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【全訳】米国外交への有罪判決:ヒロシマからテヘランまで(M.チョスドフスキー著)
これは、オタワ大学経済学教授ミシェル・チョスドフスキーが、今年2月5日から7日までマレーシアの首都クアラルンプールで開かれた国際戦犯法廷で行った判決(講演)の原稿です。この国際戦犯法廷については次の各阿修羅投稿をご覧ください。
http://www.asyura2.com/07/war88/msg/667.html
http://www.asyura2.com/07/war88/msg/580.html
http://www.asyura2.com/07/war88/msg/556.html
http://www.asyura2.com/07/war88/msg/514.html
また、次の拙稿(翻訳)もぜひご参照ください。これは2005年12月14〜17日に、やはりクアラルンプールで行われたペルダナ世界平和フォーラム(the Perdana Global Peace Forum 2005)で発表されたもので、同年12月21日付でグローバル・リサーチ誌に掲載されたチョスドフスキーの論文の全訳です。
(参照:アングロ・アメリカのテロ戦争:概観byミシェル・チョスドウスキー)
http://asyura2.com/0601/war77/msg/171.html
http://asyura2.com/0601/war77/msg/218.html
http://asyura2.com/0601/war77/msg/267.html
チョスドフスキー教授は今年の戦犯法廷の中で、第2次世界大戦の末期から現在に至る米国外交政策の一貫した流れを強調し、それに厳しい「有罪判決」を下しています。彼は「戦後」を戦争の継続としてとらえています。ヒロシマがその出発点であり「冷戦」をバネにして西欧とラテンアメリカと極東を支配下に置き、「冷戦後」のグローバルな展開の先に現在の「対テロ世界戦争」を位置づけます。この視点は決定的に重要でしょう。それは米国とイスラエルを支配する勢力による新世界秩序を目指す「100年戦争」の一つ一つのフェイズなのです。
このチョスドフスキーの断罪を、次のイズラエル・シャミールの論文と重ね合わせると、現代史の主要部分が概観できるのかもしれません。
(参照:『米国:あるユダヤ国家(イズラエル・シャミール著)』の翻訳シリーズ)
http://asyura2.com/0601/holocaust3/msg/296.html
http://asyura2.com/0601/holocaust3/msg/298.html
http://asyura2.com/0601/holocaust3/msg/306.html
http://asyura2.com/0601/holocaust3/msg/309.html
彼は米国とイスラエルの政治・軍事の指導部だけでなく、それを支えそれによってネオ・リベラル経済の拡張と充実を図ってきた(欧米ユ)資本、戦争政策の主要部分を隠蔽し誤魔化し続けてきたマス・メディアを断罪します。加えて、戦争に反対するふりをして戦争政策を側面援助する米国の主要な反戦運動に対しても同様です。彼は紳士ですからモロには名を挙げていませんが、これがノーム・チョムスキーとその支持者群を指していることは内容的に明白でしょう。
(参照)
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/396.html
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/543.html
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/405.html
http://www.asyura2.com/0601/holocaust3/msg/547.html
チョスドフスキーは経済学者ですから石油を支配する者が世界を支配するという観点で話を進めています。もちろんこれは必要不可欠な視点であり、いわゆる「対テロ戦争」が、新世界秩序(NWO)の最重要課題である『エネルギーの全面支配』を軸にして進められていることは言うまでもありません。そしてその中でイスラエルの地政学的な位置が重要な意味を持ってきます。
ただ、私は、世界支配の要件にもう一つ欠かしてはならない要素があると考えています。それは『人間の心の全面支配』です。そこに、新世界秩序の要(かなめ)となる場所がどうしてもエルサレムでなければならない理由があると思います。シオニズムがそこまで考えられた上で作られたのか、たまたまシオニズムがあったからそれを上手に利用したのかは分かりませんが、パレスチナという場の戦略的な位置は限りなく大きいと言えるでしょう。
しかし新世界秩序確立を目論む者達にとってはアメリカとかイスラエルという『国』など、はっきりいって究極的にはどうでも良いのだろうと思います。どうせ気候変動で海水面が上がったらニューヨークもテルアビブも、多分ロンドンも水没するでしょうから(バルセロナも!)。そしてまた、国民に「愛国心」を要求する支配者どもが持つものは「愛私心」だけですから。
以下に、チョスドフスキーの演説原稿『米国外交政策への有罪判決:トルーマン・ドクトリンからネオ・コンまで』の全訳を貼り付けておきます。
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http://globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=CHO20070201&articleId=4659
米国外交政策への有罪判決
トルーマン・ドクトリンからネオ・コンまで
ミシェル・チョスドフスキー著
Global Research 2007年2月5日
ペルダナ世界平和機構
国際会議
戦争犯罪−戦争犯罪人を暴く
2007年2月5〜7日、デワン・メルダカ、プロゥラ世界貿易センター、
クアラルンプール
1.最近の流れ
世界は現代史の最も危険な交差点に立っている。米国は遠征に、「長い戦争」に向けて出発した。それは人類の未来に脅威を与えるものである。
1945年8月6日にヒロシマに最初の原爆が落とされて以来、今ほど想像を絶する核ホロコーストに近づいたときは無かった。それは中東の広大な地域に放射性物質の落下を拡散させる可能性がある。
ブッシュ政権が、イスラエルやNATOと同調して、イランに対する核戦争開始を計画している膨大な証拠がある。皮肉にもそれは存在してもいないテヘランの核兵器開発計画に対する仕返しとしてである。米国・イスラエルの軍事計画は「万全の準備が完了した状態」にあると言われる。
もしそのような計画が実行されるなら、戦争は拡大して必然的に中東から中央アジア地域全体を巻き込むことだろう。
戦争は、一部のアナリストが指摘しているように、その地域を越えて最終的には第3次世界大戦のシナリオにまで拡大するのかもしれない。
米国が率いる海軍の展開は(それには巨大な軍備の配備も含まれるが)二つの異なる地域で起きつつある。ペルシャ湾岸と東地中海である。
東地中海の軍事化はおおよそイスラエルと同調するNATOの管轄にある。これはシリアに向けられたものであり、国連の「平和維持」派遣軍の顔の元に指揮されるものだ。この流れの中でイスラエルが昨年の夏にレバノンへの戦争を仕掛けた。それは数え切れない残虐行為と国全体の破壊をもたらしたものだが、米国が支える幅広い軍事ロードマップの一つの場面として見なければならない。
(写真1.Url:レバノン:国民防衛救助隊員たちが女性の遺体をイスラエル空軍のrmayleih juy 17ミサイルによって破壊された民間車両から運び出す。AP)
http://www.uruknet.info/uruknet-images/rma3.jpg
2.ペルシャ湾岸と東地中海の海軍艦隊
ペルシャ湾内の艦隊はほとんど米国の指揮下にあり、カナダがこれに参加している。
(写真2.Url:米海軍エンタープライズ空母艦隊)
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/4/41/TaskForce_One.jpg/300px-TaskForce_One.jpg
(写真3.Url:米海軍アイゼンハワー)
http://www.house.gov/mcintyre/assets/photo_album_assets/honoring_those/images/12_jpg.jpg
この海軍の艦隊は空からの攻撃に照準を合わせたものだが、そのイランへの空爆計画は2004年半ばにスタートした。それは2004年初期のCONPLAN 8022の公式化に従うものである。そして2004年5月に核兵器使用許可(Nuclear Weapons Deployment Authorization)と題された国家安全保障大統領指示(National Security Presidential Directive)35が発表されたのである。
(参考資料1:NSDP)
http://www.fas.org/irp/offdocs/nspd/
(参考資料2:CONPLAN 8022-02、Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/CONPLAN_8022-02
その内容が分類にとどまっている一方でNSPD 35は、CONPLAN 8022に従って中東での戦争の場面で戦術的な核兵器の搭載と使用の可能性を想定している。
最近の展開では、ワシントンがルーマニアとブルガリアの軍事基地から攻撃機を発進させる計画を持っていると報道されている。『米国軍はブルガリアにある二つの米国空軍基地と黒海沿岸にあるルーマニアの一つを、(2007年)4月にイランへの空からの攻撃を行うるために使用するかもしれない。』これはブルガリアの通信社Noviniteによるものである。
3.究極的な戦争犯罪:通常の戦闘行為で核兵器を使用すること
戦術核が『周辺の住民にとっては安全である』と述べるペンタゴンの声明にもかかわらず、イランに向けられた通常の戦闘行為における核兵器の使用は究極的な戦争犯罪を引き起こすかもしれない。核ホロコーストである。その結果として起こる放射能汚染は、将来の多くの世代に脅威をもたらすものだが、中東に限られるものではないだろう。
(写真4.および5.Url:B61-11 NEP 核爆弾)
http://news.xinhuanet.com/mil/2005-08/11/xinsrc_3420802110831679149795.jpg
http://www.globalsecurity.org/wmd/systems/images/b61-losalamosmuseum2.jpg
4.「対テロ戦争」:戦争遂行の口実
2005年に副大統領ディック・チェイニーは、米国戦略軍(USSTRATCOM)に『米国に対する9・11タイプの新たなテロ攻撃に対する反撃として行われるべき』緊急措置計画を作り上げるように指示した。一般市民を含む大量の死者をもたらす事件が世論を軍事計画に対する支持に向けて掻き立てるために使用されようとしている。一般市民の死が外部に想定された敵に対して米国国土を防衛するための先制攻撃を正当化するために利用されるのだ。
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大量の死が事を進める
『テロによる大量死をもたらす事件が西側世界のどこかで(起こるだろう)。米国かも知れない。そしてそれは我が国民に憲法に対する疑問を起こさせ、新たな大量死をもたらす事件を防ぐために我国を軍事化させ始めることになる。』トミー・フランクス将軍
『我々は世界的規模での変化の縁に立っている。我々に必要なものは巨大な危機だけである。そうすれば国々は新世界秩序(the New World Order)を受け入れることだろう。』デイヴィッド・ロックフェラー
『米国が次第に多国籍な社会になるにつれて外交的な事柄に対して意見を一致させることが難しくなるかもしれない。真に巨大で幅広く認識される直接の外部からの脅威がある環境になれば話は別だが。』(「巨大なチェス板」ズビグニュー・ブレジンスキー)
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想定は次のようなものであった。もしそのような一般市民の死を起こす9・11タイプの事件(大量死をもたらす事件)が起こったとしたら、チェイニーによればだが、イランがその背後にいることになるだろう。それによって懲罰的な爆撃の口実を与えるのである。それは米国が主導した2001年10月のアフガニスタンへの攻撃と全く同様のやり方なのだ。あのときには9・11のテロリストに対するタリバン政権の推定上の支援に対する報復が想定されたのだ。
最近では多くのアナリスト達が『トンキン湾事件』のでっち上げを指摘している。それがブッシュ政権によってイランへの戦争遂行の口実として使われるだろうというのである。
5.この戦争の本当の目的は石油だ
石油はイスラムの土地に眠っている。戦争の目的は、石油の所有権を取り上げ、国々を各地域に分割し、そして中東の地図を書き直すことなのだ。
戦争は見せかけの『人道的アジェンダ』を作り上げる。歴史を通して、敵に対する中傷がしばしば戦争の究極的な正当化と戦争犯罪に対する視点に伴って使用された。
敵を悪魔化することは地政学的そして経済的な目的にとって役に立つ。同様に、「イスラム・テロリスト」(それは米国諜報機関によって支援されていると考えられるが)が石油の富を勝ち取ることを助けるのだ。『イスラモ・ファシズム(Islamo-fascism)』という用語がイスラム諸国の政策や慣行、価値観、そして社会構造を貶めるために使われる。その一方で同時に『西側の民主主義』と『自由市場』の教義がそれらの国々にとっての唯一の代替物として持ち上げられるのだ。
この広い中東・中央アジア地域での米国主導の戦争の目的は、世界の石油と天然ガスの埋蔵量の60%以上に対する支配権を手に入れることにある。英米石油大資本はまたこの地域から伸びる石油とガスのパイプラインに対する支配権を求めるのだ。
(図表1.Url:石油・ガス埋蔵地域とパイプラインの道、および米軍の配備を示す地図)
http://www.globalresearch.ca/images/middleastmap.jpg
(図表2.Url:カスピ海沿岸から黒海と地中海に向かうパイプライン予定を示す地図)
http://www.hinduonnet.com/fline/fl2213/images/20050701000805902.jpg
(図表3.Url:バクー油田から地中海に向かうパイプライン予定を示す地図)
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5d/Btc_pipeline_route.png
サウジアラビア、イラク、イラン、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、イエメン、リビア、ナイジェリア、カザフスタン、アゼルバイジャン、マレーシア、インドネシア、ブルネイといったイスラム諸国は、推定のための資料と方法論に基づく算出で、世界の全石油埋蔵量の66.2%から75.9%を所有しているのである。
対照的に米合衆国は全石油埋蔵量のわずか2%しか持っていないのだ。主要な石油産出国を含む西側諸国(カナダ、米国、ノルウェー、英国、デンマーク、オーストラリア)は全石油埋蔵量の4%近くを手にしているだけである。(オイル・アンド・ガス・ジャーナル誌のもう一つの推定では、カナダのオイル・サンドを含めて、その割合は16.5%の単位である。)
世界の石油埋蔵で最大の部分が、イエメンの先端から北に向かってカスピ海まで、東地中海岸から東に向かってペルシャ湾までの地域に横たわっているのである。そしてそこが米国主導の『対テロ戦争』の戦場が広がる場所なのだ。ワールド・オイル誌の推定によると、そこには世界の石油埋蔵の60%以上がある。(表を見よ。)
【訳注:ここに石油埋蔵量を示す表があるはずなのだが、Global Researchの本文には描かれていない。】
イラクは米国の5倍もの石油を持っている。
イスラム諸国は西側諸国の16倍もの石油を持っている。
石油が埋蔵する主要な非イスラム諸国はベネズエラ、ロシア、メキシコ、中国そしてブラジルである。
戦争犯罪の犠牲者は中傷される。悪魔化が敵に対して行われるのだが、それは世界の埋蔵石油の3分の2を所有するのである。『悪の枢軸』『ごろつき諸国』『失敗した国々』『イスラム・テロリスト』。悪魔化と中傷が米国の『対テロ戦争』のイデオロギー的な柱なのだ。それらは石油を求めての戦争を起こす口実なのである。
石油戦争は石油を所有する者達への悪魔化を求める。敵は、一般市民の大量殺害を含む軍事行動を正当化する目的で、邪悪なものとして性格づけられる。中東から中央アジアにかけての地域は重武装させられる。(図表1を見よ。)油田地帯が取り囲まれている。NATOの軍艦が東地中海に場所を定めた。(国連の『平和維持』活動の一部としてである。)米国空母艦隊と攻撃部隊がペルシャ湾とアラビア海に『対テロ戦争』の一部として配備された。
(図表4.Url:新しい中東地図の作り直し)
http://www.globalresearch.ca/images/harita_b.jpeg
6.歴史的背景:ヒロシマから予防戦争政策まで
この軍事アジェンダの歴史的ルーツは何だろうか? 1945年から現在まで広がる米国主導の戦争犯罪のバランス・シートなのか?
(写真6.Url:誰が戦争犯罪人なのか:この囲みの中で戦争犯罪人はブッシュだけではないのだ。)
http://nord.twu.net/acl/images/PNAC.jpg
米国の戦争と残虐行為の犯罪は外交政策と軍事アジェンダの直接の結果として見るべきである。それは、巨大石油企業とウォール・ストリートの金融支配層、そして六つの巨大防衛産業を含む米国企業群の利益を支えるものである。
中東戦争は米国が主導する軍事介入の歴史の集大成なのだ。
ヒロシマへの原爆投下は『予防的』核戦争政策の公式化を導く出発点としての大事件だった。その政策では通常の戦闘場面に核兵器が使用されうるのだ。
そこに一つの連続体がある。ヒロシマの原爆投下は世論に対して『国民の安全保障』として提示された。トルーマン大統領による1945年8月9日のラジオ演説の中でヒロシマが『軍事基地である』と特定されたからである。
『世界はこの最初の原子爆弾が軍事基地であるヒロシマに投下されたことを注目するだろう。それは、我々が可能な限り国民の殺害を防ぐために行った最初の攻撃を望んだからである。』
(1945年8月9日に行った大統領ハリー・S.トルーマンによる国民へのラジオ演説。彼の演説の抜粋を聞いてくれ。【参考資料3、Url:原爆投下に関するトルーマン演説 http://www.gandhitoday.org/hiroshima.html】トルーマンの日記を読んでみると、彼がヒロシマを軍事目標であると固く信じていたという印象は受けないだろう。彼は原爆の結果についての状況説明を受けたのだろうか。)【参考資料4、Url:1945年7月25日の大統領ハリー・S.トルーマンの日記
http://www.trumanlibrary.org/whistlestop/study_collections/bomb/large/documents/fulltext.php?fulltextid=15】
同様に、イランに対する核兵器の使用は自衛のための行動であると説明されている。それはペンタゴンによると『副次的な被害』の危険を小さくして一般市民の命を保護するだろうということだ。イラクへの侵略に先立って、戦術的な核兵器の使用がサダム・フセインを殺すための手段として検討されていたのである。
『もしサダムがイラクで間違いなく最高のターゲットの価値をもつものなら、彼の殺害を確実にしてその政権を終わらせる(首を切り落とすdecapitating)ために、B61-11のような核兵器の使用にとって良い機会となるかもしれない。』
もっと一般的には、小型核は通常の戦場で使用するのに安全であると言われているのだ。
『現在必要とされているのは、周辺の一般市民を殺さずに、花崗岩の中に300メートル深く掘っている地下壕を破壊するようなものである。』(参考資料5、Url:ペンタゴン高官の談、ミシェル・チョスドフスキーによる引用)
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=20060217&articleId=1988
こういった声明は米国科学者連盟(Federation of American Scientists: FAS)によると米国の核政策の推進を反映しているのだ。彼らは『核兵器が「副次的な被害」を少なくするような方法でそれらを通常の兵器のように使用される容認できる道具とさせる幻想』と語る。
(参考資料6.Url:FAS)
http://www.fas.org/faspir/2001
7.『戦後の時代』における米国の戦争
『戦後』として上品に述べられているものは、実は戦争と軍事化の継続の時期なのだ。第2次世界大戦の終了以来、この『長い戦争』が全世界に広がる米国の支配権確立を追い求めるのである。
この時期は、米国が主導する戦場(朝鮮、ベトナム、カンボジア、アフガニスタン、イラクそしてユーゴスラビア)ばかりではなく、ゆるやかな抗争、『内戦』(コンゴ、アンゴラ、ソマリア、エチオピア、スーダン)、軍事クーデター、米国が育てた殺人部隊と虐殺(チリ、ガテマラ、ホンジェラス、アルゼンチン、インドネシア、タイ、フィリピン)、米国諜報機関に率いられる隠密の戦争、等々といった様々な軍事侵略の形態によって特徴付けられる。
この時期全体(1945〜現在)では、米国が主導する戦争と世界の主要な地域での軍事・諜報的介入が注目されるものである。(下の地図を見よ。)
(図表4.Url:1945年以来、米国が世界で起こした軍事介入)
http://www.globalresearch.ca/audiovideo/USA_intervention_bleu.gif
こういった様々な作戦を数えてみると、1945年8月以降、米国は直接間接に様々な発展途上地域にあるおよそ44カ国を攻撃しており、エリック・ワッデル(Eric Waddell)によるとその多くは何度も攻撃を受けている。
『これらの軍事介入で公言された目的は「政権の交代」に力を発揮することであり続けている。「人権」と「民主主義」という上っ面が一方的で非合法な活動を正当化するために当然のごとく引っ張り出された。』(エリック・ワッデル、2003)
現在ブッシュ政権高官によって『長い戦争』として取りざたされる事柄の支柱となる外交政策は、『トルーマン・ドクトリン』として知られているものの中に見出されるべきである。それは1948年に国務省指示の中で外交顧問のジョージ・F.ケナンによって最初に公式化されたものであった。
この1948年文書が伝えるものは、米国の外交政策の、『封じ込め』から『予防的』戦争までの連続性である。それは、もってまわした言い方ではあるが、米国が軍事的手段を通して経済的そして戦略的な支配を追及すべきであることを述べているのだ。次のようにである。
『さらに言えば、我々は世界の富の50%以上を持っているのだが人口では6.3%でしかない。この格差は我々とアジア諸民族の間で特に大きいのだ。この状況の中で我々はねたみと拒絶の対象にならないわけがない。来るべき時代における我々の真の任務は、我国の安全保障に対する明らかな損失無しにこの不釣合いな地位を維持することを可能にするような関係のパターンを作り上げることである。そうするためには、我々はあらゆる感情論と理想論を捨て去らねばならないだろう。そして我々の注意は直接的な国家目標のあらゆるところに集中されなければならないだろう。我々は、今日我々が利他主義と世界への貢献といった贅沢をする余裕がある、などと、自分たち自身を誤魔化す必要は無いのだ。(・・・。)
このような状況を前にして、我々はいまや極東に関連する思考の中で我々が強調してきた数多くのコンセプトなしで済ますことを考えた方が良いのではないか。我々は「好かれたい」とか高い見地からの国際的な利他心に溢れていると見なされたいなどという願望など必要とすべきではないのだ。我々は我が兄弟の保護者という地位につくことをやめるべきであるし、また道徳的なそして思想的な忠告を与えることを差し控えるべきである。我々は、極東について、人権や生活水準の向上、そして民主化などといったあやふやで非現実的な目標について語ることをやめなければならない。我々が直接的な力のコンセプトを取り扱わなければならない日が来るのは近い。我々が理想主義的なスローガンに邪魔されることが少なければ少ないほど良いのである。』(George f. Kennan, 1948 State Department Brief)
8.国際主義の破壊
独立し国際的な影響力を持つ機構としての国連(the United Nations)システムの計画的な解体は、国連が発足した1946年以来、米国外交政策の計画表に載り続けている。その計画的な終焉は1948年に作られたトルーマン・ドクトリンの不可欠な部分であった。国連誕生のまさに直後から、ワシントンは一方で自分に有利なようにそれをコントロールしながら、もう一方で同時にその弱体化と最終的な国連システムの破壊を画策している。事務総長の任を終えたコフィ・アナンは米国の外交政策の道具となったのである。
ジョージ・ケナンは次のように言う。
『時にはそれ(国連)は有用な目的のために役に立つ。しかし全般的に言うならばそれは、解決したよりも多くの問題を作り出している。そして我々の外交努力を相当に散乱させてきたのだ。そして主要な政治目的のために国連の多数派を利用する我々の努力の中で、我々はいつの日か我々に歯向かうかもしれない危険な武器を取り扱っているのである。それは最も注意深い研究と当方の見通しが当然とされるような状況なのだ。』(George Kennan, 1948)
公式には『国際的共同体』に対して関与しているのだが、ワシントンは国連に対して大部分リップサービスで済ましてきている。近年では米国は国連を一つの研究機関として軽視するようになっている。第1次湾岸戦争以来、国連は多くの部分「承認印の押し役」として動いている。それは米国の戦争犯罪に目を閉ざしている。それは、国連憲章に違反してでも、英米の侵略に利益をもたらす、言うところの平和維持活動に従事しているのだ。
9.トルーマン・ドクトリンからネオ・コンまで
ブッシュ政権の下におけるネオ・コンのアジェンダは、(2大政党による)『戦後』外交政策の大枠の集大成として見るべきであろう。それは近年の戦争計画の基本となり、さらに拷問室と強制収容所の設置、そして一般市民に向けられる禁止された武器の広範な使用を含む残虐行為の土台をなすものである。
朝鮮、ベトナム、アフガニスタンからCIAが主導したラテンアメリカや東南アジアの軍事クーデターに至るまで、その目的は、米国の軍事的主導権と経済支配を保証し続けているのだ。そしてそれは『トルーマン・ドクトリン』のもとで最初に公式化されたものである。明らかな政策の相違にもかかわらず、継続する民主党と共和党の政権は、トルーマンからジョージ・W.ブッシュに至るまで、世界的な軍事アジェンダを実行し続けているのである。
10.米国の戦争犯罪と残虐行為
この『戦後の時代』全体は1千万人を超える死をもたらした膨大な戦争犯罪によって特徴付けられる。しかしこの数字には貧困と飢えと病気の結果として死亡した人間の数が含まれていないのだ。
我々が現在取り扱っているのは米国の外交アジェンダの犯罪である。有罪とされるべきものは一人やそこらの国家指導者ではない。それは国家のシステム全体に関するものであり、その数多くの文官と武官、同時に米国の外交政策決定の背後に潜む強大な企業的権益構造、ワシントンのシンクタンク、そして軍事機構に資金提供をする投資家集団なのだ。
戦争犯罪は米国とその外交政策機関の犯罪性の結果である。我々は特に個々の戦争犯罪人について語っているわけだが、それにはさまざまなレベルで働く政策決定者達の行動、戦争犯罪を実行する命令、確立された指針と手続きのすべてを含むものである。
米国が主導する犯罪と残虐行為の歴史的記録に関してブッシュ政権に特色を与えるものは、集中キャンプ(強制収容所)や選択的殺人や拷問室が今日おおっぴらに侵略の合法的な形として見なされていることである。それは『対テロ世界戦争』を支え西側民主主義の拡大を支えているものなのだ。
(写真7〜10、Url)
http://www.globalresearch.ca/articles/CRG2111.jpg
http://www.globalresearch.ca/articles/CRG2114.jpg
http://www.globalresearch.ca/articles/CRG2112.jpg
http://www.globalresearch.ca/articles/Image8.gif
11.米国の軍事侵略のメカニズム
米国が主導する犯罪は戦争による死者やインフラストラクチャーの物理的な破壊にとどまらない。
国々は破壊されそのしばしば単なる地域の集まりに姿を変えさせられる。主権は奪い去られ、『自由市場』的改革の強制を通して国家的な利益は崩壊し国家経済は破壊される。失業率は跳ね上がり社会サービスは崩され、そして人々は困窮させられる。
その代わりに、国の施設と天然資源は侵略勢力によって強制された民営化プログラムを通して外国の投資家の手に移管させられる。
12.ペルダナ・イニシアティヴ:戦争の大波を跳ね返すこと
戦争を断罪するペルダナ・イニシアティヴはその【訳注:戦後世界とそこでの米国の軍事行動に関して当然の合意とされている】コンセンサスを打ち壊す。
いったんそのコンセンサスが打ち壊されさえすれば、『対テロ世界戦争』のいい加減な合法性はカードの家のように崩壊する。高いところにいる戦争犯罪人どもは依って経つべき脚を失うのだ。
戦争の大波を跳ね返すには、全世界で、国家的にまた国際的に、町内や職場やキリスト教会教区やモスクや学校や大学や地方自治体の中で、核兵器の使用を目論む米国主導の戦争の危険を人々に知らせるための大規模なキャンペーンのネットワークと活動が必要である。このメッセージは大声でそして明らかに為されなければならない。世界の安全保障にとって脅威となっているのは、イランではなく、アメリカ合衆国とイスラエルなのだ。
軍隊と諜報機関の中で討論と話し合いがもたれなければならない。特に戦術核の使用に関してである。米国議会の廊下で、自治体の中で、そして政府内のあらゆるレベルで。究極的には政府高官の政治と軍事の実行者たちの正統性が厳しく咎められなければならない。
現在、不測の事態、つまり米国主導の核戦争の勃発を防止する視点から米国憲法の下でその権力を行使することが、議会のメンバーによって避けられているように思える。このような無行動の結果は国を大変な困難に陥れることになろう。いったんその決定が政治的なレベルでなされてしまうなら、時計を逆回しすることは極めて困難なことになるだろう。
さらに言えば、反戦運動がイランに対する米国主導の核の脅威に対して恒常的なやり方で狙いを定めてはいないのだ。それはその指導部の中での分裂のせいかも知れないし、情報不足のためかもしれない。もっと悪いことに、反戦運動のある有力な部分が、『イスラム・テロの脅威』は真実である、などと見なしているのだ。『我々は戦争に反対しているが、しかしテロリズムに対する戦争を支持する』と言うのである。この二面的なスタンスは、つまるところ『対テロ世界戦争:the "Global War on Terrorism" (GWOT)』の実行を予告する米国安全保障ドクトリンの正統性の強化に給仕することになる。
この重大な情勢の中で、ブッシュ-チェイニー政権の人気は時を追って下がりつつあるのだが、ある弾劾のプロセスを開始するチャンスが存在するのだ。それはその軍事的なアジェンダを一時的に凍結させることに役立つかもしれない。
(参考資料7、Url:Immediate Impeachments: Preventing "The Guns of August" in Eurasia)
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=BOY20070120&articleId=4528
企業的なメディアは同様に米国主導の戦争犯罪の隠蔽に対する重大な責任を負うものである。つい最近まで核兵器の使用を含むこれらの戦争準備は企業的メディアによってはほとんど報道されてこなかったのだ。メディアも同様にその中東戦争での偏向報道に対して強く非難を浴びなければならない。
この沈黙の陰謀を打ち破るために必要とされることは、メディアの嘘と捻じ曲げを暴露し、米国の政治権力機構とそれを支える歴代政府の犯罪的な本性、その戦争アジェンダと同時にすでに警察国家の輪郭を顕にしている『祖国安全保証アジェンダ』に立ち向かうことである。
戦争を裁くペルダナ・イニシアティヴに対する返答として、米国-イスラエルの戦争計画を、特に北アメリカと西ヨーロッパとイスラエルで政治的な討論の表舞台に引きずり出すことが必須である。戦争に反対する政治と軍事の指導者達は各々の部門の中でしっかりとしたスタンスをとらねばならない。国民達は個々にそして集団としてしっかりとしたスタンスをとらねばならない。
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【補足】
A1 分類 米国による介入の性格(44カ国)
死者は、戦場であるいはその他の軍事的な作戦で殺された者にとどまらない。
我々は同時にまた、戦争と経済崩壊の環境面での結果と同時に広範な経済的、社会的、そして機構的なメカニズムを計算に入れなければならない。
軍事的なそして隠密の諜報活動面あるいは他の命令のタイプでの作戦を考慮に入れて、我々は次のように分類してみたい。(以下に挙げる国々について)
(戦)戦場
(ク)米国が画策した軍事クーデター
(内)米国によって主導される内戦
(軍)軍国主義化
(秘)諜報部による秘密作戦、代理戦争用の軍、殺人部隊
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国々:アルファベット順
アフガニスタン(戦、ク、内、秘)、 アンゴラ(内、秘)、 アルゼンチン(ク、秘)、 バングラデシ(ク)、 ボリビア(戦、内)、 ブラジル(ク、秘)、 カンボジア(戦、内、秘)、 チリ(ク、秘)、 コロンビア(内、秘)、 コンゴ(戦、内)、 ドミニカ(ク、軍、秘)、 エルサルバドル(内、ク、秘)、 エリトリア(内)、 エチオピア(内)、 グァテマラ(ク、秘)、 グレナダ(ク)、 ハイチ(ク、軍、秘)、 ホンジェラス(ク、軍、秘)、 インドネシア(ク、秘)、 イラン(ク)、 イラク(ク、戦、秘)、 日本(戦)、 ラオス(戦、内)、 レバノン(戦、内、秘、軍)、 リビア(内)、 マセドニア(軍、内、秘)、 モザンビーク(内、秘)、 ニカラグア(内、秘)、 ナイジェリア(内、秘)、 北朝鮮(戦、内)、 パキスタン(ク、秘)、 パレスチナ(内、秘)、 パナマ(ク、軍)、 フィリピン(ク、軍、秘)、 ルアンダ(内、秘)、 セルビア(内、秘)、 ソマリア(内、軍、秘)、 シェラレオネ(内)、 韓国(内、戦、秘)、 スーダン(内、軍、秘)、 タイ(ク、秘)、 ウルグァイ(ク、秘)、 ベネズエラ(ク)、 ベトナム(戦、ク、内)、ジンバブエ(内)
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米国が主導した戦争犯罪の歴史的実例
抜粋された国の例
韓国・朝鮮(1950−53)
北朝鮮は50年から53年までの37ヶ月に及ぶ『熱い』戦争の間に人口のおよそ3分の1に当たる8〜9百万人を失った。軍事対立の結果としてはどこの国にも前例の無いパーセンテージである。朝鮮で米国の作戦に従事したレメイ(Lemay)将軍は、米国がその3度の集中的な爆撃の間に北朝鮮の人口の20%を殺害したことを率直に認識している。
ベトナム(1954−75)
ベトナム側の資料によると、ベトナム戦争による一般市民の死者は4百万人の単位にのぼった。3千8百万人の人口の中で、54〜75年の間に、ベトナムでの死者は全人口の12〜13%である。
インドネシア
インドネシアは米軍によって侵略を受けてはいないが、CIA報告によると、この国は『20世紀の大量殺人の中で最悪のものの一つ』を経験したのである。皮肉にもそれを計画したのはCIAだったのだ。
『300ページのCIA文書では、その虐殺における米国の直接的な役割に対する認識が書かれていない。それは基本的に『殺人の犠牲者、つまりインドネシア共産党(PKI)の支持者たちを、彼ら自身の死に関して非難するものなのだ・・・。何十万人もの、銃殺され刺し殺され殴り殺され飢え死にした人々が、犯罪者の、あるいは残虐行為の下手人のレッテルを貼られた。真に犯罪を実行した一握りの者である軍の将軍達による殺人の濡れ衣を着せられただけなのだ。』
コンゴ(1998−2000)
コンゴ(1998〜2000)とスーダンは米国が画策した『内戦』を経験した。コンゴでの2年間の戦争は3百80万人と推測される死者を出したが、その多くが飢えと病気によるものだった。
スーダン
2百万人の死が18年間にわたる『内戦』の結果であった。それは埋蔵石油の支配権確保と結び付いている。
ナイジェリア−ビアフラ
1960年代後半に、同じく米国が画策したナイジェリア−ビアフラの紛争の間に、百万人が死亡した。それはやはり石油利権にリンクするものだった。
ルワンダ(1994−95)
ルワンダ『内戦』とジェノサイドの結果として50万人から百万人の人々が死亡した。最近の報告は米国と英国が民族的な大虐殺の引き金を引く決定的な役割を果したことを確証している。
【翻訳作業、終り】