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『森田実氏:2003.4.1 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[1]』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/182.html )に続くものです。
『森田実氏:2003.4.3 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[3] 』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/244.html )
『森田実氏:2003.4.5 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[5]』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/300.html )
『森田実氏:2003.4.7 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[7] 』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/327.html )
『森田実氏:2003.4.9 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[9] 』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/379.html )
『森田実氏:2003.4.11 「日本再生の道」研究――『老子』を知れば道は開ける[11]』
( http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/419.html )
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ブッシュ大統領ら米政府指導者に、戦争への“欲望”を抑え、世界平和を志向する健全な精神があるか?!
「聖人は、もっぱら内面を充実させて、外界の刺激を求めない。つまり、欲望を捨てて、『道』にのっとるのである」(老子)[『中国の思想Y/老子・列子』、徳間書店刊、より引用]
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この言葉の前に次の文がある――「多彩ないろどりは、人の視覚をそこなう。刺激的な音楽は、人の聴覚を傷つける。手のこんだ料理は人の味覚を狂わせる。狩りを好んで獲物を追うことに熱中すれば、人の心は平衡を失う。宝物を手に入れようと夢中になれば、人は行いをあやまる」。
現在の民主主義社会の指導者に「聖人」的生き方を求めるのは、あたかも日常品のリサイクルショップで超高級品を探すようなものである。このことを前提にして以下のことを書く。
日本の知識層(「日本に知識人はいない」という説は無視できないが、ここでは日本にも知識層がいるとの建前を尊重することにする)は米国が好きだ。米国が立派な国だと信じている。しかし、ごく一部とはいえ、ブッシュ政権に対しては強い警戒感がある。「イラク戦争で大勝したら、ブッシュは次にどの国を攻めるのか。ブッシュは世界制覇に出てくるのではないか」との疑念がある。
唯一の超大国・米国の指導者たちは、巨大な軍事力をもって世界支配への道を進み始めるのではないかという心配が、私にはある。ブッシュ大統領の姿が、過去の征服者とダブって見える。アレクサンダー大王(BC356-323)、十字軍のウルバヌス2世(1042−1099)、モンゴル帝国のジンギスカン(1162−1227)、ナポレオン(1769−1821)……。
私が心配するのは、イラク戦争において完全な勝利を得たあと、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らが強大な武力をもって世界中を服従させようという征服者の心境になることである。強大な権力者は傲慢病に罹りやすい。そうなれば、恐ろしいことが起こる。世界中を巻き込む第三次世界大戦のおそれが強い。
米大統領とその側近たちが気にくわないと考える指導者のいる国に対して、容赦のない武力攻撃を加えるおそれがあるのだ。不幸にも、米大統領から睨まれるような政府指導者をもった国民は、米国の爆弾を浴びせられる。生きる自由を奪われることになる。
繰り返すが、米国はいまや唯一の超大国である。軍事的にも経済的にも世界中を敵にしても勝つ力をもつ超大国である。いまの米国なら、どんなにひどいことをしても、それを押し通す力をもっている。世界中を敵に回しても、米国がいますぐ潰れることはない。少なくとも米国の指導者はそう考えているに違いない。もはやブッシュ政権の暴走を阻止できるのは米国民しかないが、悪いことに、米国民の意識が政府の情報操作によってコントロールされている。むしろ「やれ!やれ!」の空気が強い。マスメディアも政府のコントロール下にある。少しでも反抗するメディアがあれば、すぐに潰される。
マックス・ウェーバーは『社会学の根本概念』のなかで「『支配』とは、ある内容の命令を下した場合、特定の人々の服従が得られる可能性をさす」と述べたが、ブッシュ大統領が世界中を服従させようという誘惑に身をゆだねたとしたらどうなるか。残念ながら、それは不可能なことではない。
オルテガ・イ・ガセーは『大衆の反逆』のなかでこう述べた――「タレイランはナポレオンに向かって次のように言ったのだ。『陛下、銃剣をもってすれば何事もできますが、ただ一つ、できないことがあります。それは銃剣の上に安坐することです』」、と。
強大な軍事力をもってすれば何でもできる。しかし敵を皆殺しにするか無条件降伏させたとき、軍事力は役に立たなくなる。次々に敵を求めて武力を行使しても限度がある。戦いはいつかは終わる。問題はそのあとの支配にある。安定した支配を可能にするのは、究極的には世論である。世論の支持が得られなければ、支配は安定しない。世界中の人々がいつまでも米国の軍事力を背景にした横暴におびえつづけることはない。抵抗闘争に立ち上がる者が必ず登場する。
いまのブッシュ大統領はじめ米国のリーダーたちの精神状態はどういうものだろうか。
老子のいう「獲物を追うことに熱中すれば、人は心の平衡を失う」ような状態であれば、大変である。また、イラクの石油という「宝物を手に入れようと夢中になれば、人は行いをあやまる」ような状態であれば、これまた大変なことである。
エラスムスはいう――「戦争は国家の疫病であり正義の墓場である。武器にとりかこまれた法は沈黙する。大部分の民衆はこれを呪い、平和を希求しているのだ。そして常に民衆の不幸の上に呪われるべき繁栄を温存する少数者のみが、戦乱を望むのである。彼らの非人間性が、かくも多くの善良な人々の意志にまさるべきであろうか?……戦争は新たな戦争を招き、報復を呼び、不寛容は不寛容を生むのである」(「平和神の嘆き」)。
米政府指導者にとって、このエラスムスの言葉は「馬の耳に念仏」のようなものかもしれないが、米国に理性が戻ることを望みたい。
*参考文献:『ちくま哲学の森』別巻「定義集」、筑摩書房刊。
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