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スペインの田舎町での反アジア人(中国人)騒乱
久しぶりの空耳板ですが、戦争板にはややふさわしくないもので。
9月17日のエル・ムンド紙(電子版)は、スペイン南東部のバレンシアにあるエルチェという小都市で、16日に、アジア人(中国人)が経営する履物製造会社が群集に襲われて、倉庫などが放火され炎上しました。
このエルチェという町は昔から履物などの製造が地場産業ですが、近年はより安くて質の良い(というか、スペイン製よりも不良品の少ない)中国製などのアジア製品に押されて、相当にダメージを受けています。なにせ、スペイン人は基本的に「品質管理」という発想を持っておらず、質やサービスを高めようという向上心に乏しいため、どんな品物でもスペイン製のものは不良品が多いので有名ですから。そりゃ、中国人には勝てませんわ。
そこで「アジア(中国)製品締め出し」を求めるデモが行われたわけですが、約500名のデモ隊の熱気は次第にエスカレートして、「中国人は我々の国にとって糞だ!」「中国人は出て行け!」と口々に叫び、「アジアの履物の箱をひっくり返せ! 焼いてしまえ!」と、その会社の倉庫に押し入って履物(靴、サンダルなど)を次々と焼き払いました。この様子は次のUrlで入っていただくと写真でご覧になれると思います。
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エルチェでアジア系の履物工場に対する反対運動で騒乱、10人を逮捕
http://www.elmundo.es/elmundo/2004/09/17/sociedad/1095383158.html
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ヨーロッパではこのような外国製品締め出しの運動はたいていは労働組合が主導で行うのですが、今回の場合人種的な排外主義の性格があるため、スペインの主要労組連合である労働者総同盟と労働者委員会は共に関与を否定しています。
スペイン語の原文では「中国人は我々の国にとって糞だ!」は”¡Chinos de mierda, a vuestro país!”、「中国人は出て行け!」は”¡Chinos fuera!”です。このchino(チノ)は本来は中国人の意味ですが、しかしアジア人全体の蔑称にもなります。つまり、頭に血の上ったスペイン人にとっては、日本人も韓国人も見境なく「チノ」なわけです。ちょうど、切れてしまった日本人にとって、アメリカ人もドイツ人もフランス人も等しく「毛唐」であるようなものです。
スペインに住む外国籍の人間は2002年の統計で、合計で約200万人(スペインの人口は約4千百万人)でです。ただしこれはあくまでも「公式の数値」で、実際にはその50%増しから倍はいると思ったほうが良いでしょう。一応公式の数では、最も多いのがモロッコ人の約31万人、次がエクアドル人で約26万人、次がコロンビア人の約19万人です。中国人は13番目の約3万8千人で、ドイツ(約11万人)やフランス(約6万人)よりもずっと少ないのが実情です。それでもやはりアジア人は目立ちますし、中華レストランや中国人経営の安売りの店などは、大都市に行けば相当に目を引きますので、何かと好奇な目や時には反感の対象になりがちです。
今回の騒動の場合は経済的な利害が絡んでいますので過激化しましたが、そこまで行かなくても、貧しい無力な階層のスペイン人の中には常に「チノ」に対する反感があります。特に若いネオナチ的な連中(10代後半で、通常「スキンskin」と呼ばれており、中下層階級出身で学校制度からもはみ出した者が多い)は抑圧されたエネルギーを、スペインには多く住んでいる非ヨーロッパ系の外国人、たとえばモロッコ人(蔑称ではモロmorro)、パキスタン人(蔑称パキpaqui)、エクアドル人やペルー人(インディオの顔つきが多い)や「チノ」にぶつけてきます。
先日、私の知り合いの日本人が、タクシーから降りたとたんに数名の少年に囲まれ「チノ!出て行け!」と殴られたそうです。では「俺は日本人だ」といったらどうなるか。たぶん一緒でしょう。彼らにとっては目が細くてつりあがり顔ののっぺりした人間はすべてチノですから。
もちろんスペインはこんな面ばかりではないのですが、これもスペイン(広く言えばヨーロッパ)の現実の一面です。