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小泉首相は１７日、りそなグループへの公的資金注入決定について、金融危機を未然に防ぐ狙いであることを強調した。ただ、同グループが自己資本不足に陥ったのは、小泉内閣が株価下落を“放置”してきた結果とも言える。自民党非主流派などが、景気回復・デフレ阻止を優先する経済政策への転換を促し、竹中経済財政・金融相の更迭や内閣改造を求める動きを強めるのは確実だ。
●危険な賭け●
首相は１７日夕の金融危機対応会議終了後、記者団にこう強調した。
「金融危機を起こさせないための措置。改革路線に変わりはない」
竹中経済財政・金融相は昨年秋以来、不良債権処理の加速と、それに伴う銀行の自己資本不足には公的資金注入で実質国有化を図り、国主導で銀行を再建する考えを漏らしてきた。その意味で「竹中シナリオ」に沿った対応で、自民党の山崎幹事長も１７日、記者団に対し「不良債権処理を進めながら金融・融資能力を確保するための措置だ。金融分野における構造改革路線が前進しているということだ」と力説した。
しかし、首相や竹中氏にとって「危険な賭け」と指摘する声は少なくない。「『自己資本比率が６％あると言っていたけど、ウソだった。ほかの銀行は大丈夫だと言われても信用できない』という反応を招く恐れがある」（政府関係者）ためだ。
また、金融危機対応会議後、首相が記者会見を行わず、記者団の質問に応じる形で対応したことを問題視する声もある。ある都銀幹部は「他の金融機関へは絶対波及しないんだと、首相が国民に向かって言うべきだ。竹中氏任せでは、逆に不信を招きかねない」と批判した。
●竹中氏に照準●
自民党非主流派幹部の１人は１７日、記者団に政局への影響を聞かれると、こう答えた。
「まず危機を回避する、政局にならないよう処理することが先決だ。少なくとも、私は政局に利用するつもりはない」
しかし、政府の経済政策を批判してきた堀内総務会長や亀井静香・前政調会長らは、「株価下落に対する政府の取り組みが極めて不十分だった結果だ」（江藤・亀井派幹部）として、政権批判の姿勢を強めている。今後は、株価下落をくい止めるには景気回復を優先する経済政策に転換すべきだとして、２００３年度補正予算編成など積極的な財政出動を迫ると見られる。
また、竹中氏に対しては、野中広務・元幹事長や堀内氏らが、実質成長率をめぐる同氏の発言をきっかけに「詐欺師」などと批判を重ねている。週明け１９日の市場などの動向次第では、竹中氏更迭に照準を合わせた動きが一層強まることも予想される。
さらに、金融機関の株価下落や預金流出といった信用不安に発展した場合は、内閣支持率の低下など政権基盤を揺るがす事態となりかねない。今のところは有力な対抗馬が見当たらない９月の自民党総裁選の行方にも影響が出てきそうだ。
●延長幅に影響？●
与党内では、金融機関の経営改善や株価の急落阻止に向けた一連の立法措置を今国会で実施すべきだとの声が強まっている。とりあえず、生命保険会社が破たん前に予定利率を引き下げることを認める保険業法改正案の成立を急ぐ構えだ。
同法案は６月１８日の会期末までに成立させる方針だが、このほか、〈１〉銀行の不良債権処理を支援する優遇税制〈２〉銀行の保有株売却を促進するため、銀行が銀行等保有株式取得機構に支払う拠出金制度の廃止――などを盛り込んだ法案の提出も検討されている。
こうした法整備に取り組むとなると、国会の会期延長が避けられない。
(2003/5/17/23:09 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20030517i114.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。