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Re: 日本の近代化は人工的宗教を梃子(てこ)としたため反・列強陣営を有効に組めなかった。 投稿者 ケイト 日時 2002 年 9 月 04 日 18:02:58:

(回答先: 欧米と一緒にしないでほしい 投稿者 書記長 日時 2002 年 9 月 03 日 18:14:37)

たいへん失礼ながら、理解のポイントがすこしずれていると思います。
 幕末維新革命を引き起こした思想潮流は、ご存知のとおり尊王思想です。その原点は古事記・日本書紀ですが、これが江戸初期の儒学者山崎闇斎一門(いわゆる「崎門」。弟子、栗山潜鋒,浅見けい斎などが理論を精緻化)の手により一種の神学理論となり、尊王思想として理論的に完成を見ます。闇斎は儒教の説く「王道」が実現されているのは皇室をいただく日本のみである,という考えに至り,尊王思想の原点を設定しました(ですから「神道原理主義」ではありません)。彼らは、天皇が神である、日本は神国である、との神学的証明をしたと主張していたわけです。神の国論というのは日本国は神によって繁栄をあらかじめ約束された土地である,という「予定説」に基づいています。こうした神学理論の影響力の巨大だったこと。倒幕側志士、幕府側(水戸藩は、二代藩主光圀から慶喜まで)ともに天皇教信者でした。倒幕運動は尊王思想というあくまで「宗教的イデオロギー」を基礎とした「神の国」をつく作るための運動でした。従来の伝統主義を否定し,”古代からの「正しい伝統」”を復活せしめたい,と考えていました。欧州の王権神授説と同類ですが,既成社会を破壊した点ではその威力はたいへんなものでした。神道と天皇教はまったく別物です。神道は自然崇拝のアニミズムであり,万物が神聖である,すべてに「八百万の神」が宿っているという世界観ですから、天皇が現人神であるという論理を内包していません。伝統的神道では皇祖神=アマテラスの「斎主」であって,それ以上ではありません。
  ただし,尊王思想信奉者は武士階級(人口の5%以下)のうちのさらに一握りの人々のみでした。庶民にはまったく共有されていませんでした。第一,日本国中の庶民の間では、それが京都に住んでいる庶民も含めて,「天皇」というものの存在自体をまったく知らなかったのです(この事実は重要なポイントのひとつです)。ですから,尊王思想や天皇教というのは,人口的には日本人の中の超マイノリティーの考えにすぎませんでした。伊藤博文は憲法草案起草のため欧州視察に出かけ、近代ヨーロッパ憲法思想の根幹=「機軸」となってるいるのはキリスト教である,という見方に至りました(これは,間違った見方です)。日本に,民衆がささえるキリスト教に匹敵する宗教はなく,宗教なきところ,憲法は成り立たない,と考えました。そこで、尊王思想である天皇教を,日本の近代憲法の基礎に置いたのです。1888年(明治21年)6月,枢密院の審議の冒頭で,6ヶ月間の欧州帰りである伊藤は日本近代憲法の「機軸」として江戸末期の武士における流行である尊王思想=「天皇教」を組み込むことを提唱しました。天皇という現人神のもとに日本人は平等,というレトリックを作りました。これで,日本人は平等というレトリックつくりに成功しました。こうしたことは民主主義と資本主義を導入するための、非常に割り切った,冷徹な社会的・国家的エンジニアリングの発想に過ぎません(このときの民主主義はあくまで似非民主主義です)が,伊藤博文の狡知に長けた冴えはある意味で抜群、アイデアマンとして、なかなかのものだったわけです。確かに,日本における人権思想の出立がここにありますが,いかんせん,現人神の前においての日本人同士の平等というあまりに,変則的な,病的な旅立ちとなったわけです。しかし,実際は絶対的専制体制ですから,奴隷的平等にすぎないわけです。明治憲法発布の告文(こうもん)によれば帝国憲法は天皇と人民との契約ではなく,明治天皇と神々との契約という構造になっています。もちろん、ルソー流社会契約説,人民主権論などは排除されましたから,後におこった軍部の暴走,権力濫用などを止める契機は明治憲法内に一切存在していませんで,これが日本国内でもアジア諸国との関係でも後に深刻な問題を引き起すことになりました。
  日本の近代化は社会工学的に作られた、いわば人工的な宗教を基礎に展開された点が欧米には見られない決定的な特徴です。欧米は資本主義を打ち出すのに,自由・平等・民主主義(アメリカ先住民由来のようですが)を持ち出す一方,日本の近代化は人工宗教を持ってきたという比較の視点が決定的に大切と思います。「宗教資本主義」「宗教的近代化」だった点が,欧米列強と好一対をなします。欧米への対抗的資本主義に基づくエトス、欲望が,日本の帝国主義の基礎を成した点では欧米列強とかわりはありません。
  ただ,欧米の近代化は,個人の行動の自由を拡張することが目的でしたが、日本の近代化は,欧米列強の帝国主義に対する防衛として、つまり、欧米への反応=リアクションとしての行動(民族的kヒステリアとなった)であった点があることは間違いなく、その点も非常に注意を向ける必要があるでしょう。欧米の帝国主義から自己防衛するため、宗教を楯にしたのです。その点、イスラム原理主義とアメリカ帝国主義の戦いは,それと同じ形式を踏んでいるとみることもできる余地がないわけではないでしょう。日本のファシズムの狂気はもとをただせば,山崎闇斎一門が持っていた天皇ファナティズムを原基としています。

  日本の近代化の特性を考察するとき、宗教を基礎としたという点が決定的な特徴であり,分析のための不可欠な視点だと思います。また,江戸期の農民・庶民の心の中には天皇というものはまったく刻印されていませんでした。江戸幕府は農民による、ええじゃないか運動で,根底から揺らいでいました。ペリー来航で,列強との日本支配層の権益合戦の様相となり,文字通りの内憂外患となり,日本支配層が生き残りをかけて考えたのが、天皇教を国民宗教とすることでした。(水戸光圀は歴代天皇の名を列挙した「大日本史」を編纂しました(明治憲法下、小学生はこの歴代天皇の名を暗記させられた)。彼は中国の学者を雇い歴代天皇の名を書かせました。この中国人は当時日本人が使わない異常に難しい中国漢字で書きました。つまり,それらの天皇は実在しないフィクションでした。中国人(特にトップ)は,歴史は嘘を書くことと,割り切っている人々です。)

日本の支配層の利益と,一般民衆の利益は,非常に背反する面があります(書記長さんは日本の支配層側を代弁する見方に主体的に立っているか、彼らのプロパガンダに頭脳が刻印を受けている可能性があります)。宗教を基礎にせず、理性を基礎にし、自由・平等・民主主義を掲げておれば、その旗印のもとに,アジア諸国と対等関係を基礎とする、さらに強力なアジア連合組織を形成できたのではないか、それで欧米列強に対抗できていたのではないか。というのは歴史のIFだといえば、それまでですが...。米国のような連邦共和国体制を目指した坂本竜馬・福沢諭吉、そして中江兆民(東洋のルソー)や幸徳秋水のラインで近代化をデザインしていたら,どうだったのだろう,と考える誘惑にわたしは勝てないのです。私は,山崎一門の狂気をたいへん憎んでいます。武士という日本の支配層を美化する武士道や司馬史観などをまったく買っていません(倒錯しているとしか思えない)。彼らは武断的方法論しか編み出せないのですからね(米英支配中枢と同じメンタリティー)。私は,江戸日本の95%だった農民や庶民、被差別民(エタ・ヒニン:満州に中国人農地の簒奪者として送り込まれた)の視点から,あるいは,中国・韓国の庶民の側から(王朝の側からではなく)日本の近代史と近代戦争の経過を観察したいと考えています。

  また,アメリカ先住民を500年かけて5億人殲滅した、大義としてのキリスト教にせよ、天皇教にせよ、世界に見る組織宗教・国家宗教というのは,本当に人間の精神を異常化するもので、人類社会からなくなって欲しいと願うものです。人間の精神性に対する犯罪となっています。人間の精神性,自然界を破壊するもの二つ。それは(資本主義に代表される)物質主義と教義宗教です。

  
 

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