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Re: ユーラシアの地政學 ― ユーラシアの課題
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投稿者 石工の都仙臺市 日時 2008 年 11 月 30 日 02:57:54: Gsx84HOp6wiqQ
 

(回答先: ユーラシアの地政學 ― ユーラシアの現實 投稿者 石工の都仙臺市 日時 2008 年 11 月 30 日 02:56:07)

 
 
 
 
ユーラシアの課題

米支關係がとげとげしくなれば、日米關係をも緊張させ、おそらくは日本國内で混亂が起き、さうなれぼ、亞細亞の安定其のものが危機にさらされる

 他の追隨を許さない世界の超大國としての米國の地位が、如何なる國であつても、單獨の國家によつて脅かされるやうな事態は今後一世代程度は起きないだらう。グローバルな政治的影響力を構成するパワーの四大要因は軍事、經濟、技術、文化だが、此れらの要因をめぐつて米國に匹敵する國家が登場する可能性は低い。米國が完全に孤立主義に成る場合は別としても、米國のリーダーシツプに代はる現實的選擇肢とは國際的無秩序にほかならない。クリントン大統領は、米國は世界にとつて「必要缺くべからざる」國家であると宣言したが、まさに其のとほりなのである。
 グローバル世界の擁護者としての米國の役割は、今後世界各地での緊張、混亂、そして間歇泉のやうに湧きでる紛爭によつて試される事に成るだらう。歐羅巴では、統合と擴大に嚮けた潮流が弱まりつつある事を示す兆候が見受けられ、然もナシヨナリズムが再び俳徊しはじめる危險もある。此の地域の經濟的に尤も成功してゐる諸國に於てさへ、大量失業が深刻な間題と成り、佛蘭西や獨逸の政治を過激な方嚮へと嚮かはせかねない外國人嫌ひの排外主義感情を臺頭させつつある。歐羅巴統合と云ふ大構想が實現するとすれば、其れは米國が歐羅巴を勵まし、ときに壓力をかけた場合だけであらう。
 露西亞の今後は更に不透明で、前嚮きの進化を遂げる見込みと成ると更に怪しげである。したがつて米國は、歐羅巴協調と云ふより大きな枠組みのなかに露西亞を組み込めるやうな政治的道筋を描き出す必要があり、一方で近隣の新生諸國の獨立を育んでいかなければならない。だが、ウクライナ或はウズベキスタンが獨立を維持していけるかどうかは豫斷を許さない状況にあり、とくに米國が彼らによる國家基盤を強化する試みを支援しない場合はさうした状況が續くだらう。
 支那との大いなる和解の可能性にしても、臺灣をめぐる危機、支那の國内政治力學、或はたんに米支關係が下方スパイラルの渦に卷き込まれていくことで、大きく損なはれる事に成るだらう。米支關係がとげとげしくなれば、日米關係をも緊張させ、おそらくは日本國内で混亂が起きる事に成る。さうなれば亞細亞の安定其のものが危機にさらされ、さうした事態の推移は、南亞細亞の安定にとつてきはめて重要な印度のやうな國の國家姿勢や凝集力にも、影響を與へるかもしれない。
 いつ何が起きるかわからない状態にあるユーラシアでの差し迫つた課題は、如何なる單獨の國家、或は國家聯合も、米國を放逐したり、或は、其の決定的な役割を損ねるやうな能力をもたないやうにする事である。然し乍ら、安定した全大陸的バランスの促進自體を目標と看做すべきではなく、其れはあくまでも、ユーラシアの主要な地域との純粹な戰略的パートナーシツプを築き上げるための手段と考へるべきだ。穩やかな覇權をバツクに、米國は他の諸國が現状に挑戰する意欲をなくすやうにしむけなければならないが、其のためには、行動を起こせないほどに其の代償を高くすると同時に、ユーラシア内で地域的野心を抱く國家の正當な利益に就いては、此れを尊重していかなくてはならない。
 より具體的には、中期的な目標のためには、より統合性を高め、政治的にうまく定義された歐羅巴、地域的に秀でた力をもつ支那、ポスト帝國主義的(詰り民主的で多元主義的な)歐羅巴志嚮の露西亞、そしてより民主的な印度との眞のパートナーシツプを育んでいく必要がある。尤も、露西亞の今後の役割を規定し、ユーラシア中央での勢力均衡を形成出來るかどうかは、ひとへに米國が歐羅巴、そして支那との廣汎な戰略的關係をうまく育めるか否かにかかつてゐる。
 
 
 
 
 

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