http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/187.html
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輸出企業が日本を滅ぼす
輸出超過額と対外資産が増える程、日本人はどんどん貧しくなっていく
植民地のインドは商品を輸出しても、その見返りの代金はポンドでイギリスに蓄積され、デフレになり、不景気になった
2006年2月9日 アメリカの謎を解く 橋本裕の文学・人生日記帳
ブッシュ大統領が1月31日の一般教書演説で、「私は8800億ドルを減税し、国民に返却した。今後も減税を恒久化し、09年に財政赤字を半減する」と述べた。
一方で、アメリカの経常赤字は05年が7900億ドル(93兆6940億円)、財政赤字も06年度は4230億ドル(約50兆2千億円)で過去最大、債務残高はすでに8兆ドル(約950兆円)を越えている。
日本では、税制赤字を解消するために、増税をしなければならないと考えられているが、アメリカは逆である。減税をして国内消費を活性化し、景気をよくして税収をあげようとする。さらにアメリカの場合は戦争によって軍需景気を作りだしているわけだ。
いずれにせよ、アメリカは消費大国。国も国民も借金をして消費を楽しんでいる。このアメリカの消費を助けているのが日本をはじめとするアジア諸国だ。とくに日本の貢献が大きい。日本は政府と民間が何百億ドルというアメリカ国債を買っている。
先日、朝日新聞夕刊「経済気象台」に「米国のもう一つの謎」という文章が載った。経常収支の赤字が拡大しているにもかかわらず、ドル高が持続している謎について、それは借金国のアメリカが負債について支払う金利が「異常」に低いからだと書いている。これに反して、アメリカの対外資産は巨大な利益を手にしている。
アメリカは莫大な借金をし、そしてその中から、わずかな一部を他国に貸している。そして不思議なことに、巨大な借金のための利払いよりも、わずかな海外資産の方が多くの利益を生み出しているというのだ。
どうしてこんなマジックが可能なのか。それは日本がこの逆をしているからである。なぜ日本がこの分の悪い役回りを続けるのか、実はこれこそが本当の謎だということになる。
驚くべきことに、小さな対外資産から受け取る利子と配当が、大きな対外負債に支払う利子と配当を今日まで上回り続けている。家計にたとえると、収入を上回る買い物をして毎月赤字が続き、借金が膨らんでいる。ところが、多額の借金に支払う金利がゼロに近ければ、わずかばかり保有する預金などから受け取る利子の方が大きいという状態なのだ。これでは赤字をいくら出しても、借金さえできれば、後は何の憂いもなく買い物ができる
このうまい話に手放しで悪のりして、米国は経済収支赤字を続け、負債の増加に加速度がついている。この構図が最近話題になり、債権国が浮き足だっている。日本にその気配がないことが「謎」の源である
実はアメリカのこの「うまい話」は、19世紀に繁栄した大英帝国をまねているだけだ。大英帝国の場合は、その繁栄の謎をとく鍵はインドをはじめとする植民地が持っていた。たとえば当時イギリスの植民地であったインドは、香辛料などの原材料を輸出してイギリスを相手に多額の黒字を計上していた。ところが黒字はルピーではなく、ポンドを使って決済され、そのままイギリスの銀行に預けられていた。
だからイギリスはいくら植民地を相手に赤字を出しても平気だった。イギリスの銀行に預けられたポンドを、イギリス国内で使えばいいからだ。インドは名目上は債権が増え、お金持ちになったが、そのお金をイギリスの銀行から自由に引き出し、自分の国では使えなかった。お金の使い道は預金者ではなく、イギリスの銀行が決めていたからだ。そしてもちろん、イギリスの銀行は国内の人々に貸し出した。
イギリス国民は植民地から輸入した品物で生活をたのしみ、しかもしはらったポンドもイギリスの銀行に吸収され、イギリスのために使われるわけだ。こうしてイギリスはどんどん発展した。
一方植民地はどうなったか。たとえばインドは商品を輸出しても、その見返りの代金はポンドでイギリスに蓄積されるだけだから、国内にお金がまわらなくなる。どんどんデフレになり、不景気になった。
仕事がきつくなり、給料が下がり、ますます必死で働いて輸出する。ところが黒字分の代金は、ポンドのまま名義上の所有としてやはりイギリス国内で使われる。こうしていくら黒字を出してもインドは豊かになれなかった。そして、赤字を出し続けたイギリスは、これを尻目に繁栄を謳歌できた。
このイギリスとインドの関係は、そっくり現在のアメリカと日本の関係だと言ってもよい。経済同友会元副代表幹事の三國陽夫さんは、「黒字亡国」(文春新書)にこう書いている。
輸出拡大によっていくら日本が黒字を蓄積しても、それはアメリカ国内にあるアメリカの銀行にドルで預け入れ、アメリカ国内に貸し置かれる。日本からの預金は、アメリカにしてみれば資金調達である。貸し出しなどに自由に使うことができる。
日本は稼いだ黒字にふさわしい恩恵に与らないどころか、輸出関連産業を除いて国内消費は慢性的な停滞に喘いでいる。停滞の原因であるデフレはなかなか出口が見えない。
日本の黒字がドルとして流入したアメリカはどうなのか。ドルはアメリカの銀行から金融市場を経由して広く行き渡り、アメリカ経済の拡大のために投下されている。日本の黒字は結局、アメリカが垂れ流す赤字の穴埋めをし、しかもアメリカの景気の底上げに貢献しているのである。・・・
輸出で稼いだ黒字を日本がドルでアメリカに預け、日本の利益ではなく、アメリカの利益に貢献している限り、円高圧力もデフレ圧力も弱まることなく、政府・日銀がいくら財政支出や金融緩和というデフレ解消策を講じても、一向に持続性ある効果は現れないのである
幸い、最近この貿易構造がかわりつつある。日本の貿易相手国が中国をはじめとするアジアやヨーロッパにシフトしたことで、日本の対米黒字の割合が相対的に低下したからだ。こうして日本がデフレから解放されるチャンスがここから拡大した。
しかし、問題はすでに厖大なドル建て資産をアメリカに持っていることだ。日本人の汗の結晶であるドル建て資産が、今後ドル安で何百兆と失われる可能性がある。こうした形で、アメリカは最終的に日本の資産を合法的に手に入れようとする。
「今後も減税を恒久化し、09年に財政赤字を半減する」というブッシュの一般教書の宣言は、これからも日本をはじめ、世界から資金を調達するという意思表示と読むべきなのだろう。
http://www.asyura2.com/0601/hasan45/msg/253.html
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「輸出は良いこと」と言う間違い
「貿易黒字が回復」「貿易赤字が悪化」のように言うのは間違い
引用:http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20161024001223_comm.jpg
日本には「輸出は良いこと」で「輸入は悪いことだ」という考え方が、徳川300年の因習のように染み付いています。
しかもこう信じている総本山が自民党幹部だったり、経産省や財務官僚、東大教授、経団連トップだったりします。
無学な人間ががどう喚いても総本山は自分が正しいと思っていて、改める気配すらありません。
安倍首相のアベノミクスも良く言われるように大企業偏重で、もっと言えば輸出企業偏重でした。
それを象徴するように大新聞やテレビは日本の貿易黒字が増えると「稼ぐ力が戻った」と大喜びしました。
財務省や経産省や自民党も「貿易黒字が”回復した”」とガンが直ったように喜んでいました。
アベノミクスでは貿易黒字を増やすために観光客誘致に力を入れ、2016年に2000万人を達成し、2017年は2500万人以上が確実になっています。
外国人が金を使うのは自動車を輸出するのと同じで、日本が儲かる=良い事だと皆思っています。
政府は輸出や観光客を増やすために円安に誘導し、現在は1ドル112円程度で推移しています。
ところが為替レートは日米の物価上昇率によって、同じ数字でも実効為替レートはどんどん変動しています。
たとえば日本の物価上昇率が20年間ゼロ、同じ期間アメリカは2%だったとすると、同じ為替レートでも実質的に、毎年2%円安になっています。
現在の1ドル112円は1995年時点の、130円か140円に相当する「超円安」になっています。
仮に今後1ドル80円になっても、1995年時点の1ドル100円以上でしかない筈で、円安の恩恵を受けて貿易黒字になったのが良く分かります。
輸出と観光偏重が日本を貧しくする
では貿易黒字で儲かったからこのまま続ければ良いのではないか、とも思えるがそうは行きません。
日本の貿易黒字で喜ぶのは日本人だけで、貿易相手はみんな不愉快になり怒り出します。
中国の貿易黒字が増えたとき、日米では中国人への反感が高まりましたが、80年代には欧米で「ジャパンバッシング」がありました。
日本がこのまま輸出を増やして貿易黒字を増やすと、間違いなくジャパンバッシングは復活するでしょう。
さらに貿易黒字だけが拡大し続けると、儲かった外貨の一部は日本円に交換されるので、円高圧力がどんどん高まります。
80年代に貿易黒字を溜め込んだ日本は、1995年の超円高で全て吐き出す破目になりました。
超円高や阪神大震災の傷も癒えて、小泉政権で再び貿易黒字を溜め込んだが、2011年の超円高でまた吐き出しました。
言っては悪いが「大食い選手権」で食えるだけ食って、トイレで吐いている大食い芸人と同じです。
これらで分かるのは輸出で儲けてから吐き出すには10年以上の時間差が有った事で、恐らく安部首相も引退する2030年までに次の超円高が起きます。
もっと前にも「高度成長期」に溜め込んだ貿易黒字を1985年プラザ合意の超円高で吐き出しています。
1971年にはニクソンショックによって1ドル360円の固定レートが廃止され、変動相場制に移行しています。
これら全ては、日本が貿易黒字で儲けすぎたのに欧米諸国が反発し、為替レートを上げる事で調整した結果でした。
10年か20年ごとに同じ事を繰り返しているわけで、偉い人達もいい加減に学習して欲しいです。
輸出するには同額の輸入が必要
ではどうすれば良いのかというと、実は非常に簡単な話で、輸出と同じ金額の輸入をすれば良いだけです。
自動車を100万台輸出しようが1000万台輸出しようが、同額の輸入をすれば為替相場は円高に動きません。
”偉い人達”は輸出を喜んで輸入を毛嫌いしていますが、その原因になっているのは恐らく、財務省の勘違いです。
財務省はGDPの計算方法で「輸出はプラス」「輸入はマイナス」にしていて、間違いではないが非常に誤解を与えています。
「輸出はプラス」に異論はないが「輸入はマイナス」の部分は、まるで輸入するほど日本のGDPが下がっているような印象を与えています。
毎回同じ例を挙げるが、例えばアメリカから100グラム50円で牛肉を輸入したとします。
スーパーで売るときには100gあたり150円とか300円になり、3倍から5倍もの値段で販売されています。
さらに牛肉は牛丼になったり、しゃぶしゃぶ、ステーキなどになり国内で付加価値がついて販売されています。
日本が輸入する大半は原料なので、輸入した価格の何倍もの価値が国内でつけられ「輸入によってGDPが増えている」のです。
アイフォンのような完成品でさえ、輸入したものを販売しサービスし課金されることで、やはり何倍もの付加価値が国内で生まれます。
輸出がGDPに貢献しているのと同様に、輸入もGDPに貢献していて、国内で付加価値が生まれているので分かり難いのです。
日本政府が輸出を増やしたいのなら、同額の輸入を増やすべきだが「輸出だけ増やせ」と言うから必ず失敗するのです。
今回の「安倍景気」も輸出だけに偏重するのなら、小泉景気と同じく、10年後に無残な失敗に終わるでしょう。
http://www.thutmosev.com/archives/73197193.html
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日銀の量的緩和政策は失敗に終わった…目的を果たせなかったのはなぜか=吉田繁治 2018年12月25日
https://www.mag2.com/p/money/612611
日本には現在、4,099兆円の金融資産があります。この資産はどこでどのように使われているのでしょうか。その内訳の詳細から今後の展望について解説します
日本にある4,099兆円のマネーは、どのように投資されているのか
すべての金融資産は、国内と海外の誰かの負債である
当メルマガでは前回、資金の供給源になる世帯(1,848兆円)、企業(1,176兆円)、政府が管理する金融資産(572兆円)と、日銀の負債(503兆円)の内容を見て行きました。
わが国の合計では、現金、預金、株式、証券の合計で4,099兆円のマネーがあるのです。後編では、この4,099兆円が、どの主体に、どんな理由で貸し付けられているのか(=投資されているのか)を見て行きます。
(注)株式も、企業にとっては返済の順位がもっとも低く、解散のときに純資産から返済される「劣後債の負債」です。株の利益配当は、借り入れの金利に相当します。株主にとっては、持ち株は金融資産ですが、企業にとっては預かり資本になる負債です。国債を含む証券は、返済順位が高い優先債です。株も証券も、その持ち手から発行元への貸付金です。この貸付金は、持ち手にとっては金融資産、借り手にとっては負債です。預金は持ち手の金融資産ですが、銀行にとっては負債です。
「すべての金融資産=国内と海外の誰か負債」という構造をもっています。金融資産が価値をもつには負債が返済できるものであり、利払いもできることが必要です。
返済できない負債は、価値の低い不良債権になります。4,099兆円になった金融資産が価値を保ち続けるには、借り手が、増えた負債の返済ができ、利払いができるという条件がなければならない。
この点で、政府の負債である国債はどうでしょう。国債が増えたため、政府は1%以下の低い金利しか払えない。普通の金利は3%から5%ですが、その金利になると、政府は利払いのための借り入れが増えるという「破産の過程」にはいります。
企業は、1985年からの日銀の金融緩和を起点とした土地バブルの時期、返済できない借り入れを増やして、土地を買いました。担保だった土地は1992年から下落し、銀行の貸し出しが、銀行の自己資本合計を超える不良債権になった(約200兆円)。この不良債権のため、1998年の金融機関が倒産する金融危機に至ったのです。
政府の対抗策は、ゼロ金利と国債を買う量的緩和と、銀行への資本注入でした。2008年の米国のリーマン危機と同じです。
企業はその後、借り入れによる増加設備を抑え、借り入れの返済をしました。一方で、負債がどんどん膨らんだのが、政府部門です。
わが国の負債
(1)世帯の負債は318兆円(2018年6月末)
世帯の負債は、住宅ローンと自動車ローン、カード、消費者ローンなど318兆円です。住宅ローンは、2018年で193兆円と集計されています(住宅金融支援機構)。1年に21兆円(130万件)くらいが貸し出されています。平均残存期間は約10年です。
日本の世帯の負債は少ない。一方で、世帯の金融資産は、1,848兆円ですから、「1,848兆円−318兆円=1,530兆円」が負債を引いた純金融資産。1世帯当たりでは2,886万円です。
(2)企業部門の負債は1,736兆円
世帯の貯蓄を借りる企業部門の負債は、借入金と証券(株式を含む)で1,736兆円です。
借入金 396兆円
証券 1,031兆円(うち上場株式589兆円)
その他負債 307兆円(買掛金など)
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負債合計 1,736兆円
負債総額は1,736兆円です。ただし企業は金融資産を1,176兆円持っているので、純負債は560兆円(平均2.2億円)と少ない。
前述したように、土地バブル崩壊以降、設備投資を抑えて、キャッシュフロー(=減価償却費+利益−税金−配当)で、借入金の返済をしてきたからです。
国の資金循環では、GDPの成長期の正常な姿は、
・世帯の預金の増加分を、
・企業が銀行から借り、
・設備投資をすることです。
1980年年代までの資金循環がこれでした。
【世帯の預金と国債発行】
1990年代からは、世帯の預金は1年に約40兆円も増えているのに、企業は借り入れをしない。
誰が預金増加を吸収したのか?政府の国債です。政府が国債を発行して預金増加を吸収し、資産バブル崩壊後のGDPが減少する経済への対策としての公共投資を行った。90年代の10年で400兆円の公共投資というおおきなものでした。90年代から、政府の国債の増発が1年に40兆円と大きくなっています。
・1990年代の10年は、公共投資のための国債発行
・2000年代からは、増えた社会保障費(特に年金、医療費)の支払いが主目的の国債発行
政府の負債は1,291兆円
1990年代から、企業に代わって30兆円から40兆円/年で増えてきたのが、政府の負債です。
【GDPの原理】
「所得=消費+貯蓄」です。「GDP=消費+投資=需要」です。「貯蓄=投資」にならないと貯蓄に見合う投資がない。ケインズが指摘した需要不足から経済は不況になり、失業が増えます。つまり、貯蓄の増加に見合う借り入れがあり、借り入れが投資にならないと、経済は不況化します。
2000年代は企業の借り入れ増は減り、設備投資が減りました。企業は、資金不足の部門から資金余剰のある貯蓄の主体になったのです。
世帯と企業の貯蓄の増加(30兆円〜40兆円/年)を吸収したのは、正常な経済のときの企業ではなく、財政が赤字の政府部門でした。
政府は、国債という負債証券を発行して余剰貯蓄を吸収し、それを財政支出(政府需要)に使いました。
毎年、30兆円から40兆円も大きくなった政府の負債は、2018年6月時点で以下です。
【政府の負債】
借入金 159兆円(金融機関からの借り入れ)
国債残高 1,087兆円(日銀所有が471兆円:営業毎旬報告)
その他負債 46兆円
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政府負債合計 1,292兆円
前稿で述べたように、政府は572兆円の金融資産を「管理」しています。この金融資産は、例えば年金基金(残高170兆円:18年9月末)のように、国民が保険として給料から天引きされて納めてきた国民の所有資産です。政府のものではない。政府はそれを管理しているだけです。
政府管理の金融資産572兆円を政府の負債1,292兆円から引いて、政府の純負債は720兆円とするエコノミストがいます。これは、「所有と、管理での専有」を区分できない誤りです。政府の負債は、1,292兆円から自治体と政府の日銀当座預金を引いたものとみるべきでしょう。
税収を上回る財政支出で、政府負債は年30〜40兆円の赤字に
<政府負債の問題は、償還がなく増え続けること>
政府負債の問題は、税収を上回る財政支出のため、構造的な赤字が1年30〜40兆円で続くことです。
政府の借り入れは毎年30兆円から40兆円は増えていきます。1%分が2.2兆円になる消費税に換算すると、財政赤字は16%分に相当します。
現在、日銀のゼロ金利策のため国債の利払いは9兆円と、とても少ない(2018年度)。残高となっている既発国債の、平均の約定金利が0.9%に低下しているからです。
<利払い額はむしろ減ってきた>
1990年から、国債の残高は6倍に増えましたが、日銀の金利の低下策のため利払い費は変わっていないのです。
政府が国債発行の抑制をしないのは、国債の残高が増えても金利低下のため、一般会計からの国債の利払い額が増えないためでもあります。借金を6倍に増やしても金利が下がって利払いが減った企業と同じです。
<日銀の保有国債は43%>
2012年4月からの量的緩和(日銀が金融機関から国債を買って通貨を発行)のため、国債の1087兆円(地方債を含む)のうち、日銀の保有が471兆円に増え、日銀の構成比は、43%に増えています。
日銀は2019年も、国債を40兆円買い増すでしょう。日銀の国債所有は「471+40兆円=511兆円」になる。毎年の新規国債の発行分に相当する国債は、日銀が買い取っているのです。
新発債分の国債は、事実上、市場引き受け(金融機関の買う受け)ではない。日銀が全額を買い取っているため、金融市場の資金収支では、国債が発行されいないことと同じです。
<出口政策は不可能>
リーマン危機のあとの大きかった金融緩和からの出口政策として、利上げをしている米国FRBと、量的緩和を停止したユーロのECBの方針に反して、日銀は国債の買いを停止して「出口政策」に向かうことはできない。
日銀が国債の買い上げ額を順次減らすテーパリング策を採ると、
・マイナス金利(8年債以下)
・0.093%の金利(10年債)
・0.347%の金利(15年債)
・0.953%の金利(40年債)
である国債の金利が高騰します
(注)国債価格は、金利1%の上昇につき8%(80兆円)下落します。
民間金融機関は日銀が買ってくれない限り、マイナス金利、0.1%の金利、0.3%の金利の国債を発行額分、買うことはない。
<ゼロ金利の国債への入札がある理由>
現在、例えば0.1%の約定金利の国債に金融機関が入札しているのは、直後に、日銀がそれより低い金利で(=国債価格は額面より高く)買ってくれる量的緩和を続けているからです。この買いがあるので、低い金利の国債を買っても日銀への売りで利益が出るからです。
日銀が出口政策に転じ、国債を増加買いしなくなれば、利下げによる国債価格上昇の利益はなくなります。逆に、金利上昇による国債価格の下落リスクが、高まります。国債の利益は、発行金利のみになります。マイナス金利の国債は、買った側が利払いをしなければならない。直接に損をする国債を買うことは、ない。
現在のマイナス金利と超低金利の国債は、もっていれば日銀が買ってくれるという期待から売れているのです。試みに、日銀が国債の買いを2019年4月から停止と発表してみて下さい。
市場の金利は、ほぼ1か月で3%に向かって上がり、国債価格は平均で24%下がるでしょう。
<金利の上昇と既発国債の下落:1%で81兆円>
さらに、出口政策で金利が上がると、1,087兆円の既発国債は1%の金利の上昇につき、7.5%(=81兆円)は価格が下がります。
国債の持ち手(儀日銀と金融機関)には、金利1%上昇につき81兆円の国債時価の保有損が生じるのです。
既発国債の価格下落と金利の上昇(借換債と新発債(合計149兆円:2018年)、利払いの増加による政府財政の破産を避けるためには、日銀は国債の買い増し(=量的緩和)を続けねばならない。
<政府の予定>
政府が語らない予定は、物価の上昇と所得の上昇(=税収が増える)、および消費税の増税により、次第に40兆円の財政赤字を減らして年度予算の国債依存を低下させていくことでしょう。
2019年には、円金利の大きな上昇はない。あっても、わずかでしょう。財政破産もない。2020年はどうか、2021年は?となると怪しくなります。政府財政は、金利が3%になるだけで破産に向かうからです。
対外純投資324兆円(2018年6月末)
日本は、
・貿易収支は時々赤字になっても、年間では黒字である(4.0兆円:2017年)
・海外投資の利回りと海外生産からの所得が約20兆円(2017年)ある
・ほぼ、両者を合計した額である、経常収支は22兆円の黒字です(2017年)
※参考:財務省 国際収支の推移
<国の経常収支と、資本収支の関係>
経常収支の黒字分が、資本収支(現金の流れ)では出超になって赤字になります。経常収支+資本収支=国際収支=0、です。海外の国債の買い、証券・株の買い、海外工場へ投資は資本(=マネー)の海外流出であり、国の資金収支では赤字になります。
(注)メディアや評論家が時々、国際収支が黒字というのは、経常収支というべきことの間違いです。
日本は経常収支の黒字のため海外へ資本を流出し、その資金の赤字の結果が対外資産の残高になっています。株を買うと現金が減る(現金収支は赤字)ことと同じです。一方、借り入れは、資金収支ではお金が入って来るので黒字になります。貸付は現金が減るので、資金収支では赤字です。
海外から日本への投資は、日本にとっては対外負債です。以下のような内容です。
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対外資産 998兆円 対外負債 674兆円
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海外証券 574兆円 円証券 392兆円
対外貸付 156兆円 借入金 181兆円
その他 286兆円 その他 101兆円
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対外純資産 324兆円
この対外純資産の残高324兆円が、資金上では円の海外流出分です。これは対外純貸付といっても同じです。ドル国債を買うことは、米国政府に対する貸付と同じことです。
<円の海外流出>
1995年以降の日本は、世界で一番金利が低い。このため、比較金利(イールドスプレッド)の高いドル国債、ユーロ債を買って来ました。
株も同じです。米国株の値上がりが大きかった。このため、銀行と投資家が米国株を買った。これらの合計が、上表の海外証券574兆円です。
海外貸付の増加も、国内の貸付金利(0.6%)より海外の金利の高いからです(三大メガバンク)。
その他の主なものは、工場の直接投資です(174兆円)。国内の生産コストが高いので、海外生産をするようになってきたのです。
トヨタでは、国内の生産が319台、海外生産が582万台と、1.8倍です。日産はもっと多い。国内生産は102万台、海外生産は4.7倍の474万台です。ホンダも、海外生産が5倍です(2017年)。
これが工場の直接投資です。海外の販売が大きな自動車では、海外工場での生産がはるかに多くなっています。
※参考:自動車産業ポータル 2017年 日系メーカー世界生産台数
2000年以降、国内の設備投資を増やさず、海外に工場投資をしてきたのが日本です。
対外資産998兆円、対外負債674兆円の結果が対外純資産324兆円です。金利の低い円は、海外に324兆円純流出したのです。
長期金利は、「実質GDPの期待成長率+期待物価上昇率」です。1995年以降の23年間、円の金利は世界1低い。これは、日本GDPの成長期待と物価の上昇予想が、主要国で一番低いということです。
(注)タックスヘイブン目的の、海外からの資本流入が多いため、利下げしてスイスフランの買いを抑制しているスイスと並んで低い。スイスの10年債の利回りは-0.159%です。
<海外(特に米国)のための異次元緩和だったのか>
このゼロ金利のため、円は海外に流出しました。日銀の量的緩和の目的は、国内の銀行貸し付けを増やして、企業の投資と世帯の商品需要を増やして、物価を上げることでした。
しかし、国内の貸付の増え方は、異次緩和前の2%〜3%増と同じであり変化がない。異次元と銘打った量的緩和は、2%の物価上昇という政策目的の達成には、完全に失敗しています。
代わりに、経済成長力が日本より高いために、金利のつく海外への貸付と証券購入が増えました。「日銀は海外(特米国)のために量的緩和を行った」と言えるくらいでした。
ここまでは、日本の資金循環の2018年6月時点での残高と、内容の動きです。
次回メルマガでは、金利と国債価格のカギになっている日銀の異次元緩和の先行きを予想します。通貨変動(円高、円安)を含んで、日本経済のカギにもなるものがここにあるからです。米国FRBとECBの金融政策も関連します。
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2019年01月17日
製造業は農業のようになる 就業者・生産額ともに減少
製造業がGDPに占める比率は18%で、就業者は全産業の16%しかいない
画像引用:http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2015/honbun_html/image/010102_19297.png
日本の製造業はもっと衰退する
日本の製造業の地盤沈下が叫ばれて久しく、日本製品が安価な中韓製品に市場を奪われた話しか聞かない。
だがこれは経済成長に伴う必然的な出来事で、アメリカや欧州先進国も過去に経験してきました。
製造業は人件費が安く進んだ技術があるという矛盾した条件を持つ国が有利で、それが今は中国になっています。
かつては日本が高い技術をもちながら人件費が安かったので、世界最強の製造業を持っていました。
だが製造業で成功すると他の産業も発展するので、必然的に人件費が高く高コストな国になります。
先進国になると人件費だけでなく土地価格も高いし、サービス価格なども高く電気料金なども高くなる。
日本の製造業が弱くなったのは日本が先進国になったから高コストになったので、必然的な現象です。
もし先進国のまま強い製造業を維持しようとすると、人件費を安く押さえつけるとか何らかのトリックが必要になる。
ドイツはユーロという「後進国」に加盟することで旧ソ連諸国の安い労働力を使うなどして強い製造業を維持しています。
ユーロ入りしなかったイギリスはこのような事ができないので、日本と同じように製造業が衰退しました。
アメリカの製造業は第一次大戦から第二次大戦まで世界最強だったが、やはり先進国になってからコスト上昇で衰退しました。
このように先進国に成ったら製造業が衰退するのは自然なことなので、日本もそうなるのです。
製造業は衰退しても良い
1970年頃には第一次(農業)と第二次産業を合わせた就業者は、全体の50%以上も占めていました。
現在は農業3%台で製造業16%なので、合計しても19%程度の就業者しかいません。
GDPに占める製造業比率はかつて30%超だったが、現在は18%台まで低下しています。
増えたのは第3次産業で、サービス業やIT関連、ネット産業などが増えました。
製造業が衰退したので高度成長期のように爆発的な経済成長はもう期待できません。
代わりにアメリカやフランスのような輸出や製造業に依存しない、国内主導の経済に移行しつつあります。
フランスの製造業とかフランスの有名企業と言っても何も思い浮かばないと思いますが、一人当たりGDPでは日本より多い。
欧州で製造業が存在し貿易が黒字なのはドイツだけで、英仏など他の国はすべて製造業が存在せず貿易赤字です。
それでも生活水準は日本より高いし休みは多いし、一人当たりGDPで日本を上回る国が多い。
かえって製造業を維持している日本は生活水準が低く一人当たりGDPも少ないくらいで、何のために製造業にこだわるのかわからない。
http://www.thutmosev.com/archives/78738971.html
▲△▽▼
2018年03月03日
経済センスゼロの麻生大臣と安倍首相
この2人よりましな人が居ないとしたら、日本の将来は暗い
これからも日本経済は良くならない
裁量労働制の議論で分かったのは、日本のリーダーの誰も経済の簡単な原則を知らないという事でした。
麻生財務大臣・安倍首相・官僚たち・自民党の次期首相候補の誰も「給料を減らせばGDPが減る」のを知りませんでした。
話は「経済優先の安倍首相」と「生活優先の野党」になってしまっているが、そうではありません。
「国民の給料の合計=GDP」なのだから残業代をカットすれば当然GDPが減り、税収が減って財政悪化するのです。
たとえば某安売りブラック衣料品店の基本給12万円、残業代8万円で20万円払っていたとします。
これからは基本給12万円だけで労働時間は同じになり、労働者の収入は減ります。
収入が減ったので消費しなくなり、納税もしなくなり、国保や年金も払えなくなり国の財政は悪化します。
こういう話なので、経済にとっては最悪で国の税収は悪化、デフレ経済に逆戻りするでしょう。
問題はどうも麻生財務大臣や安倍首相らが、「自分たちは経済に良い事をしようとしている」と考えているらしい事です。
確信犯の悪党ならまだ政策転換する可能性があるが、無知ゆえに「良い事をしている」と思っているから直らない。
給料を減らす発想は輸出幻想から来ている
政治家の無知をもたらしているのは経済界、経団連で名前を聞くと経済に良い事をしているように見えます。
ところが経団連を牛耳っているのは輸出企業で、輸出企業は日本が滅んでも輸出を拡大するのが利益に繋がります。
例えばトヨタの労働者の時給を「100円」にしたら、日本は滅びるがトヨタは輸出で大儲けします。
こんな連中が政府の顧問として政策提言や助言をしているので、「給料下げれれば経済が良くなる」と思い込むのです。
輸出は日本経済の5%程度に過ぎないが、60%以上を占める消費と内需は輸出のために犠牲にされている。
その輸出なのだが、輸出が経済に貢献しているというデータはなく、世界で高成長している国のほとんどが貿易赤字です。
GDPが大きな国で貿易黒字なのは中国・ドイツ・日本の3ヶ国くらいなのにたいして、他の大半は貿易赤字です。
では貿易黒字国は赤字国より成長率が高いかというと、そんな事はありません。
中国の成長率は高いがドイツと日本は高成長ではなく、赤字のアメリカ・カナダ・フランス・オーストラリアとそれほど変わりません。
国のリーダーが無知では経済は回復しない
現代では生産技術の向上によって、一カ国で全世界全ての工業製品を生産して輸出するのも可能になりました。
すると輸出国なんてのは一つあれば十分なので、過当競争で「輸出するほど国が衰退する」現象が起きます。
反対に貿易赤字国は自国内の経済活動で成長しているので、他国との競争に勝つ必要がなく、安定した経済成長をしています。
人口が多い国だけではなく、日本より人口が少なく面積が狭い貿易赤字国で、日本より良い暮らしをしている国もあります。
貿易赤字にする事で為替が安くなり、輸出競争力が高まるという矛盾した現象も起きます。
アメリカは貿易赤字なのでドルが安く、安価な製品を日本に輸出して儲けています。
日本は輸出を増やせば増やすほど貧しくなりGDPが減少し、GDPを増やすには国内消費を増やすしかありません。
国内消費を増やすためには国民全員の収入を増やす必要があり、その認識があれば「残業代カット」という発想が出てくる筈がありません。
消費税というのも最悪で、消費すると罰せられるのだから、100%消費を縮小させGDPを悪化させます。
ところが国のリーダーがこの事を理解せず、経済を悪化させて「おれは良い事をした」と思っています。
http://www.thutmosev.com/archives/75153438.html
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