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Re: なぜ「敗戦責任」にこだわるのか - あっしらさんへの返答
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投稿者 戦争屋は嫌いだ 日時 2003 年 10 月 27 日 07:05:29:d/vusjnSYDx0.

(回答先: なぜ「敗戦責任」にこだわるのか 投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 25 日 19:14:37)

あっしらさん

終戦責任でなく敗戦責任というterminologyに貴殿がこだわる理由・思い入れはよくわかりました。ここまで真摯に考えていたとは!貴殿のポイントはつまるところ、基本的に同じ帝国主義列強動同士の闘争に善悪はない、という観点から日本の戦争行為だけが責任を問われるいわれはない、ただし敗戦によって国民・国家体制に大きな損害を惹起したことについては、統治者に一種の行政責任としての敗戦責任がある、という趣旨だと思います。

この辺は前にも言いましたが、私も基本的には同感な部分も多いのです。ペリーによって開国を強いられた時点では、中国が文字通り列強に食い荒らされている真最中で、自分もやる側に参加しなければ、やられるしかないという状況だったと思います。幸い当時の幕末から明治にかけての日本の指導層は、十分な危機感と(少なくとも腐敗した中国の支配層(王朝・軍閥)に比べれば)無私の精神をもっていたおかげと、もうひとつは日本に天然資源が乏しかったこともあって、不名誉な植民地化は免れたわけです。(列強は日本のassetは自然資源ではなく、人的資源であり、交易・通商による搾取の方が効率的と判断した可能性はある。当時日本に英国外交官として駐在していたミットフォード卿の日記など読むと、日本人の資質等について大変な炯眼を持っていたことが分かる。これらの情報は間違いなく本国にフィードバックされていなことであろう。)

さらに明治維新の時点で敗戦までの運命は予定されていたという点もほぼ同意できます。ほぼという理由は、日本が英米勢力と激突したのは、一に米国との西太平洋における地政学的な衝突、二に日本が英国の極東における経済利権を脅かしたことが原因だと見ているのですが、当時はまだ英国の影響力が現在とは比較にならない程強く、日英同盟の流れを活かして英国と話をつけ、英米の倶楽部の中でジュニアメンバーとして我慢する覚悟があれば、あのような正面衝突は避けられたかもしれないという気もするからです。ただこれには日本の指導層に桁はずれに有能な外交手腕の持ち主がいたことが前提だし、御説のように日本が日清・日露・第一次大戦の成功に慢心して態度が傲慢になったことも事実でしょうから、事実上は不可能だったとは思いますが。

私が問題にしたいのは一般市民に250万という死者(戦死者も銃後で空襲などの犠牲になった非戦闘員も含む)が出ている一方で、A級戦犯だった岸伸介が戦後総理大臣になったり、BC兵器の開発に人体実験で多数の捕虜を生体解剖・虐殺するなど、悪名高い731部隊の幹部が罪を問われることもなく(これは米軍の責任も非常に大きいが)後にのうのうとミドリ十字の経営者となって血液製剤事件を引き起こしたり、責任を問われることなく生き延びて、性懲りもなく反社会的・犯罪的な所業をつづけた者が少なくないことです。さらに海軍の庇護の下に(児玉機関)貴殿が言及している中国でのアヘン商売で巨大な財産を築いて、これを基に戦後日本で黒幕として暗躍した故児玉誉士夫なんていう右翼もいましたね。もうひとつ呉の海軍工廠など軍の資産(国民の資産)が終戦前後のどさくさに三菱重工など財閥系企業に二束三文で払い下げられた事実があります。表面に出ない戦争利得者はまだまだいたはずです。

もう一つ問題とすべきは、後述のように皇軍(特に陸軍)に、近代戦争のための物理的・精神・文化的インフラが整備されていなかったことで、関係者に様々な不都合と苦痛を引き起こしたこと、そしてその責任です。

以上の前提で以下個別にコメントします。(順不同)

>満州領有を企図したグループの一人である石原莞爾の構想は、日満一体となっ>た重化学工業化の達成で、日本−中国の水平分業すなわち共栄圏をつくりだす>というものです。これが実現できない限り、アジアの共栄と同盟は達成できな>いと考えていたわけです

石原完爾はお粗末な人材も多かった陸軍においては優れた戦略家であったと認識していますが、このような国家戦略は後述するように、弱肉強食の帝国主義の時代には妥当なものと思われていたかもしれませんが、今となってみれば今回の米英のイラク侵略と何ら選ぶところはありません。日満一体とはいいますが、所詮は「よその国に招待もされないのに、かってに押しかけて傀儡を立てて資源を乗っ取った。」が本質ではないかと思います。ただし今日まがりなりにも日本が経済大国と呼ばれる存在になった背景に、こうした侵略による経済的恩恵があったことも否定はできません。非常に複雑な思いがします。

>日露戦争そして第一次世界大戦までの日本は、英米の“お仲間”になる(認めら>れる)ことに心し、戦争捕虜の扱いや対外権益の扱いも極めて遵法的で慎重な>ものでした。

>しかし、第一次世界大戦後は、英米と並ぶ列強の位置に立ったと慢心し、英米>との摩擦を覚悟しながら対外権益の拡大をめざすともに、他のアジア諸国とり>わけ中国に対して優等国という態度を露骨に示すようになります。
>英国が中国に対して行ったことを日本が行うことに躊躇や恥じらいをなくして>しまった人たちが増大したのです

確かにこういう要素は大きかったと思いますが、私は太平洋戦争における捕虜虐待の背景として、兵站線の規模が日露戦争などとは桁違いであったこと、そして皇軍にこの巨大な兵站線に対応するような、戦争インフラとしての近代的ロジスティックスが備わっていなかったことが、捕虜虐待の要因として指摘したい。(そもそも皇軍では兵站担当の輜重兵は実戦部隊から差別され侮蔑さえされてた事実がある。いかにロジスティックスを軽んじていたかである。)実際自軍の兵隊も補給の不備で飢餓状態で放置されるケース(インパール、ガダルカナルでは数万の将兵が餓死している)が極度に多かったというのに、捕虜の面倒など見ていられるか、というのが実態だったと思います。ただしこれは全くジュネーブ協定に違反しています。皇軍(特に陸軍)は将校でもジュネーブ協定について無知が場合が多々あり、捕虜虐待を惹起していますが、これは将兵に対する最低限の教育という点で決定的な精神的・文化的戦争インフラの不備といえます。(これは御説の敗戦責任の大きな要素を構成するのでは)

>米英が、「第二次大戦時点では民間人の大量殺戮は行っていない」という理由に、>「非侵略国に対して行ったわけではなく、一種の報復という形だった関係で自他とも>に罪の意識が希薄」だとか、「日本も戦争初期に南京・上海などに無差別爆撃を行っ>ている」といったことを持ち出されるのは心外です

>宣戦布告をもって戦争状態にある二つの国家に侵略国とか非侵略国といった概念>は適用できません。また、罪の意識が希薄であることは罪を回避させるものでもあり>ません。

ここで「自他共に罪の意識云々」といったのは、法理論上の正当性とは別に、国際社会における認識(国際世論)を無視することはできないからです。原爆投下が犯罪的行為であることは疑問の余地のないことではあります。しかし東南アジア戦域で終戦を目前に、一部の捕虜収容所に「捕虜をすべて処分せよ」との命令が出ており、原爆投下によって日本の降伏が早まったおかげで命拾いをした捕虜が多数いることも事実であり、元捕虜だった英国人が「米国が原爆を投下してくれたおかげで自分は今ここには存在してるのだ。」などと言っているのを聞くと考え込んでしまうわけです。さらに当時日本軍の軍政下にあったシンガポールなどの東南アジア地域でも、暴虐な圧政に苦しんでいた現地住民が「原爆のおかげで苦しみから解放された。」と公言しているのも事実です。(特に開戦直後に日本海軍航空隊が英極東艦隊の旗艦、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスを撃沈した時には、同じアジア人である日本人が英国の帝国主義支配を終結させてくれた、と小躍りしていた同じ人々がこういっているわけですね。結果的に反感を植え付けるだけで終わった、日本の植民地経営は台湾一部の南洋諸島を例外として、失敗だったといわざるをえません) こういう話を聞くと、日本が被害者意識を全面に出せるだろうかという気がするわけです。

でも主観的な「意識」の問題がそれなりの意味を持つのは、貴殿もまさに

>日本が中国で民間人と殺戮したのは、善い悪いは別として、軍事的敵対行動者とい>う判断があったからです。(共産党やそのシンパがゲリラ戦なども仕掛けていたので>すから、現状のイラク占領米軍と同じように、まわりは民間人であってもみんな敵と>いう「意識」で動いていたはずです。

としているとおりですが。やはりゲリラと見なされて殺された民間人犠牲者には何の慰めにもなりません。中には殺戮のために殺戮したような状況があったことは疑いないように思われます。(これはベトナムでもどこでも同じで、この種の環境では恐怖感から一種の精神異常状態に陥ることが原因。)

因みに上海爆撃・南京爆撃(1937年: シナ事変の最中)の時点では、前にも触れたように日本は何の宣戦布告もしていません。単純に侵略者が突然都市に爆撃をしかけたわけで、一応戦線布告をしてからバクダッドを爆撃した今回のイラク侵略より、手続き的にはさらに無茶なケースと言うべきでしょう。また現実に多数の民間人が殺傷されている以上軍事目標を狙ったといっても、あまり意味はないでしょう。(実際貴殿の言葉にあるように「中国人にナメられるな」、が基本的な発想にあったとしたら、無差別爆撃による威嚇効果を期待した可能性は高いと思います。ただ当時大陸における日本の航空戦力(陸軍航空隊)は貧弱で、ドイツ空軍や米戦略爆撃団の破壊力とは比較にならなかったことは御指摘のとおりです。

ドイツ空軍のロンドン空襲は確かに宣戦布告による交戦状態における攻撃ですが、それにしても4万人もの死者を出した無差別爆撃であったことは間違いありません。(住宅街が広範囲にわたって集中的に破壊されている状態を写した写真集は何冊も出ている。) またV1号V2号は命中精度が非常に低く、事実上制御不能の状態で飛来していたものであって、建前では軍事目標を狙っていたといっても、実質的には民間人を殺戮する目的だったことは自明といいえます。未必の故意というべきでしょう。

こうした背景がある関係で日本とドイツは、米英の無差別爆撃を非難しても迫力がない、という部分はあると思います。一方で陸上では周知のようにドイツ軍も日本軍も非戦闘員の殺戮は枚挙にいとまがありません。(少なくとも第二次大戦中は私の知る限り米英軍はやっていません)

>国民の責任とは、洗脳されてしまった責任です。
>選挙権は男性のみで情報は限定され、メディア報道や学校教育で価値観や国策に>関する強烈な方向付けがなされていたとしても、洗脳されていたから責任はないとす>れば、当時の日本は、愚昧の民で満ち満ちていたという結論になるだけです

私は国民に何の責任もないとは考えていませんが、第一義的な責任は統治者にあるということです。この辺は程度の問題の違いだけであって、基本的に貴殿の考え方と本質的に異なっているわけではありません。ただ平均的な国民はなんと言っても250万以上もの犠牲者という形で、主体性の欠如に対してはすでに十分すぎる程高い対価を払わされているわけですが、一方で統治者・戦争企画者が相応の対価を払っているかどうか、対価を払うどころか戦争利得者(人・企業)も多いのではないかということです。

大正デモクラシーと言われた時期から、わずか10年そこそこであそこまで徹底したファシスト国家になってしまったわけで、愚昧とは言いたくないものの、「長いものには巻かれろ」の処世哲学に支配されている傾向のある日本人は、権威に従順なドイツ人同様ファシズムに陥りやすい傾向があると見ています。だからこそ不断のチェックが必要だし、このような議論によってこの問題を常に覚醒することは意義があると思います。

>ご指摘の財閥は、国家支配層に含まれると考えていますし、彼らがどのような行動>をとったのかを明確にし、責任を問われるべきだと思っています。

私がこの問題を声を大にして言いたいのは、例えば戦争企画者として石原完爾、東条英機、山本五十六といった個人の名前は表面に出てきて、彼らは戦犯として処刑されたり、戦死したり(石原も確か最後は不遇の内に病死している)それなりの報いは受けていますが、そもそも侵略戦争の初期から戦争・戦略の企画立案者として中核にいたはずの財閥関係者は、公職に就いていた場合を除いて一切名前が浮上することもなく何の咎も受けていないどころか、戦争で焼け太りしたケースさえ少なくないことです。

今回のイラク侵略ではカーライルやハリバートンなどが実質的な戦争企画者、真の黒幕として(前者については9・11謀略企画者の声も大きい)批判の対象になっていますが、実は第二次大戦・太平洋戦争でも全く状況は同じだったわけです。戦争は前にも言いましたが暴力を手段とした政治・経済行為です。したがってまず軍人の存在があるのでなく、経済的な利益のために戦争を企画する企業人がいて、これが政治を誘導し軍人が実施するのです。この最初の段階を根絶しなければ戦争は根絶できません。

ロスチャイルドとかカーライルを非難するのであれば、我が国でもまだ命脈を保っている三菱重工をはじめとした軍需産業にも厳しい監視を怠ることはできません。なんと言っても彼らには戦前・戦中の「前科」があり、またやらないという保証などどこにもないからです。

>誰に責任があり誰が悪かったということも重要だと思っていますが、どうして>あのような膨大な犠牲と災厄が道具化された被支配層の手によって現出するこ>とになったのかを明らかにするほうがより重要なことだと思っています。

全くです。しかし当時の大衆には情報ソースは政府公報か大手メディアか口コミくらいしかなかったわけで、この点ではインターネットによって往時と比べれば質・量ともに指数級数的に巨大な情報にアクセスできる我々は、はるかに有利だといえるでしょう。当時阿修羅のような情報源があったらどんなことになっただろうか、と想像してしまいます。くだけた言い方をすれば、まずは他人の言論の自由をとことん尊重することがすべてのはじまりではないでしょうか。

今回のこの一連の議論は思考の訓練としても大変有意義でした。

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