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生活保護費詐取、2億円を全職員穴埋め?「連帯責任」に異論も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090208-00000055-yom-soci
北海道滝川市の生活保護費詐取事件が立件されてから2月で丸1年が経過した。捜査は終結したが、だまし取られた2億4000万円もの公金は戻らず、市は全職員の給与を削減し、損害の補填(ほてん)に充てる構えだ。
市民感情に配慮した「連帯責任方式」には異論も多いが、労使交渉の現場では「歩み寄るしかない」との声も出始めている。
◆市長ら給与減額◆
厚生労働省は、だまし取られた生活保護費のうち、国庫負担分1億8000万円を年度内に返還するよう求めている。滝川市の田村弘市長は、財政調整基金を取り崩し、返還に応じる方針だ。さらに、市が被った全損害額について、「これだけ世間を騒がせたのだから組織で対応するほかない。そうしないと市民が納得しない」と述べ、全職員で補填していく考えを示した。
すでに昨年から市長、副市長の給与が減額されている。しかし、2011年4月の任期末まで減額しても、約2億円が不足する。これを病院職員を含む全職員約650人の給与削減で補おうというのだ。
◆道は幹部が返済◆
自治体職員の給与の扱いについては、各自治体が定める職員給与条例にゆだねられている。1995年に発覚した道の公金不正支出問題では、道が歴代幹部職員の管理職手当から損害分を返済していく方式をとった。しかし、負担が全職員に及ぶのは、極めて異例だ。
広島県三次市では03年、職員のミスで公共料金の滞納分1635万円が時効になり、一時は全職員の給与削減で補填する方針が打ち出された。しかし、職員組合は「全職員が責任を取る根拠が不明確だ」と反発。給与条例改正案は市議会を通らなかった。当時の担当者は「特定職員の不祥事とまでは言えないため、全員で責任を負うべきだと考えた。しかし、職員にも議会にも理解されなかった」と振り返る。
◆労組「市は被害者」◆
滝川市の職員労働組合は全職員の給与削減に強く反発し、今のところ給与条例改正案への同意を拒否し続けている。金子和史執行委員長は、「市は事件の被害者であり、職員が補填する理由はない」との立場だ。
自治労北海道本部の幹部は、「業務上生じた損害を、職員の給与で補填することがパターン化しかねない。行政上の責任の所在をあいまいにすることが恒常化してしまわないか」と他自治体への影響を懸念する。
青山学院大の鈴木豊教授(公監査論)も、「直接関係ない職員にまで負担させるのは、責任の分散化で、職員の無責任体質を強めることになる」と職員が連帯責任をとるやり方に否定的だ。
◆前例となる可能性◆
滝川市の労使交渉は、ここへ来て組合側に軟化の兆しが出てきた。一部職員の間に、「いつまでも反対していると市民の反感を招く」との懸念が強まっているためだ。「被害金の補填ではなく、将来の収支不足に備えて職員が協力するということであれば、話し合う余地がある」と妥協点を探る動きもある。
職員のミスや不祥事による自治体の損害は、各地に存在する。滝川の問題は損害が巨額だけに、どのような決着を見るかは、他の自治体にとっても大きな前例となりそうだ。(岩見沢支局 星野誠)
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◆生活保護費詐取事件◆
生活保護を受けていた元暴力団員と妻が、札幌市の病院に介護タクシーで通院したように装い約2億4000万円の通院タクシー代などをだまし取った事件。元暴力団員は懲役13年、妻は懲役8年の実刑が確定した。市はチェック体制の甘さが、被害拡大の一因となったことを認めている。