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対米協調を画策したのに対露協調させられるイラン (田中宇)
http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/223.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2015 年 7 月 22 日 09:33:15: KqrEdYmDwf7cM
 

http://tanakanews.com/150721iran.htm

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015年7月21日 http://tanakanews.com/

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★対米協調を画策したのに対露協調させられるイラン
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 7月14日、イランと米欧露中(P5+1)が、イランの核兵器開発疑惑を
解決する協約(Joint Comprehensive Plan of Action)を締結した。イランは、
核爆弾を作りうる(本来は原発の燃料を作る)ウラン濃縮用の遠心分離器の
台数を3分の1に減らし、濃縮ウランの在庫の上限を現在の96%減である
300キログラムに制限する。濃縮ウランを取り出しやすいアラクの重水炉を、
取り出しにくい軽水炉に作り替える。イランは、これらの規制を10年間以上
行う代わりに、国連と米欧が現在行っている対イラン制裁をすべて解除する。
米国が今後も対イラン武器輸出を停止し、国連の通常兵器の対イラン輸出禁止
決議が5年後まで維持されることも協約に盛り込まれている。米欧や国連がイ
ランに対する制裁を完全に解除するのは、1979年のイスラム革命以来36年
ぶりだ。

http://www.mid.ru/foreign_policy/news/-/asset_publisher/cKNonkJE02Bw/content/id/1571042
Joint Comprehensive Plan of Action

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-14/iran-world-powers-said-to-have-reached-nuclear-agreement-ic2ypjym
Iran, World Powers Have Reached Nuclear Agreement

http://www.zerohedge.com/news/2015-07-14/world-powers-reach-landmark-nuclear-deal-iran-major-hurdles-remain-oil-slides
World Powers Reach Landmark Nuclear Deal With Iran, Oil Slides

 今回のイラン協約について、米国の分析者ガレス・ポーター(Gareth Porter)
が興味深い分析を書いている。イラン核開発疑惑は、米国が勝手にイランに
濡れ衣をかけたものでなく、イランが米国を制裁解除の交渉に引っぱり込む
ため、わざと疑惑を引き起こすような核(の平和)利用を拡大したという分析
だ。1979年のイスラム革命に絡んだテヘラン米大使館人質事件以来、米国
はイランを制裁し続けた。イラン側は、何とか米国に制裁を解かせ、関係を改
善したいと考えた。90年代のクリントン政権がイランとの関係改善を模索し
たが(米政界の親イスラエル派の反対により)実現しなかった。この失敗を受
け、97−98年ごろにイラン側が考えたのが「ウラン濃縮を急拡大し、米国
にイランが核兵器開発しているという疑念を抱かせ、米国を交渉の場に引っ張
り出す」という策略だった。

http://original.antiwar.com/porter/2015/07/15/how-a-weaker-iran-got-the-hegemon-to-lift-sanctions/
How a Weaker Iran Got the Hegemon To Lift Sanctions

 イランは03−05年にウラン濃縮を拡大する計画を進め、EUはイランと
交渉する気になったが、ブッシュ政権の米国はイランとの交渉を拒否した。米
国は、代わりに軍事的にイランを政権転覆する「悪の枢軸」計画を掲げ、EU
にもイランと交渉するなと命じ、交渉を潰した。イランがウラン濃縮の拡大計
画を続行し、遠心分離器を9千台に増やし、さらに9千台を用意し、医療用の
20%濃縮ウランの備蓄も増やしたところ、オバマ政権2期目の12−13年
になって、ようやく米国は真剣にイランと交渉する気になり、今回の協約締結
までこぎつけた。交渉で米国は、最後まで制裁の全面解除を嫌がったが、交渉
にかけるイランの唯一最大の目的は制裁の全面解除だったので、イランは全面
解除でなければ交渉を破談にすると強硬姿勢をとり、制裁の全面解除を実現し
た(米国の対イラン武器輸出停止は残っている)。

http://www.ft.com/cms/s/0/71c6cbd0-2682-11e5-9c4e-a775d2b173ca.html
With nuclear deal struck, US focus shifts to wider agenda with Iran

 このポーターの分析は、私にとって興味深い点がいくつもあった。まず、な
ぜ米政界を牛耳るイスラエル右派勢力が、911後のブッシュ政権の中東戦略
として外交交渉でなく武力による政権転覆を選んだ理由の一つが、核問題でイ
ランと交渉すると、イランの策に乗ってしまうことになるからだった、と考え
られる点だ。ブッシュ政権は911後、中東でイラクとイランを「悪の枢軸」
に指定し、両国との交渉を拒否した。イラクは、湾岸戦争以来の経済制裁で国
民が疲弊し、国連や欧州が「人道的な見地からイラクの経済制裁を解くべきだ」
と米国に圧力をかけていた。「政権転覆」を強調しなければ、米国はイランや
イラクと交渉せざるを得なくなり、両国に対する制裁が解除され、イスラエル
に対する脅威が増していただろう。イラクは軍事的に潰されたが、イランは
米国を核交渉に引っぱり込んで制裁解除を実現し、その結果イランとイスラエ
ルの善悪が逆転し、イスラエルは困窮している。

http://www.presstv.ir/Detail/2015/07/15/420443/Hammond-Iran-Israel-P51-nuclear-deal
Israel wants permanent standoff with Iran: British foreign secretary

http://tanakanews.com/100519nuclear.htm
善悪が逆転するイラン核問題

 イランが巧妙だったのは、国内原発の燃料製造に必要だといって遠心分離器
を大増強し、米欧が経済制裁の一環で医療用放射性同位体を売ってくれないの
で国内で作らざるを得ないと言ってアラクの原子炉で20%濃縮ウランを大量
に製造するなど、NPTで許容された「核の平和利用」の範囲内で、その気に
なれば核兵器に転用できる核の設備や物質を増強したことだ(日本を含む多く
の国々が、その気になれば核兵器転用できる設備や物質をたくさん持っている)
。米国やイスラエルは、イランが核兵器を作っている「証拠」として多くの
資料をIAEAに提出したが、それらは濡れ衣にしかならないものだった。イ
ランは今回の協約で、遠心分離器を大幅に減らし、濃縮ウランもほとんどを手
放すが、これらは最初から交渉の材料として増設・増産したもので、交渉が妥
結すればイランにとって無用の長物だ。

http://tanakanews.com/100618iran.htm
イラン制裁継続の裏側

 米国側は、ウラン濃縮をめぐるイランの策略に早くから気づいていながら、
わざと濡れ衣の証拠を出したりして、意図的に下手くそに対応していた可能性
がある。米国側の反イラン・親イスラエルの勢力として有名になったのが、ブ
ッシュ政権のネオコンなど共和党のタカ派だが、彼らはイラクの大量破壊兵器
について「ニジェールウラン問題」など、捏造が簡単にばれるお粗末な「証拠」
を用意したり、イランのスパイだった亡命イラク人のアハマド・チャラビを
重用したりといった、半ば意図的な失策を繰り返した。ネオコンは「反イラン・
親イスラエル」のふりをした「親イラン・反イスラエル」だったといえる。

http://tanakanews.com/d0408mi6.htm
諜報戦争の闇

http://tanakanews.com/110614iraq.php
米軍撤退を前にイラク人を怒らせる

http://tanakanews.com/e0619neocon.htm
ネオコンは中道派の別働隊だった?

 ブッシュ政権の「悪の枢軸」にはもう一カ国、北朝鮮が入っていた。北朝鮮
が核兵器を開発したのは、イランがウラン濃縮を拡大して米国を交渉の場に引
っ張り出そうとした時期と重なっている。イランと同様、北朝鮮も、冷戦後ず
っと、米国との関係正常化による政権維持を望んできた。イランはミサイル技
術などで北朝鮮との関係を持っていた。北朝鮮の核武装は、イランの策略を真
似た可能性が強い。イランは、イスラエルの強い監視力があるので実際の核兵
器を作らなかったと考えられるが、北朝鮮に対する米韓の監視力は弱いので、
北は実際の核兵器を作った。

http://tanakanews.com/130213nkorea.htm
北朝鮮の核実験がもたらすもの

http://tanakanews.com/070130multipolar.htm
北朝鮮・イランと世界の多極化

 北朝鮮はイランをまねて、米国を交渉の場に引っ張り出すために核武装した
が、米国は北を政権転覆の対象として見るばかりで交渉を拒否し、03年以降、
北の面倒を見る役目を中国に押しつけた。中国は最初いやいやながら、やがて
本腰を入れて、北朝鮮の監督役になり、先代の金正日は中国と仲良くしたが、
今の金正恩は中国を毛嫌いし、北をめぐる対立は解決されないままになって
いる。

http://tanakanews.com/140509korea.htm
御しがたい北朝鮮

http://tanakanews.com/131218korea.htm
張成沢の処刑をめぐる考察

 イランは核兵器を隠し持っているに違いないと言う人がいるが、私はそう思
わない。イランが、仇敵のイスラエルをへこますには、むしろ自国が核の平和
利用に徹し、正義の側に立って「中東非核化」を主張し、30年前からこっそ
り核武装してNPTにも入っていないイスラエルを非難する方が得策だ。イラ
ンがこっそり核武装すると、強い諜報力を持つイスラエルに察知されてしまう。
イスラエルは自国の国家的な生死がかかっているので本気で諜報活動するが、
米国は元来が自立的な大陸国なので本気で諜報しないし、諜報で得た情報を
政権中枢が上手に使わない。イスラエルは最近「イランがわが国の存在を認め
るなら、核実験禁止条約に入ったり核査察に応じても良い」と言い出している。
イランが和解してくれるなら、イスラエルは核兵器を廃棄する用意があると
いう意味だ。イランの優勢、イスラエルの劣勢が読みとれる(イスラエルこそ、
廃棄宣言した後も核兵器を隠し持ちそうだが)。

http://news.antiwar.com/2015/06/24/israel-wont-ratify-nuclear-test-ban-treaty-unless-iran-recognizes-them/
Israel Won't Ratify Nuclear Test Ban Treaty Unless Iran Recognizes Them

http://news.yahoo.com/us-presses-israel-talks-middle-east-nuclear-free-135229334.html
US presses Israel on talks for Middle East nuclear-free zone

 7月20日、国連安保理が、米国の提案で、イランへの制裁を解除する決議
を全会一致で可決した。可決の方法は、めったに採られない「アンダー・サイ
レンス」(under silence)だった。通常の、各国が賛成か反対かを表明する
決議と異なり、この方法は、反対の国だけが意志表明し、反対表明がなければ
可決、というものだ。イラン協約に対するイスラエルの強い反対の前に、政界
をイスラエルに牛耳られている米国が賛成票を投じることが難しいため、この
決議方法が採られた。反イスラエルであるオバマが、イラン協約に反対するの
が世界中でイスラエルだけであることを示す意味もあった。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/198273
UN to Adopt Iran Nuke Deal Monday

http://www.presstv.com/Detail/2015/07/20/421104/Iran-Foreign-Ministry-JCPOA-ballistic-missiles-P51-Vienna
Iran missiles outside scope of UNSC resolution, Foreign Ministry says

http://news.antiwar.com/2015/07/20/un-security-council-eu-both-endorse-iran-deal/
UN Security Council, EU Both Endorse Iran Deal

 オバマ政権は、イスラエルをなだめるため、巨額の軍事支援を約束し、国防
長官がイスラエルを訪問して「まだイラン核問題を軍事解決(空爆)する可能
性が失われたわけでない」と好戦的な発言を派手に発している。しかし、協約
が確定した今、好戦的な発言は、茶番性の発露でしかなくなっている。

http://news.antiwar.com/2015/07/19/pentagon-chief-threatens-to-attack-iran/
Pentagon Chief Again Threatens to Attack Iran

http://news.antiwar.com/2015/07/19/us-preparing-unprecedented-new-arms-package-to-israel-for-iran-deal/
US Preparing `Unprecedented' New Arms Package to Israel for Iran Deal

 7月14日の核協約の合意後、国連とEUは、協約への同意を正式決定した。
しかし米議会は、協約を拒否する可能性が高い。イラン問題で、イスラエル
傀儡の米議会と対立するオバマは、イラン協約を、議会の批准が必要な条約で
なく「行動計画」の合意文にした。それでも米議会は、議会としてイラン協約
を拒否できる新法を作り、7月19日から60日間の審議に入った。米議会は、
イラン協約を否決しそうだ。オバマが拒否権を発動できない3分の2以上の
議員が否決に回るかもしれない。この場合、米国はイランと協約していないの
と同様の状態になる。

http://news.antiwar.com/2015/07/19/iran-deal-sent-to-us-congress-starting-60-day-review/
Iran Deal Sent to US Congress, Starting 60-Day Review

http://rt.com/op-edge/271045-iran-deal-talks-nuclear/
What It Really Takes For a US-Iran Deal

http://www.ft.com/cms/s/0/14590158-2c94-11e5-8613-e7aedbb7bdb7.html
Obama reads Iran better than his critics

 私から見ると、オバマはまさにこの展開を望んでいる。米国がイラン協約に
参加しなくても、国連やEUはすでに協約に同意しており、米国以外の世界は
イラン制裁を解除する。イラン経済は、中露や欧州諸国との関係だけで十分発
展できる。イスラエルや軍産複合体に牛耳られた米国が関与しない方が、イラ
ンは発展するし、中東は安定する。好戦的な米国が孤立した方が、世界は平和
になる。米議会がイスラエル傀儡(を演じる者)としてイラン協約を拒否する
ほど、オバマは露中や、露中の力が強い国連安保理に頼る口実を得て、国連主
導の国際社会が米国を無視してイランを強化することに道を開く。

http://news.antiwar.com/2015/07/17/white-house-iran-sanctions-would-collapse-if-congress-blocks-iran-deal/
White House: Iran Sanctions Would Collapse if Congress Blocks Iran Deal

http://www.examiner.com/article/senators-fear-obama-may-bypass-congress-to-work-with-u-n-on-iranian-deal
Senators fear Obama may bypass congress to work with U.N. on Iranian deal

http://www.cnbc.com/2015/07/17/iran-may-soon-be-open-for-business-but-not-to-us-firms.html
Iran may soon be open for business, but not to US firms

http://tanakanews.com/150715sco.php
◆中露がインドを取り込みユーラシアを席巻

 イランはもともと、米国との関係改善を目的としてウラン濃縮を増強し、米
欧を交渉に引っぱり込んだ。イランは、米国の覇権を壊すことを目的とせず、
逆に、米国の覇権下でうまく立ち回ることを望んだ。イランのロハニ大統領は、
協約後「米国やNATOと一緒にISIS(イスラム国)と戦うことができる」
と期待を表明した。しかし、それはたぶん実現しない。ISISは米国の創造物
だ。米国の方が、自国の覇権下にぶら下がる国々を増やすのを拒否している。

http://atimes.com/2015/07/historic-iran-nuke-deal-resets-eurasias-great-game-escobar/
Historic Iran Nuke Deal Resets Eurasia's "Great Game"

http://tanakanews.com/150604isis.htm
わざとイスラム国に負ける米軍

 米国は、オバマが世界のイラン制裁を解除し、米議会が米国自身の対イラン
関係の改善を拒否することで、イランが頼るべき国を、米国でなく、ロシアや
中国の方にねじ曲げることをやっている。オバマだけでなく、米議会の中にも、
米単独覇権主義者のふりをした多極主義者がかなりいて、好戦策のかたちを
した覇権消失策を展開している。

http://www.mcclatchydc.com/news/nation-world/world/article27498922.html
Would Congress killing Iran deal play into Putin's hands?

http://tanakanews.com/150517coldwar.php
◆負けるためにやる露中イランとの新冷戦

http://tanakanews.com/150420iran.php
◆イランとオバマとプーチンの勝利

 この点で、イランは北朝鮮と似ている。イランは、米国との関係改善を望ん
だのに、協約が実現してみると米国は抜けていて、イランは経済面で中国、軍
事外交面でロシアに頼って、自国の再建や中東での影響力の拡大をやる道に入
っている。北朝鮮も、米国との関係改善のための交渉に入ることを目標として
核武装やミサイル試射を繰り返したが、米国は北の面倒を見る役目を中国に押
しつけ、北が好戦的な態度をとるほど中国が出てくる事態になっている。対米
関係を最重視し、その裏返しとして中国を嫌う点で、北朝鮮は日本とそっくり
だ。日本と北朝鮮は、世界一の隠然独裁と、世界一の顕然独裁という強烈な対
照性があるが、特殊性を含めた鏡像的な似た者どうしだからこそ、日朝は近親
憎悪でヒステリックにいがみ合っている。

http://tanakanews.com/120229japan.htm
民主化するタイ、しない日本

 米国は、イランをロシアに押しつけ、北朝鮮を中国に押しつけるとともに、
米国自身はロシアや中国への敵視を強め、中露が米国に頼らないで世界運営を
するよう仕向けている。オバマはイラン協約後、ロシアの協力がなければイラ
ン協約は実現しなかったと表明し、プーチンに電話して謝意を述べた。その一
方で米国は、イランの核ミサイルを迎撃する口実でロシアの近くに配備した迎
撃ミサイルを「イランと協約したのだから迎撃ミサイルはもう要らないはず。
撤去せよ」とロシアに言われても無視して配備し続け、ロシアを怒らせている。

http://www.dw.com/en/obama-thanks-putin-for-iran-nuclear-deal/a-18586496
Obama thanks Putin for Iran nuclear deal

http://www.presstv.ir/Detail/2015/07/14/420220/Russia-Lavrov-Obama-NATO
Russia urges end to NATO missile system after Iran talks

 米軍は最近、NATOを引き連れて、ウクライナで反露的な軍事演習を開始
した。米国は、ウクライナ軍がミンスク停戦合意を破ってドネツクの中心街を
空爆しても黙認し、反露的で好戦的なウクライナ政府を支持し続けている。米
国が、イランをロシアの参加に押しやる一方でロシア敵視をやめないので、ロ
シアはむしろ米国に気兼ねせず、イランを仲間に入れて中東での影響力拡大に
励むようになっている。その典型が、イラン協約でアサド延命の可能性がぐん
と強まったシリアだ。シリアの話は長くなるのであらためて書く。

http://www.presstv.com/Detail/2015/07/20/421114/Russia-Ukraine-conflict-US-military-NATO
Russia says US-led military drills in Ukraine can have 'explosive' upshots

http://oilprice.com/Energy/Energy-General/Obamas-Goals-For-Middle-East-Hinge-On-Putin.html
Obama's Goals For Middle East Hinge On Putin

http://news.antiwar.com/2015/07/19/ukraine-rebels-trade-blame-as-central-donetsk-shelled/
Ukraine, Rebels Trade Blame as Central Donetsk Shelled

 EUは6月、対露制裁を半年延長したが、実のところ、欧州企業は対露制裁
を守っていない。ロシアの油田開発の合弁枠は、制裁を守る米国の石油大手が
撤退した後、代わりに英国やオランダ、フランス、インドなどの企業が入り込
む展開になっている。米国は単独覇権国であるはずなのに、米国企業が米国籍
であるというだけの理由で損をするようになっている。対露制裁は、対イラン
制裁以上の茶番劇と化している。

http://www.ft.com/cms/s/21d66e58-10ef-11e5-8413-00144feabdc0.html
EU's Russia sanctions fail to dent oil deals

http://oilprice.com/Energy/Crude-Oil/Are-The-EU-And-Asia-Turning-A-Blind-Eye-To-Russian-Sanctions.html
Are The EU And Asia Turning A Blind Eye To Russian Sanctions?

 ロシアは今や、イランを好きなように自陣営に引っぱり込めるようになった。
しかしロシア(露中)は、イランを上海協力機構に入れることを延期した。
上海機構は、7月初めの年次サミットにサミットにイランのロハニ大統領を招
待して演説させるなど、核協約の実現と同時にイランをオブザーバーから昇格
して正式加盟国にする決定をしそうに見えた。しかしサミット時の記者会見で
プーチン大統領は「イランの加盟は、印パの正式加盟の手続きがすんだ後にな
る」と明言した。印パの加盟手続きが終わるのは来年初めだから、今年中のイ
ランの加盟はないことになる。

http://atimes.com/2015/07/shanghai-cooperation-organization-turns-pan-asian/
Shanghai Cooperation Organization turns Pan Asian

http://www.presstv.ir/Detail/2015/07/06/419081/Iran-Russia-President-Hassan-Rouhani-SCO-BRICS-Ufa
Rouhani due in Russia to attend BRICS, SCO summits

 上海機構(中露)がイランをすぐに入れない理由として考えられるのは、同
機構への印パの加盟が印パの和解を前提としていたように、イランの加盟がイ
ランと敵対諸国との(ある程度の)和解を前提としているのでないかというこ
とだ。イランの敵対国といえば、サウジアラビアとイスラエルだ。イスラエル
がイランと和解できるものなのか、大きな疑問があるが、イランとサウジの和
解は、入り口までなら今年中に進めるかもしれない。軍事外交のシステムが米
国べったりのサウジが、米国勢(軍産イスラエル)から「足抜け」を許される
のかも疑問だが、サウジはすでに最近、米国のロシア敵視を無視して、ロシア
に急接近している。今後の展開が注目される。

http://tanakanews.com/150706brics.php
◆多極側に寝返るサウジやインド

この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/150721iran.htm


●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆独仏を振り回すギリシャ
http://tanakanews.com/150717greece.php
【2015年7月17日】ギリシャのチプラス首相は今年初めにトロイカと交
渉開始して以来、トロイカから譲歩を引き出すたびに、チプラス自身も譲歩す
るやり方を繰り返してきた。ギリシャの左翼や世論は「チプラスは国を裏切っ
た」と怒るが、チプラスはむしろ国内の怒りを使って自国の譲歩を骨抜きにす
る策を講じてきた。今回のギリシャ議会の緊縮策の可決は、これまでにない大
譲歩だが、同時に、EUの主導役であるドイツも、IMFに借金を返さないま
まのギリシャに追加の救済融資をするという大きな譲歩をしている。マスコミ
は「メルケルがチプラスに譲歩させた」と喧伝するが、むしろ逆だ。

◆中露がインドを取り込みユーラシアを席巻
http://tanakanews.com/150715sco.php
【2015年7月15日】ここ数年、米国の安保戦略や経済政策が次々と失敗
したのに、米国の議会や政権中枢を好戦派や金融界救済派が握り続け、世界の
運営を米国に任せておくことが危険な状態になった。中露は、米国覇権の支配
を受けない地域を世界で増やす必要があると考え、上海機構やBRICSを拡
大した。上海機構には、朝鮮半島、ASEAN、中東アラブ、欧州をのぞく、
ユーラシア大陸のほとんどの国が参加している。中露は、今回印パを上海機構
に入れ、ユーラシア大陸を席巻した。地政学の定理に従うと、今後の世界を支
配するのは、米国でなく、中露ということになる。

◆多極側に寝返るサウジやインド
http://tanakanews.com/150706brics.php
【2015年7月6日】ロシアのサンクトペテルブルグで開かれた経済フォー
ラムは、同市が出身地のプーチン大統領が主催する年次の国際経済会議だ。米
国がロシア敵視を強める中、敵国が開いた国際会議ということで、米欧日では
重視されなかった。しかし実のところ、この会議では地政学的な大転換となる
国際協定が2つも締結された。サウジアラビアとインドが、相次いでロシアと
の経済軍事関係の強化に踏み切ったことだ。  

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コメント
 
1. 2015年7月23日 21:08:08 : LY52bYZiZQ
International | 2015年 07月 23日 20:31 JST
イラン、制裁解除後に欧州との通商目指す 事業規模1850億ドルに
http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20150723&t=2&i=1066413645&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&r=LYNXNPEB6M0IU
 7月23日、イランのネマツザデ工業鉱山貿易相は、核問題での合意を受けた経済制裁の解除後、石油やガスなどを欧州に輸出することを目指していると表明した。写真はイラン国旗。3月撮影(2015年 ロイター/Heinz-Peter Bader)

[ウィーン 23日 ロイター] - イランのネマツザデ工業鉱山貿易相は23日、核問題での合意を受けた経済制裁の解除後、石油やガスなどを欧州に輸出することを目指していると表明した。2020年までにプロジェクトの規模を1850億ドル相当にする予定だという。

ネマツザデ氏は、ウィーンでの記者会見で「欧州から輸入するだけの関係になることに関心はない」「双方向の貿易とともに、開発や技術面での協力も検討している」と述べた。

国際連合の安全保障理事会によると、経済制裁の解除は来年以降となる見通し。

・・http://jp.reuters.com/article/2015/07/23/iran-nuclear-industry-idJPKCN0PX19920150723?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29


2. 2015年7月31日 13:07:58 : LY52bYZiZQ
ウクライナ危機の終わり
2015年7月30日  田中 宇

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 ウクライナ危機は、米国が、ロシア敵視策の一環として扇動して起こしたものだ。昨年初め、ビクトリア・ヌーランド国務次官補ら米国の外交官たちが、親露的だった当時のヤヌコビッチ政権を倒す極右勢力の政治運動を加勢してウクライナの政権を親露から反露に転換した。反露新政権がウクライナ東部のロシア系国民を抑圧し始めたので、ロシア系住民はウクライナからの分離独立を要求して内戦になったが、米国はそれをロシアのせいにした。(危うい米国のウクライナ地政学火遊び)

 ウクライナの反露政権が、セバストポリ軍港のロシアへの貸与をやめると表明し、ロシアがもともと自国領だったセバストポリを含むクリミア自治州の分離独立・回収に動くと、米国はそれをロシアの侵略行為と非難し、欧州を巻き込んでロシア制裁を開始した。米国は最初から、ウクライナの政権を親露から反露に転覆すれば、ロシアがクリミアを回収し、米国がロシアを非難する格好の口実になると考えていたのだろう。(露クリミア併合の意味)

 今年初め、露独仏の努力でウクライナ東部の停戦協定(ミンスク2)が締結された後も、米国は、停戦違反を繰り返すウクライナの反露的なポロシェンコ政権を支援し続けている。米国は、NATOや、欧州の対米従属状態など、自国の覇権体制を守るため、ウクライナの内戦を起こしてロシア敵視を強化し、米国が欧州を引き連れてロシアと恒久対立する新冷戦体制を作ろうとしており、危機はまだまだ続くというのが、これまで多い分析だった。(ウクライナ再停戦の経緯)(安定に向かいそうなウクライナ)

 ところが今、米国は突然、ウクライナの内戦を急いで終わらせようとする動きを始めている。7月16日、米国の圧力を受けて、ウクライナのポロシェンコ大統領が、東部地域に自治を与える憲法改定の法案を議会に提出した。同日、米国からヌーランド国務次官補がウクライナ議会に乗り込み、議会の3分の2の賛成が必要な憲法改定の法案が間違いなく可決されるよう、圧力をかけた。(Poroshenko to change Ukraine's Constitution under Western pressure)

 これまでウクライナ危機をさんざん扇動してきたヌーランドが(おそらくオバマの命を受け)危機を沈静化する憲法改定をしろとウクライナに圧力をかけるのは皮肉だ。圧力の効果で、東部の親露派を敵視して自治付与の憲法改定に反対してきた議員たちもしぶしぶ賛成し、法案は288対57で可決され、憲法裁判所の判断を経て正式決定することになった。(Kiev and the rebels agree that Ukraine divided cannot stand)(Ukraine's Constitutional Court begins hearing amendments on decentralization of power)

 東部に自治を与える憲法改定は、ミンスク2の停戦協定に盛り込まれた、ウクライナにとっての義務だった。ロシアは以前からウクライナに憲法改定を求めてきたが、ウクライナは拒否していた。憲法で東部に自治が与えられれば、内戦は終結し、ロシアとウクライナの対立も下火になり、ウクライナ危機が解決に向けて大きく動く。これは、ロシアが切望し、米ウクライナが拒否してきた展開だ。(Ukraine passes `historic' constitutional changes to comply with Minsk agreements - Nuland)

 米国がウクライナ問題で急にロシアに譲歩するようになったのは、米国がイラン核問題やシリア内戦、ISISなどの中東の諸問題でロシアに頼らねばならなくなったため、中東諸問題の解決の主導役をロシアにやってもらう代わりに、ウクライナ問題で米国がロシアに譲歩することにしたからだ、と解説されている。だからイラン核問題が解決された直後のタイミングで、米国がウクライナに自治付与の憲法改定をやらせたのだという。米欧は、中東の問題解決をロシアにお願いするため、ウクライナを見捨てたとも評されている。(US, EU 'Give Up' Ukraine to Seek Russian Political Support)(Ukraine As A Bargaining Chip?)

 しかし、イランやシリアの問題解決との交換という筋書きは、よく考えるとおかしい。ロシアは、米国が何も譲歩しなくても、独自の国益に沿ってイランやシリアの問題解決を進めていたからだ。米国はロシアに譲歩する必要などなかった。(プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動)(中露結束は長期化する)

 米国がウクライナ問題でロシアに譲歩した理由の一つは、イラン核合意の締結にロシアの協力が必要で、イランと核協約を結ぶ前に、米露が交換条件について談合していたと報じられている。しかし、イラン核合意は少し前まで、米国よりロシアが推進を希望し、米国はむしろ推進を邪魔する方だった。ロシアは、米欧に制裁されたイランが最も頼りにしてきた国だ。米国がロシアに譲歩したのは、ロシアがイランをけしかけてISISを潰す戦いをやらせてほしいから、とも言われているが、ロシアは米国に頼まれなくても、ISISと戦うイランを支援してきた。(Obama: Iran must play a role in ending Syria's civil war)(Kerry to talk with Russia on Islamic State fight and role Iran might play)(イランとオバマとプーチンの勝利)

 米国は、ロシアがシリアのアサド政権と反政府派を交渉させ、シリア内戦を終わらせてほしい。その際、アサド大統領をやめさせてほしいので、米国はウクライナ問題で譲歩したという説もある。ロシアはずっとアサドを支援してきたが、最近、米国に頼まれ、プーチンらロシア高官がアサドを見放すような言動をしているとも報じられている。(Russia Seen Reassessing Support for Assad)

 しかし、今のシリアには、アサド政権以外に、シリアの国家としての統合を維持できる勢力がない。アサドを辞めさせたら、シリアはリビアのように国家崩壊し恒久内戦化する。サウジやトルコは「(親イランである)アサドを辞めさせるなら、ロシアと一緒にシリア内戦終結に協力しても良い」と言っているので、ロシアはアサドを見放すかのようなそぶりを見せているが、実のところロシアはアサドを辞めさせるつもりなどない。(Obama eyes next diplomatic steps with Iran)

 米国はまた、ロシアがシリア内戦の終結を主導する際、サウジアラビアなどアラブ諸国とイランの間を取り持ってほしい、とも要請している。これまた、米国に頼まれなくてもロシアがやろうとしてきたことだ。米国のロシア敵視は、今や「ふりだけ」だ。米国は、中東とウクライナの両方で、ロシアを有利にし、強化している。米国によって強化されたロシアやイランは、米国の単独覇権体制を崩し、多極型の覇権構造に転換する動きを強めている。(Russia moves to middle ground on Syria)(Kerry to talk with Russia on Islamic State fight and role Iran might play)

 今思うと、米国の隠然としたロシア強化策の始まりは今年5月、ケリー国務長官が2年ぶりにロシアを訪問してプーチンに会った時からだった。この時、ウクライナ問題で米国とロシアが直接交渉する連絡ルートが初めて作られた。ウクライナ危機の当初から、ロシアは危機の黒幕である米国と直接交渉することを切望したが、米国はずっと拒否してきた。(負けるためにやる露中イランとの新冷戦)

 それが5月に大転換し、米露が直接ウクライナ危機について話し始めた。米国のヌーランド国務次官補と、ロシアのカラシン外務次官が双方の交渉担当となった。ウクライナ危機を起こした張本人であるヌーランドが、危機を収拾する担当者もやるという皮肉な事態の始まりだった。これ以来、中東とウクライナの両方の問題について、米露間の連絡が密になった。最近では6月25日と7月15日に、オバマとプーチンが長時間、電話で話をしている。(Is the United States Selling Out Ukraine?)

 7月のイラン協約後、米国が中東の諸問題でロシアに頼る傾向がさらに強まっているが、米露双方は「新世界秩序」とも言うべきこの新たな事態を、なるべく目立たないよう運営している。たとえば、米国がウクライナに圧力をかけて東部に自治を認める憲法改定をやらせたことは、ロシアにとって大喜びのはずだが、ロシア側は「東部の勢力と相談して自治を与えるのがミンスク2の合意だったが、ウクライナ政府は東部に相談せず憲法を改定しており、合意違反でけしからん」と怒る演技をしている。(Kiev's Proposed Constitution Fails Minsk II Despite Nuland's Bluster)(プーチンを怒らせ大胆にする)

 米国中枢で軍産複合体がクーデター的な戦略乗っ取りをやらない限り、ウクライナ危機は今後もう再燃せず、下火になるだろう(報道だけで、対立が激化しているかのような幻影が流布し続けるかもしれないが)。911やイラク侵攻あたりから続いてきた多極化のプロセスは、山場を迎えつつある感じだ。

・・http://tanakanews.com/150730ukraine.htm


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