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(回答先: Re: ユーラシアの地政學 ― ユーラシアの課題 投稿者 石工の都仙臺市 日時 2008 年 11 月 30 日 02:57:54)
「ユーロ・アトランテイツク」形成の條件
佛蘭西と獨逸なしでは、歐羅巴は成立しえず、
また歐羅巴なくして、全ユーラシア的協調システム
の構築は決して實現しない
米國にとつて、歐羅巴はユーラシアに於る地政學的據點であり、民主的な歐羅巴の存在は、米國にとつてきはめて大きな重要性をもつ。米國と日本とのつながりとは違つて、NATO(北大西洋條約機構)は、米國の政治的影響力を此の地域に深く滲透させるとともに、ユーラシアに於る軍事パワーとしてしつかりと根づいてゐる。歐羅巴の同盟諸國が依然として米國による保護に依存してゐる以上、歐羅巴の政治的價値が擴大すれば、其れはただちに米國の影響力の擴大を意味する。逆に云へば、米國がユーラシアに於て其の影響力とパワーを行使する能力は、大西洋を越えた緊密な絆に左右されるとも云へる。
地理的に(民主的)歐羅巴が擴大し、NATOが擴大する事は、米國の短期的、長期的利益の雙方に合致する。地理的に擴大した歐羅巴は米國の影響力の幅を擴大させるだらうし、また、其れによつて、たとへば中東政策のやうな、地政學的に重要な案件をめぐつて米國の立場に挑戰するほどに歐羅巴を政治的に團結させる事もないだらう。また、グローバルな協調システムに露西亞を取り込んで同質化させるには、まづ歐羅巴が何であるかを政治的に定義する必要がある。
より統合された歐羅巴のための歐羅巴をつくり上げるのはあくまで歐羅巴人の仕事であり、米國に出來る事ではない。此れは、歐羅巴人、わけても佛蘭西人と獨逸人の仕事である。勿論米國は、統合性のより高い歐羅巴の誕生を邪魔だてする事も出來るが、其れは、結局はユーラシアの安定と米國の利益の雙方を損なふことに成るだらう。詰るところ、歐羅巴が統合性をより高めない事には、今後現状から後退して再び分裂する可能性が高いのだ。ワシントンは、政治的にカをもち、米國とのつながりを今後も維持し、民主的な國際システムの視野を廣げるやうな歐羅巴構築のために、獨逸、佛蘭西と緊密に協力していかなければならない。佛蘭西と獨逸のいづれかを選ぶことは最早爭點とはなりえない。此の二ヵ國なしでは、歐羅巴は成立しえず、また歐羅巴なくして、全ユーラシア的協調システムの構築は決して實現しないからだ。
現實的には、此れらのすべてを實現するには、NATOに於るリーダーシツプの分有、アフリカや中東に於る歐羅巴の役割をめぐる佛蘭西の利害への理解、そして、結果的にEUが政治的、經濟的により自己主張を強める事に成るとしても、其の東方擴大を米國は今後も支持しつづけなければならない。また、歐米諸國の多くの指導者たちが既に口にしてゐる環大西洋自由貿易圈の導入は、EUと米國の間の經濟的なライバル關係の激化を緩和する働きをするだらう。また、EUの段階的な成功によつて、此の數世紀來の歐羅巴内部での敵對感情を葬り去る事が出來るのなら、たとへ歐羅巴に於る仲介者としての米國の役割が損なはれたとしても、其の價値は十分にある。
更にNATOとEUの擴大は、ともすれば意氣銷沈氣味の歐羅巴人のより大きな使命感を蘇らせる一方で、米國、歐羅巴雙方の利益のために、冷戰の終結が成功裡に成し遂げられた結果得られた民主主義の擴大と云ふ成果を更に堅固にするだらうし、此れは米國にも歐羅巴にとつても好ましい事である。此の努力を左右するほど重要なのが、米國と歐羅巴の長期的な關係である。新生歐羅巴はいまも形成途上にあるが、歐羅巴が今後も「ユーロ・アトランテイツク」(米國を意識した大西洋志嚮の歐羅巴)の一部でありつづけるためには、NATOの擴大が不可缺である。
當然、NATOとEUは擴大へ嚮けた次なるステージへと愼重に歩を進めるべきである。米國と西歐羅巴諸國が此の懸案に關與しつづけると云ふ前提での話だが、今後のスケジユールは億測ではあるが現實的に次のやうなものが考へられる。一九九九年までに中央歐羅巴の三ヵ國が第一群としてNATOへの加盟を果たす。尤も、此の三ヵ國のEUへの加盟は二〇〇二年、或は二〇〇三年まではおそらくないだらうと考へられる。またEUは二〇〇三年までに、バルト三國との間で加盟交渉を始めてゐるだらうし、NATOもまた、ルーマニア、ブルガリアとともにバルト諸國を、二〇〇五年までに加盟させる事を視野に入れる事に成らう。そしてウクライナに就いても、可也の國内改革を果たし自らを中央歐羅巴の一部と自覺した場合には、二〇〇五年から二〇一〇年の間に其のEU、NATO加盟を目的とする交渉も開始すべきだらう。
現在關係諸國が既にNATO擴大に嚮けて踏み出してゐるだけに、NATO擴大に失敗すれば、歐羅巴を擴大し、中央歐羅巴地域を民主化すると云ふ概念其のものが破綻してしまふことに成る。もつと惡いのは、さうなればいまは休眠状態にある露西亞の、中央歐羅巴に對する政治的野望に火をつけてしまふ可能性がある事だ。更に、露西亞の政治エリートたちが、歐羅巴に於る米國の政治的・軍事的プレゼンスを願ふ歐羅巴人と立場を同じくしてゐると看做す證據も殆どない。したがつて、露西亞との協調的關係を育むのは望ましいとしても、米國としては自らの世界的な優先課題を彼らに明確に傳へる事が重要である。若し二者擇一の選擇肢が、より大きな歐羅巴大西洋システムと、露西亞との更に友好的な關係のいづれかである場合には、當然、前者が優先されなければならない。
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