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(回答先: ユーラシアの地政學 ― ユーラシア南部安定の要 投稿者 石工の都仙臺市 日時 2008 年 11 月 30 日 03:03:21)
支那の役割
たとへば、支那のエネルギー需要の高まりは、石油産出
地域への自由なアクセス、同地域の政治的安定確保とい
う點で支那と米國が利益を共有する事を意味する
米支間の戰略的相互理解を深め、新たに姿を現はしつつある日本の役割をより明確に定義しないかぎり、ユーラシアに於る安定した力の均衡は期待すべくもない。だが、此のことは米國に二つのジレンマを突きつけてゐる。支配的なカをもつ地域パワーとしての支那を如何に現實的に定義づけ、米國にとつて受け入れ可能な範圍を見極めるとともに、實質的に米國の保護國である日本側の不安を如何に管理するか、と云ふ問題である。
政策は注意深い戰略的計算を基盤とすべきだが、臺頭する支那パワーと日本經濟の影響力の増大への過大な懸念を愼めば、さうした政策に更に現實主義を吹き込める。そして其の目的は、支那のパワーを建設的な地域的協調枠組みのなかに收め、日本の活力をより廣汎な國際的パートナーシツプの方嚮に嚮かはせる事でなければならない。
米國と和解する事が支那の利益に成る事を認識させるための第一ステツプは、北京政府と踏み込んだ戰略的對話を行なふことである。此の對話は、北東亞細亞および中央亞細亞をめぐつて米支が共有する懸念を叛映するものでなけれぱならない。また、「一つの支那政策」へのコミツトメントにまつはる暖味さをワシントンが取り除くことは當然の行爲であり、とくに支那が香港を完全に同化した後に、臺灣が問題の種と成らないやう配慮する必要がある。同樣に、大支那でも政治面での多樣性を擁護出來る事を示すのは、支那にとつても利益と成るだらう。
状況を前進させるには、米支の戰略的對話を持續させ、かつ其の内容が眞劍なものでなければならない。かうしたコミユニケーシヨンを通じて、臺灣や人權間題のやうな對立含みの懸案でさへも.相手を説得する方嚮で對處出來るやうに成るだらう。支那人に對して、彼らの國内自由化が單なる國内問題ではないと明確に語りかける必要がある。と云ふのも、臺灣を平和的に誘ひ出せるのは、民主化をめざし、繁榮する支那だけだからだ。強制的な統合の試みは米支關係を惡化させ、海外からの投資を呼び込む支那の魅力を損なふことに成る。さうなれば、地域的な優位やグローバルな地位を望む支那の立場は大きく損なはれるだらう。支那は地域的に支配的な影響力をもつ國家に成りつつあるが、當面の間、グローバル國家に成る事はないだらう。支那が次なるグローバル・パワーに成るのではないかと云ふ一般認識は、支那の外ではパラノイア的な反應をよび、一方支那内部では誇大妄想的病理を生み出してゐる。だが實際には、支那が此の先二〇年間、爆發的な成長を維持出來るかどうかは、まつ度く先の讀めない状態にある。事實、現在のぺースでの成長を今後も長期的に持續するには、國家のリーダーシツプ、政治的平穩、社會的規律、高い貯蓄率、大規模な外資の流入、地域的な安定のすべてがうまく推移する必要があるが、かうした要因のすべてを長期的に持續出來る可能性は低い。
此れは大きな假説だが、たとへ政治的混亂を囘避し、今後四半世紀にわたつて經濟成長を持續できたとしても、支那は依然として相對的には貧しい國のままだらう。GDPが現在の三倍に成つても一人當たり所得でみれば、支那は依然他の多くの諸國に遲れをとつてゐるだらうし、人口の大半は貧しいままだらう。また、消費財は云ふまでもなく、電話、車、コンピユータなどへの支那市民のアクセスは、低い儘にとどまつてゐると考へられる。
とは云へ支那の指導者たちは、經濟成長によつてGDPの可也の部分を、戰略核兵器の増強を含む軍事力の近代化のために配分出來るやうに成るため、今後二〇年のうちに支那は、軍事的なグローバル・パワーとしての資質を備へるやうに成つてゐるかもしれない。然し、此の軍事面での努力が行きすぎたものと成れば、軍擴競爭のつけがソビエト經濟に重くのしかかつたやうに、支那の長期的な經濟成長にも惡影響を與へるかもしれない。また、支那が大規模な軍擴路線を採用すれば、其れに對抗しやうとする日本側の反應を招くだらう。いづれにせよ、核戰力を別とすれば、支那が自らの地域を越えて其の軍事的影響力を行使する能力をもつことは當面ありえないだらう。
とは云へ、大支那が地域的に支配的なパワーと成りつつある事は、此れとは別間題である。事實上の支那の地域的勢力圈が、今後ユーラシア秩序の一部を擔ふやうに成る可能性は高い。だがかうした勢力圈を、かつてのソビエトにとつての東歐圈のやうな、排他的な政治的支配地域と混同してはならない。其れは、より弱體な國家が、支那と云ふ地域的に支配的な國家の利益、見解、豫想される反應をめぐつて特別の配慮と敬意を拂ふやうな地域と成るだらう。瑞的に云へば、支那の勢力圈とは、其の地域内の諸政府がなにかを考へる際に、眞つ先に「此れを支那政府はどうに考へてゐるのだらうか」と自問する地域と定義出來るかもしれない。
臺灣や香港は云ふまでもなく、シンガポール、バンコク、クアラルンプール、マニラ、ジヤカルタの財力に富む華僑たちは、大支那を政治的に支持するだらう。『亞洲週間』によれば、華僑が東南亞細亞で所有する企業の上位五〇〇社を合はせた資産は五四〇〇億ドルにも達し、既に東南亞細亞諸國は、支那の政治的敏感さや經濟利益に配慮したはうが無難だと考へはじめてゐる。また支那が、眞の政治的・經濟的パワーに成れば、極東露西亞地域にももつとあからさまに影響力を行使するとともに、朝鮮半島統一の後見人の役割を擔ふことに成ると思はれる。
米國との堅實な戰略關係がなければ、支那が地域的優位
を手にするのに必要な厖大な外資を呼び込み續けるのは
困難に成る
米國にとつて、安定した多元的なユーラシアは利益であるが、大支那の地政學的影響力が此の利益と必ずしも相客れないわけではない。例へば.支那の中央亞細亞への關心の高まりは、此の地域をモスクワの管理のもとに政治的に再統合する露西亞の能力を制約する事に成る。此の關聯およびペルシヤ灣の絡みからみて、支那のエネルギー需要の高まりは、石油産出地域への自由なアクセス、同地域の政治的安定確保と云ふ點で支那と米國が利益を共有する事を意味する。同樣に、支那によるパキスタン支援は、此の國を自國に從屬させ度いと願ふ印度の野心を牽制するとともに、アフガニスタン、中央亞細亞に關して露西亞と協調し度いと望む印度の立場を相殺する事に成る。また、東シベリア開發への日支兩國の參加は、地域的安定を更に強化するだらう。
重要なポイントは、米國と支那がともにユーラシアでお亙いを必要としてゐる事だ。大支那は米國を、政治的・歴史的理由から、ごく自然に同盟國と見なすだらう。日本や露西亞とは違つて、米國は支那に對する領土的な野心を抱いた事はないし、英吉利と比べて米國は、もつと支那を辱めたはけでもない。更に、米國との堅實な戰略關係がなければ、地域的優位を手にするのに必要な厖大な外資を呼び込みつづけるのは困難な筈である。
同樣に、米國のユーラシア關與の東側の基盤としての米支の戰略的和解がなければ、米國は亞細亞大陸での戰略地政學をもてなくなり、さうなれば、ユーラシアの戰略地政學も成立しえない。米國にとつて、より廣汎な國際協調枠組みの一部をなす地域パワーとしての支那が出現すれば、ユーラシアの安定確保と云ふ觀點からみて、歐羅巴同樣の價値をもつ國家と成り、日本より更に重要な戰略的資産と成りうる。此の事實を認識して、また、最近露西亞の參加を求める動きがとられた事から考へあわせても、G7の年次サミツトへの支那の參加を求める事も可能だらう。
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