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住宅街の上空をヘリや輸送機が飛び交う普天間飛行場。環境基準を超える騒音が確認され、騒音規制措置が守られているとは言い難い
在日米軍の法的地位や義務などを定める日米地位協定は一九六〇年の発効以来、一度も改定されていない。一九九五年の米兵少女乱暴事件を機に、日米両政府は刑事裁判手続きや環境保全問題など、十六事案で運用改善を進めてきた。日本政府は「基地被害の軽減に向けた現時点で最善の対応」(外務省)と主張するが、起訴前の身柄引き渡しが米側の裁量で遅れたり、騒音防止協定が形がい化するなど、「運用改善は実効性に乏しく、基地被害解決につながらない。逆に改定の必要性を裏付けている」(沖縄弁護士会)という厳しい指摘が付きまとい、県民は改定要求を強めている。運用改善の事例を紹介し、その問題点を検証する。(政経部・松永勝利、編集委員・松元剛)
◇騒音規制措置
「嘉手納飛行場および普天間飛行場における騒音規制措置に関する合同委員会合意」は両飛行場での人口密集地域上空の飛行回避や夜間、早朝の飛行制限を講じることが記されている。
県が実施している両飛行場での航空機騒音測定調査の二〇〇二年度の結果によると、嘉手納飛行場周辺では十四地点のうち九地点で環境基準を超える騒音が確認され、屋良や砂辺など三カ所では大幅に基準を超越する数値が出ている。
また普天間飛行場では九地点のうち四カ所で環境基準を超える騒音が確認され、上大謝名では夜間から早朝の騒音発生回数が月に百回を超えるなど、規制措置が守られているとは言い難い。
規制措置の文言をみると「禁止」よりも「努力を払う」「配慮する」「任務により必要とされる場合を除き」といった規制の除外規定や努力目標が目立ち、抜け道が多いのも事実だ。
稲嶺恵一知事は昨年十一月、ラムズフェルド米国防長官との会談で「騒音が非常に増えている。周辺住民の生活を守るためにも、(規制措置を)厳格に守ってほしい」と訴えた。
◇米軍施設への立ち入り手続き
日米特別行動委員会(SACO)最終報告の日米地位協定の運用改善項目で盛り込まれ、一九九六年十二月に日米合同委員会で合意した「米軍の施設及び区域への立入り許可手続き」は、地元自治体などの基地内への立ち入りを認める取り決めだ。
これまで県や国会議員が基地内の環境汚染の懸念を理由に四件の申請を出しているが、三件は拒否され、もう一件は申請から半年を経過する現在まで結論が出ていない。
拒否された三件はいずれも九八年に嘉手納基地内の立ち入りを求めた申請。六〇年代から七〇年代にかけてポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む変圧器油などがため池に放置されていたことが琉球新報の報道で判明し、県と国会議員が相次いで申請を行ったが「施設・区域の調査、検査は認めない」として立ち入りを拒否された。
結論が出ていないのは昨年九月に県が出したキャンプ・コートニーの鉛汚染の周辺海域調査の申請で、立ち入りできるよう日米合同委員会での協議を求めているが、外務省からの回答は来ていない。
◇及ばない汚染者負担原則
米軍基地内の環境保全をめぐり、外務省が「日米が重要性を共有した意義は大きい」と強調する合意がある。日米の外務、防衛閣僚が集う日米安全保障協議委員会(2プラス2)が二〇〇〇年九月に出した「環境原則に関する共同発表」がそれだ。
在日米軍が、環境管理基準(JEGS)に基づき、日米の厳しい基準で環境保護に努めるとする内容。「ペナルティーが科されない」(新垣勉沖縄弁護士会長)など、法的拘束力に乏しく、努力規定の色が濃い。
基地返還時に汚染が明らかになった場合、米側の浄化責務を免除する地位協定四条に変化はない。国際常識となりつつある汚染者負担の原則は、米軍に及ばない。
共同発表を具体化する新たな「日米合同委員会合意」に向けた「特別委員会」を設けているが、具体策は示されていない。
〇三年四月に返還された北谷町のキャンプ・桑江北側(三八・四ヘクタール)では、環境基準値の二十倍の鉛など、特定有害物質が八地点で見つかった。地主への引き渡しは大幅に遅れている。那覇防衛施設局は〇二年十二月に、返還前の事前調査を打診したが、米軍側が拒んだ。返還後の汚染発見が地主の不利益につながる悪循環を断ち切れないでいる。
◇米兵身柄引き渡し
基地外で罪を犯した米兵が、基地内で身柄を拘束された場合、日米地位協定一七条五項Cは、米側が日本側の起訴まで身柄を確保することを原則的に定める。
一九九五年の少女乱暴事件を機に、日米合同委員会で(1)殺人と女性暴行の場合は、起訴前の引き渡し要請に米側が「好意的考慮を払う」(2)「その他特定の場合」は、米側が要請を「十分に考慮する」―とする運用改善で合意した。
運用改善後、県内では二〇〇一年六月に北谷町、〇三年五月に金武町で起きた女性暴行事件で、運用改善が適用され、身柄が引き渡された。逮捕状発布後、引き渡しはそれぞれ四日、二日遅れ、県民に強い不満を残した。
〇二年十一月に本島内で発生した米海兵隊少佐による女性暴行未遂事件では、米側が身柄引き渡しを拒否。米側の「好意的考慮」にゆだね、裁量権を米側が握る運用改善の限界をさらけ出した。凶悪犯であっても、殺人、強盗以外は引き渡し対象とならない可能性をはらむという問題点も残る。
運用改善で定めた「その他特定の場合」が不明確なため、日米は〇一年から協議を継続しているが、取り調べ時の政府関係者などの立ち会いを求める米側との交渉は難航。〇三年六、七月の協議では、米側の強硬姿勢の前に、「その他特定の場合」の明確化さえも進まずに決裂した。県などが求める米兵の即時身柄引き渡し実現には程遠い日米交渉となっている。
◇公務外の被害者賠償
日米特別行動委員会(SACO)最終報告に盛り込まれた「日米地位協定第一八条六項の下の請求に関する支払い」は軍人・軍属が公務外で起こした事件・事故などの被害者への補償について、慰謝料や見舞金の支払い手続き、前払いの請求、無利子融資制度、裁判確定時の賠償額と米国側の支払い額との差額を日本政府が支払うことなどの運用改善を盛り込んだ。
那覇防衛施設局が把握した二〇〇二年度の米軍人・軍属等による事件・事故の発生件数は千五十六件。うち公務外は八百八十九件で、第一八条に基づいて日米両政府が関与して被害者側に賠償が支払われた件数はわずか0・7%の六件だ。
残りの八百八十三件について施設局側は「SACO合意で米軍人に加入が義務付けられた任意自動車保険や当事者間の示談で処理されているのではないか」と説明している。しかし実際の任意保険の加入率については米側からの回答がなく把握できていない。
米軍人・軍属による事件被害者の会は「任意保険切れもあり、実際には被害者の多くは泣き寝入りしているとしか思えない」と指摘している。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/special/unequal/unequal.html