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Re: 《共同的資本主義論》について [馬場さんへ]
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投稿者 馬場英治 日時 2003 年 8 月 03 日 06:49:12:dcAX/x0KhXeNE

(回答先: 《共同的資本主義論》について [馬場さんへ] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 8 月 03 日 00:00:26)

> 馬場さん、はじめまして。

はじめまして.なにぶんよろしく.

> 興味深い論考を拝読させていただきました。

ありがとうございます.

先に進む前に《共同的資本主義》の簡単な定義を確認してみたいと思います.
(1)西欧型資本主義から「銀行システム」を除去して「共同的マネタリシステム」で置き換えたもの
(2)銀行システムから貸し出し業務を排除したもの
(1)は本日の最新投稿で述べたものです.(2)は共同的資本主義と西欧型資本主義の最小の差分です.
つまり,銀行による有利子貸し出しが無いというのが最大の違いです.これはイスラムが神の名のもとに
行なっていることを世俗的制度として実現しようとするものとも言えます.

私見では取引税のもとでは銀行システムは壊滅するか衰微するかのいずれかになるだろうと思っています.
もちろん,法制的に禁止すればそれまでですが.

> 通用性の高い制度原理論だと受け止めていますが、詳細の議論をする前に、いくつかの事項について確認させていただきます。

お願いします.

> T.自由貨幣
>
> >つまり,中央銀行の発行する貨幣はすべて負債に起源を有すると言える.

かなりルーズな(感情的)表現になってますが,要は貨幣の発行と流通に銀行が関わり(不当に)儲け
ているということです.もちろん彼らからすれば正当な営業でしかありませんが.この負債(の利払い)
は最終的に国民の負担になるということから,国民サイドからは「不当に」ということになります.

> >これに対し,自由貨幣は政府支出として直接,産業ないし家計部門に注入される.
> >自由貨幣は負債ではないから,それに対する金利は発生しない.

自由貨幣はたとえば公務員の給与支払いとか,道路建設業者への支払いとして直接支出されるので,
銀行(ローン)の関与する余地はありません.

> いわゆる管理通貨制の中央銀行券を発行することで負う中央銀行の債務とはどのようなものですか?
> (B/S上は負債ですが、金本位制貨幣と違い実質的な債務はないと判断しています)

中央銀行の設立方式,運営方法はそれぞれの国により大きく異なります.米国の連邦準備銀行は
複数の都市にあり,株式会社(誰が株主であるかは秘密であると信じられている)ですが,日本の
場合は特殊法人で財務大臣が50%の株式を所有しているなど...以下は日銀の場合です.
日銀券発行の方法は@日銀から銀行へ貸付,A日銀が証券とくに国債を買い付けのいずれかですが,
いずれも日銀の債務ではありません.@は日銀特融のような緊急の場合以外,最近はほとんど使われ
ていないようです.従って,市場からの国債の買い付けというのがもっとも一般的な通貨の発行形態です.
国債は政府の負債ですから,元本の償却と利払いは国民の負担(中央銀行の債務ではない)になります.

銀行の信用創造も誰かしらの負債を素因とするわけですから,同様の理由で反国民的であると言えます.
通貨は限りなく透明・中立であることが望ましいわけですが,貨幣の発行(ハイパワードマネー)と信用創
造(マネーサプライ)のいずれにおいても,なんらかの形で(国民の)債務が関わっているということです.
通貨供給のために借金しているわけではありませんが,通貨供給がそれ以外の方法ではできないという
ことです.ヒモ付きでない金はない,というか...

> 現状の中央銀行券は、本来的に自由通貨であるのに、中央銀行から外に出る段階から債務性を帯びているだけではないかという問いです。

国債発行と銀行券発行はまったく独立の事象ですから,無関係と言ってしまえばそれまでですが,
国民からすれば,連動しています.私の主張は銀行券発券のために制度的に債務行為を行なって
いるというのではなく,国債は国民の借金であるという単純な事実です.これは他の証券の場合でも
まったく同じことで,それに伴う「銀行の金利」を最終的に払っているのは我々だということです.

理論的には銀行券は自由通貨であるとして,債務行為の媒介なしに市場に日銀券を投入する方法が
あるでしょうか?

> このような問いを投げ掛けるのは、制度的に信認を得ている中央銀行券をそのまま自由貨幣として制度的に運用したほうがスムーズに移行できるのはないかと考えるからです。

日銀券は国民になじんでいるし,自販機やATMのプログラミングの問題もあることから,政府貨幣を日銀
券のデザインで発行するという提案は確かにあります.政府が日銀に手数料を支払って発行を委任する
などのやり方です.

> 中央銀行が政府所有で政府がその経営に最終的な権限と責任を持つものであれば、「信用創造」の消滅や無利子貸し出しを含め、自由貨幣(政府貨幣)と同じ役割を担わせることができるはずです。

《共同的資本主義論》では政府と中央銀行はとりあえず一体のものと考えています.

> >自由貨幣発行残高は徴収税額によって相殺される.

基本モデルでは,政府の歳入はすべて取引税で,歳出は自由貨幣の形態ですから,両者は一致する
必要があります.しかし,自由貨幣は歳入不足でも自由に発行可能なので,不一致が起こり得るという
より,完全に一致する方がむしろまれであると考えられます.もちろん通常の財政でも予算と決算の
不一致は起こりえますが,ここで言う不一致とは本質的に意味が違います.

> 自由貨幣発行残高が徴収税額によって相殺されなければならない理由を教えてください。

上記の通りですが,「相殺する」の意味は残高ないし差分を「観察する」ためです.帳簿上はもちろん
どちらの数字も記録されています.「共同的資本主義の超安定性」で多少説明しています.

このシステムでは中央銀行という唯一の銀行しか存在しないので,「信用創造」という現象は(絶対に)
発生しません.「信用創造」が発生するためには複数の銀行の存在が必要です.ただし,

原理的にはこの世界でも約束手形,社債などの証券を発行できることになっているので,借入した金
を又貸しするということは可能であり,その限りにおいて擬似的な信用創造が発生する余地はあります.
とは言え,銀行のように「安い金を仕入れる」ことができないので,仮にそのようなことがあったとしても
大規模なものに発展する可能性はないように思われます.もし,債券市場で地域的・時間的などの理
由から金利差が発生するようなことがあれば,それを悪用?して銀行類似業務を営むことは考えられ
るかもしれません.

中央銀行で行なう無利子金融はすべて「自由貨幣の発行」として行なわれるので,融資が活発に行
なわれればそれだけ通貨の流通量は増加します.政府と中央銀行は同じものと思惟しているので,
通貨発行量は政府が予算に従って執行する政府通貨の発行と中央銀行の融資額の和ということに
なり,それ自体大枠を決めることはできたとしても一般的には不確定です.

> 徴税は、貨幣発行残高の調整(物価変動率の調整)のためだけと受け止めてもいいのでしょうか。

そろそろ回転が鈍り始めてますが,もしまだ私の頭が何とか動いているとすれば,その通りだと思います.

もし,この命題が正しいとすれば(経済学上の)大変な発見になるかもしれません.つまり,
「政府は自由に通貨を発行できる.政府は通貨流通量調整ため,それだけのためにそれを回収する.」
ということになります.これは既に「税ではありません」.確かに誰からどれだけ回収するか?を決めなくて
はならないので,結局は「税に類似するもの」ということになりますが...つまり,回収の基準=税(制)と
いうことになります.この意味では取引税という選択はまったく正しかったのではないかと思います.
ほとんどコインの裏と表くらい緊密に照応しています.

我々の通貨は電子貨幣で,実際にはデータベース上のビット値であるに過ぎません.従って,
自由貨幣を発行するという行為はどこかのビットをオンにしたりオフにするという行為に過ぎず,
税の徴収も同様です.自由貨幣の発行には何かしらの対向的な取引(公務員給与,道路工事
支払いなど)がありますが,税の徴収ではそれがありません.納税者は所有していると(思って
いる)通貨を失いますが,政府側から支払うものは何もないので,「何の効果もありません」.
つまり,この操作は明らかに通貨量を減少させる以上のことはやっていません!

> U.取引税
>
> 徴税目的がわかったのちに検討したいと思います。

おっしゃられるように,「徴税の目的は物価の安定にある」ということになります.すばらしい!
<<<<<どれほどこれまでの政治が間違っていたかよく分ります.>>>>>
これから色々のことが考えられると思います.たとえば,物価が安定圏にある限り政府が発行できる
自由貨幣の量は相当な裁量が認められることになりますが,その限度はとか...
投入する自由貨幣の量と物価の関係.これだけでも経済学者100人を養えるテーマになります.
冗談でなくノーベル賞の可能性が出てきました.!(^^)!
現実へのインパクトとしては,政府貨幣の発行が完全に認知されます.
(それでノーベル賞をもらったのかな?かもしれませんね.車輪の再発明ってやつですか!?)
私はノーベル賞受賞論文自体は読んでないので...おそらく既に書かれてますね?
(しかし,だとしたら政府貨幣発行をためらう必要などまったく無くなってしまうのだが...)
(政治家の世界にその論文が届いていないのか???)

> V.無利子金融
>
> 利息取得に反対するものとして、『無利子銀行論』(ムハンマド・バーキルッ=サドル著・黒田寿一郎訳・未知谷発行)を興味深く読んだことはあります。

唯一ではないと思いますが,もっとも出ている本のようですね.
私のとこの市立図書館には間違ってもありません...

> >(「投資」は資本主義の根本原理であり,投資家が存在し,あえてリスクに挑戦する
> >投資が無ければ経済の成長は有り得ない.証券取引所はそれを機構的に確立するもの
> >であるが,詳細は省略する.)
>
> 「投資」は、資本主義に限らず、生産手段の生産という迂回的なかたちで生産活動を行なう社会に共通する根本原理だと考えています。

そうですね.

> しかし、「投資家が存在し,あえてリスクに挑戦する投資が無ければ経済の成長は有り得ない」とは考えていません。

確かに.過度に断定的な言い方になってたかもしれません.
私のイメージでは「リスクに挑戦」というのが先にあって,それから投資家なのですが.

> 「投資」を直接的な財の獲得ではなく将来における効率的な財の獲得を実現する活動だと考えれば、そのような活動に従事するひとが
> 必要とする直接的な財を、直接的な財の獲得を実現する活動に従事するひとでどれだけ支えられるかという問題になると思っています。

それは素敵なビジョンです.

>
> 「経済の成長」は、質的には“生産性の上昇”であり、量的には“付加価値額絶対量の増加”です。

なるほど.

> このようなことを書くのは、質的な経済成長は実現できても、量的な経済成長は実現できないという世界経済が間近に迫っていると考えているからです。

それは言えると思います.

> (「近代経済システム」では、量的な経済成長がない質的な経済成長は量的な経済成長を縮小させるという経済論理が働き、昨今の日本経済のような経済的災厄をもたらします)
> リスクに挑戦するのではなく、智恵を働かせて経済成長を実現しなければならない時代を迎えていると思っています。

リスクにはいろいろな顔があると思います.災害のようなものもあるし,人為的な失敗もあります.
マーケティングの問題もあるし,人事的な問題もあります.しかし,私がリスクに挑戦と言っている
ときには,何か新奇なもの,未知のものへの挑戦という意味に近いので,むしろ「知恵を働かせて」
という方に入ってしまうのではないかという気がします.

> >資産貸付は経済主体(市民)が資産を購入するための資金を中央銀行からの貸付で賄
> >うシステムである.
>
> 個人の住宅などの購入には説明されているかたちで対応すべきだと思っています。

物価が安定してさえいれば,この考え方は今日この場でも通用すると思うのですが.
インフレ期待,つまり不動産,株価の上昇を願い,それで一儲けしようという考えはあさましいと思います.
一言で言えばフリーランチであり,利子の不道徳性となんら代わりません.(もちろん,誰でも儲かるわけ
ではないし,いろいろ研究・調査したりなど,濡れ手で儲けているわけではないのでしょうけれど.)

> 企業の設備投資については、私的所有が今後も妥当性を持ち続けるのかという疑念を持っています。(デフレ経済における設備投資の過剰負担や先行者不利の論理を考えた結果です)

生産工程,流通過程ではすべての産業というわけではありませんが,ジャストインタイムのような
ロスが最小となるようなメソッドが開発されてきていると思いますが,確かに設備投資の不経済と
いうのはあるかもしれませんね.

馬場英治

ps:我々はとても大きな魚を釣り上げてしまったのではないか?という感じがします.糸が切れねばよいが...
ノーベル賞は自由貨幣に関するものです.その回収について考えていないはずはないと思いますが...
もしどこにも書かれていなかったとすれば,確実にノーベル賞ものです.(盗まれたらアウトです!)
取引税まで考えなかったことはおそらく確かだと思いますが.

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