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佐々木敏氏は歴史に学んでいないし経済論理も理解していない 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 10 日 14:52:03:

(回答先: 金・ドル兌換回復の衝撃 アカシックレコード 投稿者 Ddog 日時 2002 年 9 月 10 日 07:55:52)

佐々木氏の国際情勢に対する論評は、それなりに傾聴に値すると思っている。

しかし、今回の「新ドル政策」の論考を読む限り、アカシックレコードと銘打っているわりには、歴史から様々な智恵を受けているかもという期待に反し、それほど昔ではない歴史さえ学んでいないようだし、経済論理についても、おそらくほとんど理解されていないと推察される。


● 財産税について

>もちろん資産家たちも、課税されてはならじ、と預貯金を引き出し、「非課税」の株
>や債券に乗り換え、あるいは不動産等の購入に走る……かくして株価、地価は上昇に
>転じ、インフレ期待(将来値上がりしそうな物は安いうちに買っておこうという心理)
>から個人消費や民間企業の設備投資も伸びて景気は回復。その景気回復のおもな「原
>資」は「あくどい金持ちの隠し資産」だから、この財産税は必ずしも悪くない。これ
>は、小泉内閣の「デフレ無策」を批判する自民党の舛添要一、塩崎恭久らの言う「イ
>ンフレターゲット」(目標率を定めて軽い物価上昇を起こして経済を回転させること)
>とほぼ同じ効果を持つ。十分検討に値しよう。

これに対する批判は、『ストックとフローの性格の違いや物価変動論理を知らないお二人』( http://www.asyura.com/2002/hasan13/msg/226.html )を参照していただきたい。


● 金・ドル兌換回復

佐々木氏は、「新札への切替えに合わせて重要な政策転換を行い、経済を一気に活性化させる……もしそんな「荒技」を米国がねらっている」のではと考え、その手法を次のように推察している。

佐々木氏は、米ドルとユーロという通貨をめぐる主導権争いを念頭に、


>外国からの借金に依存した米国経済の「借金バブル」がまだ完全にはじけていない、
>いまこの瞬間をとらえて、米国の覇権を決定付ける政策転換をやってしまったほう
>が、米国にとってはトクだ。米国には世界一の軍事力と金保有量という、欧州にはな
>い、武器があるのだから。

>71年に「勝手に」兌換を停止したため、米国は依然として世界一の金保有国だ。も
>し、71年と同様「ある日突然」米国が「兌換紙幣として新ドルを発行する」と発表し
>たら、どうなるか?

日本や中国など貿易収支が黒字基調にある国家は、うはうはの大喜びであろう。
米国は、3000億ドルもの貿易収支赤字であり、4000億ドルもの経常収支赤字である。

そのような経済条件にある国家が、8000トンの金を保有しているとは言え、金の兌換に応じる政策に転換するわけがない。
8000トンといっても、1g=10ドルとして換算すれば800億ドルしかないのだから、3ヶ月も経たないうちに底をつくことになる。(デノミを行っても、経常収支赤字が2000億ドルになり、保有金評価が400億ドルになるだけで同じこと)

兌換政策を採ったからといって、産業力を衰退させてしまった国民経済が貿易収支の黒字に転換するわけではない。
金の流出を防ぐためには輸入超過を抑える緊縮経済政策をとるしかないが、そんな政策を採れば、その政権は吹っ飛ぶことになる。


>たとえば、2003年9月11日、米国政府は1日だけ金融機関のモラトリアム(支払停止)を
>宣言して、新ドルと旧ドルの交換比率を「1:2」とするデノミネーション(通貨額面表
>示の切替え)をする(わかりやすくするために、その直前の円相場を1ドル=100円、
>1円=0.010ドルとする)。

>米国民は、9月10日まで「2 旧ドル」で買っていた品物を12日から1新ドルで買える
>ようになるが、給与も預金も 2 旧ドルが1新ドルに読み替えられる(無料で紙幣が
>交換される)ので得も損もしない。

>が、「旧ドル」で貿易黒字を稼ぎ米国債を購入してきた各国のドル資産の価値は1/2
>になる。
>1新ドル=2旧ドル=200円となり、2003年9月12日以降は「1ドル=200円」(1円=0.00
>5ドル)の超円安になる。

ここまではドルの兌換回復とは直接関係ない内容である。

デノミによって、ドル単位当たりの購買力が2倍になったということである。

佐々木氏が、「「旧ドル」で貿易黒字を稼ぎ米国債を購入してきた各国のドル資産の価値は1/2になる」と説明しているのは完全に誤りである。

ドル額表現では1/2になるが、実質価値は、米国民にとって全く変わらないのと同じく、まったく変わらない。(ドル額表現で1/2になっても、物価も同じく1/2になっているのだから...)

だから、「「1ドル=200円」(1円=0.005ドル)の超円安」という表現も誤りである。
(円をデノミして1ドル=1.2円にしても、超円高にはならないことを考えればわかること)

従来の通貨と単に呼称単位が変わることによって、実質価値が変わることはない。


>日本は多額の米国債を購入するなどして世界にカネを貸してきた世界一の債権国だ
>が、逆に米国の90年代、クリントン民主党政権時代の繁栄は日本をはじめ世界からの
>借金を原資とした「バブルな」もので、実は世界一の債務国だ。もしも上記の交換比
>率でデノミと新ドル導入が実施されると、日本の債権は半分になって大損し、米国の
>債務は半分になって米国は大助かりだ。米国経済の借金バブル体質は解決される。

前述のように、「上記の交換比率でデノミと新ドル導入が実施されると、日本の債権は半分になって大損し、米国の債務は半分になって米国は大助かりだ」と言うことは全くないから、「米国経済の借金バブル体質は解決される」こともない。

「米国経済の借金バブル体質は解決される」ことはないが、「日本の債権は半分になって大損し、米国の債務は半分になって米国は大助かり」という状況をつくりたければ、“プラザ合意”のように「大幅なドル安」に移行するしかない。(債務不履行は別として...)


佐々木氏は、ドル兌換回復をブチ上げていながら、デノミのみを説明し、ドル兌換回復がもたらす効果を説明していない。それなら、デノミ政策だけをブチ上げればいいのに...


米国(国際金融)支配層がその通貨的“富”を拡大したいと願うのなら、佐々木氏が思いついたような政策ではなく、対外債務のデフォルトや新国際通貨の創設を考えるだろう。
(「米国バブル崩壊」→「世界同時デフレ」という流れのなかで、米国債の内国人保有が高まりそうなので、対外債務のデフォルト効果は薄まってしまうが...)


※ 参考書き込み

『米国の「デフォルト宣言」→新世界通貨体制』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/237.html


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