麻疹(はしか)に対する免疫を持たない「麻疹患者予備軍」が国内に300万人以上いると見られることが国立感染症研究所などの調査で分かった。予備軍の全国推計数は初めて。日本では昨年、約23万人の患者が発生するなどし、渡航日本人が海外で感染を広げる例もあり、予防接種で感染者が減った欧米などから「麻疹輸出国」との批判を浴びている。予防接種率の向上策が求められそうだ。
国の2000年度感染症流行予測調査に基づき同研究所の岡部信彦・感染症情報センター長と多屋馨子主任研究官らがまとめた。
体内に麻疹ウイルスを攻撃するたんぱく質(抗体)があるかどうかを全国1800人で調べ、年齢別予防接種率などと合わせて分析した。接種率は1歳で5割、2歳以上で8割から9割程度で、患者予備軍は、2歳未満が116万人、2歳以上10歳未満が72万人、10歳代が46万人、成人麻疹の増加が警戒される20歳代が41万人など、計300万人と推計した。
乳児と成人の麻疹は、肺炎などの合併症で重症化しやすく、国内では年間十数人から50人が死亡。このため予防接種を1歳から7歳半を対象に1度実施することとされているが、1994年に法律が変わり、接種は、「義務」から「努力義務」に格下げになった。 これに対し米国は、小学校入学前の二度の接種義務化し患者は年間百人程度。ウイルスを持つ日本人が渡航して発病、現地で感染源となる例も相次いでいる。
(3月22日14:32)
http://www.yomiuri.co.jp/04/20020322i406.htm