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(回答先: ユーラシアの地政學 投稿者 石工の都仙臺市 日時 2008 年 11 月 30 日 02:53:10)
ユーラシアの現實
『フオーリン・アフエアーズ』の創刊號が世に送り出された七五年前の米國と云へば、他の世界とは關はらない事を自ら選擇し、其の影響力を西半球に限定してゐた。歐羅巴や亞細亞にときおり關はるとしても其れはごく稀なケースだつた。だが、第二次世界大戰と其れに續く冷戰によつて、米國は否應なく西歐羅巴と極東地域に關與する事に成つた。そして、世界に殘された唯一のグローバルな超大國(グローバル・スーパーパワー) となつたいま、米國は一貫性を備へた包活的なユーラシア戰略を構築する必要がある。
ユーラシアは、世界的にみても、政治的な自己主張が強く、躍動的な國家がひしめき合ふやうに存在する大陸である。歴史的にも、グローバル・パワーへの臺頭をもくろんだすべての諸國はユーラシア大陸の國家だつた。現在でも、支那、印度と云ふ厖大な人口を擁し、なほかつ地域的ヘゲモニーを確立させようと云ふ野心を抱く諸國はユーラシアに位置し、米國の優位に對して政治的、經濟的に挑戰するだけの濳在能力をもつ他のすべての諸國も此の地域に存在する。事實、經濟力、軍事支出の二つの點で、米國に次ぐ六ヵ國のすべては此處に存在するし、核保有を公言してゐる一ヵ國、そして核を保有してゐると考へられる一ヵ國を例外とすれば、世界のすべての核保有國および核を保有してゐると考へられる國もまた此の大陸の諸國である。世界の人口の七五パーセントがユーラシアで生活し、世界のGNPの六〇パーセントが此處で生産され、更には、世界のエネルギー資源の七五パーセントが存在するのも此の地域である。全體としてみれば、ユーラシアの潛在的パワーは、米國のパワーさへも影が薄くなるほどに強力なのだ。
ユーラシアは世界の鍵を握る超大陸(スーパー・コンチネント)である。ユーラシアで支配的な影響力をもつ國が、世界のなかで經濟的に尤も生産力の高い三大地域のうちの二つ、詰り、西歐羅巴と東亞細亞での決定的な影響力を行使する事に成るだらう。地圖を眺めればわかる事だが、ユーラシアで支配的な力を手にする國は、ほぼ自動的に中東とアフリカへの影響力をもつことに成る。いまやユーラシアは實質的に地政學的チエスボードであり、當然乍ら單獨の對歐羅巴政策、對亞細亞政策を其れぞれ形成するだけでは十分ではない。ユーラシアと云ふ一大地域での力關係がどうなるかは、米國のグローバルな優位や此れまで育んできた歴史的遺産さへも大きく左右する事に成るだらう。
對ユーラシア戰略を持續的なものとするには、まづ、此の先五年許りの差し迫つた短期的な眺望、ニ〇年ほどの中期的眺望、そして、更に其の先を見据ゑた長期的な眺望を區別する必要がある。だが、此れらの局面をまるで別個のものとして据ゑるのではなく、聯動する局面として關聯づけて考へる必要がある。米國は短期的には、ユーラシアに於て既に支配的と成つてゐる多元主義と云ふ現状を強化し、此れを永續化させるべきだらう。此の戰略に於ては、其れが遠い將來の可能性だとしても、敵對的な單獨國家による覇權の確立は云ふまでもなく、米國の優位に挑戰するやうな諸國聯合の出現を沮止するやうな政治戰術や外交手腕に重きををく必要がある。中期的には、前述の戰略を、米國のリーダーシツプを背景に推し進めて、戰略的に同じ利益をもつパートナーたちの誕生をめざすべきで、さうなれば、より協調的な全ユーラシア的安全保障システムが形成される可能性が出てくるだらう。長期的には、此のユーラシア安金保障システムが、グローバルな政治的責任分擔の純然たる中核と成る可能性もある。
ユーラシアの西方の縁に於る主要なパートナーは今後も佛蘭西と獨逸であり、此處での米國の中核目標は民主的歐羅巴の基盤を擴大していくことにある。極東地域では、今後支那がますます鍵を握る國家と成つていく可能性が高く、當然、米支間の政治的コンセンサスを育まない事には、對ユーラシア戰略をもつことは不可能である。一方、擴大する歐羅巴と地域的に臺頭を續ける支那との間に位置するユーラシアの中央部は、露西亞がポスト帝國主義國家として自らを再定義出來るやうに成るまでは、政治的なブラツクホールのままだらう。更に、露西亞の南方にあたる中央亞細亞は、民族紛爭の温牀と化し、大國の草刈場と成る危險を祕めてゐる。
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