(回答先: 100616 菊池英博氏（岩上チャンネル）　その１　（書き起こし） 投稿者 読書中。 日時 2010 年 6 月 29 日 00:46:57)

続きです。

100616 菊池英博氏03.flv
http://www.youtube.com/watch?v=tf9Vn_PgaW4&feature=related
岩上：
菅政権で経済・財政政策が非常に大きく転換しそう。なぜ変わろうとしているのか。ここで中継を取り止めるので、簡単にまとめを。
鳩山政権はリーマンショック以降の危機的状況を脱出し、安定化することにある程度成功した。モラトリアム法案・貸し渋り貸しはがし防止法案などで歯止めをかけ、海外投資に向かっていた金がある程度国内で循環するように。当初補正予算案は2.7兆円だったが、亀井金融大臣申し入れによって7.2兆の大型補正予算を組んだ。これらが経済の小康状態を支えているのだろう、ということで見解が一致。
こうした政権は長期政権になるのだが、なぜ倒れなければならなかったのかというと、検察の異常な捜査、あってはならない捜査権乱用、それをまたマスコミの白を黒という異常なネガキャンのため、理不尽ながら鳩山総理、小沢幹事長は辞任した。
普天間問題では外務省・防衛庁の徹底的な抵抗・サボタージュ、他の閣僚、外相、防衛省、前原氏、平野氏が早々に屈し、鳩山は孤立、政権は瓦解した。ところが菅政権が誕生すると一番の課題が財政再建。これがどうも不思議。
ここから再開。
菊池氏は菅政権の主要官僚、古川官房副長官、荒井国家戦略大臣など直接知っている。実際に菅政権が何を考え、どのように経済・財政政策を進めようとしているのか。

菊池：
財政政策における鳩山内閣と菅内閣での違うこと、大きく変わったこと。
まず財政に関して。鳩山内閣は終始4年間は消費税を上げない、その間に徹底的な行政改革、端的に言うと役人の天下りとそれに伴う財政支出、特別会計の中身を徹底的に洗ってし、そこから財源を出すことを国民に約束している。
特別会計。日本の財政は一般会計と特別会計からなる。新聞にでるのは一般会計だけ。2010年度で一般会計93兆、両方あわせると200兆。特別会計は各省庁別に事業会計を持っている。省庁が事業をやっている。一般会計は単年度決算だが、特別会計は継続する。従って金が余ればどんどん蓄積する。事業をしているから積み立てたほうがよければ積み立てもできる。特別会計には剰余金と積立金があり分析すると2007年度予算では合計103兆ある、余っている。『消費税は0％にできる』に書いた。
その後も分析すると、2009年度予算だけで最低52・3兆。70兆くらいあるだろう。
その金がある。だから鳩山首相がいつも言っていたのは、しかりとこれを使ってからじゃないと増税はしないといった。小沢氏もそう。
最初に埋蔵金があるといったのは小沢氏と聞いている。マニフェストを出して、その中で一般会計、特別会計を全般して見なければらないといったのは民主党。これは大変な功績。実は国民新党も前から言っていたが、初めてマニフェストに掲げたのは民主党。大きな功績。
合わせた予算約200兆から、1割や2割出るといった。実際2010年度予算にそこから10兆出している。連立政権で10兆出すのに成功している。マスコミは全く触れないが、ちゃんとやっている。
それで更に50兆から70兆くらいある。鳩山政権はそれをまず全部使ってしまおうと。ところがこれに対しては役人から大変な抵抗があったと思う。かつて100兆あったのが、どんどん減ってきたのだから。運用益だって3・4兆ある。それがどこに行ってしまったのかは分析すれば分かるが、私にはデータがない。しかし、いずれにせよそういう金がある。 問題なのは、そこまで突っ込んでいくと公務員の人、役人の人の利権に触れてくる。だからおそらく民主党の中で、あるいは民主党内閣の中で、これ以上埋蔵金を出してもらっては困るという意見と、使おうという意見が分かれたのだと思う。分かれた結果、埋蔵金はこれ以上使わないで、増税をしようというのが、消費税増税派だと思う。
今回ガラッと政権が変わって、菅氏が首相になって、選んだ閣僚たち、幹事長を含めて、大体増税派じゃないかといわれる人たちが中心になっている。

100616 菊池英博氏04.flv
http://www.youtube.com/watch?v=z1ldlgWA6pM&feature=related

岩上：
中継は諦めて菅政権の話。
基本のところ、鳩山政権は概ね間違ってなかった。
ところが菅政権にどうも不安がある。どう見ても増税をやろうとしている。なぜ消費税を増税しようとしているのか。法人税を下げると言う政策が、財務相、そして閣僚の一部が主張し、そういう方向にマスメディアが先導して世論形成をしているのか。これが解せない。なぜその方向に持っていかれるのか。教えてください。

菊池：
まず「強い経済、強い財政、強い社会保障」の3つの柱には賛成。問題は、優先順位をどのようにつけて、やっていくか。
結論的に最初に言うと、強い経済を作ることに3年間優先的に集中する。そうすれば結果として強い財政、強い社会保障が見えてくる。
強い経済をつくるためには100兆の補正予算でデフレ対策を。これを日本は是非やるべき。
なぜかというと、オバマ政権は就任早々2年間で70兆の緊急補正予算を組んだ。7割はいわゆる公共投資、設備、新エネルギー、投資減税など。残りの3割は社会保障の形で医療や低所得者層に対する援助。これが非常に参考になる。
日本の場合はまず「入り口」戦略が必要。デフレは日本だけ。アメリカは違う。
もともとの日本のデフレは1998年から始まっているが、その前からGDPデフレーターがマイナスのことがあり、ほぼ20年続いている。

岩上：
1997、98年頃まではバブル後遺症と言われた。それが立ち直りかけたところに、橋本政権で消費税を3％から5％にして、大きな腰折れを起し、さらに金融恐慌に。

菊池：
正にそう。財政改革をやったために。
橋本財政改革は5年で財政収支を均衡化させよう、今で言うプライマリーバランス、として、歳出をどーんと落とした。それで一挙に株が暴落した。株をたくさん持っていた銀行が叩かれ、同時に不良債権化し、結局金融恐慌が起きた。あの金融恐慌は、はっきり言って橋本財政改革をやった結果。
気をつけなければいけないのは、「そうじゃない、あれは不良債権があって、金融上の問題だ」と、最近、新菅内閣の下での「財政制度等審議会」で結論付けた。その会長は吉川洋。自公政権時代の御用学者で、しょっちゅう意見を変える（注：小泉政権時代に毎年社会保障費年間2200億円削減実施をとりまとめた）。その委員会でそういう結論を出したと新聞に出たので、これは間違いだと菅総理に書信で伝えた。
いずれにせよ、菅総理のまわりには、過去の事実を隠蔽しながら「3つの柱なら財政から入れ」という勢力がいる、これが危険だと思う。

岩上：
過去3回のインタビューでも財政から入ることが危険だと何度も話していただいた。
消費税増税と常に法人税減税がセットとなって政策パッケージとして使われる。
消費税の増税ということは家計・零細業者から巻き上げられ、それが法人税の減税分に当てられ、つまり結果的には企業に富が移転する。体質の強化によって、雇用や輸出の拡大、ひいては日本経済の拡大へとつながるはずだという話だったはずが、ちっともそうはならない。
それはいつの間にか、輸出企業・大企業の体質が変化し、株主の配当に多くまわされるようになって来た。代表的な輸出企業である、トヨタもキャノンも既に株主の多くが外資、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックスなど。そういった外資ができるだけ株主の配当を強く勧める。更にトヨタやキャノンのトップが経団連トップとして同じことを政策にプレッシャーをかける。
こういう構造の中で、われわれ一般国民の富を大企業が吸い上げ海外へられていく。何度か話していただいたが、たいへんショッキングな内容。
加えて、日本が不況下にあることが、日本以外のアメリカやその他の国家、あるいは国際金融資本に好都合。日本が不況下にあること、経済が沈滞してデフレ下にあるということは、未来に向かって縮小方向へ向かうということ。そこには投資意欲はなく、誰も投資しない、利回りが小さい。だから日本に投資しない分、個人も企業も海外の投資信託、例えばオーストラリアやブラジルなどの通貨や債権へ向かう。
慣れっこになってしまっているが、これは人為的なものというのが驚き。
不況・デフレのまま日本は経済が縮小し、衰弱する方向であるならば、日本には富はあるのでそれを海外へ吸い上げるという人為的な政策だと話していただいた。たいへん驚いた。これについての説明を。

（ここまで）

参考：吉川洋についての記事
　「何で来るんだ！！」尾辻元厚労相が自民研究会講師の教授に罵声
　http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100311/stt1003111920011-n1.htm
　　

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