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日本をだしに中国の台頭を誘発する (田中宇)
http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/228.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2015 年 7 月 22 日 10:52:56: KqrEdYmDwf7cM
 

(回答先: 現金廃止と近現代の終わり (田中宇) 投稿者 てんさい(い) 日時 2015 年 7 月 22 日 10:48:28)

http://tanakanews.com/150416china.htm
田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015年4月16日 http://tanakanews.com/

★日本をだしに中国の台頭を誘発する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 英国は第二次大戦後ずっと、米国にとって「特別な関係」の同盟国だった。
しかし米議会の調査機関(Congressional Research Service)は最近、英国が
米国にとって特別な関係の国でなくなっているとする機密の報告書を作成し、
この件を議員たちに説明した。報告書は、G20のような国際機関ができ、地
政学的な変化が起きた結果、米国にとって英国との関係が外交の中心だった従
来の状況がなくなったとしている。この報告書から予測されるのは、今後の米
国が、英国との関係をますます軽視する「英国はずし」の加速だ。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-3035142/Secret-memo-Congress-seen-Mail-Sunday-says-Britain-s-special-relationship-America-over.html
Secret US memo for Congress seen by Mail On Sunday says Britain's 'special relationship' with America is over

 報告書について報じた英デイリーメール紙の記事は、なぜG20の創設が米
英同盟の先細りにつながるのか「地政学」という言葉を超える説明をしていな
い。だが、私はピンときた。08年秋のリーマン危機の直後、戦後のブレトン
ウッズ体制(ドル単独基軸体制)の見直し(基軸通貨体制の多極化)が英仏露
などによって提唱され、初めてG20サミットが開かれ、経済分野の問題を考
える世界最重要の意志決定機関がG7からG20に交代したと米大統領府が発
表した。

http://tanakanews.com/081118G20.htm
転換期に入った世界経済

 G7は、米英が西欧諸国や日本、カナダなどを率いる形で先進諸国を団結さ
せる組織で、その中心は米英同盟だ。米英同盟は英国にとって、戦後の覇権国
となった米国の世界戦略を、戦前の覇権国だった英国が(軍産複合体などを通
じて)隠然と牛耳るためのもので、英国が米国の戦略を牛耳って作った世界体
制の象徴が冷戦構造だった。冷戦遂行の軍事組織NATOは、米英が西欧諸国
を率いてロシアと対立する体制で、NATOとG7は同じ構図になっている。

 G7は80年代、軍事の冷戦が終結に向かい、覇権体制が経済重視に転換し
ていく時に作られた。人々に本質を悟られないよう、G7は「世界経済のため
の組織」ということになっていたが、G7の本質は、英国が米国を牛耳り、先
進諸国を率いてロシアや中国と恒久対峙することだ。(ゴルバチョフが冷戦を
終わらせる見返りとしてロシアをG7に入れてくれとレーガンに頼んだので
G7がG8になったが、G8は形式だけの存在で、ロシアは冷戦後も米英から
冷遇・敵視された)

 米英単独覇権体制であるG7と対照的に、G20は米国、EUと中露など
BRICS諸国が対等の発言権を持つ多極型の覇権体制だ。リーマン危機によっ
て米国の経済覇権の根幹に位置していた債券金融システムが崩壊し(今も部分
崩壊したままだ)、米国が覇権を経済面で維持できなくなったとみなされ、基
軸通貨体制をドル単独(ブレトンウッズ体制)から多極型に転換する必要があ
るとしてG20サミットが開かれ、同時にG20がG7に取って代わった。

 その後、基軸通貨体制の多極化は、BRICS諸国間での相互通貨決済体制
の強化、人民元の国際化など、地味な形でしか進んでいない。EUはユーロ危
機にまみれ、世界は依然としてドルが単独で最重要の通貨だ。G20は大した
ことを決めておらず、G7も存続し、G20が世界経済の最高意志決定機関で
あることは実感できない。米国や対米従属の日本が、QEなどで米国の債券金
融システムを延命する策をやっているので、多極化が棚上げされている。

http://tanakanews.com/150301bank.php
◆QEやめたらバブル大崩壊

 しかし、米議会の秘密報告書が「G20ができたので英国との関係が米国に
とって最重要でなくなった」と書いていることは、G20がG7に取って代わ
り、米英単独覇権体制が崩れて覇権が多極化するプロセスが放棄されず、いま
だに潜在的に進行していることを示している。

 最近、多極化の動きとして象徴的だったのが中国によるAIIB(アジアイ
ンフラ投資銀行)の創設だ。時期的に見て、米議会の今回の「英国はずし」の
新政策は、英国が米国の反対を押し切ってAIIBに加盟したことがきっかけ
だろう。AIIBは「ブレトンウッズ機関」の一つであるADB(アジア開発
銀行)のライバルだ。中国などBRICSは、IMFのライバルとして
BRICS外貨準備基金、世界銀行のライバルとしてBRICS開発銀行を
作っており、ブレトンウッズ体制に取って代わる多極型の体制(新世界秩序)
を用意している。AIIBの創設は、多極型覇権(G20)が米英覇権(G7)
に取って代わる動きの新たな象徴だ。

http://tanakanews.com/150322china.htm
日本から中国に交代するアジアの盟主

http://investmentwatchblog.com/gerald-celente-u-s-support-of-chinas-development-bank-is-gigantic-u-turn/
U.S. Support of China's Development Bank is Gigantic U-Turn

 英国が、米国の反対を無視してAIIBに加盟し、その報復として米議会が
米英同盟の軽視を戦略として打ち出した。米議会の報告書の「G20ができた
から、米国にとって英国が最重要でなくなった」という指摘の意味は「英国が、
AIIBに入るなど、米国を見限ってG20にすり寄って多極化の扇動役に
鞍替えしたので、米国にとって最重要の国でなくなった」ということだ。英国
は、AIIB加盟以外にも、ロンドンを人民元取引の世界的中心にすることを
目指すなど、昨年から中国にすり寄る行動を続けている。

http://tanakanews.com/131022nuclear.htm
中国主導になる世界の原子力産業

 AIIBには、関係国のうち日米以外のすべての国々が加盟した。当初、こ
の流れを作ったのは英国であるように見えたが、最近の報道によるとそうでな
い。FTによると、もともと英政府は3月17日ごろAIIB加盟を発表する
予定だと中国政府に伝えていたが、ルクセンブルグが3月11日に加盟申請し
(発表はしなかった)中国政府が英政府にそのことを伝えると、欧州諸国の中
で加盟一番乗りを目指していた英国は焦り、前倒しして3月12日に加盟申請
を発表した。欧州では英国、ルクセンブルグ、独仏が人民元の決済所を開設し、
欧州での対中ビジネスの中心地になろうと競争している。英国は、欧州諸国間
の対中すり寄り競争を手玉に取り、AIIBへの加盟の雪崩状況を作り出した。
中国は、老練なはずの英国より外交術が勝っている。

http://www.ft.com/cms/s/0/d33fed8a-d3a1-11e4-a9d3-00144feab7de.html
UK move to join China-led bank a surprise even to Beijing

 日本は、木寺昌人駐中国大使が、6月までにAIIBに加盟するとの見通し
を表明したが、本当に日本がAIIBに入るのか私は疑問だ。日本は中国から
加盟を誘われていたのだから、入るなら3月末までに加盟申請し、発言力が大
きくなる創設時の加盟国になるはずだ。わざわざ加盟を数カ月遅らせ、創設時
加盟国にならずに自国の発言力を低下させるのは馬鹿げている。安倍政権は、
AIIBに入るべきだと政府に圧力をかける中国重視の財界を煙に巻くため、
6月に加盟すると駐中国大使に言わせたのでないか。日本は4月末の安倍訪米
後、米国との結束を強めて中国への敵対を強める方向で、AIIBに加盟する
のでなく敵視する方に進んでいる。

http://www.ft.com/cms/s/0/40b0fff8-d6ae-11e4-97c3-00144feab7de.html
Japan expected to join Asian Infrastructure Investment Bank

 米政府は、ルー財務長官が3月31日にAIIBを歓迎すると表明し、加盟
しないものの、それまでの敵視を引っ込めた。しかしルーは同時に、中国が今
年中に人民元をIMFのSDR(世界の主要通貨を加重平均した単位。現在ド
ル、ユーロ、円、ポンドで構成されている)に入れたがっていることについて、
人民元は為替が自由化されておらず時期尚早として反対を表明した。米国が
中国の動きを阻止するテーマは、AIIBから人民元のSDR入りへと移り、
続いている。

http://news.yahoo.com/china-knocking-door-imfs-major-league-u-wavers-074409317--sector.html
China knocking on door of IMF's major league, U.S. wavers

http://presstv.com/Detail/2015/04/01/404289/IMF-wont-let-Chinese-money-in-its-basket
China's yuan doesn't qualify to join IMF: US

 人民元をSDRに含めることについて、米国は反対しているが、独仏は賛成
を表明している。米国の反対を押し切って独仏など各国が大挙してAIIBに
加盟したように、人民元のSDR入りも、欧州勢など各国の賛成によって、米
国の反対が押し切られるだろう。人民元のSDR入りは、中国の目論見どおり
年内に実現しそうだ。米国は、あらかじめ負け続けるとわかっていて、中国の
経済覇権の拡大について、次々とテーマを変えつつ喧嘩をふっかけている。

http://www.blacklistednews.com/China_Targets_Dollar%2C_Washington_Has_Conniptions/43140/0/38/38/Y/M.html
China Targets dollar, Washington Has Conniptions

http://www.globalresearch.ca/chinas-defiance-before-the-imf-incorporate-the-yuan-into-the-special-drawing-rights/5441976
China's Defiance Before the IMF: Incorporate the Yuan into the Special Drawing Rights

 米国が、中国の経済台頭を阻止する策をやるたびに、米国(日米)以外の
「国際社会」は米国の制止を振り切って中国の側につき、米国の覇権(信用力)
の低下(浪費)と、中国の台頭が続く。米国が阻止しようとしても国際社会が
中国の側につくので、もはや中国の台頭は止められない。中国(やロシア、イ
ラン、中南米諸国など)は、権威が落ちているのに好戦的な姿勢をやめない米
国の言うことをますます聞かなくなり、国際社会が米国抜きで意志決定するこ
とが増え、米国の外交力が落ち、しだいに世界の覇権体制が多極型に転換して
いく。

http://tanakanews.com/140210china.htm
不合理が増す米国の対中国戦略

http://www.project-syndicate.org/commentary/china-united-states-global-governance-by-paola-subacchi-2015-04
Renminbi-Rising: American Leadership In A Multipolar World

 米国が自国の覇権を温存したいなら、中国の台頭を容認しつつ、中国が米国
好みの世界体制を阻害しないよう丸め込むしかないが、現実は逆で、米国はむ
しろ自滅的な中国敵視の傾向を強めている。米国(政府と議会)は、失敗を予
測せずにこの愚策を繰り返しているのだろうか。そんなはずはない。米国は、
かつて中国が弱かった時代(戦前や1970−90年代)には、中国を積極的
に支援していたが、中国が台頭してくるにつれ、中国への敵視を強め、中国の
さらなる台頭を引き起こしている。米国は、中国をこっそり強化する策を長く
続けている感じだ。何度も書いていることだが、私はそれを「隠れ多極主義」
と呼んでいる。

http://tanakanews.com/140108USchina.php
中国を隠然と支援する米国

 近年の米国は、ロシアやイラン、中南米などに対しても、敵視して逆に台頭
を誘発する隠れ多極主義をやっている。たとえば、南米の反米的なベネズエラ
が原油安で財政破綻に瀕し、政権崩壊しそうになると、オバマ大統領が3月中
旬に突然、ベネズエラが米国にとって脅威だとして敵視する発言を行い、ベネ
ズエラ(や中南米全体)の人々の反米感情を掻き立て、弱体化していたベネズ
エラのマドゥロ政権が人々の支持を取り戻すように誘導した(ベネズエラを再
強化した後、米政府はベネズエラ敵視の姿勢を撤回している)。米国のキュー
バとの国交正常化も、似たような効果をもたらしている。

http://www.salon.com/2015/03/13/a_new_degree_of_pettiness_why_is_the_u_s_really_sanctioning_venezuela/
"A new degree of pettiness": Why is the U.S. really sanctioning Venezuela?

http://govtslaves.info/obama-clash-with-venezuelan-leader-backfires-latin-americans-unite-against-u-s/
Obama clash with Venezuelan leader backfires; Latin Americans unite against U.S.

 隠れ多極主義の動きが意味するところは、米国自身の中に、自国の単独覇権
よりも多極型覇権を好む傾向があることだ。この傾向は、覇権運営の過去の教
訓に由来すると考えられる。先代の覇権国だった英国が、後から台頭してきた
ドイツに覇権を奪われそうになる中で、二度の大戦が引き起こされている。覇
権国が衰退すると、覇権国に取り付いていた資本家たちが次の覇権国になりそ
うな国を加勢し、覇権転換を起こす動きが強まり、覇権の延命策と自滅策の相
克になり、世界大戦など全体を自滅させる動きになりかねない。

http://tanakanews.com/080427multipole.htm
隠れ多極主義の歴史

 これを防ぐには、覇権体制が単独国家の一極支配体制でなく、複数の大国
(地域覇権国)が対等関係で立ち並び、談合する多極型になっていた方が良い。
複数大国制は大国間の覇権争いになるので危険だという説は、単独覇権維持の
ためのプロパガンダである。米国は第二次大戦後の覇権体制として、国連安保
理常任理事国の多極型の5大国談合体制(P5)を用意したが、英国が誘発し
た冷戦体制によって上書きされ、P5は長く無力化されていた。最近、中露の
台頭でP5が復権している。

 米国が多極化を望むなら、中国やロシアへの敵視をやめて仲良くすれば良い
だけであり、それをしないのだから米国に多極主義など存在しない、と言う人
がいる。この考えは、ナショナリズムやマスコミといった国民国家の構造が、
敵対国と仲良くなるより敵対をいっそう強めることに向いており、寛容主義よ
り好戦論を進める方がはるかに簡単だという点を忘れている。ケネディ大統領
はキューバ危機後にソ連との和解を試みたが、それはソ連敵視を加速する逆方
向の好戦策に打ち消され、ケネディ暗殺で終わっている。冷戦の終結はその後、
米国の好戦策を暴走させてベトナム戦争の泥沼化と撤退が引き起こされ、好戦
策が自滅した後のニクソン訪中を皮切りに実現している。

http://tanakanews.com/070327GOP.htm
歴史を繰り返させる人々

 冷戦後、米国はロシアへの敵対をやめてG7に入れてやり、ロシアを資本主
義で親米の国として発展させる計画が始まったが、ロシアの財界人たち(オリ
ガルヒ)が米英の傀儡として国有企業を民営化すると称して私物化し、露経済
を破綻させた。その後にロシアの権力者として出てきたプーチンは親米政策を
捨て、ロシアを米国に頼らない国として発展させ、米国に敵視されるほどプー
チンの国内権力と国際影響力が強まる構図になっている。

http://tanakanews.com/g0116russia.htm
プーチンの光と影

 米大統領が敵視の終了を宣言しても、それは短命に終わる。むしろ敵視を過
剰に強めて失敗に誘導する方がうまくいく。だから米国の多極主義は直截的で
なく、多極主義と正反対の単独覇権主義を過剰に敵対的、好戦的にやって失敗
することで多極化を引き起こす、複雑な「隠れ多極主義」になっている。本物
の単独覇権主義者が、好戦策を過激にやって失敗に導く隠れ多極主義の策を防
ぐには、世論を席巻する好戦策を弱めることが必要だが、すでに書いたように
好戦策は弱めるより強めることの方がずっと簡単で、好戦策を弱めようと者は
「弱腰」「左翼」「売国奴」のレッテルを貼られて失敗する。右翼が左翼のレ
ッテルを貼られる皮肉な状態だ。

http://tanakanews.com/141127hawk.htm
ますます好戦的になる米政界

 この10年、米政界は何度失敗しても好戦性を強める一方だ。隠れ多極主義
が非常に強く推進されていることになる。米国が次に好戦性を弱めるのは、米
国覇権の崩壊と覇権の多極化が決定的、不可逆的に進んだ後だろう。その時に
は、米国抜きの多極型世界体制が確立している。米国は、自国の覇権が失われ
た後になって好戦策を捨て、北米の地域覇権国(NAFTAの盟主)として、
多極型の世界体制に参加するだろう。

http://tanakanews.com/091011dollar.php
世界システムのリセット

 米国の過激な敵対策は、相手国によって分野を切り替えている。外交安保面
でがんばってほしいロシアに対しては、米国が悪役になってウクライナ問題を
用意し、ミンスクでロシアの停戦協定の技能の高さが世界に示され、シリアや
リビア、イエメンなど他の内戦でもロシアが停戦の調停役になる傾向を、ひそ
かに米国が扇動している。経済覇権運営をやってほしい中国に対しては、米国
がIMFにおける中国の発言権の拡大を封じ、中国がAIIBを創設するよう
仕向け、次は世界が米国の反対を押し切って人民元のSDR参加を了承する道
が作られ、中国がBRICSを代表する経済覇権運営をするように仕向けている。

http://tanakanews.com/150218ukraine.php
◆ウクライナ再停戦の経緯

http://investmentwatchblog.com/yuan-on-way-to-become-international-currency-frmr-head-of-imfs-china-division/
Yuan on way to become international currency' - frmr head of IMF's China division

 米国での隠れ多極主義の強まりを見て、英国が米英同盟に立脚した国家戦略
をあきらめ、中国にすり寄って多極化に乗る戦略に転じたのは自然な動きだ。
英国は、経済戦略を多極型に転換したが、軍事外交戦略ではまだ米国の傘下を
出ず、ロシアを敵視している。独仏も同様の傾向だ(独仏はロシアに対して仏
が親露、独が中立という役割分担をして、米露間のバランスをとっている)。

 米国は中国、ロシア、イランといった敵性諸国に対し、敵視を過剰にやって
失敗すると一部容認し、しばらくするとまた敵視を過剰にやるジグザグ行動を
繰り返している。米国の敵視策が失敗して一部容認の局面になるたびに、英仏
独など「国際社会」は中露イランに接近し、次に米国が再び敵視を強めても、
英独仏などは以前よりも同調しなくなる。米国のジグザグ行動は、英独仏など
国際社会を、中露イランなど反米系の諸国と和解する方向に押しやっている。
事態は、米国だけが中露イランを敵視し、他の国際社会は中露イランと協調す
る、米国抜きの多極型世界の状態に向かっている。米議会が米英同盟を放棄す
る報告書を出したことは、こうした動きを象徴している。

http://irna.ir/en/News/81571392/
Australian FM: Tehran, Canberra share common interests in fight with terrorism

 このような多極化の流れの中で、最近の日本の国家戦略を見ると、米国の自
滅策にとことんつき合って日本を自滅させる頓珍漢なことをやっていると感じ
られる。安倍政権は、米国が中国敵視を続ける一方、英独仏など他の国際社会
が親中国に転じるのを見て、日本が米国との同盟関係を強める好機と見ている。
日米だけがAIIBに加盟しないことが、日米同盟の結束を象徴するものと
考えられている。4月末に安倍首相の訪米を機に、中国を仮想敵とする日米の
軍事一体化が加速する。TPPも、日米の経済(市場)一体化ととらえられて
いる。

 これまで「対米同盟」という電車は世界各国が乗り込んで大混雑で、敗戦国
として「3等切符」の日本は、座ることもできず苦しい姿勢だった。ところが
最近、他の乗客がこぞって「親中国」という別の電車に乗り換え、対米同盟電
車はがらがらになり、日本は特等席に座れて大満足している。しかし実のとこ
ろ、他の乗客が降りていったのは、対米同盟の電車が終点(覇権の終焉)に近
づいているからだ。良い席に座れて喜んでいる日本は、電車が間もなく終点に
着くことに気づいていない。日本は、小泉や鳩山の政権時代に親中国に乗り換
える機会があり、早めに乗り換えていたら良い席に座れただろうが、今ではも
う遅い。再び最下位の「敗戦国」の地位からやり直すことになる。

 最近の記事で、「戦争責任」を否定する日本の首相に演説させたくない米議
会が安倍に両院合同会議で演説する栄誉を与えたのは不可思議だと書き、日本
のTPP加盟と引き替えの栄誉でないかと考察した。その後、もしかすると米
議会やオバマが安倍を鼓舞する理由は、TPPよりも、米国が新たな中国敵視
策をやるために日本を使いたいからでないかと考えた。

http://tanakanews.com/150408japan.htm
安倍訪米とTPP

 すでに書いたように、米国は、自国の覇権が崩壊するまでずっと中国を敵視
し続ける。中国が経済台頭するほど、米国内で「中国敵視をやめて協調した方
が利得が大きい」という主張が強まる。それを振り切るには、新たな中国敵視
の構図が必要だ。その新たな構図として、米国(議会とオバマ)は、対米従属
の一環として日米共同の中国敵視策を強化したい安倍政権の日本を大歓迎し、
日米同盟強化のイメージ策による中国包囲網の巻き直しをやろうとしているの
でないか。米国が、日本に引っ張られるかたちで中国敵視を再強化する構図だ。
日米同盟を強化したい日本側は、こうした構図に狂喜乱舞している。この構図
は、米国がイスラエルに引っ張っられ、イランに核兵器開発の濡れ衣をかけて
潰そうとしたことに似ている。

http://www.eurasiareview.com/12042015-systemic-tension-between-china-and-us-analysis/
SYSTEMIC TENSION BETWEEN CHINA AND US

 しかし、米国が日本に引っ張られて中国敵視を続けるほど、他の国際社会は
中国を敵視することに不利益を感じ、米国の制止を振り切って中国に接近し、
米国の覇権喪失と中国の台頭、世界の多極化が進む。それが米国側の真の目的
であり、日本はだしに使われているだけだ。これから始まる日米共同の中国敵
視策の再強化が、どのような形でいつごろ終わるかわからないが、この件での
米国の主眼は軍事でなく経済の覇権なので、前回の記事に書いたように、日銀
のQEが日本国債の信用失墜(金利高騰)で終わるとか、米国のバブル崩壊と
か、そちらの方面の動きと関連することになりそうだ。

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆加速する日本の経済難
http://tanakanews.com/150414japan.php
【2015年4月14日】日本経済は見かけ上、株高やベースアップで景気が
好転しているかのようだが、株高はQEによるバブル膨張であり、全体の賃金
は下がっている。実質的に日本経済は悪化し続けている。機関投資家の多くは、
株高がQEによるバブルだと知っている。日銀がQEをやめようとすると、米
連銀がQEをやめた(日銀に引き継いだ)時のようにうまくやめられず、QE
終了が日本国債市場の崩壊、流動性危機から金利急騰を招きかねない。日本は
すでに、QEを続けても破綻、やめても破綻という事態に入り込んでいる懸念
がある。

◆イラン核問題の解決
http://tanakanews.com/150406iran.php
【2015年4月6日】ISISやアルヌスラと本気で戦っているのはイラン、
イラク、アサド政権、ヒズボラといったイラン系の諸勢力だけだ。彼らがISIS
に負けると、中東の混乱がひどくなり、大規模な米地上軍が再び中東に駐屯
せざるを得なくなり、米国が軍産イスラエルに牛耳られる状態が永続化する。
これを防ぐには、核問題を解決してイランを強化すればよい。だからオバマは
イラン核問題を全力で解決し、ネタニヤフはそれを全力で阻止しようとした。

◆米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ
http://tanakanews.com/150331yemen.php
【2015年3月31日】 米国のイエメン撤退が隠れた意図を持っていたと
したら、その究極の意図は、フーシ派がイエメンの政権を取って内戦を終わら
せて安定させることでない。米国のイエメン撤退は、サウジを標的にした戦略
だろう。イランの影響下にあるフーシ派がイエメンを乗っ取ると、イランを敵
視するイエメンの隣国サウジアラビアが、軍事介入せざるを得なくなる。サウ
ジは、米国がイエメン総撤退によってフーシ派を強化した経緯を、隣国として
詳細に見ている。だから、サウジはイエメンを空爆する際、米国に頼らず、直
前まで米国に知らせずに挙行せざるを得なかった。

 

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