http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/475.html
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(回答先: インフレ目標政策は万能特効薬か? 通貨供給はマネーストックやインフレに直結しない 日銀の金融緩和意欲は通貨の供給量で判断 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 05 日 02:23:59)
溜池通信vol.516 Biweekly Newsletter April 5, 2013 双日総合研究所 吉崎達彦
経済思想としてのアベノミクス論 1p
<今週の”The Economist”誌から>
”Can India become a great power?” 「インドは超大国になれるか」 7p
<From the Editor> 日銀のレジームチェンジ 8p
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経済思想としてのアベノミクス論
アベノミクス論争はなおも活況を呈しています。筆者も先週3月29日のテレビ朝日『朝まで生テレビ〜激論!アベノミクスは日本を救うか?!』に出演したり、文春新書『アベノミクス大論争』や日経プレミアPLUS『日本経済の行方』1に登場したりしております。
本号では、普段あまり触れられない側面、経済思想としてのアベノミクス論に光を当ててみました。金融緩和という「ハト派」の経済政策が、外交・安保では「タカ派」と呼ばれる安倍政権で行われている。日本における経済政策の「保守―リベラル」の構図は、海外から見るとややユニークなのですが、これを説明するには尐し過去に戻ってみる必要がありそうです。
●温故知新〜アベノミクスの源流を問う
以下は過去に日経に掲載された評論記事である。どこが変だか、お分かりだろうか。
コラム@.アベノミクス再起動を 「改革と成長」志高く
アベノミクスがめざすべきは志の高い経済政策だろう。グローバル経済の恩恵を受けるだけでなく、その規範となる経済こそ実現しなければならない。
コラムA.買われぬアベノミクス
円安はなおも続き、輸出への恩恵を手放しで喜べる段階ではなくなってきた。迫力を欠く「アベノミクス」に内外の投資家が愛想を尽かせば、日本の地盤沈下が進みかねない。
コラムB.アベノミクス成功の鍵
安倍政権の経済政策は成長路線である。これは内閣の布陣から明らかだ。
1 http://honto.jp/netstore/pd-book_25576556.html 「スマホ世代のマガジン型新書」だそうです。
2
これらの見出しは、今朝の朝刊に載っていたとしても異和感なく受け止められるかもしれない。しかるに上記の3本の記事は、今から6〜7年も前に書かれたものである。それぞれの掲載日は以下の通り。
@ 日本経済新聞朝刊2006年12月25日(核心=論説主幹 岡部直明)
A 日経金融新聞2007年6月20日(ベンチマーク=編集委員 菅野幹雄)
B 日経金融新聞2006年10月31日(複眼独眼=匿名コラム)
多くの日経読者にとって、これらの記事は完全に忘却の彼方であろう。しかるに、第1次安倍内閣においても「アベノミクス」という言葉は使われていたのである。
もちろん、ここで使われている言葉の意味は現在のそれとは微妙に違う。上記@、Aの記事の中で、当時の大田弘子経済財政担当相がそれぞれ下記のように語っている。
「これまでは日本経済の負の遺産を取り除く改革だったが、これからは新しい可能性を切り開くための改革だ」
「改革はやはり着手して十年くらいかかる。(小泉時代に)前半の五年が終わり、後半の五年が始まる。難しいものばかりが残っています」
つまりこのときの「アベノミクス」とは、小泉改革を継承する存在であった。すなわち、公共投資を切り詰めて財政支出を減らし、規制緩和を進めて成長力を高める「構造改革」路線を意味していた。当時の日経記事をさらに検索してみると、どうやら中川秀直幹事長がこの言葉を売り込んでいた痕跡がある2。しかるに今のように定着することはなく、読者の記憶からも抜け落ちていったのであろう。
この時期の「アベノミクス」には、金融政策はほとんど含まれていない。例えば上記@の記事は、アベノミクスが目指すべき方向として「税制改革」「財政再建」とともに、「金融政策は日銀に任せる」ことを挙げている。その上で、「独立した中央銀行を持つことは成熟した民主主義国の基本である。政治の介入は信用を低下させる」と指摘している。良くも悪くも、当時の経済論壇における多数派の意見であったと言えるだろう。
ただし日本経済はその後、2008年に国際金融危機の荒波に呑みこまれてしまうし、2009年には民主党政権が誕生する。2011年には東日本大震災もあった。この間に構造改革は後戻りを余儀なくされ、それと同時に「骨太の方針」や「経済財政諮問会議」などの政策ツールも表舞台から姿を消した。突如として2012年秋に大復活を遂げた「アベノミクス」には、こんなプロローグが隠れていたのである。
2 日経金融新聞「安倍政権のツキ試す市場」(2006年10月13日)など。
3
●経済政策〜「豪華三点セット」の誘惑
かくして「アベノミクス」という言葉は、中身を変えて2012年秋の日経紙上に再登場することになる。日経テレコンで確認したところ、「アベノミクス」を大きく見出しに使った記事の端緒は11月26日朝刊の「核心」欄で、「アベノミクスいま再び 金融緩和だけが売り物か」(滝田洋一編集委員)である。
同記事によれば、自民党は安倍氏が総裁に就く前の8月末の「日本経済再生プラン」で既に「政府・日銀の物価目標(2%程度)協定の締結」を盛り込んでいるし、民主党の前原誠司経済財政担当相が日銀総裁と結んだ合意文書にも同様の発想がある。さらに、日本維新の会の「維新八策」の中には、手っ取り早い成長促進策として金融政策が前面に押し出されている。総選挙の公示日を翌週に控えて、「保守勢力の結節点は金融緩和」というのが同コラムの見立てであった。
ところが2012年末に安倍政権が誕生してからは、「アベノミクス=三本の矢」という説明がなされるようになる。ここで財政政策と成長戦略が加わるのである。結果としてアベノミクスとは、狭義ではデフレ脱却を目指す大胆な金融政策であるが、広義では安倍政権の経済政策全般を指し、@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を誘発する成長戦略、というパッケージを意味することとなる。
まとめると、以下の3通りのアベノミクスが存在することになる。
アベノミクス’06:小泉政権を継承する構造改革路線
アベノミクス’12:大胆な金融緩和
アベノミクス’13:三本の矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)
思うに「三本の矢」というのは、批判を浴びにくい上手な表現である。第一生命経済研究所の熊野英生氏は、「アベノミクスは和洋中・豪華ディナーセットのようなもの。誰でも好みの料理がひとつは入っているから反論しにくい」と評している。なるほど、リフレ派は日本銀行のレジームチェンジに拍手を送り、ケインジアンは補正予算の成立に満足し、新古典派は成長戦略が入っていることで自らを納得させている。世にいうアベノミクス論争とは、ほとんどがリフレ政策の是非をめぐるものであって、この「三本の矢」が間違っているという声は筆者も寡聞にして聞いたことがない。
他方、こんな風に経済政策を「ごった煮」にするのがいいことなのか、という素朴な疑問が浮かんでも不思議はない。お手軽なイチャモンをつけるならば、「アベノミクスには理念がない」という便利な常套句がある。安倍首相ご自身の思考の変化を「ぶれた」と批判するのは適当ではあるまいが、意味が3通りもある「アベノミクス」という言葉に経済思想としての筋が通っているとは言い難いであろう。
4
●経済思想〜保守とリベラルの交錯
この経済思想の問題は、今までほとんど指摘されてこなかった。しかるに改めて考えてみれば奇妙なことではないだろうか。外交・安保政策ではタカ派と呼ばれる安倍政権が、なぜ経済・金融政策ではハト派となるのだろう。
例えばアメリカでは、ポール・クルーグマン教授のようなリベラル派の経済学者がアベノミクスを絶賛している。考えようによっては、不思議な現象である。クルーグマン教授が、去る1月13日にニューヨークタイムズ紙に寄稿した”Japan Steps out”(一歩抜け出した日本)というコラムでは、安倍首相は”dismal orthodoxy”(陰鬱なる正統派経済学)を打ち破る者として評価されている3。
その上で、”Now, people who know something about Japanese politics warn me not to think of Mr. Abe as a good guy. His foreign policy, they tell me, is very bad,”(日本の政治に詳しい連中は、安倍氏をいい奴だと思うなよ、と警告してくれる)と付言している。察するにリベラル派のお仲間がやってきて、「アベはタカ派だぞ」と囁いてくれたらしい。ただし”But none of that may matter.”(それとこれとは別)というのが同教授の結論となっている。
党派色が強まっている今のアメリカでは、どうしてもこの手のイデオロギー的な視点がつきまとう。なぜなら超保守派のティーパーティ(2012年の共和党大統領候補者で言えばロン・ポール氏)などが唱える金融政策は、「米連銀の廃止」や「金本位制への回帰」である。量的緩和政策や、それを主導するバーナンキ議長は厳しく批判されている。
なんとなれば、それは政府が必要のない人たちまで助けることを意味するからだ。それは「小さな政府」の理想に反するし、国民の自立心を失わせる恐れがある。さらに言えば、彼らはややこしい政策自体を嫌う。経済は自然に任せておくのが一番だというのがアメリカにおける保守思想である。安倍首相が大胆な金融緩和を唱えていることは、彼らの目には「アベの保守主義はいかがわしい」と映っているかもしれない。
逆にクルーグマン教授のような純正リベラル派からすれば、失業を解決する機会があるというのに、政府がそれをしないのは許せないということになる。ケインズ曰く“In the long run, we are all dead.”(長期的に言えば、われわれは皆死んでしまう)。だからこそ、目の前の経済をよくするために全力を尽くす必要があり、そうでないなら政治家やエコノミストは不要だということになる。
それではアベノミクスはリベラルな経済政策なのだろうか。ところが安倍内閣は、生活保護の給付水準を切り下げる構えである。これは「最初に自助、次に共助、最後に公助」という自民党の理念に基づくものであり、明らかにリベラルな発想ではない。というより、これを聞いたらクルーグマン先生が目を白黒させるかもしれない。
3 http://www.nytimes.com/2013/01/14/opinion/krugman-japan-steps-out.html
5
●DNA〜歴史的な経緯による「ねじれ」
実は日米の経済政策の発想には、根本部分に「ねじれ」があるらしいのだ。すなわちわが国では、保守政党はかならずしも「小さな政府」ではなく、拡張的な経済政策を採ることが多かった。自民党も小泉政権以前は、基本的にケインズ政策の党であった。逆に革新政党の方が、緊縮的な財政金融政策を是とする傾向がある。
このことは戦前の政友会と民政党の時代に源流を求めることができる。戦前の二大政党は以下のような対比があったという4。
政友会:国権派、皇室中心主義〜地主など地方名望家が基盤〜積極財政、対中強硬策
(古くて腐敗気味のイメージ)→自民党の前身?
民政党:民権派、議会中心主義〜都市ブルジョアジーが基盤〜緊縮財政、対中不干渉
(新しくて清潔なイメージ)→民主党の前身?
民政党は浜口雄幸首相の時に金解禁に踏み切り、深刻なデフレを招いてしまった。そして1931年(昭和6年)末に政権交代が行われる。新たに登場した政友会の犬養内閣は、高橋是清を蔵相に指名する。ここから「積極財政、国債の日銀引き受け、金解禁停止(円安容認)」という「昭和版・三本の矢」=高橋財政が始まるのである。
あらためて経済思想の図式に当てはめると、リベラルな民政党が緊縮政策に傾きがちで、保守の政友会が拡大気味の経済政策を得意としていた。そういう伝統が日本政治のDNAに流れていて、今回もそれが発露されたと考えると分かりやすい。民政党は官僚終身者が多く、理屈っぽいところがあった。金解禁政策などは典型的な理屈倒れであった。逆に政友会は党人派が多くて柔軟であった。同時にプロ・ビジネス、もしくは財界寄りで実体経済を身近に感じるところがあったから、結果を出すためには何でもやった。確かに高橋是清翁が今日生きていれば、「アベノミクスなんて当り前じゃないか」と言いそうである。
要するに日本の経済政策の対立軸は、米国式の保守対リベラルとは尐々違っている。おそらく右が現実的で左が理想的という、戦前の二大政党のエートスが今も受け継がれているのであろう。
そうだとしたら、「アベノミクス」に理念や経済思想を求めることはあまり意味がない。わが国の保守政党の経済政策は、高橋財政の昔から良く言えば現実主義、悪く言えばご都合主義であった。金融政策の議論は理屈っぽく、得てして神学論争の迷宮に立ち入ってしまうのだが、安倍政権が目的としているのは正しい経済理論ではなく、強い日本経済であろう。そのように考えると、「アベノミクス」という言葉につきまとう怪しげなイメージがかなり払拭されるのではないだろうか。
4井上寿一学習院大学教授『政友会と民政党』(中公新書)を参照。
6
●実体経済〜企業マインドはなおも慎重
さて、アベノミクス効果にマーケットは反応し、消費者の気分も幾分明るくなった。問題は実体経済の動きである。これについては、3月29日の鉱工業生産と、4月1日の日銀短観を見る限り、あまり楽観しない方がよさそうに思える。1-3月期の日本経済は確かによかったが、4-6月期も順調に行けるかというと、尐し慎重に見ておくべきだろう。
* 2月の鉱工業生産は、もともと前月比+5.3%の予測であったところが、ふたを開けてみたら▲0.1%だった。このところ、生産予測調査が何度も下に外れている。昨年12月も事前の予測は+6.7%だったのに、結果は+2.5%だった。1月の予測は+2.6%だったけれど、確報では+0.3%となっている。統計を作成する経済産業省が前のめりになっているのか、あるいは調査を受ける製造業の現場が楽観的になり過ぎているのか。
* データの細部を見ると、出荷は増えているし、在庫も順調に減っている。ちなみに3月予測は+1.0で、4月予測は+0.6%である。何とかこのまま生産が改善し、実体経済も順調に回復してもらいたい。ただし、円安でも2月の実質輸出は良くなかったし、1月の機械受注も悪かったから、足元の設備投資はあまり動いていない様子である。 * 3月日銀短観は、新聞の見出し的には「製造業景況感が改善」「大企業3四半期ぶり」「円高修正・株高で」(以上、4月1日の日経新聞夕刊から)であった。しかし、@業況判断の数値は市場コンセンサスよりも低く、A中堅・中小の製造業にいたっては前回調査よりも悪化しており、B設備投資計画は全産業で前年比マイナスである。手離しで歓迎できるような内容ではなかった。
* そんな中で、大企業・製造業の想定為替レートが85.22円になっている。円高に泣かされてきた経営者としては、今の90円台のレートは素直に信じがたいのであろう。それでも経常利益予想はかなり高く、このまま円安が定着すればさらに上方修正もあり得る。企業マインドはまだおっかなびっくり、ということになのであろう。
こうなると、いちばん頼りになるのは公共投資である。補正予算で積んだ10兆円の予算のうち、2012年度内に使ったのは1兆円のみだそうなので、9兆円を使い残して新年度を迎えている。2013年度の景気を支える虎の子の9兆円と言えるかもしれない。
「なんだ、結局は財政支出かよ」と思うと、アベノミクスの値打ちが下がるような気がするかもしれない。しかし、これこそ「三本の矢」の強みであり、節操のない経済思想のご利益というものだ。経営者のものの見方は、マーケットや消費者よりも慎重である。企業マインドが本当に改善して、実体経済を浮揚していくかどうか。アベノミクスは、とりあえず日本経済の「気分」は変えたが、「実態」の変化はまだまだこれからというのが、2013年度第1週時点の評価となるだろう。
7
<今週の”The Economist”誌から>
”Can India become a great power?” Cover story
「インドは超大国になれるか?」 March 30th 2013
* 新興国の右代表とされる中国とインド。”The Economist”誌は、インドが超大国になるには戦略思考が足りないという。ちょっと「褒め殺し」のようにも見える論説です。
<要約>
米国とのG2論は時期尚早であったにせよ、中国が超大国の仲間入りすることを疑う者はいない。インドもその同類として語られる。10億を超える人口、経済の可能性、貿易量、そして軍事力まで。嫌々ながらではあるが、国連安保理の5か国はインドの常任理事国入りを支持している。しかし中国台頭は所与として、インドのそれは未知数ではないか。
インドは超大国として、より多くのことができるはず。経済力で中国に务るとはいえ、ソフトパワーに優れる。民主主義、法の支配と人権にコミットし、テロとの戦いでも最前線にいる。海外への人材流出も多い。多くの点で西側的価値を共有している。自信に満ち、文化も豊かだ。常任理事国になれば、圧政を弁護したり擁護したりしないだろう。中国やロシアと違って血にまみれていない。グローバルコモンズを防衛する絶好の位置にある。
ところがインドの潜在力は顕在化していない。安全保障政策を追求する文化を欠いているのだ。軍事予算は急拡大し、2020年には世界第4位となる見込みだが、インドの政治家や官僚は戦略を示さない。外交官の数は人口500万人のシンガポールと同じである。軍隊の指揮系統は政界や官界とはまったく別物で、国防省は慢性的に人材不足である。
国内の経済開発を優先するために、仕方がない面はある。賢明にも軍を政治から遠ざけてもいる。しかるにネルー主義の残滓がある。国内では社会主義路線を放棄したのに、外交では独立後66年もたつのに、西側は信用できないと非同盟主義を貫いている。
パキスタンや中国との限定的な戦闘はあっても、慎重に対応してきた。古い領土問題はあっても、火を点けることは稀だ。トラブルを求めないのがインドの良いところである。
隣国パキスタンは不安定で、核を持ち、テロもあり、軍も不穏である。しかるにインド政府の対応は定まらない。先方が電撃作戦を計画しているのに、貿易量増大による関係改善を望んでいる。カシミール問題を鎮め、パキスタン文民政府を支援すべきだ。先方は政権移行期だが、シン首相は次期指導者を訪問してこのプロセスを支援してはどうだろう。
軍拡を進め、インド洋をも望む中国は別種の脅威である。中国の意図は不明確だが、他の隣国と同様に神経をとがらせるべきだろう。インドはまたエネルギー供給にも脆弱だ。
インドは地域における自らの進路を形成すべきである。戦略を真剣に扱い、外交スタッフを3倍増し、政治家と協働できるプロの防衛相と統幕スタッフが必要だ。国営の防衛産業に外資と民間企業を参入させることも。さらに充実した海軍を擁し、世界で最も混雑する航路の海上安全の守護者となり、超大国としての責任を担う意思を示すべきだ。
8
何より時代遅れの非同盟思想を放棄すべきである。2005年の米印原子力協定以来、インドは西側を向いていた。国連で米国に同調し、イラン産原油を買わず、アフガンでNATOに協力した。ただしこっそりと。インドが転換を明示し、西側の同盟に参加すれば、地域にも世界にも良いだろう。アジアで民主主義を広げ、中国に国際基準を守らせられる。中国を敵に回すかもしれないが、自国の短期的利益を越えて考えるのが超大国である。
インドが超大国になるのは疑問の余地がない。問題はその気持ちがあるかどうかだ。
<From the Editor> 日銀のレジームチェンジ
昨日(4月4日)発表された黒田・日銀新体制による金融政策の大転換に対し、とりあえずの感想を書いておきます。
第1に「恰好が良い」。
3月20日の総裁就任後、最初の金融政策決定会合で市場の予測を大きく上回る「異次元の金融緩和策」を提示。まさに「白(川)から黒(田)へ」のレジームチェンジ。市場の期待値を上げて、なおかつサプライズを与えました。リーダーはまさにかくあるべし。この鮮やかな手際は、髭のないバーナンキか、それとも頭髪のあるバーナンキか。
第2に「思い切りが良い」。
戦力の逐次投入を避けるために、任期の冒頭からあらゆる手段を投入。しかも「2年以内に2%の物価上昇」を実現するために、「マネタリーベースを2年で倍増」「国債のデュレーションも2倍に」という目標と手段のわかりやすさ。市場とのコミュニケーション能力では「白よりも黒」に軍配が上がるでしょう。
第3に「段取りが良い」。
9人の政策委員会は今回の決定をほとんど満票で支持。白川総裁時代と同じ6人の審議委員も一部を除いて賛成に回り、黒田新総裁は委員会内のリーダーシップを確立した形。(TPP交渉参加もそうでしたが、安倍政権はこの手の段取りの良さが目立つ。民主党政権の手際の悪さにイライラした3年間の後では、これがまことに心地よく感じられます)。
ということで、「満額回答」と評するほかありません。とはいえ、もともとの金融緩和に対する懐疑派の一人としては、以下のような繰り言も付け加えたくなるところ。上で持ち上げた3点それぞれについての懸念です。
第1に、日銀総裁の任期は5年もある。今日の時点のカリスマを果たして向こう5年間続けられるのか。「始め良ければすべてよし」であればいいのだが。
第2に、リーマンショックや東日本大震災の経験から言うと、「いざというとき」の手段が残っていないことに対して不安が残る。
第3に、記者会見時のフリップまで用意していたのは、事前準備の行き過ぎかもしれない。つまり金融政策決定会合が形骸化(1回目から?)していたのではないか。
9
以上は「ないものねだり」というものでありましょう。ということで、このレジームチェンジが成功すること(この問題に関する過去の筆者の見解が間違っていたこと)を切に祈るものであります。
* 次号は4月19日(金)にお届けする予定です。
http://www.sojitz-soken.com/jp/send/tameike/pdf/tame516.pdf
BTMU FX Weekly Global Markets Research
1.今週のトピックス
(1)「量的・質的金融緩和」のドル円への影響と今後のポイント
量的緩和の効果
日本銀行は、3日から4日にかけ、黒田総裁の下では初となる政策委員
会・金融政策決定会合を開催。消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定
の目標を、2年程度を念頭に早期に実現するため、「量的・質的金融緩和
の導入」を決定した。既に既報の通り、「資産買入等の基金」を通常の国
債買い入れ枠に吸収するなど、大幅な制度変更を行った。また、買い入れ
る国債の残存年限も、全年限を対象とした。この結果、平均残存期間は、
現状の「3年弱」から「7年程度」へと大幅な延伸が図られる。そのほか、
ETF、REIT の買い入れも拡大するとされており、文字通り、量的、質的
な緩和の強化を行った。今回の決定内容は、レジームチェンジの程度や拡
大される金額のいずれも、市場の予想を大幅に超えていた。発表直前まで、
92 円台後半で推移していたドル円は、翌政策発表直後より急騰し、翌5
日に一時「97円台」を回復している。
こうしたなか、円安期待が高まっている。BTMU FX Monthly4月号(3
月31日発行)では、第2四半期(4〜6月)の予想レンジとして、「90〜
100円」を掲げているが、現時点では、以下の2点を理由に修整を見送る。
まず、当方の想定よりもやや早いタイミングで、米国の経済指標が強弱ま
ちまちとなりつつあり、為替市場におけるドル高の勢いが鈍っていること
だ。次に、強烈な金融緩和に対する「円安」の初期反応も、次第に落ち着
きを取り戻すと考えられることだ。
ところで、足もとでは株価の大幅な上昇を促すなど、今回の「量的・質
的金融緩和」は好意的に受け止められている。ドル円にとっても、強い下
支えとなることが期待されよう。ただ、より長い視点では、以下の3点に
留意が必要となってくるだろう。
まず、中央銀行の国債買い入れに一定の歯止めをかける目的の「銀行券
ルール」が、一時適用停止とされた点だ。昨秋時点で、既に日銀が保有す
る長期国債の残高が、銀行券残高を上回っており、形骸化していたともさ
れる。ただ、従来以上に、長期国債の買い入れが財政ファイナンスではな
いという、継続的な説明が必要となろう。
次に、いずれ日銀の資産劣化を警戒する声が、強まるかも知れない。今
回は、ETFやREITといったリスク資産の拡大を図るほか、保有国債の平
均残存年限も前述の通り、大幅な長期化を行うためだ。
2
さらに、そもそもマネタリーベースの拡大が、本当にデフレ払拭へと波
及するのか、注目される。日本では、2001年から2006年、世界で初めて
量的緩和を導入したが、その効果に対し、評価は割れている。例えば、黒
田総裁は、決定会合後の記者会見で、今回の緩和が実体経済へ波及する経
路として、@長めの金利や資産価格のプレミアムへの働きかけ、Aリスク
資産運用や貸し出しを増やすポートフォリオリバランス効果、B市場・経
済主体の期待の抜本的転換、という3つを挙げた。ただ、貸出の増加が期
待される、Aのポートフォリオリバランス効果に関しては、第1図の通り、
必ずしもそうした効果があったのか不明瞭だ。また、かねてより当方が指
摘の通り、マネタリーベースの拡大と「円安」との間に、必ずしも明確な
相関は認められない。時間の経過とともに、市場の注目はこうした点に移
っていくだろう。
もっとも、前回(2001年から2006年)の量的緩和期と比較すると、当
時、最大でも35兆円程度であった日銀の当座預金残高は、現在、既に47
兆円を数え、これを2 年後には90兆円へと拡大される見込みだ。前回の
量的緩和とは、規模が全く異なっている。このため、過去の経験則にあま
りとらわれるのも得策ではない。結局、重要となってくるのは、黒田総裁
が掲げた「市場・経済主体の期待の抜本的転換」を喚起することができる
かどうか。引き続き、黒田日銀の手腕にかかってこよう。
第1 図:民間銀行の資産構成の変化
(資料)内閣府「平成17年、経済財政白書」より作成
3
(2)「テール・リスク」ではなく「景気」次第のユーロ相場
リセッションが続くユーロ圏
主要国の企業景況感指数も軒並み低調
ECB は当面利下げの選択肢を意識した様子見
イタリア、そして、キプロスと、ユーロ情勢に対する関心事が「政治」
や「政策」に集中しているが、改めてユーロ圏の経済指標に目を向ければ、
ここ暫く著変なし、の状況にある。即ち、発表される指標が総じて不冴え
であることに何ら変わりなく、リセッションが続いていること、及び、長
期停滞からの脱却目処が立ち難い状況にあることが自明だ。GDP との相
関が高いことで知られるユーロ圏PMI総合指数は、14ヶ月連続で拡大縮
小の分岐点である50 を下回り推移中。4 日(木)発表の3 月分改定値は
46.5(2月分47.9)と、昨年10月以降の持ち直し傾向が頓挫したことを明
確に示している。
主要国の直近のビジネス信頼感指数を見ても、牽引役のドイツではifo
指数が予想外の低下となったほか、ドイツとの景況格差拡大が懸念される
フランスのINSEE サーベイはほぼ横ばいに、そして、これらに対し先行
性が高いとされるベルギー中銀の企業景況感指数は2009年9月以来の低
水準へ改めて落ち込んでいる。ECB は3 月7 日の前回理事会で四半期毎
のスタッフ見通し(下表)を発表し、成長率、インフレ見通しともに下方
修正しているが、その後発表された経済指標は、今週3日発表のユーロ圏
3 月分CPI(前年同月比+1.7%)も含め、慎重なスタッフ見通しを裏付け
るものばかり、となっている。
第1表:欧州中銀による3ヶ月毎の「スタッフ見通し」 2013年3月発表 (前年比、%)
2012年実績2013年2014年
見通しレンジ見通し中心値前回比修正幅見通しレンジ見通し中心値前回比修正幅
実質GDP成長率▲0.5 ▲0.9-▲0.1 ▲0.5 ▲0.2 0.0-2.0 1.0 ▲0.2
消費者物価上昇率(HICP) 2.5 1.2-2.0 1.6 u.c. 0.6-2.0 1.3 ▲0.1
(資料)ECBスタッフ・マクロ経済見通しより三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成
さて、こうした状況下で4 日(木)に開催された4 月のECB 定例理事
会は、大方の予想通り、据え置きの結果となった。しかし、注目されたド
ラギ総裁による定例会見の内容は、景気への配慮が目立つものに。インフ
レが抑制されている一方で、景気は下振れリスクに晒されていること、特
に中小企業向けの信用状況が依然厳しいことなどに言及し、「金融政策は、
必要とされる期間、緩和状態を続ける」方針が示された。キプロス問題に
ついては、特に目新しい発言はなし。いわゆるベイルイン(預金者を含む
債権者の債権放棄による救済)の形を取った今回措置を、キプロスに限定
的な対応だとするEU当局の見解を繰り返していた。
4
ユーロ相場は金利差との高い相関関係を継続中
「ユーロのことはユーロ相場にきけ」
当方では、ユーロ圏の経済情勢、特に、主要コア国であるフランスの停
滞や年後半の回復が展望できない全般の情勢に鑑みて、第2四半期中を目
処にECB が追加利下げに動く可能性は依然として高い、と見ている。し
かしその一方で、キプロスなどユーロ圏加盟の小国群から、ユーロ圏全体
を揺るがすような真性の危機が発生する可能性はさして高くないとも考
えている。ユーロ圏が現在抱える本質的且つ深刻な課題は、「テール・リ
スクの回避」云々よりも、やはり、「成長力の回復」にあろう。
そして、ユーロ相場が下落していることの本質も、実は景気要因にある、
と見て良さそうだ。第2図の通り、今年1月末以降のユーロドル相場の下
落は、米独金利差との高い相関関係を急回復しつつ進行してきた。一般的
にはイタリア政局やキプロス救済のみを材料にユーロが嫌気された印象
が強いが、実は、セオリー通りに金利差、即ち、対米景気格差に連れてい
るのが目下のユーロ相場、というわけだ。このことは同時に、イタリアや
キプロス情勢の流動化にも関わらず、ユーロ相場の下落が一定の穏当な
ペースを維持していることを、説明してもいる。
第2図:ユーロドル相場に対する感応度
かねて指摘(BTMU FX Monthly 4月号、BTMU Focus 2013年3月18日
号)の通り、南欧やキプロスがそれぞれ多くの火種を抱えていると同時に、
これらの問題を通じてEMUの構造的弱点が露呈され、市場心理が改めて
不安定化していることは事実であり、ユーロにとって大きな懸案材料だ。
しかし、その一方で、ユーロ加盟の特に小国群が抱える問題とそれが引き
起こすダメージがやや過大評価されている印象も否めない。国際政治学者
でユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏がキプロス問題を「で
っち上げの危機=phenomenon of manufactured crisis(ロイター通信社との
3月27日付けインタビュー/訳語もロイター通信社)」と呼んでいたが、
現在のユーロ情勢について懸念すべきは、テール・リスクを高める真性の
危機発生やその拡散と言うよりも、景気低迷が長期化していることそのも
のにある、と考えている。「市場のことは市場にきけ」と言う相場格言を
「ユーロのことはユーロ相場にきけ」と置換すれば、金利差=景気格差と
の相関関係を急回復しているユーロ相場の動向それ自体が、「テール・リ
スクよりも景気が大事」というシグナルを発しているように思われる。
シニアアナリスト(ロンドン駐在) 武田 紀久子
2013年4月4日15時脱稿
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(3) RBAの変化は僅か
今回もほとんど変わらない声明文
利下げ休止宣言の可能性
豪ドル高で緩和スタンス維持
豪州準備銀行(RBA)は2 日、金融政策を決める理事会を開催し、政
策金利を3.00%に据え置いた。昨年11月に25bpの利下げを実施して以来、
今回で四回連続の据え置きとなった(第1図)。前回は声明文の内容はお
ろか、文章もほとんど変化がない点を指摘したが、今回も世界的なリスク
認識の部分などで僅かに前向きな変化があったほかは、内容に変化はみら
れなかった。RBA はこれまでの利下げの効果が出てきており、現行の金
利水準は十分に景気刺激的と判断している一方、豪ドルが歴史的な高水準
を維持していることには引き続き不快感を持っているということだろう。
第1図: 豪州政策金利推移
(資料)豪州準備銀行より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成
今回、市場の注目点は「緩和余地あり」とする文言を外すかどうかにあ
った。前回3月会合までですでに三回連続の据え置きであって、実質的に
利下げ局面は終わっているとの解釈が広まっている。3 月に公表された2
月の豪雇用統計が市場予想を大幅に上回る内容であったこともあり、いよ
いよ「緩和余地」文言撤回による利下げ局面休止「宣言」が飛び出すとの
見方まであった。確かに、今後、豪州経済を取り巻く環境が一段と改善し
た場合に、見込みのない「利下げ余地」文言を残すことは任期が延びたス
ティーブンス総裁名で出される声明文の信頼性を損ねることになりかね
ない。よって次回以降、利下げ余地文言が外れる可能性もなくはない。
もっとも当方は、RBA にとって目下の悩みはインフレではなく豪ドル
高であり、さらなる上昇を招きかねない利下げ休止宣言は当面回避すると
みている。そもそも、「緩和余地あり」とする根拠はあくまで国内の需要
を支援するためとなっているものの、実際には、資源投資ブームのピーク
アウトが迫るなかで非資源セクターを苦しめる豪ドル高の抑制を主眼と
していると言えよう。ギラード首相は4日の講演で「ユーロ導入前のドイ
ツマルクのように、通貨高は必ずしも障害にならない」と発言し、豪ドル
高が先進国のなかで相対的に高い成長を続ける対価であるとの認識で、通
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貨高を容認する姿勢を示した。しかし、貿易加重平均レート(TWI)も直
近高値を伺う勢いとなった。2月のG20以来、為替と金融政策を結びつけ
ることはより難しくなったものの、日銀が「異次元」の金融緩和に踏み切
るなど、他国が緩和姿勢を続けている以上、RBA としても緩和スタンス
は維持するつもりなのではないか。
利下げ効果は出てきているが
さらに、小売売上高の増加などにみられるように、家計部門には利下げ
効果が出始めていると言えそうだが、企業部門の景況感はまだ改善の余地
がある(第4 図、第5 図)。よって、RBA が今すぐに「次の一手は利上
げ」と市場が連想するような政策判断を下すと、資源投資頼みの経済シス
テムから脱却を模索する流れの腰を折ることになりかねない。こうした背
景に鑑みれば、やはり目先、利下げ休止宣言に踏み切る理由は少ないと言
えよう。
アナリスト 井野 鉄兵
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(4) 霧の晴れない世界経済
市場はリスクオンで盛り上がっても実態経済の回復は弱い
財政の緊縮が経済活動の重し
低下しない不確実性指数
欧州経済が厳しい状況を脱せられそうにないことに議論の余地は乏し
い。しかし、ここへきて発表された米国のISM 製造業景気指数、中国の
製造業PMI 指数と軟化をみた。米国は財政の崖を越え、雇用増加も定着
してきたし、中国も回復しているという話題は、各市場にリスクオンの流
れをつくっていたが、ここへきて、やや雲行きが怪しい。景気後退が見込
まれるわけではないが、勢いがないのである。主要国で強い金融緩和政策
がとられているのに、スピードが出ないのはなぜか、悩ましい問題といえ
る。悩ましさの根源はふたつある。
第一は、財政の緊縮である。財政の緊縮は、経済活動を押し下げるとこ
ろがあるが、その影響を深刻に考えない見方があった。乗数が低いという
議論であるが、財政緊縮の乗数は、相応に大きく、経済活動を抑制してし
まっている。
@ 公的債務の対GDP比率が、一定限度(90%)を超えると、経済活
動の停滞が起きるが、その要因として、クラウデイングアウトが
注目された。政府債務の膨張が止まれば、民間に資金が流れ、そ
れが経済活動を押し上げるので、緊縮するほど緊縮の悪影響は小
さくなるはずという見解である。これに強烈な金融緩和が加わっ
ているわけだが、それでも、弱い回復しか得られてないのが、現
実である。
A 財政緊縮をして金利が下がれば、その国の通貨安となって景気が
刺激されるという道筋も勘案された。ところが、主要国どこでも
低金利となって、通貨の下落による景気刺激の効果も得られにく
くなっている。余談だが、通貨安誘導を近隣窮乏化というならば、
財政緊縮に熱心な国こそが、その問題を引き起こしているという
考えもできるはずである。
第二は、経済の先行きへの不確実性が大きいと感じられていることであ
る。第1 図は、米国、欧州、中国の経済政策不確実性指数
(注)
のGDP 規
模による加重平均の推移をみたものである。サブプライム問題からリーマ
ンショックに至るグローバル金融危機、欧州債務危機と続いて、不確実性
指数が上昇してきた。危機は、ここへきて収束をみているところがあるが、
不確実性指数の数字は下がっていないことになる。将来に自信が持てない
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と、投資も雇用もなかなか増やさず、それでは、人々も消費をしない。日
本の停滞をもたらした動きが、世界でも起きていることになる。
(注)経済政策不確実性指数は、Economic Policy Uncertainty によって作成され、
http://www.policyuncertainty.com に掲載されている。
第1図: 米欧中の経済政策不確実性
(資料)http://www.policyuncertainty.com/index.html
危機一段落でも、不確実性は下がらず
この不確実性が強いということの実態経済への影響力は、かなり、パワ
フルである。図は、世界景気の月次指標として注目されるオランダ経済政
策分析局による世界の貿易の集計の数字について、トレンドからの乖離を
みたものである。経済政策の不確実性が強いと、貿易が萎縮する傾向が見
える。それは、経済活動の拡大の重石になっている。
第2図: 経済政策不確実性と世界貿易
米中欧加重経済不確実性指数〈左目盛〉
貿易量のトレンドからの乖離〈右目盛〉
(資料)http://www.policyuncertainty.com/index.html、オランダ経済政策分析局のデータより三菱東京
UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成
不確実性が強いことの経済への悪影響はパワフル
経済の活性策は、先行きの経済への見通しを少しでも明瞭に描けるよう
な政策をとることにありそうである。財政は緊縮しなければならず、通常
型の金融緩和策は使い果たされた今日、将来への展望の明瞭化への働きか
けという財政負担が小さい対応に関心が向くのではないだろうか。今般の
期待への働きかけ重視の日本銀行の政策発動は、その嚆矢かも知れない。
シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之
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(5)「量的・質的金融緩和」直後のテクニカル分析
4日の日銀金融決定会合における政策変更を受けて、ドル円相場は本稿
執筆時点までに4 円以上上昇した(第1 図)。3 月12 日に直近の高値で
あった96.71円まで上昇したあとは調整気味となっていたが、大幅に反発
して97 円台を示現した。これまで当方は、テクニカル分析の観点では、
中長期的な上昇トレンド入りしたことを指摘してきたが、本稿では簡単に
足もとまでの状況確認と、目先のチャートポイントを確認する。
第1図:ドル円日足
まず、短期的には3月12日に96.71円を示現した後、4日まで3週間程
度の調整局面となっていた。今次中長期上昇局面入りした10 月以降、終
値ベースでは一度も割り込んでいなかった一目均衡表「基準線」を下回っ
たことで、次なる下値目処であった65 日線、一目均衡表「雲」上限(92
円台半ば)まで押される格好となっていた(第1表)。さらに、一目均衡
表では、3日時点で「基準線」と「転換線」がデッドクロスしていた。こ
れまでの上昇トレンドを支えていた「買い三役」の状態が崩れたうえに、
「遅行線」の日々線接近、日々線の「雲」接近と、一目均衡表上は一挙に
下落局面入り確認が近づいている局面だった。
ただ、結果的に中期的な移動平均線である65日線、「雲」上限はサポー
トとして機能した。「三役」が総崩れの可能性はひとまず回避され、両線
が今後のサポートとして期待できるものとなった。
久々の大陽線出現
実は調整拡大の可能性があった
3月12日の96.71円を一旦上抜けた今、上値目処は2009年8月7 日の
97.79 円となる。その上は同年6 月5 日の98.90 円、同年5 月7 日99.80
円、同年4 月6 日101.45 円と続く(第2 図)。フィボナッチ数列による
高値→安値の戻りの観点では、「2002 年高値→2011 年安値」の戻りでと
ると38.2%が98.19 円、これまでみてきた「2007 年高値→2011 年安値」
の戻りでみると半値が99.73円となる。また月足一目均衡表「雲上限」が
100.19 円である(第3 図)。90 円大台後半から100 円の世界はそれなり
に超えなければならないポイントが多いと言えよう。
アナリスト 井野 鉄兵
2.来週の相場見通し
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(1) ドル円:「ドル高」要因休止中も、ドル円じり高か
今週のドル円は94.28で寄り付いた。日銀の金融緩和強化への期待や実
需の円売り需要により、ドル円は下支えされた。ただ、3月下旬以降、予
想を下回る米経済指標が散見されたことから、ドル円の下値不安も意識さ
れ、しばらくは94 円挟みの取引が続いた。ただ、1 日に発表された米製
造業ISM景況指数は51.3となり、景気判断の分水嶺「50」こそ上回った
が、前回実績(54.2)や事前予想(54前後)を大幅に下回った。このため、
ドル売りが優勢となり、2 日にかけてドル円は92 円台半ばまでずるずる
と下落した(週間安値92.57)。その後は、予想を上回る米製造業受注(2
日)で93円台を回復、一方、予想を下回るADP雇用統計(3日)を受け、
米10 年債利回りも1.8%を割り込んで低下すると、ドル円も93 円台を割
り込むなど、日銀の金融政策決定会合にかけて、概ね93 円絡みで動意を
失った。
4日に発表された、日銀の新しい「量的・質的金融緩和」では、既報の
通り、枠組みの変更や買い入れる国債の増額の程度など、いずれの点にお
いても、市場予想を遥かに超える強烈な金融緩和策と受け止められた。こ
のため、ドル円は直後より急騰。翌5日には、3月12日の高値(96.71)
をあっさり上抜けし、2009年8月以来初めて、97円台を回復した(執筆
時点の高値は97.20)。米国では、週間新規失業保険申請件数が増加する
など、労働市場の改善ぶりに陰りもみられており、ユーロドルが1.29 台
を回復した通り、為替市場でのドルの値動きは寧ろ不冴であった。このほ
か、翌5日の株式と債券相場はいずれも上昇。日経平均が2008年8月以
来となる13 千円台を回復したほか、国債の利回りも長期債が軒並み急低
下。10年債が0.3%台前半まで、20年債が1%割れ目前まで、また30年債
も、1.1%を割り込むなど、いずれも過去最低を更新しており、利回り曲
線が平坦化する形となった。
ドル円の力強い上昇には本来、良好な米経済指標などに裏打ちされた米
債利回りの上昇を伴う「ドル高」と、日本の貿易赤字の定着や金融緩和強
化による円安期待といった「円安」という二つの要因が必要であるとして
きた。その際、既存の材料で到達し得る最高点として「100円到達」の可
能性が視界に入る、としてきた(3月15日号「100円到達の可能性も、定
着には時期尚早か」、3 月22日号「ドル円、100円到達の可能性(そのA))。
その点、米経済指標の強弱にまちまち感がみられており、米債利回りも
10年債でみて1.7%台半ばまで低下している。現在、ドル高の要因は、ほ
とんど効力を発揮しておらず、「休止中」だ。今週の92円台から97円台
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までのドル円急騰劇も、「円安」要因だけによるものと言えよう。それだ
け今回、打ち出された日銀の「量的・質的金融緩和」は、そもそも高まっ
ていた期待を更に上回り、円安期待に強く働きかけていると言える。
今回の金融緩和策を受けて、来週も株式や債券相場は落ち着きどころを
探る展開となろう。ドル円にしても、まだ完全に価格に織り込んだわけで
はないだろう。市場では、改めて円安期待が高まっている。かねて指摘の
通り、本邦の貿易赤字に示されている通り、実需の動向も、円売りが優勢
な地合いだ。このため、来週のドル円は前述の通り、「ドル高」要因休止
中ながらも、じり高に推移し、上値をうかがう展開が予想される。
もちろん、それには「ドル高」要因が「ドル安」要因へと変容し、ドル
円の足を引っ張らないことが必要であり、米経済の先行きに対する警戒が
必要だ。当方は、第2四半期後半より、ドル円の下押し要因として米経済
指標の下ブレを想定してきたが、足もとでは早くも、そうした動きがみら
れている。このため、3 月分の米雇用統計の結果が注目される。5 日の東
京時間正午時点では、非農業部門雇用者数の変化に関して、前月比プラス
20万人前後が予想の中心となっている。これを多少、下回る程度ならば、
ドル円への影響も限定されようが、10 万人台前半ともなれば、さすがに
ドル円の続伸を阻むだろう。もっとも、単月の雇用統計だけでそこまで地
合いが急変するとも考えにくい。押し目も限られるのではないか。
ドル円:95.00〜98.50
チーフアナリスト 内田 稔
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(2) ユーロ:下押しリスクを孕みながらも一旦安定化へ
今週のユーロドル相場は下げ一服となったものの、不冴えな経済指標の
発表もあって、上値の重い展開が続いた。イースター休暇に絡みやや薄商
いの中、日本、英国、そして、欧州中央銀行の金融政策発表を前にした手
控え感も強かった。2 日に発表された2 月のユーロ圏失業率は12.0%と、
1 月の失業率が速報値の11.9%から12.0%に修正されたため、前月からは
横ばいではあるものの、過去最悪を記録。今週は3 月分ユーロ圏PMI 改
定値も発表され、PMI 総合指数は46.5と速報値から変わらずだったが、2
ヶ月連続での悪化となった。牽引役として期待されるドイツでも、同PMI
総合指数が50.6(速報値51.0、2月分53.3)と下方修正され、前月から大
幅に低下。ユーロ圏全体の回復期待を後退させる失望の結果となっている。
4 日のECB 定例理事会では、大方の市場予想通り、政策金利が0.75%
に据え置かれた。理事会後の会見でドラギ総裁は、2013 年下半期には回
復に向かうとしていたユーロ圏経済は、下振れリスクが大きいと発言し、
金融緩和継続の方針を明示している。3日に発表されたユーロ圏消費者物
価指数(速報値)は、前年比1.7%上昇と2010年8月以来の低水準を記録。
同会見でドラギ総裁も確認した通り、インフレ率は概して安定しており、
市場の追加利下げ期待も継続している。
過去2 週間、市場を揺さぶってきたキプロス情勢だが、IMF は3 日、
同国支援に関して基本合意に達している。南欧諸国の国債相場への悪影響
も、これまでのところ、概ね限定的であり、キプロス・ショックにもひと
まず一巡感が見受けられる。「次元の異なる金融緩和」に踏み切った日銀
の判断を受けて、グローバルな流動性環境も緩むことが期待され、下方リ
スクを孕みながらも、来週のユーロ相場は、やや持ち直し、安定化を見込
む。
ユーロドル:1.2650〜1.3050 ユーロ円:122.00〜128.00
Currency Analyst, Lee Hardman
2013年4月4日ロンドン時間15時脱稿
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(3) 豪ドル:豪州も雇用統計に注目
今週は、イースター休暇明けの2 日に豪州準備銀行(RBA)が金融政
策の据え置きを決めた(トピックスご参照)。一部観測のあった緩和余地
文言の削除も見送られたものの、豪ドル相場の反応は限られた。
対ドルでは、最大の貿易相手国である中国の経済指標が強く、前週に続
いて1.05台を試す展開となったが、またも同水準目前で反落。4日には一
時1.04を割り込んでいる。4日に発表された2月の小売売上高が前月比+
1.3%と予想を上回る強い内容であったにも関わらず、豪ドルは弱含んだ
格好だ。このまま1.04台で引けとなると、二週連続で1.05に届かないこ
ととなる。「ダブルトップ」の形状であり、数週間単位で下落基調となる
可能性をみておく必要があろう。
他方、対円では日銀の「量的・質的金融緩和」導入を受けて、97 円絡
みから2008 年8 月以来の100 円に到達、5 日は本稿執筆時点までで一時
101円台まで上伸した。なお、対ドルのほか対ユーロでもやや弱含んでい
るが、対円の上昇に連れるかたちで、前週に28 年ぶりの高値を更新して
いた貿易加重平均レート(TWI)は、ふたたび高値更新を伺う水準まで上
昇している。
来週は11日に3月分の豪雇用統計が発表される。2月分は雇用者数7.5
万人増と、およそ13 年ぶりの増加幅となっていた。統計サンプル入れ替
えの影響も取り沙汰されており、RBA も経過を見守るというスタンスと
なっている。このまま雇用情勢が強いとの判断に至れば、RBA は見通し
を上方修正する可能性があり、そうなると利下げはますます遠のき、豪ド
ル押し上げ要因となる。ただ、本稿執筆時点の市場予想は先月の反動も見
越してか0.75 万人の減少が中央値となっている。予想通りのマイナスと
なれば、素直に豪ドルの下げ要因として作用しよう。
対ドル:1.0300〜1.0500 対円:98.00〜102.00
アナリスト 井野 鉄兵
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(4) 人民元:人民元は政治イベントを控え最高値更新を予想
今週の中国人民元は連日上昇し、2 日には2005 年の事実上切り上げ実
施以来の高値となる6.1986 を示現した。中国人民銀行が設定する対ドル
基準値も6.2586 と過去最高値を更新している。3 日には基準値が6.2609
へ設定されたことを受けて6.20台へ軟化したが、基準値比0.9%を超える
上昇となるなど人民元需要の強さが窺えた。4、5日は清明節により休場。
再開は8日となる。中国人民銀行が基準値を引き上げた背景には人民元相
場の流動性の低下も挙げられよう。昨年末はドル買い人民元売りの担い手
が乏しいなか、人民元の買い気配が一日の変動幅上限(+1%)に張り付い
たまま、取引が成立しにくい状態が続いていた。1月後半以降、変動許容
幅の上限で膠着する状況は解消されたものの現在でも上限付近での小動
きが続いており、中国人民銀行はこうした状況を打開するべく基準値の引
き上げに動いたとみられる。
1 日に発表された3 月の製造業PMI は新規受注、新規輸出受注が牽引
し、50.9 と前月の50.1 から改善した。同日発表されたHSBC 製造業PMI
改定値も51.6(前月:50.4)となり、製造業活動が改善傾向にあることが
示された。一方、足もとで問題視されている不動産価格の上昇に関しては、
3 月30、31 日に北京、上海、重慶、天津などの直轄市が住宅購入に関す
る地方版細則を打ち出している。国務院は、各直轄市、計画単列市、チベッ
ト・ラサを除く省都に対して、第1四半期中に年間の新築住宅価格抑制目
標や細則等を制定することを求めている。中央・地方が政策を連続して打
ち出すことで不動産価格を抑制する構えだ。
4月中旬にはケリー米国務長官の訪中や、米財務省が半期に一度議会へ
提出する為替報告書の公表も控えている。過去数年の為替報告書発表前の
人民元相場動向を見ると、2012 年5 月時は欧州債務問題への懸念が強ま
るなか下落しているものの、概ね1 ヶ月前から2 週間前に約0.5%人民元
高に動いている。また、2012 年9 月にクリントン前国務長官が訪中した
際にも人民元の上昇がみられたことから、当面人民元相場は基準値の高め
誘導のもと、堅調な推移が続きそうだ。来週の人民元相場は堅調に推移し
最高値を更新するとみている。
ドル人民元:6.1750〜6.2200 人民元円:15.30〜15.80
アナリスト 関谷 菜摘
http://www.bk.mufg.jp/report/bfrw2013/
内外経済の中長期展望 2013-2030年度
三菱総合研究所
2013.4.5
プレスリリース
株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:大森京太、東京都千代田区永田町二丁目10番3号)は、2013-2030年度の内外経済の中長期展望に関するレポートをまとめました。
要 旨
【日本経済】
わが国では、人口減少や経済の新陳代謝の低さが中長期的な活力の阻害要因として指摘されて久しいが、必要な改革や調整が先送りされてきた。その結果、企業や家計の成長期待が低下し、投資や消費活動の停滞を招いた面がある。現状の延長では、中長期の持続可能な成長力(潜在成長率)は今後も低下傾向を辿ることが予想される。
しかし、今後の政府の政策実現力や企業・国民の取り組み次第で成長力を底上げし、一人当たりの所得水準を引き上げる余地はある。折しも2012年末の政権交代後、新政権の経済政に対する期待から、金融市場では円安・株高が進んだほか、企業や家計のマインドも好転している。震災復興を確実に進めるとともに、次の5つが実行に移されれば、“前向きのサイクル”が回転し始め、期待が実体へ変化し、ひいては持続的成長につながる可能性は高い(1%程度の成長力引き上げが可能)。
量と質の両面からの労働力の底上げ:女性、高齢者層の労働参加率の引き上げ余地は大きい。また、若年層の就労支援やグローバル人材育成に向けた教育改革などを通じ、「未来への投資」を増やすべきである。
新陳代謝の向上による生産性上昇:規制・制度改革により、資本や労働の新規産業や成長市場へのシフトを促し、イノベーション創出や生産性向上につなげていく必要がある。
国内市場の構造変化への適応:潜在的な供給力の向上に呼応するかたちで需要の拡大を図るには、市場の構造変化に対する企業努力が望まれる。ニーズの変化に適応した財やサービスの提供が進めば、需要が喚起されるとともに、国民の「生活の質」も改善する。
国際競争環境の整備とグローバル需要の取り込み:中間層拡大や都市化が進むアジア市場でも、近い将来、高齢化、環境、食料・エネルギー制約が大きな課題となることが予見される。先行する日本への期待は大きいが、それを発揮するためには、企業の努力を後押しする国際競争環境の整備も欠かせない。
財政再建と世代間格差の是正:成長力引き上げと需要拡大という両輪を回し続けるには、社会保障費の抑制による財政健全化が不可避である。若い世代が将来への自信を取り戻すためにも、社会保障改革を通じ、世代間格差を是正していく取り組みが求められる。
【海外経済】
米国は、住宅バブル崩壊後の構造調整に進展がみられ、安定成長を続ける見通しが高まった。シェール革命が経済・外交面で大きな強みとなり、今後のグローバル・パワーバランスにも影響を及ぼそう。一方、欧州は債務危機の影響から、当面低成長を余儀なくされるが、14年以降、緩慢な回復を見込む。ユーロ圏の統合深化の動きは続くであろう。
新興国では、中間層の拡大や都市化の進展を背景に、経済・市場規模の拡大が予想される。アジア各国、とりわけ中国が構造問題やリスクを克服して安定成長を続け、かつアジア太平洋地域の経済連携を進めることができれば、アジアに巨大な経済圏が誕生しよう。ただし、いずれの国についても、構造問題を克服できず、「中進国の罠」に陥る可能性には留意が必要だ。
予測の概要
【日本経済の中長期予測】
中長期的に持続可能な成長力を示す潜在成長率は、30年度に+0.4%程度へ低下の見込み。実質GDP成長率(年度平均)は、 11-15年度+1.0%、16-20年度+0.9%、21-25年度+0.6%、26-30年度+0.6%と予測。
名目GDP成長率は、11-15年度+0.6%、16-20年度+1.2%、21-25年度+1.2%、26-30年度+1.6%と予測。
一人当たり実質GDP成長率は、11-15年度+1.2%、16-20年度+1.3%、21-25年度+1.2%、26-30年度+1.2%と予測。
【成長シナリオの中長期予測】
労働力の強化や規制改革などの成長戦略を実行した場合、12-30年度平均の潜在GDP成長率は+1.4%と1%程度上昇するとの結果が得られた。
成長シナリオの下での一人当たりの潜在GDP成長率は+2.0%程度となろう。
【財政の中長期予測】
「14年4月に5%→8%、15年10月に8%→10%」の消費税率引き上げを前提にしても、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度の黒字化は見込めない。また、債務残高(国・地方合計)は、30年度に対GDP比率で280%(1,700兆円)程度に達する見込み。
消費税のみで債務残高を安定させる場合には、20%程度までの増税が必要となる。
長期金利の前提は、30年にかけて2%台半ばと緩やかな上昇を想定。ただし、想定対比+1%上昇するだけでも、30年時点の国債利払い費は約15兆円増加することになり、財政赤字や債務残高の見通しは金利次第で大きく変動する。
【海外経済の中長期予測】
11-15年:米国はバランスシート調整進捗やシェール革命により回復テンポを高めると予想。欧州は14年頃から持ち直しに向かうが、緊縮財政により低成長に止まる見込み。新興国経済は堅調な成長持続を予想。実質GDP成長率は、米国+2.3%、欧州(EU27カ国)+0.7%、中国+8.1%、インド+5.9%と予測。
16-20年:欧米経済は回復を続け、11-15年対比やや高めの成長を見込む。新興国では中国の成長率が低下し、インドの成長率との逆転を予想。実質GDP成長率は、米国+2.4%、欧州+1.3%、中国+6.7%、インド+7.8%と予測
21-25年:欧米および中国は労働力人口の鈍化・減少により、成長率は緩やかに低下。米国+2.2%、欧州+1.2%、中国+5.9%、インド+6.4%と予測。
26-30年:中国の総人口がピークアウトし、同国成長率は4%台へ。米国+2.0%、欧州+1.1%、中国+4.5%、インド+5.4%と予測。
http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2013/2045562_2312.html
「漂流」のすすめ 東レ経営研究所 増田 貴司
地域の産業振興策として、従来は「効率的な生産拠点の整備」を目指すこと
が多かったが、今後は「環境変化に柔軟に対応できる産業集積の構築」が重要テーマとな
ろう。そのためには、特定の企業や業種に依存せず、地域の特性や資源を組み合わせて独
自の強みを築くこと、多様なネットワークを形成し、業際化や連繋を促進すること、など
の方策が考えられる。
http://www.tbr.co.jp/pdf/column/clm_a137.pdf
Weekly Market Focus(2013年4月5日)〜異次元緩和が消化され、本邦長期金利は居所を探る展開を予想
掲載日:2013-04-06 発表元:三菱東京UFJ銀行
http://www.bk.mufg.jp/report/mksc2013/market_2013_14.pdf
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