イスラエル軍は28日夜、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区に向けて戦車や装甲車などを集結させ始め、大規模侵攻の構えを見せている。イスラエルのシャロン首相は28日深夜、同国北部のホテルで20人を殺害した前夜の自爆テロへの対応策を協議する緊急閣議を始めた。自治政府に対して軍事作戦を実施するかどうかが焦点になる。一方、アラファト議長は28日夜、ラマラで「停戦の即時無条件実施の用意がある」と宣言した。
イスラエル軍が戦車部隊などを集結させているのは、ラマラとナブルスの両自治区の近郊。イスラエル放送は「自治政府への忍耐はついえた。もはや自制はしない」とする同治安筋の発言を報じた。
シャロン首相は緊急閣議の冒頭に「一連のテロの背後にアラファト(議長)がいる。政府は決断をしなければならない」との声明を出した。閣議では軍が提出している「自治政府を標的とする軍事作戦」を承認すると見られる。同軍はこれまでアラファト議長や自治政府の打倒や排除は軍事作戦の目的ではないとする方針をとっており、本質的な路線変更となる。
作戦の内容は明らかではないが、28日深夜のイスラエル・テレビによると、アラファト議長と自治政府指導部を西岸からヨルダンに追放する可能性も選択肢として含まれているという。
アラファト議長の「即時無条件停戦」の宣言は、イスラエル閣議に先立ってラマラの議長府で行われた。「我々はジニ米特使に即時無条件の停戦実施を開始する用意があると通告した」と語った。同時に「イスラエル軍がパレスチナ民衆に対して大規模な攻撃の準備を進めているのは遺憾だ」と訴えた。
自治政府筋によると、議長の停戦宣言の後、同治安部隊が西岸のラマラやナブルス、ヘブロンなどでイスラム過激派のハマスやイスラム聖戦のメンバーの逮捕を始めたという。
一方、28日夕、西岸のナブルス南部のユダヤ人入植地に武装したパレスチナ人の男が押し入り、入植者家族4人を殺害した。男もイスラエル軍との銃撃で死んだ。イスラム過激派ハマスが犯行声明を出した。(10:29)