【エルサレム海保真人】
イスラエルのシャロン首相は29日、記者会見し、パレスチナ自治政府のアラファト議長が「テロと連帯しており、敵だ」と宣言、当面の間、議長を孤立させることを閣議決定したと発表した。同首相が議長を「敵」と表現するのは初めて。首相はパレスチナ側のテロ行為に対する大規模な軍事作戦の開始を宣言した。
イスラエル軍は同日未明、議長が滞在するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のラマラに戦車などで再侵攻。議長府関連施設に攻撃を加え、施設内に突入したが、少なくともパレスチナ人5人とイスラエル兵1人が死亡した。同軍はラマラの自治政府関連施設7カ所を占拠した。また議長の執務室のすぐ近くで銃激戦が起きたが、議長は地下室に避難し、無事だった。
イスラエルはラマラ一帯に外出禁止令を敷いた。外出禁止令は極めて異例で事態の深刻さを示している。28日に閉幕したアラブ首脳会議で包括和平案が採択されたばかりの中東和平は、重大な危機に見舞われている。
侵攻は27日夜に同国中部ネタニヤで発生、22人が死亡した自爆テロをきっかけにした報復作戦。シャロン首相は記者会見で、予備役2万人の緊急招集を決めたことも明らかにした。
同席したベンエリエゼル国防相は「議長に危害を加えることはしない」と言明し、自治区を再占領する計画もないと語ったが、議長を隔離した上で、自治区から追放することも視野に入れている模様だ。
一方、パレスチナ側は侵攻を「テロ」と非難したうえ、「パレスチナへの全面戦争の宣言」(エラカト地方行政相)と激しく反発した。アラファト議長は米国と国連に緊急の介入を要請。議長はカタールの衛星テレビ局とのインタビューで「パレスチナ人は決して屈しない。独立国家樹立のための闘争を放棄することはない」と全面対決する姿勢を表明した。