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格付け会社の日本国債格下げ問題では、財務省が格付け会社に質問書を送付する事態にまで発展し、応酬が今なお続いている。
日本政府が明示的なデフォルトを行うとは考えていないが、このまま無為無策を続けていけば、ハイパーインフレによる実質的なデフォルト(国債価値の大幅な下落)につながると考えている。(アルゼンチン政府は、交渉によってドル建て公的債務を50%未満に削減しようとしているが、ハイパーインフレで保有国債の実質価値が50%になれば、50%債務切り捨てと同じことである)
『Re:民間格付け機関3社に代わって日本の財務省に回答』( http://www.asyura.com/2002/hasan9/msg/671.html )という書き込みで勝手に論争に首を突っ込んだという経緯もあり、財務省が求めている国債問題に対する定量的アプローチを試みてみたい。
(日本国債よりも米国債のほうがより危険な債券だと考えているので、ムーディーズなどの日本国債の格付けが正当なものだとは思っていない。参考:『米国の「デフォルト宣言」→新世界通貨体制』( http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/237.html )このままの経済状況で「世界同時不況」に突っ込んでいけば、とんでもない災厄が発生すると思っているので、なんとかなればという思いから書き込みをしている)
国債問題は「デフレ不況」が突きつけているわかりやすいテーマだが、それは、逆に、「デフレ不況」を解消しない限り国債問題も解消しないことを意味する。
「デフレ不況」からの脱却については、「低中所得者減税(高額所得者増税)」と「緩やかな金利上昇」の同時実行で需要拡大と物価上昇をはかり、「生産拠点の海外移転抑制」で失業者の増加を抑制し、「不良債権処理」は限定的なものにしてゆっくりと行い、「資産デフレ問題」については金融システムの保全のみを考慮し価格下支えをしないことなどを提案してきた。(ちなみに「インフレターゲット論」には反対である)
※ 参考書き込みは、最後にまとめてアップします。
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国債問題を定量的に考えるにあたって、まず、国債の発行状況・残高・償還状況を確認しておきたい。
1)83年度以降の新規国債発行高
国債発行高推移
新規国債 歳出 税収 名目GDP(兆円)
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83年度 13.5 50.6 32.4 285.5
84年度 12.8 51.5 34.9 304.8
85年度 12.3 53.0 38.2 325.8
86年度 11.3 53.6 41.9 340.9
87年度 9.4 57.7 46.8 355.8
88年度 7.2 61.5 50.8 381.6
89年度 6.6 65.9 54.9 409.6
90年度 7.3 69.3 60.1 441.9
91年度 6.7 70.5 59.8 469.2
92年度 9.5 70.5 54.4 481.6
93年度 16.2 75.1 54.1 486.5
94年度 16.5 73.6 51.0 491.8
95年度 21.2 75.9 51.9 497.7
96年度 21.7 78.8 52.1 510.8
97年度 18.5 78.5 53.9 521.8
98年度 34.0 84.4 49.4 515.8
99年度 37.5 89.0 47.2 512.5
00年度 33.0 89.3 50.7 513.0
01年度 30.0 86.4 49.8
02年度 30.0 81.2 46.8 496.2(政府見通し)
この推移表を見てわかるように、「財政再建」で大見得を切った小泉政権の「国債30兆円」は、小渕政権や森政権の新規国債発行高から減らしたことは減らしたが、それ以前に比べればやはり異常に多い額である。
小泉政権は「緊縮財政」を行っているのではなく、小渕政権や森政権がとんでもない「超放漫財政」を行っていたので、そう思ってしまう類のものである。
2)新規国債発行高と税収の比較
歳出に占める利払い費の率などはよく見かけるが、税収との関連で指標化したデータはないようなので、それをまとめた。
家計で考えれば、年収に対してどれだけ借金をしているかというものに相当する。
[新規国債/税収比率]
新規国債 対税収比率
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83年度 13.5(41.7%)
84年度 12.8(36.7%)
85年度 12.3(32.2%)
86年度 11.3(27.0%)
87年度 9.4(20.1%)
88年度 7.2(14.2%)
89年度 6.6(12.0%)
90年度 7.3(12.1%)
91年度 6.7(11.2%)
92年度 9.5(17.5%)
93年度 16.2(29.9%)
94年度 16.5(32.3%)
95年度 21.2(40.8%)
96年度 21.7(41.7%)
97年度 18.5(34.3%)
98年度 34.0(68.8%)
99年度 37.5(79.4%)
00年度 33.0(65.1%)
01年度 30.0(60.2%)
02年度 30.0(64.1%)
1000万円の収入がある家庭が、ここ5年間、600万円から790万円の借金をして、商品やサービスを購入していると考えればいいだろう。
国債の場合は、返済を60年かけて行えばいいというのが、家計や企業の借金との違いである。
昨年度の税収は予定を下回ることは確実なので、60.2%を超える比率になる、
3)今年度の国債・政府保証債発行予定
[2002年度国債・政府保証債発行予定額]
新規財源 30兆円
借換債 69兆6156億円
財政融資 34兆3527億円
特別会計
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合計 133兆9683億円
内訳
市中分
30年 6000億円
20年 4兆2000億円
15年変動利 5兆4000億円
10年 21兆6000億円
5年 22兆8000億円
3年割引 4000億円
2年 19兆1527億円
短期 30兆6451億円
-----------------------------------
104兆7978億円
公的部門
郵貯窓販 2兆1000億円
日銀乗換 3兆3704億円
財政融資経過 23兆4000億円
郵便貯金 13兆6000億円
年金資金 6兆7000億円
簡易保険 3兆1000億円
-----------------------------------
28兆8704億円
個人向け 3000億円
合計 133兆9683億円
4)2001年12月の公的債務残高
2001年12月末
国債430兆4808億円
借入109兆4428億円
短期 42兆5320億円
-------------------------
合計582兆4556億円
(10年以上265兆3492億円/2〜6年89兆3026億円/短期31兆1259億円)
政府保証債務残高 58兆1987億円
政府債務総合計:640兆6543億円
5)国債の償還状況
国債償還額
96年度:償還:3兆4727億円(借入:15兆4052億円借換:26兆5524億円)
97年度:償還:4兆0561億円(借入:21兆0631億円借換:31兆4320億円)
98年度:償還:5兆7829億円(借入:29兆4287億円借換:42兆4310億円)
99年度:償還:8兆5952億円(借入:27兆7219億円借換:40兆0844億円)
00年度:償還:8兆4975億円(借入:37兆1727億円借換:53兆2697億円)
01年度:償還:9兆9314億円(借入:45兆3174億円借換:59兆3296億円)
02年度:償還:5兆8329億円(借入:51兆0692億円借換:69兆6156億円)
※ 償還原資
一般会計・たばこ特別税(1999年度以降)・株式売却(除く1997年度)・特別会計で、特別会計が71.8%・78.7%・78.4%・73.9%・85.7%・86.8%とほとんどを占める。
30兆円の新規国債を発行していながら、償還額は、10兆円にも満たない。
これは、国債の償還が、発行する国債の年限で行われるのではなく、基本的に60年間で償還されることになっているからである。
償還されるまでの間は、借換国債の発行でつないでいくことになる。
要注意は政府借入の急増である。
国債という“おおっぴら”の借金ではない政府借入が、今年度には51兆円にも達する。
これは短期借入だから、まさに自転車操業的な財政運営を強いられることになる。