議院での所信聴取で、「量的にも質的にもさらなる緩和が必要」と発言、政策転換の方針を鮮明にした(写真:ロイター/アフロ)
デフレが深く浸透している日本

 問題は新たな政策が成功するかどうかだ。そして、「成功する」とは、実際は何を意味するのか、だ。

 この問題を考えるに当たっては、日本が奇妙な状況にあるという事実を認識するところから始める必要がある。

 まず、日本ではデフレが極めて深く浸透している。調査などではデフレの浸透ぶりは表面化していないかもしれないが、債券市場における日本の10年物国債利回りは0.66%という低さ。加えて、短期金利でさえ実質金利はプラスで推移しており、日本ではデフレが実にしぶとく続いてきた。

 しかも、日本では債務の配分が民間部門から公的部門へとシフトしてきた。英国の経済助言会社スミザーズ・アンド・カンパニーによると、非金融法人企業部門の純債務は1995年には株主資本の150%だったが30%に低下。一方、政府の純債務は96年末のGDP(国内総生産)比29%から2012年末には同135%に跳ね上がっている。

 こうした事実は実に深い意味合いを持つ。第1にデフレに終止符を打つことは、1990年代後半に終止符を打つのに比べはるかに難しいということだ*1。

*1=当時よりデフレマインドがすっかり浸透しているうえ、国の活力は低下、人口の高齢化も進んでいることを指していると思われる
 第2にインフレ率が高くなり、その結果、実質金利がマイナスになれば、人々に消費を促すことになり、少しは事態の改善につながるということだ。

 第3にマイナスの実質金利は、政府の債権者から将来の納税者へと富を再配分することにもなる。

まず実質金利をマイナスにすべし

 マイナスの実質金利は、インフレ率を想定している以上に高くするか、金利を抑えることによって達成できる。日本の当局が、実質金利をかなりのマイナスにしたいと望んでいるかどうかははっきりしないが、当局は実質金利をかなりのマイナスにすべきだろう。たとえ、マイナス金利が政治的な反発を招くリスクを生むとしても、だ。

 次に考えるべきは、いかにこれを実現し、どれだけ透明性を確保すべきか、という点だ。例えば、日銀は1つの選択肢として、2%のインフレを目指すと言いながら、実際にはそれより高いインフレをもたらす可能性の高い政策を実行することができる。ただし、これはいわば国民を欺く政策と言え、危険が伴う。

 そうではなくて、もっと高いインフレ目標を発表すると同時に、名目金利は低い水準で長期間続けると発表する、という選択肢もある。これは公然たる「インフレ税」とでも呼ぶべき政策となる。

 いずれを選ぶにせよ、一時的な物価ないし名目GDPの水準に目標を設けることで、政策を補強することはできる。なぜ、こんなことを指摘するのかと言えば、それは日本のように長年デフレから脱却できなかったような極端なケースでは、「過去は過去として済ましてしまえばいい」ということにはならないからだ。どういうことか――。

普通の目標ではデフレ脱却不可能


(出所:トムソン・ロイター・データストリーム)
 現在の物価水準は、97年以降、年間インフレ率が2%で推移した場合より実に30%も低い(グラフ参照)。同様に名目GDPも、日本経済が年間3%の成長を続けたと想定した場合に比べ、40%も小さいのである。

 もし日銀が今、97年以降、毎年3%の成長が続いた場合の名目GDPの水準を取り戻そうとするのであれば、それは今後10年間、毎年9%近い成長率を達成しなければならないことになる。

 こんなことを万が一、達成できれば、債務の実質負担は間違いなく軽減できる! その場合には、政策立案者たちはその後のインフレ目標を2%に戻してもいいだろう(グラフ参照)。

 これはあくまでも1つの考え方を示しただけで、推奨しているわけではない。何を言いたいのかというと、それくらい過激な政策を実施しない限り、日本の経済に対する見通しを早々に変えることはできない、ということだ。

 つまり、普通の目標を掲げている程度では、デフレからの脱却には不十分だ、と指摘したいのだ。

 問題は、新たな目標を掲げればいいだけではない。どんな政策ツールを使うかも重要だ。日銀を率いる新たなチームは、政府の財政赤字の補填(マネタイゼーション)も含め、今以上に様々な資産を買い入れることを検討する必要がある。

 英サウサンプトン大学のリチャード・ヴェルナー氏はかねて、財政の補填を行う最善の方法は、政府が銀行から直接、資金を借り入れることだと主張してきた。筆者が2月13日付のコラムで述べたように、極端なことを言えば、日本は「ヘリコプターマネー」を使ってもいいかもしれない*2。

*2=筆者は2月13日付のコラムで、金融危機後、金融機関の貸し出し拡大による景気浮揚が難しい場合、政府は財政赤字が拡大しても積極的に財政出動を行うべきで、財政赤字を埋める財政ファイナンスがいかなる場合も正しくないという見方は間違っているとの主張を展開した
 日銀はこれまで、金融政策によってインフレ率を引き上げることはできないとの見解を示してきた。これは、驚くほどの想像力の欠如を示している。

 日銀は理論的にはカネに糸目をつけなければ、世界中のすべての資産を買おうと思えば買える。その場合、円の購買力は確実に低下することになる。

 要するに問題はインフレを起こせるかではなく、インフレを起こした場合、それを制御できるのかという問題だ。特にしぶといデフレに対する根強い予想を変えようとしている時に制御できるのか、という問題である。

 今回の政策転換という挑戦に伴うリスクは、いわば「レンガをゴムひもで引っ張るようなもの」だ。つまり、最初はなかなかインフレが起きないものの、どこかの時点で突然、求める以上のインフレになる、というリスクだ。

 目標設定が大事なのは、このためだ。デフレから脱却し、インフレを目指すという政策転換をするには、その政策が信頼に足るものであると同時に、政策をしっかりと制御できることが重要な条件となる。

直面し得る2つの危険

 今回の政策転換は、2つの大きな危険を招くと予想できる。2つは相互に関連し合った危険だ。

 第1の危険は、日銀が取る新たなアプローチが、諸外国から「意図的に近隣窮乏化策を目指す試みだ」と見なされる可能性があり、その結果、危険な報復をもたらしかねない、というもの。

 第2の危険は、円を保有している投資家が円から逃避することを促し、その結果、円相場が暴落、インフレの急騰を招く恐れである。

 第1はすぐにも発生しそうな危険で、第2はもっと時間を経て発生する危険だ。だが、いずれも、今回の政策転換が、正常な状態へ戻る確かな出口戦略によって裏づけられている必要性があることを示している。

 最後に、金融政策を急進的に変更すれば十分なのか、という点に触れておきたい。その答えは「ノー」だ。

 短期的には政府は財政赤字をマネタイズできるし、そうすべきだ。だが、長期的には経済を再び均衡させ、政府が創出した需要への依存から脱却する必要があるし、政府は最終的に構造的財政赤字を減らさなければならない。

 これを実現するには、日本の民間部門は、政府部門の赤字に対応する構造的な資金余剰を減らす必要がある。それには、日本の企業部門は長期的に投資から得た内部留保の余剰を削減しなければならない。

 民間部門が余剰資金を減らさなければ、経常収支の黒字を増やし続けることになる。これは世界第3位の経済大国が今取ってはならない策だ。余剰資金を減らさなければ、現在、過剰貯蓄に苦しんでいる世界経済を不安定にすることになるからだ。

 日本は今、長く地上でくすぶっていた金融政策の凧を飛ばそうとしている。この点について、中央銀行の独立性が侵害されたと主張する人もいるだろう。その指摘に対しては、日銀は物価安定の使命を果たせなかったではないか、と反論したい。

 問題はむしろ、日銀の新たなチームが国内経済や世界経済を不安定にすることなく、インフレ率を引き上げ、実質金利を引き下げることができるかどうかだ。もしかしたら2%のインフレ目標達成に向けて尽力することで、必要な成果を上げられるかもしれない。

 しかし、筆者は少なくともしばらくは、物価か名目GDPの水準を対象としたもっと急進的な目標設定が必要ではないかと考えている。

 日銀を率いる新たなチームは、十分な成果を上げられないような政策は避けるべきだ。たとえ結果的に予想以上の事態を招くリスクを冒すことになっても、だ。多くの決断と多少の幸運が必要になる。世界は新たなチームの幸運を祈るべきである。

Martin Wolf
(©Financial Times, Ltd. 2013 Mar. 5)
解説
 「(日銀の打つ)対策が小さ過ぎても効き過ぎても日本は危機に陥る――」
 本コラムを書いた英フィナンシャル・タイムズ(FT)の経済担当のチーフコメンテーター、マーティン・ウルフ氏は3月8日、FT電子版で流した「日本のアベノミクスと世界経済」と題したポッドキャストで、2%のインフレを起こすという日銀が抱え込んだ課題の難しさを改めてこう強調した。
 「対策が小さ過ぎるリスク」とは、「黒田氏のチームが政策を実行する過程で自分たちの課題の大きさを認識するに至り、怖じ気づいて結局、多くをできず事態があまり変わらない」こと。この場合、「デフレを一時的には食い止められても、日本はデフレが浸透しているうえ構造問題も抱えることから状況は改善せず、世界でさらに存在感を失い、どこかで債務危機に陥る」。
 一方、「効き過ぎ」とは本文でも「レンガをゴムひもで引っ張るようなもの」と表現したが、「どこかの時点から想定以上のインフレとなり、制御不能に陥るリスク」だ。ウルフ氏は「どれほどのインフレになるかは神のみぞ知る」と前置きしたうえで、「円が暴落すれば世界中から非難を浴び、日銀はどこかでインフレを抑えるべく引き締めの必要に迫られる。だが、それは国債の利回り急騰という債務を制御できなくなる事態に陥るリスクをはらむ。その場合、国債価格が暴落し、ひいては大量の国債を保有する金融機関が破綻、経済が大混乱に陥ることにつながるからだ」と説明する。
 つまり、日銀は何としてもこの2つのリスクの間を上手にくぐり抜けつつ、適度なインフレを起こして日本経済の浮揚を図る必要があるわけで、「それは極めて難しいリスクの伴う重責だ」と指摘する。
 ただ「このまま何もしない選択肢はあるが、その場合日本の存在感はさらに薄れ、10〜20年後には債務危機が現実のものとなり対応のしようもなくなる。そう考えれば世界経済をも不安定に巻き込む危険があるとはいえ、日本の政策転換は挑戦する意味があることを我々は理解すべきだ」と強調した。
 世界経済のためにも政策転換を成功させなければならない日本。日銀が負った責務は重い。
(石黒 千賀子)http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130314/245022/?ST=print


 


 


【第49回】 2013年3月19日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)
15年に1ドル=115円を想定
“悪い円安”に転落するか土俵際
 円安と株高の好循環が続いている。日本銀行は黒田東彦新総裁を迎えて「これまでの次元を超えた」金融緩和に踏み出そう。ただし、量的緩和それ自体のマクロ経済的効果は限られる。米景気回復という追い風がなければ、日本の景気も物価も容易には浮揚できない。ただ幸いなことに、米経済は順調に自律回復しつつある。それに沿ってドル高・円安地合いが続くことで、日本の消費者物価指数(CPI)もじわりと高まる。

 実はドル円の長期トレンドは、日米の購買力平価(PPP)に沿って推移してきた(グラフ参照)。日本のインフレ率はこれまで趨勢的に米国を2%程度下回っていたため、ドル安・円高が基調として続いた。もしアベノミクスが奏功して今後2年程度で日本のCPI上昇率が1.5%へ上昇するなら、米CPIもまた3%かそれ以上になる可能性が高い。PPPは円高方向の右下がりのままだろう。


拡大画像表示
 過去、ドル円の景気循環に沿った変動はPPPを中心に上下20〜30%程度であった。今後ドル円の上昇がPPP(=75〜80円)から30%上方までとして、2015年に100〜105円とのめどは十分妥当性のあるシナリオの一つだ。安倍相場によってすでに90円台後半に至っているため、15年の105円は随分控えめに思えよう。過去の例では05〜07年の展開と似ているかもしれない。このとき、ドル円は05年に101円から121円に急伸したが06〜07年のピークは124円にとどまった。

 もっとも、15年に110〜125円に至る可能性が無視できなくなっている。最近の円高トレンドは07年から5年続いた。過去の循環変動の例では、1990〜95年の5年間に160円から79円へ円高となり、その後98年に147円まで円安になった。

 さらに、循環的ばかりかドル円が11年の75円で歴史的にピークアウトしたかもしれない。グラフで95年まで実質円高の領域(PPPより下方)を推移しがちだったドル円が、近年は専ら実質円安領域(PPPの上方)にある。これは日本経済の低パフォーマンスの反映であり、将来のインフレの潜在的兆候といえる。

 120円前後の円安実現の背景にはかなりの額の資金フローを想定する必要がある。最近まで安倍相場の加速的円安は、過去5年間の円高基調に沿って積まれたポジションの修正によるところが大きい。円安への歴史的転換がすでに起きているとするなら、円資産選好が過剰に強かった日本マネーがいよいよ海外シフトを本格化したり、日本企業が海外ネットワーク構築をはるかに大規模に展開するなど、過去50年の円高トレンドに沿ったポジションの大規模修正が視野に入る。

 ただし向こう2〜3年で120円超の円安シナリオは、過剰な資本流出、悪いインフレ、日本国債へのリスクプレミアム発生といった「悪い円安」として分析すべき要素が多くなる。アベノミクスと円安の効果をポジティブに捉えられるぎりぎりの水準として、15年115円を目下想定している。

 (ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
http://diamond.jp/articles/-/33421

 

もう1つのアベノミクス 「国土強靭化」の正体 

推進派と懐疑派の双方に聞いた「国土強靭化」 旧建設省と旧経企庁OBが持論を展開

2013年3月19日(火)  木村 駿

 安倍晋三内閣が掲げる「国土強靭化」──。かつて官僚として行政の現場を知り尽くした論客はどう見ているのか。旧建設省OBの脇雅史・自民党参議院国会対策委員長と旧経済企画庁OBの原田泰・早稲田大学政治経済学術院教授の2人に聞いた。
(前回の「大型補正で問われる「公共事業復権」の是非」から読む)

「年間10兆円が少なくとも必要」

公共事業による景気対策は、従来型のバラマキにつながるのでは。

脇:相変わらずの類型的な批判というか、批判のための批判に聞こえます。そもそも、縮小均衡路線を続けてきたことが、日本経済の停滞を招いたのではありませんか。


脇 雅史わき・まさし)氏
自民党参議院国会対策委員長
1945年生まれ。67年に東京大学工学部土木工学科を卒業し、建設省に入省。近畿地方建設局長などを歴任して97年に退官。98年に参院議員に初当選し、現在3期目。自民党の参議院国会対策委員長を務める。国土強靱化基本法案の作成を指揮した(写真:日経コンストラクション)
 そうはいっても批判には答えられるようにしておかなければならない。デフレから脱却して中長期的に財政規律を保つために必要な投資であることを、政府は経済のマクロモデルを使って示す必要があります。

 注意しなければならないのは、2012年度補正予算はあくまでデフレ脱却に向けた緊急措置である点。インフラ整備は本来、時間をかけて計画的に執行すべきで、1年や2年で終わる類のものではありません。

 我々は小泉政権下で「計画があるから無駄な公共事業が生まれるのだ」という批判に負けて、あるいは自ら進んで全国総合開発計画を反故にした。本当に愚かなことでした。

 さらに民主党政権は、改革と称して「何をやめるか」という発想で突き進んだ。後ろ向きの姿勢で国家の将来像は描けない。事業仕分けはその代表例です。非難合戦になるだけで、それこそ「無駄」な作業ですよ。

 ですから、安倍総理と麻生財務相には「長期計画をきちんとつくってください」と申し上げています。

計画とはどのようなものですか。

 野党時代につくった国土強靭化基本法案では、国土強靭化に向けた基本計画を国や都道府県、市町村が策定するとしている。この基本計画に当たるものです。法案は国会に再提出しますが、計画づくりは同時並行で作業していく必要があります。

 まずは「自分たちの地域をこうしたい」という地方の考えがあって、それをもとに国家としての方向性をつくっていく。ただ、方針が無いなかで自治体に計画をつくれと言っても難しいでしょうから、今夏までに国が大綱のようなものを示し、都道府県や市町村を巻き込んで計画づくりの号令を出してほしいと古屋国土強靭化担当相にお願いしています。

必要な投資規模は。

 既に年間5兆円規模の投資では現状維持もできない。老朽化対策や維持・更新の費用をきちんと確保し、なおかつデフレから脱却するには、少なくとも毎年10兆円ぐらいの公共事業が必要ではないかと思います。防災・減災対策を考えると、もう少し上乗せが必要かもしれない。

 財政の状況を踏まえ、長期計画をもとに「5年で100兆円ならここまでできる」といった具合に決めていく。12年度補正予算と13年度当初予算には、差し当たって緊急性や優先順位の高い事業を入れたと理解しておけばよいと思います。長期的な視点を反映するのは14年度当初予算から。今夏の概算要求に向けて作業していくことになるでしょう。

「一人当たりいくら掛かるか考えよ」

国土強靭化をどう思いますか。


原田 泰(はらだ・ゆたか)氏
早稲田大学政治経済学術院教授
1950年生まれ。74年に東京大学を卒業後、経済企画庁に入庁。経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミストなどを経て、2012年4月から現職。著書に「日本国の原則」(日本経済新聞出版社)、「震災復興 欺瞞の構図」(新潮社)などがある(写真:日経コンストラクション)
原田:国土を強靭化することは必要だと思いますが、人がほとんどいない場所に、多額のお金を掛ける必要があるのでしょうか。むしろ、人を別の場所に移すということも考えた方がいいと思います。

 少し高い所に家を建ててそこに移れば、巨大な防潮堤を作らなくても済みます。防潮堤のために、一人当たり一体いくらのお金を掛けているのか考える必要があります。

 住民のなかには、「防潮堤を造るくらいなら、そのカネを俺にくれ」と考えている人は大勢いると思います。移転費用の一部を一人ひとりに支給した方が安く済むでしょう。防潮堤なら国が全部お金を出すのに、個人が高台に家を建てるお金は出さない。それはおかしいと思います。

公共事業より個人に対して直接、税金を使うべきだと。

 私は、「コンクリートから人へ」という考えは正しいと思っています。コンクリートで本当に人々を有効に守れるのならばいいが、その有効性は高くありません。

 お金を有効に使うには、自治体に一括で渡してしまうことです。一番いい使い道を自分たちで考えるようになれば、もう少しましなことに使うはずです。

 さらに、地方に配るお金は減らした方がいい。ただ減らすだけでは相手が怒りますから、減らすと同時に使い道の自由度を高める。そうすれば、自分たちにとって最適なインフラとは何かを真剣に考えるようになります。

地方の自由度を高めた一括交付金は廃止されましたね。

 国が使い道を示してお金を渡している限り、それは命令しているのと同じです。国主導の大きな政府になっているように見えます。

 結局、子ども手当もそうですが、一度決めてしまうと選挙で票にならない。継続的に出るかどうか分からない予算が、脅しが効く。言うことを聞かせるためには、公共事業が便利なんです。

緊急経済対策については。

 安倍首相が景気対策を金融政策でやると言ったことは画期的だと思います。金融政策によってお金の回りがよくなり、結果として景気が上向くことなので、無駄は生じない。

 別に、景気対策で公共事業をやらなくてもいいんです。お金を増やせば円安になる。円安になるだけで、世の中は大きく変わってきます。

公共事業以外に使う?

 別に使わなくてもいい。お金を増やすというのは、日銀からの国庫金収入が増えることですから、それを使わずに少しでも財政再建しておけばいい。公共事業を増やすことは円高要因ですから、公共事業をやらずに金融緩和だけ実施していれば、もっと円安になるはずです。

(この記事は、日経コンストラクション2013年2月25日号の特集「国土強靭化の正体」を再編集したものです。次回は3月21日木曜日に掲載する予定です)


木村 駿(きむら・しゅん)

日経コンストラクション記者


もう1つのアベノミクス 「国土強靭化」の正体

 「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を掲げ、公共事業による景気対策に積極的な安倍晋三内閣。自民党が野党時代から提唱してきた「国土強靭(きょうじん)化」の推進に向けて、まずは2012年度補正予算と13年度当初予算に合計7.7兆円もの公共事業関係費を計上した。建設業界は歓迎の意向を示しているが、事業の中身や進め方によっては、世間の批判が一気に高まる危うさもはらむ。おぼろげながら見えてきた国土強靭化の正体を、大型補正予算の内容と公共事業を巡る議論から探る。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130315/245073/?ST=print
 

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01. 2013年3月19日 01:23:33 : xEBOc6ttRg
流通が先走る「賃上げの春」

鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長インタビュー

2013年3月19日(火)  山崎 良兵 、 中川 雅之 、 山根 小雪

安倍政権が提唱する「賃上げ要請」に呼応する企業が相次いでいる。毎年春闘で先導役の製造業ではなく、流通業が主導する異例の展開だ。消費増税などへの危機感から、流通業界は賃上げの広がりを期待する。

 賃上げの話になぜ流通業界の企業ばかりが登場するのか──。

 ローソン、セブン&アイ・ホールディングス、ニトリホールディングス、メガネのジェイアイエヌ…。流通業界を代表する企業が相次いで表明した年収アップ。賞与や定期昇給に加え、セブン&アイとニトリはベースアップ(ベア)にまで踏み込む。ベアは物価上昇に連動して決まる場合が多く、デフレが長引く中で珍しくなっていた。

 今回の春闘では、通常は見られない2つのねじれが生じている。

 1つ目は流通業が賃上げの流れを先導したこと。労使交渉の山場である「春闘」は、これまで自動車や電機など製造業が主導役だったが異変が起きた。

 流通業界は消費不振にあえいでいるのに加え、円安もこうした内需型企業には仕入れ価格の上昇圧力となり、マイナスに働く。だが、安倍晋三内閣の「業績好調な企業は賃上げを実施してほしい」という要請に応えやすい条件が、一部の勝ち組には整っている。

 コンビニエンスストアが主力のセブン&アイ、ローソン、ファミリーマートは、2013年2月期の連結純利益がそれぞれ過去最高を更新する見込み。生鮮品や低価格のPB(プライベートブランド)などの拡充が奏功している。

 「賃上げは新浪(剛史社長)の(政府の要請に応じた)スタンドプレーではなく、以前から準備していたもの」とローソンの玉塚元一COO(最高執行責任者)は説明する。同社は好業績が続く中、株主に増配で報いる一方で、社員には収入アップになる形で還元することを考えていたという。

 ジェイアイエヌも、パソコンが発する青色光をカットできるとする「PCメガネ」などの販売が好調。2013年8月期に大幅な増収増益を見込む。このため、「正社員だけでなく、準社員、パートを含めた全従業員の年収アップを決めた」と田中仁社長は説明する。


製造業はベアに慎重な構え

 一方、円安を受けて競争力が高まりつつあるはずの輸出型企業では、一時金で処遇する動きは見られるものの、人件費が業績と関係なく上昇しかねないベアを含む賃上げには慎重だ。

 日本自動車工業会会長でトヨタ自動車社長の豊田章男氏は「(賃上げは)各社の経営状況を踏まえて真摯に議論を重ねて決定するもの」と発言。これに対しトヨタ労組はベアを要求せず、昨年実績を27万円上回る5カ月分プラス30万円(約205万円)の一時金と、定昇に相当する賃金制度維持分で7300円を要求した。それでも小澤哲副社長は交渉開始当初、「競争力と生産性の向上がない中での賃上げは、企業の将来を危うくする」と牽制した。

 三菱重工業の宮永俊一副社長(4月に社長就任予定)も「あくまで一時金で報いる。今の為替水準では日本の機械メーカーの賃金は欧米や中韓と比べて割高だ」と指摘。労働側でも、化学メーカーが加入する全国化学労働組合総連合の山本幸平・事務局長は、「ベアは困難で、一時金と定昇の維持を求める」との主張にとどまる。

 2番目のねじれが、円安がプラスになる製造業よりも、マイナスになる流通業の方が積極的に賃上げに踏み込んだことだ。その背景に、「製造業が賃上げに動くよう背中を押したい」との思惑が見え隠れする。「当社のような賃上げが、流通以外の業界にも広がってほしい」とセブン&アイの鈴木敏文会長は期待を込める。

 実は、流通各社の賃上げ幅は、例年と比べてそれほど大きくはない。2014年2月期に社員を対象に、定昇と賞与で平均2.2%の年収アップを予定するファミリーマート。同社は2013年2月期の年収増が3.5%だった。セブン&アイの賃上げも以前から検討してきた範囲で、「2014年2月期の業績への影響は軽微」(同社)だという。

 限られた賃上げ幅でも、流通各社が熱心にアピールする背景には、個人消費の先行きに対する懸念がある。コンビニ各社の既存店売上高(前年同月比)は足元で勢いが鈍っており、直近ではマイナスの企業も目立つ。

 安倍政権のインフレ政策は、消費者の実質所得にはマイナスだ。さらにガソリン価格や電気代も上昇しており、来春には消費増税も控える。

 アベノミクスを受けた株高などで明るさも見えつつある個人消費だが、流通企業の間では「まだムードだけ」との見方が多い。消費回復を“本物”にするには個人の実質所得の増加が欠かせない。そのためには賃上げを率先して演出せざるを得ないのが、実情のようだ。

鈴木 敏文 [セブン&アイ・ホールディングス会長] に聞く
自分たちから働きかけていく
 3月4日の午前中に労働組合と団体交渉をして、当日の昼には要求に満額回答した。グループ54社を対象に、賃金をベースアップ(ベア)する。


(写真:都築 雅人)
 賃上げの必要性については、昨年の8〜9月から幹部の間で話し合ってきた。モノがなかなか売りにくい環境下で、いかに業績を上げるかを考えると、やはり人への投資が必要だろう。当社は今、パート社員をより戦力として活用していこうとしているが、そのためには正社員の教育も今以上に強化していく必要がある。衣料品などの売り場ではより積極的な接客も不可欠だ。こうしたことを実現するには、ただ言葉でハッパをかけるだけではなく、具体的に賃上げで社員に報いる必要があると考えていた。

 1年先には消費増税もある。市場が冷え込むのは確実だろう。危機を突破するためには、このタイミングで従業員のやる気を引き出さなければならなかった。そのため、今回の春闘はべらぼうな要求じゃない限り、満額回答しようと決めていた。そこに政府が賃上げを呼びかけ、たまたまタイミングが合った。(先に賃上げを発表した)ローソンに追随したわけではない。

 結論を早く出したのは回答した翌日の3月5日に、グループの幹部社員約9000人が集まる「経営方針説明会」があったからという要因もある。私がトップの立場になって、組合に満額回答したのは今回を除けば1度しかない。今回の賃上げでは、組合の幹部だけでなく直接社員にも伝えたいとの思いがあり、それに間に合うようにした。方針説明会の壇上には何度も立っているが、さすがに今回は社員の雰囲気が明らかに変わったと感じることができた。

 ベアという選択をしたのは、「給与が上がっていく」実感を社員に与えるためだ。賞与で報いるという考えもあるが、それだけでは社員は将来の生活設計が立てにくい。人を中心にした成長戦略を描く以上、基礎的な部分を底上げしてやる気を養ってもらおうと考えている。

 モノが満ち足りた現在では、人々の購買意欲に対する心理的な要因は非常に大きくなっている。皆が消費に前向きになるような雰囲気を作っていかなければ、モノは売れない。製造業の業績が上がって、世の賃金が上がるのを待っていれば、小売りに恩恵が及ぶまで2〜3年かかってしまう。それを待ってはいられない。政府だけに頼るのではダメで、自分たちから積極的に働きかけていかなければならない。

 もちろん、経済全体の歯車を回すことが何よりも大事だ。今、円安で業績が回復している企業もあるが、輸入品の値上がりで物価が上がる懸念もある。給与が今のまま上がらなければ、悪性のインフレにもつながりかねない。あくまで個別の企業ごとに労使で判断することではあるが、賃金増加が広がってほしいとは思っている。(談)

山崎 良兵(やまざき・りょうへい)

日経ビジネス記者。

山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者。

中川 雅之(なかがわ・まさゆき)

日経ビジネス記者


時事深層

“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

 

「5年後に必要とされる人材か?」 喘ぐ40代エリートの“賞味期限”

ありのままの自分と“共存”できれば、運命を自ら切り開く強さが得られる

2013年3月19日(火)  河合 薫

 40代が、喘いでいる、っぽい。

 「っぽい」とは妙な表現だし、使い方が間違っているかもしれないが、「喘いでいるっぽい」のだから仕方がない。当の本人たちは決して自分から、「喘いでいる」とは言わないし、息もできないほど苦しくて、今にも押しつぶされてしまいそうなほどの切迫感は見受けられない。

 「キャリア・プラトー」とか、「ミッドライフクライシス」とか、「思秋期」とは少し違う。スペシャリストのように特技を持たないゼネラリストやホワイトカラーの賞味期限が切れそうな時代にたたずむ、あいまいな不安とでも言うのだろうか。

 そんな状態に、喘いでいるっぽい、ミドルたちが増えている。

 「いい転職先が見つかれば、早期退職してもいいなぁと思っている。まぁ、定年延長されたんで、いようと思えば65歳まではいることができますから」

 彼らは必ずと言っていいほど、「いようと思えば65歳までいられる」と話す。

 しかも「喘いでいるっぽい」人たちは、そのほとんどが、一流と言われている大学を出て、一流と言われる大企業に勤める、いわば“エリート”。かつては、「将来安泰」と言われたレールを歩いてきた人たちだ。

働く人たちの厳しい状況は続いている

 2年ほど前に話題となった『「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法』(新潮新書)の中で、著者の深田和範さんは「今後数年間のうちに、ホワイトカラー100万人が失業する」とし、給料が高くて現場仕事から離れた30歳以上のホワイトカラーに警告したことがあった。

 今月初めに開かれた政府の産業競争力会議の分科会では、「解雇が認められる場合の合理性を法律で明確にできないか」といった意見が出され、正社員の解雇規制にメスが入る可能性もある。

 大手メディアは、「満額回答」「賃金アップ」など景気のいい話ばかりを報じているが、働いている人たちの厳しい状況は続いている。

 そこで今回は、喘ぐ40代? エリートたちの喘ぎ? いや、ホワイトカラーの未来? まぁ、いい。そんな感じのことをあれこれ考えてみようと思う。

 「私はラインを外れていますから、役員になることはないでしょう。このままいけば、子会社に行かされると思います。あ〜、でも時代のスピードが年々速まっていますし、今までの慣例が通用しなくなってますから、まだ分からないですけどね」

 「転職を考えて、動いたこともあるんですよ。でもね、40を過ぎていい転職先なんてそうそうあるもんじゃない。現実は想像以上に厳しかった。それにやっぱり会社を離れてできることって、限界があると思うんです。前はそんなふうに考える自分がイヤで、独立を考えたこともありました。でもね、それこそ現実は甘くない。今の会社の社員でいた方が、できることは多い。長年サラリーマンをやってきちゃったんで、サラリーマン根性が染みついてしまったんですかね」

 「でも、いい転職先が見つかれば、早期退職してもいいなぁと思ってます。実際、早期退職の案内は45歳以上には来てますからね。まぁ、いようと思えば定年延長されたんで、65歳まではいることができます。息子が今、大学1年生なんで、あいつが卒業するまでは学費もかかりますし……。でもね、不安がないと言ったらウソになる。うん、正直な気持ちを言えば、不安なんですよね」

 この方は大手企業に勤める48歳の部長職の男性である。これまでのキャリアを聞く限り、同期の中でも出世コースを歩んできた。ただ、「ラインを外れた」と本人が語る通り、現在はラインの部長ではない。彼の気持ちは同じ年代としては、何となく分かる。本当は自分らしく生きたいのに、それができないことにジレンマを抱き、あいまいな不安に陥っているのだと思う。でも、それを認めるのも怖い。認めた途端、自分が自分じゃなくなる。そんな気がするのだ。

 だが、あえて聞いてみた。「何が不安なんですか?」と。

 すると彼は、「うーん」と考え込んで、こう答えた。

 「将来、ですかね?」

 恐らくここまで読んで、怒り出している方もいるかもしれない。

 「65歳までいられるんなら、それでいいジャン。いったい何が問題なんだ?」「今の世の中、明日をどうやって生きていこうかって人があふれてんのに、何を甘えたこと言っているんだ」と。

 その通りだとは思う。でも、多分本人もそんなこと分かっている。だから、喘いでいるっぽいと、私には感じられたのだ。

「見て見ないふり症候群」がはびこる日本企業

 本当は、「5年後に、自分が必要とされる人材であるかどうか」に確信が持てない。65歳までいられることはいられるけど、その時に自分の存在意義を感じることができるのか? そんな不安があるのだと思う。「何で5年後なんだ?」と思われるかもしれないけど、「将来」といったところで、10年先にはいまひとつリアリティーを感じられないのが40代(と勝手に決めます)。だから5年後。5年後、必要とされているかどうかが不安なのだ。

 現実の自分と理想の自分とのギャップ。イキイキとしたいのにそうでない自分。自分らしく生きたいのに、それができていない(あるいはできそうもない)自分。

 冷静に社内を見渡せば、ラインを外れた50代は仕事がない。早期退職という名のリストラに遭ったり、「え? そんな仕事をやらされてしまうのか?」とショックを受けるたりするようにはなりたくない。年下が上司になることにはどうにか対応できたが、給料を減らされ、若手の隣で掃除をするような“自分”にはなりたくない。

 踏み出したいけど、踏み出せない。踏み出すと言っても何をしたらいいのか分からない。そんな自分に、喘いでいるのだ。

 そう言えば以前、「日本のサラリーマン社会は、見て見ないふり症候群の輩であふれている」と、53歳で就活をして転職した男性が嘆いていて、「なるほどなぁ」と感心したことがあった。

 年功序列や終身雇用という安心が招いた負の側面。喘いでいる40代はまさしく、その呪縛から離れられずに、見て見ないふり症候群に陥っているのかもしれない、などと思ったりもする。安心など全く担保されない厳しい現実が、本当は目の前に見えているのに、“見えないふり”を無意識にすることで自分を守る。無意識に事実を歪め、「問題があること」を「問題があるとは全く思わない」認知バイアスの罠にはまっているのだろう。

 とはいえ、どんな呪縛にハマろうとも、ホワイトカラー、ゼネラリスト、大企業、部長、正社員。かつては存在した安定の拠り所は過去のものとなっている。

 「自分だけは運よく、少数の『必要とされる人』に紛れ込めるかもしれない」などと幻想を抱いていたのでは、気がついた時には身動きの取れない状況に苦しむことになる。厳しい言い方をあえてするが、見て見ないふり症候群を脱しない限り、明日はない。

 だって、グローバル化は日に日に加速し、正直、私には違和感があるけれど、どういうわけか多くの人が、「グローバル化しないことには生き残れない」と信じているわけで。

 グローバル化という名の下で、それまで中流層が手がけていた仕事は低コストで雇えるアジアなどの外国人の市場になり、労働のダンピングは加速している。グローバル競争に勝つためには、3人でやっていた仕事を2人に、やがては1人に任せるようになる。部門を減らすために統合したり、企業の生き残りを懸けて、それまでのライバル会社と合併したりすることだってある。

 ラインから外れていようと、ラインの部長だろうと合併すればそんなものは関係ない。

 業績悪化でトップが変わり、新体制になった時に「いらない」とダメ出しをされることだってある。ましてや、企業の寿命と自分のサラリーマン人生の寿命、そのどちらが先に終わるか分からない。

 グローバル化が進めば、自社の得意とする事業分野を明確にして、そこに経営資源を集中的に投下する戦略、すなわち「選択と集中」が横行する。一部の人と企業にしか利益をもたらさない。デキる人“だけ”というよりも、必要とされている人“だけ”が生き残る。誰にとっても、一寸先は闇、なのだ。

「ありのまま」を受け入れる自己受容の効用

 いずれにしても、ホワイトカラーやゼネラリストが誕生したのは、1920年頃だとされていて、始まりがあるものには終わりがあるのが世の常でして……。その過渡期に“今”があることは、避けられない事実なんだと思う。

 ただし、グローバル化と自分の将来を喘ぐこととは、別次元の話だ。

 いつの時代もキャリアマネジメントは自己責任。グローバル時代の犠牲者でもなければ、1つのヒエラルキーの階段を登り詰めるというサラリーマンのキャリアパスのせいにしていても仕方がない。

 だからもし、今の状況に何らかの戸惑いを感じていたり、喘いでいる自分、を一瞬でも感じることがあるなら、「どんな働き方をしたいのか?」「どんな生き方をしたいのか?」と何度でも自問するしかない。しっかりと見えているものを受け入れなきゃダメ。自分の責任で一歩踏み出すしかないのである。

 そのためには、まずはいい面も悪い面も含め、「ありのままの自分」を受け入れることからスタートしなくてはならない。それこそ「40にもなって、そんなこともできないのか?」と突っ込まれそうではあるが、仕事もある程度できる世代だからこそ、逆に自分と向き合うのを忘れている場合は多い。だからこそ意識的に「ありのままの自分」と向き合う必要がある。

 「自己受容=セルフアクセプタンス(self-acceptance)」――。

 これは人間のポジティブな心理的機能の1つで、逆境を乗り越え、それを自身の強さにするために必要な心の動きを指す。

 自己受容は、ナルシズム的な自己愛や過剰な自尊心とは違い、自分の良いところも悪いところもしっかりと見つめ、普通であれば目をつむりたくなるような、情けなく不甲斐ない自分であっても、正面から向き合う感覚である。

 この感覚を持つことができれば、なすべきことが明確になり、危機にうまく対処できるようになる。ありのままの自分と“共存”できて初めて、自ら運命をも切り開く真の強さがもたらされる。

 ありのままを受け入れたうえで、「どうありたいか?」「どういう価値観の下で自身のキャリアを形成するか?」を明確にする。その価値観を全うすべく仕事に臨んでいる人は喘ぐことなどない。

 「自分らしくいたい」と願いながらも、何が自分らしいのかさえ分からないから喘ぐ。自ら運命を切り開く強さを持つ自信がないから、見て見えないふりをして、ただただ喘いでいるのだろう。

 米国の組織心理学者のローラ・ナッシュらは、「自分らしい生き方を手に入れるコツ」を探ろうと、100人近い、世間からは「成功者」と呼ばれている人たちにインタビューと、観察実験を行っている。

 その結果、「人と競争したり、世間の価値観に合わせようとしていたのでは、自分らしい成功をつかむことはできない」とし、「幸福感・達成感・存在意義・育成」の4つの要素をバランスよく得られる状況に、“人生の友”として関わり続けるプロセスの重要性を説いた。

成功者の調査から得られた4つのプロセスの重要性

 具体的には次のようになる。

(1)幸福感―人生から喜びと満足感を得ること
(2)達成感―何らかの業績で抜きん出るなど、自らの成長を実感できること
(3)存在意義―「私は意味のある存在である」と感じられる役目を得ること
(4)育成―自分の強みや技能を他者に受け継ぎ、その人の成功を助けること

 これらが含まれるプロセスを見つけられれば、継続して関わっていくことができる。継続することで経験が積み重なると、さらなる満足感や充足感につながっていく。

 結果的に、それが自分の強みとなって、「自分らしい生き方」を手に入れられるのだ。

 それは仕事上の出来事じゃなくてもいいし、プライベートの小さなことでも構わない。

 例えば、マラソンをしている時間に至福の幸せ、すなわち幸福感を感じるとしよう。それを毎日続ければタイムが縮まったり、長い距離を走れたりするようになって、達成感を覚える。さらに、マラソン大会やチャリティーマラソンに出たり、マラソンで新しい人とつながったりすれば、存在意義を感じることができる。そして、他者に走り方を教えたり、子供と一緒に走ったりするというように、育成のプロセスを経ると満足感は高まっていく。

 そういった「自分らしい世界」を持てた人は、仕事でも自分らしく納得できるプロセスを築ける可能性が高い。マラソンなんて小さな出来事のように思われるかもしれないけれど、確固たる価値観と「自分にはできる」という自信が仕事の場面でも生かされ、ポジティブな循環に入る込むことができる。

 自分らしい価値観は、自分の世界の「境界=バウンダリーズ(boundaries)」だと、私は考えている。

 境界──。

 これは人間なら誰しもが持っている、自分の人生にとって重要であることとそうでないことの境目を指す。

 境界の範囲は、人それぞれで、広い人もいれば、狭い人もいる。ある人にとっては、政治が境界の中に入り、ある人には入らない。ある人にとっては、宗教や芸術が境界の中に入ることもある。ある人にとっては、おカネや権力というものが、境界内に存在することもある。

 生きる力の高い人は、自分の主観的な世界の『境界』を設けていて、それがそこにあることに感謝し、慈しむことができる。境界内に入っている出来事に対しては、いかなる困難や苦悩する出来事に遭遇しても、乗り越えようと最善を尽くす。そして、その大切なものが、境界内にちゃんとあり、うまく回っていることで、幸福感は高まっていく。

 一方、境界の外で起こっていることには、それがどんなに社会的、あるいは客観的に重要で意味のある出来事であろうとも、「自分にとって意味のないこと」と考え、大した問題ではない、と処理し、それに対して立ち向かっていくこともしなければ、それについて真剣に考えることもない。

 要するに、境界さえ明確になれば、自分の時間や才能、エネルギー、パワー、そのすべての使い方が分かり、最大限に生かすことができる。ただし、1つだけ条件がある。境界内に、身近な人間関係、社会的活動、生存に関わる問題という、人が生きていくうえで極めて重要な要因を含めることができない限り、生きる力や回復力が発揮されることはない。

 今ある自分の生活、自分の仕事、自分の周りの人たち。そんな自分を取り囲む環境を、いま一度立ち止まって見直し、それを受け入れ、境界を設ける。それが納得した人生を手に入れるために大切なのだ。

胸に刺さった87歳の女性の言葉

 健康社会学では、「人生において大切だと主観的に考えられる領域を一切持たない人は生きる力が弱く、その人のストレス対処力が高くなる見込みは絶望的なほどない」と考えられている。

 だって、どこにも鉄人なんていないわけで。自分の持っている資源を最大限利用するには、使うべきところと使わなくていいところの区別、心身のバランスを保ち、疲弊しない、元気な日々を積み重ねていくことが、生き残る最大の方策。境界が明確になれば、守るべきものがクリアになり、資源の最大活用が可能になる。

 先日、ネットで少し話題になった87歳で大学生になったローズさんという女性の言葉は、まさしく境界の重要さを教えてくれる胸に刺さるものだったので、最後に紹介する。

 「もしあなたが19歳で、1年中寝てばかりいて生産的なことをしなければ、20歳になります。もし私が87歳で、1年中寝たきりでいたら、88歳になります。誰だって年老いていくことはできます。特別な能力や才能はいりません。大事なのは、いつも『成長する』機会を見つけることです」

 「年長者は、『やったこと』への後悔はありません。でも、『やらなかったこと』への後悔はたくさんあります。死を恐れるのは、いつも後悔ばかりしている人です」

 彼女の境界内には、学び、があった。学びたかったから大学に入ったのだ。そして彼女は、大学の卒業証書を手に入れた1週間後、永遠の眠りについた。葬式には2000人以上の“同級生たち”が参列したそうだ。

 重要なのは「何をしたか?」ではなく、「どう生きるか?」。喘いでいる暇があったら、1歩でも2歩でも、自分なりの価値観を信じて前に踏み出さなきゃ。何もしなくとも年はとる。いつ踏み出す? 今でしょ!


河合 薫(かわい・かおる)

博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『を使えない上司はいらない!』(PHP新書604)


02. 2013年3月19日 01:31:02 : xEBOc6ttRg
【第2回】 2013年3月19日 米田智彦
今、同時多発的に起きている「新しい生き方」とは?
もっと自由に生きるためのソーシャルキャピタル

山口揚平×米田智彦 対談【後編】

「好き」で生計を立て、自由に生きるために今最も必要なものとは何か。『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』の著者・山口揚平さんと、『僕らの時代のライフデザイン』の著者・米田智彦さんが語り合う、僕らがもっと自由に、もっと豊かに生きるためのソーシャルキャピタルとは。

お金で買えない価値を生む“聖域”が
日本全国に続々と出現中


米田智彦(よねだ・ともひこ) 1973年、福岡市生まれ。青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースを行う。2011年の約1年間、家財と定住所を持たずに東京という“都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。
米田:僕が最近強く思うのは、お金がなくても信用だけで生きていける人が本当にけっこうたくさんいるんだな、ということ。信用によってお金以外の価値を直接交換することで豊かさとかハッピー、生きがいなどを感じられるんですよね。

 そこに気づいた人が出てきたことが、ここ数年の一番の変化なんじゃないかな。そんなバカなと思う人も多いかもしれないけど、それはここ数十年の都市だけの常識で、日本は昔から貨幣以外の価値、信用が生む価値というのが生活にも商売にも深く関わっていたわけです。

山口:確かにそうですね。たとえば田舎に移住した友人を訪ねていくと、地元の人だけが知るうまい米とかうまい酒が出てくる。でもそれって、関係性や信頼がないと不可能なことじゃないですか。要するに、そういうものは金で買えない。そういう生活を毎日送っている彼らに接すると、大してお金は持っていないかもしれないけれど、全体の価値と信頼の総量、つまり可視化されていない豊かさの総量は十分に大きいなと思いますね。

米田:それがお金だけじゃないキャピタルなんですよね、きっと。言葉にすると、ソーシャル・キャピタルということになるんでしょうけど。

山口:そう思います。価値と価値を交換するという贈与経済の本質的な意味は、何かをあげて何かをもらうと、文脈が途切れず「流れる」ということなんですよ。そしてさらにまた、それを誰かにあげようとする。それが延々と続いていくんです。

米田:確かにお歳暮とかでもそうですけど、何かを贈るとお返ししなきゃいけないと思いますもんね。流しそうめんみたいに1回流れができれば、「贈り、贈られる」という関係性がずっと続いていく。その分、ご縁が深まるわけです。それって経済そのものですよね。


山口揚平 (やまぐち・ようへい)ブルーマーリンパートナーズ 代表取締役。早稲田大学政治経済学部卒。1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業した。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供、2010年に同事業を売却後、12年に買い戻した。現在は、コンサルティングなど複数の事業・会社を運営する傍ら、執筆・講演を行う。専門は貨幣論・情報化社会論。
山口:本当にそう思います。僕は昨年12月、フェイスブック上に「Gift」というサービスを立ち上げたんですが、これは友だち同士で自由にモノや知識をシェアしたり、使わなくなったものを無償であげたり貸したりできるというもの。

 たとえば引っ越しのときに要らなくなったベッドを“出品”すると、それを欲しいという人から連絡がくるんです。そこで繰り広げられるやり取りが、すごく面白いんですよね。ちなみに僕は自宅の空いている部屋も無償で貸し出しています。ちょうど今、ベルギーから友だちが来て、泊まっていますよ(笑)。

米田:ぼくも2011年1月から1年間、家もオフォスも持たずにトランク1つで東京を旅するように暮らす「ノマド・トーキョー」という生活実験型プロジェクトをやったとき、自分の持っているものを何かあげる代わりに、その人の家に3泊4日させてもらったりしましたね。

 お金を払って泊まるんだったら簡単なんです。でもそれじゃ結局、その人と仲良くなれないまま、お金の関係だけで終わってしまう。お金を使わずに初めて会った人のところに泊まり、コミュニケーションをとりながらどうやって今までゼロだった関係を一夜にして築くか、というところに面白さがあったんです。

山口:お金で何かを買うとそこで文脈が断絶するけれど、価値を交換することで関係が強まり、深まるんですよね。

米田:フィールドワークを通して、資本主義が入り込めない、お金で買えない価値みたいなものを生み出す場所、つまりアジール(聖域)みたいなものが日本中にポコポコ同時多発的に登場しているなと気づきました。その価値というのは、資本主義の論理からすると全然儲かってないし、むしろ貧困化じゃないかとか、甘いとか青臭いっていう論で片づけられるのかもしれないけど、僕はそこにすごく魅力を感じていて。もしかしたら今の20代とか若い世代が、そこで新しくブレークスルーする可能性があるんじゃないかなと期待しているんです。

 そのためにも、これから実践のなかで、みんなで試行錯誤を重ねていく必要があると思いますね。ここ数十年で隣の家から僕らは醤油も借りられない極端な貨幣でしかすべてを交換できない生活を送って来たわけだけど、少しそういう部分に戻っていくような気もしています。

「お金」は豊かさを構成する
パラメーターの1つにすぎない

山口:僕はお金を絶対的な存在ではなく、豊かさのなかのパーツの1つにすぎないと考えているんです。今まではお金しか数値化されていなかったから、それを絶対的な拠り所とするしかなかった面もあるけれど。

米田:豊かさ全体だってブータンで話題になったGNH(国民総幸福度)じゃないけども、最近は可視化されつつありますよね。たとえばフェイスブックの「友達」の人数などもいい例かもしれません。国民総幸福度じゃなくて、「個人総幸福度」みたいな指標があってもいいんじゃないか。これは経済的な豊さを否定するという単純な話じゃない。お金が必要なのは当たり前だけど、それだけを求めて他を否定するんじゃなくて、もっと総合的な自分の人生を考えるという指標ですね。僕は新刊『僕らの時代のライフデザイン』の中で「自・職・住」の三位一体のバランス、ということを書いたんだけど。そこにはお金も心身の健康も働くこと、住むこともすべて入っていて、すべてつながっている。

山口:そうですね。愛があふれている状況とか親密な関係とか、豊かさを構成する各パラメーターが今後もっと可視化されて計量化されるようになってくれば、お金はますます相対的な存在になる。ドラクエでいうところの、「攻撃力」「守備力」「すばやさ」「運のよさ」とかいうのと同じように、各パラメーターが個人にとってパラレルに存在する状況になっていく気がしますね。


米田智彦さん
米田:なるほど。でも、ある個人において「お金」が10でも「健康」が0だと、どうなんだろう?それでは全体としての幸福度はあまり上がりませんよね。また、お金っていうものも現実的には一番便利なものだから、やっぱり0というわけにはいかない。どのパラメーターもそこそこの数字じゃないと、結局は幸福や豊かさから遠ざかってしまうんじゃないでしょうか。

 ただ、パラメーターに偏りのある個人でも1つだけ幸福度を上げる方法がある。攻撃力が10で防御力が0の人でも、治癒力の高い人がパーティーに入れば補えるのかもしれないんです。つまり、社会の形成の仕方とかコミュニティのあり方が今後どう変わっていくかで、個人の豊かさの有り様も影響を受けるんじゃないかなと考えていて。

山口:僕もコミュニティは重要だと思いますね。新たな関係が作られたり、その関係が外れて別の関係が作られたりすることが無数に行われるのが、生物界の本来あるべき正しい姿だから。もちろんそれは、ガシッとつながって身動きが取れなくなるような地縁社会ではなく、自分で主体的につながっていくコミュニティを指すんですけれど。

米田:「移動できる」とか「往復できる」ということが大切ですよね。たくさんのコミュニティとつながっていると、1つのところに依存しなくていいし、依存されなくてもいい。だからバランスもとれるんです。

山口:昔の電話交換師みたいな世界を、自分のなかで再現すればいいんですよ。つまり、さまざまなコミュニティポートフォリオを持って、そこのなかで自由につながったり、外れたりすることができることがこれからは重要なんじゃないかなと思う。

米田:住まいについても、子どもができたら海外に移住して、育ったら日本に戻ってくるというような多拠点でも全然いい。固定化されない流動的なコミュニティや住まいが必要になっていると思いますね。それは決して立脚点がないということじゃなく、同時並行でいろんなことが進んでいくだけ。自分にとっては、ある時点ではどれも大切だし、どれも外せないわけですから。そのなかで自分に足りない部分を誰かに補ってもらったり、許してもらったりすることが、たぶんお金に換算できない幸福度につながるんでしょうね。

山口:米田さんが本にも書いていらっしゃった、「何をやっているかわからない人」というのが、その1つの形ですよね。しかも今はそれが、ある種ブランドになるわけです。

米田:そう、ブラックボックスみたいなもので、そこに投げると何が出てくるかわからないけれど、でも何かやってくれそうだ、と思われる人。山口さんもやっぱり、ブラックボックスみたいな人ですよね。良い意味で何をやってるかよくわからない(笑)。僕も出版からソーシャルメディア、プロダクトの開発まで、いろんなことを相談される。それで、自分が面白そうだなと思ったらとりあえずやってみる。関わってみる。最初はお金にならなくても、どこかで仕事につながっていくし、最終的には仕事にしていくんです。

 今は情報ツールは溢れているけど、ただじっとしていても何かを得ることはできない。でも、何かを入力すれば、必ず出力はある、みたいな。だから、自分がからまずはアクションを起こす。そして、差し出す、贈ること。その積み上げがその人の信用につながっていくし、総合的な実力とし認められ、評価につながっていくと思います。

時間とエネルギーの投資が
数年後のソーシャルキャピタルを生む

山口:僕の仕事の1つは、アーティストとかヨガのインストラクターとか劇団を運営している人とか、そうやって好きなことをやっている人たちがちゃんと生活していけるよう、マネタイズかキャピタライズする手伝いをすること。うまくいけば2年か3年先、出資したプロジェクトから資本を引き上げるときにお金になったりするんです。でももしかしたら、1円にもならないかもしれない(笑)。

米田:でも、お金にならないからといって、そのプロジェクトに意味がないかっていったら、そうじゃないですよね?


山口揚平さん
山口:まったくないですね。最初にお話ししたように、僕自身30歳までは、食えるなかでどう好きなことをやるかばかりを考えていたけれど、今は逆。好きなことをまずやって、そのなかでどうやって食っていくか、頭を使って小細工を考える(笑)。お金っていうのは、あくまでもガソリンなんです。「ガソリンがないからどうしよう」と思うことはあっても、儲からないから価値がないとは考えない。

米田:これは直感としかいいようがないんだけれど、僕もライフワーク、つまり直接的にお金にならない自分の中の表現活動みたいなことが、必ず未来に対しての何らかのヒントになっている気がするんですよね。

「ノマド・トーキョー」だってそう。あれは別に仕事じゃなく僕が勝手にやった実験プロジェクトだったわけですが、いつの間にかそこから派生して、いろんな面白い仕事が舞い込んでくるようになったんです。今まで出会えなかったような人から連絡をもらえることもあるし、話を聞きたいと言われることもある。こうやって働き方や生き方についての本を書いたり、メディアやトークでしゃべるなんてことも全然想像していなかったし、ましてや山口さんみたいなコンサル業界で生きてきた人と対談するなんて、2〜3年前には考えてもみなかった(笑)。

 今の流行を追いかけるのではなくて、自分のなかでもっとも切実なことって何だろうと内観して見つめてみて、一番プライオリティの高いことに時間とエネルギーの投資をすると、それがお金になるかどうかは別として、2〜3年後に必ずソーシャルキャピタルのリターンがあると実感していますね。でも、こういうことも逆算してやってきたんじゃなくて、やっぱりやりながら考えて、柔軟に方向転換しながらだんだんとわかってきたことなんです。

山口:それを長く続けている間に、“勝ちパターン”ができてきますよね。こうやって自分の好きなことをやっていれば、こういう形でかえってくるな、と。するとますますある程度の安心感を持って、よくわかんないものにも手を出せるようになる(笑)。

米田:確かにそう思います。僕の場合、体感としては2年周期ぐらいですかね。それくらいで世の中も変わっていくから。特に3.11以降の2年間って、すべてのものが大きく変化しましたよね。2年前は新しい生き方とか働き方にこれだけ注目が集まるとは、僕も思っていなかった。だからこそ、今何かを発信する意味があるとすごく感じています。ただドラクエ的に言うと、お金とか資本を直接的に生み出す力は僕には1とか2くらいしかないので、そこは誰かと組んでパーティーを作ったほうがいいかもしれない(笑)。

山口:いや、でもね、好きなことをやるためにどうやって自分でマネタイズやキャピタライズするのかという知識やリテラシーに関しては、もっと流行るべきだと僕は思っているんですよ。なぜなら流行ることによって、みんながますます自由に生きられる社会になっていくわけだから。あるいはマネタイズやキャピタライズ自体を自分に替わってうまくやってくれる、プラットフォームビジネスみたいなものが生まれてくるのかもしれないよね。

米田:その可能性は十分にありますね。自分でできないことは専門家を見つけてきて、頼むとか。

山口:それに伴ってお金以外のコミュニケーションツール、たとえば「助けて」と声に出す勇気を持つにはどうすればいいかとか、人と打ち解けるにはどう微笑めばいいかとか、感謝の気持ちをどう伝えるかとか、そういうリテラシーも知るべきだと思う。

 旅行も体験型ツーリズムに変わっているじゃないですか。面白い人に会って、田舎の農家でおにぎりをもらえるかどうかっていうのが旅の醍醐味になっているでしょう?仕事だけでなく、人生を楽しむため全般に、ちゃんとコミュニケーションできる力が不可欠になっているんです。近い将来、そういう知識や技術を学べるカリキュラムみたいなものや、体系化して言語化した本が出てくるような気がしますね。

米田:それは近々絶対に必要になるでしょうね。コミュニケーション能力って単にものを売る営業力という面だけじゃない。関係性を生み出す能力なんだと思います。今日は興味深い話ができて本当によかったです。ありがとうございました。(談)

(次回は3月21日更新予定です。)

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03. 2013年3月19日 01:56:20 : xEBOc6ttRg

黒田東彦・新総裁の誕生で変わる日銀 発表日:2013年3月15日(金)
〜金融政策は「白の時代」から「黒の時代」へ〜

第一生命経済研究所 経済調査部

担当 熊野英生

白川体制から黒田体制へと移行する国会同意人事が衆参両院で通過した。白川体制は、4月3・4日の決定会合に仕切り直されるとみる。無制限の国債買入など2014年初からのスキームを前倒しで実施することになろう。もっとも、国債購入を大拡張してもデフレ脱却に十分な成果が上がらないときは、リスク資産購入に踏み出すだろう。今後、独立した中央銀行の内側に入った黒田新総裁が微妙にスタンスを変化させるかどうかにも注目したい。
仕切り直しの金融緩和は4月4日
日銀総裁の国会同意が、3月14日に衆議院で得られ、15日に参議院でも通った。これで、黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁の新体制で今後5年間の金融政策の舵取りを行うことが決まった。任期はいよいよ3月20日から始まる。そして、初の政策決定会合となる4月3・4日には、新体制が従来の白川体制を大胆に仕切り直すのではないかとみている。

具体的に、黒田東彦次期総裁の下での仕切り直しを考えると、3つのメニューが考えられる。まずは、@日銀当座預金の付利撤廃(0.10%を0%に)、次に、A日銀の資産買入基金の国債購入年限の長期化(3年以内から3年超へ)、B2014年初からのオープンエンドの買入開始を前倒し、といった3つの内容が検討されよう。
ただし、こうした仕切り直しが、黒田総裁ら3人から提案されたときには、従来までに在任していた6人の政策委員がどう判断するかが注目である。最近になって、ちょっとした驚きをもたらしたのは、3月7日の決定会合の議決で、白井さゆり委員が、2014年初からの国債購入計画を前倒しすることを提案していたことである。白井委員は、これまで独自のアイデアを示してこなかっただけに驚きだった。
2月13・14日の決定会合の議事要旨をみると、このときに何人かの委員が、先の@〜Bを含む選択肢に言及していた。執行部3人+白井委員+他1人=5人が、仕切り直しに賛成するとすれば、黒田体制は滑り出しからキャスティングボードを握ることになる。政策委員会のメンバーの重心も、リフレ政策に懐疑的であった、執行部の白川・山口・西村3人が抜けることで、リフレ推進に移ってくる可能性が高い(図表1、2)。

から、安倍首相自身が牽制球を投げる必要はなくなる。つまり、日銀の独立性は強化される形式になる。
その場合、黒田新体制は、あらゆる面で白川体制からの転換という方向性を打ち出すことになろう。これがレジーム・チェンジである。安倍首相の言葉を借りれば、白川体制からの転換を意味することが「次元の違う金融政策」の推進ということになろう。
筆者なりに、「次元を変える」というニュアンスを少し敷衍すると、それは白川総裁の推進した「包括緩和政策」という名前を書き換えることで、転換色を打ち出すのではないかと考える。包括緩和に変わる政策パッケージの追求である。歴代総裁は、速水氏=ゼロ金利政策、福井氏=量的緩和政策、白川氏=包括緩和政策、という政策パッケージを導入してきた。だから、黒田氏は、独自の「○○緩和政策」なるものを導入するだろう。
その○○緩和政策の中身を大胆予想すると、「バランスシート緩和」という枠組みになるのではないか。もしも、日銀が、マネタリーベースを積極的に拡大していこうとすれば、銀行券ルールを適用外にするために創設した資産買入基金を操作するのではなく、バランスシート全体を使って資金供給をしていくだろう。日銀のバランスシートを膨らませることは同時に、マネタリー・ベースの伸び率を拡大できる。これが「バランスシート緩和」と称する所以である。

今後の国債買取り

一方、筆者は、黒田新体制についてはお手並み拝見という期待感と、経済メカニズムを金融政策で自由自在に操れるという設計主義的感覚があることへの懐疑的見方を持っている。次元の違う金融政策とは、言うは易し、行なうは難しである。そこで、日銀のバランスシート全体を使って強力な緩和を推進する際には、いくつかの課題が浮上していくことについて指摘しておきたい。
まず、白井委員が指摘したように、輪番オペの月1.8兆円の買い入れと資産買入基金の取引の統合は、第一関門だ。問題点は、(1)対政府取引として年1回決めている国債借換・償還の扱いをどうするか、(2)銀行券ルールに替わる財政ファイナンスの歯止め、を明確にしなくてはならないこと。これらは、単純に答えが出そうにないので、仕切り直しに時間を要することになるかもしれない。そして、(3)量的拡大の効果と、長期金利の低下が連動するのかという疑問である。量と金利の連携が描けないと、どこまで量を増やせばよいのかが不明確になる。先行き、政策効果のアピール度は徐々に減衰していくという懸念もある。
次に、新体制が推進していくと予想される国債の買い入れについて、より詳細に検討してみよう。すでに、2013年は買入基金で長期国債+20.0兆円の残高増、短期国債は+15.0兆円の残高増を決めている。このほか、輪番オペで長期国債を2013年中+21.6兆円買い増すことになる。
なお、日銀は輪番オペで+21.6兆円もの金額を買っているのだから、今以上の買入余地はないと感じる人は多いかもしれないが、必ずしもそうではない。本体では2012年中は+23.5兆円の買入額に対して、償還額が▲21.3兆円であり、残高の増加を2.3兆円と小幅に止めてきた。本体は、これまで輪番オペを、資産買入と区別して膨張を免れてきたのが実情である。
だから、黒田新体制は、本体でも買い入れに十分な余地があるとみて、購入増に動くだろう。その場合、当初の反応として、長期金利の低下がさらに進む可能性はある。過去、長期金利が最も低下したのは2003年6月の0.433%である。これは、福井俊彦総裁が就任後にアグレッシブに量的緩和を拡充した時期だ。このときと同じような反応が進むという見方ができる。

問題はその先に、量と金利の関係が曖昧になっていく懸念がより現実身を帯びてくることだろう。オープンエンドの国債買い入れと銘打っても、本当に、青天井の国債購入はできるかという問題もある。
そもそも普通国債発行残高は有限だから、いつか日銀の国債買取りは無限とはいかない。数字に当たっておくと、日銀のバランスシートにおける国債保有残高は122兆円である(2013年2月末)。2012年末の普通国債残高691兆円に対して、17.6%のシェアを占める。仮に、無制限の金融緩和の方針の下、2013年の早い時期から、残高を年間+100兆円ずつ増やす政策を行ったとすれば、2014年末に40%前後、2015年末には発行残高の50%前後になる予想である。もちろん、政府の財政規律がルーズになって国債発行が激増すれば、このシェアは低下するが、財政ファイナンスを野放図に進めるというシナリオは現実的な姿ではない。
リスク資産を購入する場合
国債購入を進めるというシナリオは思い描きやすい。しかし、量と金利の関係だけではなく、量的拡大がデフレ脱却にどのくらいの効果を発揮できるのかは、もっと未知数である。筆者は、「巨額の長期国債の買い入れを行えば、その効果によって消費者物価が上昇していく」などとは考えない。
黒田新体制は、巨額の国債購入を活発に行ったけれども、その効果が捗捗しくないときには次なる展開を模索するだろう。おそらく、資産買入の種類を広げていくという信用緩和的な手法に進んでいくのではないか。黒田氏は、国会の所信表明で「国債であればより長期のもの、すでに社債やETFを買っているが、そうしたものを幅広く検討していく」と述べている。国債以外の資産買取りは、@外債、A事業債、B貸出債権、C株式等、が考えられる。社債・株式などに投資対象を広げていく可能性は十分にある。
ただし、@外債は選択肢から外れたとみるべきだろう。モスクワのG20にみられるように、各国から直接的な為替介入が指弾されかねないからだ。特に、財務官を経験した黒田新総裁であれば、この選択肢はあり得ない。黒田氏は「やれることは何でもやる」と述べているが、これはやれないことはやらないことの裏返しでもある。
すると、実行可能な範囲は、A〜Cになる。買入対象の範囲を調べると、事業債が約50兆円、国内銀行貸出が約400兆円、株式時価総額300〜350兆円となっている。ただし、問題は、こうしたリスク資産の購入に日銀が動いたとき、引当金の積み増しが必要になることだ。政府への納付金の範囲(数千億円)を上回るときは、欠損金の補填について予算措置を講じることになろう。もしも、政府から財政資金のバックアップがあれば、黒田氏がいう通り、かなり広範囲のリスク資産を日銀が購入できることになる。

黒田総裁はどこまで政治に忠実であるか

最後に、ややトリッキーな見方もサブシナリオとして提示しておこう。過去の中央銀行と政府の対立を振り返っておくと、様々な政府からの介入に対して中央銀行は、強かに渡り合ってきた歴史がある。
例えば、過去50〜60年前の米国の金融政策史である。現在、日本の金融市場関係者には、中央銀行と政府との間に結ばれる「アコード」という言葉は広く知られている。しかし、オリジナルの1951年の米国のアコードが、金融政策を政府の国債管理政策から分離させて、事実上、中央銀行の独立性を保証する取り決めだったことは意外なほど知られていない。アコードが結ばれたときの米大統領はトルーマンである。トルーマン大統領は、朝鮮戦争(1950〜53年)の最中、戦費調達のための波乱要因になりかねない中央銀行の独立性を嫌った。そして、米財務省とFRBがアコードを結んだ5日後にトーマス・マッケーブFRB議長を解任する。さらに、大統領は次のFRB議長に、財務省次官補だったウィリアム・マーチンを据える。トルーマンはFRBをうまくコントロールするために、政府にとって国債管理政策の必要性を熟知したマーチンを送り込んだ。ところが、マーチン議長は、トルーマン大統領の意向を裏切って、長期金利を安定化させるための中長期国債の購入を拒否する。国債管理政策を優先して、短期金利の操作を制約することは、インフレ懸念に対処するのに望ましくないとマーチン議長は考えた。マーチン議長は、前任のマッケーブ議長が結んだアコードの精神を守るべく、国債管理政策と金融政策を分離しておくことを望んだのである。
結局、マーチン議長は、財務次官からFRB議長へと立場を変えると、その職務に忠実に行動するという人物だった。中央銀行制度にはミステリアスなところがあって、ポストが人物をつくり、職責が人物の思考を変えてしまう。有名な後日談として、大統領を退任した後のトルーマンは、マーチン議長に会って「裏切り者」と罵ったと言われている。また、マーチン議長は、金融政策の仕事は「パーティが盛り上がり始めたところで酒の入ったパンチボウルを取り上げることだ」と語っていたことでも知られる。
黒田新総裁がどこまで自分の信念を貫いて、独自の金融政策を推進するのかについては、正直、やってみないとわからない。現在の主義主張だけでは将来の金融政策を見通せないことも、年頭に置いておくべきだろう。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_1303c.pdf


04. 2013年3月19日 02:06:12 : xEBOc6ttRg
JCERアングル − 月曜10時便


毎週初めに日本経済研究センターの、前田昌孝・主任研究員ら、景気および金融証券マーケットのウオッチャーが、焦点、勘どころを解説します。

あるかもしれない新生日銀の臨時会合−−13年3月18日

主任研究員 前田昌孝

 今週は週明け早々から欧州情勢が騒々しく、18日早朝に円相場が急騰する場面があった。債務危機に陥っている小国キプロスへの支援条件として、銀行預金に課徴金を課す措置が打ち出されたからだ。経済規模はユーロ圏全体の0.2%にすぎない小国だが、債務不履行やユーロ離脱につながれば、ユーロ圏の結束が揺らいだと市場が見る恐れもあり、当面は目を離せない。

 東京市場では昨年11月14日の衆院解散宣言から先週末までの80営業日で日経平均株価が45%上昇した。この間の上昇率は1952年の記録を上回り、戦後最高だ。今のところ、急騰相場を支えているのは、安倍晋三内閣が矢継ぎ早に打ち出す施策のスピード感。確かに、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加、正社員の解雇規制緩和の動きなど衆院選前には思いもしなかった方向に、日本経済は急展開している。

 春分の日の20日に発足する日銀の新体制の初動も注目される。14日に日本経済研究センターのセミナーで田谷禎三・元日銀審議委員が「従来路線との違いを印象付けるため、臨時会合を開き、金融緩和を決める可能性もある」と話していた。4月3〜4日の金融政策決定会合での金融緩和は織り込み済みなので、サプライズがありうるというわけだ。

 ただ、仮にキプロス・ショックを乗り越えられても、実体経済の変化に比べて先走りし過ぎていないかは気になる。勢いに乗るだけでなく、欧米の景気指標を一つひとつ点検しておきたい。

どこでもドアって、どっちが入り口でどっちが出口?−−13年3月18日

主任研究員 愛宕伸康

 「どこでもドアって、どっちが入り口でどっちが出口?」と、ある自動車のテレビコマーシャルで秀吉がドラえもんに問いかけると、ドラえもんが「どっちも」と答える。リフレ派にとって金融政策はどこでもドアかもしれない。日銀が国債を大量に買って入り口から入れば、インフレ率2%の世界に行ける。インフレになったら出口から出るだけだ。つまり国債を売れば良い。実に単純明快である。しかし、現実はそれほど単純だろうか。

 「今の段階で出口の話をするのは早い」という声をよく耳にする。確かに、これからデフレ脱却に向かおうとするときに出口の話をするのは、いかにもセンスがないと言われるかもしれない。しかし、金融政策の場合、入るのは簡単でも出口から出るのは決して簡単ではない。インフレで下げ相場になった債券市場に売りを出す、そんなことが簡単にできるとは思えないし、そもそも出口を探すのすら難しい。新たな金融政策の入り口に立った時点で出口を巧妙に仕掛けておく。これが中央銀行の実務家として理想のやり方だ。

 出口についてもっと素朴で重要な疑問が一つある。消費者物価指数の前年比が2%に到達しないまま不動産価格が高騰を続けたら、いったい日銀はどうするのだろうか。上のコマーシャルは、「あ、出口だ」と叫ぶ秀吉に対してドラえもんが「入り口だよ、未来の」と言って終わる。さて、大胆な金融緩和の結果、「入り口だよ、バブルの」で終わらないよう、新生黒田日銀には今のうちから出口の仕掛けを考えておいてもらいたい。


http://www.jcer.or.jp/angle/index4567.html


 

流動性カバレッジ比率(バーゼルV)〜適格流動資産の範囲拡大、2015年からの段階的実...−13-03-19

流動性カバレッジ比率(バーゼルV)
適格流動資産の範囲拡大、2015年からの段階的実施等の変更あり
2013年3月18日
金融調査部 研究員 鈴木 利光
サマリー

◆2013年1月7日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、バーゼルVの流動性規制、流動性カバレッジ比率(LCR)の改訂版(改訂テキスト)を公表している。

◆LCRとは、「適格流動資産」を「30日間のストレス期間に必要となる流動性」で除することによって得た割合を指す。BCBSは、2010年12月に公表した「バーゼルV」にて、新たにLCRをバーゼル規制(国際的な銀行の自己資本比率規制に関するガイドライン)に加えている。

◆改訂テキストは、2010年12月公表のLCRテキスト(ドラフト)のアップデート版であり、一部の要件の緩和や明確化が施されている。

◆ドラフトからの主な変更点は、@適格流動資産の範囲の拡大(信用格付BBB-以上の非金融社債、株式指数構成銘柄である非金融法人の上場株式、信用格付AA-以上のRMBSを新たに算入)、A一定の資金流出項目の掛け目の緩和(例えば、事業法人等からの無担保ホールセール調達の流出率を、従来の75%から40%に緩和)、B2015年から2019年の段階的実施の導入(従来は2015年から完全実施)、の3点である。

◆今回の改訂の目玉は、RMBSを適格流動資産に組み入れることの許容だろう。これを「証券化商品の帰還」と表現できるかもしれない。しかし、報道によると、米国にて発行されているRMBSの多くは、今回の改訂の恩恵を受けることができないという。

◆というのは、改訂テキストは、適格流動資産に組み入れることができるRMBSを、完全償還請求権付(フル・リコース)のものに限定しているが、米国のRMBSの多くはこの要件を満たさないためである。こうしたフル・リコース要件は、欧州の多くの国におけるRMBSをも適格流動資産から除外することになるという。

◆BCBS加盟国が改訂テキストを自国の法規に落とし込む際に、こうしたフル・リコース要件をそのまま受け入れるか否かについては、注視する必要があるだろう。

http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/financial/20130318_006942.html
http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/financial/20130318_006942.pdf

指標金利に関する国際決済銀行・経済諮問委員会ワーキンググループによる報告書の公表について
2013年3月18日
日本銀行

今般(3月18日)、指標金利に関する国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)・経済諮問委員会ワーキンググループの報告書 "Towards better reference rate practices: a central bank perspective" が公表されました(原文<国際決済銀行ウェブサイトにリンク>)(要旨の仮訳 [PDF 197KB])。

指標金利に関するワーキンググループは、昨年9月のBIS総裁会議において、中央銀行の立場から、LIBORにとどまらず幅広く指標金利の現状や望ましい姿に関して検討を深め、指標金利を巡る議論に貢献していくことを目的に、設置が決定されました。ワーキンググループの議長は日本銀行理事の中曽宏が務め、日本銀行はBISとともに事務局機能を担いました。

本報告書は、2013年3月に行われたBIS総裁会議において、各国総裁の同意により、公表されることになりました。

本報告書では、各国中央銀行による調査分析やワーキンググループによる民間金融機関等との対話から得られた知見を踏まえつつ、指標金利を巡る実務の向上のため、既存の指標金利の信頼性・頑健性を高めることの重要性や、指標金利の選択の幅を広げることの必要性を指摘しています。経済諮問委員会の議長を務めるマーヴィン・キング・イングランド銀行総裁は、「本日公表された報告書は、金融市場で使用されている指標金利について現在進められている検証作業に対して、重要な貢献をなすものである。(選択の幅を広げることにつながる)代替的な指標の育成を支援するうえで、中央銀行が重要な役割を果たさなければならないことは明らかである」と述べています。


(仮 訳)
より良い指標金利実務を目指して―中央銀行の視点から―
国際決済銀行・経済諮問委員会ワーキンググループの報告書

要旨
本報告書は、中央銀行の視点から、指標金利の利用と作成に関する論点について検討したものである。これらの論点は、金融政策の効果波及や金融システムの安定に対する潜在的なリスクを踏まえて抽出されている。潜在的なリスクは、指標金利の設計上の欠陥、市場濫用行為(market abuse)や、市場参加者が、実際に求めている、または必要としている経済的特性を有していない指標金利を利用することにより生じ得るものである。IOSCO1、EBA2/ESMA3、英Wheatleyレビューなど、他の組織や法域における取組みと並行する形で、本報告書は、中央銀行の視点から、指標金利に関連する実務の改善方法について提言を示している。本ワーキンググループ(以下WG)は、既存の指標金利の信頼性および頑健性を向上させることの緊要性、および、指標金利の選択肢を増やすことの重要性を指摘している。いずれの点についても、民間および公的セクターの迅速な行動が必要である。
最近の指標金利を巡る状況は、現在の指標金利実務の見直しの必要性を強く示唆している。第一に、不正操作の事例は、いくつかの主要な指標金利の信頼性と算出のプロセス・方法論の妥当性についての懸念を惹起した。第二に、2007年以降の市場取引の急激な収縮は、無担保銀行間市場におけるターム物金利をもとに作成される指標金利(例:Libor、Euribor、Tibor)の、特にストレス時における頑健性と有用性について、疑問を投げかけた。さらに、有担保取引の拡大や標準化されたOTCデリバティブ取引における中央清算への移行といったデリバティブ市場の構造変化は、銀行の信用リスクを反映しない指標金利に対する需要を増加させる可能性がある。結果として、WGは、異なる目的に応じた指標金利の選択肢が複数存在することに対する需要があるという認識を共有している。
こうした状況や現行の指標金利の作成手続きは、金融政策の効果波及および金融システムの安定に影響を及ぼし得る。金融政策の効果波及という観点からは、
(訳注1)証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions)。
(訳注2)欧州銀行監督機構(European Banking Authority)。
(訳注3)欧州証券市場機構(European Securities and Markets Authority)。
2
指標金利は、特にストレス下において予期せぬ動きをする可能性がある。その結
果、経済全体の資金調達環境に、予期せぬ、または望ましくない形の変化をもた
らしかねない。そのようなリスクは、ストレス環境下において変動しやすい要素
を含む単一の指標金利に対する市場参加者の依存度が大きい場合に、より悪化し
得る。さらに、(金融市場の)クロスボーダー的側面が、金融政策と国内で用い
られる主要な指標金利との間の関係を歪める可能性がある。
より高い信頼性と頑健性を兼ね備えた指標金利の枠組みは、金融システムの安
定性をさらに高める方向で多くの潜在的な利点を有している。まず、信頼性が低
いことが明らかになることにより指標金利に対する信認が失われることは、特に
一部の契約については指標金利が入手できない場合の代替手続き(fallback
arrangement)が用意されていないことから、市場機能の混乱につながり得る。次
に、作成手続きに問題がある指標金利は、様々なリスク、中でも銀行の資金調達
コストにかかるリスクを、不適切な形で他の経済主体に移転させてしまう可能性
がある。同様に、問題がある指標金利は、価格付けの誤りを金融市場全体に移転
させてしまったり、過大でかつ不必要なベーシスリスクを生じさせかねない。最
後に、指標金利の信頼性が損なわれた場合、中央銀行が金融面の脆弱性に対して
効果的な対応をとることが難しくなる可能性がある。
WG は、指標金利の作成における健全な枠組みが、市場が適切に機能するうえ
で必要不可欠と考えている。従って、指標金利が信頼性および頑健性を有し、市
場濫用行為または構造的に誤りが発生することを防ぐために適切なガバナンス
および運営がなされている状態が確保されるよう、公的セクターと民間セクター
の双方が速やかに対応する必要がある。実取引データをより多く利用し、これに、
透明かつ適切な形で専門家としての判断を組み合わせる健全な金利設定手続き
の構築を促進することによって、指標金利の強靭性は向上する。また、主要な指
標金利が提供されなくなる事態に備えて、各契約が頑健な危機時の代替手続きを
確保するような取組みがなされるべきである。
このことは、指標金利の信頼性と頑健性を向上させる、より強固なガバナンス
の枠組みを構築するための幅広く合意された原則を策定するうえで、公的セクタ
ーが重要な役割を担うべきであることを示している。仮に、既存の、または修正
後の指標金利のガバナンスと運営水準が不十分なものにとどまる場合には、中央
銀行と公的セクターは、民間セクターと協力して、十分な頑健性と信頼性を兼ね
備えた指標金利の創出に取り組む必要が生じ得るほか、移行に際しての潜在的な
障害を克服することを手助けする用意も必要であろう。なお、公的セクターは、
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幅広く合意された原則の策定やガバナンスの枠組みの強化に際しては一定の役割を担うべきであるが、適切にガバナンスと運営がなされている指標金利の中からいずれを選択するかは、民間市場参加者に委ねるべきである。
これまでに指摘した課題に対して中央銀行が採り得る対策は多面的に存在する。中央銀行は、国内および国際的な規制当局と協力しつつ、現在進められている指標金利のガバナンスと運営を強化するための改革に関与すべきである。中央銀行は、関連する国内の規制主体および当局と共に、十分な信頼性と頑健性を有し、かつ、各主体のニーズに最も適合する指標金利を民間主体が使用することを促す指針の策定に取り組むべきである。また、中央銀行は、既存の規制および監督上の権限を用いて、規制対象金融機関のレート呈示プロセスを評価することについて、必要に応じて、関連当局と協調して取り組むべきである。
市場参加者は、信頼性と頑健性を兼ね備えた複数の指標金利の中から、利用目的に沿ったものを選べるよう選択肢を有するべきである。特に、金利リスクのエクスポージャーを管理するために、広く受け入れられ、流動性があり、銀行部門の信用リスクを含まない指標金利の育成は、有益であるだろう。また、民間セクターにとっても、市場参加者のそれぞれのニーズにより適合する指標金利の選択肢を増やすことは、望ましいはずである。指標金利が実際の市場実勢を反映していることを確保するために、指標金利の設定に貢献することは、市場参加者自身にとって大きな利益になる。しかしながら、ネットワーク外部性、代替指標の開発に向けた取組みの不足、市場参加者の不十分な協調などの市場の失敗が起こり得る。さらに、市場規模を踏まえると、どのような変更であっても、(指標金利の)移行にはかなり大きな課題が生じる。
指標金利の選択肢の幅を広げるために中央銀行が採り得る施策には様々なものがあり、その中には、現在主として利用されている銀行部門の信用リスクを含む指標金利からのシフトを促すことや、移行に対する各種の制約を緩和することも含まれる。比較的控え目な取組みとしては、中央銀行は、指標金利の参照元となる市場の透明性を向上させるよう働きかけることで、変化を促すことが可能であろう。また、中央銀行は、指標金利の選択肢を拡充するために、オーバーナイトレート、OISレート、GCレポレートなどの(ほぼ)リスクフリーな指標金利4の発展と改善を促進することが可能である。公的セクターは、望ましい変化に向けて、市場参加者や業界団体が一体となって取り組んでいくことを促すことや、移
(訳注4)LIBORなどの指標金利は概念上、(a)リスクフリー金利と(b)銀行部門共通の信用リスクを含む一方、OISレートなどは(b)の部分を含まない。
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行を円滑なものとすることを支援することが可能である。場合によっては、中央銀行はより積極的な役割を果たすことも可能である。(指標金利の)頑健性は最終的には流動性のある市場をベースとした健全なレート設定プロセスに依拠するが、例えば、指標金利の設計および作成に中央銀行が直接に関与することが挙げられる。実際の関与の方法は、市場の失敗の度合いと、市場構造、規制の仕組み、各当局の役割といった、それぞれの国や通貨地域における固有の環境によって決まる。(指標金利の)多様性という論点は重要であり、この分野における民間および公的セクター双方の取組みが、可及的速やかに開始されるべきである。
以 上

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130318a.htm/


デリバティブ取引に関する定例市場報告(2012年12月末)−13-03-19
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国際的な金融規制改革の動向(6訂版)−13-03-19
JCERアングル−月曜10時便「あるかもしれない新生日銀の臨時会合」、「どこでもドア...−13-03-19

投資環境ウィークリー〜金融市場は20日に発足する黒田日銀の第一手に注目−13-03-19


05. 2013年3月19日 04:16:32 : sekAj4S9tQ
記事にしろ、投稿にしろ、長ければいいというものではない。

06. 2013年3月19日 05:02:47 : JfFbs5hoTk

公共投資 叩き をまだ続けるつもりか、

バラマキ、談合、利権、甘い汁。

こんな馬鹿をまだ言ってるヒョーロンカは、まったく信用できない野郎だ。

 国家が需要を創出する、戦争規模の超巨大な需要を創出しないといけない。
 運良くと言ったら悪いが、地震噴火など巨大災害が迫っている時期だ、
 天与のなにだ。

未来は、社会主義、あるぃは国家資本主義、へ行かざる得ないやうにももふ。
金狂い資本主義はいづれ終わる。


07. 2013年3月19日 13:10:04 : 96S95qz2LY
いつもxEBOc6ttRgは関連記事を何個も全文コピペしてるけど
読みにくくて邪魔だからフォローアップ投稿を使えよ。
本当に邪魔で迷惑でしかないから。

08. 2013年3月19日 20:03:25 : xEBOc6ttRg
白川日銀総裁:期待への働き掛けには「危うさ感じる」−退任会見 (1) 

  3月19日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は19日午後、退任会見を行い、5年間の任期について「一言で言うと、激動の5年間だった」と述べた。20日から発足する新体制については「物価安定の下での持続的成長を実現するよう、適切な政策運営がなされることを期待している」と表明。一方で、市場の期待に働き掛ける金融政策運営については「危うさを感じる」との持論をあらためて展開した。
20日に総裁に就任する黒田東彦氏は先に衆院で行われた所信聴取で「金利引き下げの余地が乏しい現状では、市場の期待に働き掛けることが不可欠だ。もし私が総裁に選任されれば、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けてやれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたい」と表明した。
白川総裁は「市場とどう向き合うのかというテーマは非常に重たい課題だ」と指摘。「もちろん市場は中央銀行のコミュニケーションの重要な相手だが、市場参加者にとって望ましいことが、長い目で見た経済の安定にとって望ましいことと、必ずしも一致するわけではないと感じている」と述べた。
その上で「期待に働き掛けるという言葉が、中央銀行が言葉によって、市場を思い通りに動かすという意味であるとすれば、そうした市場観、あるいは政策観には危うさを感じる」と語った。
物価だけ上がればよいわけではない      
景気の現状に関しては「海外経済が持ち直しの兆しを見せ、またグローバルな金融市場でもリスク回避姿勢が後退するなかで円安や株高が進行し、マインドも改善傾向にある。何よりも競争力と成長力の強化に向けた議論が始まりつつある」と指摘。新体制に対して「せっかくのチャンスなので、是非ともこれを生かし、日本経済が物価安定の下での持続的成長を実現するよう、適切な政策運営がなされることを期待している」と語った。
2%の物価目標に関連して、「われわれが実現したいことは、単に物価が上がればよいということではなく、デフレから早期に脱却し、物価安定の下での持続的成長を実現することだ」と言明。「物価が2%上がり、給料も同率上がるだけでは、国民の生活水準が向上するわけではない。物価が上がり、円の為替レートが同率で円安化しても、対外競争力が高まるわけではない」とし、「物価上昇の下では歳入も増えるが、歳出も増えるので、財政バランスの改善効果も限定的だ」と述べた。
その上で「実現したいことは、実質経済成長率、人口減少社会では1人当たり実質GDP やGNI(国民総所得)成長率になるかもしれないが、これらが高まり、その結果として物価上昇率が高まっていくという姿だ」と語った。
また、消費者物価指数 (生鮮食品を除いたコアCPI)の前年比上昇率について「消費税率引き上げの影響を除いてみても、2014年度中の平均はプラス0.9%と、同年度の後半には1%に達する可能性が開けつつある」と述べた。
貨幣だけですべては説明できない
デフレは貨幣的現象か、あるいはデフレの原因は何かという質問に対しては「ある意味でこれは5年間ずっと付いて回った問いだ。どのような経済活動もすべてお金を必要とするという意味では、すべての経済活動は貨幣的現象と言えるが、だからと言って、すべての経済現象を貨幣だけで説明できるわけではない」と指摘。
さらに、「仮にこの命題を、中央銀行が供給する通貨、いわゆるマネタリーベースを増加すれば物価が上がると解釈すると、過去の日本の数字、あるいは近年の欧米の数字が示すように、マネタリーベースと物価との関係とのリンクは断ち切れている」と語った。
その上で「デフレを克服する上で中央銀行の強力な金融政策が必要ないのかというと、もちろん必要だが、同時に、現在日本が置かれた状況を考えると、競争力・成長力強化に向けた幅広い主体の取り組みが不可欠だ」と述べた。
市場との対話
市場とのコミュニケーションが足りなかったのではないか、という質問に対しては「異例の事態の下で政策を展開していく上では、政策の背後にある経済情勢についての判断について丁寧に説明する、政策意図を丁寧に説明するとともに、ありうべき効果とコストについても丁寧に説明する必要がある、それこそが独立した中央銀行としての誠実な対応であるという思いで対応した」と語った。
その上で「もちろん、効果だけあってコストやリスクがないという政策があれば理想的だが、残念ながらそういう政策はない。金利水準が極めて低く、中央銀行のバランスシートも著しく拡大し、財政状況も非常に厳しいという現在の日本の状況では、効果とコストの比較衡量という視点は重要だ」と言明。「過去の経験が示すように、コストやリスクが顕在化するのはずっと後になってからであり、いったん顕在化した場合は、その影響は大きくかつ長く持続する」と語った。
5年間の任期中は「リーマンショック、欧州債務危機、東日本大震災、2回の政権交代と、めったには起きないことが次から次へと起きた」と指摘。「その下で急速な円高の進行をはじめ、経済・金融も当然大きな影響を受けた」と述べた。
総裁時代を含め39年間の日銀在職期間については「中央銀行の仕事は奥深い。大変恵まれた職業人生だった」と述べた。退任後については「明日からはまったく自由の身になるので、趣味のバードウオッチングを含めてゆっくりしたい」と表明。生まれ変わっても再び日銀総裁をやりたいかという問いに対しては「そんなふうには思っていない。人生はそれぞれチャレンジのしがいのあることがたくさんあるのだろうと思っている」と語った。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/19 18:43 JST


09. 2013年3月19日 20:10:19 : xEBOc6ttRg
2013年03月19日 09:58 経済
アメリカから見たアベノミクス


きのうのアゴラチャンネル増刊号は、クルーグマンにもよく引用される著名ブロガー、ノア・スミスをゲストに迎えて、アメリカ人にアベノミクスがどう評価されているかを聞いた。

ノアのアベノミクスに対する評価は高く、「人々の気持ちをポジティブにしたのはとてもいいことで、海外の日本を見る目が変わった」とほめていたが、インフレ目標の実現はむずかしいという。「インフレ予想は過去に強く拘束されるので、日銀だけで2%のインフレを実現するのは無理だ」という。「大事なのは成長の結果としてインフレになることで、インフレだけ起きても年金生活者が怒るだろう」。

最優先の政策は、TPPなどの対外開放でアジアとの連携を強めることで、前の安倍政権のとき日本経済が回復したのも、中国への輸出や海外生産だった。同じぐらい大事なのは規制改革で、ゾンビ企業を延命する規制はやめ、バカげた公共事業もやめるべきだ。この点で、安倍首相は党内の古い勢力を抑えきれていないのではないか。

クルーグマンは欧米の財政タカ派と闘っているのでアベノミクスをほめているが、あれは政治的メッセージで、日本の財政状況は危険だ。日本人はまじめなので、今すぐハイパーインフレが起こるとは思わないが、老人と若者の不平等は信じられないほど大きい。若者は反原発でデモするより、今の年金制度に反対する暴動を起こすべきだ。有権者の過半数を老人が占める国会では、永遠に改革はできない。

おもしろかったのは、番組のあと居酒屋でノアが「アメリカ人は日本人よりconformistだ」と言ったことだ。「日本軍についての本を読むと、共同作戦で陸軍が海軍をだましたり、二・二六事件では青年将校が上官を殺したりしているので驚いた。米軍では上官の命令は絶対で、兵士が上官にさからうことはありえない」という。

これは私の今度の本のテーマで、日本人は実はアメリカ人より民主的でボトムアップなのだ。天皇は最高権威だが、何も決めることができない。意思決定の主体は最下層のムラで、そこで決まった「空気」は軍の命令より重いから、上官も大臣も殺す。それが日本なのさ――というと、意外なような納得したような顔をしていた。


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風が吹いたら岩田規久男氏の桶屋はもうかるのか
http://ikedanobuo.livedoor.biz


 

言論プラットホーム・アゴラの映像コンテンツ「アゴラチャンネル」。3月18日月曜日は午後9時からアメリカの経済学者で、著名な経済ブログを運営するノア・スミス氏を招き、池田信夫アゴラ研究所所長との対談「アベノミクスをどう評価するか?リフレ派の論客と日米討論」 "Japan-US debate on Abenomics"を放送します。 アゴラチャンネルは毎週金曜日の番組ですが、今回はスミス氏の来日に合わせて、18日月曜日午後9時から行います。対談は英語で行いますが、番組中で池田氏が内容の要旨を視聴者の皆さまに紹介します。 安倍政権の採用するアベノミクス。その政策の採用後に、日本では株高、円安が生じました。そして、自民党政権が提唱するリフレ政策に、日本では賛否両論がわき上がっています。経済学者の間では、批判する人が主流です。池田氏も批判派の中心の一人です。 一方で、ノア・スミス氏は「効果はない」という批判を理解した上で、それでも山積する日本の問題を解決するためにリフレを試してみる価値があるのではないかと主張しています。 ノア・スミス氏のアゴラへの寄稿 「どうして「リフレ」にチャンスを与えないのか」http://agora-web.jp/archives/1509881.html (英語版)Why Not Give Rifure a Chance? http://ja.scribd.com/doc/118287051/Why-Not-Give-Rifure-a-Chance-By-Noah-Smith スミス氏はアメリカの経済学者で、ニューヨーク州にあるストーニー・ブルック大学の准教授です。日本での学術論文の編集、リサーチを行った経験もあります。そのブログ「Noahpinion」http://noahpinionblog.blogspot.jpは、米国で注目を集め、プリンストン大学のクルーグマン教授もブログで頻繁に引用しています。 (アゴラ編集部)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv130118274

 

特別寄稿/ゲストブロガー
どうして「リフレ」にチャンスを与えないのか --- ノア・スミス(Noah Smith)
 

この20年の間、日本で経済金融の議論ができるほどの人々の意見は大きく分かれていた。いわゆる「リフレ派」は、デフレを終わらせるために日銀のビッグ・プッシュ(民間に投資を即して経済成長させるための圧力をかける政策)を支持しているが、「リフレ」に反対する陣営は、そのような圧力が無駄になったり、あるいはハイパーインフレによる壊滅的破滅につながったりすることを懸念している。日本銀行は周知の通り保守的だが、「リフレ派」は(政権復帰した自民党の)安倍晋三氏という強力な援軍を得た、と感じているようだ。安倍氏が日銀の考えを覆すことに前向きで、かつその能力を持っているのを発見したことは(彼らにとって)画期的なことだった。
私はブログの中で、金融政策の有効性について懐疑的な考えを何度も書いてきた。私はマクロ経済学者というより金融エコノミストだが、大学院ではマクロを学んでおり、金融緩和支持者の理論モデルが持っている硬直性や限界について直接的な経験がある。米国の「リフレ派」のうちより極端な人々は、中央銀行がマクロ経済を完全に制御している、と主張しているが、私は彼らの主張には懐疑的だ。インフレを引き起こす中央銀行の努力はうまくいかないものだし、それが実を結ぶのは破滅的「成功」の瞬間、実体経済の助けになどまったくならないインフレの中で急激な「スナップアップ」を引き起こすときである、ということも大いにありうる、と私は思う。安倍晋三氏のリーダーシップにも大して期待しているわけではない。彼が最初に日本国総理大臣になり、それを辞めたときのことを覚えているからだ。

だから、私が日本と米国の両方で「リフレ派」を強く支持していることを知ったら読者は驚くかもしれない。ここではその理由を説明させていただきたい。

第一の理由は、利益がリスクと釣り合っていない、と思われるということである。リフレは日本が抱えている最重要問題のうちの3つ、つまり
景気低迷
デフレ
莫大な国の借金
を一度に解決するのに役立つ可能性を秘めている。金融緩和を実施すれば、おそらく日本の失業率が少し下がり、また円が値下がりして輸出業者を助けることになるであろう。それはまた140%超で先進国世界中最高である国債の実質価値を減らすことにもなるだろう。

他方、唯一のリスクはハイパーインフレだ。我々はハイパーインフレをどの程度恐れるべきなのだろうか? 経済への影響という面では、それは国家債務不履行に非常によく似ているが、超過支出を制御しないかぎり日本はどのみちその方向に向かって進んで行く。ハイパーインフレは貯蓄を破壊し、経済活動の一時停止を引き起こす。それは政府が厳しい緊縮財政の実施を強いられるまでの約1年間、継続するだろう。ハイパーインフレが終わった後、経済は往々にして経済活動の再起動とともに強力に回復するのである。

言い換えるならば、ハイパーインフレは悪いものではあるが、それが世界の終わりというわけではない。しかも、それは起こりえない事態であるように思われる。ハイパーインフレは歴史上まれなものであり、通常は戦争など、実体経済への深刻な混乱と同時に起こるものだからだ。

だから、リフレについて熟慮するときには、三つのとても重要なものが得られるという起こりうる可能性と、一つの損失ではあるが、世界の終わりというほどではない損失だ、という起こりそうにない可能性との間でバランスをとる必要がある。そして、そのリスクは負うに値するものである、と思う。

私がリフレをサポートする第二の理由は、それが日本の将来に対する賭けを意味するからである。インフレ(で棄損されるの)は基本的に税金である。インフレで貯蓄が目減りすると、固定された名目金利でお金を借りている人々(例えば、日本の国債を所有している人々)が大損する。しかし、日本の国債を削減するための他の方法としては、消費税や所得税を上げることしかない。インフレが高齢の退職者をより多く傷つけるのに対し、消費税及び所得税は若い労働者をより多く傷つける。

現在、日本の若者は巨大な圧力のもとにある。彼らは日本の終身雇用制の終焉に苦しんでいる。日本の新しい労働者のほぼ半数がフルタイムのサラリーマンではなくパートタイマーや契約社員であると推定されている。これはつまり、楽で古い終身雇用制度のもとで団塊の世代が享受した経済的利点のほとんどを若い人たちは享受しないであろうということを意味する。それだけでなく、日本人の出生率の低さは、若い人々が現在、どんどん多くの高齢の親族──通常の状況下でさえ過重な重荷──をサポートすることを期待されているということをも意味している。

日本の若い世代は、巨大な経済的圧力のもとで崩壊しつつある。働いている親たちには子どもと高齢の親族の面倒を同時に見るだけの時間やお金はもはやなく、それとともに出生率が低下し、それが悪循環を続けている。自殺率は引き続き高く、特に労働者の間でそうである。うつ病が蔓延している。

その一方で、今日の国債の多くは、団塊の世代のメンバーに恩恵を与えた政府支出の名残である。もしその債務が高い課税を通じて返済されるとしたら、一時的にして今はなき終身雇用システムによる不公平だけではなく、若い世代から老いた世代へと富が大移動することをも意味する。一方、団塊の世代の人々は自らが享受した政府からの豊かな給付に対する支払いを余儀なくされるのであるから、インフレ傾向は高齢者にとっては税として機能する。したがってインフレは、日本の借金を減らす方法としてもより公平なものであると私には思われる。

もちろん、たとえリフレが機能する場合であっても、それが日本の経済問題のすべてを解決するわけではない。構造的欠陥は、日本の生産性の足を引っ張ってきた。貧弱なコーポレートガバナンスや硬直した労働市場は、インフレ率の上昇によっては解決されない。しかし、現在のデフレ環境においてこれらの制度を改革するのは困難である。

提唱されているリフレの方法の中では、二つのものが最も有望である。その第一はNGDPレベルターゲティング(名目GDP水準目標)であり、日本を安定した穏やかなインフレなき成長路線に戻すためなら何でもすると、日本銀行は約束する。この計画が実施されれば、日銀は経済の健全性を向上させるために必要なだけの金融資産を購入しなくてはならなくなるが、これは最近、米連邦準備制度理事会で採択された政策と同様なものになるだろう。

第二の可能性は、私のアドバイザーであるミシガン大学のマイルズ・キンボールによって提案された「電子マネー」という考え方だ。この提案のもとでは、政府は紙の現金と電子マネーとの間に「為替レート」を確立する。これにより日本銀行は電子マネーの名目金利をゼロ以下に下げることができ、国民は貯蓄の目減りを避けるためにより多くのお金を使うようになるだろう。このアイデアは型破りだが、こんな異常事態では大胆な実験も必要だ。

ようするに、個人的に私は「リフレ」に懐疑的だが、「リフレ」は日本のスタグフレーションの長いスパイラルを終わらせるための選択肢として最も問題が少なく最も危険の少ないものだ、とも考えているのである。

追記:「リフレ」は英語にある単語だが、私は金融政策の議論でこの単語が使用されているのを聞いたことはない。米国は長い間、デフレ状態ではないので、我々はインフレに「re」をつけることなどしなかったんだろう。

編集部より:この記事はノア・スミス氏より寄稿されました。興味のある方は同氏のブログ「Noahpinion」もご覧ください。また、原文はこちらに置いてあります。
関連記事:
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「依存と分断」のシステムを超えて(上) --- 武内 和久
「依存と分断」のシステムを超えて(下) --- 武内 和久
日本は「リフレ」をすべきか? --- ノア・スミス(Noah Smith)
http://agora-web.jp/archives/1509881.html


10. 2013年3月19日 20:22:28 : xEBOc6ttRg
沖田 総 · 愛知県西尾市
ハイパーインフレとか国債暴落で金融システムが毀損とか考える事が極端ですね。
金融機関は国債が下落しても損をしないようポートフォリオを組んでますよ。
インフレになれば株等は上昇してむしろ莫大な利益が出るでしょう。

因みに最後の
『ようするに、個人的に私は「リフレ」に懐疑的だが、「リフレ」は日本のスタグフレーションの長いスパイラルを終わらせるための選択肢として最も問題が少なく最も危険の少ないものだ、とも考えているのである。』
は原文を見るとスタグフレーションではなく"stagnation"=停滞の間違いですね。
返信 · 5 · · 1月26日 2:49

辻 元 · トップコメント投稿者
インフレが昂進した場合の問題は、ハイパーインフレは起きなくても、財政破綻は避けられなくなることでしょう。 財政破綻が起きた場合に、それが、高齢者や資産家に多くの損害を与え、若い世代には、多くの損害を与えない、というのは、誤りだと思います。
なぜなら、金融システムが毀損するからです(国債の保有者は個人ではなく金融機関です)。 金融システムが毀損すれば、企業の経営が行き詰まり、不景気になることは、バブル崩壊や、リーマンショックを見れば、明らかでしょう。

また財政破綻後、円安で日本企業が復活するというのも幻想だと思います。エネルギーのほぼ全量、食糧の半分以上を海外からの輸入に依存していることを忘れてはいけないでしょう。

現在の日本で、何かを操作すれば好景気になるということは、あり得ない話です。

世界経済が直面している問題は、安くて豊富なエネルギーの時代の終焉であり、少なくとも先進国では、高い成長は最早不可能だと考えます。 現在の実質1%の経済成長は、上出来ではないでしょうか。 これが不満足なものであるというのは理解しますが、これは経済のパラメータの操作で乗り越えられないものです。 

低成長が続けば、資本主義は、現在の形では継続できないので、マイナス金利などの模索が必要ですが、資産を実物に替える動きが大きくなり、上手くゆかないように思います。 
返信 · 5 · · 2012年12月28日 23:48

井上 晃宏 · トップコメント投稿者 · 東京大学大学院
単純に、好景気を作り出したいんだったら、経済をいったん壊滅させるだけでいいんです。リーマンショックの直後だって、好景気になりました。2010年の日本は4.5%成長です。その前年に5.5%も減りましたが。
重要なのは、変化率ではなくて、水準だと思います。壊滅した後で、成長率が回復したところで、元の水準に戻るだけだったら、何の意味もない。
返信 · 2 · · 2012年12月29日 1:18

辻 元 · トップコメント投稿者
そうですね。 今の状態は、エネルギー制約でパイが大きくならないのに、新興国が台頭してきているためい「目に見えない天井」があるので、景気が良くならない、ということですね。

どう考えても、世界の人々が現在の日本人並みの生活水準を得ることは不可能、ということを考えるだけでも、事態は明らか過ぎるほど明らかですね。
返信 · 2 · · 2012年12月29日 2:44

伊東 良平 · トップコメント投稿者 · 明治大学
辻先生のコメントを読んで誤解する人がいるかもしれないので、補足の意味で反論します。

 日本の場合、次のふたつの前提を置けば、インフレになっても財政破綻しません。

・インフレに連動した社会保障給付をしない(年金生活・生活保護・公的医療などの切捨て)
・インフラの修繕・更新放棄(インフラは住民の直接負担で維持する。負担できない地域は廃墟へ)
・中央銀行が無尽に国債を買い続ける(幾らインフレになろうとも、国債利回りを上昇させない)

 以上を行えば、政府が”資金調達”を続けられるので、財政破綻しません。
 つまり、インフレになっても財政破綻”させない”方法はあります。政府が政府として機能しなくなるだけです。
返信 · · 2012年12月29日 15:52
他1件

森中 定治 · トップコメント投稿者 · 名古屋大学
森中定治です.大変面白い例え(比喩)ですね.正しいかどうかはともかくとして私には初めてでした.

(1)リフレ政策は,大きな利点が3つもある.一方それが失敗したときは大変な禍い(リスク)を引き起こすが,一つである.しかもその可能性は低い.
(2)原発はその稼働によって様々な利益をもたらす.一方,それが失敗した場合は大変な禍いとなるが,その可能性は低い.

(2)の論法によって現在の原発を推進するのであれば,同じ論理である(1)を否定できないでしょう.安倍政権が(2)を考えているなら,(1)を否定すれば支離滅裂のそしりを免れ得ないでしょう.

ノア・スミスさんはお名前から察するに欧米人らしいですが,確かに欧米人らしい論理の組み立て方で,これが日本で言ういわゆるロジカルシンキング,とか論理的ディベートというやつでしょう.単純で分かり易いために,圧倒的な破壊力ですね(笑).欧米人らしいです.


11. 2013年3月21日 17:02:12 : 5FidTbXBPE
ドル95円後半に下落、麻生財務相が物価目標達成に懐疑的見方
2013年 03月 21日 16:06 JST
[東京 21日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べてドル安/円高の95円後半。

午後、日銀が掲げる2%の物価目標について、麻生太郎財務相が2年での達成に懐疑的を見方を示すと、ドル/円のロングポ

ジションの解消につながった。

午前には、国内投資家のドル売り/円買いが上値を抑える一方、株高や黒田東彦日銀総裁への期待感がドル/円を下支えした

午後の参議院財政金融委員会で、麻生財務相は日銀が目標とする2%の物価上昇率について「2年で簡単にいくかなと正直思

わないではない」と発言。ドル/円は弱含み、95.69円まで下落した。欧州系銀行の関係者は「きょうは黒田日銀総裁の

会見に期待感があるから、ロングを落とすような発言にはナーバスになっている可能性がある」と指摘した。

日銀の黒田総裁、岩田規久男・中曽宏両副総裁は午後6時から就任会見に臨むが、この関係者はドル/円の下落リスクに警戒

している。「いつものことだが、(日銀関連の会見は)あまり大した発言がなくて(ドル/円)が売られるパターンが多い」

と話し、「昨日の夜(ドル/円は)けっこう盛り上がったので、その分、怖い感じがする」と付け加えた。ドル/円は、前日

のニューヨーク時間に96.13円まで上昇した。

三菱東京UFJ銀行・市場企画部の内田稔チーフアナリストは、黒田日銀総裁の就任会見について、資産買入基金の増額規模

や購入する国債の残存年限、購入資産の種類について、具体的にどれだけ踏み込んだ発言がなされるか、臨時会合の可能性が

示されるかといった点が焦点になると指摘した。

そのうえで、ドル/円が100円方向を目指して上昇するためには「日銀の緩和策で結構なものが出てくるという期待感、な

いしは実際に出てきたものが市場の期待を上回るということが(黒田総裁のもとでの最初の日銀金融政策決定会合が終わる)

4月4日の段階で必要だろう。その翌日発表の米国の雇用統計で(非農業部門雇用者数の前月比増加幅が)もう一度20万人

を超えるという材料がそろえば、100円というところは視野に入る」とした。

内田氏は、きょうの会見で金融緩和策について具体的な示唆がなされなくても、失望感で大きくドル/円が下がる展開は見込

みにくく、4月3―4日の日銀会合までは金融緩和への期待が持続するとみている。

(ロイターニュース 和田崇彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K04B20130321


 


円が上昇幅拡大、黒田日銀総裁の会見控え対ドル一時95円69銭

  3月21日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では、円が上昇幅を拡大している。ドル・円相場は午後に入り一時1ド

ル=95円69銭まで円が買われる場面があった。市場関係者は、この日の午後6時から開かれる日本銀行の黒田東彦新総裁と岩

田規久男、中曽宏両新副総裁の就任記者会見に注目している。
午後2時35分現在のドル・円は95円79銭近辺。午前8時50分に発表された2月の日本の貿易収支が事前予想を下回る赤字額と

なったのを背景に円買いが先行。日中にかけては95円台後半でもみ合っていたが、午後の取引が進むにつれて再び円買い圧力

が強まっている。
外為どっとコム総合研究所のジュルベズ久美子研究員は「会見で市場の期待に応えられるか見極めたい。就任会見で、次回会

合での緩和期待を持ち続ける内容の話をすれば、円安基調が続くだろう。一方、前評判ほど大きな緩和にならないと判断すれ

ば、期待が剥落して円高に振れる可能性もある」と述べていた。
朝方の相場は前日のニューヨーク時間遅くの取引の流れを引き継ぎ96円台前半で推移したが、貿易収支の発表を受けて95円台

後半に円が水準を切り上げた。ユーロ・円相場は同時刻現在、1ユーロ=124円ちょうど付近。一時は123円86銭まで円が買わ

れた。ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.2945ドル付近。
楽天証券の相馬勉債券事業部長は、相場の動きについて、「多少、貿易統計が効いているものの、赤字基調は続いている。貿

易収支の基調はそれほど良くはない」と指摘した。
貿易統計
財務省が発表した貿易統計速報(通関ベース)によると、貿易収支(原数値)は7775億円の赤字。ブルームバーグ・ニュース

のエコノミスト調査による予想中央値は8559億円の赤字だった。
みずほ信託銀行の中野貴比呂シニアストラテジストは、相場が円高に転じたことについて、「市場の予測よりは若干赤字幅が

小さかったので、そのあたりに反応したのではないか」と指摘。「先行き景気回復すれば徐々に新体制でさらに追加緩和が出

てくるので、そこでさらに円安に振れる可能性はある。ただ、100円ぐらいが当面のめどになるかなと思っている」と述べた


日本が春分の日で祝日だった20日の為替市場では、キプロスへの救済計画に端を発した欧州債務危機の再発懸念が後退したほ

か、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の米経済に対する発言などを背景に、円が主要通貨に対して売られる

展開となった。ドル・円は94円台から96円台へと円安が進行した。
三菱東京UFJ銀行米州金融市場部マーケティンググループのマネジングディレクター、村尾典昭氏(ニューヨーク在勤)は

、バーナンキFRB議長の会見後の相場の動きに触れ、「850億ドルという金額そのものはもしかするともう少し早めに少し

金額を減らすかもしれないということで、米国の長期金利も上昇に転じて、対円、対ユーロでドル買いに転じてきたのかなと

、そういう解釈をしている」と述べた。
バーナンキ議長
バーナンキ議長は20日の記者会見で、「米経済に関する楽観論が高まっており」、「収入に占める利益の割合が上昇傾向にあ

る」ため、株価上昇は驚きではないとの認識を示した。米連邦公開市場委員会(FOMC)は同日発表した声明で、景気浮揚

に向け毎月850億ドルの債券購入を継続する方針を示した。
先進10カ国の通貨で構成するブルームバーグ相関・加重通貨指数では、円は過去3カ月で10%台の下落率と、最も売られた通

貨となっている。過去6カ月では18%近く安くなっている。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net;東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/21 14:44 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJZG3J6JTSEH01.html

「アベノミクス」で日本に20年ぶり希望の光=ブラックロックCEO
2013年 03月 21日 00:54 JST
[香港 20日 ロイター] 世界最大の資産運用会社、ブラックロック(BLK.N)のローレンス・フィンク最高経営責任者(

CEO)兼会長は20日、日本経済の再生とデフレ脱却を掲げた「アベノミクス」が過去20年で初めて日本に希望をもたら

しているとの認識を示した。

香港で開催されたクレディ・スイス・アジアン・インベストメント・コンファレンスで述べた。

フィンクCEOは「日本の状況は変わった。私も日本の取り組みを信じている1人だ。正しい方向に向かっている可能性があ

る」との見方を示した。

日本企業の経営陣も長らく待っていた成長機会に「非常に意気込んでいる」とし、「彼らは何年かぶりに研究への投資を再び

拡大できる」と述べた。

その上で「日本が長い時を経て初めて自ら再生できる状況なのかもしれないというのが私の見解だ」とした。

また過去20年の日本の衰退は、主に韓国にとり大きな追い風となったと指摘した。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92J01G20130320

【第62回】 2013年3月21日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
「日銀理論」の背景にある
「貨幣数量理論は成り立たない」を検証する
「日銀理論」というものがある。簡単にいえば、「日銀はインフレをコントロールできない」というものだ(この意味は後で

説明する)。物価の番人である日銀がインフレをコントロールできないことを「理論」というのも奇妙なことだが、厳然とし

てある。

?これに最も早く異を唱えたのは、今度、日銀副総裁になる岩田規久男氏だ。日本の経済学者の多くが、うすうす変であると

思いながらも、日銀の顔色をうかがっているのかどうかわからないが「日銀理論」をまともに批判しない中で、岩田氏は一貫

してその姿勢を維持し続けてきた。

?その岩田氏が日銀副総裁になるのだから、日銀内部は上を下への大騒ぎらしい。そうした中で、18日(月)に日銀から発表

された人事は多くの人の話題になっている。日銀のエース、プリンスといわれる雨宮正佳氏が大阪支店長から金融政策の立案

を担う企画局担当理事に帰ってきた。昨年5月に、大阪支店長になったばかりなので、1年足らずの帰還は異例だ。

?雨宮氏は日銀企画畑が長く、まさしく「日銀理論」の理論的支柱だ。はたして、日銀理論は放棄されるのか、維持されるの

か、今後のアベノミスクを占う意味で重要になってくる。そこで、今回は「日銀理論」とその背後にある貨幣数量理論の妥当

性を検証してみよう。

日銀は本当にマネーストックを
コントロールできないのか

?さて、日銀理論の歴史を振り返ってみると、岩田氏は、1990年代はじめのバブル潰しのための三重野日銀の金融引き締め策

、マネーストック(金融機関の預金残高総計)の急激な低下を問題視した。それに対して、日銀は猛烈に反論し、日銀はマネ

ーストックをコントロールできないと言い張った。

?両者の間で長い論争が行われたが、結局、植田和男・東大教授がマネーストックのコントロールについて「短期的にはできな

いが、長期的にはできる」と両者の意見を裁定した。なお、日銀は、従来「マネーサプライ」という用語を使っていたが、「

サプライ」できないということで、2008年に「マネーストック」と名称変更している。

?1日とか1ヵ月でコントロールできないのは当たり前であるが、1年程度でコントロールできるのであれば、普通は「コントロ

ールできる」という。しかし、日銀が「コントロールできない」という言い方にこだわるのは、異様であった記憶がある。当

時、岩田氏ともよく話したものだが、もし中央銀行がマネーストックをコントロールできないのであれば、中央銀行はインフ

レ率もコントロールできなくなってしまう。

?それは、当時から、マネーストックは2年後のインフレ率を決めるという関係が知られていたからだ。さすがに、これはマネ

ーストックからインフレ率への因果関係と考えて良い。ちなみに、1969年〜2011年でマネーストックとインフレ率の関係を調

べると、下図になる。


?回帰式を書けば、

インフレ率=−2.1+0.62×2年前のマネーストック増加率?相関係数0.89

?となる。

?日銀は、マネーストックをコントロールできないという言い方をしていたが、実のところ、これは「日銀がインフレ率をコ

ントロール出来ないということ」と(この文の真偽は別として)同義である。というのは、上の回帰式を考えれば、インフレ

率はマネーストックでコントロールされるのが明らかなので、マネーストックをコントルール出来るか、出来ないかは、イン

フレ率をコントルール出来るか、出来ないかと完全に対応しているからだ。

?さすがに、日銀がインフレ率をコントロールできないというと、日銀法などの規定に抵触するのが誰の目にも明らかになる

ので、あえて、専門用語のマネーストックをコントロールできないと論点をそらしをしたのだろう。本音では、日銀はインフ

レ率をコントロールできないといいたいわけだ。これを皮肉を込めて「日銀理論」といっている。

?これは、頑なにインフレ目標を拒否してきた日銀の本性だ。それは外部から見れば、単に責任回避、組織保身とみえなくも

ない。

マネーストックのコントロールは
どそれほど難しくない

?それでは、どの程度、マネーストックのコントロールは難しいのか。ここでは、マネタリーベースは日銀がコントロールで

きるとしておく(この点でも些細な反論があるが、それを一応考えない)。

マネーストック=k×マネタリーベース

?であるが、kが変動し、マネーストックはマネタリーベースの6〜12倍程度になっている。


?もちろんkが変動しない場合より、マネーストックのコントロールは大変であるが、この程度の動きであれば、マネタリー

ベースの増減のさじ加減を通常より2倍くらいに増すだけで対応できるレベルだ。実際、海外の中央銀行で、こうしたテクニ

カルな困難さを聞いたことがないので、普通の中央銀行であれば容易にできる程度だろう。

?効きの悪いアクセルでもプロのドライバーは運転できるように、信用乗数が変化するから、金融政策の運転技術がモノを言

うのだ。そうでなければ、日銀総裁の年収が3000万円を超える事実は正当化できない。

賃金上昇率も2年前の
マネーで決まってくる

?筆者としては、これで「日銀理論は終わり」だと思っていたが、案外、経済学者の間ではまだ信じられているようだ。

『デフレーション』 (吉川洋著?日本経済新聞出版社)を読むと、いろいろと面白いことが書かれている。しかし、「デフ

レはマネーではなく、賃金で決まる」との主張は理解できない。筆者としては、マネーがデフレと賃金を決めるのだと思う。

?というのは、1969年〜2011年でインフレ率と賃金上昇率の関係を調べると、図3になるからだ。


?回帰式で書けば、

一人当たり報酬上昇率=0.26+1.45×インフレ率?相関係数0.94

?となる。要するに、

インフレ率=−2.1+0.62×2年前のマネーストック増加率

?なので、これをインフレ率に代入すると、

一人当たり報酬上昇率=−2.8+0.9×2年前のマネーストック増加率

?と、インフレ率も賃金上昇率も2年前のマネーで決まってくる。吉川氏のいうように「デフレは賃金で決まる」というのが正

しければ、現在の賃金上昇率が2年前のマネーを決めてしまう。これはタイムマシンでもなければあり得ない話だ。

?この背景には日本の経済学者が、経済学の「貨幣数量理論」が成り立たないと思っている人が案外多いとうことがある。英

語では、quantity theory of moneyといいtheory(理論)であるが、日本語では「貨幣数量説」といわれることがしばしばあ

る。

?もともとは、インフレ率がマネー増加率に関係があるという歴史的事実を説明するためのものだ。ところが、大学では、い

きなりMV=PY、M=マネー、V=流通速度、P=物価水準、Y=実質GDPと教え、これは意味のない恒等式だなどとい

う。こういう教え方をするのはちょっと寂しい。

?筆者は、まず世界のデータを見せる。いろいろな国のデータをクロス・セクションで見ると、マネー増加率とインフレ率の

間に正の相関がありそうだとわかる(図4)。


?これで、両者の因果関係には言及せずに、あくまで相関関係があることを確認する。

?次に、日本の時系列データを見せる。前に示したマネーストック増加率とインフレ率の関係だ(図1)。これで、マネースト

ックがインフレ率を決めているという因果関係がわかる。

?このように理解すると、しばしばインフレーションの要因別分類として、デマンドプル・インフレーション、コストプッシ

ュ・インフレーションなどの用語解説はほとんど不要になる。日本では、ほとんど2年前のマネーでインフレ率が9割方決まる

からだ。よくわからない残り1割のために、いろいろな説明を考えるだけ、時間の無駄である。

インフレ率がプラスなら
賃金上昇率がインフレ率を上回る

?また、インフレ率と賃金上昇率の関係(図3)もいろいろと役に立つ。インフレになっても、賃金が上がらないとダメという

識者(いばしばアベノミクス反対論者)も多い。実は、インフレ率と賃金上昇率の回帰式で、既に答えが出ている。

?それをみれば、インフレ率がプラスであれば、賃金上昇率がインフレ率を上回るが、逆にインフレ率がマイナスのデフレの

世界では、賃金上昇率がインフレ率を下回ることがわかる(図5)。


?ちなみに、現実のデータでももちろんいえる。1969年〜94年までのインフレ時代と1995年〜2011年のデフレ時代で、それぞ

れの時代で賃金上昇率とインフレ率で前者が大きいと勝ちとしてみてみよう。インフレ時代は23勝3敗、デフレ時代は5勝12敗

?最後に、これらの議論は、筆者が本コラムで主張してきた「マネタリーベースを増加させるとインフレ予想が高まる」とは

まったく矛盾しない。むしろ、それを補強する議論になっていることを付記しておこう。


●編集部からのお知らせ

高橋洋一さんが監修の『ニッポンの変え方おしえます』 (政策工房著、春秋社)が出版されました。ニッポンが変わらない

原因は、立法過程にある。政策を実行するための根幹にある立法が官僚任せになっているがゆえに、挫折し続けてきた「政治

主導」。霞が関の表も裏も知りつくした高橋さんが、「本当の政治主導」を目指すための立法のあり方を伝授します。
http://diamond.jp/articles/print/33559


http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37372
春闘の一時金満額回答で日本は良くなるのか
いま企業に必要なのは体質改善と競争力強化
2013年03月21日(Thu) 横山 彰吾
 先日、来年度に向けての春闘で、大手自動車をはじめとするいくつかの日本を代表する企業が一時金満額回答をしたとのニ

ュースが報じられた。おおむね、日本の景気回復を裏付け、賃上げの流れをつくる明るい話として伝えられている。

 一方で、円安誘導をした政府とその恩恵を受けた企業の「政財界出来レース」だという意見や、そもそも要求水準が低いと

いう指摘もある。

 経営の現場にいる筆者としては、「賃上げで消費を促し、景気を良くする」というストーリーは分からなくはないが、どう

しても「明るい話」というイメージが湧かないし、なかなか腑に落ちてこない。

 率直に言うと、「本当にこれで日本は良くなるとみんな思っているのだろうか」という違和感、疑問が拭い去れないのだ。

いまだに春闘が繰り広げられる違和感

 その違和感は何なのだろうと考えてみると、まずはこの「春闘」である。

 そもそも企業における労働組合という存在自体が、あまりにも時代錯誤のような気がしてならない。これだけ個々の能力に

即した能力給や年俸制が取り入れられ、人材の流動性が高まっている中で、いまだに給与の一律交渉をする場があるというの

が、やはり不思議である。

 「それはIT業界にいるからだろう」と言われるかもしれない。確かに我々が春闘とは縁遠い業界であることは認めるが、必

ずしもそれだけではないだろう。

 組合や春闘の形骸化は、今に始まったことではない。筆者が20年ほど前にメーカー勤めをしていた頃からそうだ。毎年決ま

った時期に、形だけの交渉結果が印刷物として組合員に配布される。しかし誰もがそれを冷ややかに見ていた。

 いまだに労働組合が従業員の生活を守っているという日本の会社は本当に大丈夫かな、と思えてしまうのである。

「風が吹けば桶屋が儲かる」流れが見えてこない

 もう1つ、素直に受け入れられない点は、この「所得が増える(であろう)」という現象が、我々が関わる「企業のIT投資

」を活性化させるまでの流れが見えてこないことだ。一時金満額が「風」だとして、「風が吹けば桶屋が儲かる」という話の

つながりがなかなか描けない。

 食品や日用品、外食などに関わる領域では、活性化が見られるかもしれない。また、自動車や住宅の売り上げにも少しは反

映してくるだろう。では次のステップとして、そういう企業・業界が新たなIT投資を考えるだろうか? 情報システムによる

経営強化を考えるだろうか? そこが見えてこない。

 多少利益が上がって投資余力はできるかもしれない。事業規模拡大に応じたシステムの拡張もないとは言えない。だが、所

詮はその程度である。やはり遠い道筋の話のように思えてならないのだ。

 IT活用、IT投資へのトリガーとなるのは、結局のところ、「経営を変えよう」という強い意志と戦略である。そして、その

経営改革への意欲は、経営環境が良くても悪くても生まれてくるものだ。新しい事業への挑戦、新しい市場への参入、戦略の

練り直し、競争激化の中でどうやって差別化をするか、そういう会社の一進一退をかけた切実な状況がIT投資に結びつく。

 リーマン・ショックのときに、多くの企業で守りのITプロジェクトは凍結された。しかしその一方で、次の変化をいち早く

察知できるようにと、「市場の見える化」に向けての投資は拍車がかかったというのが、現場の実感である。

満額回答の前に競争力強化を

 賃上げで消費が活発になり、日本企業の業績が良くなるというロジックはやはり受け入れにくい。むしろ逆だろう。会社が

自ら体質を改善し、新たな商品、サービスを生み出すことが、新たな消費につながるのだ。

 会社が新たな事業展開などで成長に向かい、その成果の分配を給与に反映させるというのが本来の姿だろう。会社が成長し

ているという実感なしに、労使の話し合いで給与が増えたところで、果たして消費が活発になるだろうか。

 円安株高で景気が良くなっているというのは結構なことだ。しかし、企業が本業で勝負した結果、株が上がっているわけで

はない。これからは、本当の意味での競争力強化や成長戦略の効果と言える話がニュースになってほしい。

 安倍政権が国民の所得増加を目指しても、その裏付けとなる財源、さらには競争優位のようなものがなければ、一歩間違う

と単なるバラマキに陥ってしまう恐れがあって、素直に喜べないのが心情。経営の現場にいる我々こそが頑張らねばならない

と、改めて痛感している。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37385


12. 2013年3月21日 17:03:14 : 5FidTbXBPE

アングル:米国の中小銀行が長期債投資を拡大、金利上昇時にリスクも
2013年 03月 21日 14:48 JST
[ボストン 20日 ロイター] 米国では一部の中小銀行が、低金利環境で運用益を稼ぐため、中・長期債への投資を増やしている。アナリストの間では、金利上昇時のリスクを指摘する声が出ている。

コミュニティーバンクや中堅地銀などの中小銀行は、総じて手数料収入が少なく、投資銀行収入もない。

ネット銀行の躍進といった営業環境の変化もあり、将来利上げが始まれば、調達金利の上昇で業績が圧迫されるのではないかとの指摘も出ている。

連邦準備理事会(FRB)のスタイン理事は、低金利環境で銀行が水面下でリスクテイクを増やしている可能性があると指摘。

「現在の資本規制には金利リスクへの明示的な対応は盛り込まれていない。金利へのエクスポージャー増加自体が、銀行部門の大きなリスク発生源となる可能性があり、注視が必要だ」と述べた。

中・長期債への投資を増やしている地銀持ち株会社コマース・バンクシェアズ(CBSH.O)(カンザスシティ)では、2008年以降、投資ポートフォリオが156%増加、90億ドルを超えた。主に長期債を買い増した。投資証券が総資産に占める割合は44%で、2008年の22%を大幅に上回っている。

ロイターが中堅地銀80行(総資産50億─400億ドル)の2010年─2012年の財務諸表を分析したところ、総資産の伸びが16%だったのに対し、投資証券の伸びは20%に達した。

一方、運用益は、投資家の長期債投資拡大を背景に伸び悩んでいる。

コマース・バンクシェアズでは、昨年1年間で投資ポートフォリオが約10億ドル(12%)増えたにもかかわらず、投資による金利収入が610万ドル減少。昨年の平均リターンは38ベーシスポイント(bp)低下の2.55%だった。

<営業環境の変化>

通常、金利が上昇する景気拡大局面では、企業や個人の資金調達需要が増え、中小銀行の業績も改善する傾向がある。

ただ、アナリストは、銀行の営業環境が変化しており、景気回復が中小銀行の業績改善につながるとは限らないと指摘している。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのリサーチディレクター、フレッド・キャノン氏は、今後の金利上昇局面では、インターネット銀行との競争で、中小銀行が過去よりも速いペースで預金金利の引き上げを迫られるのではないかと指摘。

サンドラー・オニールの銀行アナリスト、ブラッド・ミルサップス氏は、高金利時代に実施した固定金利型融資が返済期限を迎えるにつれ、融資残高に占める低金利融資の比率が増えると分析している。

昨年第4・四半期は、全銀行の68%で純利ざやが前年同期の水準を下回った。

コマース・バンクのチャールズ・キム最高財務責任者(CFO)は「2007年─08年は金利に少し助けられたが、それを除けば、金利は我々に不利な状況が続いている。量で安定を確保している状況だ」と述べた。

(Tim McLaughlin記者;翻訳 深滝壱哉;編集 宮崎亜巳)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K03U20130321


FOMC:毎月850億ドルの債券購入を継続、雇用市場は改善 

  3月20日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)は19−20日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に声明を発表し、毎月850億ドルの債券購入を継続していく方針をあらためて示した。経済と雇用市場については改善していると指摘した。
声明は「雇用市場の状況はここ数カ月に改善の兆しが見られたが、失業率はなお高い水準にある」とし、最近のデータから「経済は昨年遅くに停滞した後、緩やかな成長に復帰したことが示唆された」と指摘した。
景気が拡大期に入って3年9カ月経つが、バーナンキ議長率いるFOMCは経済成長の加速と労働市場の改善に向け、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を特に期限を設けずに購入していく方針を推進している。
債券購入の内訳は引き続きMBSが毎月400億ドル、米国債が同450億ドルとなっている。FOMCは「物価安定の下で労働市場の見通しが大幅に改善するまで」、資産購入を継続する方針もあらためて示した。政府機関債と住宅ローン担保証券の償還元本を住宅ローン担保証券に再投資する現行方針の維持も確認した。
バーナンキ議長は記者会見で、労働市場が「改善しているのは明らかだ」と述べ、「これが一時的な回復にならないようわれわれは留意する必要がある」と述べた。
月間の購入額変更も
バンク・オブ・アメリカ(BOA)の米国担当シニアアナリスト、マイケル・ハンソン氏はバーナンキ議長とイエレン副議長が資産購入プログラムの縮小を支持するには、労働市場がさらに改善する必要があると指摘。「最終的にはバーナンキ議長とイエレン副議長は景気が十分に回復したと確信するだろうが、早急にそうなるとは確信できない」と続けた。
バーナンキ議長は景気改善が続けば、債券購入の規模を調整する可能性があると発言。「目標に向かって状況が進展すれば、金融緩和の規模を適切に調整するため、月ごとの購入額を変更する可能性がある」と語った。さらに「購入規模という政策の変数をもっと継続的で敏感な方法で、見通しの変化に対応させる方が妥当であると考えている」と述べた。
FOMCは失業率が6.5%を上回り、インフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利をゼロ近辺にとどめる方針も維持した。
雇用支援する政策が必要
バーナンキ議長は「依然として高い失業率と比較的低いインフレは、物価安定の下で雇用の最大化に向けて進展するのを支援するような政策の必要性を強調している」と話した。
FOMCは「景気見通しに下振れリスクがあると引き続き認識している」と指摘。さらに「住宅セクターは力強さを増した。だが財政政策面ではやや引き締めが進んだ」との認識を示した。
カンザスシティー連銀のジョージ総裁は2会合連続で反対票を投じた。「大規模な金融緩和の継続で将来的に経済と金融の不均衡が生まれるリスクが強まったほか、今後時とともに長期のインフレ期待を高める要因になり得るとの懸念を示した」という。
金融当局者は年末時点の失業率の予想を7.3−7.5%に下方修正した。従来の予想は7.4−7.7%。今年の国内総生産(GDP)については2.3−2.8%増と予想した。昨年12月時点の予想は2.3−3%だった。
FOMC定例会合参加者19人のうち13人は事実上のゼロ金利解除を2015年と予想している。これは昨年12月時点と同人数だった。
株価は過去のパターン通りと議長
FOMCはこの日、四半期経済予測を声明と同じ時刻に発表した。従来は声明を午後0時30分に発表し、経済予測はその1時間半後に公表していた。今後は両方とも午後2時発表となる。
ブルームバーグが13−18日に実施した調査によると、エコノミスト45人のうち44人がこの日の会合では購入規模の縮小はないと予想していた。48%が購入縮小は第4四半期かそれ以降になると回答。一方、来年の上半期に量的緩和を完全に終了すると予想しているのは55%だった。
1月の前回会合以降、株価は上昇し、ダウ工業株30種平均は2007年10月に付けた水準を上回って過去最高値を更新。10年債利回りは今月11日に2.06%と、11カ月ぶりの水準に上昇した。
バーナンキ議長は株価について、「金融当局は過去のパターンを逸脱した動きは認識していない」と話した。
議長は2014年1月に任期が終わる議長職について、オバマ大統領と話し合ったことを明らかにした。オバマ大統領は2010年にバーナンキ議長を再任したが、再び指名するかどうかについては言及していない。
バーナンキ議長は「大統領と少し話したが、現在のところ知らせるような情報は何もない」と発言。記録的な規模の緩和策から「撤退を成し遂げられるのは世界中で私だけだとは思わない」と続けた。
原題:Fed Maintains $85 Billion Pace of Monthly Asset Purchases(3)(抜粋)Bernanke Says Further Job Market Gains Needed to Curb Easing(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeff Kearns jkearns3@bloomberg.net;ワシントン Joshua Zumbrun jzumbrun@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/21 07:43 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJZ0X46TTDS601.html


今年と来年の英経済成長率、予想下回る見通し=財務相予算演説
2013年 03月 21日 00:30

トップニュース
北朝鮮金第1書記が無人攻撃機訓練指揮、ミサイル迎撃も=KCNA
米国株式市場・序盤=上昇、米FOMC声明・FRB議長会見待ち
キプロス、キプロス・ポピュラー銀行をロシア投資家に売却報道否定
キプロスへの流動性供給、支援策の合意が前提=オーストリア財務相
[ロンドン 20日 ロイター] オズボーン英財務相は20日、予算演説で今年と来年の英国経済の伸び率は、昨年12月時点の予想を下回るとの見通しを示した。

英予算責任局(OBR)は現在、今年の成長率を0.6%、来年は1.8%と見込んでいる。ただ、2015年には2.3%への加速を見通しているという。

OBRは12月時点の成長率予想で、今年は1.2%、来年は2%としていた。

財務相はまた、イングランド銀行(英中銀)の権限を変更する方針を示し、インフレ目標に沿って非伝統的な金融政策を用いることが必要となる可能性があると述べた。

英中銀はこれまで、2%のインフレ目標に対して柔軟なアプローチを取ってきた。景気下支えとデフレリスク回避を優先し、過去5年間の大半はインフレ率が目標を上回っている。


関連ニュース

英中銀、追加資産買い入れ実施の根拠ある=キング総裁 2013年3月16日
英統計局が新たな物価指標を公表、金融緩和余地拡大も 2013年3月13日
20日発表の英予算案、景気浮揚の選択肢限られる 2013年3月12日
ロンドン株式市場=反発、英中銀・ECB政策据え置きで上げ幅縮小 2013年3月8日

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92J01820130320


歴史に名残すかバーナンキ議長

2013年3月21日(木)  FINANCIAL TIMES

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は型破りな手法で金融緩和を進めている。神格化された前任者と異なり、FRBの限界を強調するバーナンキ議長の評価は高くない。だが英フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストは、後世に評価されるのは同氏だと見る。

 米国のジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏*1は十数年前、当時、米連邦準備理事会(FRB)議長を務めていたアラン・グリーンスパン氏を、「傑出した米国経済の象徴」と絶賛した。現在、FRB議長を務めるベン・バーナンキ氏は、自分がこうした称賛を受けないようにと祈っているに違いない。

*1=米紙ワシントン・ポストの記者としてウォーターゲート事件をスクープ、その調査報道で当時のリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだことで知られる。その後も『ブッシュの戦争』『オバマの戦争』など著書は多い
 景気循環を熟知するバーナンキ氏にしてみれば、評判というバブルの動きもよく分かっているのだ。実際、グリーンスパン氏ほど評価が急落した人物は、過去あまり例がない。


金融危機以降、過去にとらわれず新しい解決法を次々と生み出し対応してきたベン・バーナンキFRB議長は後世が評価するのかもしれない(写真:AP/アフロ)
任期満了まであと11カ月

 バーナンキ氏の任期は残り少なく、米国の金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)は、任期中にあと7回しか開かれない*2。この短期間に同氏に、「マエストロ(名指揮者)」と呼ばれたグリーンスパン氏のような高い評価が与えられる心配はないだろう。

*2=バーナンキ議長は2014年1月の任期満了に伴い退任すると見られている
 3月5日以降、ダウ工業株30種平均は4日連続で過去最高値を更新したが、グリーンスパン時代のようなお祝いムードは見られない。保守派は、この高騰を重視することもなく、量的緩和(QE)による「シュガーハイ(糖の過剰摂取によるハイな状態)」にすぎないとして一蹴した。左派も、この活況はFRBが膨らませたバブルの1つで、実体経済への恩恵はないという見解だ。

 どちらの見方も部分的には正しい。毎月850億ドル(約8兆2000億円)もの資金を市場に供給するQE3が、「より高い利回り」を求める投資家の意欲をかき立て、株式市場がちょっとした好況に沸いているだけだからだ。その恩恵を主に受けているのは、米国民の1割にすぎない最上位の富裕層だけだ。

 だが、どちらの見方も大局を見逃している。FRBが金融緩和政策を取らなければ、株式市場は冷え込み、失業率は上昇していたはずだ。バーナンキ氏は必要なら空からカネをばらまくと発言して「ヘリコプター・ベン」と呼ばれたが、こうした緩和策を取っていなかったらあだ名は、回復の芽を刈り取る「芝刈り機ベン」になっていただろう。

過去の理論には従わない

 後世の人々はバーナンキ氏を好意的に評価するだろう。経営学者の故ピーター・ドラッカー氏はかつて、「激動期にあって最も危険な行動は、過去の論理に従うことだ」と述べた。バーナンキ氏の最大の長所は、ありきたりのルールブックを無視する点にある。

 世界大恐慌の研究者である同氏は、恐慌の主因が信用の枯渇であったことを理解していた。当時の米国が不況から抜け出せたのは、金本位制を離脱したからであって、ニューディール政策はほとんど効果を上げなかった。

 バーナンキ氏は、米リーマン・ブラザーズの破綻後に連銀の窓口貸し出しを大幅に拡大し、さらに金融緩和策を次々と実施するなど、2008年以降様々な非伝統的手法を採用してきた。後から振り返ってみれば、これらの大半は自明の策だったということになるかもしれない。しかし、彼とFRB議長の席を争った候補たちがみな同様の対応をしたかどうかは明らかではない。

 1930年代に世界の中央銀行が犯した誤りを記録した『Lords of Finance(金融の君主たち)』の著者、リアカット・アハメッド氏は、「バーナンキ氏は世界大恐慌と、日本が90年代に陥った流動性の罠について理解している。このことが、FRBによる2008年以降の課題への取り組みに非常に大きく影響している」と指摘する。

 「この種の危機時のFRB議長としてバーナンキ氏が適任であったことに、疑いの余地はない」(アハメッド氏)

 金融崩壊を道徳的な色眼鏡を通して見て、行き過ぎた社会の浄化を望む人々は少なくなかったが、学識を備えたバーナンキ氏は、そうした見解を権威をもって否定できた。もしバーナンキ氏が、広く支持されていたこうした直観的見解に従っていたら、米国の景気は今頃、英国のように三番底に向かっていただろう。

経済に本気で取り組む唯一の機関

 米テキサス州知事のリック・ペリー氏がバーナンキ氏に対して、このまま金融緩和を進めればあなたの身に何が起きるか分からないと脅迫めいた言葉を口にした時、バーナンキ氏はこう述べた。「私は景気循環の“旧約聖書的(放蕩には報いがあるという)理論”の信者ではない」。

 近年、民主主義の弱体化と制度の綻びが広く懸念されるようになってきた。モイセス・ナイム氏は近著『The End of Power(権力の終焉)』の中でこうした懸念を明確に記述している。

 しかし、FRBは2008年以来、このような潮流の中で、はっきりとした例外であり続けてきた。主要7カ国(G7)のある中央銀行総裁が筆者にこう語ったことがある。「FRBは新しい問題に直面すると、いつも新たな解決法を編み出してきた。手にした権限を効果的に活用している」。

 FRBは、過去5年の大半の期間、経済問題に本気で取り組んできたワシントンで唯一の機関だった。バラク・オバマ大統領による2009年の景気刺激策という大きな例外はあるものの、それを除けば、FRBだけが米国経済を支える道を探ろうとしてきた。2011年以降は、財政政策が景気回復の足を引っ張っている。米国の2013年の経済成長率は約2%と見込まれるが、財政の崖と強制歳出削減がなければ、成長率は3%近かったかもしれない。


 米国の雇用と住宅の問題についても、金融政策による解決手段は限られているにもかかわらず、FRBだけが孤軍奮闘して取り組んできた。ほかの機関は、共和党と民主党の対立による政治的な行き詰まりで、本格的な対応が取れずにいる。

 FRBの抱える2つの使命のうちの1つである「雇用の最大化」という任務にも、発足以来初めて正面から取り組もうとしている。バーナンキ氏は昨年12月に、前例を破り、失業率が6.5%以下に下がるか、インフレ率が2.5%を超えるまで、ゼロ金利政策を維持すると明言した。

 だが3月19〜20日に開催される次回のFOMCの会合で、バーナンキ氏は金融緩和政策をいつ縮小するのかという圧力に改めてさらされる可能性が高い。3月8日に発表された2月の雇用統計の数値が良かったため、インフレリスクが高まったとする主張が強まると考えられるからだ。

 しかし、インフレ懸念派は4年前からずっと同じことを言い続けている。実際には、2012年の米国のインフレ率は1.6%に低下、2月の失業率も依然として7.7%という高さだ。よってバーナンキ氏はQE3を継続できることになるはずだ。

FRBの限界をわきまえる

 バーナンキ氏は、グリーンスパン氏とは異なり、FRBが全能であると人に信じさせるような真似は一切しない。この点は、恐らくほとんど理解されていないが、評価すべきことである。

 FRBの限界を強調するバーナンキ氏を米ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ポール・クルーグマン氏をはじめ筋金入りのケインズ主義者たちは、時に激しく非難した。クルーグマン氏はバーナンキ氏を「臆病者」と呼んだこともある。もっとも最近は、彼も批判を弱めている。

 バーナンキ氏は機会あるごとに、FRBにできることには限界があると国民に訴えてきた。需要を喚起する手助けはできるが、銀行に貸し出しを強要することはできない。雇用創出の支援はできても、所得の中央値が下落していくのを反転させることはできない。米国が直面している課題の大半は金融的なものではないのだ。

 FRBがオーケストラでない以上、議長がマエストロになれるはずがない。バーナンキ氏は、そのことをわきまえる冷静さを備えている。後代の人々は、歴史を振り返る時、彼が自分にできることには限りがあることを分かっていたことを評価するはずだ。

Edward Luce
(cFinancial Times, Ltd. 2013 Mar. 10)
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13. 2013年3月21日 17:03:37 : 5FidTbXBPE


【第17回】 2013年3月21日 
TPP交渉参加で得るもの、失うもの
――国際基督教大学客員教授 八代尚宏
TPP参加の意義


やしろ・なおひろ
国際基督教大学教養学部客員教授。経済企画庁、日本経済研究センター理事長等を経て、2005年より現職。著書に『労働市場改革の経済学』(東洋経済新報社)、『新自由主義の復権』(中公新書)などがある。
?3月15日に安倍晋三総理のTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加表明がなされた。もっとも、日本の交渉参加には、米国等、関係国の承認が前提となることや、すでに合意された内容を一方的に受け入れざるを得ないなど、改めて交渉開始からの2年間を浪費したコストの大きさが再認識される。

?TPPは、2006年に、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4ヵ国で発効した地域経済連携協定であり、現在では12ヵ国が交渉に参加している。これに2010年に米国が参加を表明した際に、当時の管直人総理が2011年の年頭所感で、「平成の開国」という表現でTPP協議を進める方針を示したが、反対派の抵抗で今日まで放置されてきた。

?2012年までの加盟国や交渉中の国に日本を加えたGDPを合計すると、その9割以上を日米両国で占める、事実上の「日米間の経済連携協定」といわれる。しかし、今後、日米両国と経済関係の深いアセアン諸国が加われば、いずれ中国や韓国も参加せざるを得なくなり、その規模は一層拡大する。

?TPPでは、2015年までに加盟国間で、工業製品、農産物、金融サービス等、全品目の関税を10年以内に撤廃することを目標としている。また、それ以外にも自由な貿易取引を阻害する非関税措置や、知的財産権の保護、及び国内市場で外国企業に対する差別的取扱い等の禁止も含まれている。

?こうしたTPPへの参加に対して、「米国政府の政治的圧力に迎合し、国益に反するもの」という、ナショナリズムに訴える反対論がある。しかし、米国企業の日本進出を促す圧力に抵抗することは、日本の生産者の利益に過ぎない。日米企業間競争の活発化で利益を受ける消費者の立場も踏まえて「国益」を考える必要がある。

?日米貿易摩擦でも、米国政府の要求した携帯電話の自由化や大店舗法の緩和は、肝心の米国企業の利益ではなく、日本企業の活発な新規参入を促し、消費者に大きな利益をもたらした。現在の国際化の時代では、日本の消費者にとっては、日本企業でも外国企業でも、国内で良い商品やサービスを提供する企業が増えることは、それ自体が望ましい。また、増え続ける日本の対外直接投資に比べて、伸び悩んでいる対内直接投資を促進することは、新規参入者との競争を通じた国内の産業活性化と雇用機会を増やす大きな要因ともなる。

?政府は、TPP参加により3.2兆円の純利益があるとの試算を公表した。しかし、これは関税撤廃による直接効果のみであり、非関税障壁の改革も含め、参加国の間で貿易や投資が活発化することも含めれば、その数倍の効果が期待される。

関税廃止でパンが安くなる?

?778%と250%という高関税に守られているコメと小麦が最大の争点となっている。

?まず、コメの高関税がなぜ必要かといえば、それは貴重な耕地の4割を減反するという「生産カルテル」に大きな原因がある。これを撤廃するととにも、生産性の高い専業農家に優良農地を集約し、規模の利益を追求すれば、コメの品質を考慮した国際価格との差は小さくなり、関税自体が不要となる。

?さらに、製造業と同様に、国内需要を上回る生産量を輸出に向ければ、農村に雇用機会が生まれ、活性化にも貢献する。高関税の撤廃か否かではなく、国内農業の改革の有無が、真の争点である。TPPで農業生産が3兆円減少という試算は、こうした改革を全く行わない場合についてのものである。

?関税の廃止による消費者利益は、経済全体では、国内生産者の損失よりも常に大きい。コメの減反廃止で価格が下がれば、農家への時限的な所得補償が必要となるが、この対象を、専業農家以外にどこまで広げるかは政治判断となる。他方で、コメ価格に連動する販売手数料収入が激減する農協に対して補償する必要は全くない。

?自給率が10%台の小麦の高関税は、農家よりも、関税なしで輸入した小麦を関税分だけ上乗せし、独占的に販売する農水省特別会計の保護が主要な目的である。この廃止でパンや麺類の価格が大幅に低下することによる消費者の利益は大きい。コメや小麦が高関税に擁護されるのは「国益」ではなく、農水省や業界の既得権に過ぎない。

「特定企業」が持つ特権是正へ

?TPPに含まれる「投資家対国家の紛争処理手続き(ISDS条項)」で、日本政府が外国企業に訴えられる懸念が強調されている。これは外国企業に対して差別的な行為(例えば資産の国有化)を防ぐためのものである。しかし、日本では政府と密接な関係にある、特定の企業が特権を得ている場合がある。これは外国企業を狙い撃ちしたものではないが、「差別」として訴えられる可能性がある。

?郵貯や簡保のような巨大金融機関の株式を、政府が一部でも保有していれば、国際的な基準では「民営化」にはならず、政府の信用力を背景にした不公正取引といえる。

?また、JA共済は加入者を募るテレビCMを頻繁に流す、巨大な「保険会社」である。それにもかかわらず、生協等、零細組合に認められる低い法人税率や損保との一体的な事業の容認など、数々の特権を享受している。

?これらの改革は、本来、国内の競争政策の課題であるが、TPPというグローバルな基準に照らして、様々な利権に基づく不透明な制度・慣行をあぶり出すことは、日本経済にとっての大きな利益となる。

「国民皆保険が崩壊」は本当か?

「TPPに加入すれば国民皆保険が崩壊」といわれる。TPPの基本は、関税を始めとする海外企業への差別的措置の撤廃であり、元々、内外企業を無差別に規制している現行の医療保険は、TPPの争点にはならない。しかし、TPPとは無関係に、改革しなければならない医療制度があり、混合診療の解禁は、そのひとつである。

?保険の本来の使命は、事故に備えることである。現行では、例えば癌患者は、公的保険に含まれない新薬を少しでも使えば、保険対象の検査や診療費も、全額自己負担しなければならない。これは民間保険会社なら「保険金の不払い」に等しい。この規制は、追加的な薬代を払える患者と払えない患者の格差を防ぐためと言う。しかし、保険外の薬代だけなら払える普通の患者と、保険診療費分も含めた医療費すべてを負担できる金持ちとの格差は、規制を無くせば逆に縮小する。いずれが国民皆保険を守ることになるのだろうか。

?技術進歩で持続的に拡大する医療費のうち、どこまでを保険診療の対象とするかが国内問題であることは米国も認めている。TPPを口実にして、医療保険の本来の制度改革を遅らせるべきではない。

日本が交渉上、不利になる可能性も

?自由な貿易や資本の取引には原則賛成でも、実際に行われる交渉の過程で、日本にとって不利な取り決めにならないかとの懸念がある。これは米国では、大統領をはじめとする政権の幹部が、トップクラスの法律家であることに対して、日本の交渉担当者はジェネラリストの官僚であることが背景にある。

?今回のTPPでは広範囲の業種が交渉対象となるため、英語で法律論争のできる官僚を十分に集められる可能性は乏しい。この点について、森信茂樹中央大学教授は、財務官僚時代の経験に照らして、国際的な企業間紛争に携わるトップクラスの日本の弁護士の活用を図るべきという(ダイヤモンド・オンライン2013年3月12日「TPP交渉の本質は法律議論 ローヤーの参加なければ劣勢必至」)。民間の弁護士を任期付公務員として採用すれば、報酬面では見劣りしても、貴重な経験を得るとともに、所属する法律事務所の声価を高めることにもなろう。

少なくない反対派への対応策

?TPPの評価では、生産者ではなく、消費者にとっての利益を最優先とすることが原則である。遺伝子組み換え農作物の禁止等、安全面の規制については、内外企業の無差別原則の下で維持することについて、国際的な連携を図る必要がある。

?TPPへの反対派のうち、現在、関税等の保護で利益を受けている産業については、財政による支援に置き換える必要がある。しかし、過去のウルグアイ・ラウンド時のような農村への公共事業費のバラマキではなく、直接、農家への所得移転に限定する必要がある。

?直接的な損失がないにもかかわらず、漠然とした不安をもつ人たち(すでに関税ゼロの野菜や果物農家等)には、輸入増の不安よりも輸出増への期待を促す必要がある。小規模な農家の販路拡大への支援こそ、本来の農協の役割である。少子高齢化で縮小する一方の今後の国内市場に拘っていれば、日本農業の先行きは暗い。経済発展の著しいアジア諸国を新たな市場として開拓する必要がある。

?日本の製造業は、すでに1960年代に、強大な米国の自動車等の産業と戦う決意で、OECD(経済協力開発機構)に加盟した。当時の貧弱な日本の企業と比べて、TPP加入に直面する現在の専業農業やサービス業は、はるかに有利な立場にあるといえる。

?TPPに参加すればどのような損失が生じるかと、まず考えることは、暗黙のうちに現状がベストという前提に基づいている。しかし、過去20年以上に及ぶ日本経済の長期停滞が、とくに将来を担う若年層にもたらす深刻な弊害を認識する必要がある。戦後日本経済の発展を支えてきた自由貿易の徹底化を図り、新たな成長軌道に復帰するための好機として、TPPを積極的に受け止めるべきである。
http://diamond.jp/articles/print/33564

【第18回】 2013年3月21日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
日本のTPP交渉参加を、中国はどう見ているか?
?2月22日、TPP(環太平洋経済連携協定)に関する日米共同声明が発表された。ここで、「聖域なき関税撤廃は交渉参加の前提ではない」ことが確認された。これを受けて、3月15日、安倍晋三総理大臣はTPPの交渉に参加することを正式に表明した。このニュースは、中国にかなりのショックを与えたようである。

?今回は、日本のTPP交渉参加に対する中国の反応を、中国のメディアを通じて見ることとしよう。

アメリカのアジア政策の
一環としてのTPP

?最初に注意すべきことは、「TPPはアメリカのアジア戦略の一部だ」ということである。

?日本では、「TPPとは貿易自由化協定である」と単純に理解されていることが多い。しかし、これは自由化協定ではなく、「ブロック化協定」である。これは、実質的には日米のFTA(自由貿易協定)であり、その目的は、太平洋経済圏にアメリカ流の経済ルールを確立し、中国の成長をけん制することだ。

?日本は、安全保障の面でアメリカに依存せざるをえないという事情があるので、TPPがアメリカの太平洋戦略である以上、それには参加せざるをえない。これは、最初から課されている制約条件である。つまり、「経済的な利害得失を考慮してTPPに参加するか否かを選択する」というオプションは、日本には最初から与えられていないのだ。

?ところが、それでは国民を納得させることができない。そこで、TPPに経済的な意味付けを与えようとする努力がなされる。

?しかし、純粋に経済的に見れば、TPPにはほとんど意味がないのである。とくに、「日本の輸出を増やす」という観点から見ればそうだ。

?政府の試算がそれを明確に示している。TPPはGDP(国内総生産)を0.66%増やすというのだが、これは、「10年後に」ということだ。単純に年率で考えれば、GDPのわずか0.066%ということとなる。これは、「誤差の範囲」と言ってもよいオーダーのものだ。つまり、TPPがGDPを増加させる効果は、ほとんどないのである。

?こうした結果になるのは、アメリカの関税率は(トラックなどを除けば)すでにかなり低く、またアメリカ以外の参加国は経済規模が小さいので、日本の輸出に与える影響はきわめて小さいからだ。

?もちろん、農産物などの市場開放がなされることは、日本の消費者の立場からすれば望ましいことである。しかし、市場開放が目的であれば、日本が自主的に行なえばよいことである。関税以外の点での日本開国も、TPPによらなくともできる。それらは、日本が自発的に行なえばよいことだ。

?TPPが経済的にいかなる意味を持つかの検討は、十分行なわれていない。この問題については、拙著『製造業が日本を滅ぼす』(ダイヤモンド社、2012年。第8章)ですでに論じた。

日米政権のお家の事情

?今回の日米共同声明に至るまでの経緯を見ると、日米両国とも、国内の利害調整に配慮しつつ、形式的にTPP交渉に入ることを最優先してきたことが分かる。

?どちらの政権にとっても、それぞれの「お家の事情」がある。すでに述べたように、アメリカは、アジア戦略の一環として、日本を含むTPPを形成したい。しかし、オバマ大統領の再選には、自動車産業が集積するアメリカ北東部の支持が重要な役割を果たした。だから、自動車産業の利益には配慮せざるをえない。乗用車の関税はすでに2.5%と低いが、トラックは25%である。

?他方で、安倍政権としては、TPPを安倍経済政策の「3本の矢」の第3番目である「成長戦略」の一環として位置付けたい。しかし、当然のことながら、農産物の市場開放に反対する農業関係者に配慮しなければならない。

?だから、日米どちらの政権も、これらの点に配慮して実害を少なくしつつ、政治的な成果と見せることが目的なのだ。

?すでに述べたように、TPPはもともと経済的にはあまり意味がないものだ。それに加えて自動車や農業が例外になれば、経済的にはほとんど意味がないものになるだろう。

中国との関係における
国際政治問題

?日本では、TPPを貿易自由化協定と見なし、これが製造業の輸出を増やすという経済効果が強調されている。その半面で、これが国際政治的にいかなる意味を持つかが議論されていない。これは、大きな問題だ。

?とくに重要なのは、中国の反応である。TPPを中国の立場から見るとどういうことになるのか。これが日本では十分に議論されていない。

?第1に、中国は、TPPをアメリカ極東戦略の一部と位置付けている。アジア太平洋地域でのアメリカの戦略の一環であり、軍事戦略と同列のものだというわけだ。

?第2に、関税撤廃というよりは、アメリカの取引ルールを押し付けるという面を重視している。そして、その面においては、中国の現在の経済体制では適合できないとの認識がある。

?第3に、中国は、日本が対米関係を緊密化することを快しとしない。日中韓FTAを先行すべきだと考えている。

?このように、TPPは国際政治がからむ非常に複雑な問題である。

?日本でこうした視点が欠けているのは、多分、政府の説明を記事化することが新聞報道の中心になっているからだろう。中国のほうがTPPの性格を客観的に見ている面もある。

?日本のニュースを外国のメディアから見るのは重要な視点だ。ところが欧米のメディアは、あまり日本に関心を示さなくなってしまった。他方、中国にとっては、日本は重大関心事だ。だから、今回の交渉参加決定に関しても、多くの報道が行なわれている。

?インターネットを検索すると、ごく最近のものに限っても、きわめて多数の記事がヒットするのが印象的だ。中国がこの問題に深い関心を示していることがよく分かる。それは、危機感、焦燥感と言ってもよいほどのものである。アメリカのメディアがこの問題についてほとんど報じていないのと対照的だ。

?このような問題は、統計を見ているだけでは分からない。また、日本語や英語の文献でも十分な情報は得られない。どうしても中国語の文献を読むことが必要になる。

?さまざまな文献があるが、中国の公式見解に近いものを見るために、人民日報に掲載された文献を読むことにした。以下で読むのは、中国の検索サイト百度で、「TPP?中国?人民网」で検索して得られた記事の一部である(人民网は、人民日報のウェブ新聞)。

?なお、この分野の文献には、金融やマクロ経済の問題と違って、専門用語がほとんど登場しない。その半面で、文章の構造が複雑なものが多く、中国語の文章表現を学ぶには格好の教材になっている。

TPPをアメリカの
アジア太平洋戦略と見る中国

?以下は、「争?区域?易主??美国竭力拉日本加入TPP ?制中国?太影?」(地域貿易の主導を争い、アメリカは躍起になって日本をTPPに引き入れ、中国のアジア太平洋における影響力を牽制しようする)というタイトルの記事の一部である(2013年2月26日人民网)。

(原文)

?美国??推?TPP,大体上有?个目的:一是要?一?打??洲市?大?,?搭?洲??快速?之?;二是要掌握?太地区?易体系及其??的主??。?其中有平衡中国?展?来的??秩序?化的一面,同?亦有如何通??易?范的制定来?大美国在本地区政治影?的一面。因此,TPP也是美国“重返?洲”?略的重要?成部分,它与政治、?事上的“重返”?成了一个整体。

(日本語訳)

?アメリカが熱心にTPPを推進するのは、大きく2つの目的がある。第1は、アジア市場の門を開け、アジア経済の高度成長という車に急いで乗るための第1歩を踏み出すこと。第2は、アジア太平洋地区の貿易体系とその規則に関して、主導権を掌握することである。そのなかには、中国の発展によってもたらされた経済貿易秩序の変化を平衡させたいという一面もある。同時にまた、貿易規範の制定を通じてアメリカの本地区における政治的影響力を拡大するという一面もある。したがって、TPPは、アメリカの“アジア回帰”戦略の重要な構成部分である。それは、政治的、軍事的な“アジア回帰”とともに、1個の総体を構成するものだ。

(一般用語)

?まず、頻繁に登場し、意味を補う役割を果たしているつぎの言葉に注目しよう。これらについては、すでに何度か述べてきた。

「是」(shi) は、be動詞に当たる。「有」(y?u)は、英語のhaveに近い(持つ、ある)。「?(進)」(jin) は、外から内に移動することを示す。

「在」(zai)は、「存在する」。「要」(y?o)は要求する。

「的」(de)、「了」(le)については、これまでも述べてきた。

「?」(zhe)⇒これ。它(?)(t?)⇒それ。与(與)(y?)⇒と。「因此」(y?nc?)⇒それゆえ。

「一个」(yi ge)⇒一個、「?个」(li?ng ge)⇒二個。

?これらを(?)で括り、キーワードを[?]で括ろう。そして、単語の区切りと思われる個所に・を打つ。すると、つぎのようになる。

[美国]??・推?[TPP],大体(上)(有)(?个)目的:一(是要)(?)・一?・打?[?洲市?・大?],?搭[?洲??][快速?](之)?;二(是)(要)掌握[?太地区][?易体系](及)(其)??(的)主??。(?)(其中)(有)平衡[中国?展]?来(的)[??秩序]?化(的)一面,同?(亦)(有)如何・通?[?易?范](的)制定(来)?大[美国](在)本地区[政治影?](的)一面。(因此),[TPP](也)(是)[美国][“重返・?洲”]?略(的)重要・?成部分,它与[政治]、[?事](上)(的)[“重返”]?成(了)(一个)整体。

?これだけでも、かなり読めるようになる。そして、つぎの言葉を辞書で引けば、完全に読める。中国語を知らない者が中国語の文章に接するとき、一番戸惑うのは、どこからどこまでが一つの単語なのかが分からないことなのである。上のような処理をすることで、それがはっきりするのだ。

「??」(j?ji)⇒熱心な。「推?」(tu?dong)⇒推進する。「大体」(dat?)⇒だいたい。「?(搶)」(qi?ng)⇒大急ぎで。「搭」(d?)⇒乗る。「通?」(t?ngguo)⇒を通じて。「重返」(chongf?n)⇒立ち戻る。「整体」(zh?ngt?)⇒全体、総体。「?洲」⇒アジア。

TPPの政治的側面を
重視する中国

(原文)

?美国是否能?成功将日本拉入TPP,也就不再是一个?粹的????,而有了更多的政治色彩,?未来?一地区政?格局走向会?生重要影?。可以想象,如果没有日本?个?洲第二大??体加入,TPP的影?力,以及?于未来区域和全球?易?范的制?力就会小很多。而?于日本而言,?度在于一面要在政治上尽可能地?足美国的?个需要,?一面却必?慎重考???上的得失。在??之??衡并做出决断,看来也不是件容易的事情。(丁 ?)

(日本語訳)

?アメリカが日本をTPPにうまく引き入れることに成功できるかどうかは、1個の純粋に経済貿易問題ではない。そうではなく、多くの政治的色彩を持つものだ。未来のこの地区の政経局面には重要な影響が生じる。つぎのように想像することができる。もし日本がこのアジアの2大経済体に加入しないとすれば、TPPの影響力、および未来地域と世界貿易規範の制約力に対するTPPの影響力は、小さくなる。日本に対して言いたい。アメリカの政治上の要求を出来るだけ満足させるという一面があり、他方で、経済貿易上の得失を慎重に考慮しなければいけないという一面がある。これは難しいことだ。2つの板挟みから出る決断をすることは、容易な事ではないように見える(記者:丁 ?)。

(一般用語)

?「是否」(shif?u)⇒…であるかどうか。「将」(ji?ng)⇒まさしく。「可以」(k?y?)⇒可能である。「以及」(y?ji)⇒および。「于(於)」(yu)⇒に。「却(卻)」(que)⇒逆接の関係を示す。

「并(並)」(bing)(「不」「没有」などの前で)なにも(…でない)。
「?」(ling)⇒他に、別に。「很」(h?n)⇒とても。

「地」(de)⇒多音節の動詞・形容詞(句)などに後置され、前の語句が状語であることを示す。

「?个」(zhege)⇒この。「?(這)」(zhe)⇒これ。「就」(jiu)⇒まさしく。

「如果」(rugu?)⇒(もし〜、もし〜なら)、これを含む文章を「仮定複文」と言う。

?前と同じように、これらを(?)で、キーワードを[?]で括る。そして、単語の区切りと思われる個所に・を打つ。すると、つぎのようになる。

[美国](是否)能・?・成功(将)[日本]・拉入[TPP],(也)就(不再是)一个・?粹(的)・[????],(而)(有了)(更多)(的)[政治色彩],?[未来](?)(一地区)[政?格局]走向会[?生][重要影?]。(可以)想象,(如果)(没有)[日本](?个)[?洲第二大??体]加入,[TPP](的)[影?力],(以及)?(于)[未来区域](和)[全球?易?范(的)制?力]就会・小(很)多。(而)(?)(于)[日本]而言,?度(在)(于)一面・(要在)「政治」(上)尽(可能)(地)?足・[美国](的)(?个)[需要]、(?)一面(却)・必?・慎重・考?・[??上(的)得失]。[在][??](之)(?)[?衡]并做出・决断,(看来也)(不是)件・容易(的)事情。

?これでかなり読めるようになるので、つぎの言葉を辞書で引く。

「?」(gou)⇒達する。「拉」(l?)⇒引き寄せる。「走向」(z?uxiang)⇒ (…に)向かう。「?生」(ch?nsh?ng)⇒生み出す。「?度」(nandu)⇒難度、困難の程度。「??」(li?ngnan)⇒(二つの選択肢の)どちらを取るのも難しい、ジレンマに陥った。

?この作業を行なったとしても、上の文章を完全に読むのは、難しい。とくに、「可以想象」で始まる第2文は、かなり複雑な構造をしている。「如果」が上で述べたように仮定を表し、「没有」が否定を表しているので、これは、「もし…でないならば」という構造だ。その結果が、「TPP」で始まる部分だが、この主語は、「影?力」と「制?力」が「以及」で結ばれて構成されており、「未来区域」と「全球」が「和」で結ばれている。

?なお、「?洲第二大??体」とは、「アジアにおける日本とアメリカという2つの経済大国」という意味であろうと思われる。

?最後の文章は、「?度」が2つの側面を持っていることを述べている。その2つが、「一面」と「?一面」で示されている。

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安倍政権による金融緩和策が経済再生の「魔法の杖」のごとく喧伝されているが、いかに追加緩和がなされようと、デフレ脱却は見込めない。安易な緩和策は問題を先送りする「麻薬」でしかなく、その先に待っているのは、財政規律の弛緩と制御不能なインフレである。日本経済論の第一人者が金融政策の限界を検証する。

〈主な目次〉
第1章?金融政策はどう行なわれるか
第2章?効果がなかった量的緩和
第3章?大規模為替介入と円安バブル
第4章?日銀による財政赤字のファイナンス
第5章?金融緩和でデフレ脱却はできない
第6章?世界を混乱させるアメリカ金融緩和QE
第7章?金融緩和のエンドレスゲームに突入する世界
第8章?金利高騰は大問題
第9章?財政赤字と金融緩和で国家は破綻する
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【第175回】 2013年3月21日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
世論はTPP交渉参加表明を高く評価
一方で交渉内容への不安は強まる
?世論調査における安倍内閣の支持率上昇の流れが続いている。前月比で「支持が増え、不支持が減る」傾向は各調査で共通していると言ってよい。絶好調である。

?先週末のNNNの調査では、支持率65.4%(前月比1.2ポイント増)、不支持率16.6%(同1.9ポイント減)、朝日新聞では支持率65%(同3ポイント増)、不支持率17%(同変わらず)とほぼ同じ結果となっている。ちなみに毎日新聞の調査では支持率は7ポイントも上昇し、70%の大台に乗った。

?今回の一連の調査は3月15日の安倍晋三首相の「TPP交渉への参加表明」を受けてのもの。実質はTPP世論調査と言ってもさしつかえない。

?その結果を集約すれば「これまでの進め方は納得できる。これからは注意深く見守っていく」と総括できる。

消費者の間でも高まる
農業自由化に対する懸念

?実際、今回のTPP交渉参加表明にはかなりの理解が示されたものの、今後の進め方や交渉内容となると世論の戸惑いや不安は依然として強い。今後も冷静で慎重に交渉過程を見守る姿勢は変わっていない印象を受ける。

?結局、安倍首相の参加表明に至る過程に誠意が示されたという評価が意外に大きかったのではないか。朝日調査でもTPP参加に賛成は53%だが、首相の交渉参加表明については71%の多数が「評価」している。

?ところが、安倍首相の発言通りに交渉を進めることが「できない」と思っている人の方がわずかながら多く、また、TPPでの農業自由化が、日本の農業にとって悪い面が大きいとする人が56%と過半数を超え良い面が大きいとする人(24%)の倍以上となっている。

?驚くのは、外国の安い農産物が入ってくるのをよいことだと思う人が36%にとどまっているのに48%が「よくない」と答えていること。そして、食品の安全基準が下がる不安を感じる人が71%に達し、感じない人の22%を圧倒している。

?これらの数字は、消費者の間にもTPPに対する不安が根強くあって、さらにそれが広がる傾向にあることを示していると言えるのではないか。

100年、200年後を見通した
慎重な交渉が求められる

?TPPについては、自由貿易派と保護貿易派、あるいは開国派と鎖国派との対決であるような過激で短絡的な議論もある。実に不毛なことだ。日本は十分に開国し自由貿易によって成り立っている。

?日本が鎖国や保護貿易を志向しているかのような誤解を与える主張が国内から出ることは、今後の交渉に大きな障害になりかねない。自重すべきであろう。

?また、一方で農業団体も消費者や都市住民の理解が得られる言動に努めるべきだ。農家エゴにでも見られれば都市住民の反発を招き運動が逆効果となる恐れもある。

?要は、今後100年、200年を見通した「安全な食料の長期の安定供給」を念頭に置くことだ。慎重の上にも慎重な交渉が求められている。

?先日私は、米国の経済連携、自由貿易の著名な学究であるアリゾナ大学のD・ガンツ教授と会談する機会を得た。

?驚いたのは「2、3年で交渉がまとまることに楽観している」という趣旨の発言であった。

?この分野で影響力のある彼が「年内決着」など全く期待していないのである。

?交渉日程を限定し、それによって危機感を煽って、歩を進める官僚的な手法は決して採るべきではないし、また良い結果も得られない。TPPについては「世論と誠実な対話」を軸として慎重に進めること。

?それを安倍TPP外交の基本方針とするよう願っている。
http://diamond.jp/articles/-/33563



14. 2013年3月21日 20:54:19 : 5FidTbXBPE


黒田日銀総裁:目標達成できるまで可能な限りあらゆる手段講じる

  3月21日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は21日夜、本店で就任会見を行い、物価上昇率2%の目標について「達成すべきであるし、達成できると確信している」と述べるとともに、「達成できるまでは可能な限りあらゆる手段を講じていく」との考えを示した。目標達成の期間については「2年程度で達成できれば非常に好ましい」と述べた。
4月3、4日の金融政策決定会合の前に、臨時会合を開くかどうかに関しては「不可能ではないが、臨時があるかないかを私が申し上げるべきではない」と語った。
総裁は「できることは何でもやるというスタンスで目標の実現に向かって最大限の努力をするのが日銀にとって最大の使命だ」と言明。2014年から開始するとしている期限を定めない資産の購入の「前倒しであろうと何であろうと、必要なことは何でもやる」と述べた。また、不動産投資信託(J−REIT)を含め、「さまざまな資産の購入についても「十分議論すべきだ」と語った。もっとも、具体的な政策の中身については「政策委員会で議論して決める」と述べるにとどめた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net


ロンドン外為:円が上げ縮小−日銀新総裁は大胆に緩和と発言

  3月21日(ブルームバーグ):ロンドン時間21日午前の外国為替市場で、日本銀行の黒田東彦新総裁の記者会見を受けて円は上げ幅を縮めた。新総裁は大胆な金融緩和を追求する方針を示した。
ロンドン時間午前10時51分現在、円は対ドルで前日比0.4%高の1ドル=95円61銭。一時は0.8%上昇となっていた。対ユーロは0.5%高の1ユーロ=123円51銭。一時は1.1%高まで円高が進んでいた。
原題:Yen Pares Advance as BOJ’s Kuroda Vows to Pursue BoldEasing(抜粋)

更新日時: 2013/03/21 20:14 JST

日銀の金融緩和、政策面でさらなる工夫の余地あった=中曽日銀副総裁
2013年 03月 21日 19:53 JST
 
トップニュース
日本企業のM&A大幅減、円安と株価回復が影響も
公示地価の下落幅が縮小、後半に「アベノミクス」期待高まる
中国から北朝鮮への原油輸出、2月にストップ=税関当局
ソフトバンク、イー・アクセスのLTEサービスを21日から開始
[東京 21日 ロイター] 日銀の中曽宏副総裁は21日、日銀本店で就任会見を行い、日銀の金融緩和は政策面でさらなる工夫の余地があるとの認識を示した。そのうえで、今後の金融政策は前例にとらわれずに新しい発想で考えると述べた。
会見は同時に就任した黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁と共同で行われた。
 

日米緩和期待で強気論が支配
キプロス問題がくすぶる一方、流動性相場が継続し、日経平均は1万2600円台まで上昇、約4年半ぶりの高値水準を付けた。 
中国から北朝鮮への原油輸出が停止
焦点:中国の対日姿勢は「雪解け」も 

 


物価目標達成に向け量的・質的に大胆緩和進める=黒田日銀総裁
2013年 03月 21日 19:57

[東京 21日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は21日、日銀本店で就任会見を行い、2年程度での2%の物価安定目標達成が望ましいとし、目標達成に向け、量的・質的両面から大胆な金融緩和を進めると述べた。

会見は同時に就任した岩田規久男、中曽宏の両副総裁と共同で行われた。


2013年 3月 21日 20:21 JST 更新
黒田日銀総裁、追加緩和を示唆─「2%目標」早期実現が使命 
 日銀の黒田東彦総裁は21日の就任記者会見で「2%の物価目標の早期実現が最大の使命だ」と強調した。さらに「量・質の両面から大胆な金融緩和を進めることによって物価目標を達成できる」と述べ、追加金融緩和を示唆した。 

[時事通信社]

 

日本企業のM&A大幅減、円安と株価回復が影響も
2013年 03月 21日 18:11 JST
[東京 21日 ロイター] 2013年1─3月期の日本企業の関わるM&A(合併・買収)が大幅に減少した。トムソン・ロイターの速報値によると、金額は前年同期比57%減の1.19兆円となり、件数も同37%減の493件にとどまった。
海外資産のM&Aは為替相場での急速な円安進行と株価回復で対象会社の価値が上がり、海外アセットの買収を考えている「日本企業にとってはダブルパンチ」(投資銀行関係者)との指摘がでている。
M&A全体の金額(1.19兆円)は、四半期ベースでは2000年来最低の水準。
一時は急速な円高を武器に、日本企業は海外資産に対するM&Aを加速してきたが、13年1─3月期は前年同期比58%減の5067億円と大幅減、10年7─9月期(5770億円)以来の低水準となった。
1月から3月末までにドル/円相場は約10%円安に振れ、米国など海外の株価はリーマンショック後の最高値を更新する回復ぶり。買い手の日本企業にとっては高い買い物になるケースもでているもようだ。
国内企業同士のM&Aは同25%減の6239億円。前年同期比の減り方が緩やかで、国内再編が底堅く進んでいることを裏付けている。
2012年4月─13年3月末までの年度ベースのM&Aの金額は同11%減の12.2兆円と依然高水準を維持。件数は同7%減の2506件だった。
1─3月期のリーグテーブルの首位は三菱UFJモルガン・スタンレー。
2月にオリックス(8591.T)が合意した蘭ラボバンクRABN.ULの資産運用会社ロベコの買収(総額約2400億円)でファイナンシャル・アドバイザー(FA)をつとめた投資銀行が上位に入った。オリックスのFAはゴールドマン、フーリハン・ローキー、三菱UFJモルガン・スタンレーの3社、対象者のFAはJPモルガン、レオナルド、バークレイズ。
(ロイターニュース 江本 恵美;編集 田中志保)
ドル95円後半、輸入企業の買い一巡後に小反落 2013年3月13日
日経平均がリーマンショック前の水準回復、円安が支援材料 2013年3月8日
蘭ラボバンクから運用会社ロベコ買収、総額2401億円=オリックス 2013年2月19日
日経平均は大幅反発で始まる、G20後の円安で主力株に買い戻し 2013年2月18日


流動性相場継続に安心感、日米緩和期待で株式・円債が同時高
2013年 03月 21日 16:01 JST
[東京 21日 ロイター] 流動性相場が継続するとの安心感が広がっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて早期の米緩和縮小懸念が後退。今夕には日銀の新正副総裁の会見が予定され、日本の緩和強化もあらためて意識されやすい。

キプロス問題が依然くすぶっているほか、足元の実体経済もマーケットの期待には追い付いていないが、日米の緩和継続期待を背景にした強気ムードのもとで、材料は各市場で都合よく解釈され、株式と円債価格の同時高をもたらしている。

<日本株、円債ともに高値更新>

リスクオンというよりも流動性相場が続いている。日経平均は1万2600円台まで上昇、約4年半ぶりの高値水準を付けた。景気回復期待を背景としたリスクオンであれば、債券は売られるのがノーマルな動きだが、金融緩和によるマネーが各市場に流れ込むとの期待が原動力の流動性相場のもとでは株高と債券高は両立する。円債市場では、円債先物は全限月ベースで3月8日に付けた最高値(145円50銭)を更新し、10年長期金利は一時0.580%と9年9カ月ぶりの水準に低下した。

流動性相場を加速させた一つの要因はFOMCだ。これまでのFOMC議事録で、早期の緩和縮小を視野に入れているメンバーが複数いることが明らかになっており、市場には警戒感があったが、バーナンキFRB議長の会見が「当面の金融緩和継続に安心感をもたらす内容だった」(T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏)という。景気判断は上方修正されたものの、議長は、緩和策によるリスクに加え、失業率押し下げになおどの程度の取り組みが必要かも考慮するとし、積極的な緩和政策を推し進める姿勢を明確にした。

FOMC声明発表後の米金利先物市場では、2015年3月まで米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を引き上げないとの観測が継続している。2014年半ばに期限を迎える一部の先物は下げ幅を縮小したが、大半の限月で動きはほとんど見られなかった。

日本でも、新たに就任した日銀の黒田東彦総裁と岩田規久男・中曽宏副総裁が21日午後6時から就任会見を行うことになり、「新メンバーによる大胆な緩和期待があらためて意識されている」(外資系証券)という。

リスクオン相場であれば、「安全資産」である国債は敬遠されやすいが、現在の円債市場が期待しているのは、日銀による大量の国債購入だ。「外債購入やリスク資産購入は容易ではなく、レジームチェンジを印象付けるには国債の大量購入しかない。10年超の国債をFRBは全体購入額の約3割買っているのに対し、日銀はまだ5%程度。米国と同じ程度まで引き上げることが黒田日銀の1つの目標になる」(国内銀行)という。景況感やインフレ予想よりも、中央銀行による直接的な国債需給への介入期待が、現在の円債相場を動かすドライバーとなっている。

<「イケイケ」の日本株市場>

足元の実体経済がすぐれないことも円債市場には好都合だ。日本の貿易赤字は2月まで8カ月連続と、第一次オイルショックの14カ月連続以来の長期赤字だ。3月ロイター短観調査(400社ベース)によると、製造業の業況判断DIは2ポイント改善のマイナス11となった。円安効果は市場の期待ほどは表れていない。米宅配大手フェデックス(FDX.N)が通年の利益見通しを引き下げたことも世界経済の不透明感を警戒させる。

SMBC日興証券・債券ストラテジストの岩下真理氏は3月ロイター短観について「円安による収益改善は一部にとどまり、輸送用機器の改善は早くも頭打ちとなった。外需への期待感が強くない上、アベノミクスが期待先行であることを印象づけた」と分析している。

実体経済が弱ければ、円債市場にはポジティブでも株式市場にとってはネガティブだが、強気が支配する今の日本株マーケットでは影響度は低い。むしろ「景気が弱ければ、より強い金融緩和が期待できる」(国内系ヘッジファンド)と、ポジティブに解釈されるのが現状だ。「危うさも感じるが、今は上昇相場に乗らなければという『イケイケ』ムードが支配している」(岡三証券・投資戦略部シニアストラテジストの大場敬史氏)という。

為替市場では、日銀の緩和期待をかなり織り込んだことから、円安は進みにくくなっているが、円安抜きでも日本株が上値を追う可能性もある。「過剰流動性が米国株を押し上げれば、グローバル投資家のリスク許容度が上昇し、その恩恵を日本株が受ける株高ルートもある」と三菱東京UFJ銀行・金融市場部戦略トレーディンググループ次長の今井健一氏は指摘する。

バーナンキFRB議長は20日の会見で珍しく株式市場についてコメント。「株式市場についていえば、現時点において歴史的なパターンから逸脱しているとは考えていない」と米株高を「容認」するような発言を行った。市場では「早めに金融緩和の『出口』に向かうことで生じるリスクは避けたいとの考えから、リスク資産市場で多少バブルが起きてもいいと思っているのではないか」(国内証券)との見方も出ている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K04720130321?sp=true

 

公示地価:3年連続下落幅縮小、リート活発化−緩和強化で上昇期待も 

  3月21日(ブルームバーグ):国土交通省が21日発表した公示地価(2013年1月1日時点)によると、全国の住宅地、商業地、全用途の地価は3年連続で下落幅が縮小した。低金利を背景にした住宅需要や商業地再開発で下支えされており、デフレ脱却を目指す安倍晋三政権の発足で、今後は地価が上昇に転じるとの見方も出ている。
公示地価は、全国平均では住宅地が前年比1.6%下落(昨年2.3%下落)、商業地は同2.1%下落(同3.1%下落)、全用途は同1.8%下落(同2.6%下落)。08年のリーマンショックを機に住宅・商業・全用途とも5年連続で下落したが、下げ幅は縮小した。
安倍政権の発足で金融緩和強化の観測が強まり、余剰資金が流入した東証REIT (不動産投資信託)指数は、年初来37%も上昇。今後は地価への波及が注目される中、伊藤忠経済研究所の丸山義正主任研究員は、安倍政権は「一般物価のデフレ脱却を目指しているが、当然資産デフレのほうも反転する。来年以降の公示地価には、アベノミクスがプラスの影響を与えるだろう」と分析している。
住宅地は住宅ローン金利の低さやローン減税で戸建住宅、マンションの需要が堅調に推移、地価を下支えした。住宅着工件数は1月まで5カ月連続で増加しているのに加え、不動産経済研究所の調査では、今年の全国の新築マンション発売戸数は4年連続の増加となる見込み。デベロッパーは旺盛な需要を当て込んでいる。
東日本大震災の被災地も地価は回復傾向にあり、住宅の高台移転で大きく値上がりしている場所も目立つ。宮城県の住宅地は下落から上昇に転じ、岩手県、福島県は下落幅が縮小している。
オフィス市況
商業地では、好立地のオフィス街や再開発地域は下げ止まりつつある。都道府県別では、再開発事業が盛んな川崎市のある神奈川県が唯一上昇(0.2%)に転じたほか、東京都は下落率が0.4%と前年の1.9%から縮小した。
賃料の先行指標となる都心のオフィス空室率 (三鬼商事調べ)は昨年7月からほぼ一本調子で改善。不動産サービスのDTZは、今年の東京の大型オフィスビル供給面積は昨年の約40%にとどまり、賃料は7%程度上昇すると分析する。
これに対し、森トラストの森章社長は、株高 が進んでいるものの、「実体経済の回復が追い付いていない印象で、オフィス市況は依然、賃料見直しには至っていない」と慎重な姿勢。賃料回復には「成長戦略が導く企業業績の回復」が欠かせないとしている。
公示地価が最も高かったのは、住宅地が東京都千代田区六番町で1平方メートル当たり価格278万円(前年比変わらず)。商業地のトップは同区の丸の内ビルディングと、中央区銀座の山野楽器銀座本店の2700万円(同)だった。
黒田日銀
安倍政権の発足はJ−REIT 市場の活性化につながっている。不動産証券化協会によると、今年1−2月のJ−REITの資産取得公表額はすでに5000億円と昨年1年間の1兆円の半分に達した。
緩和策の一環としての日銀によるJ−REIT購入に加えて、安倍首相肝いりの黒田東彦・日銀総裁の就任も、相場(投資口価格)の下支えになっている。黒田氏は就任前の衆院所信聴取で「既に決めた金融緩和では明らかに不十分」だと指摘。2%の物価目標は2年で達成を目指すとした。
みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは、J−REITは相場が急騰した結果、投資対象の物件取得が高水準で続いていると指摘。その波及効果やローン減税の拡充もあって、「来年は地価の上昇傾向が強くなるだろう」との見方を示した。  
今回の公示地価は全国2万6000の調査地点が対象だが、福島県内の17地点は調査を休止している。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 桑子かつ代 kkuwako@bloomberg.net;東京 Kathleen Chu kchu2@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Andreea Papuc apapuc1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/21 16:50 JST


15. 2013年3月21日 22:17:36 : 5FidTbXBPE
リーマンショック後の日本一人負け要因とは?


リーマンショック後の日本一人負け要因とは?

 世界の株式時価推移を見ていくと、リーマンショック後に約半分まで落ち込んだ株式時価はV字型の回復をし、大底から約2倍になり、ほぼリーマンショック前の高値まで戻りました。一方各国の株価指数の推移を見てみると、世界の株式市場がリーマンショック前の近辺まで戻したのに対し、唯一の例外が日本です。日本だけはリーマンショック後の底を這っていました。

 この日本の低迷状態が妥当なのか、異常なのかという議論は従来からありました。多くの人々は低迷している日本の株が普通であり、アメリカなどの上昇は偽りの夜明けだと説明していました。異常な金融緩和と、空前の財政出動というカンフル剤で元気づけしているだけですから、問題を先送りしているだけでメッキがはがれればいずれ落ちてくるというのが理由です。白川日銀総裁も諸外国の上昇は偽りの夜明けであり、異常な金融緩和を行ってもむしろ危険であるとするスタンスを取っていたように見えます。

 しかし現在のアメリカなどを見てみると、偽りの夜明けとは言えないほどの力強い経済となってきました。つまり、明らかにリーマンショック後のV字回復は世界のトレンドなのです。ではなぜ日本だけが低迷していたのでしょうか?

 リーマンショックやユーロ危機は日本にとっては対岸の火事とみられていました。むしろ、アメリカもヨーロッパも不良債権で銀行部門は滅茶苦茶でリスクを取れないが、日本はリーマンショックの遥か前に金融不良債権の処理は終わっているため、これからは日本が有利になると思われていました。

 白川総裁も、日本の金融不良債権の処理は終わっており、この経験を教えてあげますということを誇らしげに言っていました。結論から言いますと、経験を教えてあげますという姿勢自体がむしろ問題だったと言っていいと思います。

 各国の中央銀行はどれほどの金融緩和を行ったでしょうか。グラフは中央銀行総資産のGDPに対する比率を表していますが、リーマンショック以降の主要中央銀行の金融緩和の動きを示しています。それによると、イギリスの中央銀行はリーマンショック以来、4倍の金融緩和をしました。イギリスの中央銀行はバランスシートを膨張させて大胆な緩和をしたのです。また、アメリカは3倍、ヨーロッパは2.3倍です。それに対して日本は1.4倍。世界の中で日本の金融緩和がいかに小規模かということがよくわかります。

 こうして金融緩和が遅れたことにより、日本の金融は他国と比べて、相対的に引き締め状態にあったということになります。それによって直ちに起こるのが円高です。

 韓国ウォン、インドルピーは、リーマンショック以降、円に対して半分まで値下がりしています。その他、ユーロもドルも円に対して3割値下がり、人民元ですら2割値下がりし、円はリーマンショック以降の4年間、独歩高でした。このように急激に円が強くなったということは非常に大きなダメージを日本に与えました。

 一つは、円が強くなり、日本にデフレがまた戻ってきたということです。円が2倍になると日本人の給料が他の国と比べて2倍になることを意味します。世界は完全に一つの経済に統合されているので、日本だけが生産性も変わらないのに給料が2倍になるということは許されません。従って、円が2倍になり給料が2倍となる時、倒産しないために企業ができることは、2万円の給料を1万円に下げて競争力を維持することです。

 つまり、円高は直ちに日本企業のコスト引き下げ努力をもたらすことになるのです。ウォンが円に対して5割安くなった時、日本の企業は韓国企業に対して人件費を半分に減らさないと競争にならないのです。そしてそれにより、デフレが起こるのです。

 そして、もう一つ円高によって起こったことは、日本企業の競争力の劇的な悪化です。特にエレクトロニクス、機械など、アジアの台頭著しい産業は、日本企業が競争力を大きく失ったわけです。

 このように見ると、リーマンショック後の日本の一人負けの最も重要な原因は、日本の金融緩和が遅れたことであり、それが不必要な円高をもたらし、日本企業と日本の物価に本来不必要な追加的なダメージを与えたと考えられるのです。結果として日本の株と日本経済は一人負け状態になります。これは日銀不況と言ってもよいでしょう。

金融政策の重要性

   金融政策が経済に与える影響について、歴史を振り返って考えてみましょう。今起こっていることと全く同じことが、攻守入れ替えて80年前にも起こっていました。1930年代の大恐慌の時です。

 ウォール街の大暴落を起点として大恐慌が起こり、結局は相手国の非難合戦に結びつき、結果として1940年代の第二次世界大戦をもたらしたとすら言われています。大恐慌は経済のみならず、人類に大変な悲劇をもたらしたのです。そのような悲劇を繰り返すまいと、大恐慌研究は依然として経済学者にとって重要なテーマの一つとなっています。その大恐慌研究の最大の権威である学者が、アメリカの金融の総司令官、バーナンキFRB議長です。

 1930年代に何が起こり、主要国やマーケットがどのようにして立ち直ったのか、振り返ってみましょう。1929年にNYの株が大暴落し、そこから大不況が起こりました。主要国は相次いで政策を転換し金融緩和をしましたが、一番早く金融緩和をした国の一つが日本です。

 日本は1931年の後半、ウォール街の暴落が起こってから2年後に金融緩和をしました。当時の日本の大蔵大臣は高橋是清で、金本位制を放棄し、円の価値をドルの半分まで切り下げたのです。こうした金融緩和と通貨の切り下げによって日本経済は急激に復活しました。株は1931年を大底にして5割まで下がったものが3年後には元のピークを超え、生産も危機が起こってから4年後には過去のピークを超えるような増加が定着しました。つまり、1930年代の大恐慌の傷跡は、主要国の中で日本は非常に小さく済んだのです。

 一方、最も深刻なダメージを受けたのがアメリカです。アメリカは1933年まで大不況になってから4年間、金融引き締めが続いたのです。当時のフーバー大統領は、バブルや投機をもたらし、そもそもの混乱を作った金融機関を整理しようとムチの政策をやり続けました。大不況でムチの政策をやるので景気がどんどん悪化しました。

 結局アメリカが金融政策の転換、つまり金融緩和をしたのが1933年、ルーズベルト大統領が就任してからです。したがって4年間のこの引き締めがアメリカ経済を深刻な危機に陥れたのです。株価も89%暴落し、その後も低迷が続き、この高値を更新するのに20年以上かかっています。生産もわずか3年で5割落ちこみ、長期にわたって低迷しました。

 このように大恐慌のときには、アメリカが大きなダメージを受け、結局それが世界全体に大不況をもたらし、戦争という悲劇の大きな原因にもなったのです。そして、このときの顛末をもっともよく知る人が、リーマンショック時のアメリカにおける金融政策の総司令官になったわけです。

 バーナンキ議長は、今回の危機を受けてまずやらなくてはいけないのは壮大な金融緩和だと考えたのです。直ちにバランスシートを膨張させて金融緩和を開始し、QE1、QE2、QE3と従来にない量的金融緩和を実施、壊れていたマーケットを完全に立ち直らせたのです。これはまさしく1930年代の歴史を学んだバーナンキ議長が自らリーダーシップを発揮し、断固として実行したことなのです。これにより1930年代当時最も回復の遅れたアメリカが、今回は最も早い回復を見せているのです。


講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ
資産形成力養成講座 講師

武者リサーチ代表
ドイツ銀行グループアドバイザー
武者 陵司
3月11日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20130321_123824.html

その他の記事を読む
日本の成長期待が拡大


16. 2013年3月21日 22:22:22 : 5FidTbXBPE
黒田・日銀新総裁、質・量ともに大胆緩和を強調:識者はこうみる
2013年 03月 21日 21:22 JST

アングル:北朝鮮「サイバー戦士」の脅威、韓国で高まる警戒感
キプロス、ロシアに投資と融資延長を要請=財務相
ソフトバンク、イー・アクセスのLTEサービスを21日から開始
日本企業のM&A大幅減、円安と株価回復が影響も

[東京 21日 ロイター] 21日に就任した日銀の黒田東彦総裁は同日の会見で、2%の物価目標を2年程度で達成するため「何でもやる」と述べ、大胆な金融緩和への決意を改めて示した。

大量の国債買い入れを中心とした量的緩和を進めるとともに、各種金融資産の買い入れも検討。無期限緩和の前倒しや満期の長い国債の買い入れ、日銀の資産規模拡大をわかりやすく明示した政策への意欲を強調した。市場で取りざたされている臨時会合の開催についてはコメントを控えた。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●決意表明としては十分な内容

<大和住銀投信投資顧問 経済調査部長 門司総一郎氏>

黒田東彦総裁の会見内容は、決意表明としては十分な内容であり、うまく話している印象だ。イールドカーブの引き下げを表明しており、債券市場にはプラスだろう。株式市場に関する直接的な言及はないが、REITを含めた金融資産購入に期待を持たせている。一方、一段の円安を予想する為替関係者には期待にそぐわなかったかも知れない。臨時会合の有無について言及を避けたのもネガティブに取られる可能性はあるが、日程的に考えればもともと難しかったのではないか。株式市場は金融緩和から環太平洋連携協定(TPP)交渉などの成長戦略に関心が移りつつある。会見内容が売り材料にされることはなさそうだ。

●政策面でさらに踏み込む発言はない

<SMBC日興証券 チーフ債券ストラテジスト 末澤豪謙氏>

黒田東彦日銀総裁は、国債の買い入れ拡大、リスク性資産の買い入れ増を組み合わせて、市場にインフレ期待を醸成させるとしてきたが、きょうの会見で、さらに踏み込む発言はなかった印象だ。「デフレから脱却し、2%の物価安定目標を早期に実現することが日銀の一番大きな使命」という発言を含め、従来の所信聴取などの内容を超える形の発言は出ていないようだ。スタートは慎重に安全運転から入った感じで、サプライズはない。今後は日銀審議委員と政策をすり合わせることになるので、まずは穏当な内容にとどめたようだ。また、ヘッドラインベースで見ると、岩田規久男・中曽宏副総裁の発言が、黒田氏とのトーンを合わせてきている印象も受けた。

すぐに臨時会合を行うという感じも受けない。サプライズがなかったことで、相場への影響はほとんどないだろう。

●真新しい内容ない、実際の緩和策待ち

<三菱東京UFJ銀行 市場企画部 チーフアナリスト 内田稔氏>

特に真新しい内容はなかった。臨時会合の有無についても、黒田総裁は「コメントすべきではない」とした。緩和策として実際に何が出てくるのかというのを待つことになる。

先々週、4日、5日と衆院の議院運営委員会で黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁の所信聴取があったが、ドル/円はほとんど動かなかった。金融緩和策として「何でもやる」という話が完全に織り込まれていたというのが(4、5日に推移していた)93円台だ。ドル/円は先々週、週末8日にかけて96円台まで上昇したが、これはADP全米雇用報告、米新規失業保険申請件数、米雇用統計という米国要因による上昇なので、足元の95円超えはかなり「空中戦」の水準。

ドル/円の現水準が定着したり、さらに上を目指すためには、実際に出てくる日銀の政策が少なくとも現時点での市場のコンセンサスを上回ったり、後々への期待が持続するという要因に加え、米国の景気回復期待がより強くなるような材料が必要だ。それには、4月冒頭に発表される3月米雇用統計を待つ必要があり、今の材料ではもたないとみる。一方、日本の貿易収支は赤字で、実需の円売りが出てくるので、ここからドル/円が大きく下がるような展開にはならないだろう。


17. 2013年3月21日 23:44:59 : 5FidTbXBPE
アングル:黒田日銀、主な緩和手段の論点整理
2013年 03月 21日 22:43 JST

インタビュー:海外勢中心にモバイル事業売却交渉=ルネサス社長
キプロス、ロシアに投資と融資延長を要請=財務相
ソフトバンク、イー・アクセスのLTEサービスを21日から開始
日本企業のM&A大幅減、円安と株価回復が影響も

[東京 21日 ロイター] 黒田東彦総裁率いる日銀の新体制で想定される主な金融緩和手段の論点は以下の通り。

<国債の年限長期化、量拡大に不可欠>

量的な拡大を大胆に進めていくには、市場規模の大きい国債の買い入れが中心とならざるを得えない。現行の基金による国債買い入れは残存3年以下が対象となっているが、5年程度までの金利が0.1%の水準に低下する中で、さらなる対象年限の長期化が不可欠だ。新正副総裁が年限の長期化に柔軟な姿勢を示していることに加え、6人の審議委員の中にも前向きな委員がおり、さらなる長期金利低下と量的緩和拡大の双方の観点から、決定会合で承認が得られやすいとみられる。市場も5年程度までの長期化をほぼ織り込んでいる。一方、年限を長期化すれば、満期到来に伴う資産残高の圧縮が進まないことから、出口戦略における金融政策の柔軟性が低下するとの懸念もある。

<避けられない銀行券ルールの見直し議論>

基金による国債買い入れとは別に、市場の資金需給を均す金融調節上の手段として、対象年限に制限を設けていない国債買い入れ(輪番オペ)も実施されている。基金で買い入れる国債の年限を長期化すれば、輪番オペとの境界は一段と曖昧になる。白井さゆり審議委員は、3月の金融政策決定会合で両者の統合を提案したが、反対多数で否決された。ただ、国債の大量購入を進めるとみられる新体制では統合議論が高まる可能性が大きい。

輪番オペには、日銀による国債購入が財政ファイナンス(穴埋め)とみなされないよう、日銀保有の国債残高を銀行券の発行残高以内に抑える、いわゆる「銀行券ルール」が歯止めとして設定されている。基金と輪番を統合する場合、すでに両者を合わせた国債保有残高は銀行券発行残高を超過しており、同ルールの見直し議論は避けられない。黒田総裁は、日銀が自主的に金融政策手段として市場から国債を買い入れている限り、同ルールの有無にかかわらず、財政ファイナンスの懸念が高まることはないと主張している。

<リスク性資産の拡充、損失負担のあり方も焦点>

現在、基金では国債以外に、社債やコマーシャルペーパー(CP)、ETF(指数連動型上場投資信託)、J−REIT(不動産投資信託)などのリスク性資産を購入している。黒田総裁は、質的緩和の拡充の面からも、リスク性資産について「市場の状況などを踏まえて十分議論する」方針。もっともリスク性資産を増やせば、市場価格が下落した場合に損失も大きなものとなる。2月の金融政策決定会合では、複数の政策委員が「損失が生じた場合、政府に損失を分担してもらう可能性は考えられないか」と問題提起しており、リスク性資産の購入拡充に向け、今後、政府・日銀間で損失負担のあり方が議論される可能性もある。

<無期限緩和の前倒し、黒田総裁「検討する」>

日銀は1月の金融政策決定会合で、資産買入基金による資産購入を2014年から「無期限」(オープンエンド)方式とする事を決定した。金融資産を毎月一定額、期限を定めずに購入し続けるもので、これについても白井委員が3月の会合で速やかな導入を提案したが、反対多数で否決されている。これに対して黒田総裁は「無期限」緩和について「前倒しであろうと何でも検討する」と前向きな考えを表明している。

<当座預金の付利撤廃、賛否両論>

日銀当座預金の超過準備に付されている利息(付利、現行0.1%)の撤廃は、昨年12月の会合で石田浩二審議委員が提案したが、反対多数で否決された。背景の1つには、欧州債務問題などを背景に逃避先として円需要が高まりやすい状況を是正する狙いがあった。しかし、現在はリスク回避姿勢の後退などもあり、為替市場では円高が急速に是正されている。さらに付利を廃止すれば、金融機関が当座預金に資金を預けておくインセンティブも低下するため、資金供給オペで札割れが発生し、量的緩和の拡大に支障を来す恐れもある。黒田総裁は付利撤廃について「賛否両論ありコメントできない」と珍しく明言を避けている。中曽宏副総裁は、過去の量的緩和政策時代に無担保コール翌日物金利がゼロ%まで低下した当時を振り返り、「市場が死んでしまった」と表現。市場機能を維持する重要性を強調している。

<可能性低い外債購入>

日本経済が長引く円高に苦しんでいた中で、中央銀行が為替相場に直接働きかける手法として、議論が高まった。ただ、日銀法では為替操作を目的とした金融政策は認められておらず、政府・日銀は法律上不可能との立場。黒田総裁も「為替安定の責任は財務省にある」とし、「為替に影響を与えること自体、(為替市場)介入になる」と日銀による外債購入を明確に否定している。最近の円安進行を受け、海外から円安誘導との批判も高まりやすく、日銀が外債購入に踏み切る可能性は当面ない。

(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 橋本浩)


黒田日銀新総裁は2年で2%へ「何でもやる」、大胆緩和を強調
2013年 03月 21日 22:50 JST
[東京 21日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は就任会見で、2%の物価目標を2年程度で達成するため「何でもやる」と述べ、大胆な金融緩和への決意を改めて示した。

日銀の資産規模拡大による量的緩和を大量の国債や各種金融資産の買い入れで進める。無期限緩和の前倒しや満期の長い国債の買い入れなども検討する意欲を強調した。市場で取りざたされている臨時会合の開催についてはコメントを控えた。

黒田総裁は、政府と日銀が1月に示した2%の物価目標の達成時期について、諸外国中銀の例を参考に「2年程度での達成が望ましい」と発言。デフレには様々な要因があるが「克服する責任は中央銀行にある」とし、2%の目標達成が「日銀の一番大きな使命」と述べた。現在の円安・株高について「バブルの懸念があるとは思っていない」とし大胆な緩和を躊躇なく進める意気込みを示した。

また経済のグローバル化を踏まえ「金融政策のわかりやすい対外的な説明が必要。金融システム安定には各国中銀との協調も重要」とし、財務官など長年の国際金融畑で培った「ネットワークを役立てたい」と抱負を述べた。一方で、「市場との対話は市場関係者の言う通りではない」と述べ、過度の緩和期待に対するけん制とも取れる発言もした。

<「基金で政策複雑化」と指摘、バランスシート指標の量的緩和検討か>

具体的な緩和手法について、「2%の物価目標達成できるまで、あらゆる手段を講じる必要がある」、「量的・質的両面から大胆な金融緩和を進める」と強調。資産買い入れ基金による現行の金融緩和は仕組みが複雑化しているため、「日銀のバランスシートの動きがわかりやすい政策運営が必要」とし、日銀の保有資産全体の大きさを拡大することで金融緩和を強化したい考えを示した。

日銀が買い入れる資産として国債以外に「REIT(不動産投資信託)を含め様々な金融資産の購入も市場状況など踏まえ議論する」とした。「長期の資産を買いイールドカーブ自体を下げていく」とも述べ、基金で買い入れる国債の対象を、現在の3年よりも満期の長いものに広げる考えを示した。2014年初めに予定している期限を定めない国債の買い入れについては、「前倒しであろうとなんでも検討する」と述べた。

<国債大量購入、自主的なら財政ファイナンス懸念なし>

大量の国債購入を続けても「日銀が自主的に金融調節のため資産を買い入れるのは、国債の引き受けとは違う」と強調。財政ファイナンス(穴埋め)懸念を生むことはないとの見方を示した。日銀はこれまで、保有している国債の量を紙幣の総量以内に抑える「日銀券ルール」を定めていたが、「日銀券ルールがなくても財政ファイナンス懸念はない」と語った。

新興国を中心に、日本の金融緩和が円安誘導との懸念が出ていることについては、「他の条件が一定なら金融緩和が円安効果を持つのは事実」としつつ、「金融政策は為替相場をターゲットとしているものでは全くない」と反論。昨年末以降の円安は「リーマン(ショック)以降の急激な円高の修正」とし、「デフレ脱却に貢献する」と述べた。また「為替安定の責任は財務省にある」とした。

<金利上げ下げも期待に働きかけ>

会見は、同時に就任した岩田規久男、中曽宏の両副総裁と共同で行われ、3者の発言には食い違いも残った。2%目標の達成時期については岩田副総裁も「2年程度での達成が必要」としたものの、中曽副総裁は明言を避けた。物価目標を達成できない場合の責任の取り方も、岩田副総裁が「政策のミスジャッジ(誤判断)が理由であれば辞任する」と述べたものの、黒田総裁は「一日も早く達成するよう努める」と述べるにとどめた。

日銀法のあり方について、岩田氏は「長期的に物価目標を法律で担保する必要がある」と持論を述べたのに対し、黒田氏はあくまで「日銀法改正は国会で議論すべき事項」とかわした。

岩田・黒田両氏は緩やかなインフレを実現することで景気回復を目指す「リフレ派」。金融政策を通じてデフレになじみ過ぎた人々の期待を変化させることを主眼としている。黒田総裁は、「従来型の金融政策も単に金利の上げ下げでなく企業などの期待に働きかけている」とし、金融政策はそもそも期待に働きかけるもの、との見解を披露した。白川方明前総裁が19日の退任会見で期待に働きかける政策は「危うい」と警鐘をならしたのに対抗した形だ。

<資金供給と物価、中期的には相関関係─岩田副総裁>

岩田氏らリフレ派は安倍晋三首相による強力な金融緩和表明以降、物価連動債から試算した期待インフレ率が上昇していると強調する。ただ物価連動債は日本では流動性が少ないため、黒田総裁は「アンケートなども通じて人々の物価観を調査する」意向を示した。

日銀は従来から資金供給が必ずしも物価上昇に結びつかないとの立場。これに対して岩田氏は、「デフレ期は企業に資金が滞留しているため、銀行貸し出しが伸びにくく日銀の資金供給が短期的に物価上昇に結びつかないが、中長期的には資金供給と物価上昇率に相関関係がある」と説明した。

(ロイターニュース 竹本能文、伊藤純夫:編集 久保信博 橋本浩)

【ロンドン市場】円買い・ユーロ売り優勢、日銀への催促、欧州景況感の悪化
2013/03/21 (木) 21:03


NY市場 キプロス懸念でユーロドル軟調 米株と原油先物は一段安(23:35)
NY市場 米指標受けて上下動 ユーロドルは下落に(23:21)
米国経済指標【中古住宅販売件数・景気先行指数・フィラ連銀指数】(23:10)
ユーロ圏高官 キプロス、銀行課税で早期の合意なければ大手行の清算必要に(23:04)
NY株式 軟調、高値警戒感と欧州景気・キプロス情勢などが重石(22:55)

21日のロンドン市場では、円買いおよびユーロ売りが優勢になっている。序盤は英欧経済指標の対照的な結果が目立った。3月の仏独ユーロ圏のPMI速報値が製造業・非製造業ともに予想を下回る結果が相次ぐと、ユーロ売りが先行した。ユーロドルは1.29台半ばから一時1.2880近辺まで急落している。対するポンドは、2月の英小売売上高が予想を大きく上回る上昇となったことで買われた。ポンドドルは1.51台前半から一時1.52台乗せまで急伸。この影響でユーロポンドは0.85台後半から一時0.85割れまで下落した。

その動きのなかで、ドル円が95.70割れ水準から一気に95.20レベルへと下落した。特段の円買い材料はでていないが、日銀正副新総裁の就任会見を控えてストップ注文を巻き込んだポジション調整の動きがでたもよう。そして、その会見では物価目標達成への強い決意表明となったものの、先日の国会での所信聴取から目新しい内容はみられなかった。黒田総裁は、臨時会合に関する質問にコメントを控えており、市場の失望感を誘った面もあったようだ。ドル円は一時95.65レベルに反発も、すぐに下げに転じて95.06レベルまで下落。この日の高値から1円超の下落幅となった。今後は具体的な緩和策をめぐって市場からは催促する圧力が掛かりそうだ。

クロス円も全般に軟調。ユーロ円は一時122.75近辺、ポンド円は144.10近辺、豪ドル円は99円割れまで下落する場面があった。ただ、その後の戻りは、各クロス円ごとにまちまち。ユーロの戻りは鈍く、ポンドと豪ドルは比較的堅調だった。

今週注目されているキプロス関連もニュースが多かった。キプロス財務相はモスクワを訪問しており、ロシア財務相と支援などについて話し合っている。まだ、具体的な合意にいたっていないが、銀行資産や天然ガス開発について協議されているもよう。50億ユーロ規模の融資を引き出す交渉も進行しているようだ。また、キプロスの各政党は基金の設立で合意、銀行預金課税については話し合われなかったとの報道もあった。さらに、ECBが3月25日までキプロス向けの緊急流動性支援を現行水準に維持すると発表している。期限が切られたことで、週末に向けて新たな方策に向けての進展が期待されている。まずは、ユーログループが数日内に会合を開くもよう。

(Klugシニアアナリスト 松木秀明)


18. 2013年3月22日 01:42:26 : 5FidTbXBPE
だから「リフレは(本当に)ヤバい」んです

『リフレはヤバい』の著者、小幡績氏に聞く

2013年3月22日(金)  石黒 千賀子

 黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任し、新体制がスタートした。日本経済の復活にはさらなる大胆な金融緩和策が不可欠とする黒田新総裁のもと、日銀は1月に導入した物価上昇率2%という目標を実現できるのか。あえてインフレを起こそうとするリフレ策は、日本経済に多大な打撃を与えるとして、著書『リフレはヤバい』でリフレ策を痛烈に批判している小幡績氏に、今後の日本経済の展開をどう見ているか聞いた。

小幡績(おばた・せき)氏
1967年生まれ。92年3月東京大学経済学部卒業、同年4月、大蔵省(現財務省)入省、99年退職。99〜2001年ハーバード大学。2001年ハーバード大学にて経済学博士を取得。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究学科准教授。著書に『すべての経済はバブルに通じる』『ネット株の心理学』などがある。
黒田東彦新総裁は、金融緩和策として国債だけでなく日銀による資産担保証券(ABS)や株式の購入まで視野に入れているようですが、2%のインフレを本当に起こすことができると見ていますか。

小幡:僕は大蔵省に入る際の面接で、自分の卒論のテーマを巡って黒田さんとかなり議論したこともあるんですが、彼は自分が正しいと思ったことはやり抜く人です。妥協はしない。「できない」とは絶対に言わない。2000年頃からデフレは問題だと考えていたわけだから徹底してやるでしょう。

 知的好奇心が旺盛で知識の幅も広い。本当のインテリで、信念を持って行動するので、財務省の意向などにもまったくとらわれず動くでしょう。財務省の論理としては、名目金利が上がったら国債の利払いが増えてしまうから困ると考えるでしょうが、そんなことは気にせず、金融緩和をとことんやると思います。

 ただ、財務官として金融を担当したとはいえ、財務官と日銀総裁は仕事が違う。金融政策の実務経験はない。だから日銀の現場というか執行部の意見をよく聞き、よく学んだ上で政策を出してくるでしょう。恐らく初回は国債の買い入れ増など従来の延長線上の拡大版のようなところからスタートして、その後、2回目、3回目から本領を発揮すると見ています。

2年以内に物価上昇率が2%になる確率は5分5分

 それでも2年以内に金融政策によって物価上昇率2%を実現させるのは難しいと思います。

 本にも書きましたが、経済学においては、金融政策に関する「たこ紐理論」というのがあります。強い風に煽られている凧をうまく操ることは技術により可能になるが、そもそも風がないときに凧紐を引っ張って無理やり凧を揚げようとしても上がらない。インフレで経済が過熱しているときには、中央銀行が過熱を抑えるべく金利を引き上げ、金融引き締めを行う。凧紐と同じで、引っ張って制御はできるが、どう押しても(金融政策では)凧を動かすことはできない。

 つまり、金融政策によってインフレを抑えることはできるが、デフレを解消することは難しいということです。

 ただ、「2年以内に物価上昇率が2%になる確率は?」と聞かれれば、5分5分くらいだと思います。可能性としては2つある。

どういう可能性でしょうか。

 1つは、既に起きている円安によるコストプッシュ型のインフレが発生するというパターンです。原発を今後、再稼働するかどうかにも関係しますが、再稼働すれば輸入エネルギー分が減るので、若干インフレになりにくくなるものの、大幅な円安に振れれば輸入インフレになる。石油危機の時ほど激しいインフレにはならないでしょうが、景気にはマイナスなので、中長期的にはそのインフレは持続しない。

 いわゆるスタグフレーション、マイルドなスタグフレーションに陥るということです。今までは不景気だけだったのに、今度は物価まで上がって困った事態に、という展開です。

 もう1つは、金融政策によっては実現しないが、今後の景気動向次第でインフレが実現する可能性があるということです。リーマンショックから5年を経て昨年夏以降、世界の景気は回復傾向にあります。世界的に株も上がっている(もっともこれは景気による回復だけでなく、金融緩和による影響も大きい)。欧州ではキプロスの問題は大勢には影響ありませんし、米国経済は好調です。中国も底を打ったと言われています。

 このように世界中の経済がいい方向に進むと、日本も景気がよくなり、物価も長い調整局面を経てさすがに少しはプラスに転じる可能性が出てくる。具体的には輸出主導による回復です。円安も加わると輸出がかなり伸びて、その結果、ディマンドプル型のよいインフレが起きる可能性が考えられます。

しかし、円安で恩恵を受ける企業は今ではかなり限られるとの指摘もあります。

 日経225に入っているような大企業にはプラスに影響し、株価にはプラスになりやすいですが、中小企業ほどマイナスの影響を受けるので、全体として円安はマイナスの影響のほうが大きいと思います。それでもある程度円安になり、世界経済の回復にうまく乗れればよいインフレになる可能性があるということで、つまり、金融政策はあまり関係ないわけです。

日銀の最初の「量的緩和」と今のFRBのQEは似て非なるものだ

金融緩和策によってインフレは起こせない一方で、量的緩和のやり過ぎはむしろ資産バブルといった弊害を招くと今回の著書でも指摘されています。


 日銀が世界で初めて「量的緩和」という政策をひねり出して、2001〜06年まで実施した量的緩和はまっとうな政策でした。これは米連邦準備理事会(FRB)が今やっているQE(量的緩和)とは似て非なるものです。

 まず、日銀が当時やった量的緩和から説明しましょう。当時、既にゼロ金利になっていましたが、銀行が日銀からさらにお金を借りやすくするために、民間の銀行が日銀に置いてある日銀当座預金残高の量を膨大に増やしたのです。本来なら5兆円も積んでおけば十分ですが、それで「ゼロ金利を続けますよ」と言っても「金利をいつ引き上げるかわからない」と不安に思われるかもしれない。そのため、10兆円、20兆円と残高をどんどん増やし、最後は35兆円まで積みました。

 日銀が引き締めに動くときは残高が20兆円から10兆円とかに減るから、借り手側も金融政策の変化を読めるので、突然、資金を引き揚げられる懸念はなくなる。つまり、日銀が言うところの「十分低くなったリスクプレミアムに働きかけて、さらにリスクプレミアムを下げて、リスクテイクを促す」ことで、日銀としては設備投資に対して慎重になっている度合いを少しでも緩めてもらうことにより、実体経済の改善に結びつけよう、という狙いでした。

 これが十分な効果を発揮しなかったことから日銀は批判されてきたわけですが、FRBの現在のQEは同じ量的緩和でも全く違う。

 現在FRBが、QE3という政策の下にやっているのは、金融商品を買っているだけ。毎月、長期国債450億ドルに加えて、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドル、計850億ドルもの金融商品を購入しています。

 リーマンショック直後は、金融商品の価格が暴落し大混乱したことから、FRBが買い支えることによって市場の混乱を収めたわけですが、現在は金融商品の価格を維持するために買い支えている。

 証券市場に働きかけて、買い支えることで価格にも影響力を発揮しているわけです。当然、投資家は大喜びです。もちろんFRBのベン・バーナンキ議長としてはそうした買い支えを通じて実体経済への波及効果を狙っているわけですが、実態は「資産買い入れによる投資家支援」です。

 これに対し、日銀のこれまでのスタンスは、「中央銀行が証券市場の価格形成に影響を与えてはいけない」という考え方です。もちろんFRB同様、リーマンショックで金融市場がおかしくなり、金融商品にまともな価格がつかないような異常事態が発生した際には、買い支えるということはあります。ただ、それはあくまでも異常事態における正常化プロセスの一環として、例外的措置を取ったという位置づけに過ぎない。

 しかし、日銀が今後、金融緩和策として金融商品の購入をもどんどん拡大するなら、資産バブルの発生を招くことにもなりかねない。企業による設備投資意欲を含め、需要が拡大しない中で、金融緩和を強引に進めれば、その効果は資産市場にしか及ばず、資産バブルを招くことになります。実体経済には何ももたらさない。そしてバブルが崩壊すれば、銀行危機になり、銀行融資が引き上げられ、実体経済はまたも打撃を被ることになる。悪いことばかりです。

日本国債暴落の可能性は低い

本では、円安が進めば日本国債の価格の暴落を招き、銀行危機の発生が避けられなくなるとも指摘されています。

 確かに本にそう書きました。ただ、円安がどの程度進むかにもよります。パニックに陥るような暴落の可能性はありますが、高くはないと見ています。なぜか。

 海外のヘッジファンドが日本国債の売りを仕掛けてきても、それに乗る投資家があまりいないだろうと予想されるからです。つまり、価格下落を見込んで売りを仕掛けても、売りを仕掛けた連中だけでなくほかの投資家も売りに乗ってこないと、相当下がった価格で買い戻して利益を上げることができない。

 しかし、日本の国債市場でそういう売り仕掛けに乗る人はいない。

それは日本の国債の93%は国内の機関投資家が持っていて、誰かが国債を売り浴びせてもすぐに国内の機関投資家がその価格が下がった国債を「買いのチャンス」と判断して買うから、ということですか。

 国内の機関投資家は売られた国債を積極的には買わないかもしれないが、追随して売るわけではない、ということです。これは微妙な違いですが、重要なポイントです。

しかし、公的債務がGDP(国内総生産)比220%もあって、国債の金利が上がらないわけがない、とやはり考えてしまいます。

 日本国債はいわば爆弾です。つまり、爆弾を放り投げる(=売る)方法と、抱えたまま死ぬという方法がある。日本の国債を膨大に抱えている金融機関は今後、値下がりしていく国債を抱えながら含み損が増えるのを甘受しながら何とかしのいでいくという状況になるのではないでしょうか。


 投げ売りすれば損失を限定することになります。含み損を抱えたままでは、前に進むことは難しいから損を確定し、損切りすることは大切だという指摘はもっともですが、損切りできない機関投資家もいる。国債市場においては損切りをするインセンティブがありません。損切りをしてもいいことはない。

しかし、金融機関は決算で時価評価が求められている以上、含み損を抱え続けることは難しいのではないでしょうか。

 リーマンショック以降、国際業務を展開していない金融機関は時価評価をしなくてよくなっています。一方、時価評価を義務づけられている大手の金融機関は徐々に様々な手段を使って国債リスクを減らしています。大手3行は保有する国債の満期(デュレーション)を2年半程度に短期化してきています。つまり、政府が突然破綻しない限り、時価で含み損があっても2年半経てば元本が戻ってくるので、リスクは減っていく。

 もっとも、今、日本国債の利回りはさらに下がって価格は上昇傾向にありますから、金融機関が現在どう動いているかは不明ですが…。

 むしろやはり問題は、地方銀行や信用金庫といった規模の小さな金融機関でしょう。時価評価をしなくていい金融機関には国債の保有を増やしているところもある。彼らは国債価格が下がっても投げ売ったりはしない。持ったまま死んでいくことになるでしょう。つまり、救済されるのを待っているということです。

 リーマンショックで変更になった「時価評価をしなくていい」というルールは、国際業務を行うところは解除されましたが、そのほかには残っている。これが延長される可能性はあるわけで、そう考えると、国内の機関投資家が国債を投げ売るインセンティブはますますなくなるでしょう。かくして、大暴落は発生しない。僕はそう見ています。

 むしろ国債の暴落のシナリオより、問題は新規の市場で国債を買う投資家が徐々にいなっていくことでしょう。その意味で、今後、国債の発行を減らしながら、いかに成長戦略を描き、実現させるのかが日本は問われている。

 もっとも今申し上げた、「日本国債がパニックに陥って暴落する可能性は低い」という予測はあくまでも、日本経済が普通にしていれば暴落を避けられるということです。

と、言うと、やはり暴落する可能性はある、と…。

 まさに、期待インフレを無理やり起こすとか、物価上昇率を何がなんでも2%に上げるんだ、として手段を問わず片っ端から金融資産を何でも買いまくるみたいなことをして、凄まじい円安を目指すといったことになれば、事態は変わる可能性がある。つまり、すべては黒田新日銀総裁次第ということです。


石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス副編集長。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130321/245383/?ST=print



国民をミスリードする「国民負担率4年ぶり低下」の報道

悲願達成のため2.7%の経済成長を織り込んだ!? 財務省

2013年3月22日(金)  磯山 友幸

 財務省は3月19日、2013年度(平成25年度)の国民負担率の見通しを公表した。国民負担率とは、国税や地方税など「税負担」と年金などの「社会保障負担」の合計を、国民所得で割ったもの。つまり税と社会保障の負担感、重税感を示す指標と言える。毎年この時期に翌年度の負担率見通しが公表されるのが慣例だ。

 この発表を受けて新聞各紙は「国民負担率4年ぶり低下」「新年度は40%、4年ぶり下落」と一斉に報じた。発表資料には「国民負担率(対国民所得比)の推移」という表が付いており、2008年度40.3%→2009年度38.1%→2010年度38.5%→2011年度40.0%→2012年度40.2%→2013年度40.0%となっている。この表に従えば、2013年度は確かに4年ぶりに負担率が低下することになる。

 だが、この表の欄外を見ると、2011年度までは実績、2012年度は実績見込み、2013年度は見通しであるという注記がある。見通しとは、国民所得がどれだけ増減するか、税収もどれだけ増減するか分からない段階での、いわば皮算用ということなのだ。あるいは財務省流の「目標値」「願望値」と言った方がいいだろうか。

ニュースにすべきは2011年度実績の「40%」超え?

 本来、ここでのニュースは2011年度の実績で国民負担率が40%に乗った、ということだろう。2008年度にも40.3%という数字があるが、これはリーマンショックによって国民所得が前の年度の381兆円から355兆円へ6.9%も減少したことによる。一時の特殊要因と見ることもできる。その2008年度を除くと1970年度(昭和45年度)以降、初めて確報値として国民負担率が40%の大台を記録したのである。

 1970年度の国民負担率は24.3%。税負担率が18.9%、社会保障負担が5.4%だった。これが40年たって2011年度には税負担が22.9%、社会保障負担17.1%にまで上昇した。やはり社会保障費の負担が急速に重くなっているが、税負担も増えている。

 40%という数字をどう見るか。発表資料には別の資料も付いている。「国民負担率の国際比較」だ。日本の40.0%に対して、アメリカ30.9%、イギリス47.3%、ドイツ50.5%、スウェーデン58.9%という数字が並ぶ。要は、アメリカは例外だが、欧州やその他の国に比べて日本の国民負担率は低い、ということを物語っている。だが、本当に40%は軽い負担なのだろうか。

 学校の歴史教科書では「重税に苦しんだ」江戸時代の農民に課せられた年貢を「4公6民」あるいは「5公5民」と記載している。年貢は4割か5割だったというのだ。幕府直轄の「天領」などでは実質2割以下だったところもあるという。国民負担率の40%というのは江戸期の年貢と同じ水準に達したとみることもできるのだ。

 課税しても実際にはなかなか徴税できなかったり、重い社会保険料負担に耐えられず、年金や健康保険に未加入の人も増えている。負担感は着実に増しているのだ。

 しかも、2012年度の実績見込みでも40.2%となっており、負担増は止まっていない模様だ。さすがにこの増勢が続くのはマズイと財務省も思ったのだろうか。2013年度はわずかながら低下し40%になる、としたのだ。

 前述の通り、数字は見通しである。だから実績と食い違うことも多い。2011年3月に出した2011年度の予想は38.8%だったが、実績は40.0%、2012年3月に出した2012年度の予想は39.9%だったが、実績は40.2%になった。ここ数年、実際よりも低めの数字を見通しとして出しているように見える。

 国民負担率を少しでも低く見せたいというのにはわけがある。今後、負担の増加が明らかだからだ。2014年度は消費税が5%から8%に上がる3%分がフルに効くほか、2015年度は8%から10%に上がる半年分、つまり1%相当分、2016年度はフルに効くので、さらに1%相当分の負担が増える。

国民所得一定なら、2016年の国民負担率は45%

 国民所得が一定とした国民負担率を単純に計算すると、2016年度には消費税分を上乗せするだけで43.7%に達する。また、厚生年金の保険料率は毎年引き上げられており、2012年度に16.766%(労使合わせて)の保険料率は2016年度には18.182%になることが決まっている。つまり1.449%ポイント上昇するのだ。これを単純に加えるだけでも国民負担率は45%を超えてしまう。

 いまここで、国民負担率の議論に火がつくと、2014年の消費税率引き上げに反対する声が出かねない。増税が悲願であと一歩まで迫った現在、そんな議論が再び起きてはかなわない、ということだろう。

 安倍晋三首相がかかげる経済政策、いわゆるアベノミクスでは、大胆な金融緩和を一本目の矢として強く打ち出している。これを長年主張してきたのはリフレ派と呼ばれる経済学者だが、安倍氏はイェール大学の浜田宏一・名誉教授を内閣官房参与に迎え、経済ブレーンとした。その浜田氏は大胆な金融緩和によってデフレからの脱却は可能だとし、デフレから脱却するまでは消費増税はすべきではない、という立場だ。

 安倍首相も浜田氏のアドバイスに耳を傾けているのは明らかで、消費税増税先送り論がいつ飛び出すかも分からない。アベノミクスが円安株高をもたらし、国民の景気マインドを一変させただけに、反消費税増税に火がつくことだけは何としても避けたいと思っているのだ。

 では、新聞が報じた「2013年の国民負担率は低下する」という根拠は何か。

 実は、経済成長を前提としているのだ。発表文にもこう書かれている。

 「背景としては、景気回復に伴う国民所得の伸びに伴い、社会保障負担率及び租税負担率が減少することが挙げられます」

 具体的には国民所得が349.1兆円から358.9兆円に2.8%も増えると見込んでいるのだ。GDP(国内総生産)も2.7%伸びる前提だ。財務省はアベノミクスによって景気が大きく好転することを前提に国民負担率は低下するとしているのだ。

 リフレ派の学者たちは、大胆な金融緩和によるデフレからの脱却が進むだけで、税収は大きく増えると主張している。これが消費税増税無用論に結びつくわけだ。国民負担率の計算で、あまり楽観的に国民所得の伸びを考えると、税収が大きく増えてしまう。そうなると消費税増税無用論に拍車をかけてしまいかねない。その結果、微妙な国民負担率がやや下がるような推計に落ち着いたのだろう。だが、現実には毎年1兆円以上増えている社会保障費は大きく、国民負担率を引き下げていくのは難しいだろう。

 いずれにせよ、現在の試算でも国民負担率は40%台が3年続くことになる。この水準をどう考えるべきなのか、単純にこの数字だけを諸外国と比べて、まだまだ国民は負担できると考えてもいいのか。消費税率は欧州のように20%近くまで引き上げて大丈夫なのか。そろそろ本音の議論をするべきだろう。

いったい国民の負担が本当はどのくらい増えるのか

 そのためには不確かな「将来見通し」に国民の目を誘導するのではなく、終わった「実績」をもとに、何が問題なのか、負担を減らすためにはどういう手を打たなければいけないのか、真剣に議論すべきだろう。

 国会での論戦も「予算」が中心で、税収にしても国債発行額にしても「予算」をどうするかにばかり焦点が当てられている。財政状態をどう立て直すかを考えるには実績、つまり「決算」がどうなったかをきちんと分析し、議論することが不可欠だろう。国会でも予算委員会だけではなく、決算・行政監視委員会での議論を重視すべきだという議論が増えてきた。きちんと実態を把握しなければ、正しい処方箋は書けない。

 国民負担率の議論は、税と社会保障を一体と考え、それをどう経済成長で支えていくかという議論である。民主党政権が声高に叫んだ「税と社会保障の一体改革」にしても「成長戦略」にしても、国民はどれだけの負担をするのか、という前提がなければ話が始まらない。

国民負担率(対国民所得比)の推移
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201303/sy2503n.pdf


磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト。経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材中。1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。熊本学園大学招聘教授、上智大学非常勤講師。静岡県アドバイザーも務める。著書に『国際会計基準戦争完結編』『ブランド王国スイスの秘密』(いずれも日経BP社)など。共著に『オリンパス症候群』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130321/245334/?ST=print


19. 2013年3月22日 11:47:09 : xEBOc6ttRg
44兆円の新規国債発行枠、撤廃していない=安倍首相
2013年 03月 22日 10:13 JST
[東京 22日 ロイター] 安倍晋三首相は22日午前の衆議院財務金融委員会で、民主党政権下の中期財政フレームで策定していた新規国債発行額の44兆円の枠について、撤廃はしていないと語った。

民主党の武正公一委員の質問に答えた。

安倍首相は44兆円の発行枠について「前内閣の閣議決定だが、撤廃はしていない」と語った。ただ、「前政権の枠にはこだわっていない。それには縛られていない」とも述べた。

安倍首相は「12年度補正予算は足元の景気に弱い動きがみられたのを踏まえ、景気底割れを防ぐ観点から44兆円の枠にこだわらず編成した」と説明。「13年度予算の国債発行は42.9兆円で、前政権の中期財政フレームの枠を念頭にしたのではなく、財政健全化目標を踏まえ、歳出の必要性を精査した結果、4年ぶりに税収が国債発行を上回る姿になった」と指摘した。

(ロイターニュース 石田仁志;編集 内田慎一)

今夕にも韓国大統領と電話会談=安倍首相 2013年3月6日
最近の為替動向により中小企業にも良い影響=安倍首相 2013年3月4日
黒田氏のもとで日銀が大胆な金融政策行うと期待=首相 2013年3月4日

 

 

2013年 3月 22日 07:32 JST
追加金融緩和は「不可欠」=黒田日銀新総裁 
By TATSUO ITO AND TAKASHI NAKAMICHI

【東京】日本銀行の黒田東彦新総裁(68)は21日の就任記者会見で、デフレ脱却に向けてあらゆる手段を講じると強調し、資産買い入れの規模や対象を拡大する意向を示した。白川前総裁は緩和策に消極的と見られていたため、黒田総裁の発言は日銀のトップ交代を明確に示した。

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REUTERS
記者会見する日銀の黒田新総裁(21日)
 黒田総裁は20日付で総裁に就任。会見では、総裁として初めて2%のインフレ率を2年以内に達成する目標を掲げた。多くのエコノミストがこの目標は厳しいと見ているが、市場ではすでに円相場が下落し、株価は数年来の高値を付けている。

 黒田総裁は、「量的な緩和が不可欠なのは事実」と述べ、さらに「より長期の金融資産の購入」が必要とし、量的・質的に大胆な緩和を進める必要があると強調した。

 黒田総裁を指名した安倍晋三首相は日銀の政策転換を強く求めており、投資家は日銀が資産買い入れ規模の拡大と買い入れる資産の年限長期化に加えて、銀行システム内の資金量を一定水準まで増加させるとみている。日銀はこれまで、金利を低下させるために巨額の資産を買い入れてきたが、資金量の目標は設定していない。

 一部では、4月3、4日に予定されている次回の金融政策決定会合前に日銀が緊急会合を開くとの見方もあるが、これについて黒田総裁は明言を避けた。また、具体的な緩和策についても詳細には語らなかった。

 ただし、不動産投資信託(REIT)の買い入れを増やす意向には触れ、融資期間別の金利差を通常右肩上がりとなる曲線で示すイールドカーブの右端に近い長期金利を引き下げるために、長期の金融資産を購入すべきとの考えも示した。一方、こうした買い入れが資産バブルを引き起こすとの見方については、資産価格を目標にした施策ではなく、資産バブルの懸念はないと述べ、退けた。

 第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、次回会合で追加緩和策が発表されると予想しており、新指導部があらゆる手段を使って緩和を進めようとしているのは明らかと語った。

 2人の新副総裁も15年続くデフレの克服に向けた強い意志を強調した。

 過去に学者として日銀政策を批判してきた岩田規久男副総裁は、2%のインフレ目標を2年以内に達成できなければ辞任すると明言した。日銀から内部昇格し、緩和に対して黒田・岩田両氏よりも穏健派と見られる中曽宏副総裁は、デフレ脱却に向けた日銀これまでの施策は不十分で、結果が出ていないと認めた。

 安倍首相は、日銀による追加緩和を要求して12月の選挙に勝利し、2%のインフレ目標を導入させることにも成功したが、麻生太郎財務相は21日の参院財政金融委員会で金融政策に対して過度の期待を持たないよう警告し、2年以内に2%のインフレを達成する目標は簡単ではないと述べた。

 麻生財務相は、岩田氏が2年で達成できると話したことに対して、実体経済を分かっていないと批判した。また、長期にわたるデフレからすぐにインフレに転換するのは難しいとの考えを示した。

 市場では、日銀が101兆円に上る資産買い入れプログラムを10兆円以上増額すると見られており、4月末までに購入対象の残存期間を3年以下とする現行の制限を撤廃し、5年以下の国債の買い入れを始めるとの見方が有力となっている。

 黒田総裁は、日銀が無期限の資産買い入れを2014年1月より前倒しで導入する可能性について、前倒しも含め「あらゆる手段を講じる」と述べた。白川前総裁はインフレを引き起こすために市場期待をコントロールすることや、デフレ脱却に向けて円安に頼ることの危険性を訴えてきたが、黒田総裁は特にゼロ金利下では市場期待の効果は無視できないとして、これを一蹴した。

 また、円高の調整がデフレ脱却に寄与するかとの問いには、「円安効果を持つのは事実」と肯定的に答えた。しかし、国際的に為替操作が認められていないと指摘、日本の輸出企業を支援するために円安を誘導することはないと述べた。


 


 


 
コラム:新総裁の「市場対話力」カギ、半年後の実績が信認左右
2013年 03月 21日 22:31 JST
田巻 一彦

[東京 21日 ロイター] 第31代総裁に就任した黒田東彦氏が率いる新日銀体制が21日、未知の航路に向け船出した。15年近く続いたデフレからの脱却に向け、「できることはすべてやる」というスタンスで、物価目標2%の達成に臨む。

ただ、「物価には粘着性がある」とリフレ派の学者が述べるように、大幅な資産購入増によって2年間で2%に物価を押し上げることができるかどうかは、今のところ不透明だ。このチャレンジングな課題達成のカギを握るのは、黒田総裁が重視する「市場との対話」による成果ではないかと指摘したい。その結果、期待インフレ率が大方の予想を上回って上がり出せば、ゴールが見えてくるだろう。とりあえず、初めの半年間の実績が、黒田日銀の信認を左右すると予想する。

<質と量で金融緩和強化へ>

この日の就任会見で、黒田総裁は「量的質的な両面で大胆な金融緩和を進めていく必要があるということは、前から申し上げている通り」と語り、積極的な緩和政策を推進していく方針を明確にした。具体的には「資産側を見て、より長期の金融資産の購入によってイールドカーブ自体をもっと下げていく」ことで、量的緩和政策の効果を強めていくことができる、との見解を示した。

また、「できることは何でもする」との姿勢を強調し、2014年から始まる無期限緩和の前倒しや国債以外のリスク性資産の買い入れ増なども含め、幅広い政策対応手段を検討していく姿勢をあらためて鮮明にした。

<株・債券市場への資金流入、企業の設備投資増へ>

国会での所信表明では必ずしも明確ではなかった金融資産の購入拡大による物価上昇への経路に関し、この日の会見では、かなり丁寧な説明が展開された。企業部門については、金融緩和によって株価上昇と長期金利の低下がもたらされ、それによって企業の資金調達環境が好転し、企業の設備投資増加に結びつく経路があることを強調。

さらに銀行貸し出しに依存する中小企業にも、追加緩和の反射的効果として貸出金利が下がり、これが設備投資の増加につながる点を指摘した。また、期待に働きかけることで国内需要の予想に影響を与え、国内の設備投資意欲が刺激される点も無視できないとの見解も示した。

<2%達成に懸念の声多く>

ただ、2年間で2%の達成ができるかどうかについて、現状では懐疑的な声が少なくない。麻生太郎副総理兼財務・金融担当相は21日午後の参院財政金融委員会で、「デフレからインフレに戻していきなりそこまでいくのは簡単な話ではないと思っていた。2年で簡単にいくかなと正直思わないではない」と指摘。「そのあたりは慎重に、簡単にいかないという前提で考えている」と語った。

岩田規久男副総裁と考え方を同じくするリフレ派の学者の中にも、15年間もデフレに陥っている世界で前例のない日本では、デフレ意識が根強く残っており、大胆な金融緩和策を展開しても、物価がすぐには上昇しない粘着性を考慮に入れると、2年間で達成できるかどうかは不透明な点もあるとの声も出ている。

<新興国からの安い輸入品、物価上昇を弱める要因>

また、中国はじめ物価水準の安い新興国からの輸入が増加している中で、大きな枠組みで考えれば、世界的な賃金の収れんがゆっくりと起きており、それが日本のデフレに影響しているとの指摘も、一部のエコノミストから指摘されれている。日本国内の金融緩和だけでは、物価を押し上げる力が弱いとの見方だ。

その意味で、黒田日銀の大胆な金融緩和は、前例のない挑戦的な取り組みであるとともに、日本のようにデフレが長期化した国が見当たらず、似た知見が存在しないために実験的な色彩が強いことも事実だろう。

<市場との対話に強い信念持つ黒田総裁>

そこで、キーになるのが、黒田東彦総裁が重視する「市場との対話」と、その成果ではないかと考える。黒田総裁は「市場との対話」について、「市場関係者が言っていることを金融政策が全てフォローすることではない」と指摘。そのうえで「市場の状況をよく把握し、市場での議論をよく把握する必要がある」と述べた。さらに「金融政策(の目的や効果)がわかりやすく市場に浸透していくことを助けること、それが対話を強める上で重要である」と主張した。

この黒田総裁の信念が、これから確実に実行されていけば、株価の上昇や長期金利の低下など、日銀が望んでいる市場価格の変動の方向性について、市場の認識が強まり、政策効果がより強めに出ることが可能になるのではないか。そのことで国内需要の予想が、当初の見込みよりも強くなり、これまでは実現できなかった国内需要の反転につながるシナリオの実現性が高まる可能性があると考える。

<これから半年間が勝負>

ただ、デフレ期待が、黒田総裁の想定を超えて強ければ、半年が経過しても物価がゼロ%近辺で横ばい推移となり、新しい金融緩和策に対する市場の期待感がしぼむリスクもある。特に注視するべきは、足元で起きている貿易赤字の拡大傾向だ。原子力発電の停止によるエネルギー輸入の増加が、赤字拡大の主因とされているが、詳細に見れば、輸出が減少していることも見逃せない。21日に発表された2月貿易収支は、その点を明確に浮き彫りにしている。

輸出競争力の低下が、だれの目にもはっきりするような情勢が今後、数カ月以内に発生するようなら、黒田総裁の決断で果敢な金融緩和を展開しても、過度の円高修正が企業収益を思ったほど押し上げず、期待インフレ率の上昇にも水を差す懸念が残る。

黒田総裁が思い描いている大胆な金融緩和の道は、成功すれば世界的にも称賛されることになるだろう。だが、あまりにチャレンジングな試みであるだけに、未達成となるリスクも相当程度、ありそうだ。市場が黒田総裁の手腕に本当の信頼を置き始めた時、長期金利は反転・上昇し始めるだろうと予想する。


 


情報BOX:日銀正副総裁の就任会見における主な発言
2013年 03月 22日 04:16 JST
[東京 21日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁と岩田規久男、中曽宏の両副総裁は21日、日銀本店で就任記者会見を行った。会見での主な発言内容は以下の通り。

●黒田総裁

─2%の物価目標、2年程度での達成が望ましい

─2%の物価目標達成へ、量的・質的両面から大胆な金融緩和進める

─金融緩和、できることは何でもやる

─ゼロ金利下で量的・質的緩和進めるには、期待が果たす役割大きい

─政策手段として自主的に国債を市場から買うこと、財政ファイナンスではない

─金融政策は為替レートをターゲットにしているものでは全くない

─出口戦略、今具体的に議論する状況にない

●岩田副総裁

─2%の物価目標、2年程度で達成するとコミットすることが必要

─量的緩和、質的な緩和を含め議論する

─2年で2%の物価目標未達の場合、政策のミスジャッジが理由であれば辞任する

●中曽副総裁

─2%の目標を日銀が決めた以上、実現に全力を尽くさなければならない

─金融政策、前例にとらわれず新しい発想で考える

─これまでの金融政策、資産買い入れが十分だったかということある

ユーロ下落、さえないユーロ圏指標や不透明なキプロス情勢で 2013年3月22日
黒田・日銀新総裁、2年で2%へ「何でもやる」 2013年3月21日
情報BOX:日銀正副総裁の緩和手段などに対する姿勢 2013年3月21日


円急伸し一時94円台半ば、キプロス不安でリスク回避=NY市場
2013年 03月 22日 06:51 JST
[ニューヨーク 21日 ロイター] 21日終盤のニューヨーク外為市場では、円がドルやユーロに対して急伸し、対ドルで一時94円台半ば付近まで値上がりした。

キプロスの金融セクターが破たんするとの不安が広がるなか、リスク資産を売って円を買い戻す動きが見られたという。

ロイターデータによると、ドル/円は一時94.56円をつけた。その後は1.1%安の94.93円。2月25日以来の大幅な下げとなる勢い。

みずほコーポレート銀行(ニューヨーク)の為替セールズ部バイスプレジデント、ファビアン・エリアソン氏は「キプロス情勢を受け、一定のリスク回避が見られる」と指摘した。

こうしたなか、日銀の黒田東彦総裁の就任会見については「かなりのハト派的内容が期待されていただけに、『デフレ克服で円安に依存する必要はない』といった主張にやや失望した」(BNPパリバのバシリ・セレブリアコフ氏)との声も聞かれた。

ユーロ圏財務相(ユーログループ)は現地時間21日夜に対キプロス支援をめぐる緊急の電話会議を開催。その後発表した声明で、キプロス政府が間もなく提出する見通しの新たな提案について協議する用意があると表明した。欧州連合(EU)内の10万ユーロ未満の銀行預金について全額を保護する重要性についても再確認した。

支援を受けられない場合、キプロスの銀行システムは破たんしかねず、そうなれば同国がユーロ圏離脱を迫られる恐れも出てくる。

フォレックス・ドットコム(ニューヨーク)のシニア為替ストラテジスト、エリック・ビロリア氏は「キプロスが必要な資金をどのような条件でどのように確保するかが明確にならないかぎり、ユーロへの売り圧力は続くだろう」と述べた。

ユーロ/ドルは0.3%安の1.2898ドル。

格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はこの日、キプロスの長期外貨建て格付けを「CCCプラス」から「CCC」に引き下げた。同国の銀行セクター危機を格下げの理由とした。

ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値は、総合が46.5となり、市場予想に反して前月の47.9から低下した。

ドル/円    終値    94.89/91

始値    95.39/42

前営業日終値    96.00/03

ユーロ/ドル  終値   1.2896/01

始値   1.2916/17

前営業日終値   1.2934/35


20. 2013年3月22日 16:47:48 : xEBOc6ttRg

アングル:日銀期待織り込む市場、「異次元」政策なければ円高も
2013年 03月 22日 15:46 JST
[東京 22日 ロイター] 新生日銀への過度な期待を織り込んでしまった為替市場では円高リスクが高まり始めている。4月3─4日の金融政策決定会合で「異次元」の政策を打ち出すことができなければ、失望からの円買い戻しが加速する可能性があるという。

銀行券ルールの撤廃だけでなく、無期限・無制限の金融緩和によるバランスシート拡大などが打ち出せるかが焦点になる。

<新生日銀に冷たい為替市場>

新生日銀に対する為替市場の反応は円買いだった。日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁が21日、就任会見に臨んだが、「目新しい内容はなかった」(国内金融機関)と受け止められ、前日のニューヨーク市場でドル/円は94.55円まで下落した。東京市場でも依然95円を下回った水準で推移しており、戻りは鈍い。

日本の株式市場は円高に加え、キプロス問題への警戒もありいったんリスクオフに傾いているが、「金融緩和期待は根強く、強気ムードが途切れたわけではない」(大手証券)という。円債市場でも、日銀による国債購入期待を強めており、長期金利が一段と低下している。

為替市場だけが新生日銀に比較的冷たいのは、海外勢が日銀が掲げる物価目標2%は「従来の延長線上の金融政策では達成できない」(外銀)と判断。政策は「異次元」の領域に入り込まざるを得ず、結果的に円安が進むという読みから、円売りに前のめりになっていたことが背景にある。

過去20年で、消費者物価の前年比が2%を超えたのは、1997年の消費税率引き上げ時と2008年の国際商品市況高騰時の2回しかない。黒田総裁や岩田副総裁が「2年程度で2%達成」を声高に叫ぶほど、否応なしに海外勢の「異次元」への期待は高まっていった。

だが、期待が裏切られれば失望に変わる。JPモルガン・チェース銀銀行債券為替調査部長、佐々木融氏は「海外投資家は日銀が到達した事があまり多くない消費者物価の前年比2%を達成するために大胆な政策を実施することを期待しているが、実際に発表される政策が現在予想されている程度の政策にとどまれば失望感が強まり、円は一段と買い戻される可能性が高い」と指摘する。

<銀行券ルール廃止だけでは失望か>

為替市場を満足させるような「異次元」の政策とは何か。現時点で市場が予想している次の一手は、1)国債買い入れ年限の長期化、2)リスク性資産の購入、3)無期限資産購入の前倒し、4)金融調節の一環としての買入(輪番オペ)と資産買入等基金の統合(事実上の銀行券ルールの撤廃)──などがある。

これまでは、日銀がこだわり続けた銀行券ルールの撤廃に踏み切れば海外勢はレジームチェンジと受け止め、円売り材料になるとみられていた。だが、前日は黒田総裁が「日銀券ルールのようなものがないと財政ファイナンスになるとか、その懸念があるということはない」と述べ、撤廃を示唆したにもかかわらず反応は鈍かった。

為替市場では「国債買い入れ年限の長期化や銀行券ルールの撤廃は異次元ではない」(外銀)との見方も出始めている。そうした政策にとどまれば「年度末から4月にかけてドル/円は90円前後、ユーロ/円は115円前後への調整をみるのではないか」と佐々木氏は指摘する。

もっとも、この点については「年限長期化やリスク資産の購入拡大などは政策手段としては織り込まれているが、規模まではっきりと織り込んでいるわけではない。年限を10年ゾーンまで広げたり、リスク性資産をマーケットが驚くような金額で買うと言えば、織り込めていない情報として反応する可能性はある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア為替・債券ストラテジスト、植野大作氏)との見方もあった。

<期待はバランスシート無制限拡大>

黒田総裁は就任会見で「日銀はいろいろなことをやってきたが、その結果、非常に分かりにくくなっている」と指摘。「もっと端的に、バランスシートの負債側と資産側でどういう動きになっているのか、それをどう方向に向けようとしているのかが分かるような金融政策を運営することが市場との対話を強化する上でも重要だ」と強調した。

この発言を素直に受け止めれば、現在、輪番オペと資産買入等基金、そして基金の延長線上に2014年から開始予定の「期限を定めない資産買入」の3種類ある国債買い入れを「シンプルな枠組みにするために統合する」(国内証券)とみるのが自然だ。

ただ、これだけでは「異次元」には不十分と受け止められる可能性がある。このため、植野氏はどんな政策を繰り出すにせよ「無期限の資産購入が無制限のバランスシートの膨張につながるという期待が出ることが重要だ」と指摘する。足元では日米マネタリーベース比較とドル/円相場との関係は途切れているが、海外勢の中には為替相場を語る上で「バランスシート」信奉者は少なくない。

2014年に開始する「期限を定めない資産買入」は償還を考慮すると、基金残高は10兆円程度増えて頭打ちとなる。植野氏は「物価目標2%を達成するまでは、バランスシートが膨張し続けるというスキームを導入することが重要。これが導入できれば本当の意味での『オープンエンドのバランスシート膨張』期待が浸透するので、相場に与える影響は大きいだろう」と予想する。

ただ、2%の物価目標を達成するまでバランスシートを拡大し続けることにコミットすれば「半永久的にバランスシートを拡大させる必要がある」(外資系証券)と懸念もある。黒田総裁率いる新生日銀は「異次元」の世界にどこまで踏み込めるのかを市場は見極めようとしている。

(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)

来週の外為市場、リパトリと日銀緩和期待の綱引き
2013年 03月 22日 15:50 JST
[東京 22日 ロイター] 来週の外為市場では、年度末のリパトリによる円買いフローと、日銀の金融緩和期待に基づく円売りフローの綱引きとなりそうだ。一方、こじれるキプロス情勢が、一見無関係な市場に飛び火し、金融市場全体がリスクオフに傾くリスクもくすぶっている。

予想レンジはドル/円が93.00─96.50円、ユーロ/ドルが1.2750─1.3000ドル。

円安、世界的な株高や債券高を背景に、本邦投資家はリパトリの動きを活発化させている。財務省によると、本邦投資家は2月中に海外株式1兆1488億円、海外中長期債2兆4913億円を売却し、大量の資金を日本へ回帰させている。3月に入ってもこのリパトリの動きは下火になっていない。

<こけおどし戦法>

為替市場では日銀が新体制での初回会合と待たずに3月中にも緊急会合を開いて追加緩和を決定するとの憶測は後退しているものの、海外短期筋の間では依然「日銀が必ず2%の物価目標を達成してくれるとの期待が根強い」(外銀)という。

「アベノミクスの中で特に金融は『こけおどし戦法』と言えるだろう。市場で予想される以上のことを実行するとの期待を持たせ、短期筋をあおるという危険なもので、あとで高いツケを払うことになる」(機関投資家)と警戒する声が上がっている。

JPモルガン・チェース銀行、債券為替調査部長の佐々木融氏によれば、国債買い入れ年限の長期化や基金と輪番の統合など、「ある意味で『普通のこと』をしていたのでは2%は達成困難で、結果として、海外勢の失望を招き、円買い戻しにつながる余地がある」という。

「大幅な円の買い戻しを予想しているわけではないが、年度末から4月にかけてドル/円は90円前後、ユーロ/円は115―118円まで調整する余地がある」と同氏は予想する。

一方で、日銀の追加緩和の内容を見極めるまでは、ドル/円の下値が限定されるとの見方も出ている。

「投機的な円売りが積みあがっているにもかかわらず、ドル/円の値持ちがいいのは、初回会合を見極めてから動きたいとの意向の短期筋の間に浸透しているからだろう」とSMBC日興証券、金融経済調査部の野地慎氏はいう。

「リスク資産の買い入れが市場予想より多かった場合や、長期金利を意図的に押し下げるような措置が盛り込まれた場合には、97円方向への円安もありうる」と野地氏は言う。

<米景気のネガティブ・サプライズ>

20日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明は、今後も労働市場が著しい改善を示さない限り量的緩和姿勢を維持することが表明された。

量的緩和の継続が表明されたにも関わらず、ドル安にはならず、声明発表後もドルが買われたことから、市場は着実な米国の景気回復が、その先の量的緩和の段階的な解除につながると見込んでいるもようだ。

ただ、グローバルなリスクオン相場をけん引してきた好調な米景気指標については、先行きについて慎重な見方も出ている。

米国が減税措置を終了し歳出削減に取り組む米国の指標からは今後、「歳出削減を受けた公務員の削減で雇用統計が悪化するなど、ネガティブサプライズが出てくる可能性がある」とJPモルガン・チェース銀の佐々木氏は述べ、「リスクオン相場もいったん冷まされるだろう」との見方を示した。

3月26日には米コンファレンス・ボードの3月米消費者信頼感指数が予定され、市場の関心がもたれている。

他方、実効レートでのドル高について、これまで米製造業サイドや米当局からけん制発言があまり出ていない。「内需が堅調な米国は、当面はドル高で困っていなさそうだ」(SMBC日興証券・野地氏)とされ、市場でドル買い安心感を招いている。

<キプロス・リスク>

ユーロ関連では、財政問題のほか流動性問題にも直面するキプロスが話題となりそうだ。

キプロス国債は昨年6月にECBオペの担保として不適格となっており、キプロスの市中銀行はECBではなくキプロス中銀より緊急流動性支援(ELA)による資金調達を行ってきた。ECBはELAの現在の水準を25日まで維持するとの声明を発表したが、欧州連合(EU)などによる金融支援策の受け入れがなければ、流動性供給を断つ構えだ。

22日の市場では、キプロスがロシアに要請していた金融支援が得られないとの報道をきっかけに、ユーロが売られ、円買い買い戻された。

「キプロスにまつわるリスクは、ユーロ圏から資金が引き上げられるといった単純な話ではなく、キプロスに関連するダメージが何かと結びついて、まったく無関連と思える市場で火の手が上がることだ」(前出の機関投資家)。これによってグローバルな市場が一気にリスクオフに傾く可能性があるという。

(為替マーケットチーム)

2013年 3月 22日 11:02 JST 更新
物価2%、時間かかる=「責任押し付け間違い」―麻生財務相 

 麻生太郎副総理兼財務・金融相は22日の閣議後記者会見で、政府・日銀が掲げる2%の物価目標について「日銀が金融緩和したとしても、財政出動や経済成長など全部が動かないと物価(上昇)まで行くには時間がかかる。そんなに簡単にはいかない」との認識を示した。

 2%目標に関し、日銀の黒田東彦新総裁は「2年程度」で実現する考えを表明している。麻生財務相は目標を達成できなかった場合の責任について、「日銀に責任を押し付けようなんていう発想は間違っている」と述べた。 

[時事通信社]


21. 2013年3月26日 23:45:12 : GnRfb4ci8o
 黒田日銀総裁「できるだけ早期の2%物価目標達成が使命」=諮問会議
2013年 03月 26日 21:57

キプロス救済計画、他国のモデルと見なすべきでない=ECB専務理事
マツダ、新型「アテンザ」を世界で1万5630台リコール
大口預金者の損失は約40%の可能性=キプロス財務相
キプロスの銀行、28日に営業再開する見込み=サリス財務相

[東京 26日 ロイター] 政府は26日夕、経済財政諮問会議を開き、この日諮問会議議員に就任した黒田東彦日銀総裁が「政府が三本の矢で日本経済の課題を克服する方向は極めて適切だ。できるだけ早期に2%の物価目標を達成することが日銀の使命だ」と発言した。

黒田総裁はさらに「物価に影響を与える要素はさまざまあるが、そうした影響に対抗して物価安定を実現するのが日銀の責任だ。量的にも質的にも大胆な金融緩和を進め、できるだけ早く2%を達成したい。財政政策や成長戦略により物価目標はスムーズに達成できるので、政府も取り組みを進めてほしい。政府としっかり連携したい」と述べた。

これに対し、安倍晋三首相も「諮問会議の場を活用し、政府・日銀の連携をさらに密接なものとしていきたい」と発言。黒田総裁に対しては「2%の物価安定目標の実現に向けてしっかりとかじ取りをお願いしたい」と要請した。諮問会議終了後、甘利明経済再生担当相が会見で明らかにした。

この日の諮問会議では、経済財政政策から見たエネルギー政策についての議論を行い、麻生太郎財務相からは「エネルギー輸入で経常収支の黒字が大幅に減っているのは国家的大問題だ。安価で安定したエネルギー供給は一丁目一番地の重要課題だ」との認識が示された。民間議員からも、経常収支が赤字化すると国債の信認が不安定になり、財政再建のシナリオにも影響がある、といった危機感が示され、エネルギーミックスの策定を前倒しするよう要請があった。

安倍首相からは、景気回復を確実にすべく、今夏のエネルギー需給対策に万全を期してほしいとの指示があった。

また、この日の会議では、日本経済再生に向けた緊急経済対策の進ちょく状況について説明があった。それによると、今年3月末までに着手される事業は全体の95.6%となる見通しだが、現時点で実施段階にまで至っているのものは全体の15.3%にとどまっていることが明らかになった。

(ロイターニュース 石田仁志;編集 山川薫)

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クルーグマン教授「日銀の物価目標2%、2年で可能」
金利急騰「懸念ない」
2013/3/26 22:15日本経済新聞 電子版
 【ニューヨーク=西村博之】黒田東彦新総裁率いる日銀の新体制が発足した。デフレ克服に向けた積極的な緩和策に、世界の期待も高い。ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン米プリンストン大教授=写真=は日本経済新聞記者のインタビューで、「2年以内に2%の物価上昇目標の達成は可能だ」と指摘。積極財政による側面支援も含めた安倍晋三政権のアベノミクスも妥当だと支持を表明し、インフレ加速や金利上昇の懸念はないと強調した。一問一答は以下の通り。


 74年エール大卒、77年マサチューセッツ工科大で博士号取得。82〜83年レーガン政権下で経済諮問委員会の委員を務める。スタンフォード大、マサチューセッツ工科大などの教授を経て、00年プリンストン大教授。08年ノーベル経済学賞受賞。専門は国際経済学。60歳
 ――黒田総裁の就任をどうみますか。米英のように、学者出身のトップが好ましい、と主張していましたが。

 「個人的には黒田氏を知らないが、より積極的な金融緩和が必要との考え方をもっていると聞いている。そうならば、好ましいことだ。大事なのは個人の人格や経歴でなく、政策の中身だ」

■期待に働きかけよ

 ――前体制が達成できなかった、新体制の課題は。白川体制から何を学ぶべきですか。

 「バーナンキ議長が2000年に『ルーズベルト大統領的な決意』と呼んだ対応がまさに必要だ。これは、要はデフレを終わらせ、物価上昇率を目標水準まで引き上げるため、どんな手も打つという宣言であり、日銀の場合は2%の物価上昇率を達成するということだ。日銀(の新体制)からも、そうするとの声が聞こえてきている」

 「政策の効果を高め、成果を上げるには、日銀が早すぎる金融引き締めに動かないと投資家や企業に納得してもらえるかが非常に大事だ。これまでの日銀が達成できなかった課題だ」

 ――日銀は、自身には単独でデフレを終わらせる力がないと説明してきました。

 「まず、白川総裁が行ったように自らが無力だと主張することは何ら利点がない。『やれることは何でもやる、やってないことも試す』というべきだったのだ。必要なことは、新体制がそうしているように、(物価が上昇するとの)期待に働きかけること。そのために語るべきは自らの決意であり、自身の無力さではない」

 「これまでの日銀は『デフレはそんなに悪いことではない』『デフレは自らの力が及ばない要因によって引き起こされた』と訴える報告書や声明を出す傾向があった。これは、まさに避けるべきことだった。『絶対にこんな状況(デフレ)は止める』と訴え続け、『ガソリン切れにはならない』『目的地に着くまでアクセルを踏み続ける』との印象を保ち続けることが大切なのだ」

 ――日本のデフレの原因は何なのでしょうか。日銀が主張してきたように人口減などの実体経済の問題なのですか。それとも、金融的な現象だとみますか。

 「そこが、まさに大事な点だ。デフレは実体経済の問題ではない。実体経済の問題によってデフレが避けられなくなるようなことはあり得ない。日本は激しいバブルとその崩壊に対し、あまりに対応が遅く、デフレが物価期待に染み込んでしまったのだと思う」

 「日本は労働力人口が減っている。この結果、投資需要も縮小しがちで、実体経済面の問題はあるかもしれないが、だからといってデフレが必然という理由にはならない。むしろ、この状況は実質金利を大きく引き下げ、あるいはマイナスにすべき理由にあたる。だからこそインフレが必要なのだ。日本の失敗の歴史は、政策が“船に乗り遅れた”(タイミングが遅れた)という点にすぎない。それによって日本は自らをワナに陥れてしまったのだ」

■可能な手段すべて試せ

 ――人口減や、潜在成長率の低下にもかかわらず、適切な政策さえあれば、日本はデフレに陥らず、仮に陥っても早く抜け出していた、ということですか。

 「仮に物価上昇率が年5%で『失われた10年』に突入し、政策金利を当初から大幅に引き下げ実質マイナスにしていたとしよう。その場合、物価上昇率は恐らく5%のまま推移しただろう。経済の減速が、デフレを宿命づけたと考えるのは理にかなわない。人口減は潜在成長率を低下させるが、それもデフレの理由にはならない」

 ――日銀が無力だという考え方は、市場や日本国民に深く染み込んでいて、その意識を変えるのは容易ではなさそうですが、具体的にどんな政策が必要でしょうか。

 「困難な作業だというのはその通りだ。そして何が効果を生むかも不確かだ。だから、複合的な政策が必要だ。可能な手立てをすべて試してみるべきなのだ」

 「まず、確実に行うべきは米国型の量的緩和。つまり、非伝統的な資産の大量購入だ。『どんなことでも行い、長期間、金利を引き上げることはない』と強調するコミュニケーション戦略も必要だろう」

 「大まかに聞いた説明だと、新体制が目指している政策はまさにそうした内容だ。デフレのワナから抜け出すため、日本は一時的な財政押し上げ策も含め、必要なあらゆる道具を使おうとしている。十分な財政刺激策をとれるかはやや心配だが、政策の方向性は望ましい」

 ――米国型の量的緩和と言いましたが、日銀のこれまでの緩和策とはどこが大きく違うのでしょうか。

 「私の理解では、日本が以前(2000年代前半に)、大規模な量的緩和を行った際は準備預金の増額にすぎず、効果をもたらさなかった。一方、米国型とは、非伝統的な資産の大量購入を指す。米国は実際に行っているよりさらに非伝統的な資産を買い取るべきだと思うが、日本も長期国債だけでなく、不動産関連の資産をもっと大規模に買うなど民間資産を積極的に購入すべきだ」

 「特に日本の場合は、国債金利があまりに低く、これを買っても効果は小さい。ほかの資産の購入がどの程度の効果を生むのかは誰にも分からず、議論も分かれるが、やっても失うものはないのだから、試すべきだ」

■効果出るのはリスク資産

 ――日銀はほかに何を買うべきなのでしょうか。社債や外国債を、との意見もあります。

 「外国債については、事実上の為替介入にあたるので、問題になりうる。だから、日本は買う場合もどの程度にとどめるか注意が必要だろう。欧州も米国も流動性のワナに陥っているから政策の性質上、やや近隣困窮策と聞こえなくもない」

 「ただ、社債は買うべきだろう。ほかに何がいいかは検討の余地があるが、基本的には金利がゼロに近づいていない商品を買うのがいい。少なくとも理論上は金利が下がる余地がある商品を買うことだ」

 ――現金から遠いほど良い、ということでしょうか。

 「そう。伝統的な公開市場操作に使う政府短期証券や類似の証券から遠い商品と言ってもいいだろう。償還までの期間が長く、リスクのある資産だ。それゆえに効果が出る」

 ――バランスシートの拡大という点ではどうでしょう。国内総生産(GDP)比などでみて米欧などに見劣りしない、との指摘もあります。

 「他の中銀を尺度にすべきでない。尺度にすべきは、めざした結果を得られているかどうかだ。数字がどうあろうと、(結果が出なければ)もっとやるべきだ」

 ――それでこそ、日銀が本気だと人々を説得できる、というわけですか。

 「その通り。人々を説得するためであり、バランスシート拡大による何らかの直接の効果も見込めるかもしれない。事態が改善しなかった場合、悪影響はきわめて大きい。だから、十分に手を打ったという言い訳の理由を探すべきでない」

 ――年2%という新たな物価目標は適切ですか。かつて目標を4%に設定すべきだと主張していましたが。

 「心配はしている。ただ、私が4%の物価目標を主張していた1999年の前後、日本経済は今よりかなり勢いを欠いていた。その後、景気は2007年までにずいぶん持ち直したが、また後戻りした。それでも、需給ギャップは当時より縮小したはずで、2%は十分かもしれない。むろん4%のほうが望ましいとは思うが、政治的に難しいのは理解できる」

■日銀の問題は「信頼ありすぎる」こと

 ――物価上昇には、ある程度のマネタイゼーション(中銀による財政赤字の穴埋め)も有効と主張しています。経済を回復させるため日銀の信用をおとしめよ、というふうにも聞こえますが、危険はないのですか。

 「もちろん、何事もやり過ぎる可能性はあるが、そこに至るまでの距離はあまりに遠い。実のところ日銀には十分に信頼があり、それこそが問題なのだ。むしろ、信頼がありすぎると言える。人々は、日銀が物価上昇を抑えるため、すぐに介入すると思っている」

 ――中央銀行はインフレを抑えるため、厳格であるべきだとういのが従来の考えです。これは正しくない考え方なのでしょうか。

 「そうした考え方では、間違った戦争と戦うことになるから厄介だ。人々は1970年代に起きた問題を想定して中央銀行が何をすべきかを考えがちだ。当時は確かに、中央銀行がインフレと戦うことが極めて重要だった」

 「だが今、起きているのは1930年代にみられたようなデフレの問題だ。この場合、中央銀行がインフレの兆しが出るたびに厳しく対処するとみなされることは、むしろ有害だ。多くの人々は今、直面している問題にふさわしくない考え方にとりつかれている」

 ――では、仮に物価が過度に上がりそうになったとき、日銀に抑制する力はあると思いますか。

 「もちろんだ。いつでも金利を引き上げることができるので、インフレ抑制にまったく問題は生じない。中央銀行は常に経済にブレーキをかけることが可能だ。むしろ問題は時としてアクセルがうまく機能しないことだ」

 ――過去に中央銀行がハイパー・インフレを許したのだから、今後も同じことが起きうると考える人もいます。過去と今とでは何が違うのですか。

 「日本が、また中国を侵略することはないだろう(笑)。やや意地悪く言えば、そういうことだ。過去には、日本でもハイパー・インフレーションがあった。でも、それは破滅的な戦争が起きたからだ。そんなことが繰り返されることはないと願っている」

 「つまりハイパー・インフレーションは、間違った経済政策をしばらく続けたからといって起きるわけではない。それは実質的に破産状態にある政府が、支払いをお札の印刷に依存したときに生じる問題だ。しかも、そうしたケースは一般に大きな社会的混乱も伴っている。ワイマール共和国やジンバブエの例を持ち出してハイパー・インフレ―ションを心配し、今ここにある不況と戦うことに尻込みする考え方は、かなり奇妙だ」

 ――1970年代も大戦こそなかったが、インフレが加速しました。当時と今とでは、何が違うのでしょうか。

 「そう、当時は相当なインフレが生じた。多くの国でそうした事態が起きたのは不注意が原因だ。政策が拡張的過ぎたのだ。ただ、現在はそんな状況からはかけ離れている」

 「さらに言えば1970年代は非常に過酷な時代だったという評価が定着していて、実際その通りではあるが、実は今日の経済状況は当時よりもはるかに厳しい。米国の1978年と2012年を比べたら、1978年のほうが圧倒的に状況はましだ」

■「3本の矢」は適切

 ――アベノミクスは「金融緩和」のほか、「積極財政」「構造改革」という3本の矢で構成されていますが、こうした政策の組み合わせは適切だとみますか。

 「適切だ。構造改革がつねに望ましいのは明らかだ。だが、差し迫って必要な短期の需要創出には、あまり効果がない。財政政策はこの点で優れていて、景気を拡張させることが分かっている。ここに財政政策を発動する理由がある。物価目標を達成するまで続けて成長率を潜在成長率まで高め、物価上昇につなげるべきだ」

 「とはいえ財政政策に永遠に頼るわけにはいかない。だから、代わりに拡張的な金融政策を進めるべきなのだ。長期の課題に取り組む構造改革は本当の意味でマクロ経済戦略ではないが、悪いことではないから進めればいい。だが財政政策と金融政策という、2本足で歩くことになるのが実情だ」

 ――専門家の間では、金融政策だけで十分だという意見もあります。

 「そうかもしれない、というのが答えだ。ただ、金融政策が効果の多くを人々の(物価上昇への)期待に依存せざるを得ないだけに、実際には難しいだろう。将来、日銀が突如として引き締めに動くことはない、と人々はどこまで確信を持てるだろう。説得するのは非常に困難なはずだ」

 「日銀が適切な言葉を使って、正しいコミュニケーション戦略をとることを期待しているが、それでも人々が信頼しなかった場合に備えて、財政政策も必要になるだろう」

 ――財政政策は確実に需要創出の効果があるから、というわけですね。

 「その通り。財政政策は人々が(当局の)約束を信じようと信じまいと景気を拡張させる効果がある。日銀が様変わりしたと思ってもらえるかどうかに大きく左右される金融政策とはここが異なる。効果が明らかな財政政策を並行して行うのはよい選択だ」

 ――財政面での刺激策は、中身はさほど重要でない、要は規模だと指摘してきました。

 「まさに、その通りだ。中期での目的は、物価上昇率が2%に上がるまで十分に景気を押し上げること。そのための方法はさまざまだ。極めて重要なプロジェクトに最高の投資をすることもできるし、人々に小切手をばらまいて使ってもらうこともできる。ずさんな計画に沿って200階建ての高層ビルを建て倒壊してしまう事例もあるだろう。お金をうまく使うほうが政策としては優れているに決まっている。だが経済を十分に刺激し、目先の需要につなげるという点で言えば、計画が何であろうとそう関係はない」

 ――誰も通らない橋や、道路でもいいと。

 「心配なのは、役に立たない橋や道路は、建設開始に時間がかかること。すぐに動き出す計画のほうが望ましい。ただ、答えはイエスだ。役に立たない橋より、役に立つ橋のほうがはるかに良いが、とにかくまずは橋をつくれ、ということだ」

■金利急騰は「オオカミ少年」

 ――積極財政で国の債務が膨らみ、金利が上昇すると警告し続けている人々は日本にも米国にも多くいます。彼らはオオカミ少年なのですか。

 「じつに、その通りだ」

 ――日本は、米国のような基軸通貨国でないなどの違いもありますが。

 「基軸通貨をもつかどうかは、決定的な要因ではない。大事なのは、(日本が)自国の通貨をもち、国の債務も自国通貨建てで有している点だ。日本国債の金利は、短期金利の見通しに基づいておおむね決まる。そして、その短期金利は日銀が決める。だから人々が短期金利は上昇すると予想しない限り長期金利は上がらないし、その短期金利の上昇も景気が回復しない限りは起きない。つまり、長期金利が上がるというシナリオには実は説得力がない」

 ――市場がパニックを起こして、日本国債を投げ売りするという事態は考えられないでしょうか。

 「それが起きるとは考えにくい。日本が破綻しない限りは、先ほど言ったように長期金利は短期金利の見通しに基づいて決まるし、日本が破綻すると考えている人などいないからだ。仮に国債金利が急騰しても、短期金利が上がる理由がなければ、そこには裁定取引の機会があるはずだ。日本国債を買いたいと思う人も出てくる」

■円安の効用まさる

 「だから、市場のパニックは金利上昇というよりも円相場の下落という形で起きる可能性のほうが高い。そして円相場の下落は需要を刺激し、景気を拡張させる効果がある」

 ――日本はエネルギー輸入の増加で貿易赤字が拡大しています。ここに円相場の下落が加われば日本の富の国外流出が加速します。危険なことではないですか。

 「それでも(円安は)問題ない。日本は純債権国であり、円相場が下落すれば自国通貨建てでみた富の価値が増大する面もある。どちらにせよ、これらはすべて円安の副産物にすぎない。円相場の下落は日本の産業の競争力を強めるため、需要を拡張させるのは明らか。これは、ほかのどんな懸念にもまさる」

 ――日本の製造業の競争力低下の理由は円の上昇であり、技術の劣化などではないとみているようですね。

 「日本は正直なところ25年前だって、人々が想像したほどの技術的優位を確立していたわけではない。それでも日本の産業はとても生産的で、人々がほしい物を作り続けてきた。(その後の不振は)日本に大きな問題が起きたからでなく、円が強すぎたために起きたのだ」

 「では、なぜ円が強かったのか。基本的には名目金利が非常に低かったものの、実質金利が実は米国や欧州よりもかなり高かったからだ」

 ――日本の政策は近隣困窮策で、通貨戦争を引き起こしているとの見方は妥当でしょうか。

 「必ずしも、そうではない。拡張的な金融政策は、伝統的な手法だろうと非伝統的な手法だろうと通常、通貨価値の下落をまねく。それに競争相手の国々は不満を言うだろう。だが実際には、日本経済が強くなるというプラスの効果(による日本への輸出増)が、円の下落という悪影響を相殺する。だから、円安による景気改善で(輸入が増え)、日本の貿易収支が悪化する可能性すらありうる」

■2%の物価目標、2年で達成可能

 「いずれにせよ、目的は拡張的な政策を行うことであり、これが円の下落を意味するとしても、副次的な効果にすぎない。これに対抗するには、他国もそれぞれに拡張的な金融政策をとればいい。米国、ユーロ圏、そして日本が、金融緩和を競い合うことになれば、それは好ましいことだ。それは貿易戦争によって世界経済を弱くする破壊的な行為などではなく、むしろ世界経済全体にとっても役に立つことだ」

 「今の世界は、多くの国々で経済が落ち込み、デフレ圧力が生じている。だから皆が金融緩和を行うべきなのだ。日本が金融を緩和した結果、欧州が自らの産業競争力が奪われていると感じれば、自身も金融を緩めることだ。実際、彼らはそれを必要としている」

 ――アベノミクス効果が表れるまでに、どのくらいの時間がかかるでしょう。

 「すでに効果は円相場の下落という形で現れている。実際の効果を先取りした動きだと言える。ただ政策が成功するかどうかを判断するにはもう少しかかり、2年ほどを要するとみている。物価上昇率が年率2%まで上がるには2年ほどかかるだろう」

 ――つまり黒田新総裁は、2%の物価目標を2年以内に達成できると。

 「可能だと思う。実際うまく行くかは分からないし、黒田氏の姿勢も十分に承知していないが、私自身がはじいた数字も実は2年だった。先進国では、インフレ率はそう急には動かない。だから、かなりの好況でないと物価が年に1ポイント上がることはないが、できないことはない」

■米国株、バブルでない

 ――ダウ平均は史上最高値を更新しましたが、米経済はそう強くはみえません。今の株価はバブルなのでしょうか、それとも正当化できる水準でしょうか。

 「企業の利益は伸び、かなりの高水準にあるからバブルのようには見えない。1株当たり利益は、ダウが前回この水準にあったときよりも相当に低い。さらに債券の金利が低く投資しにくいことも、株式の魅力を高めているはずだ。米株高が理にかなわないとは思わない。おかしい点があるとすれば、なぜ利益がこれだけ増えたのかだ」

 ――何か特別な理由はあるのですか。

 「米経済に構造的な変化が起きているように見える。技術の進歩と、何らかの市場の力によって、労働から資本への富の再分配が起きている。これは、いいことではない。気になるのはこの部分であり、注意が必要だ。それでも株式市場から見る限りは、労働者から取り上げ、資本家に回すわけだから、資本の価格が上がるのは当然だろう」

 ――米景気回復が5年目ですが、米経済はどんな段階にあるのでしょう。

 「民間部門は、回復しつつある。景気には緩やかながら著しい改善がみられる。住宅価格は戻り始めている。家計の債務削減は、緩やかになってきた。住宅バブルの後遺症から少しずつ立ち直り、回復に向けた環境が整ってきた」

 「ただ、残念ながら財政の引き締めが、回復を脅かそうとしている。歳出削減をあと数年延ばせば、景気はかなりいい形で回復を続けると思う」

■米経済、日本より悪い道

 ――日本は、世界で最初に流動性のわなに陥りました。米国は、日本の後を追っているのでしょうか。

 「米国は日本が『失われた10年』の間に経験したよりも、ずっと厳しい不況に直面した。それから5年がたち、景気はまだ深く落ち込んでいる」

 「人口構造などがより良好な米国は、本来ならもっと早く回復できるはずだ。にもかかわらず、経済が良くならず、今のところは日本よりも悪い状況が続いている。ある意味では米国は日本よりも悪い道、つまり最悪の道を進んでいる」


 


22. 2013年3月27日 17:01:01 : GnRfb4ci8o
通貨及び金融の調節に関する報告書
衆議院財務金融委員会における概要説明
日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年3月26日

全文 [PDF 253KB]http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130326a.pdf

目次

はじめに
わが国の経済金融情勢
金融政策運営

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。平成24年度上期

の報告書につきましては、昨年12月7日に提出いたしました。今回、わが国経済の動向と日本銀行の金融政策運営に

ついて詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

わが国の経済金融情勢

最初に、わが国の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の景気は、海外経済の減速などを背景に、昨年夏場以降、弱めの動きとなっていましたが、このところ明る

い兆しもみられるようになっています。日本銀行は、景気の現状について「下げ止まっている」と判断しています

。こうした変化の背景にある要因としては、3点指摘することができます。

第1に、米国・中国などを中心に、海外経済が減速した状態から脱する兆しをみせ始めています。地域毎にみますと

、米国経済は、バランスシート問題の重石が徐々に和らぐ中で、底堅さを増しつつ、緩やかな回復基調を続けてい

ます。雇用環境が改善傾向を辿るもとで、個人消費は緩やかな増加を続け、住宅投資も持ち直しの動きが明確にな

っています。これまで抑制されていた設備投資にも持ち直しの兆しが窺われます。中国経済は、輸出が一進一退の

動きを続ける中、個人消費が堅調に推移し、インフラ投資が増加するなど、堅調な内需に支えられて減速局面を脱

しつつあります。この間、欧州経済は、企業や家計のマインドの一段の悪化には歯止めがかかりつつあるものの、

緊縮財政や金融面の引き締まりの影響もあって、設備投資や個人消費が減少するなど、緩やかな景気後退が続いて

います。

第2に、最近の円安・株高などを背景に、企業や家計のマインドが改善しています。国際金融資本市場についても、

昨年夏場以降、欧州債務問題を巡る政策対応に一定の進展がみられたことや、本年初の米国の「財政の崖」が回避

されたこともあって、投資家のリスク回避姿勢は後退した状態にあります。もっとも、キプロス支援交渉の状況や

総選挙後のイタリア情勢に注目が集まるなど、欧州債務問題の今後の展開などに引き続き注意していく必要がある

と考えています。

第3に、エコカー補助金終了の反動や日中関係の影響など、景気の下押し圧力となっていた要因が剥落・減衰してい

ます。

こうしたもとで、わが国の輸出は下げ止まりつつあります。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全

体として弱めとなっています。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消

費は、高齢者需要などにも下支えされて、底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ

止まっています。

先行きについては、各種の経済対策が実行に移されることもあって国内需要が堅調に推移し、また、海外経済も減

速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、年央頃には、国内景気の持ち直しの動きははっきりしてくる

とみています。

わが国の金融環境をみますと、緩和した状態にあります。金利面では、コールレートがきわめて低い水準で推移す

る中、企業の資金調達コストは低水準で推移しています。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、

改善傾向が続いています。CP・社債市場でも、総じてみれば、良好な発行環境が続いています。資金需要面をみま

すと、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられています。こうした中、企業の資金繰りをみますと

、総じてみれば、改善した状態にあります。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、概ねゼロ%となっています。目先数か月は、前年のエネルギ

ー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなるとみられますが、その後は、わが国経済が緩やかな回復経路

を辿るもとで、マクロ的な需給バランスは緩やかな改善基調を続け、消費者物価は緩やかな上昇傾向に転じていく

と考えられます。

もとより、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行

の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい情勢です。最近の金融市場の動きは、

世界経済が減速した状態を脱し、持ち直していくことを織り込んでいく動きとみられますが、今後、世界景気を取

り巻く幾つかの不透明要因が順調に払拭されていくかどうか、引き続き注意深く点検して参ります。

金融政策運営

次に、日本銀行の金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本経済は、15年近くも、デフレに苦しんできました。これは世界的に見ても異例なことです。物価が下落する中

で、賃金・収益が圧縮され、投資・消費が減少することで、更なる物価下落に陥るという悪循環は、日本経済を劣

化させています。デフレからの早期脱却は、日本経済が抱えている最大の課題です。

物価安定は中央銀行の責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要です。日本銀行は、これまで

ゼロ金利政策や量的緩和政策を行ったほか、最近では、包括的な金融緩和政策を通じた金融緩和の推進、金融市場

の安定確保、成長基盤強化の支援といった様々な取り組みを行ってきましたが、デフレ脱却には至りませんでした

。もとより、わが国の物価の低下圧力を与える要因としては、海外からの安値輸入品の増加、規制緩和などに伴う

流通の効率化、それらと相まって生じた企業の低価格戦略や家計の低価格指向の拡がりなど、国内外に多々ありま

す。しかし、そうした影響に対抗して物価の安定を実現するのが中央銀行としての日本銀行の責務です。実際、世

界中で、これほど長期間にわたってデフレが続いている国はほかにありません。政府が「大胆な金融緩和」、「機

動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」から成る「3本の矢」でデフレ脱却と経済再生を実現する方針

を明らかにし、緊急経済対策などの対応を迅速にとったことが好感され、景気回復の期待を先取りするかたちで株

価も回復し始めています。

なかでも、本年1月の「共同声明」は、政府・日本銀行が、それぞれの課題を明確に設定し、責任を持ってそれを実

現することを宣言したものであり、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大きな一歩です。日本銀行は、

消費者物価の前年比上昇率で2%という「物価安定の目標」を導入し、この目標のもと、金融緩和を推進し、これを

できるだけ早期に実現することを目指すことを決定しました。日本銀行としては、この「物価安定の目標」を一日

も早く実現することが、何よりも重要な使命であると考えています。

これまで、日本銀行は、デフレ脱却に向け、国債だけでなく、社債、CP、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産

投資信託(REIT)など様々な資産を買い入れてきました。これは中央銀行の伝統的な手法を踏み越えたものですが

、その規模や具体的な買入対象等については、「できるだけ早期に2%の物価上昇を実現する」という強いコミット

メントを実現するために十分なものとは言えません。量的にも、質的にも大胆な金融緩和を推進していく必要があ

ると考えています。

また、金利引下げ余地が乏しい現状では、金融政策運営において、市場の期待に働きかけることが不可欠です。市

場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向け「やれることは何でもやる」という姿勢を明確に打ち出し

ていきたいと考えています。

さらに、政府との連携確保も重要です。金融政策は、政府の経済政策と整合性をもって運営することで、より高い

効果を発揮できるものです。政府と日本銀行の「共同声明」では、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持

続的な経済成長の実現に向け、政府および日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組むことを明記してい

ます。また、政府は、機動的な財政政策、成長力・競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むこととされてい

ます。もとより、日本銀行は、自らの責任において、「物価安定の目標」の早期実現を目指して金融緩和を推進す

るものです。ただ、金融緩和と並行して、政府が「実需」を作り出し、消費・投資の拡大を通じて賃金・雇用を改

善することができれば、そこから更なる物価上昇につながる好循環も期待できます。その際、財政運営への信認低

下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。「共同声明」に沿った政府の

取り組みを期待したいと思います。

今後の具体的な金融政策運営については、政策委員会・金融政策決定会合において、経済・物価情勢の点検を通じ

て市場への影響なども見極めつつ、日本銀行が持つ全ての機能を最大限に活用し、何が最も効果的であるかを検討

して参ります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko130326a.htm/


デフレ脱却の条件

研究主幹
渡辺 努
[研究分野]
マクロ経済
 我が国では1990年代後半以降、緩やかなデフレーションが続いている。現政権はデフレ脱却を最優先課題のひと

つと位置づけ、政府と日銀が一体となった取り組みが行われている。現政権でのデフレ脱却に向けた取り組みはこ

れまでのところ総需要の喚起策が中心となっている。しかし、ミクロの商品の価格が需要と供給で決まるのと同様

に、マクロの物価も総需要と総供給で決まる。したがってデフレ脱却には、総需要だけでなく総供給に働きかける

こと、つまり、メーカーや流通業者の慎重な価格づけ行動を変えさせることが重要である。本稿の試算によれば、

物価上昇率と産出量ギャップの過去の関係を前提とすると、日銀が物価目標として掲げている消費者物価上昇率2%

を達成するには約50兆円の需要増が必要である。この結果は、力ずくの需要喚起だけで物価目標を達成するのが困

難であることを示している。メーカーや流通業者がライバル企業の行動を過度に気にすることなく、需要増に見合

った価格引き上げを行える環境を整備する必要がある。

全文を見る

デフレ脱却の条件PDF:489.2 KB
http://www.canon-igs.org/research_papers/130326_watanabe.pdf
http://www.canon-igs.org/research_papers/macroeconomics/20130326_1816.html


経済マンスリー 2013年3月(全体版)〜日本、米国、西欧、アジア、中国、豪州、原油
http://www.bk.mufg.jp/report/ecomon2013/monthly_all20130326.pdf

ゆうちょ資産研レポート(2013年3月号)〜アベノミクスと日本経済 / 債券市場からの逆メッセージ / BIS規制の

債権の動向...
http://www.yu-cho-f.jp/publication/monthly_report/index.html


金融部門と非金融部門で共に進む海外シフト
http://www.itochu.co.jp/ja/business/economic_monitor/pdf/2013/20130326_2013-061_J_FOF-2012Q4.pdf
民間金融機関の貸出は増加基調も、国内非金融法人向けは減少。貸出拡大の主役は海外向けであ
り、金融機関は海外投資も拡大。また、非金融法人も海外資産を拡大しており、金融・非金融を問わ
ず、海外重視姿勢の強まりが明確。

民間金融貸出が増勢だが…
日本銀行が公表した 2012 年 10〜12 月期の資金循環勘定では、民間金融機関貸出が前年差 11.8 兆円(7
〜9 月期 8.5 兆円)と 6 四半期連続で増加した。月次の貸出統計により示されていた貸出残高増加の動き
を再確認するものと言える。

民間企業向け貸出は寧ろ減少
しかし、民間金融機関貸出の内訳を見ると、民間非金融法人(いわゆる民間企業)向けの貸出は、10〜
12 月期に前年差▲3.8 兆円(7〜9 月期▲0.7 兆円)と2四半期連続で減少している。民間企業向け貸出
は、原発停止等に伴う電力会社の資金需要の高まりや借入シフト等により 2011 年 10〜12 月期から
2012年4〜6月期まで 3四半期連続で増加した。しかし、電力債発行環境の好転などもあり、電力会社
の借り入れ需要が幾分鎮静化し、押し上げ寄与が縮小したのに伴い、民間金融機関貸出全体は再び減少
基調へ回帰してしまっている 1

金融機関の海外重視
民間非金融法人向けと異なり、民間金融機関貸出において一貫して増勢が明確なのは、一般政府向けと
海外部門向けである。特に 2011 年以降は、海外部門向けの増加が顕著であり、金融機関が海外向け貸
出へシフトしていることが読み取れる。金融機関は、貸出以外でも、海外金融資産への投資や海外金融機
関への資本参加などによって海外シフトを積極的に進めており、対外証券投資と対外直接投資、その
他対外債権・債務の合計が金融資産全体に対する比率は 2012 年 10〜12 月期に 10.1%と初めて 1 割を
超えた(金融機関全体から中央銀行を除いたベース)。

非金融企業の海外投資拡大
もちろん、海外シフトを進めているのは、金融機関だけではない。国内設備投資抑制もあり、民間非金融法
人の金融資産は拡大傾向が続き、いわゆるカネ余りの状況にある。カネ余りは、上述のように借入(金融機
関の貸出)が減少する下で、現預金残高も増加していることから確認できる。
ただ、足元で、金融資産増加の相当部分は、対外直接投資と対外証券投資の拡大によるものである。企業は
資金余剰のかなりの部分を海外への投資に振り向けており、それは海外企業のバランスシートを経由して
設備投資として結実している部分もある。そのため、金融資産全体の積み上がりが、必ずしも、海外分を含
めた設備投資に対する、企業の消極姿勢を意味するものではない。
なお、アベノミクスの影響もあって昨年 10〜12 月期に進んだ円安による円貨換算額の拡大も、民間企業
の対外資産残高を押し上げている(グラフの調整勘定 2に含まれる)。但し、円安の影響を控除しても、海
外への資金フローがコンスタントにプラスとなっており、海外投資拡大(海外部門への資金流入)の流れは変わら

ない 3

今後も海外投資は拡大傾向
為替相場の修正に対する確信が強まれば、製造業については国内生産を拡大するために、国内での投資等
を増やす余地が生じる。但し、将来的な為替リスク回避や現地ニーズに応えるための需要地生産拡大の大
きな流れを反転させるには至らない可能性が高い。一方、非製造業についても、金融と非金融を問わず、
従来に比べ、海外需要の重要性が明確に高まりつつある。もちろん、製造業の回復が、国内需要の押し上
げを通じて、非製造業にもたらす好影響はあるとしても、それによって海外重視の姿勢が変わるわけでは
ない。従って、企業部門全体として、今後は海外投資の重要性が一層高まると考えられる。


FRBの出口戦略と長期金利の行方:経済レビュー
http://www.bk.mufg.jp/report/ecorevi2013/review_0120130326.pdf

日本食品に対する海外消費者アンケート調査(香港)
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07001280/hkshohisha.pdf
好きな外国料理:1位は日本料理。タイ料理などアジア料理を広く受け入れる姿勢
・好きな日本料理 : 「寿司」、「刺身」が人気。「ラーメン」は米国と並び人気が特徴的
・好きな寿司ネタ : 「サケ」、「エビ」が人気。「ホタテ貝」は特に香港での人気商品
 日本料理店に行く理由:求める要素は味、調理法、おしゃれ
・購入時の重視点 : 「味の良さ」が1位、次いで「経済性」、「安全性」を追求
・情報源 : ネットへの不信感から、「口コミ」や「つながり」を重要視
 日本産清酒: 8割が高評価しつつも、「非常に高く評価」は1割以下
・購入時の重視点 : 「味の良さ」を最重要視。「産地・原産国重視」の割合が多いという特徴的結果に
・消費場所 : 「日本/日本料理店」での消費割合が多い
・非購入理由 : 過半数が「興味がない」と回答。価格への抵抗は若年世代と女性に
 日本産緑茶:9割超が日本産緑茶について高評価
・日本産緑茶の用途 : 8割が「家庭用・自分用」に購入。40代では9割
・購入重視点 : 清酒同様、「味」と「産地・原産国」を重要視
・消費場所 : 「日本/日本料理店」での消費割合最大、高年齢層ほど顕著
 好きな日本産品:人気は「チョコレート」、「ホタテ貝」、回答商品名の点数多く
・日本産品の用途 : 「家庭用・自分用」が8割超。国内消費の傾向強く
・消費場所 : 「日本/日本料理店」での消費割合が最大、世代間での違い如実に
・食べてみたい日本産品 : トップは「牛肉」。「いちご」、「メロン」、「桃」への人気も高く
http://www.jetro.go.jp/world/asia/reports/07001280


http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2013/0327/1064.html
内閣府ホーム > 今週の指標 > 今週の指標 No.1064
今週の指標 No.1064 景気ウォッチャー調査にみられた高額品コメントの動き

ポイント
2013年3月27日

昨年11月以降、円安・株価上昇がみられ、景気ウォッチャー調査の現状判断DIも4か月連続で上昇している。こ

うした中、景気ウォッチャー調査のコメントには、宝飾品や高級時計、ブランドバッグ等高額品が売れているとす

るなど、以前と比較して高額品に関するコメントが多くみられるようになっている。そこで、今回「景気ウォッチ

ャー調査」の現状判断についてのコメントの中から、『高額』または『ブランド』に関するコメント(以下、高額

品コメント)について集計を行った。

高額品コメント数は、2012年10月は全体で19だったが、12月は26に増え、2013年2月は48と10月の約2.5倍に増加し

た(図1)。景況判断ごとの内訳をみると、10月、11月までは「不変」「やや悪い」「悪い」が多くを占めていた

が、12月以降は「やや良い」が急激に増加した。これは、12月以降、高額品コメントの増加が景気ウォッチャーの

景況判断を改善させた一因となっていることを示唆している。

次に、高額品消費の増加について、地域と業種の広がりを見てみる。図2は、家計動向部門において、高額品コメ

ントがあった地域数と業種数を表している(注1)。全国11地域、家計動向部門15業種(百貨店、スーパー、家電

量販店、飲食関連、住宅関連など)のうち、高額品コメントがあったのは12月に4地域、4業種だったが、2月に

は7地域、8業種にまで増加した。このように、高額品消費は地域、業種共に広がってきた。業種を詳しく見てみ

ると、12月の商店街・一般小売、百貨店等から、1月以降は高額な海外旅行や住宅販売等にまで波及してきた。

高額品コメントのあった地域が広がっているが、地域ごとのコメント数にはばらつきがある。地域の比較ができる

ように、高額品コメント数を家計動向部門でのコメントの総数で割った比率を見てみると、大都市圏である近畿、

南関東ではコメント比率が高い(図3)。その背景として所得との相関を見てみると(注2)、所得1,000万円以上

の高所得者比率が高い地域ほど高額品コメント比率も高くなっている(図4)。なお、近畿や九州では、高所得者

比率と比較して高額品コメント比率が高いが、これは百貨店や大型小売店で新規出店や増床が多く行われているこ

とが理由の一つに考えられる。

以上のように、12月以降、高額品消費が景況判断を改善させた一因となっているが、高額品消費が増加している地

域には広がりがみられ、その背景としては、株価上昇等から、比較的所得の低い地域についても高所得者の高額消

費が拡大していることが考えられる。

(注1) 高額品コメントのうち、ポジティブなコメントに限定するため、全体の景況感が「良い」「やや

良い」の判断に限定。以下同じ。

(注2) 高所得者が多い地域は、高額品を扱う店舗が多いことからコメントが多いことが考えられる。さ

らに、最近は株価の上昇を背景に、高所得者の多い地域でコメントが多いことが考えられる。

本格化する新政権の経済政策〜金融緩和、財政出動、成長戦略
http://www.bk.mufg.jp/report/ecomon2013/monthly_jp20130326.pdf


http://www.research-soken.or.jp/reports/economic/pdf/number48.pdf

2013/3/26
高まる家計の投資意欲に盲点はないか− 「短期化」する家計の金融行動

日本リサーチ総合研究所 調査研究部 主任研究員 藤原 裕之 03-5216-7314
hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp
金融経済レポート No.48 (社)日本リサーチ総合研究所


市況回復を受けた個人の投資意欲の高まりは、個人金融資産が成長マネーとして循環する「貯蓄から投資へ」のき

っかけとなるのかどうか、家計の金融行動のあり方に関わる重要な問題を提起している。

リーマンショック以降の家計の金融行動を振り返ると、リーマンショック直後は、@「ろうばい売り」、A「他商

品への乗換えと更なる損失拡大」であり、市況が回復に転じた昨年後半は、B「やれやれ売り」、C「投資マイン

ド回復による新規購入の動き」の4局面に分けられる。日本の家計の金融行動は、市況や保有資産の動きに敏感に

反応する「短期化」が進行しており、「待てば回路の日和あり」という長期保有によるメリットは殆ど享受できて

いないのが実情である。

個人金融資産を源泉とする成長マネーの供給が経済成長を促進させ、延いては安定的な資産形成につながる「貯蓄

から投資へ」の実現には、個人の金融リテラシーの向上が不可欠である。具体的には、@「売り時・買い時」意識

をなくす、Aポートフォリオ思考を習得する、B許容できるリスクを見極める、といった点がポイントとなるだろ

う。


 家計の金融行動に変化の兆し
– 高まる個人の投資意欲

円安と株高で投資環境が改善する中、冷え込んでいた家計の金融行動にも変化がみられるようになった。
証券会社が主催する個人投資家向けのセミナーは前年を大きく上回る個人投資家が訪れている。2月の株式
投信への資金流出入は 4 ヵ月ぶりに流入に転じており、個人の投資意欲の高まりを反映している。
当局もまた日本版ISA(少額投資非課税制度)の拡充や投信の商品性改善等を通じ、個人金融資産の成
長マネー化を推進する姿勢をみせている。金融機関や個人投資家の運用方針の転換を促すことにより、安倍
政権が目指すデフレ脱却の金融面からの支援と捉えられる。

(個人マネーを起点とした経済成長の実現性)
経済成長を促進する金融資本市場のあり方を巡り、成長マネーの源泉となる個人金融資産の活用が叫ばれ
て久しい。足元の株高と個人の投資意欲の高まりは、個人金融資産が成長マネーとして循環する「貯蓄から
投資へ」の流れを生み出すきっかけとなるのか、あるいは目先の市況に振り回されているだけなのか、家計
の金融行動のあり方に関わる重要な問題を提起している。

 リーマンショック以降の家計の金融行動を振り返る
– リーマンショック後の「ろうばい売り」
現在、市況回復を受けて資産運用に前向きな動きをみせている個人であるが、08 年のリーマンショック
が家計資産に与えたダメージは大きかった。
投資信託の解約状況をみると、リーマンショック後は、円高進行や欧州危機の深刻化等を受けて外債投信
を中心に投信の基準価額は軒並み下落、これに伴って解約が急増した(図表 1)。相場下落を不安視した状態
での解約は、損切りを伴う「ろうばい売り(解約)」が多かったと思われる。07年度から 08年度にかけて家
計が失った金融資産の損失は 144 兆円(株式 50 兆円、投資信託 20 兆円)である。これは 90 年のバブル崩
壊後(89 年度-92年度)に受けた損失 114 兆円(株式 101兆円、投資信託 8兆円)を上回る大きさである(図
表 2)。
売却・解約資金の多くは「通貨選択型」と呼ばれるリスクの高い投信等への乗り換えに向かった。しかし

円高が進行した 11 年は新興国通貨の急落で当該商品の基準価額は大幅に下落した。為替で懲りたはずの個
人が「高い分配金」に惹きつけられて再び為替で損失を蒙る皮肉な結果となった。

– 昨年後半以降の「やれやれ売り」

昨年後半以降は欧州危機の沈静化や安倍政権に対する期待などから円安・株高となり、家計が保有する金
融資産の価格は回復傾向にある。昨日日銀より発表された資金循環統計によると、昨年第 4四半期の家計資
産の時価評価は 18 兆円の評価益まで回復している。年初以降の市況回復を考慮すると、2012 年度の家計資
産の時価評価3年ぶりの評価益となる公算が高い。

市況回復に伴って保有商品の解約も進んでおり、投資信託への資金流出入は昨年 11 月から 3 ヵ月連続で
流出超となっている。現在の解約は塩漬け状態にあった金融商品の価格が戻り始めたことによる「やれやれ
売り(解約)」と言える。リーマンショックという過去に経験したことのないような相場変動の後とあって
は、僅かであっても利益が出ていれば確定させたいのが投資家心理である。

こうした「やれやれ売り」の動きは今年1月でほぼ一巡したとみられ、2月からは設定額が解約・償還額
を上回る流入超となっており、個人の金融行動が積極運用に転換したことを示している。

– 短期化が進んだ家計の金融行動

上記のように、リーマンショック以降の家計の金融行動は、@市況悪化に伴う「ろうばい売り」、A損失
回収を目的とした他商品への乗り換えと失敗、B市況回復に伴う「やれやれ売り」、C投資マインド回復に
よる新規購入、の順で進んでいると言える。この結果、家計の金融行動は、市況や保有資産の動きに敏感に
反応する「短期化」が進行している(図表 1)。リーマンショック直後の「ろうばい売り」の局面では「損
切り」となった商品も多かったはずである。日本の家計の多くは「待てば回路の日和あり」という長期保有
のメリットを殆ど享受できていないのが実情である。

 「貯蓄から投資へ」の実現に向けて
– 金融行動の見直しが必要

現在、個人は再び新規投資に向かおうとしているが、金融行動の短期化を見直さなければ「いつか来た道」
を繰り返すことになりかねない。個人金融資産を源泉とする成長マネーの供給が経済成長を促進させ、延い
ては安定的な資産形成につながる「貯蓄から投資へ」の実現には、個人の金融リテラシーの向上が不可欠で
ある。具体的には、@「売り時・買い時」意識をなくす、Aポートフォリオ思考を習得する、B許容できる
リスクを見極める、といった点がポイントとなるだろう。

@「売り時・買い時」意識をなくす
先行きの相場を悲観した「ろうばい売り」も相場回復に伴う「やれやれ売り」も家計の金融行動として決
して好ましい姿とは言えない。中には巧みに売買タイミングを当てて勝ち続けられるデイトレーダーのよう
な個人もいるかもしれないが、家計の殆どはプロの投資家ではない。特に投資信託のような金融商品は手数
料などコスト面から考えて短期売買には不向きな商品である。金融機関の販売担当者も、顧客が投資信託の
ような商品で「売り時」「買い時」を過度に意識し過ぎないよう注意喚起する必要があるだろう。

Aポートフォリオ思考の習得 〜資産配分(リバランス)を意識する
2つめのポイントは、個々の金融商品の変化に目を奪われず、保有資産全体の安定性を意識することにあ
る。家計の資産運用の基本原則はあくまで「資産保持」にあり「儲けること」ではない。保有商品の中には
含み損状態にあるものもあるだろうが、長期でみれば他の保有商品の下落の影響を抑える役割を果たしてい
ることが多い。

販売担当者も顧客に対して長期保有と分散投資の重要性を改めて理解してもらう必要がある。投資信託の
場合、短期売買で利益を上げようとしても、多くの銘柄に分散投資する投資信託の基準価額は個別株の価格
より緩やかである。加えて、販売手数料や信託報酬などコスト面からみても短期的な値上がりを捉える売買
には向いていない。時間を味方につけてじっくり育てる姿勢が必要である。
具体的には運用資産の「配分比率」を決めることからはじめることが重要である。既に資産配分比率が決
まっている場合は、最初に決めた資産配分と比較してズレがある場合に購入・売却を通じて比率を元に戻す
「リバランス」を行う。個別ファンドの購入・売却は、あくまで決まった資産配分比率にするための1プロ
セスと捉えることが大切である

Bリスクの許容範囲を決める 〜ライフサイクルを意識する
3つめのポイントはリスクの許容範囲を決めることである。どれだけリスク性資産に振り向けられるか
は、所得の状況や支出目的、ライフサイクル等によって異なる。具体的な支出目的はなく余裕資金の範囲で
あればリスクが高く流動性の低い商品を購入してもいいだろう。「教育資金」や「住宅資金」など支出目的
と時期が明確なものは、流動性・安全性を重視した商品に充てるべきである。
年齢もリスク許容の重要なバロメータである。資産形成層となる30−40歳代であれば、リスク性商品
の比率を高めにしていいだろう。一時的な調整があっても長期保有が可能なため、途中で不本意な解約をせ
ずに済む。反対にリタイヤ前後の年齢層の場合、老後資金の準備期間が終了する時期になることから、リス
クを減らして流動性の高い安全資産の比率を多くすべきである。こうした考えはライフサイクル理論として
資産運用の世界では広く知られるものだが、現実には若年層より高齢層のほうがリスク性資産の比率が高く
なっている(図表 3)。若年層は長期のリスクを取れる世代であるため、株式などリスク性資産の比率をも
っと高めるべきであり、反対にシニア層は流動性・安定性を重視した資産構成にすべきである。
空気の変化に期待 〜リーマンショックは最高の教材
最近の個人投資家向けセミナーなどでは、リーマンショック以降の金融行動を反省する声も聞かれるよう
になったと聞く。投資は実体験を通じて学ぶのが一番であり、その意味でリーマンショックは最高の教材で
あることに間違いない。リスク許容量や小口分散の必要性を認識した上で新規の投資に踏み切る個人が増え
てくれば「貯蓄から投資へ」の道が拓けてくると期待したい。

図表 1 家計金融資産の時価評価の推移
(出所)日本銀行「資金循環統計」
図表 2 株式投信の解約額と平均保有年数の推移
(出所)投資信託協会

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130326a.htm/
バーゼル銀行監督委員会による市中協議文書「信用保証取引のコスト認識」の公表について
2013年3月26日
日本銀行

バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)は、3月22日、「信用保証取引のコスト認識」(原題:

Recognising the cost of credit protection purchased)と題する市中協議文書を公表しました。

詳細につきましては、以下をご覧ください。

プレス・リリース(原文<国際決済銀行ウェブサイトにリンク>)(仮訳 [PDF 126KB])
1
(仮 訳)
プレス・リリース
2013 年3 月22 日
バーゼル銀行監督委員会
バーゼル銀行監督委員会が「信用保証取引のコスト認識」(Recognising the cost
of credit protection purchased)に関する市中協議文書を公表
バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)は、本日、銀行が一定の高コスト信
用保証取引を行う場合の資本賦課を強化する提案を公表した。
バーゼル委は、かねて、一定の信用保証取引に伴う潜在的な規制裁定取引への懸
念を表明していた。その際、当該取引の動向への監視を継続し、必要であれば、国
際的に調和のとれた「第1 の柱」(最低資本基準)による対応を検討することを言及し
ていた。更なる検討を経て、バーゼル委は、より包括的な第1 の柱による対応に関す
る提案を推し進めることを決定した。
バーゼル委は、信用保証の購入が効果的なリスク管理ツールとなりうることを認識し
ている一方で、提案されている変更には、信用保証の便益だけでなく、コストについて
も規制資本の中で適切に認識されることを確保する狙いがある。これは、銀行に対し
て、一定の状況において、信用保証のプレミアムの現在価値を計算のうえ銀行のエク
スポージャーとして認識し、1250%リスクウェイトを適用することを求めるものである。
この提案に対するコメントは2013 年6 月21 日(金)までに、電子メールにより
baselcommittee@bis.org 宛に提出するか、もしくは、「Secretariat of the Basel
Committee on Banking Supervision, Bank for International Settlements, CH-4002
Basel, Switzerland」宛に郵送してもらいたい。全てのコメントは、コメント提出者が明
示的に機密扱いを要求しない限り、国際決済銀行のウェブサイトに公表される。


WEBRONZA【アベノミクスを聞く】第6回 一橋大学教授・小林慶一郎氏 財政有事に備えた危機管理を

WEBRONZA に掲載(2013年2月21日付)


研究主幹
小林 慶一郎
[研究分野]
マクロ経済
シリーズ「アベノミクスを聞く」第6回目に登場する有識者は、日本の財政危機を憂える一橋大学経済研究所教授の

小林慶一郎氏だ。世間はアベノミクスに浮かれすぎてはいませんか、危機のマグマはたまっているのですよ――温

和な語り口で、そう諭す「警世の士」である。(インタビューは2月8日:大鹿靖明氏)

 ――アベノミクスのご評価はいかがですか?

  安倍総理が打ち出した「3本の矢」のうちの最初の一つである金融政策は滑り出しがよさそうで、心理的な効果

も含めてよかったかなと受け止めています。3本目の矢の「成長戦略」は、医療介護の規制緩和や株式市場・労働市

場の改革のような「大物」のネタに手をつけないと、ちょっと期待薄ですね。いままで、いろんな成長戦略をつく

ってきましたがうまくいっていない。今回も公的ファンドなどで競争力を失った企業を助けるようであれば、成長

しない人たちを助けるだけではないか。それは成長戦略ではないのではないか、と思います。私が特に憂えている

のは、2本目の矢の「財政の機動的出動」についてです。政治的には参院選まで「バラマキ」を展開するというのは

やむを得ないことかもしれませんが、中長期的に財政を立て直すという方向を示さないと大変なことになると思う

のです。しかし、今の安倍政権がはたして財政を立て直していくようなリーダーシップがあるのかどうかは疑わし

い。ひょっとしたら矢は的を外れてしまうかもしれない。

 ――どういうことですか?

  早くも「景気が上向いたら消費税を増税しないでいい」という声があがっていますが、いったい、どういう根

拠でそういう見方が出てくるのだろうと思いますね。米国UCLAのゲイリー・ハンセン教授と南カリフォルニア大の

セラハティン・イムロホログル教授は、日本のインフレ率が1%で、現状の社会保障制度をおおむね維持するとした

場合、消費税率を33%ほどに引き上げないと、日本の公的債務が無限大に膨張するのを止めることができない、と

試算しています。今の時点でも、公的債務の対GDP比率が無限大に向かって発散していく途中ですが、それを有限の

ところで止めるには、消費税率を30%以上にしないと止まらない、というのです。これは何も奇矯な意見ではあり

ません。データをもとに長期的に予測をすれば、自然に出てくる結論なので、日本の多くの経済学者や市場エコノ

ミストなども、みな、消費税率を30%以上にしないともたない、とうすうすは分かっています。だからこういう試

算結果を話しても、経済の専門家は驚かない。しかし、消費税率30%という数字を言うと、普通の人は驚いてしま

いますね(笑)。いまのは1%インフレのケースですが、これが2%インフレとすると、たとえば年金の支出額は若

干減ります(マクロスライド方式によってインフレ率に見合う増額をしないで、むしろインフレ率よりも抑えぎみ

にする仕組みが埋め込まれているからです)。それで財政の負担を少し抑えることができますが、それでも消費税

率を28%ぐらいにしないとなりません。インフレ2%で財政が楽となるといっても、たかだか消費税率4、5%分ぐら

いの節約にしかならず、28%もの消費税が必要になってくるのです。つまり、たとえ金融緩和をやってインフレに

したとしても、大幅な増税か社会保障費を削減するか、どっちかをやらないとならない。この点は、なにも変わら

ないのです。

 ――そうなんですか! そういうことをもっと新聞で書いてほしいですよね。あるいは小林さんを含めて学者の

方々も、もっと発信すべきではないのですか。

  言っているのですが、しゃべっても記事では小さく扱われて(苦笑)。突拍子もない意見だと思われているの

でしょう。でも、いま申し上げた米国の学者たちは向こうの学界の重鎮なのですよ。アメリカの専門家が、素直に

日本の公表された数字をもとにして淡々とシミュレーションしてみたら消費税率30%以上が必要という結論になっ

たということです。

 ――じゃあ、マスコミのアベミクス礼賛は浮かれすぎでミスリーディングになってしまうかもしれませんね。

  金融緩和ですべてが解決するという幻想を振りまくべきではないと思いますよ。多少、円安・株高で輸出産業

が儲かるようになるということではあるでしょうが、一方で東電の燃料調達費はかさむし、景気押し上げ効果がど

れほど大きいか疑問ですよ。そもそも金融緩和によっても、財政問題はほとんど解決しない。それどころか、イン

フレになって金利が上がると財政破綻が、あっという間に近づいてくる。だから財政再建をきちんと進めながら金

融緩和をしないと。単純に金融緩和だけをやると、カタストロフが近づいて来ます。

 ――そうですか? 金利が上がってきたら日銀が引き締めたら済むことでは?

  でも、日銀が引き締めるということは、さらに金利を引き上げるということなので、ますます高金利で倒産と

失業が大量に増えます。経済がガタっと落ちて、またデフレに戻るのではないのですか。それはストップ&ゴーで

すよ。

 ――しかし、日本の金融機関は運用先が他にないので、最終的に国債を買うしかなく、需給面がタイトであり続

け、つまり国債は市場で消化され続け、暴落しないで済むのではないでしょうか。

  いやいや、円安になってインフレになると、日本国債よりも海外資産が魅力的になります。ですから海外にお

金が流れていくのです。いまはデフレで円高なので、海外に投資しても損をするので、円で持っていたほうが魅力

的です。ですからデフレで円高のうちは国債が買われているのです。もしリフレ政策が成功してインフレになった

ら、いままでの「海外資産を買うよりも、日本国債を買ったほうが得」という投資環境が、逆の動きになってしま

うのです。日本の銀行だって、海外投資のほうが得するとなれば、海外債券を買うようになるでしょう。そうする

と日本国債への需要がガタっとなくなって、ますます国債が売られ、そうなると円安になって、ますます海外資産

を買いたくなる......。いったん、そういうスパイラルになると、国債を持っているのは、銀行や信金、信組など

の金融機関ですので、国債が暴落すれば銀行のバランスシートが傷むことになり、1998年ごろにあったような「貸

し剥がし」が横行するようになるかもしれません。地域経済は大きな打撃を蒙るでしょう。同時に株安、円安に債

券安も重なるトリプル安になりえます。そう想定することは決して不合理ではないと思います。ですから、安倍政

権は「これから財政の立て直しもやるんだ」ということをマーケットに信用してもらうような政権運営をしないと

いけない、そう考えますね。

 ――なるほど。バブルがいつ崩壊するのか予見することは難しいですよね。私も証券市場を担当しているころに

ITバブルが崩壊するのを目の当たりにしましたが、「危ういな」と思ってはいても「行け、行け、どんどん」とい

う声にかき消されがちでした。リーマンショックも、投資銀行やファンドの中には異様なカネ余りに危機感を抱く

人はいたのですが、ゲームを途中で抜け出すことができませんでした。極端にふれたことは、ある日、予想しえな

いような形で崩壊するものですね。投機筋が仕掛けてくるかもしれません。

  いまのところデフレが続いているので、日本国債の暴落を仕掛けてきた海外のファンドなどは負けていますが

、アベノミスで一息ついて「どうやら日本は財政再建の意欲がなさそうだ」と思われるようになると、話が変わっ

てきます。本当に名目金利が上がり始めると、日本の財政破綻シナリオがありうることと受け止められるようにな

ります。そうなると制御できなくなって国債が暴落するということはありえますね。

 ――そのときの危機管理シナリオというのを政府は考えないといけないのではないですかね。

  実は財務省や経産省、日銀OBら何人かで財政破綻のシナリオを何度か議論をしてみたのですが、ほとんど何も

準備がなされていないというのが実情なのです。たとえば生命保険会社をどうするかという問題があります。生保

も国債を大量に持っているのですが、銀行ではないので日銀の取引相手ではない。いざとなると流動性危機に陥り

ます。日銀が生保に流動性を供給するには、生保のメーンバンクを通じて供給するしかない。はたして、そういう

ことが危機の時にスムーズにできるのか。そもそも日本政府の資金繰りが今の法律では年度をまたげないという問

題もあります。年度内ならば日銀からいくらでも借りられるので日銀から借りられますが、3月31日を超えて資金繰

りを続けるというのは今の制度上では想定されていない。そうなると、政府がその月に決まった現金を支払えなく

なりますから、年金の支払いや公務員給与が払えない。支払いの時期をそうとう繰り延べるとかしないといけない

。そのときの資金繰りをどうするか。それと地方の信金、信組が破綻して地域経済がメタメタになる。それをどう

するか。

 ――少しは政府で考えている人はいないんですか?

  個人的に心配している人はたくさんいますが、茶飲み話でいうくらいで、業務として考えている人はいないん

です。日本の軍隊と同じで、「負ける」という前提のシミュレーションを考えることはやらないのです。なぜやら

ないのか、という理屈がいかにも官僚組織の病理を象徴しています。彼らの理屈はこうです:
  「財政再建を成功させる(財政破綻をさせない)」ことが政府の任務なので、「財政破綻が起きたらどうする

か」というシミュレーションをすること自体が、政府の自己否定になる。だから、財政破綻が起きることを前提に

した事後対策を考えることを、政府がやってはならないのだ......。
  財務省の人もそれ以外の人も政府の役人に財政破綻が起きた場合の対策を考えないのかという話をすると、口

をそろえて、「政府の公式な業務としてはやれない」と言いますね。結局、官僚組織のロジックを乗り越えるには

、政治家からの強力な命令がなければなりません。政治家から命令されれば、官僚は「財政破綻後のシミュレーシ

ョン」を堂々とやれるわけです。しかし、政治家は政治家で、財政破綻なんて起きないだろうとタカをくくってい

る人が多い。だから、政府に入った与党の政治家は、「財政破綻後のシミュレーションをやれ」、と官僚に言わな

い。こうして官僚も言い出せず、政治家も言い出さず、国民世論も言い出せない、という三すくみのような状態で

、「財政破綻が起きた場合の対策」という重要な政策課題が、手つかずのまますっぽり抜け落ちているのです。

 ――非公式には? 週刊誌が、国債暴落を検討したシミュレーションが財務省にある、と報じていましたよ。

  週刊誌が書いたのは、国債マーケット対策について財務省が検討したものですね。そういう個別対策はやって

いるかもしれませんが、危機の全体シナリオはできていない。年金を支払いできないときにどうするかとか、かな

りの増税策を打ち出さないとパニックを止められないけれど、それをどうするのかとか、破綻寸前の金融機関の対

策も必要だけれど、どうするのかとか。とにかく財政にかかわるあらゆる分野を動員して考えなければならないの

ですが、それをやっていない。

 ――じゃあすべては想定外なわけですね。原発事故とまったく同じですね。

  原発事故が起きる前は、原子炉のことは細かく想定していても、大規模な住民避難は考えていなかった。それ

と近いことが財政分野でも起きています。公的年金の支払いや公的医療サービスが滞るようなことがあれば、生命

の危機にさらされる人も出てくるでしょう。

 ――過去に財政破綻した国からケーススタディを学んで対策を研究することはできないのですか。中南米諸国と

かギリシャとか、終戦時の日本とか。

  アルゼンチンは物価が百何十倍にもなって、自国通貨の信認が失われてドルに逃避して、公的医療も崩壊して

普通なら助かる人が死亡したといいます。貧困層の方は相当間接的な影響を受けて亡くなっているはずです。

 ――そういう指摘が「トンデモ学者」、あるいは「オオカミ少年」とみられることはないですか?

  私はすぐ明日にもそうなるとはいっていません。財政危機のマグマがたまっているということを言っているの

です。なぜいま国債が暴落しないのかというと、円高傾向が続いているため、金利がゼロであっても国債を買った

ほうが海外投資よりも儲かるため、買われているのです。日本の国債の95%は国内の投資家が持っています。経常

収支黒字(貿易収支も震災までは黒字)でしたので、海外で儲けたお金を国債に投資するようになっています。こ

の状態が続けば十数年は財政破綻まで余裕があると思っていましたが、インフレになるとひょっとしたら数年後く

らいに危機の到来が近づくかもしれません。

 ――小林家はそれに対する「我が家の防衛策」はありますか?

  ですから、こうやって情報発信して「改革をやってください」というのが最大の防衛策です。私は、こうした

現状を踏まえて高齢者の方々が「自分たちの年金や医療を削減してください」と言い出すようになってほしいと思

っています。「給付は少なくていい」と高齢者に言ってもらいたい。若者から吸い上げて高齢者に回しているので

すからね。今後、高齢者医療費の財政負担が年金以上に国にとって重荷になってきます。早く納税者番号制度を導

入して、豊かな高齢者とそうではないお年寄りとを区分できるようにし、高齢者の中でも本当に気の毒な人だけに

公的支援を手厚くする仕組みにしないと社会保障制度が持ちません。若者や現役世代だけではなく、豊かな高齢者

にも応分の負担をしてもらって、気の毒な高齢者に回すような同世代の相互扶助の制度を作るべきです。

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23. 2013年3月29日 01:42:19 : QBrYpzDGwo
 投稿本文より十倍以上も長いコメント、全部同じ人?本出した方が良いのではないの?

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